【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0010】
<本発明の特徴>
本発明の容器詰めバジルソースは、バジルの葉及び茎を合わせたバジル細断物を10〜80%(生換算)、食塩を0.1〜10%、食用油脂を15〜70%含有する容器詰めバジルソースであって、
該バジルソースをビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、
L値70以下の割合が3%以上15%以下であり、
a値0未満の割合が70%以上である、
特徴を有する。
【0011】
<バジル>
本発明の容器詰めバジルソースに用いるバジルは、生のバジルであり、収穫後、乾燥、細断、粉砕等の形態加工や加熱処理がなされていないものを指す。上記以外の処理、例えば洗浄等は行ってもよい。また、バジルは、時間の経過とともに変色するため、本発明に用いるバジルは収穫後24時間以内のものであるとよい。
【0012】
また、前記バジルは、通常用いる葉だけでなく、あえて特定量の茎を併用している。バジルの葉及び茎の割合は、葉1部に対して茎が生換算で0.05〜0.5部であるとよく、さらに0.1〜0.3部であるとよく、さらに0.15〜0.25部であるとよりよい。葉に対する茎の割合が前記範囲であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰めバジルソースが得られやすい。
【0013】
前記バジルは、本発明の容器詰めバジルソース中に生バジル換算で10〜80%配合するとよく、さらには30〜70%配合するとよく、40〜70%配合するとよりよい。生バジルの配合量が前記範囲であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有する容器詰バジルソースが得られやすい。
【0014】
<食用油脂>
本発明のバジルソースは食用油脂を配合する。配合する食用油脂としては、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、精製魚油等の動物油脂があるが、このうちバジルの良好な香りを感じやすいため、菜種油または大豆油を用いるとよい。
また、食用油脂を配合することにより、細断した生バジルをソース状に仕上げると同時に、ソース中の生バジルが酸化して退色したり、香りが消失してしまうのを防止することができる。本発明の容器詰めバジルソース中の食用油脂の配合量は、15〜70%であるとよく、さらに30〜60%であるとよい。食用油脂の配合量が前記範囲であることにより、バジルの褐変を抑制しやすい。
【0015】
<食塩>
本発明の容器詰めバジルソースは食塩を配合する。食塩は、バジルソースに塩味を付けると同時に、後に示す試験例にも示すように、バジルソース中の細断した生バジルが鮮やかな緑色に発色させるために配合する。
本発明の容器詰めバジルソース中の食塩の配合量は、0.1〜10%であるとよく、さらに0.5〜7%であるとよく、さらに1〜5%であるとよりよい。食塩の配合量が前記範囲であることにより、生バジルが鮮やかな緑色を保持できるとともに、塩味が強くなりすぎず、様々な食品に利用しやすい。
【0016】
<その他の原料>
本発明の容器詰めバジルソースは、細断した生バジル、食塩及び食用油脂の他、本発明の効果を損なわない範囲でその他の原料を配合することができる。例えば、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガムなどのガム質、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した加工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類、澱粉分解物、デキストリン、デキストリンアルコール、オリゴ糖、オリゴ糖アルコールなどの糖類、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖などの各種調味料、各種蛋白質やこれらの分解物、酸化防止剤などが挙げられる。
【0017】
<容器詰めバジルソース>
本発明の容器詰めバジルソースは、少なくとも上述のバジル、食用油脂、食塩を含有するものであり、様々な料理に生バジル本来の鮮やかな緑色と良好な風味を付与することができるソースであり、そのまま各種ソースとして用いることもできるが、その他原料と混合することにより、パスタソースや調理ソース等のバジルソース含有食品を調製することもできる。
その場合、生バジル本来の鮮やかな緑色及び良好な香りを感じやすいことから、バジルソース含有食品に含まれる容器詰めバジルソースの含有量は20〜50%であるとよい。
また、本発明の容器詰めバジルソースは、生バジル本来の鮮やかな緑色と良好な風味を長期間保持するために冷凍されたものであるとよい。
【0018】
<容器詰めバジルソースの色差>
本発明の容器詰めバジルソースは、ビジュアルアナライザーで色の種類と各色が表面積に占める割合を分析した時に、L値70未満の割合が3%以上15%以下であり、さらに3%以上10%以下であるとよく、5%以上10%以下であるとよりよい。
L値は色の明るさを表す指標であり数値が高いほど明るいことを表すが、L値70未満の割合が前記範囲未満の場合、バジルソース全体の明るみが強すぎて、バジル特有の鮮やかな緑色を呈することができない。逆に、L値70未満の割合が前記範囲より多い場合は、全体が暗い緑色になり、好ましくない。
【0019】
同様に本発明の容器詰めバジルソースは、a値0未満の割合が70%以上であり、さらに75%以上であるとよく、80%以上95%以下であるとよりよい。
a値は色味の指標であり、プラス側が赤色、マイナス側が緑色を表す。
したがって、a値が前記範囲未満の場合、バジルの褐変等により赤色が強くなっており、バジル特有の鮮やかな緑色を呈さない
a値及びL値の両方の値が前記範囲であることにより、初めてバジル特有の鮮やかな緑色を呈するものとなる。
【0020】
ここでL値とは、ビジュアルアナライザーで求められた色番号から以下の計算によって求めたCIE Lab表色系(D65)のL値である。具体的には、下記の(1)〜(4)の計算式によって求められる。
【0021】
(1)色番号に設定されているsRGB値(D65)(R、G、B)を255で除し、0〜1の実数(R’、G’、B’)に変換する。
R’=R/255
G’=G/255
B’=B/255
(2)R’、G’、B’を以下のガンマ補正の逆変換により、リニアsRGB値(R、G、B)に変換する。
R=(R’+0.055)/1.055)2.4
G=(G’+0.055)/1.055) 2.4
B=(B’+0.055)/1.055) 2.4
(3)リニアsRGB値から、CIE XYZ表色系に変換してY値を求める。
Y= 0.21263×R + 0.715169×G + 0.072192×B
(4)CIE XYZ表色系のY値からCIE Lab表色系に変換しL値(D65)を求める。
L値=116(Y/1.00)1/3−16
【0022】
同様にa値とは、ビジュアルアナライザーで求められた色番号から以下の計算によって求めたCIE Lab表色系(D65)のa値である。具体的には、下記の(1)〜(4)の計算式によって求められる。
【0023】
(1)色番号に設定されているsRGB値(D65)(R、G、B)を255で除し、0〜1の実数(R’、G’、B’)に変換する。
R’=R/255
G’=G/255
B’=B/255
(2)R’、G’、B’を以下のガンマ補正の逆変換により、リニアsRGB値(R、G、B)に変換する。
R=(R’+0.055)/1.055)2.4
G=(G’+0.055)/1.055) 2.4
B=(B’+0.055)/1.055) 2.4
(3)リニアsRGB値から、CIE XYZ表色系に変換してX値及びY値を求める。
X= 0.4124×R + 0.3576×G + 0.1805×B
Y= 0.21263×R + 0.715169×G + 0.072192×B
(4)CIE XYZ表色系のX値及びY値からCIE Lab表色系に変換しa値(D65)を求める。
a値=500(X/0.95045)1/3−1/3Y)
【0024】
<容器詰めバジルソースの製造方法>
本発明の容器詰めバジルソースの製造方法は、
生のバジルの葉及び茎を、食塩及び油脂と混合し、混合物を得る混合工程と、
前記混合物を細断し、細断物を得る細断工程と、
前記細断物を77〜84℃で加熱する加熱工程を含むものである。
【0025】
<混合工程>
混合工程は、上述のバジルと、食用油脂、食塩等の原料を混合する工程である。混合の方法は特に限定しないが、バジルに万遍なく食用油脂、食塩が付着すればよい。
【0026】
<細断工程>
前記混合工程で混合したバジル、食用油脂、食塩の混合物を、コミットロール等で細断し、バジル細断物を得る。前記バジル細断物の大きさは特に限定しないが、1〜6mm
2 程度に細断したものを用いるのが望ましい。細断物の大きさが前記範囲であることにより、バジルソースをパスタ等に振り掛けた際にバジルの存在感を感じやすく、またバジルの風味を感じやすくなる。
【0027】
<加熱工程>
加熱工程は、前記細断工程で得たバジル細断物を、77〜84℃で加熱するものであり、好ましくは78〜83℃で加熱するとよく、さらに80〜83℃で加熱するとよりよい。なお、前記温度で加熱するということは、バジル細断物の品温が前記範囲に加熱されていることを意味する。
加熱温度が前記範囲以下である場合、酵素の失活が不十分となり、保存によりバジルが黒く変色する。また、加熱温度が前記範囲以上である場合、加熱によりバジルが褐変し、いずれの場合も生バジル本来の鮮やかな緑色が失われる。
また、加熱時間は特に限定していないが、バジル中の酵素を失活させるために、前記加熱温度に達温すればよく、また、加熱時間の上限としては、バジル特有の鮮やかな緑色を呈するバジルソースが得られやすいことから20分以下であるとよく、さらに10分以下であるとよい。
【0028】
また、前記加熱工程において、加熱の方法は特に限定しないが、ポリプロピレン等の容器に充填密封後、熱湯等で加熱してもよいし、タンクやチューブ等で加熱した後、容器に充填してもよい。
【0029】
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
収穫当日の生バジルの葉400gと生バジルの茎80g(葉1部対する茎の割合は0.2部)を水洗した後、遠心分離機にて水切りし、これに食塩20gと菜種油500gを添加・混合し、これを細断機にかけてバジルの葉及び茎を2〜5mm
2に細断した。次いで得られた細断物をポリプロピレン製の容器に充填後、中心品温80℃に達温後、冷凍し、本発明の容器詰めバジルソース1kgを得た。
得られた容器詰めバジルソースについて、以下の条件で色差を測定した結果、L値70以下の割合は7%であり、a値0以下の割合は84%であった。
【0031】
<測定条件>
・測定装置:ビジュアルアナライザーIRIS 型番 VA300 (アルファ・モス社製)
カメラ:Basler_acA2500‐14gc
レンズ:Computer 5mm
・測定条件:バジルソース15gを直径9cmの円筒形容器に入れ、均一に広げて測定した。
照明モード:上下照明
<測定値>
・a値:値が小さくなるほど緑色が強くなることを示す。
・L値:値が大きくなるほど色が明るいことを示す。
【0032】
[実施例2]
加熱温度を78℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は5%以上10%以下であり、a値0以下の割合は80%以上であった。
【0033】
[実施例3]
加熱温度を83℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例3のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は5%以上10%以下であり、a値0以下の割合は80%以上であった。
【0034】
[比較例1]
加熱温度を75℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で比較例1のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は19%であり、a値0以下の割合は66%であった。
【0035】
[比較例2]
加熱温度を85℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で比較例2のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は7%以下であり、a値0以下の割合は69%であった。
【0036】
[試験例1]加熱温度の影響
加熱温度の違いがバジルソースの外観、風味に与える影響を検討するため、実施例1乃至3、比較例1及び2のバジルソースの外観、風味を以下の評価基準に基づいて、3名の専門パネラーにより評価した。
【0037】
<評価基準>
バジルソースの色調
○:鮮やかな緑色が維持されている。
△:やや変色が見られるが、問題のない程度である。
×:変色しており、緑色は維持されていない。
バジルソースの香り
○:生バジル特有の良好な香りが引き立っている。
△:生バジル特有の良好な香りはやや弱いが、問題のない程度である。
×:生バジル特有の良好な香りがほとんど感じられない。
【0038】
[表1]
【0039】
表1より、加熱温度が77〜84℃(実施例1乃至3)、特に80〜83℃(実施例1及び3)、であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有するバジルソースが得られることが分かる。
【0040】
[実施例4]
生バジルの葉と茎の割合を、葉1部に対して茎0.1部に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例4のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は9%であり、a値0以下の割合は87%であった。
【0041】
[実施例5]
生バジルの葉と茎の割合を、葉1部対して茎0.3部に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例5のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は5%であり、a値0以下の割合は79%であった。
【0042】
[比較例3]
生バジルとしてバジルの葉480gのみを用いた以外は実施例1と同様の方法で比較例3のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は17%であり、a値0以下の割合は63%であった。
【0043】
[比較例4]
生バジルとしてバジルの茎480gのみを用いた以外は実施例1と同様の方法で比較例4のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は0%であり、a値0以下の割合は76%であった。
【0044】
[試験例2]バジル原料の影響
バジル原料の違いがバジルソースの外観、風味に与える影響を検討するため、実施例4及び5、比較例3及び4のバジルソースの外観、風味を試験例1の評価基準に基づいて、3名の専門パネラーにより評価した。
【0045】
[表2]
【0046】
表1より、バジルの葉1部に対する茎の割合が0.05〜0.5部、特に0.1〜0.3部であることにより、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有するバジルソースが得られることが分かる。
【0047】
[実施例6]
収穫当日の生バジルの葉500gと生バジルの茎100g(葉1部対する茎の割合は0.2部)生バジルを600g、菜種油を350g、食塩50gを用いた以外は実施例1と同様の方法で実施例6のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は5%以上10%以下であり、a値0以下の割合は80%以上であった。
【0048】
[実施例7]
加熱時間を中心品温80℃で10分間に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例7のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は5%以上10%以下であり、a値0以下の割合は80%以上であった。
【0049】
[比較例5]
生バジルとしてバジルの葉500gのみを用いた以外は比較例1と同様の方法で比較例5のバジルソースを調製した。
得られたバジルソースのL値70以下の割合は22%であり、a値0以下の割合は58%であった。
【0050】
得られた実施例6、7及び比較例5の容器詰めバジルソースを試験例1の評価基準に基づいて評価した結果、実施例6及び7の容器詰めバジルソースは実施例1と同様に生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りが感じられるものであったが、比較例5の容器詰めバジルソースは、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持されていなかった。
【0051】
[調製例1]パスタソース
以下の配合に従い本発明の容器詰めバジルソースを含有するパスタソースを調製した。
<パスタソースの配合割合>
植物油 40%
解凍した実施例1の容器詰めバジルソース 25%
食塩 6%
砂糖 5%
パルミジャーノ・レッジャーノパウダー 4%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
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合計 100%
【0052】
得られた調製例1のパスタソースは、生バジル本来の鮮やかな緑色が保持され、良好な香りを有するものであった。