【解決手段】本発明のパターンの製造方法は、ジアセチレン誘導体を含む光硬化性組成物からなる有機薄膜を形成する工程と、前記有機薄膜に、凸パターンを有する型の凸パターンを加圧接触させる工程と、前記有機薄膜に光を照射して、前記凸パターンを加圧接触させた領域の前記有機薄膜を硬化させる工程と、前記凸パターンと加圧接触させていない領域の前記有機薄膜を除去して、前記有機薄膜の硬化物からなるパターンを得る工程とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ジアセチレン誘導体は、一定以上の温度に加熱されると、光重合可能な結晶構造へと変化することが知られている(例えば特表2012−523013号参照)。これに対して、本発明者らは、ジアセチレン誘導体が、一定以上の圧力を受けると、結晶内の分子配列が変化し、光重合可能な結晶構造へと変化することを新たに見出した。
【0013】
具体的には、本発明者らは、ジアセチレン誘導体は、一定以上の圧力を受けない状態では、結晶構造は変化せず、200nm以上300nm以下(例えば254nm)の波長の光を照射しても分子内のジアセチレン部位は重合(硬化)しないが、一定以上の圧力を受けた後では、結晶構造が変化し、200nm以上300nm以下(例えば254nm)の波長の光を照射すると分子内のジアセチレン部位が重合(硬化)し、ポリジアセチレンへと変化することを見出した。そして、ジアセチレン誘導体からポリジアセチレン誘導体への分子構造の変化により、色調は、無色から青色に変化すると同時に、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒への溶解性も大きく低下することを見出した。
【0014】
このような特性を有するジアセチレン誘導体は、高解像度のナノプリントリソグラフィーのプロセスに適用することができる。具体的には、ジアセチレン誘導体を含む光硬化性組成物を、シリコン基板などに塗布して有機薄膜を形成し、ナノインプリントの型でパターン状に圧力をかけた後、波長250nm程度の光を照射すると、圧力をかけた部分のみを重合させることができる。一方、圧力をかけていない部分は、波長250nm程度の光を照射しても重合しないため、適当な溶媒で溶解除去することなどにより硬化パターンを形成することができる。さらに、色調の変化は、光重合反応を生じたことを示すため、加圧接触工程と光照射工程のプロセスが適切に行われていることを視覚的に確認しやすいという利点もある。
【0015】
このように、有機薄膜にパターン状に圧力を加えるだけでよく、型の凸パターンを有機薄膜に転写する必要がないため、得られるパターンにおいて、型分離に起因する欠陥が生じるのを抑制することができる。さらに、光照射後の有機薄膜は、圧力をかけた部分のみが硬化しているため、圧力をかけていない部分(未重合部)は、例えば有機溶媒で溶解させることにより選択的に除去することができる。これらの結果、高解像度のパターンを得ることができる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
[パターンの製造方法]
図1A〜Gは、本実施の形態に係るパターンの製造方法の一部を説明する断面図である。
図1A〜Gに示されるように、本実施の形態に係るパターンの製造方法は、1)基材10上に、光硬化性組成物からなる有機薄膜20を形成する工程(有機薄膜形成工程;
図1A参照)、2)有機薄膜20に、凸パターンを有する型30の凸パターン30Aを加圧接触させる工程(加圧接触工程;
図1B参照)、4)凸パターン30Aを、有機薄膜20から剥離する工程(型分離工程;
図1C参照)、5)有機薄膜20に光を照射して、凸パターン30Aを加圧接触させた領域の有機薄膜20を硬化させる工程(光照射工程;
図1D〜E参照)、および6)凸パターン30Aと加圧接触させていない領域の有機薄膜20を除去して、有機薄膜20の硬化物からなるパターン40を得る工程(除去工程;
図1F〜G参照)を有する。
【0018】
1)の工程(有機薄膜形成工程)について
本工程では、基材10上に、光硬化性組成物からなる有機薄膜20を形成する(
図1A参照)。
【0019】
基材10は、用途に応じて設定されればよく、特に制限されないが、例えばシート状またはフィルム状のものを用いることができる。基材10を構成する材料の例には、シリコン、石英、ガラス、サファイア、金属材料、セラミックス(例えばアルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素など)、樹脂材料(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン樹脂など)が含まれる。なお、基材10は、光硬化性組成物の硬化膜との密着性をより改善するために、表面処理が施されていてもよいし、表面密着層をさらに有していてもよい。
【0020】
有機薄膜20の形成は、例えば基材10上に光硬化性組成物を塗布した後、乾燥させることによって行うことができる。
【0021】
塗布方法の例には、スピンコート法、ディッピング法、スプレーコート法、ディスペンス法、インクジェット法、ロールトゥロール法、グラビア法、ダイコート法、バーコート法、カーテンコート法などが含まれる。乾燥方法の例には、乾燥炉や熱風送風機などの非接触加熱型の乾燥装置を用いる方法や、ホットプレートや熱ローラーなどの接触加熱型の乾燥装置を用いる方法などが含まれる。
【0022】
(光硬化性組成物)
光硬化性組成物は、ジアセチレン誘導体を含む。
【0023】
ジアセチレン誘導体は、下記式(1)で表される基を有する化合物である。
【化1】
【0024】
ジアセチレン誘導体は、ジアセチレンアミド化合物であることが好ましい。ジアセチレンアミド化合物は、ジアセチレンジアミド化合物であってもよいし、ジアセチレンモノアミド化合物であってもよい。ジアセチレンジアミド化合物は、下記式(1A)〜(1C)のいずれかで表されるジアセチレンジアミド化合物であることが好ましく、ジアセチレンモノアミド化合物は、下記式(1D)〜(1F)のいずれかで表されるジアセチレンモノアミド化合物であることが好ましい。
【化2】
【化3】
【0025】
式(1A)〜(1F)において、RおよびR’は、それぞれ炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキニル基、または炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換の芳香族基を表す。
【0026】
アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、いずれも直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素原子数は、1〜10であることがより好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが含まれる。アルケニル基の例には、エテニル基、プロペニル基などが含まれる。アルキニル基の例には、2−プロピニル基などが含まれる。芳香族基の例には、フェニル基、ナフチル基などが含まれる。
【0027】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基および芳香族基が有しうる置換基の例には、アルコキシ基やカルボキシル基などが含まれる。
【0028】
中でも、RおよびR’は、それぞれ炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基または炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基であることが好ましい。
【0029】
式(1A)〜(1F)において、mおよびnは、それぞれ1〜30の整数を表す。mおよびnは、それぞれ6〜16であることが好ましい。また、式(1A)〜(1C)において、2つのnは、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0030】
式(1A)または(1D)で表されるジアセチレン(ジまたはモノ)アミド化合物は、ジアセチレン(ジまたはモノ)カルボン酸化合物とアミン化合物(R―NH
2)とを反応させて得ることができる。
ジアセチレン(ジまたはモノ)カルボン酸化合物の例には、10,12−ドコサジイン二酸、9,11−エイコサジイン二酸、8,10−オクタデカジイン二酸、7,9−ヘキサデカジイン二酸、6,8−テトラデカジイン二酸、5,7−ドコサジイン二酸、4,6−デカジイン二酸、3,5−オクタジイン二酸、2,4−ヘキサジイン二酸などのジカルボン酸化合物;10,12−ペンタコサジイン酸、5,7−ドデカジイン酸などのモノカルボン酸化合物が含まれる。
アミン化合物(R―NH
2)の例には、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミンなどの飽和脂肪族炭化水素アミン;プロパルギルアミン、ジプロパルギルアミン、および1,1−ジメチルプロパルギルアミンなどの不飽和脂肪族炭化水素アミン;フェニルアミンなどの芳香族アミン;エタノールアミンなどのアルコールアミン;4−アミノブタン酸などのアミノカルボン酸などが含まれる。
【0031】
式(1B)または(1E)で表されるジアセチレン(ジまたはモノ)アミド化合物は、ジアセチレン(ジまたはモノ)アミン化合物とイソシアネート化合物(R−NCO)とを反応させて得ることができる。
ジアセチレン(ジまたはモノ)アミン化合物の例には、3,5−ドデカジイン−1,8−ジアミン、4,6−ドデカジイン−1,10−ジアミン、5,7−ドデカジイン−1,12−ジアミン、6,8−ドデカジイン−1,14−ジアミン、8,10−ドデカジイン−1,16−ジアミン、10,12−ドデカジイン−1,18−ジアミンなどのジアミン化合物;10,12−ペンタコサジイン−1−アミンなどのモノアミン化合物が含まれる。
イソシアネート化合物(R−NCO)の例には、メチルイソシアネート、エチルイソシアネートなどのアルキルイソシアネート;プロパルギルイソシアネートなどのアルキニルイソシアネートなどが含まれる。
【0032】
式(1C)または(1F)で表されるジアセチレン(モノまたはジ)アミド化合物は、ジアセチレン(モノまたはジ)アルコール化合物とイソシアネート化合物(R−NCO)とを反応させて得ることができる。
ジアセチレン(モノまたはジ)アルコール化合物の例には、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、3,5−オクタジイン−1,8−ジオール、4,6−デカジイン−1,10−ジオール、5,7−ドデカジイン−1,12−ジオール、1,6−ビス−(4−メトキシ−フェニル)−1,6−ジフェニル−ヘキサ−2,4−ジイン−1,6−ジオール、2,7−ジメチル−3,5−オクタジイン−2,7−ジオール、1,1,1,8,8,8−ヘキサフェニル−オクタ−3,5−ジイン−2,7−ジオールなどのジアルコール化合物;10,12−ペンタコサジイン−1−オール、2,4−ヘプタデカジイン−1−オールなどのモノアルコール化合物が含まれる。
イソシアネート化合物(R−NCO)の例には、前述と同様のものが含まれる。
【0033】
中でも、ジアセチレンジアミド化合物が好ましく、式(1A)〜(1C)で表されるジアセチレンジアミド化合物がより好ましく、圧力を加えた部分と圧力を加えていない部分との光重合性の違いが大きい観点から、式(1A)で表されるジアセチレンジアミド化合物がさらに好ましい。式(1A)で表されるジアセチレンジアミド化合物の例には、ジオクチルドコサ−10、12−ジインジアミド、ジプロパギルドコサ−10、12−ジインジアミドなどが含まれる。
【0034】
ジアセチレン誘導体の含有量は、光硬化性組成物に含まれる固形分の全質量(有機薄膜20の全質量)に対して50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、100質量%であってもよい。ジアセチレン誘導体の含有量が一定量以上であると、光硬化性組成物を加圧接触後の光照射により十分に硬化させやすい。
【0035】
光硬化性組成物は、必要に応じてジアセチレン誘導体以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、溶媒や樹脂、添加剤が含まれる。
【0036】
溶媒は、水または有機溶媒が含まれる。有機溶媒の例には、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコール、t−ブチルアルコールなどが含まれる。
【0037】
樹脂の例には、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、セルロース、およびアクリル系樹脂などが含まれる。
【0038】
添加剤の例には、着色剤、酸化防止剤、増感剤、界面活性剤、および安定剤などが含まれる。
【0039】
有機薄膜20の厚みは、用途に応じて適宜決定すれば良く、特に制限されないが、通常、5nm以上5μm以下であることが好ましく、5nm以上1μm以下であることがより好ましい。有機薄膜20の厚みが一定以上であると、厚みが一定以上のレジストパターンを形成しやすい。
【0040】
2)の工程(加圧接触工程)について
本工程では、有機薄膜20の表面に、凸パターン30Aを有する型(モールド)30の凸パターン30Aを加圧接触させる(
図1B参照)。
【0041】
凸パターン30Aの平面形状は、用途に応じて適宜設定され、特に制限されないが、例えばライン状、スクエア状、ドット状、柱状、レンズ状、ピラミッド状などでありうる。凸パターン30Aがライン状である場合、凸パターン30Aの線幅は、通常、5nm以上1mm以下であることが好ましく、5nm以上100μm以下であることがより好ましく、5nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
型30を構成する材料は、求められる強度と加工精度を有するものであればよく、特に制限されない。型30を構成する材料の例には、ガラスや石英、透明樹脂(例えばPMMAやポリカーボネート樹脂)などの光透過性を有する材料や;セラミック、SiC、シリコン、窒化シリコン、多結晶シリコン、Ni,Cr、Cuなどの金属材料などの光透過性を有しない材料が含まれる。ただし、凸パターン30Aを有機薄膜20に加圧接触させた状態で光照射を行う場合(後述の
図2A〜E参照)は、型30を介して有機薄膜20に光照射できるようにする観点から、型30を構成する材料は、光透過性を有する材料であることが好ましい。
【0043】
加圧接触時に有機薄膜20に加える圧力は、有機薄膜20に含まれるジアセチレン誘導体が、光重合可能な結晶構造に変化しうる程度であればよく、特に制限されない。加圧接触時に有機薄膜20に加わる圧力は、ジアセチレン誘導体の種類にもよるが、例えば1MPa以上20MPa以下であることが好ましく、6MPa以上10MPa以下であることがより好ましい。また、加圧接触時に有機薄膜20に加える圧力は、凸パターン30Aによって有機薄膜20が実質的に変形しない程度でありうる。凸パターン30Aによって有機薄膜20が実質的に変形しないとは、凸パターン30Aが有機薄膜20に食い込まないか、または凸パターン30Aの先端部のみ(例えば凸パターン30Aの表面から凸パターン30Aの高さの30%以下)が有機薄膜20に食い込む程度であることをいう。
【0044】
加圧接触させる時間は、有機薄膜20に含まれるジアセチレン誘導体が、光重合可能な結晶構造に変化しうる程度であればよく、特に制限されないが、例えば40秒間以下としうる。
【0045】
加圧接触は、例えば凸パターン30Aを有する型30を装着した加圧装置を用いて行うことができる。
【0046】
このような加圧接触により、凸パターン30Aを加圧接触させた領域20Aの有機薄膜20では、ジアセチレン誘導体の結晶構造が、光重合可能な結晶構造へと変化する。一方、凸パターン30Aを加圧接触させていない領域(領域20A以外の領域)の有機薄膜20では、ジアセチレン誘導体の結晶構造は、変化しない。
【0047】
3)の工程(型分離工程)について
本工程では、型30を、有機薄膜20から離す(
図1C参照)。
【0048】
4)の工程(光照射工程)について
本工程では、有機薄膜20に光を照射する。それにより、凸パターン30Aを加圧接触させた領域20Aの有機薄膜20を硬化させる(
図1D参照)。
【0049】
照射する光の波長は、200nm以上300nm以下であることが好ましく、230nm以上280nm以下であることがより好ましい。光照射量は、領域20Aの有機薄膜20に含まれるジアセチレン誘導体を十分に硬化させうる程度であればよい。
【0050】
光源は、上記範囲の波長の光を照射可能なものであればよく、特に制限されないが、例えば紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯などの紫外線照射手段を用いることができる。
【0051】
それにより、凸パターン30Aを加圧接触させた領域20Aの有機薄膜20では、ジアセチレン誘導体が重合(硬化)し、ポリジアセチレンとなる。それにより、領域20Aの有機薄膜20は硬化するとともに、当該ジアセチレン誘導体の重合(硬化)反応に伴い、変色する(
図1E参照)。一方、凸パターン30Aを加圧接触させていない領域(領域20A以外の領域)の有機薄膜20では、ジアセチレン誘導体は重合(硬化)しない。それにより、領域20A以外の領域の有機薄膜20は硬化せず、変色もしない(
図1E参照)。
【0052】
5)の工程(除去工程)について
本工程では、凸パターン30Aを加圧接触させていない領域の有機薄膜20(未重合部)を除去して、有機薄膜20の硬化物からなるパターン40を得る(
図1FおよびG参照)。
【0053】
凸パターン30Aを加圧接触させていない領域の有機薄膜20を除去する方法は、特に制限されないが、例えば有機溶媒に溶解させて除去する方法や、アルカリ水溶液に溶解させて除去する方法でありうる。本実施の形態では、簡単かつ短時間での除去が可能である観点から、有機薄膜20を有機溶媒50と接触させて、凸パターン30Aを加圧接触させていない領域の有機薄膜20を有機溶媒50に溶解させて除去する。有機溶媒50と接触させる方法は、有機薄膜20に有機溶媒50を塗布する方式(塗布方式)であってもよいし、有機薄膜20を有機溶媒50に浸漬させる方式(ディップ方式)であってもよい。
【0054】
用いられる有機溶媒50は、凸パターン30Aと加圧接触させた領域20A以外の有機薄膜20(未重合部)を溶解除去できるものであればよく、その例には、メタノール、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、エタノールなどの有機溶媒が含まれる。用いられるアルカリ水溶液の例には、水酸化テトラメチルアンモニウムや水酸化テトラエチルアンモニウムの水溶液が含まれる。
【0055】
このように、有機薄膜20を有機溶媒50と接触させると、凸パターン30Aを加圧接触させていない領域(領域20A以外の領域)の有機薄膜20は硬化していないため、有機溶媒50に溶解し、除去される。一方、凸パターン30Aを加圧接触させた領域20Aの有機薄膜20は硬化しているため、有機溶媒50には溶解せず、そのまま残る。その結果、領域20Aの有機薄膜20の硬化物からなるパターン40を得ることができる(
図1G参照)。
【0056】
得られたパターン40は、各種微細加工を行うためのレジストパターン(例えば半導体装置の微細加工製造する際に用いられるレジストパターンなど)や、ナノインプリント用のレプリカ型として用いることができる。
【0057】
[効果]
以上説明したように、本実施の形態に係るパターンの製造方法では、型30の凸パターン30Aを、有機薄膜20を実質的に変形させない程度に加圧接触させるだけで、加圧接触させた領域20Aの有機薄膜20に含まれるジアセチレン誘導体の結晶構造を、光重合可能な結晶構造へと変化させることができる。それにより、型30が有機薄膜20とくっつきにくくすることができ、得られるパターン40に欠陥が生じるのを抑制することができる。また、有機薄膜20のうち、凸パターン30Aを加圧接触させた領域20Aとそうでない領域との間で、ジアセチレン誘導体の光重合挙動を大きく異ならせることができる。それにより、光照射後の未重合部の除去が容易となる。これらの結果、高解像度のパターン40を得ることができる。
【0058】
[半導体装置の製造方法]
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、1)前述のパターンの製造方法により、基材上にパターンを形成する工程と、2)得られたパターンをマスク(レジストパターン)として、基材をエッチングする工程とを有する。
【0059】
1)の工程における基材は、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコーン、酸化シリコン、アモルファスシルコンなどの半導体作製用の基板でありうる。
【0060】
2)の工程におけるエッチング方法は、エッチング液を用いたウェットエッチングであってもよいし、ドライエッチングであってもよい。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、塩化第二鉄/塩酸系、塩酸/硝酸系、臭化水素酸系などを用いることができる。ドライエッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)またはプラズマエッチング(PE)でありうる。ドライエッチングで用いられるエッチャントガスとしては、基材の種類に適合するものが用いられる。例えば、a−Si/n+やs−Si基板のエッチングには、四フッ化炭素(塩素)と酸素の混合ガス、四フッ化炭素(六フッ化硫黄)と塩化水素(塩素)の混合ガスなどが用いられる。
【0061】
[効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、欠陥が少なく、高解像度のパターンをエッチングマスク(レジストパターン)として用いて、基材をエッチングする。それにより、基材を高解像度にエッチングすることができる。
【0062】
[変形例]
なお、本実施の形態では、型30の凸パターン30Aを有機薄膜20から離した後、有機薄膜20に光照射する例(型分離工程を、加圧接触工程と光照射工程の間で行う例)を示したが、これに限定されず、型30の凸パターン30Aを有機薄膜20から離すことなく、そのまま有機薄膜20に光照射してもよい。
【0063】
図2A〜Eは、変形例に係るパターンの製造方法の一部を示す断面図である。
図2A〜Eに示されるように、凸パターン30Aを有機薄膜20に加圧接触させた後(
図2B参照)、凸パターン30Aを加圧接触させたまま、光照射を行ってもよい(
図2C参照)。すなわち、型分離工程は、光照射工程の後に行ってもよい。その場合、型30を構成する材料は、型30を介して有機薄膜20に光照射できるようにするために、光透過性を有する材料であることが好ましい。そして、光照射を行った後、型30の凸パターン30Aを有機薄膜20から離せばよい(
図2D参照)。
【0064】
また、本実施の形態では、有機薄膜20の基材10とは反対側の面に光を照射する例を示したが、これに限定されない。例えば、基材10が、光透過性を有する材料で構成されている場合、有機薄膜20の基材10側の面に(基材10を介して)光を照射してもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、加圧接触工程と光照射工程とを別工程で行う例を示したが、これに限定されず、加圧接触工程と光照射工程とを同時に行ってもよい。それにより、製造効率を高めることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
1.ジアセチレン誘導体の合成・評価
1−1.ジアセチレン誘導体の合成
<ジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミドの合成>
10、12―ドコサジイン二酸0.7gを、オクチルアミン1.3gを塩化メチレン40mlに溶かした溶液に加えた。得られた溶液に、縮合剤であるWSCI・HCl1.9gと触媒量のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加え、室温下で1日撹拌した。得られた溶液を分液ロートに入れ、1Mの塩酸を水層として抽出を行い、有機層を回収した。その後、回収した有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出し、さらに純水で洗った(分液ロートを使用)。有機層に硫酸マグネシウムを加えて残留水を除き、ろ過後に、有機溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて除去した。残った化合物から、以下の再結晶を行い、白色の固体(ジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミド)を得た。
すなわち、上記化合物を加熱しながらクロロホルムに溶解し、そこに10体積%のメタノールを含む加熱したヘキサンをゆっくり加えた。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した固体をろ別して、減圧下で乾燥させて、0.7gの白色の固体(ジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミド)を得た(収率60%)。
【0068】
得られた白色固体の
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)の結果は、以下の通りである。δ(ppm) 5.39 (s, 2H), 3.47 (d, 2H), 3.20-3.25 (m, 4H), 2.21-2.25 (m, 4H), 1.26-1.61 (m, 50H), 0.87 (t, 6H)
【0069】
<ジプロパルギルドコサ−10,12−ジインジアミドの合成>
オクチルアミンの代わりに、プロパルギルアミンを用いた以外はジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミドの同様の方法で合成した。
すなわち、0.6gのプロパルギルアミンと、0.7gの10、12―ドコサジイン二酸と、1.9gの縮合剤WSCI・HClと、触媒量のN,N−ジイソプロピルエチルアミンとを混合および撹拌し、有機層から化合物を回収し、再結晶で精製して、0.55gの白色固体(ジプロパルギルドコサ−10,12−ジインジアミド)を得た。
【0070】
得られた白色固体の
1H−NMR(400MHz、CDCl
3)の結果は、以下の通りである。δ (ppm) 5.60 (s, 2H), 4.04-4.06 (q, 4H), 3.48 (d, 2H), 2.16-2.25 (m, 8H), 1.58-1.64 (m, 4H), 1.46-1.52 (m, 4H), 1.36 (m, 4H), 1.29 (s, 12H).
【0071】
1−2.ジアセチレン誘導体の評価
<変色評価1>
得られたジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミドの粉末(白色固体)を、2つのガラス瓶にそれぞれ同量ずつ封入し、サンプル1および2とした。
【0072】
次いで、これらの2つのサンプルのうち、一方のサンプル1は、ペイントシェーカーで圧力を加えた後、波長254nmの光を一定時間照射した。他方のサンプル2には、ペイントシェーカーによる圧力を加えなかった以外はサンプル1と同様にして、波長254nmの光を、約1cm離れた距離から、4W放電管のハンディーUVランプ(1mW/cm
2)で5分間照射した。光照射後のそれぞれのサンプルの粉末の色を目視観察した。その結果を、
図3Aに示す。
【0073】
図3Aは、光照射後のサンプルの粉末の様子を示す写真である。
図3Aに示されるように、圧力を加えたサンプル1(
図3Aの左側参照)の粉末は、青色に変色したのに対し、圧力を加えなかったサンプル2(
図3Aの右側参照)の粉末は、変色せず、白いままであった。
【0074】
<変色評価2>
白い紙の上に、ジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミドの粉末(白色固体)を、所定の領域に散布した。次いで、上記粉末を散布した領域の一部に、棒で圧力をかけながらひっかいた後、波長254nmの光を、約1cm離れた距離から、4W放電管のハンディーUVランプ(1mW/cm
2)で5分間照射した。
【0075】
図3Bは、散布した粉末の光照射後の様子を示す写真である。
図3Bに示されるように、粉末を散布した領域のうち、圧力を加えた領域のみ青色に変色した。
【0076】
これらの結果から、ジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミドは、圧力が加えられることで、結晶構造が変化し、光照射によって光重合して(ポリジアセチレンとなり)、変色することがわかる。
【0077】
2.パターンの製造および評価
(実施例1)
<光硬化性組成物の調製>
ジアセチレン誘導体としてジオクチルドコサ−10,12−ジインジアミドを、溶媒としてクロロホルムに、1質量%の濃度になるように均一に分散させて、光硬化性組成物を得た。
【0078】
<パターンの製造>
得られた光硬化性組成物を、基材であるシリコンウェハー上に、スピンコーターを用いて、回転数100rpm、回転時間40秒の条件でコーティングした。次いで、得られた塗膜を有する基材を、40℃程度以下の温度のホットプレート上に置いて、コーティング膜を乾燥させて、厚み0.5μmの有機薄膜を得た(有機薄膜形成工程)。
【0079】
得られた有機薄膜の表面に、「HU」の文字からなる凸パターン(文字部分が凸パターン、背景部分が凹パターン、凸パターンの線幅は1mm)を有する金属モールドを装着した加圧装置により、金属モールドの凸パターンを、8MPaの圧力で20秒間接触させた(加圧接触工程)。その後、圧力を解除し、金属モールドを有機薄膜から外して(型分離工程)、有機薄膜の表面の全体に、低圧水銀灯により波長254nmの光を2分間照射した(光照射工程)。
【0080】
図4Aは、光照射後、メタノールでウェットエッチングする前の有機薄膜の写真であり、
図4Bは、光照射後、メタノールでウェットエッチングした後の有機薄膜の写真である。
【0081】
図4Aに示されるように、光照射中に、金属モールドの凸パターンを加圧接触させた部分(文字部分)の有機薄膜は青色に変化し、凸パターンを加圧接触させていない部分(背景部分)の有機薄膜の色は変化せず白いままであった。
【0082】
さらに、得られた有機薄膜を、メタノールに浸漬させたところ、
図4Bに示されるように、金属モールドの凸パターンと接触していなかった部分の有機薄膜(変色しなかった部分、背景部分)は溶解し、除去されるのに対し、金属モールドの凸パターンを加圧接触させた部分の有機薄膜の硬化物(青色に変色した部分、文字部分)は、メタノールに溶解せずに残り、当該有機薄膜の硬化物からなるパターン(文字パターン)が得られた(除去工程)。このように、解像度の高い、有機薄膜の硬化物からなるパターンが得られることを確認した。