特開2020-11439(P2020-11439A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2020011439-銅張積層板 図000005
  • 特開2020011439-銅張積層板 図000006
  • 特開2020011439-銅張積層板 図000007
  • 特開2020011439-銅張積層板 図000008
  • 特開2020011439-銅張積層板 図000009
  • 特開2020011439-銅張積層板 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-11439(P2020-11439A)
(43)【公開日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】銅張積層板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20191220BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20191220BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20191220BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20191220BHJP
【FI】
   B32B15/04 A
   C23C28/02
   C25D7/06 A
   H05K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-134848(P2018-134848)
(22)【出願日】2018年7月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智治
(72)【発明者】
【氏名】下地 匠
(72)【発明者】
【氏名】西山 芳英
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F100
4K024
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB13B
4F100AB16B
4F100AB17C
4F100AB31B
4F100AK49A
4F100AT00A
4F100BA03A
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA44C
4F100EH66B
4F100EH71C
4F100GB43
4F100YY00C
4K024AA09
4K024AB04
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024CA02
4K024CA04
4K024CA06
4K024CA07
4K024CB13
4K024DB10
4K024GA02
4K024GA04
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA06
4K044BB06
4K044BC02
4K044CA13
4K044CA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化学研磨後のピンホールの発生を抑制できる銅張積層板の提供。
【解決手段】ベースフィルム11と、ベースフィルム11の表面に形成された金属層12と、金属層12の表面に形成された銅めっき被膜20とを備え、銅めっき被膜20のうち化学研磨による減膜後に残存する残存部に、不純物として塩素を含む高塩素濃度層21が含まれる銅張積層板1。残存部の厚さは、例えば0.4〜0.8μmである。高塩素濃度層21の塩素濃度は1×1019atoms/cm3以上であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの表面に形成された金属層と、
前記金属層の表面に形成された銅めっき被膜と、を備え、
前記銅めっき被膜のうち化学研磨による減膜後に残存する残存部に、不純物として塩素を含む高塩素濃度層が含まれる
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項2】
前記残存部の厚さは0.4〜0.8μmである
ことを特徴とする請求項1記載の銅張積層板。
【請求項3】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの表面に形成された金属層と、
前記金属層の表面に形成された銅めっき被膜と、を備え、
前記銅めっき被膜のうち前記金属層側の厚さ0.8μm以下の部分に、不純物として塩素を含む高塩素濃度層が含まれる
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項4】
前記高塩素濃度層の二次イオン質量分析法により測定した塩素濃度は1×1019atoms/cm3以上である
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の銅張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板に関する。さらに詳しくは、本発明は、フレキシブルプリント配線板(FPC)などの製造に用いられる銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話などには、樹脂フィルムの表面に配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板が用いられる。フレキシブルプリント配線板は、例えば、銅張積層板から製造される。
【0003】
銅張積層板の製造方法としてメタライジング法が知られている。メタライジング法による銅張積層板の製造は、例えば、つぎの手順で行なわれる。まず、樹脂フィルムの表面にニッケルクロム合金からなる下地金属層を形成する。つぎに、下地金属層の上に銅薄膜層を形成する。つぎに、銅薄膜層の上に銅めっき被膜を形成する。銅めっきにより、配線パターンを形成するのに適した膜厚となるまで導体層を厚膜化する。メタライジング法により、樹脂フィルム上に直接導体層が形成された、いわゆる2層基板と称されるタイプの銅張積層板が得られる。
【0004】
この種の銅張積層板を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する方法としてセミアディティブ法が知られている。セミアディティブ法によるフレキシブルプリント配線板の製造は、つぎの手順で行なわれる(特許文献1参照)。まず、銅張積層板の銅めっき被膜の表面にレジスト層を形成する。つぎに、レジスト層のうち配線パターンを形成する部分に開口部を形成する。つぎに、レジスト層の開口部から露出した銅めっき被膜を陰極として電解めっきを行ない、配線部を形成する。つぎに、レジスト層を除去し、フラッシュエッチングなどにより配線部以外の導体層を除去する。これにより、フレキシブルプリント配線板が得られる。
【0005】
セミアディティブ法において、銅めっき被膜の表面にレジスト層を形成するあたり、ドライフィルムレジストを用いることがある。この場合、銅めっき被膜の表面を化学研磨した後に、ドライフィルムレジストを貼り付ける。化学研磨により銅めっき被膜の表面に微細な凹凸をつけることで、アンカー効果によるドライフィルムレジストの密着性を高めている。しかし、銅めっき被膜の表面の凹凸が過剰であると、かえってドライフィルムレジストの密着性が悪化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−278950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化学研磨により銅めっき被膜を減膜する際に、導体層にピンホールが生じることがある。導体層にピンホールが存在すると、その上に形成された配線の厚さが部分的に薄くなる「窪み」、配線の幅が部分的に狭くなる「欠け」と称される外観不良の原因となる。また、ひどい場合には、配線が断線する。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、化学研磨後のピンホールの発生を抑制できる銅張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の銅張積層板は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に形成された金属層と、前記金属層の表面に形成された銅めっき被膜と、を備え、前記銅めっき被膜のうち化学研磨による減膜後に残存する残存部に、不純物として塩素を含む高塩素濃度層が含まれることを特徴とする。
第2発明の銅張積層板は、第1発明において、前記残存部の厚さは0.4〜0.8μmであることを特徴とする。
第3発明の銅張積層板は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に形成された金属層と、前記金属層の表面に形成された銅めっき被膜と、を備え、前記銅めっき被膜のうち前記金属層側の厚さ0.8μm以下の部分に、不純物として塩素を含む高塩素濃度層が含まれることを特徴とする。
第4発明の銅張積層板は、第1、第2または第3発明において、前記高塩素濃度層の二次イオン質量分析法により測定した塩素濃度は1×1019atoms/cm3以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
化学研磨による銅めっき被膜のエッチングの進行は高塩素濃度層により抑制される。エッチングが進行しやすい経路が高塩素濃度層で途切れるため、エッチングが局所的に厚さ方向に進行することが抑制される。しかも、化学研磨による減膜後に残存する残存部に高塩素濃度層が含まれるため、所望の厚さまで化学研磨を行なったとしてもピンホールの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る銅張積層板の断面図である。
図2】めっき装置の斜視図である。
図3】めっき槽の平面図である。
図4】化学研磨後の銅張積層板の断面図である。
図5】図(A)は実施例1における銅めっき被膜の塩素濃度分布を示すグラフである。図(B)は実施例2における銅めっき被膜の塩素濃度分布を示すグラフである。図(C)は比較例1における銅めっき被膜の塩素濃度分布を示すグラフである。
図6】図(A)は実施例1における化学研磨後の銅めっき被膜の表面のSEM画像である。図(B)は実施例2における化学研磨後の銅めっき被膜の表面のSEM画像である。図(C)は比較例1における化学研磨後の銅めっき被膜の表面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る銅張積層板1は、基材10と、基材10の表面に形成された銅めっき被膜20とからなる。図1に示すように基材10の片面のみに銅めっき被膜20が形成されてもよいし、基材10の両面に銅めっき被膜20が形成されてもよい。
【0013】
基材10は絶縁性を有するベースフィルム11の表面に金属層12が形成されたものである。ベースフィルム11としてポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。金属層12は、例えば、スパッタリング法により形成される。金属層12は下地金属層13と銅薄膜層14とからなる。下地金属層13と銅薄膜層14とはベースフィルム11の表面にこの順に積層されている。一般に、下地金属層13はニッケル、クロム、またはニッケルクロム合金からなる。特に限定されないが、下地金属層13の厚さは5〜50nmが一般的であり、銅薄膜層14の厚さは50〜400nmが一般的である。
【0014】
銅めっき被膜20は金属層12の表面に形成されている。特に限定されないが、銅めっき被膜20の厚さは1〜3μmが一般的である。なお、金属層12と銅めっき被膜20とを合わせて「導体層」と称する。
【0015】
銅めっき被膜20は電解めっきにより成膜される。銅めっき被膜20は、特に限定されないが、図2に示すめっき装置3により成膜される。
めっき装置3は、ロールツーロールにより長尺帯状の基材10を搬送しつつ、基材10に対して電解めっきを行なう装置である。めっき装置3はロール状に巻回された基材10を繰り出す供給装置31と、めっき後の基材10(銅張積層板1)をロール状に巻き取る巻取装置32とを有する。
【0016】
また、めっき装置3は基材10を搬送する上下一対のエンドレスベルト33(下側のエンドレスベルト33は図示省略)を有する。各エンドレスベルト33には基材10を把持する複数のクランプ34が設けられている。供給装置31から繰り出された基材10は、その幅方向が鉛直方向に沿う懸垂姿勢となり、両縁が上下のクランプ34に把持される。基材10はエンドレスベルト33の駆動によりめっき装置3内を周回した後、クランプ34から開放され、巻取装置32で巻き取られる。
【0017】
基材10の搬送経路には、前処理槽35、めっき槽40、および後処理槽36が配置されている。基材10はめっき槽40内を搬送されつつ、電解めっきによりその表面に銅めっき被膜20が成膜される。これにより、長尺帯状の銅張積層板1が得られる。
【0018】
図3に示すように、めっき槽40は基材10の搬送方向に沿った横長の単一の槽である。基材10はめっき槽40の中心に沿って搬送される。めっき槽40には銅めっき液が貯留されている。めっき槽40内を搬送される基材10は、その全体が銅めっき液に浸漬されている。
【0019】
銅めっき液は水溶性銅塩を含む。銅めっき液に一般的に用いられる水溶性銅塩であれば、特に限定されず用いられる。水溶性銅塩として、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩などが挙げられる。無機銅塩として、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅などが挙げられる。アルカンスルホン酸銅塩として、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅などが挙げられる。アルカノールスルホン酸銅塩として、イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅などが挙げられる。有機酸銅塩として、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅などが挙げられる。
【0020】
銅めっき液に用いる水溶性銅塩として、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩などから選択された1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、硫酸銅と塩化銅とを組み合わせる場合のように、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩などから選択された1つのカテゴリー内の異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、銅めっき液の管理の観点からは、1種類の水溶性銅塩を単独で用いることが好ましい。
【0021】
銅めっき液は硫酸を含んでもよい。硫酸の添加量を調整することで、銅めっき液のpHおよび硫酸イオン濃度を調整できる。
【0022】
銅めっき液は一般的にめっき液に添加される添加剤を含む。添加剤として、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、塩素成分などが挙げられる。添加剤として、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、塩素成分などから選択された1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
レベラー成分は窒素を含有するアミンなどで構成される。レベラー成分として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ヤヌス・グリーンBなどが挙げられる。ポリマー成分として、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体から選択された1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。ブライトナー成分として、特に限定されないが、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(略称SPS)、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸(略称MPS)などから選択された1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。塩素成分として、特に限定されないが、塩酸、塩化ナトリウムなどから選択された1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0024】
銅めっき液の各成分の含有量は任意に選択できる。ただし、銅めっき液は硫酸銅を60〜280g/L、硫酸を20〜250g/L含有することが好ましい。そうすれば、銅めっき被膜20を十分な速度で成膜できる。銅めっき液はレベラー成分を0.5〜50mg/L含有することが好ましい。そうすれば、突起を抑制し平坦な銅めっき被膜20を形成できる。銅めっき液はポリマー成分を10〜1,500mg/L含有することが好ましい。そうすれば、基材10端部への電流集中を緩和し均一な銅めっき被膜20を形成できる。銅めっき液はブライトナー成分を0.2〜16mg/L含有することが好ましい。そうすれば、析出結晶を微細化し銅めっき被膜20の表面を平滑にできる。銅めっき液は塩素成分を20〜80mg/L含有することが好ましい。そうすれば、異常析出を抑制できる。また、銅めっき液が塩素成分を含むことで、形成された銅めっき被膜20に不純物として塩素が含まれる。
【0025】
銅めっき液の温度は20〜35℃が好ましい。また、めっき槽40内の銅めっき液を撹拌することが好ましい。銅めっき液を撹拌する手段は、特に限定されないが、噴流を利用した手段を用いることができる。例えば、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材10に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌できる。
【0026】
めっき槽40の内部には、基材10の搬送方向に沿って複数のアノード41が配置されている。また、基材10を把持するクランプ34はカソードとしての機能も有する。アノード41とクランプ34(カソード)との間に電流を流すことで、基材10の表面に銅めっき被膜20を成膜できる。
【0027】
なお、図3に示すめっき槽40には、基材10の表裏両側にアノード41が配置されている。したがって、ベースフィルム11の両面に金属層12が形成された基材10を用いれば、基材10の両面に銅めっき被膜20を成膜できる。
【0028】
めっき槽40の内部に配置された複数のアノード41は、それぞれに整流器が接続されている。したがって、アノード41ごとに異なる電流密度となるように設定できる。本実施形態では、めっき槽40の内部が基材10の搬送方向に沿って、複数の区域に区分されている。各区域は一または複数の連続するアノード41が配置された領域に対応する。
【0029】
各区域は低電流密度区域LZまたは高電流密度区域HZである。低電流密度区域LZでは電流密度がゼロか比較的低い「低電流密度」に設定されており、基材10に対して低電流密度での電解めっきを行なう。高電流密度区域HZでは電流密度が低電流密度よりも高い「高電流密度」に設定されており、基材10に対して高電流密度での電解めっきを行なう。
【0030】
ここで、低電流密度区域LZにおける電流密度(低電流密度)を0〜0.29A/dm2に設定することが好ましい。また、高電流密度区域HZにおける電流密度(高電流密度)を0.3〜10A/dm2に設定することが好ましい。
【0031】
低電流密度区域LZと高電流密度区域HZとは基材10の搬送方向に沿って交互に設けられている。低電流密度区域LZの数は1つでもよいし、複数でもよい。高電流密度区域HZの数は1つでもよいし、複数でもよい。基材10の搬送方向を基準として、最も上流の区域が低電流密度区域LZであってもよいし、高電流密度区域HZであってもよい。また、最も下流の区域が低電流密度区域LZであってもよいし、高電流密度区域HZであってもよい。
【0032】
めっき槽40に複数の低電流密度区域LZが配置される場合、複数の低電流密度区域LZにおける電流密度は同じでもよいし、異なってもよい。また、めっき槽40に複数の高電流密度区域HZが配置される場合、複数の高電流密度区域HZにおける電流密度は同じでもよいし、異なってもよい。ただし、高電流密度区域HZにおける電流密度は、基材10の搬送方向の下流側に向かって、段階的に上昇するよう設定することが好ましい。
【0033】
基材10は、低電流密度区域LZと高電流密度区域HZとを交互に通過しながら、電解めっきされる。すなわち、めっき槽40では基材10に対して、低電流密度での電解めっきと、高電流密度での電解めっきとを交互に繰り返し行なう。これにより、銅めっき被膜20が成膜される。
【0034】
このような方法により形成された銅めっき被膜20は、図1に示すように、異なる電流密度での電解めっきにより形成された複数の層が積層された構造となる。具体的には、銅めっき被膜20は高塩素濃度層21と低塩素濃度層22とが、厚さ方向に交互に積層された構造を有する。ここで、高塩素濃度層21は低電流密度での電解めっきにより形成され、相対的に塩素濃度が高い。また、低塩素濃度層22は高電流密度での電解めっきにより形成され、相対的に塩素濃度が低い。これは、電解めっきにおける電流密度が低いほど、銅めっき液の添加剤がめっき被膜に取り込まれやすくなるためであると推測される。
【0035】
高塩素濃度層21および低塩素濃度層22の配置は、めっき槽40における低電流密度区域LZおよび高電流密度区域HZの配置に依存する。高塩素濃度層21の数は1つでもよいし、複数でもよい。低塩素濃度層22の数は1つでもよいし、複数でもよい。基材10の表面(金属層12の表面)に直接積層される層が高塩素濃度層21であってもよいし、低塩素濃度層22であってもよい。また、銅めっき被膜20の表面(基材10と反対側の面)に表れる層が高塩素濃度層21であってもよいし、低塩素濃度層22であってもよい。
【0036】
例えば、セミアディティブ法により銅張積層板1を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する際に、化学研磨により銅めっき被膜20を減膜することがある。例えば、厚さ1〜3μmの銅めっき被膜20を0.4〜0.8μmまで減膜する。
【0037】
図4に示すように、銅めっき被膜20のうち化学研磨による減膜後に残存する部分を「残存部23」と称する。残存部23の厚さは、例えば0.4〜0.8μmである。この残存部23に高塩素濃度層21が含まれる。残存部23の厚さが0.8μmの場合、銅めっき被膜20のうち金属層12側の厚さ0.8μm以下の部分に高塩素濃度層21が含まれていればよい。残存部23の厚さが0.4μmの場合、銅めっき被膜20のうち金属層12側の厚さ0.4μm以下の部分に高塩素濃度層21が含まれればよい。残存部23に含まれる高塩素濃度層21の数は1つでもよいし、複数でもよい。
【0038】
化学研磨により導体層にピンホールが生じることがある。これに対して、本実施形態の銅張積層板1であれば、ピンホールの発生を抑制できる。その理由は不明なところもあるが、概ねつぎのとおりであると考えられる。不純物として塩素を多く含む高塩素濃度層21では化学研磨液によるエッチングの進行が抑制される。エッチングが進行しやすい経路は高塩素濃度層21で途切れる。そのため、エッチングが進行しやすい経路が厚さ方向に繋がることがなく、エッチングが局所的に厚さ方向に進行することが抑制される。しかも、化学研磨による減膜後に残存する残存部23に高塩素濃度層21が含まれるため、所望の厚さまで化学研磨を行なったとしても、エッチングがベースフィルム11に達することが阻害され、ピンホールの発生を抑制できる。
【0039】
また、残存部23に高塩素濃度層21が存在することで、化学研磨後の銅めっき被膜20の表面を滑らかにできるという効果も奏する。その理由は不明なところもあるが、概ねつぎのとおりであると考えられる。化学研磨液によるエッチングの進行は高塩素濃度層21において相対的に遅くなり、低塩素濃度層22で相対的に速くなる。一部のエッチングが高塩素濃度層21に達すると、その上に積層された低塩素濃度層22の残部が優先的にエッチングされる。そのため、エッチングが局所的に進行せず、全面に渡って均一に進行する。残存部23の表面全体に高塩素濃度層21が表れた段階で化学研磨を終了すれば、化学研磨後の銅めっき被膜20の表面が滑らかになる。
【0040】
銅めっき被膜20に含まれる不純物の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によって測定できる。高塩素濃度層21の二次イオン質量分析法により測定した塩素濃度は1×1019atoms/cm3以上であることが好ましい。低塩素濃度層22の二次イオン質量分析法により測定した塩素濃度は1×1019atoms/cm3未満であることが好ましい。塩素濃度が上記の通りであれば、ピンホールの発生を十分に抑制できるとともに、化学研磨後の銅めっき被膜20の表面を十分に滑らかにできる。
【0041】
なお、銅めっき被膜20は塩素以外の不純物、例えば、銅めっき液の添加剤に由来する炭素、酸素、硫黄などを含んでもよい。
【実施例】
【0042】
つぎに、実施例を説明する。
(実施例1)
つぎの手順で、基材を準備した。ベースフィルムとして、厚さ35μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製 Upilex−35SGAV1)を用意した。ベースフィルムをマグネトロンスパッタリング装置にセットした。マグネトロンスパッタリング装置内にはニッケルクロム合金ターゲットと銅ターゲットとが設置されている。ニッケルクロム合金ターゲットの組成はCrが20質量%、Niが80質量%である。真空雰囲気下で、ベースフィルムの片面に、厚さ25nmのニッケルクロム合金からなる下地金属層を形成し、その上に厚さ100nmの銅薄膜層を形成した。
【0043】
つぎに、銅めっき液を調整した。銅めっき液は硫酸銅を120g/L、硫酸を70g/L、レベラー成分を20mg/L、ポリマー成分を1,100mg/L、ブライトナー成分を16mg/L、塩素成分を50mg/L含有する。レベラー成分としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄共重合体(ニットーボーメディカル株式会社製 PAS−A―5)を用いた。ポリマー成分としてポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体(日油株式会社製 ユニルーブ50MB−11)を用いた。ブライトナー成分としてビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(RASCHIG GmbH社製の試薬)を用いた。塩素成分として塩酸(和光純薬工業株式会社製の35%塩酸)を用いた。
【0044】
前記銅めっき液が貯留されためっき槽に基材を供給した。電解めっきにより基材の片面に厚さ2.0μmの銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得た。ここで、銅めっき液の温度を31℃とした。また、電解めっきの間、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材の表面に対して略垂直に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌した。
【0045】
電解めっきにおいて、空送期間が11回含まれるように電流密度を変化させた。ここで、空送期間とは低電流密度、具体的には0.0A/dm2で電解めっきを行なう期間を意味する。空送期間以外における電流密度(高電流密度)は1.2A/dm2とした。
【0046】
(実施例2)
実施例1と同様の手順で銅張積層板を得た。ただし、電解めっきにおいて、空送期間が7回含まれるように電流密度を変化させた。その余の条件は実施例1と同様である。
【0047】
(比較例1)
実施例1と同様の手順で銅張積層板を得た。ただし、電解めっきにおいて、電流密度を3.2A/dm2とし、空送期間を設けなかった。その余の条件は実施例1と同様である。
【0048】
(塩素濃度測定)
実施例1、2および比較例1で得られた銅張積層板に対して、銅めっき被膜の塩素濃度を測定した。測定は二次イオン質量分析法によって行なった。測定装置としてアルバック・ファイ株式会社の四重極型二次イオン質量分析装置(PHI ADEPT−1010)を用いた。測定条件は、一次イオン種をCs+、一次加速電圧を5.0kV、検出領域を96×96μmとした。なお、本明細書における塩素濃度の値は、前記条件で測定した値を基準とする。
【0049】
図5(A)に実施例1で得られた銅張積層板の測定結果を示す。図5(B)に実施例2で得られた銅張積層板の測定結果を示す。図5(C)に比較例1で得られた銅張積層板の測定結果を示す。図5の各グラフの横軸は銅めっき被膜の厚さ方向の位置である。0.0μmが銅薄膜層側の面、2.0μmが表面である。縦軸は塩素濃度である。
【0050】
図5(A)のグラフから分かるように、実施例1では、銅めっき被膜の厚さ方向の塩素濃度分布が周期的な10個のピークを有する分布となっている。0.2μm付近のピークは最初の2回の空送期間に対応する。残りの9個のピークはそれに続く9回の空送期間に対応する。各ピークの塩素濃度は1×1019atoms/cm3以上である。また、ピーク間の下限は1×1019atoms/cm3未満である。したがって、この銅めっき被膜は高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された構成といえる。また、この銅めっき被膜は高塩素濃度層を10層含んでいるといえる。
【0051】
図5(B)のグラフから分かるように、実施例2では、銅めっき被膜の厚さ方向の塩素濃度分布が周期的な6個のピークを有する分布となっている。0.2μm付近のピークは最初の2回の空送期間に対応する。残りの5個のピークはそれに続く5回の空送期間に対応する。各ピークの塩素濃度は1×1019atoms/cm3以上である。また、ピーク間の下限は1×1019atoms/cm3未満である。したがって、この銅めっき被膜は高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された構成といえる。また、この銅めっき被膜は高塩素濃度層を6層含んでいるといえる。
【0052】
図5(C)のグラフから分かるように、比較例1では、銅めっき被膜の厚さ方向の全体に渡って塩素濃度が低い。具体的には、塩素濃度が全体に渡って1×1019atoms/cm3未満である。したがって、この銅めっき被膜は高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された構成を有していない。
【0053】
(ピンホール)
つぎに、化学研磨後のピンホールの数を測定した。
実施例1、2および比較例1で得られた銅張積層板に対して化学研磨を行なった。化学研磨液として硫酸と過酸化水素とを主成分とした液(三菱ガス化学株式会社製CPE−750を10倍に希釈した液)を用いた。厚さ2μmの銅めっき被膜を0.5μmまで減膜した。図5から分かるように、実施例1、2では減膜後に残存する残存部に塩素濃度のピーク(高塩素濃度層)が2個含まれる。
【0054】
化学研磨の後、ピンホールの数を測定した。測定は、ベースフィルム側からハロゲンランプを照射して、金属顕微鏡により視野内に存在する透過光の数を計数することにより行った。ここで、金属顕微鏡の視野は1.81mm×2.27mmである。3視野の透過光の数の総数をピンホール数とした。
【0055】
その結果を表1に示す。実施例1、2は比較例1に比べてピンホールが少ないことが確認された。これより、残存部に高塩素濃度層を含む銅めっき被膜であれば、ピンホールの発生を抑制できることが確認された。
【0056】
【表1】
【0057】
(表面粗さ)
実施例1、2および比較例1で得られた銅張積層板に対して、化学研磨前の銅めっき被膜の表面粗さを測定した。その結果を表2に示す。ここで、表面積比の測定にはキーエンス社製レーザー顕微鏡VK−9510を用いた。70×93μmの測定エリアの測定表面積から表面積比を求めた。化学研磨前の表面粗さは、実施例1、2および比較例1でほぼ同一である。
【0058】
つぎに、各銅張積層板に対して化学研磨を行なった。化学研磨はピンホール数の測定において行なった化学研磨と同じ条件である。図5から分かるように、実施例1、2では化学研磨後の銅めっき被膜の表面に高塩素濃度層が表れた状態となっている。
【0059】
化学研磨の後、銅めっき被膜の表面粗さを測定した。その結果を表2に示す。実施例1、2では化学研磨の前後で表面粗さにほとんど変化がないことが分かる。一方、比較例1では化学研磨後の銅めっき被膜の表面が粗くなっていることが分かる。実施例1、2は比較例1に比べて化学研磨後の銅めっき被膜の表面が滑らかであることが確認できる。
【0060】
【表2】
【0061】
図6に化学研磨の後の銅めっき被膜の表面のSEM画像を示す。図6(A)は実施例1のSEM画像である。図6(B)は実施例2のSEM画像である。図6(C)は比較例1のSEM画像である。これらのSEM画像からも、実施例1、2は比較例1に比べて化学研磨後の銅めっき被膜の表面が滑らかであることが分かる。
【0062】
以上より、残存部に高塩素濃度層を含む銅めっき被膜であれば、化学研磨後の銅めっき被膜の表面を滑らかにできることが確認された。
【符号の説明】
【0063】
1 銅張積層板
10 基材
11 ベースフィルム
12 金属層
13 下地金属層
14 銅薄膜層
20 銅めっき被膜
21 高塩素濃度層
22 低塩素濃度層
図1
図2
図3
図4
図5
図6