【背景技術】
【0002】
コンクリートは、その経済性や施工性、強度、耐久性等から土木建築物の主要材料として広く用いられている。コンクリートは、粗骨材(砂利)、細骨材(砂)、セメント、水を主原料とし、これをよく混合して泥しょう状態とした生コンクリートを型枠の中に流し込み(通常、打ち込みという)、硬化させたものである。粗骨材はおよそ粒径が50mm以下の骨材を、細骨材はおよそ粒径が5mm以下の骨材をいう。
【0003】
コンクリートを構成する細骨材としての砂は、例えば、砂岩を砕いて得られる砂岩砕砂等が知られている。砂は、コンクリート用細骨材に求められる特性である、強度(硬度)、物理的・化学的安定性、無害、適正な粒径、付着力の大きな表面組成、所要の重量等の性質を併せ持つことから、細骨材として好適に使用される。
【0004】
しかしながら、細骨材として砂のみを用いたコンクリートにおいては、例えば乾燥収縮が生じ易いという問題点があることが知られている。そのため、例えば、収縮低減効果のある石灰石骨材を所定の割合で併用することが行われているが、石灰石骨材はコストが高いという問題がある。一方、銅スラグ等のスラグ細骨材も代替細骨材として使用されてきている。これらの代替細骨材は、砂とは特性が異なるため、通常、細骨材として用いられる砂の一部を代替して使用される。
【0005】
さて、代替細骨材としての銅スラグは、コンクリート用細骨材としてその使用がJISに規定されている。銅スラグとしては、高炉水砕スラグや精鋼スラグ等が使用されており(例えば特許文献1参照)、その特性も種々研究されている。例えば、乾燥収縮率もその性状の一つとして評価されている(例えば非特許文献1参照)。
【0006】
ところが、これまで、細骨材として代替使用されてきた銅スラグに関し、その銅スラグを含んだコンクリートに関しての耐久性についての研究はなされていなかった。
【0007】
コンクリートは、鉄筋等を保持して家屋やビル等の構造体の根幹をなす要素であり、また、一般的には外気や雨水等にさらされるものである。このことから、構造体を構成するコンクリートにおいては、その耐久性が優れ、しかも長期に亘って安定的に良好な耐久性を有することを求められている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0018】
≪1.耐久性コンクリート≫
本実施の形態に係るコンクリートは、耐久性を有するコンクリートであり、細骨材の一部に銅スラグを含み、天然細骨材と銅スラグ細骨材とからなる全細骨材に対して、その銅スラグ細骨材を15容量%以上35容量%以下の割合で含有し、凍結融解試験で測定される指標として特定の要件を満たす。
【0019】
具体的には、(A)凍結融解試験を行ったときの、凍結融解サイクルが300サイクルにおける相対動弾性係数が70%以上、かつ、(B)凍結融解試験を行ったときの、凍結融解サイクルが0サイクルから300サイクルまでの相対動弾性係数の変化率が10%以内、であるとする要件を満たす。
【0020】
[銅スラグ細骨材]
本実施の形態に係るコンクリートにおいては、銅スラグを細骨材の一部(一部代替細骨材)として使用する。この銅スラグは、銅製錬操業に伴って生成され、銅を製錬する工程において銅精鉱中の鉄分と石灰石、珪石等が結合してなるもので、FeO、SiO
2、CaOを主体とする溶融スラグを、水冷却により水砕破砕物としたものである。
【0021】
銅スラグの組成の一例としては、酸化鉄(FeO)45質量%〜55質量%、珪酸(SiO
2)30質量%〜36質量%、酸化カルシウム(CaO)2質量%〜7質量%、酸化アルミニウム(Al
2O
3)3質量〜6質量%、である。強度が高く、物理的、化学的に安定で、主な用途はセメント原料、土木工事用原料(中詰め材等)、サンドブラスト用研磨剤、コンクリート用細骨材である。なお、銅スラグをコンクリート用骨材(銅スラグ細骨材)として利用する場合の規格は、JIS A5011−3「コンクリート用骨材 第3部 銅スラグ」(1997)に規定されている。
【0022】
細骨材の一部に用いる銅スラグの粒度は、JIS A5011−3における銅スラグ細骨材の粒度分類に適合するものであり、例えば粒度が1.2mmの銅スラグはCUS1.2と呼ばれている。JIS A5011−3におけるふるい分け試験は、さらに、JIS A1102(骨材のふるい分け試験方法)に規定されており、呼び寸法10mm、5mm、2.5mm、1.2mm、0.6mm、0.3mm、0.15mmのふるいによる試験方法であり、それぞれのふるいを通るものの質量%が規定されている。
【0023】
JIS A5011−3における銅スラグ細骨材の粒度による区分は、CUS5、CUS2.5、CUS1.2、CUS5−0.3の4水準に分類されているが、本実施の形態に係るコンクリートにおいて、銅スラグの粒度は、JIS A5011−3に規定される粒度分類で2.5mm以下であることが好ましい。粒度がCUS2.5より大きいと、耐久性が低下する可能性があり、また、ブリーディング量が上昇して施工性が低下する。
【0024】
銅スラグの含有量は、全細骨材に対して15容積%以上45容積%以下である。また、好ましくは、20容積%以上40容積%以下、さらに好ましくは、35容積%以上45容積%以下である。銅スラグが全細骨材に対して15容積%以上45容積%以下であることにより、耐久性を向上させることができる。
【0025】
[他の細骨材]
他の細骨材としては、従来公知の砂岩砕砂や石灰砕砂等の砕砂、軽量細骨材(メラサイト砂)、山砂、陸砂等の天然細骨材を用いることができ、特に限定されない。なお、石灰を主体とした細骨材である石灰細骨材は、乾燥収縮に効果的であり特に好ましい。
【0026】
[粗骨材]
コンクリートの構成材料は、主として、上述した細骨材と、粗骨材と、水とセメントからなるセメントペーストとからなる。なお、細骨材と、粗骨材とを併せて骨材という。
【0027】
粗骨材としては、特に限定されず、公知の砂利や砕石等を適宜使用することができる。
【0028】
[水及びセメント]
また、水及びセメントについても、特に限定されず、従来公知の水とセメントとを適宜使用することができる。例えば、セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメント、アルミナセメント等の特殊セメントなどを用いることができる。
【0029】
また、水とセメントとからなるセメントペーストにおいて、その水とセメントとの混合比率である水/セメント比(W/C比)に関しても、特に限定されないが、40%〜50%の範囲であることが特に好ましい。詳しくは後述する実施例でも示すが、コンクリートの製造において、水/セメント比を50%以下とすることで、得られるコンクリートの耐久性がより向上する。より具体的には、中性化を抑制して、長期に亘って安定的に錆等を防いで良好な耐久性を保持できる。
【0030】
なお、銅スラグは吸水性が低いことが知られており、細骨材の一部に所定の割合で銅スラグを混入させた分、コンクリートの単位水量(コンクリート1m
3当たりの必要水量)が減少する。このため、セメント量が少なくなり発熱量が減少することから、硬化後のひび割れが生じ難くなる。この場合においてもコンクリート強度等には影響がない。
【0031】
[その他の材料]
本実施の形態に係るコンクリートにおいては、必要に応じてその他の材料として、当該コンクリートの耐久性に関する効果を損なわない範囲で種々の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、減水剤(AE剤)等が挙げられる。
【0032】
[凍結融解試験に基づく指標]
さて、コンクリートの耐久性に関する試験として、凍結融解試験が知られている。本件発明者らは、耐久性を有し、さらにその耐久性を長期に亘って安定的に維持できるコンクリートにおいては、その凍結融解試験により測定される指標に特定の関係性があることを見出した。
【0033】
凍結融解試験とは、JIS A 1148:2010に規定される水中凍結融解試験方法である。この凍結融解試験は、コンクリート供試体に対して凍結融解作用を人工的に所定の回数繰り返し、相対動弾性係数の保持の度合い(耐久性指数)に基づいて、コンクリートの耐久性の指標を測定する試験である。なお、相対動弾性係数(%)とは、当該凍結融解試験前後での動弾性係数の低下度合いを示す指標である。
【0034】
具体的に、この凍結融解試験では、100mm×100mm×400mmの角柱のコンクリート供試体を用意し、その供試体を水槽内に木端立てに固定し、水槽を満水にして供試体を完全に水没させて24時間置き、その後水深3〜5mmまで排水する。そして、その状態で気温を0℃とした後30分で−20℃まで冷却し、−20℃の状態を2時間維持した後、30分かけて昇温して0℃とし、さらにそこから30分かけて昇温して+20℃とし、+20℃を2時間維持した後、再び30分かけて冷却して0℃として最初と同じ条件に戻るという操作を1サイクル(凍結融解サイクル)として、合計300サイクルを実施する。
【0035】
本実施の形態に係るコンクリートにおいては、凍結融解試験により表される指標として、以下の要件を満たすことを特徴としている。
(A)凍結融解試験を行ったときの、凍結融解サイクルが300サイクルにおける相対動弾性係数が70%以上、かつ
(B)凍結融解試験を行ったときの、凍結融解サイクルが0サイクルから300サイクルまでの相対動弾性係数の変化率が10%以内
【0036】
凍結融解試験において、凍結融解サイクルが300サイクルのときの相対動弾性係数が70%以上(要件(A))であれば、当該コンクリートの耐久性が良好であるといえる。また、凍結融解サイクル300サイクルのときの相対動弾性係数は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0037】
また、要件(A)を満足するうえで、その凍結融解試験において、凍結融解サイクルが0サイクルから300サイクルまでの相対動弾性係数の変化率が10%以内であれば、長期間に亘って安定的に良好な耐久性を維持できるコンクリートであるといえる。
【0038】
さらに、必須の要件ではないが、凍結融解試験において、凍結融解サイクルが150サイクルから300サイクルまでの相対動弾性係数の変化率が5%以内であることが好ましい。凍結融解サイクルが150サイクルから300サイクルまでとは、すなわち、凍結融解試験を繰り返し行った、より苛酷な後半サイクルを意味する。したがって、凍結融解サイクルが150サイクルから300サイクルまでの相対動弾性係数の変化率が5%以内であることは、より一層に耐久性が高いといえる。
【0039】
ここで、
図1は、凍結融解試験による相対動弾性係数の測定結果を示すグラフ図である。なお、凍結融解試験は、JIS A 1148:2010に準拠した方法にて実施し、下記表1は相対動弾性係数の実測値である。試験例1〜試験例5は、細骨材の一部に銅スラグ(CUS)を混入させて製造したコンクリートを用いた試験例であり、比較例1は、砕砂と石灰とからなる細骨材を用いたコンクリート(銅スラグを含まないコンクリート)を用いた試験例である。
【0040】
なお、各試験例のコンクリートの製造にあたり、水/セメント比としては、比較例1、試験例1〜試験例5から順にそれぞれ、55%、50%、55%、50%、45%、50%とした。また、グラフ中に銅スラグ(CUS)の混合割合を示す。
【0042】
この
図1のグラフから分かるように、銅スラグを含まないコンクリートでは、凍結融解サイクル300サイクルにおける相対動弾性係数は70%であったものの、銅スラグを所定の割合で混入させたコンクリートに比べて、低いものであった。
【0043】
また、銅スラグを含むコンクリートでは、凍結融解サイクルが0サイクルから300サイクルまでの相対動弾性係数の変化率が10%以内となり、しかも、150サイクル以降(150サイクルから300サイクルまで)の変化率に関しても10%以内であった。これに対し、銅スラグを含まないコンクリートでは、150サイクルあたりから相対動弾性係数が大きく低下し、150サイクルから300サイクルまでの変化率としては10%を超えることとなった。
【0044】
[促進中性化試験に基づく指標]
また、コンクリートの耐久性に関する他の試験として、促進中性化試験が知られている。一般的に、コンクリートからなる構造体では、そのコンクリートがアルカリ性を有しており、コンクリート内部の鉄筋等の酸化が防止されているが、コンクリートは空気中や雨水に含まれる二酸化炭素の作用によりその表面から内方へ向けて徐々に中性化していき、中性化が進行して鉄筋まで到達すると、鉄筋に対する防錆性能が失われて錆が発生する。そして、錆が発生すると鉄筋が膨れ上がり、その膨れ上がった鉄筋により鉄筋周辺のコンクリートが圧迫され、コンクリートに亀裂が生じることになる。
【0045】
本件発明者らは、上述した凍結融解試験により測定される特定の指標(要件)を満足するとともに、さらに促進中性化試験により測定される特定の指標を満足することによって、さらに耐久性が高まり、しかも安定的に耐久性を維持できるコンクリートとなることを見出した。
【0046】
促進中性化試験とは、JIS A 1153に規定されるコンクリートの促進中性化試験方法である。また、促進中性化試験において、JIS A 1152に規定される「コンクリートの中性化深さの測定方法」に基づいて中性化深さを測定した。
【0047】
具体的に、この促進中性化試験においては、温度20℃±2℃、相対湿度60±5%、CO
2濃度5±0.2%の環境下で、例えば促進材齢0週(0年)から26週(0.5年)として、強制的に、コンクリート供試体を中性化させる。
【0048】
本実施の形態に係るコンクリートにおいては、必須の要件ではないが、促進中性化試験により表される指標として、以下の要件を満たすことがより好ましい。
(C)促進中性化試験を行ったときの、促進材齢26週における中性化深さが20mm以下、かつ、
(D)促進中性化試験を行ったときの、促進材齢0年から0.5年までのその促進材齢の平方根に対する中性化深さで表される中性化速度係数が30以下
【0049】
促進中性化試験において、促進材齢26週における中性化深さが20mm以下(要件(C))であれば、中性化を有効に抑制して錆等を防ぎ、当該コンクリートの耐久性が良好であるといえる。
【0050】
また、要件(C)を満足するうえで、その促進中性化試験において、促進材齢0年から0.5年までのその促進材齢の平方根に対する中性化深さで表される中性化速度係数が30以下であれば、長期間に亘って中性化を抑制することができ、安定的に良好な耐久性を維持できるといえる。なお、中性化速度係数とは、コンクリートの中性化の速度を表す指標(係数)であり、コンクリートの中性化深さは、経過年数の平方根に比例し、中性化深さをC(mm)、材齢をt(年)とした場合、C=A√tの関係式で表される。この関係式における係数Aが、中性化速度係数(mm/√年)に相当する。
【0051】
ここで、
図2は、上記の試験例1〜試験例5及び比較例1のコンクリートについて、促進中性化試験を行ったときの促進中性化深さの測定結果を示すグラフ図である。また、
図3は、試験例1〜試験例5及び比較例1のコンクリートについて測定された促進中性化深さに基づき、促進材齢0年(0週)から0.5年(26週)における中性化速度係数を算出した結果を示すグラフ図である。なお、促進中性化試験は、JIS A 1153及びJIS A 1152に準拠した方法にて実施し、下記表2は促進中性化深さの実測値であり、下記表3は中性化速度係数の算出値である。
【0054】
図2のグラフに示すように、いずれのコンクリートにおいても、促進中性化試験を行ったときの、促進材齢26週における中性化深さが20mm以下であった。ところが、促進材齢0年から0.5年までのその促進材齢の平方根に対する中性化深さで表される中性化速度係数に関しては、銅スラグの混入の有無によって大きく違いが生じ、銅スラグを含まないコンクリートでは、中性化速度係数が促進材齢0年から0.5年の間で大きく変動する結果となった。
【0055】
また、この中性化速度係数に関しては、コンクリートの製造時における水/セメント比によっても大きく異なることが分かり、水/セメント比が50%以下であることにより、中性化速度係数がおおむね30以下となることが分かった。
【0056】
また、
図4は、
図2と同様に促進中性化試験を行ったときの促進中性化深さの測定結果を示すグラフ図であり、上記の試験例1〜試験例5及び比較例1のコンクリートに用いた天然細骨材である砕砂とは異なる砕砂を用いた、試験例6〜試験例9及び比較例2のコンクリートについての試験結果である。銅スラグは同じものを用いた。また、
図4は、試験例6〜試験例9及び比較例2のコンクリートについて測定された促進中性化深さに基づき、促進材齢0年(0週)から0.5年(26週)における中性化速度係数を算出した結果を示すグラフ図である。
【0057】
なお、比較例2は、細骨材として砕砂と石灰とを70:30の割合で含むコンクリートである。また、試験例6〜試験例8は、細骨材として砕砂と銅スラグ(CUS)とを70:30の割合で含むコンクリートであり、試験例9は、細骨材として砕砂と銅スラグとを80:20の割合で含むコンクリートである。促進中性化試験は、JIS A 1153及びJIS A 1152に準拠した方法にて実施し、下記表4は促進中性化深さの実測値であり、下記表5は中性化速度係数の算出値である。
【0060】
図3のグラフも同様に示すように、いずれのコンクリートにおいても、促進中性化試験を行ったときの、促進材齢26週における中性化深さが20mm以下であった。ところが、促進材齢0年から0.5年までのその促進材齢の平方根に対する中性化深さで表される中性化速度係数に関しては、銅スラグの混入の有無によって大きく違いが生じ、銅スラグを含まないコンクリートでは、中性化速度係数が促進材齢0年から0.5年の間で大きく変動する結果となった。
【0061】
また、この中性化速度係数に関しては、コンクリートの製造時における水/セメント比によっても大きく異なることが分かり、水/セメント比が50%以下であることにより、中性化速度係数がおおむね20以下となることが分かった。
【0062】
≪2.コンクリートの製造方法≫
本実施の形態に係るコンクリートの製造方法は、銅スラグを細骨材の一部として所定量混入させて製造するものである。具体的に、このコンクリートの製造方法は、細骨材として全細骨材に対して所定の割合で銅スラグを混合して細骨材を調製し、調製した細骨材と、粗骨材と、セメントペーストとを混練する工程を含む。
【0063】
(細骨材調製工程)
細骨材調製工程では、細骨材の一部として構成させる銅スラグと天然細骨材とからなる細骨材を調製する。銅スラグの混合割合は、全細骨材に対して15容量%以上35容量%以下の割合となるようにする。
【0064】
また、銅スラグとしては、JIS A5011−3に規定される粒度分類で2.5mm以下のものを用いる。このような銅スラグによれば、扱い易く、粗骨材との混合等も容易となり、また、得られるコンクリートの耐久性を向上させる。
【0065】
(混練工程)
混練工程では、細骨材調製工程にて調製した細骨材と、コンクリートの構成材料である、水、セメント、粗骨材とを混錬して混練物を得る。
【0066】
ここで、水とセメントとの混合割合(水/セメント比)については、40%〜50%の範囲とする。このように、銅スラグを細骨材の一部として含有させ、水/セメント比を40%〜50%の範囲としたセメントペーストと混練することで、得られるコンクリートの耐久性を高めることができる。具体的には、水/セメント比を50%以下とすることで、特に、コンクリートに対して促進中性化試験を行ったときの、促進材齢26週における中性化深さが20mm以下であり、かつ、促進中性化試験を行ったときの、促進材齢0年から0.5年までのその促進材齢の平方根に対する中性化深さで表される中性化速度係数が30以下、となる。このようなコンクリートでは、長期間に亘って安定的に中性化を抑制して錆等を防ぐことができ、良好な耐久性を維持することができる。なお、水/セメント比が40%未満であると、水の量が少なくなりすぎ、粘度が高まりコンクリート施工に際しての作業性が悪化する。
【0067】
なお、全骨材(細骨材及び粗骨材)に対する細骨材の容積の比率である細骨材率(s/a)については、特に限定されず適宜決定することができる。一般的には、40%〜50%の範囲となる。
【0068】
混練工程における混練方法としては、特に限定されず公知の方法により混練することができる。具体的には、例えば、水平二軸形強制練りミキサ等のミキサ内で行うことができ、水とセメントとからなるセメントペーストと、銅スラグを含む細骨材と、粗骨材とを、それぞれミキサ内に投入して約30秒間撹拌し、続いて、必要に応じて混和剤や減水剤等の薬剤を含む水をミキサ内に投入して約90秒間撹拌する。
【0069】
(硬化工程)
硬化工程では、混練工程にて得られた混練物を養生硬化することによって、コンクリートを得る。
【0070】
具体的に、硬化工程では、混練物を目的に応じて所定の形に成形し、水和反応を進行させて養生硬化させる。養生とは、適当な温度と湿度を確保し、乾燥や凍結等の外力が加わらないように保護することをいう。養生方法としては、例えば、成形したコンクリートを水中に浸漬する方法や散水する方法、濡れたマット等で覆う方法等が挙げられ、硬化促進のため、蒸気養生や高温高圧で養生するオートクレーブ養生等を行ってもよい。また、養生硬化の処理時間についても、特に限定されず、目的とするコンクリートの強度等に応じて適宜設定することができる。