【実施例1】
【0032】
本発明の一実施例に係る形状最適化結果表示装置を
図1に示す。
本実施例に係る形状最適化結果表示装置は、
図1に示すように、構造最適化装置10、感度解析装置20、色濃淡変換装置30及び表示器40とからなる。
【0033】
構造最適化装置10、感度解析装置20及び色濃淡変換装置30は、コンピュータ60にインストールされたソフトウェアにより実現されるものであり、コンピュータ60には入力装置50が付属している。
構造最適化装置10は、構造最適化解析を行う装置であり、背景技術の欄に記載した様々な従来技術が適用可能である。
【0034】
具体的には、設計者が与えた設計変数に基づいて形状を定義し、その設計変数値(パラメータ)を変化させて最適形状を探索するパラメータ最適化、設計変数を与えずに、形状を表現して最適化を行うトポロジー最適化である。トポロジー最適化としては、例えば、on/off等の手法がある。
ここでは、構造最適化解析の一例として、有限要素法(Finite Element Method:FEM)を用いた場合について説明する。有限要素法は、構造物を複数の有限の要素にメッシュ状(格子状)に分割して数値解析を行う方法である。構造物として、例えば、埋め込み磁石(Interior Permanent Magnet:IPM)モータを考える。
【0035】
IPMモータは、永久磁石を回転子(ロータ)内に埋め込んだモータであり、マグネットトルクとリラクタンストルクを活用できる。IPMモータは、回転子の磁性コア内に設ける非磁性層(空隙)を適切に設計することにより、トルク特性を改善することができる。
有限要素法により、IPMモータの回転子を格子状に分割して、各要素に計算式を立てて、トルク特性(マグネットトルク+リラクタンストルク)が改善するようにする、つまり、トルク特性向上を目的とした構造最適化を行う。構造最適化により得られた最適化形状Aは、感度解析装置20に送られる。
【0036】
図3は、IPMモータの回転子(ロータ)1及び固定子(ステータ)2を示す部分断面図である。
図3に示す通り、回転子1の外周部分には、永久磁石(図示略)を埋め込むための長方形状スリット1aが配置され、その外周面には、非磁性層となる複数の空隙1b,1cが配置されている。また、固定子2にも、非磁性層となる複数の空隙2a,2bが配置されている。
図3は、トルク特性向上を目的とした構造最適化により得られた最適化形状として、複数の空隙1b,1c,2a,2bが配置されている。
【0037】
ここで、構造最適化解析の際に、有限要素法の各要素に立てられる計算式は、最適化する目的毎に異なり、目的関数と呼ばれる。ここでは、目的関数は、トルク特性を示す計算式(方程式)である。
目的関数としては、IPMモータの回転子の場合には、トルクリプルを示す計算式、ロータの電気的損失を示す計算式が使用できる。これらの特性を総合的に示す目的関数を使用することも可能である。
【0038】
感度解析装置20は、入力に対して、最適化する目的の性能にどのくらい敏感な応答があるかを調べる感度解析を行う装置である。即ち、外形線の形状を変更すると最適化解析の目的とした性能に影響を与える部分度合いである感度を調べる装置である。
例えば、構造最適化装置10で用いた有限要素法の各要素の計算式を微分して傾きを求め、この傾きが大きいほど感度が高いものとする。具体的な数式等については、[発明を実施するための形態]の欄を参照されたい。
【0039】
感度解析装置20で得られた感度Bは、構造最適化により得られた最適化形状Aと共に色濃淡変換装置30に送られる。
ここで、感度の高い部分の形状を変更すると最適化解析の目的としていた性能に予期せぬ影響を与えてしまい、最適化解析の効果が損なわれる場合がある。
【0040】
しかし、従来では、構造最適化により得られた最適化形状は、最適化解析の目的とした性能に与える影響を視覚的に把握できなかったため、開発・設計者が誤って感度の高い部分を手動で変更し、最適化解析の効果が損なわれる場合があった。
これに対し、本発明では、色濃淡変換装置30を使用することにより対処した。
【0041】
色濃淡変換装置30は、感度解析装置20で解析された感度Bに応じた、最適化形状Aにおける色の濃淡に変換する装置である。色濃淡変換装置30により変換された色の濃淡と共に最適化形状Cは、表示器40に送られる。
表示器40は、色濃淡変換装置30により変換された色の濃淡と共に最適化形状Cをコンター表示する機器である。
ここで、コンター表示とは、一般に、物理量の分布をカラーマップに基づいて表示することを言い、コンター表示された図面をコンター図という。等高線(等値線)と呼ばれることもある。
【0042】
ここで、[発明を実施するための形態]の欄に記載する通り、物性(磁性体領域)を増やすと、つまり、最適形状の外形線が形成している領域を増やすと、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化する所がある一方、逆に、物性を減らす、つまり、最適形状の外形線が形成している領域を減らすと、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化する所がある。特性Tが増えるか、減るかについては、感度Bに応じて判別できる。
そこで、前者、即ち、最適形状の外形線が形成している領域を増やすと、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化する所は、
図3に示すように、空隙1cの周辺の磁性体領域であり、第1の色(例えば、青色)の濃淡を強くする(濃度を濃くする)。
一方、後者、即ち、最適形状の外形線が形成している領域を減らすと、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化する所は、
図3に示すように、空隙1bの周辺の磁性体領域であり、第2の色(例えば、赤色)の濃淡を強くする(濃度を濃くする)。
但し、技術的制約により、
図3においては、第1の色、第2の色も、白黒のグラデーションにより同一で示している。
【0043】
要するに、第1の色が付された空隙1cの周辺の磁性体領域を増やし、第2の色が付された空隙1bの周辺の磁性体領域を減らし、つまり、空隙1bを広げると、最適化解析の目的とした特性Tが増える方向に変化することが視覚的に把握可能となる。一方、何れの色も付されていない領域は、最適化解析の目的とした特性Tと関係が少ない領域であり、空隙による軽量化も可能となる。
ここで、最適化解析の目的が複数あれば、それに応じて、コンター表示の色の数を増やすことができる。例えば、特性Tがトルク特性のときは、上述した通り、第1の色、第2の色をそれぞれ、青色、赤色とする。また、特性Tがトルクリプル低減のときは、第1の色、第2の色をそれぞれ、緑色、オレンジ色とする。更に、特性Tがロータの電気的損失のときは、第1の色、第2の色をそれぞれ、茶色、ピンク色とする。これら複数の特性Tについて、総合的にコンター表示することも可能である。
【0044】
本発明の一実施例に係る形状最適化結果表示方法について、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。
図2のフローチャートは、
図1に示す形状最適化結果表示装置により実現可能なものである。
先ず、
図2に示すように、構造最適化装置10により、構造最適化解析を行う(ステップS1)。有限要素法を用い、IPMモータの回転子につき構造最適化解析を行うと、
図3の最適化形状が得られる。
【0045】
次に、感度解析装置20により、最適化解析の目的とした性能に影響を与える部分度合いである感度を調べる(ステップS2)。例えば、構造最適化装置10で用いた有限要素法の各要素の計算式を微分して傾きを求め、この傾きが大きいほど感度が高いものとする。
引き続き、色濃淡変換装置30により、感度解析装置20で解析された感度Bに応じた、最適化形状Aにおける色の濃淡に変換する(ステップS3)。一例としては、
図3のように第1の色、第2の色でコンター表示する。
その後、表示器40により、色濃淡変換装置30により変換された色の濃淡と共に最適化形状Aを表示する(ステップS4)。一例としては、
図3のように第1の色、第2の色でコンター表示する。