【解決手段】回路基板は、ポリイミド絶縁層と回路配線層とカバーレイフィルムとを備え、ポリイミド絶縁層の厚みLaが12〜50μm、カバーレイフィルムの厚みLcが25〜70μm、ポリイミド絶縁層の誘電率をDka、誘電正接をDfa、カバーレイフィルムの誘電率をDkc、誘電正接をDfcとしたとき、式(i);
により算出される値が5GHz、10GHz及び20GHzの周波数において、SPDRにより測定したときに0.014未満である。カバーレイフィルムは、酸無水物成分およびジアミン成分を反応させて得られるポリイミドからなり、ジアミン成分が全ジアミン成分に対して脂肪族ジアミンを60モル%以上含有する接着性ポリイミド層を含む。
前記脂肪族ジアミンがダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基若しくはアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンである請求項1に記載の回路基板。
前記カバーレイフィルムが、ベースフィルム層(C1)及び接着性ポリイミド層(C2)からなり、該ベースフィルム層(C1)がポリイミドからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の一実施の形態の回路基板は、ポリイミド絶縁層と、このポリイミド絶縁層の少なくとも一方の面に積層された回路配線層と、この回路配線層に積層されたカバーレイフィルムとを備えている。そして、ポリイミド絶縁層の誘電率をDka、誘電正接をDfa、及び、厚みをLa、並びに、前記カバーレイフィルムの誘電率をDkc、誘電正接をDfc、及び、厚みをLcとしたとき、
下記の式(i);
{(√Dka)×Dfa×La+(√Dkc)×Dfc×Lc}/(La+Lc) ・・・(i)
で算出される値が、5GHz、10GHz及び20GHzの周波数において、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときに、いずれも0.014未満である。
このように、本実施の形態の回路基板では、ポリイミド絶縁層又はカバーレイフィルムのいずれか片方の誘電特性(誘電率、誘電正接)を下げるのではなく、回路基板の絶縁層全体(ポリイミド絶縁層+カバーレイフィルム)の誘電特性を下げることによって、高周波域における回路基板の伝送損失を効果的に低減できる。
【0015】
[ポリイミド絶縁層]
本実施の形態の回路基板におけるポリイミド絶縁層の厚みLaは、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、例えば12μm以上50μm以下の範囲内が好ましい。また、ポリイミド絶縁層は、接着性ポリイミド層(A1)を有していてもよい。ポリイミド絶縁層は、耐熱性や熱線膨張係数の制御を必要とするため、カバーレイフィルムの接着性ポリイミド層(C2)と比較した際にイミド基濃度が高く設定する必要があり、ポリイミド絶縁層の誘電率及び誘電正接を下げるのが困難となる。そのため、上記式(i)の値を0.014未満とするためには、ポリイミド絶縁層の厚みを必要以上に厚くすることは好ましくない。
【0016】
ポリイミド絶縁層は、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、ポリイミド絶縁層全体としての誘電率Dkaが、いずれも、好ましくは2.8〜4.0の範囲内にあり、更に好ましくは、3.0〜3.5の範囲内にあることがよい。
【0017】
また、ポリイミド絶縁層は、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、ポリイミド絶縁層全体としての誘電正接Dfaが、いずれも、好ましくは0.002〜0.007の範囲内にあり、更に好ましくは、0.003〜0.005の範囲内にあることがよい。回路基板全体の誘電特性を改善するためには、特にポリイミド絶縁層の誘電正接を制御することが重要であり、誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。
【0018】
本実施の形態の回路基板におけるポリイミド絶縁層は、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、芳香族ジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミドである。ポリイミドは、一般に、酸無水物とジアミンとを反応させて製造されるので、酸無水物とジアミンを説明することにより、ポリイミドの具体例が理解される。以下、好ましいポリイミドを酸無水物とジアミンにより説明する。
【0019】
<酸無水物>
本実施の形態のポリイミド絶縁層は、原料の酸無水物成分として、無水ピロメリット酸及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物が好ましく例示される。また、酸無水物として、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0020】
<ジアミン>
本実施の形態のポリイミド絶縁層は、原料のジアミン成分として、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基若しくはアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等が挙げられる。
【0021】
上記酸無水物及びジアミンはそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記以外のジアミン及び酸無水物を上記の酸無水物又はジアミンと共に使用することもできる。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
【0022】
本実施の形態で用いるポリイミド絶縁層は、イミド基濃度が33%以下であることが好ましく、32 %以下であることがより好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が33%を超えると、ポリイミドの難燃性が低下するとともに、極性基の増加によって誘電特性も悪化する。
【0023】
本実施の形態で用いるポリイミド絶縁層は、二酸無水物成分、並びに、ジアミン成分を溶媒中で反応させ、前駆体樹脂を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶剤の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0024】
合成された前駆体は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0025】
本実施の形態で用いるポリイミド絶縁層は、低接着性であって、低熱膨張性を有することから、樹脂フィルムにおけるベース樹脂層(絶縁樹脂層の主層)としての適用が好適である。具体的には、本実施の形態のポリイミド絶縁層は、熱線膨張係数が1×10
−6 〜30×10
−6(1/K)の範囲内、好ましくは1×10
−6 〜25×10
−6(1/K)の範囲内、より好ましくは15×10
−6 〜25×10
−6(1/K)の範囲内にある。従って、本実施の形態で用いるポリイミド絶縁層をベース樹脂層に適用すると優れた寸法安定性が得られる。
【0026】
一方、本実施の形態で用いる接着性ポリイミド層(A1)は、上記熱線膨張係数を超える熱可塑性のポリイミド層を含有することができる。このようなポリイミド層は、例えば金属層や他の樹脂層などの基材との接着層としての適用が好適である。このような接着性ポリイミド層(A1)として好適に用いることができる熱可塑性のポリイミドとして、そのガラス転移温度が、例えば330℃以下であるものが好ましく、200〜320℃の範囲内にあるものがより好ましい。ガラス転移温度をこのような範囲内とすることで、半田耐熱性低下を抑制し、また、例えば銅箔との熱圧着(ラミネート)においても十分な接着力を確保することができる。
【0027】
熱可塑性のポリイミドの形成に好適に用いられる酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物等が挙げられる。その他、上記のポリイミド絶縁層の説明で挙げた酸無水物を挙げることができる。この中でも、特に好ましい酸無水物としては、無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)から選ばれる1種以上の酸無水物が挙げられる。
【0028】
熱可塑性のポリイミドの形成に好適に用いられる芳香族ジアミンとしては、耐熱性及び接着性の観点から、分子内にフェニレン基又はビフェニレン基を有するもの、あるいは、分子内に酸素元素又は硫黄元素を含む2価の連結基を有するものが好ましく、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。その他、上記のポリイミド絶縁層の説明で挙げたジアミンを挙げることができる。この中でも、特に好ましいジアミン成分としては、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基若しくはアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族アミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン(DANPG)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE34)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE44)から選ばれる1種以上のジアミンを挙げることができる。
【0029】
本実施の形態で用いる、接着性ポリイミド層(A1)を含むポリイミド絶縁層は、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、好ましくは誘電率がいずれも2.5〜3.8の範囲にあり、更に好ましくは3.0〜3.5の範囲内にあることが好ましい。また、ポリイミド絶縁層の誘電正接は、上記測定において、いずれの周波数においても、好ましくは0.002〜0.007の範囲にあり、更に好ましくは0.003〜0.005の範囲内にあることが好ましい。接着性ポリイミド層(A1)を含むポリイミド絶縁層の誘電率及び誘電正接の値が上限の値を超えると、回路基板全体の誘電特性も悪化する原因となる。
【0030】
接着性ポリイミド層(A1)を含むポリイミド絶縁層は、必要に応じて、ポリイミド層中に無機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
<回路配線層>
本実施の形態の回路基板の材料となる回路配線層は、例えば、片側又は両側に接着性ポリイミド層(A1)を有するポリイミド絶縁層と、その片側又は両側の接着性ポリイミド層に積層された金属層と、を有する金属張積層体を加工することによって製造できる。金属張積層体の好ましい具体例としては、例えば銅箔とポリイミド絶縁層とが積層された銅張積層体(CCL)などを挙げることができる。なお、銅箔の材質は、銅合金であってもよい。
【0032】
回路配線層は、高周波伝送における伝送損失を低減する観点から、接着性ポリイミド層(A1)と接する面が、粗化処理されており、最大高さ粗さ(Rz)が1.0μm以下であることが好ましい。伝送損失は、導体損失と誘電損失の和からなるが、銅箔の粗化粗さが大きいと導体損失が大きくなる。すなわち伝送損失に悪影響を及ぼすため、粗化粗さを制御する必要がある。
【0033】
[カバーレイフィルム]
本実施の形態のカバーレイフィルムは、ベースフィルム層(C1)と、該ベースフィルム層(C1)に積層された、接着剤層により構成される。カバーレイフィルムの全体の厚みLcは、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、例えば25μm以上70μm以下が好ましい。また、カバーレイフィルム全体の厚みLcに対する接着剤層の厚みは、より優れた誘電特性を発現するために、40%以上であることが好ましい。更に、カバーレイフィルムの反りを抑制するために、ベースフィルム層(C1)の弾性率が接着剤層の弾性率より高いことが望ましい。接着剤層は、ベースフィルム(C1)に比べて、ガラス転移温度や線熱膨張係数に対する制約が少ないため、誘電特性の改善が比較的容易である。このため、接着剤層はベースフィルム層に比べて優れた誘電特性を示す。従って、カバーレイフィルムとして、より優れた誘電特性を発現するためには、接着剤層の厚み比率を一定厚み以上担保する必要がある。またベースフィルムの弾性率が接着剤層の弾性率より低いと、線熱膨張係数の大きい接着剤層の影響でカバーレイフィルムに反りが生じる。
【0034】
本実施の形態のカバーレイフィルムは、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、カバーレイフィルム全体としての誘電率Dkcが、いずれも、好ましくは2.5〜3.8の範囲内にあり、より好ましくは2.8〜3.6の範囲内にあり、更に好ましくは、2.8〜3.2の範囲内にあることがよい。
【0035】
また、本実施の形態のカバーレイフィルムは、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、カバーレイフィルム全体としての誘電正接Dfcが、いずれも、好ましくは0.001〜0.015の範囲内にあり、より好ましくは0.002〜0.005の範囲内にあり、更に好ましくは、0.003〜0.005の範囲内にあることが好ましい。回路基板全体の誘電特性を改善するためには、特にカバーレイフィルムの誘電正接を制御することが重要であり、誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。
【0036】
[ベースフィルム層(C1)]
カバーレイフィルムのベースフィルム層(C1)は、高周波領域の電気特性が優れていること、すなわち、低誘電率、および、低誘電正接であることが好ましい。このような樹脂材料の具体例としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、および、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)等を主成分とする樹脂基板が挙げられる。また、ベースフィルム層(C1)として、FPCと貼り合せた際における反り抑制の観点から、熱線膨張係数は、1×10
−6 〜30×10
−6(1/K)の範囲内、好ましくは1×10
−6〜25×10
−6(1/K)の範囲内、より好ましくは15×10
−6 〜25×10
−6(1/K)の範囲内にあることが好ましい。
【0037】
また、ベースフィルム層(C1)は、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、誘電率が、いずれも、好ましくは2.0〜4.0の範囲内にあり、より好ましくは、2.5〜3.8の範囲にあり。更に好ましくは、3.0〜3.4の範囲内にあることが好ましい。誘電正接が、いずれも、好ましくは0.015〜0.015の範囲内にあり、より好ましくは、0.002〜0.012の範囲にあり。更に好ましくは、0.003〜0.005の範囲内にあることが好ましい。また更に好ましい範囲のベースフィルム層を用いることは、本発明において、回路基板全体の誘電特性の改善に最も有効な手段である。
【0038】
また、ベースフィルム層(C1)としてポリイミド樹脂を使用する際は、前記ポリイミド絶縁層と同様の材料を用いてもよい。
【0039】
また、ベースフィルム層(C1)は、必要に応じて無機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
[接着剤層]
カバーレイフィルムの接着剤層は、高周波領域の電気特性が優れていること、すなわち、低誘電率、および、低誘電正接であることが好ましい。このような樹脂材料の具体例としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、および、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)等を主成分とする樹脂材料が挙げられる。
【0041】
また、接着剤層としてポリイミドを使用し、接着性ポリイミド層(C2)を形成する場合は、酸無水物成分とジアミン成分を溶媒中で反応させ、前駆体樹脂を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜200℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し縮重合反応させることでポリイミド溶液が得られる。反応にあたっては、生成するポリイミドが有機溶媒中に5〜50重量%の範囲内、好ましくは20〜40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような水と共沸する溶剤を使用するとよい。
【0042】
接着性ポリイミド層(C2)の原料の酸無水物として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA、別名;5,5’−オキシビス−1,3−イソベンゾフランジオン)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、5,5'-[1-メチル-1,1-エタンジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(BISDA)、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン等を使用することができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
<脂肪族ジアミン>
接着性ポリイミド層(C2)の原料のジアミン成分としてはダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基若しくはアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン等のジアミノアルカン類、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、N−メチル−2,2’−ジアミノジエチルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン等の窒素原子を含有するアミン類、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]−ウンデカン等の酸素原子を含有するアミン類、2,2’−チオビス(エチルアミン)等の硫黄原子を有するアミン類等の脂肪族ジアミン類を主成分とすることが望ましく、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、接着性ポリイミド層(C2)は、低誘電率および低誘電正接を有し、尚且つ可溶性である必要があるため、前記脂肪族ジアミンが全ジアミンに対して好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であることが好ましい。
【0044】
<芳香族ジアミン>
接着性ポリイミド層(C2)の原料のジアミン成分として、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等の芳香族ジアミンを含んでもよく、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また脂肪族ジアミンと組み合わせてもよい。また、接着性ポリイミド層(C2)を構成するポリイミドは、低誘電率および低誘電正接を有し、尚且つ可溶性である必要があるためには、芳香族ジアミン比率が高くなることは好ましくない。このため、前記脂肪族ジアミンが全ジアミンに対して好ましくは40モル%未満、さらに好ましくは20モル%未満であることが好ましい。
【0045】
接着性ポリイミド層(C2)を構成する樹脂は、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、誘電率が、いずれも、好ましくは2.0〜3.0の範囲にあり、更に好ましくは2.3〜2.8の範囲にあることがよい。
【0046】
また、 接着性ポリイミド層(C2)を構成する樹脂は、上記式(i)の値を0.014未満とし、回路基板全体の誘電特性を改善する観点から、SPDR共振器を用いた5GHz、10GHz及び20GHzの周波数における測定において、誘電正接が、好ましくは0.001〜0.005の範囲にあり、更に好ましくは、0.002〜0.004の範囲にあることがよい。回路基板全体の誘電特性を改善するためには、特に接着性ポリイミド層(C2)の誘電正接を制御することが重要であり、誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。
【0047】
また、接着性ポリイミド層(C2)を構成する樹脂には、ポリイミド樹脂の他に任意成分として可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、カップリング剤、充填剤、顔料、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
【0048】
以上のようにして得られるポリイミドは、これを用いて接着性ポリイミド層(C2)を形成した場合に優れた柔軟性と熱可塑性を有するものとなり、例えばFPC、リジッド・フレックス回路基板などの配線部を保護するカバーレイフィルム用の接着剤層として好ましい特性を有している。カバーレイフィルムの接着剤層として使用する場合、ベースフィルム層(C1)の片面に接着剤樹脂組成物を溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状)で塗布した後、例えば60〜220℃の温度で熱圧着させることにより、ベースフィルム層(C1)と接着性ポリイミド層(C2)を有するカバーレイフィルムを形成できる。架橋剤やエポキシ樹脂などの樹脂成分を含有する場合、熱圧着の際の熱を利用して架橋反応や熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることができる。また、熱圧着の際の加熱縮合が充分でない場合でも、熱圧着の後に更に熱処理を施して加熱縮合させることもできる。熱圧着後に熱処理を施す場合、熱処理温度は、例えば60〜220℃が好ましく、80〜200℃がより好ましい。また、任意の基材上に、接着剤樹脂組成物を溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状)で塗布し、例えば80〜180℃の温度で乾燥した後、剥離することにより、接着剤フィルムを形成し、この接着剤フィルムを、上記ベースフィルム層(C1)となるフィルム材と例えば60〜220℃の温度で熱圧着させることによっても、ベースフィルム層(C1)と接着性ポリイミド層(C2)を形成できる。また、接着剤樹脂層樹脂は、任意の基材上に、スクリーン印刷により溶液の状態で被覆膜を形成し、例えば80〜180℃の温度で乾燥させて使用することもできる。好ましくは更に130〜220℃の温度で所定時間熱処理し、被覆膜を完全に硬化させることにより、硬化物を形成することもできる。
【0049】
また、カバーレイフィルムは、接着剤面に離型材を貼り合わせて離型材層を有する形態としてもよい。離型材の材質は、カバーレイフィルムの形態を損なうことなく剥離可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムや、これらの樹脂フィルムを紙上に積層したものなどを用いることができる。
【0050】
本実施の形態のカバーレイフィルムは、優れた柔軟性と熱可塑性を有することから、例えば、FPCのカバーレイフィルムとして用いた際に接着剤層が配線間に充填され、カバーレイフィルムと配線層との高い密着性が得られる。
【0051】
<プリント配線板>
本発明の回路基板に用いるプリント配線板は、例えば銅張積層板の銅箔を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって製造することができる。
【0052】
以下、代表的にキャスト法の場合を例に挙げて、好ましいプリント配線板の製造方法について、具体的に説明する。
【0053】
まず、銅張積層板の製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を含むことができる。
【0054】
工程(1):
工程(1)は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程である。
【0055】
工程(2):
工程(2)は、銅箔上に、ポリアミド酸の樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程である。銅箔は、カットシート状、ロール状のもの、又はエンドレスベルト状などの形状で使用できる。生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、プリント配線板における配線パターン精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、銅箔は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
【0056】
塗布膜を形成する方法は、ポリアミド酸の樹脂溶液を銅箔の上に直接塗布した後に乾燥することで形成できる。塗布する方法は特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0057】
ポリイミド絶縁層は、単層でもよいし、複数層からなるものでもよい。ポリイミド絶縁層を複数層とする場合、異なる構成成分からなる前駆体の層の上に他の前駆体を順次塗布して形成することができる。前駆体の層が3層以上からなる場合、同一の構成の前駆体を2回以上使用してもよい。層構造が簡単である2層又は単層は、工業的に有利に得ることができるので好ましい。また、前駆体の層の厚み(乾燥後)は、例えば、30〜120μmの範囲内、好ましくは20〜85μmの範囲内にあることがよい。
【0058】
ポリイミド絶縁層を複数層とする場合、銅箔に接するポリイミド絶縁層が熱可塑性ポリイミドからなる接着性ポリイミド層(A1)となるように前駆体の層を形成することが好ましい。熱可塑性ポリイミドを用いることで、銅箔との密着性を向上させることができる。このような熱可塑性ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が330℃以下であるものが好ましく、より好ましくは200〜320℃である。
【0059】
また、単層又は複数層の前駆体の層を一旦イミド化して単層又は複数層のポリイミド絶縁層とした後に、更にその上に前駆体の層を形成することも可能である。
【0060】
工程(3):
工程(3)は、塗布膜を熱処理してイミド化し、上述の誘電特性を備えたポリイミド絶縁層を形成する工程である。イミド化の方法は、特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。金属層の酸化を抑制するため、低酸素雰囲気下での熱処理が好ましく、具体的には、窒素又は希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、水素などの還元ガス雰囲気下、あるいは真空中で行うことが好ましい。熱処理により、塗布膜中のポリアミド酸がイミド化し、ポリイミドが形成される。
【0061】
以上のようにして、上述のポリイミド絶縁層と銅箔とを有する銅張積層板を製造することができる。
【0062】
また、プリント配線板の製造方法は、上記(1)〜(3)の工程に加え、さらに、以下の工程(4)を含むことができる。
【0063】
工程(4):
工程(4)は、銅張積層板の銅箔をパターニングして配線層を形成する工程である。本工程では、銅箔を所定形状にエッチングすることによってパターン形成し、配線層に加工することによってプリント配線板を得る。エッチングは、例えばフォトリソグラフィー技術などを利用する任意の方法で行うことができる。
【0064】
なお、以上の説明では、プリント配線板の製造方法の特徴的工程のみを説明した。すなわち、プリント配線板を製造する際に、通常行われる上記以外の工程、例えば前工程でのスルーホール加工や、後工程の端子メッキ、外形加工などの工程は、常法に従い行うことができる。
【0065】
以上のように、上述のポリイミド絶縁層及び銅箔を使用することによって、インピーダンス整合性に優れた銅張積層板を形成することができる。また、上述のポリイミド絶縁層及び銅箔を用いることにより、FPCに代表される回路基板において、電気信号の伝送特性を改善し、信頼性を向上させることができる。
【0066】
<回路基板>
回路基板は、プリント配線板の回路配線層とカバーレイフィルムを加熱圧着することで貼り合せることで製造される。加熱温度や圧着時の圧力については特に限定されないが、配線へのカバーレイフィルムの接着剤層の充填性や密着性の観点から、加熱温度は150℃〜200℃が好ましく、160℃〜180℃であることがより好ましい。加熱圧着の温度が上記範囲を下回ると充填性の低下や密着性の低下の恐れがあり、上記温度を超えると製造設備が限定される。また、加熱圧着時の圧力については、例えば、0.5Mpa〜3.0MPaの範囲内であることが好ましく、1.0MPa〜2.0MPaの範囲内がより好ましい。
【0067】
本発明の回路基板は、ポリイミド絶縁層とカバーレイフィルムとの接着性を高めるため、接着性ポリイミド層(A1)におけるイミド基濃度と、接着性ポリイミド層(C2)におけるイミド基濃度との差(A1のイミド基濃度−C2のイミド基濃度)が小さい方がよく、7重量%以内であることが好ましい。
【0068】
本実施の形態の回路基板は、回路配線層のポリイミド絶縁層の一方の面に回路配線層を備え、更にもう一方の面にグランド導体層を備えていてもよい。この場合、高周波伝送における伝送損失を低減する観点から、グランド導体層の接着性ポリイミド層(A1)と接する面が、粗化処理されており、その最大高さ粗さ(Rz)が、1.0μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0070】
[イミド基濃度の計算]
イミド基濃度は、イミド基部(−(CO)
2−N−)の分子量をポリイミドの構造全体の分子量で除した値とした。
【0071】
[ピール強度の測定]
ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE−10)を用いて、幅1mmのサンプル(カバーレイフィルム/絶縁樹脂層/銅箔で構成された積層体)の樹脂層側を両面テープによりアルミ板に固定し、絶縁樹脂層/銅箔を180°方向に50mm/分の速度で、カバーレイフィルムと、絶縁樹脂層/銅箔とを剥離するときの力を求めた。
【0072】
[誘電率及び誘電正接の測定]
誘電率及び誘電正接は、空洞共振器摂動法誘電率評価装置(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて、所定の周波数における樹脂シート(硬化後の樹脂シート)の誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した樹脂シートは、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0073】
[銅箔の表面粗さの測定]
触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、商品名;サーフコーダET−3000)を用い、Force;100μN、Speed;20μm、Range;800μmの測定条件によって求めた。なお、表面粗さの算出は、JIS−B0601‐2001に準拠した方法により算出した。
【0074】
[伝送損失の測定]
伝送特性の評価は、銅張積層板を回路加工し、特性インピーダンスを50Ωとしたマイクロストリップ線路を回路加工したサンプルを使用し、回路加工した側(伝送線路側)にカバーレイを熱圧着した評価サンプルを使用した。SOLT法(SHORT−OPEN−LOOD−Thru)にて校正したベクトルネットワークアナライザにより、所定の周波数領域でSパラメータを測定することにより、S21(挿入損失)で評価を行った。なお、測定に使用した評価サンプルは、温度;24〜26℃、湿度;45〜55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0075】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
(A)ポリイミド絶縁層の原料
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
BAPP:2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
N−12:ドデカン二酸ジヒドラジド
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
K−1:タルク、日本タルク株式会社製、形状;鱗片状、平均粒子径;6.6μm
【0076】
(B)銅箔
銅箔(1):電解銅箔、厚さ;12μm、ポリイミド絶縁層側の表面粗度Rz;0.9μm
【0077】
(C)カバーレイフィルム
カバーレイフィルム(1):材質;ポリイミド、厚さ;12.5μm)、接着剤層(材質;エポキシ樹脂、厚さ;15μm
カバーレイフィルム(2):材質;ポリイミド、厚さ;12.5μm)、接着剤層(材質;エポキシ樹脂、厚さ;25μm
【0078】
<ポリイミド絶縁層用の樹脂合成>
実施例に用いたポリイミド絶縁層の形成にあたり、使用したポリアミド酸の合成は、以下の合成例1〜6によるものである。
【0079】
合成例1
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、5.06gのDDA(0.0095モル)、18.12gのm‐TB(0.085モル)及び255gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、5.50gのBPDA(0.019モル)及び16.31gのPMDA(0.075モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。ポリアミド酸溶液aにおける固形分濃度は15重量%であり、溶液粘度は29,600cpsであった。
【0080】
合成例2〜6
表1に示す原料組成とした他は、合成例1と同様にしてポリアミド酸溶液b〜fを調製した。
【0081】
【表1】
【0082】
<カバーレイフィルムの接着剤層用の樹脂合成>
実施例に用いたカバーレイフィルムの接着性ポリイミド層の形成にあたり、使用したポリアミド酸の合成は、以下の合成例7〜9によるものである。
【0083】
合成例7
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、44.98gのBTDA(0.139モル)、75.02gのDDA(0.140モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間良く混合して、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4.5時間加熱、攪拌し、112gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド接着剤溶液gを得た。得られたポリイミド接着剤溶液gにおける固形分は29.1重量%であり、粘度は7,800cpsであった。また、ポリイミド接着剤溶液gの重量平均分子量(Mw)は87,700であった。
【0084】
合成例8
合成例7で得られたポリイミド接着剤溶液bを34.4g(固形分として10g)と0.7gのN−12および5.0gのK−1を配合し、1.297gのN−メチル−2−ピロリドンと3.869gのキシレンを加えて希釈してポリイミド接着剤溶液hを得た。
【0085】
合成例9
合成例7で得られたポリイミド接着剤溶液gを34.4g(固形分として10g)と1.25gのN−12および2.5gのExolit OP935(クラリアントジャパン株式会社製)を配合し、1.297gのN−メチル−2−ピロリドンと3.869gのキシレンを加えて希釈してポリイミド接着剤溶液iを得た。
【0086】
<回路基板の作製>
実施例及び比較例に用いた回路基板の作製は、以下の作製例1〜3によるものである。
【0087】
[作製例1]
銅箔(1)に、ポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが約2〜4μmとなるように均一に塗布した後、85℃〜110℃まで段階的な加熱処理にて溶媒を除去した。次に、その上に、ポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが、約42〜46μmとなるように均一に塗布し、85℃〜110℃まで段階的な加熱処理にて溶媒を除去した。更に、その上に、ポリアミド酸組成物dを硬化後の厚みが約2〜4μmとなるように均一に塗布した後、85℃〜110℃まで段階的な加熱処理にて溶媒を除去した。このようにして、3層のポリアミド酸層を形成した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、金属張積層体1’を得た。得られた金属張積層体1’の樹脂層側に、銅箔(1)を重ね合わせ、温度340℃、圧力6.7MPaの条件で15分間熱圧着して、金属張積層体1を得た。得られた金属張積層体1について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔の片面に対して所定のパターンの配線加工を形成し、回路配線板1を得た。
【0088】
[作製例2]
ポリアミド酸溶液dの代わりに、ポリアミド酸溶液eを用いたこと、及びポリアミド酸溶液aの代わりに、ポリアミド酸溶液bを用いたこと以外、作製例1と同様にして、回路配線板2を得た。
【0089】
[作製例3]
ポリアミド酸溶液dの代わりに、ポリアミド酸溶液fを用いたこと、及びポリアミド酸溶液aの代わりに、ポリアミド酸溶液cを用いたこと以外、作製例1と同様にして、回路配線板3を得た。
【0090】
<カバーレイフィルムの作製>
実施例に用いたカバーレイフィルムの作製は、以下の作製例4〜6によるものである。
【0091】
[作製例4]
合成例8で得られたポリイミド接着剤溶液hを乾燥後の厚みが約25μmとなるようにポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名;カプトン100ENS、縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)の片面に塗布した後、80℃で15分間加熱乾燥した。更に、180℃で2時間の熱処理を行い、完全に溶剤の除去を行うことでカバーレイフィルム1を得た。
【0092】
[作製例5]
合成例9で得られたポリイミド接着剤溶液iを用いたこと、及び乾燥後の厚みが約30μmとなるように塗布したこと以外、作製例4と同様にして、カバーレイフィルム2を得た。
【0093】
[作製例6]
合成例9で得られたポリイミド接着剤溶液iを用いたこと以外、作製例4と同様にして、カバーレイフィルム3を得た。
【0094】
合成例2で得られたポリアミド酸溶液bを厚さ12μmの電解銅箔の片面(表面粗さRz;0.9μm)に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結した。得られた金属張積層体について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔のエッチング除去を行なったフィルム上に、合成例9で得られたポリイミド接着剤溶液iを乾燥後の厚みが約25μmとなるように塗布した後、80℃で15分間加熱乾燥した。更に、180℃で2時間の熱処理を行い、完全に溶剤の除去を行うことでカバーレイフィルム4を得た。
【0095】
[実施例1]
回路配線板1の配線上にカバーレイフィルム1の接着性ポリイミド層が接するように積層後、180℃で2時間、2MPaの圧力をかけて圧着することで回路基板1を作製した。
【0096】
[実施例2〜4]及び[比較例1〜2]
回路配線板とカバーレイフィルムの種類が表2及び表4に示す組み合わせであること以外は、実施例1と同様に回路基板2〜6を作製した。なお、表4におけるカバーレイフィルム5は、カバーレイフィルム(1)を意味し、カバーレイフィルム6は、カバーレイフィルム(2)を意味する。
【0097】
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果をまとめて表2〜表5にそれぞれ示す。なお、表中の「イミド基濃度の差」は、接着性ポリイミド層(A1)におけるイミド基濃度と、接着性ポリイミド層(C2)におけるイミド基濃度との差の意味である。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。