【解決手段】ロールツーロールによりベースフィルム11を巻き出して搬送しつつ、スパッタリングによりベースフィルム11の第1面11a側に第1銅薄膜層13Aと第1酸化銅層14Aとを成膜して基材中間品10iを巻き取る。ロールツーロールにより基材中間品10iを巻き出して搬送しつつ、スパッタリングによりベースフィルム11の第2面11b側に第2銅薄膜層13Bを成膜して基材10を巻き取る。ロールツーロールにより基材10を巻き出して搬送しつつ、電解めっきにより基材10の両面に銅めっき被膜20を成膜して銅張積層板1を得る。
ロールツーロールによりベースフィルムを巻き出して搬送しつつ、スパッタリングにより前記ベースフィルムの第1面側に第1銅薄膜層と、該第1銅薄膜層上に積層される第1酸化銅層とを成膜して基材中間品を巻き取る第1スパッタリング工程と、
ロールツーロールにより前記基材中間品を巻き出して搬送しつつ、スパッタリングにより前記ベースフィルムの第2面側に第2銅薄膜層を成膜して基材を巻き取る第2スパッタリング工程と、
ロールツーロールにより前記基材を巻き出して搬送しつつ、電解めっきにより前記基材の両面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得る電解めっき工程と、を備え、
前記電解めっき工程において、塩素を含む銅めっき液が貯留されためっき槽内で前記基材を搬送し、
前記めっき槽内に、前記基材の搬送方向に沿って、低電流密度での電解めっきを行なう低電流密度区域と、前記低電流密度よりも高い高電流密度での電解めっきを行なう高電流密度区域とを交互に設ける
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
ロールツーロールによりベースフィルムを巻き出して搬送しつつ、スパッタリングにより前記ベースフィルムの第1面側に第1銅薄膜層を成膜して基材中間品を巻き取る第1スパッタリング工程と、
ロールツーロールにより前記基材中間品を巻き出して搬送しつつ、スパッタリングにより前記ベースフィルムの第2面側に第2銅薄膜層と、該第2銅薄膜層上に積層される第2酸化銅層とを成膜して基材を巻き取る第2スパッタリング工程と、
ロールツーロールにより前記基材を搬送しつつ、電解めっきにより前記基材の両面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得る電解めっき工程と、を備え、
前記電解めっき工程において、塩素を含む銅めっき液が貯留されためっき槽内で前記基材を搬送し、
前記めっき槽内に、前記基材の搬送方向に沿って、低電流密度での電解めっきを行なう低電流密度区域と、前記低電流密度よりも高い高電流密度での電解めっきを行なう高電流密度区域とを交互に設ける
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
ロールツーロールによりベースフィルムを巻き出して搬送しつつ、スパッタリングにより前記ベースフィルムの第1面側に第1銅薄膜層と、該第1銅薄膜層上に積層される第1酸化銅層とを成膜するとともに、前記ベースフィルムの第2面側に第2銅薄膜層を成膜して基材を巻き取るスパッタリング工程と、
ロールツーロールにより前記基材を搬送しつつ、電解めっきにより前記基材の両面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得る電解めっき工程と、を備え、
前記電解めっき工程において、塩素を含む銅めっき液が貯留されためっき槽内で前記基材を搬送し、
前記めっき槽内に、前記基材の搬送方向に沿って、低電流密度での電解めっきを行なう低電流密度区域と、前記低電流密度よりも高い高電流密度での電解めっきを行なう高電流密度区域とを交互に設ける
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
ロールツーロールによりベースフィルムを巻き出して搬送しつつ、スパッタリングにより前記ベースフィルムの第1面側に第1銅薄膜層と、該第1銅薄膜層上に積層される第1酸化銅層とを成膜するとともに、前記ベースフィルムの第2面側に第2銅薄膜層と、該第2銅薄膜層上に積層される第2酸化銅層とを成膜して基材を巻き取るスパッタリング工程と、
ロールツーロールにより前記基材を搬送しつつ、電解めっきにより前記基材の両面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得る電解めっき工程と、を備え、
前記電解めっき工程において、塩素を含む銅めっき液が貯留されためっき槽内で前記基材を搬送し、
前記めっき槽内に、前記基材の搬送方向に沿って、低電流密度での電解めっきを行なう低電流密度区域と、前記低電流密度よりも高い高電流密度での電解めっきを行なう高電流密度区域とを交互に設ける
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る銅張積層板1の製造方法は、第1スパッタリング工程と、第2スパッタリング工程と、電解めっき工程とからなる。第1スパッタリング工程と、第2スパッタリング工程と、電解めっき工程とをこの順に行なうことで、
図1に示すようにベースフィルム11から銅張積層板1を製造する。以下、各工程を順に説明する。
【0015】
(第1スパッタリング工程)
ベースフィルム11は絶縁性を有する長尺帯状のフィルムである。ベースフィルム11として樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムのほか、ポリイミドフィルムなどの耐熱性樹脂フィルムが挙げられる。特に限定されないが、ベースフィルム11の厚さは10〜100μmが一般的である。以下、ベースフィルム11の一方の主面を第1面11aと称し、他方の主面を第2面11bと称する。
【0016】
第1スパッタリング工程では、スパッタリングによりベースフィルム11の第1面11aに第1下地金属層12A、第1銅薄膜層13A、および第1酸化銅層14Aを成膜して基材中間品10iを得る。第1下地金属層12A、第1銅薄膜層13A、および第1酸化銅層14Aはベースフィルム11の第1面11aにこの順に積層される。一般に、第1下地金属層12Aはニッケル、クロム、またはニッケルクロム合金からなる。特に限定されないが、第1下地金属層12Aの厚さは5〜50nmが一般的であり、第1銅薄膜層13Aの厚さは50〜400nmが一般的である。
【0017】
なお、第1銅薄膜層13Aはベースフィルム11の第1面11a側に成膜されていればよい。第1銅薄膜層13Aは第1面11a側に第1下地金属層12Aを介して成膜されてもよいし、第1面11a上に直接成膜されてもよい。すなわち、第1下地金属層12Aはなくてもよい。
【0018】
第1下地金属層12A、第1銅薄膜層13A、および第1酸化銅層14Aは、例えば、
図2に示すスパッタリング装置3により成膜される。スパッタリング装置3は、ロールツーロールにより長尺帯状の被成膜品D1を搬送しつつ、スパッタリングにより被成膜品D1の片面に成膜して成膜品D2を連続的に製造する装置である。第1スパッタリング工程において、被成膜品D1はベースフィルム11であり、成膜品D2は基材中間品10iである。
【0019】
スパッタリング装置3は真空チャンバー30を有する。真空チャンバー30内に巻出ロール31と巻取ロール39とが配置されている。巻出ロール31は被成膜品D1をロール状に巻回したものである。巻取ロール39は成膜品D2をロール状に巻回したものである。
【0020】
被成膜品D1は巻出ロール31から巻き出され、巻取ロール39に向かって搬送される。被成膜品D1の搬送経路にはキャンロール35が配置されている。被成膜品D1をキャンロール35に巻きつけて冷却しながらスパッタリングを行なう。キャンロール35は、スパッタリングにより熱せられる被成膜品D1を冷却するため、内部に冷媒が循環している。
【0021】
真空チャンバー30内には、巻出ロール31、巻取ロール39、およびキャンロール35のほか、被成膜品D1の搬送経路を画定する各種のロールが設けられている。具体的には、真空チャンバー30内には、フリーロール32、38、張力センサロール33、37、フィードロール34、36が設けられている。被成膜品D1はこれらのロールに巻きつけられ、搬送される。
【0022】
キャンロール35の外周面に対向する位置には、被成膜品D1の搬送経路に沿って4つのスパッタリングカソード41〜44が設けられている。各スパッタリングカソード41〜44には、キャンロール35の外周面に対向する面にターゲットが取り付けられている。ターゲットから叩き出されたスパッタ粒子が被成膜品D1の表面上に堆積することで成膜が行なわれる。
【0023】
第1スパッタリング工程では、以下の条件でスパッタリングを行なう。
搬送経路の最も上流に配置された第1スパッタリングカソード41にニッケルクロム合金のターゲットを取り付ける。また、第1スパッタリングカソード41とキャンロール35との間にアルゴンガスを供給する。これにより、ベースフィルム11の第1面11aにニッケルクロム合金からなる第1下地金属層12Aが成膜される。なお、第1スパッタリングカソード41に取り付けるターゲットはニッケルクロム合金に限定されず、ニッケル、クロムなど他の金属でもよい。
【0024】
第1スパッタリングカソード41の下流に配置された第2、第3スパッタリングカソード42、43に銅のターゲットを取り付ける。また、第2、第3スパッタリングカソード42、43とキャンロール35との間にアルゴンガスを供給する。これにより、第1下地金属層12Aの上に第1銅薄膜層13Aが成膜される。
【0025】
搬送経路の最も下流に配置された第4スパッタリングカソード44に銅のターゲットを取り付ける。また、第4スパッタリングカソード44とキャンロール35との間にアルゴンガスと酸素ガスとを供給する。アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下で反応性スパッタリングを行なう。反応性スパッタリングにより、第1銅薄膜層13Aの上に第1酸化銅層14Aが成膜される。ここで、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比率を10:1〜10:4とすることが好ましい。そうすれば、銅と酸素とが反応し、酸化銅の層を成膜できる。
【0026】
スパッタリング後に得られる基材中間品10iは、ロール状に巻き取られて回収される。この際、第1酸化銅層14Aとベースフィルム11の第2面11bとが接触することとなる。銅薄膜層同士が接触しないので、ブロッキング現象が発生しない。
【0027】
(第2スパッタリング工程)
第2スパッタリング工程では、スパッタリングによりベースフィルム11の第2面11bに第2下地金属層12Bと第2銅薄膜層13Bとを成膜して基材10を得る。第2下地金属層12Bと第2銅薄膜層13Bとはベースフィルム11の第2面11bにこの順に積層される。第2下地金属層12Bの素材、厚さは第1下地金属層12Aと同様とすればよい。第2銅薄膜層13Bの厚さは第1銅薄膜層13Aと同様とすればよい。
【0028】
なお、第2銅薄膜層13Bはベースフィルム11の第2面11b側に成膜されていればよい。第2銅薄膜層13Bは第2面11b側に第2下地金属層12Bを介して成膜されてもよいし、第2面11b上に直接成膜されてもよい。すなわち、第2下地金属層12Bはなくてもよい。
【0029】
第2下地金属層12Bと第2銅薄膜層13Bとは、例えば、
図2に示すスパッタリング装置3により成膜される。第2スパッタリング工程において、被成膜品D1は基材中間品10iであり、成膜品D2は基材10である。
【0030】
第2スパッタリング工程では、以下の条件でスパッタリングを行なう。
搬送経路の最も上流に配置された第1スパッタリングカソード41にニッケルクロム合金のターゲットを取り付ける。また、第1スパッタリングカソード41とキャンロール35との間にアルゴンガスを供給する。これにより、ベースフィルム11の第2面11bにニッケルクロム合金からなる第2下地金属層12Bが成膜される。なお、第1スパッタリングカソード41に取り付けるターゲットはニッケルクロム合金に限定されず、ニッケル、クロムなど他の金属でもよい。
【0031】
第1スパッタリングカソード41の下流に配置された第2〜第4スパッタリングカソード42〜44に銅のターゲットを取り付ける。また、第2〜第4スパッタリングカソード42〜44とキャンロール35との間にアルゴンガスを供給する。これにより、第2下地金属層12Bの上に第2銅薄膜層13Bが成膜される。
【0032】
スパッタリング後に得られる基材10は、ロール状に巻き取られて回収される。基材10をロール状に巻き取った際に、第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとの間に第1酸化銅層14Aが挟まった状態となる。第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとが接触しないので、ブロッキング現象の発生を抑制できる。その結果、ブロッキング現象に起因するピンホールの発生を抑制できる。
【0033】
なお、第1酸化銅層14Aの厚さを5〜60nmとすることが好ましい。そうすれば、ブロッキング現象の発生を十分に抑制でき、ピンホールの発生を十分に抑制できる。
【0034】
(電解めっき工程)
電解めっき工程では、電解めっきにより基材10の両面に銅めっき被膜20を成膜して銅張積層板1を得る。電解めっきはロールツーロールにより基材10を巻き出して搬送しつつ行なわれる。すなわち、ロール状に巻回された基材10を巻き出しながら、電解めっきを行なう。前述のごとく、基材10の第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとは接触していないため、銅薄膜層13A、13B同士が密着しない。そのため、基材10を巻き出す際に、銅薄膜層13A、13Bが剥がれ、銅薄膜層13A、13Bに孔が開くことを防止できる。
【0035】
電解めっき工程は電解めっきの前処理として酸処理を含むことが好ましい。酸処理により第1酸化銅層14Aを除去する。第1酸化銅層14Aを除去した後に電解めっきを行なうことで、導体層に酸化銅が含まれない、導電性に優れた銅張積層板1が得られる。
【0036】
〔第2実施形態〕
つぎに、本発明の第2実施形態に係る銅張積層板1の製造方法を説明する。
図3に示すように、第1実施形態の第2スパッタリング工程において、第2下地金属層12Bおよび第2銅薄膜層13Bに加えて、第2酸化銅層14Bを成膜してもよい。第2下地金属層12B、第2銅薄膜層13B、および第2酸化銅層14Bはベースフィルム11の第2面11bにこの順に積層される。
【0037】
本実施形態の第2スパッタリング工程は、第1スパッタリング工程と同様の条件で行なわれる。すなわち、搬送経路の最も下流に配置された第4スパッタリングカソード44に銅のターゲットを取り付ける。また、第4スパッタリングカソード44とキャンロール35との間にアルゴンガスと酸素ガスとを供給する。アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下で反応性スパッタリングを行なう。反応性スパッタリングにより、第2銅薄膜層13Bの上に第2酸化銅層14Bが成膜される。ここで、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比率を10:1〜10:4とすることが好ましい。そうすれば、銅と酸素とが反応し、酸化銅の層を成膜できる。
【0038】
スパッタリング後に得られる基材10は、ロール状に巻き取られ回収される。基材10をロール状に巻き取った際に、第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとの間に第1酸化銅層14Aと第2酸化銅層14Bとが挟まった状態となる。第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとが接触しないので、ブロッキング現象の発生を抑制できる。その結果、ブロッキング現象に起因するピンホールの発生を抑制できる。
【0039】
なお、第2酸化銅層14Bの厚さを5〜60nmとすることが好ましい。そうすれば、ブロッキング現象の発生を十分に抑制でき、ピンホールの発生を十分に抑制できる。
【0040】
電解めっき工程では、酸処理により第1酸化銅層14Aと第2酸化銅層14Bとを除去した後に、電解めっきを行なうことが好ましい。そうすれば、導体層に酸化銅が含まれない、導電性に優れた銅張積層板1が得られる。
【0041】
〔第3実施形態〕
つぎに、本発明の第3実施形態に係る銅張積層板1の製造方法を説明する。
図4に示すように、第1スパッタリング工程において、ベースフィルム11の第1面11aに第1下地金属層12Aと第1銅薄膜層13Aとを成膜し、第1酸化銅層14Aを成膜しなくてもよい。
【0042】
スパッタリング後に得られる基材中間品10iは、ロール状に巻き取られて回収される。この際、第1銅薄膜層13Aとベースフィルム11の第2面11bとが接触することとなる。銅薄膜層同士が接触しないので、ブロッキング現象が発生しない。
【0043】
第2スパッタリング工程では、ベースフィルム11の第2面11bに第2下地金属層12B、第2銅薄膜層13B、および第2酸化銅層14Bを成膜する。
【0044】
スパッタリング後に得られる基材10は、ロール状に巻き取られて回収される。基材10をロール状に巻き取った際に、第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとの間に第2酸化銅層14Bが挟まった状態となる。第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとが接触しないので、ブロッキング現象の発生を抑制できる。その結果、ブロッキング現象に起因するピンホールの発生を抑制できる。
【0045】
〔第4実施形態〕
つぎに、本発明の第4実施形態に係る銅張積層板1の製造方法を説明する。
本実施形態の銅張積層板1の製造方法はスパッタリング工程と電解めっき工程とからなる。スパッタリング工程と電解めっき工程とをこの順に行なうことで、
図5に示すようにベースフィルム11から銅張積層板1を製造する。以下、各工程を順に説明する。
【0046】
(スパッタリング工程)
スパッタリング工程では、スパッタリングによりベースフィルム11の第1面11aに第1下地金属層12A、第1銅薄膜層13A、および第1酸化銅層14Aを成膜する。それとともに、スパッタリングによりベースフィルム11の第2面11bに第2下地金属層12Bと第2銅薄膜層13Bとを成膜する。すなわち、ベースフィルム11の両面11a、11bに銅薄膜層13A、13Bを同時に成膜して基材10を得る。
【0047】
スパッタリング工程には、例えば、
図6に示すスパッタリング装置4が用いられる。スパッタリング装置4は、ロールツーロールにより長尺帯状の被成膜品D1を搬送しつつ、スパッタリングにより被成膜品D1の両面に成膜して成膜品D2を連続的に製造する装置である。スパッタリング工程において、被成膜品D1はベースフィルム11であり、成膜品D2は基材10である。
【0048】
スパッタリング装置4は真空チャンバー30を有する。真空チャンバー30内に巻出ロール31と巻取ロール39とが配置されている。巻出ロール31は被成膜品D1をロール状に巻回したものである。巻取ロール39は成膜品D2をロール状に巻回したものである。
【0049】
被成膜品D1は巻出ロール31から巻き出され、巻取ロール39に向かって搬送される。被成膜品D1の搬送経路には2つのキャンロール35A、35Bが配置されている。被成膜品D1は2つのキャンロール35A、35BにS字状に巻きつけられる。したがって、被成膜品D1の一方の面が第1キャンロール35Aの外側に向き、被成膜品D1の他方の面が第2キャンロール35Bの外側に向く。
【0050】
真空チャンバー30内には、巻出ロール31、巻取ロール39、およびキャンロール35A、35Bのほか、被成膜品D1の搬送経路を画定する各種のロールが設けられている。具体的には、真空チャンバー30内には、フリーロール32、38、張力センサロール33、37、フィードロール34、36が設けられている。被成膜品D1はこれらのロールに巻きつけられ、搬送される。
【0051】
第1キャンロール35Aの外周面に対向する位置には、被成膜品D1の搬送経路に沿って第1群のスパッタリングカソード41A〜44Aが設けられている。各スパッタリングカソード41A〜44Aには、第1キャンロール35Aの外周面に対向する面にターゲットが取り付けられている。
【0052】
また、第2キャンロール35Bの外周面に対向する位置には、被成膜品D1の搬送経路に沿って第2群のスパッタリングカソード41B〜44Bが設けられている。各スパッタリングカソード41B〜44Bには、第2キャンロール35Bの外周面に対向する面にターゲットが取り付けられている。
【0053】
スパッタリング工程では、以下の条件でスパッタリングを行なう。
第1群のスパッタリングカソード41A〜44Aのうち、搬送経路の最も上流に配置された第1スパッタリングカソード41Aにニッケルクロム合金のターゲットを取り付ける。また、第1スパッタリングカソード41と第1キャンロール35Aとの間にアルゴンガスを供給する。これにより、ベースフィルム11の第1面11aにニッケルクロム合金からなる第1下地金属層12Aが成膜される。
【0054】
第1スパッタリングカソード41Aの下流に配置された第2、第3スパッタリングカソード42A、43Aに銅のターゲットを取り付ける。また、第2、第3スパッタリングカソード42A、43Aと第1キャンロール35Aとの間にアルゴンガスを供給する。これにより、第1下地金属層12Aの上に第1銅薄膜層13Aが成膜される。
【0055】
搬送経路の最も下流に配置された第4スパッタリングカソード44Aに銅のターゲットを取り付ける。また、第4スパッタリングカソード44Aと第1キャンロール35Aとの間にアルゴンガスと酸素ガスとを供給する。アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下で反応性スパッタリングを行なう。反応性スパッタリングにより、第1銅薄膜層13Aの上に第1酸化銅層14Aが成膜される。
【0056】
第2群のスパッタリングカソード41B〜44Bのうち、搬送経路の最も上流に配置された第1スパッタリングカソード41Bにニッケルクロム合金のターゲットを取り付ける。また、第1スパッタリングカソード41と第2キャンロール35Bとの間にアルゴンガスを供給する。これにより、ベースフィルム11の第2面11bにニッケルクロム合金からなる第2下地金属層12Bが成膜される。
【0057】
第1スパッタリングカソード41Bの下流に配置された第2〜第4スパッタリングカソード42B〜44Bに銅のターゲットを取り付ける。また、第2〜第4スパッタリングカソード42B〜44Bと第2キャンロール35Bとの間にアルゴンガスを供給する。これにより、第2下地金属層12Bの上に第2銅薄膜層13Bが成膜される。
【0058】
スパッタリング後に得られる基材10は、ロール状に巻き取られて回収される。基材10をロール状に巻き取った際に、第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとの間に第1酸化銅層14Aが挟まった状態となる。第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとが接触しないので、ブロッキング現象の発生を抑制できる。その結果、ブロッキング現象に起因するピンホールの発生を抑制できる。
【0059】
(電解めっき工程)
電解めっき工程では、電解めっきにより基材10の両面に銅めっき被膜20を成膜して銅張積層板1を得る。電解めっきはロールツーロールにより基材10を搬送しつつ行なわれる。
【0060】
電解めっき工程では、酸処理により第1酸化銅層14Aを除去した後に、電解めっきを行なうことが好ましい。そうすれば、導体層に酸化銅が含まれない、導電性に優れた銅張積層板1が得られる。
【0061】
〔第5実施形態〕
つぎに、本発明の第5実施形態に係る銅張積層板1の製造方法を説明する。
図7に示すように、第4実施形態のスパッタリング工程において、第2下地金属層12Bおよび第2銅薄膜層13Bに加えて、第2酸化銅層14Bを成膜してもよい。
【0062】
本実施形態のスパッタリング工程はつぎの条件で行なわれる。
第1群のスパッタリングカソード41A〜44Aの条件は第4実施形態と同様である。第2群のスパッタリングカソード41B〜44Bのうち、搬送経路の上流側に配置された第1〜第3スパッタリングカソード41B〜43Bの条件も第4実施形態と同様である。搬送経路の最も下流に配置された第4スパッタリングカソード44Bに銅のターゲットを取り付ける。また、第4スパッタリングカソード44Bと第2キャンロール35Bとの間にアルゴンガスと酸素ガスとを供給する。アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下で反応性スパッタリングを行なう。反応性スパッタリングにより、第2銅薄膜層13Bの上に第2酸化銅層14Bが成膜される。
【0063】
スパッタリング後に得られる基材10は、ロール状に巻き取られて回収される。基材10をロール状に巻き取った際に、第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとの間に第1酸化銅層14Aと第2酸化銅層14Bとが挟まった状態となる。第1銅薄膜層13Aと第2銅薄膜層13Bとが接触しないので、ブロッキング現象の発生を抑制できる。その結果、ブロッキング現象に起因するピンホールの発生を抑制できる。
【0064】
〔第6実施形態〕
つぎに、本発明の第6実施形態に係る銅張積層板1の製造方法を説明する。
電解めっき工程を以下に説明する手順で行なってもよい。なお、本実施形態の電解めっき工程は、第1〜第5実施形態の第1、第2スパッタリング工程およびスパッタリング工程のいずれとも組み合わせることができる。
【0065】
銅めっき被膜20は、特に限定されないが、
図8に示すめっき装置5により成膜される。
めっき装置5は、ロールツーロールにより長尺帯状の基材10を巻き出して搬送しつつ、基材10に対して電解めっきを行なう装置である。めっき装置5はロール状に巻回された基材10を巻き出す供給装置51と、めっき後の基材10(銅張積層板1)をロール状に巻き取る巻取装置52とを有する。
【0066】
また、めっき装置5は基材10を搬送する上下一対のエンドレスベルト53(下側のエンドレスベルト53は図示省略)を有する。各エンドレスベルト53には基材10を把持する複数のクランプ54が設けられている。供給装置51から繰り出された基材10は、その幅方向が鉛直方向に沿う懸垂姿勢となり、両縁が上下のクランプ54に把持される。基材10はエンドレスベルト53の駆動によりめっき装置5内を周回した後、クランプ54から開放され、巻取装置52で巻き取られる。
【0067】
基材10の搬送経路には、前処理槽55、めっき槽60、および後処理槽56が配置されている。基材10は前処理槽55内を搬送されつつ、酸処理により第1酸化銅層14Aおよび第2酸化銅層14Bが除去される。また、基材10はめっき槽60内を搬送されつつ、電解めっきよりその両面に銅めっき被膜20が成膜される。これにより、長尺帯状の銅張積層板1が得られる。
【0068】
図9に示すように、めっき槽60は基材10の搬送方向に沿った横長の単一の槽である。基材10はめっき槽60の中心に沿って搬送される。めっき槽60には銅めっき液が貯留されている。めっき槽60内を搬送される基材10は、その全体が銅めっき液に浸漬されている。
【0069】
銅めっき液は水溶性銅塩を含む。銅めっき液に一般的に用いられる水溶性銅塩であれば、特に限定されず用いられる。水溶性銅塩として、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩などが挙げられる。無機銅塩として、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅などが挙げられる。アルカンスルホン酸銅塩として、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅などが挙げられる。アルカノールスルホン酸銅塩として、イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅などが挙げられる。有機酸銅塩として、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅などが挙げられる。
【0070】
銅めっき液に用いる水溶性銅塩として、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩などから選択された1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、硫酸銅と塩化銅とを組み合わせる場合のように、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、有機酸銅塩などから選択された1つのカテゴリー内の異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、銅めっき液の管理の観点からは、1種類の水溶性銅塩を単独で用いることが好ましい。
【0071】
銅めっき液は硫酸を含んでもよい。硫酸の添加量を調整することで、銅めっき液のpHおよび硫酸イオン濃度を調整できる。
【0072】
銅めっき液は一般的にめっき液に添加される添加剤を含む。添加剤として、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、塩素成分などが挙げられる。添加剤として、レベラー成分、ポリマー成分、ブライトナー成分、塩素成分などから選択された1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
レベラー成分は窒素を含有するアミンなどで構成される。レベラー成分として、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ヤヌス・グリーンBなどが挙げられる。ポリマー成分として、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体から選択された1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。ブライトナー成分として、特に限定されないが、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(略称SPS)、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸(略称MPS)などから選択された1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。塩素成分として、特に限定されないが、塩酸、塩化ナトリウムなどから選択された1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0074】
銅めっき液の各成分の含有量は任意に選択できる。ただし、銅めっき液は硫酸銅を60〜280g/L、硫酸を20〜250g/L含有することが好ましい。そうすれば、銅めっき被膜20を十分な速度で成膜できる。銅めっき液はレベラー成分を0.5〜50mg/L含有することが好ましい。そうすれば、突起を抑制し平坦な銅めっき被膜20を形成できる。銅めっき液はポリマー成分を10〜1,500mg/L含有することが好ましい。そうすれば、基材10端部への電流集中を緩和し均一な銅めっき被膜20を形成できる。銅めっき液はブライトナー成分を0.2〜16mg/L含有することが好ましい。そうすれば、析出結晶を微細化し銅めっき被膜20の表面を平滑にできる。銅めっき液は塩素成分を20〜80mg/L含有することが好ましい。そうすれば、異常析出を抑制できる。また、銅めっき液が塩素成分を含むことで、形成された銅めっき被膜20に不純物として塩素が含まれる。
【0075】
銅めっき液の温度は20〜35℃が好ましい。また、めっき槽60内の銅めっき液を撹拌することが好ましい。銅めっき液を撹拌する手段は、特に限定されないが、噴流を利用した手段を用いることができる。例えば、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材10に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌できる。
【0076】
めっき槽60の内部には、基材10の搬送方向に沿って複数のアノード61が配置されている。また、基材10を把持するクランプ54はカソードとしての機能も有する。アノード61とクランプ54(カソード)との間に電流を流すことで、基材10の表面に銅めっき被膜20を成膜できる。
【0077】
なお、
図9に示すめっき槽60には、基材10の表裏両側にアノード61が配置されている。したがって、基材10の両面に同時に銅めっき被膜20を成膜できる。
【0078】
めっき槽60の内部に配置された複数のアノード61は、それぞれに整流器が接続されている。したがって、アノード61ごとに異なる電流密度となるように設定できる。本実施形態では、めっき槽60の内部が基材10の搬送方向に沿って、複数の区域に区分されている。各区域は一または複数の連続するアノード61が配置された領域に対応する。
【0079】
各区域は低電流密度区域LZまたは高電流密度区域HZである。低電流密度区域LZでは電流密度が比較的低い「低電流密度」に設定されており、基材10に対して低電流密度での電解めっきを行なう。高電流密度区域HZでは電流密度が低電流密度よりも高い「高電流密度」に設定されており、基材10に対して高電流密度での電解めっきを行なう。
【0080】
ここで、低電流密度区域LZにおける電流密度(低電流密度)を0〜0.29A/dm
2に設定することが好ましい。また、高電流密度区域HZにおける電流密度(高電流密度)を0.3〜10A/dm
2に設定することが好ましい。
【0081】
低電流密度区域LZと高電流密度区域HZとは基材10の搬送方向に沿って交互に設けられている。低電流密度区域LZの数は1つでもよいし、複数でもよい。高電流密度区域HZの数は1つでもよいし、複数でもよい。基材10の搬送方向を基準として、最も上流の区域が低電流密度区域LZであってもよいし、高電流密度区域HZであってもよい。また、最も下流の区域が低電流密度区域LZであってもよいし、高電流密度区域HZであってもよい。
【0082】
めっき槽60に複数の低電流密度区域LZが配置される場合、複数の低電流密度区域LZにおける電流密度は同じでもよいし、異なってもよい。また、めっき槽60に複数の高電流密度区域HZが配置される場合、複数の高電流密度区域HZにおける電流密度は同じでもよいし、異なってもよい。ただし、高電流密度区域HZにおける電流密度は、基材10の搬送方向の下流側に向かって、段階的に上昇するよう設定することが好ましい。
【0083】
基材10は、低電流密度区域LZと高電流密度区域HZとを交互に通過しながら、電解めっきされる。すなわち、めっき槽60では基材10に対して、低電流密度での電解めっきと、高電流密度での電解めっきとを交互に繰り返し行なう。これにより、銅めっき被膜20が成膜される。
【0084】
このような方法により形成された銅めっき被膜20は、
図10に示すように、異なる電流密度での電解めっきにより形成された複数の層が積層された構造となる。具体的には、銅めっき被膜20は高塩素濃度層21と低塩素濃度層22とが、厚さ方向に交互に積層された構造を有する。ここで、高塩素濃度層21は低電流密度での電解めっきにより形成され、相対的に塩素濃度が高い。また、低塩素濃度層22は高電流密度での電解めっきにより形成され、相対的に塩素濃度が低い。これは、電解めっきにおける電流密度が低いほど、銅めっき液の添加剤がめっき被膜に取り込まれやすくなるためであると推測される。
【0085】
高塩素濃度層21および低塩素濃度層22の配置は、めっき槽60における低電流密度区域LZおよび高電流密度区域HZの配置に依存する。高塩素濃度層21の数は1つでもよいし、複数でもよい。低塩素濃度層22の数は1つでもよいし、複数でもよい。基材10の表面(銅薄膜層13A、13Bの表面)に直接積層される層が高塩素濃度層21であってもよいし、低塩素濃度層22であってもよい。また、銅めっき被膜20の表面(基材10と反対側の面)に表れる層が高塩素濃度層21であってもよいし、低塩素濃度層22であってもよい。
【0086】
例えば、セミアディティブ法により銅張積層板1を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する際に、化学研磨により銅めっき被膜20を減膜することがある。例えば、厚さ1〜3μmの銅めっき被膜20を0.4〜0.8μmまで減膜する。この化学研磨により導体層にピンホールが生じることがある。
【0087】
これに対して、本実施形態の銅張積層板1であれば、ピンホールの発生を抑制できる。その理由は不明なところもあるが、概ねつぎのとおりであると考えられる。不純物として塩素を多く含む高塩素濃度層21では化学研磨液によるエッチングの進行が抑制される。エッチングが進行しやすい経路は高塩素濃度層21で途切れる。そのため、エッチングが進行しやすい経路が厚さ方向に繋がることがなく、エッチングが局所的に厚さ方向に進行することが抑制される。その結果、ピンホールの発生を抑制できる。
【0088】
銅めっき被膜20に含まれる不純物の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によって測定できる。高塩素濃度層21の二次イオン質量分析法により測定した塩素濃度は1×10
19atoms/cm
3以上であることが好ましい。低塩素濃度層22の二次イオン質量分析法により測定した塩素濃度は1×10
19atoms/cm
3未満であることが好ましい。塩素濃度が上記の通りであれば、ピンホールの発生を十分に抑制できる。
【0089】
また、銅めっき被膜20は高塩素濃度層21を6層以上含むことが好ましい。そうであれば、ピンホールの発生を十分に抑制できる。
【0090】
なお、銅めっき被膜20は塩素以外の不純物、例えば、銅めっき液の添加剤に由来する炭素、酸素、硫黄などを含んでもよい。
【実施例】
【0091】
つぎに、実施例を説明する。
(スパッタリング試験)
まず、スパッタリングにより酸化銅層を成膜することで、ピンホールの発生を抑制できることを確認した。
【0092】
ベースフィルムとして、厚さ50μm、幅500mm、長さ100mのポリイミドフィルムを用意した。ベースフィルムをマグネトロンスパッタリング装置にセットした。マグネトロンスパッタリング装置内には4つのスパッタリングカソードが設けられている。各スパッタリングカソードには銅ターゲットが取り付けられている。
【0093】
搬送経路の上流側に配置された3つのスパッタリングカソードにアルゴンガスを500sccmで供給した。3つのスパッタリングカソードにより、ベースフィルムの第1面に第1銅薄膜層を成膜した。ここで、第1銅薄膜層の厚さが100nmとなるように電流を調整した。
【0094】
搬送経路の最も下流に配置された1つのスパッタリングカソードにアルゴンガスと酸素ガスとを供給した。反応性スパッタリングにより、第1銅薄膜層の上に第1酸化銅層を成膜した。この際、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比率と、第1酸化銅層の厚さとを変化させ9つの試料を作成した。ここで、アルゴンガスおよび酸素ガスは合計流量を100sccmとし、流量比率を10:0〜10:4の間で変化させた。また、第1酸化銅層の厚さが0〜60nmの間で変化するように電流を調整した。スパッタリング後、各試料を直径6インチのコアに張力150Nで巻き取った。
【0095】
つぎに、各試料をマグネトロンスパッタリング装置にセットし、ベースフィルムの第2面に第2銅薄膜層を成膜した。この際、4つのスパッタリングカソードの全てにアルゴンガスを500sccmで供給した。また、第2銅薄膜層の厚さが100nmとなるように電流を調整した。スパッタリング後、各試料を直径6インチのコアに張力150Nで巻き取った。
【0096】
各試料を24時間室内に放置した後、電解めっきを行なった。電解めっきの前処理として、温度30℃、10質量%の硫酸水溶液を用いて酸処理を行ない、第1酸化銅層の除去を行なった。電解めっきにより各試料の両面に厚さ2.0μmの銅めっき被膜を成膜した。ここで、銅めっき液として硫酸銅、硫酸、塩酸、添加剤を含む液を用いた。
【0097】
電解めっきの後、各試料から100×100mmの小片を採取した。採取した小片の一方の面の導体層をエッチング液で除去した。導体層が除去され露出したベースフィルム側からハロゲンランプ(照度4,500cd)を照射して、透過光の数をピンホール数として計数した。各試料の条件およびピンホール数を表1に示す。
【0098】
【表1】
なお、ピンホール数の○は20個未満を意味する。×は100個以上を意味する。
【0099】
酸化銅層を形成した試料1〜8はピンホール数が20個未満であった。これに対して酸化銅層を形成しなかった試料9はピンホール数が100個以上であった。これより、スパッタリングにより酸化銅層を形成すれば、ピンホールの発生を抑制できることが確認された。
【0100】
また、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比を10:1〜10:4とすれば、酸化銅層を成膜できることが確認された。また、酸化銅層の厚さを5〜60nmとすれば、ピンホールの発生を十分に抑制できることが確認された。
【0101】
(電解めっき試験)
つぎに、銅めっき被膜内に高塩素濃度層を形成することで、ピンホールの発生を抑制できることを確認した。
【0102】
・実施例1
つぎの手順で、基材を準備した。ベースフィルムとして、厚さ35μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製 Upilex−35SGAV1)を用意した。ベースフィルムをマグネトロンスパッタリング装置にセットした。マグネトロンスパッタリング装置内にはニッケルクロム合金ターゲットと銅ターゲットとが設置されている。ニッケルクロム合金ターゲットの組成はCrが20質量%、Niが80質量%である。真空雰囲気下で、ベースフィルムの片面に、厚さ25nmのニッケルクロム合金からなる下地金属層を形成し、その上に厚さ100nmの銅薄膜層を形成した。
【0103】
つぎに、銅めっき液を調整した。銅めっき液は硫酸銅を120g/L、硫酸を70g/L、レベラー成分を20mg/L、ポリマー成分を1,100mg/L、ブライトナー成分を16mg/L、塩素成分を50mg/L含有する。レベラー成分としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄共重合体(ニットーボーメディカル株式会社製 PAS−A―5)を用いた。ポリマー成分としてポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体(日油株式会社製 ユニルーブ50MB−11)を用いた。ブライトナー成分としてビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(RASCHIG GmbH社製の試薬)を用いた。塩素成分として塩酸(和光純薬工業株式会社製の35%塩酸)を用いた。
【0104】
前記銅めっき液が貯留されためっき槽に基材を供給した。電解めっきにより基材の片面に厚さ2.0μmの銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得た。ここで、銅めっき液の温度を31℃とした。また、電解めっきの間、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材の表面に対して略垂直に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌した。
【0105】
電解めっきにおいて、空送期間が11回含まれるように電流密度を変化させた。ここで、空送期間とは低電流密度、具体的には0.0A/dm
2で電解めっきを行なう期間を意味する。空送期間以外における電流密度(高電流密度)は1.2A/dm
2とした。
【0106】
・実施例2
実施例1と同様の手順で銅張積層板を得た。ただし、電解めっきにおいて、空送期間が7回含まれるように電流密度を変化させた。その余の条件は実施例1と同様である。
【0107】
・比較例1
実施例1と同様の手順で銅張積層板を得た。ただし、電解めっきにおいて、電流密度を3.2A/dm
2とし、空送期間を設けなかった。その余の条件は実施例1と同様である。
【0108】
・塩素濃度測定
実施例1、2および比較例1で得られた銅張積層板に対して、銅めっき被膜の塩素濃度を測定した。測定は二次イオン質量分析法によって行なった。測定装置としてアルバック・ファイ株式会社の四重極型二次イオン質量分析装置(PHI ADEPT−1010)を用いた。測定条件は、一次イオン種をCs
+、一次加速電圧を5.0kV、検出領域を96×96μmとした。なお、本明細書における塩素濃度の値は、前記条件で測定した値を基準とする。
【0109】
図11(A)に実施例1で得られた銅張積層板の測定結果を示す。
図11(B)に実施例2で得られた銅張積層板の測定結果を示す。
図11(C)に比較例1で得られた銅張積層板の測定結果を示す。
図11の各グラフの横軸は銅めっき被膜の厚さ方向の位置である。0.0μmが銅薄膜層側の面、2.0μmが表面である。縦軸は塩素濃度である。
【0110】
図11(A)のグラフから分かるように、実施例1では、銅めっき被膜の厚さ方向の塩素濃度分布が周期的な10個のピークを有する分布となっている。0.2μm付近のピークは最初の2回の空送期間に対応する。残りの9個のピークはそれに続く9回の空送期間に対応する。各ピークの塩素濃度は1×10
19atoms/cm
3以上である。また、ピーク間の下限は1×10
19atoms/cm
3未満である。したがって、この銅めっき被膜は高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された構成といえる。また、この銅めっき被膜は高塩素濃度層を10層含んでいるといえる。
【0111】
図11(B)のグラフから分かるように、実施例2では、銅めっき被膜の厚さ方向の塩素濃度分布が周期的な6個のピークを有する分布となっている。0.2μm付近のピークは最初の2回の空送期間に対応する。残りの5個のピークはそれに続く5回の空送期間に対応する。各ピークの塩素濃度は1×10
19atoms/cm
3以上である。また、ピーク間の下限は1×10
19atoms/cm
3未満である。したがって、この銅めっき被膜は高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された構成といえる。また、この銅めっき被膜は高塩素濃度層を6層含んでいるといえる。
【0112】
図11(C)のグラフから分かるように、比較例1では、銅めっき被膜の厚さ方向の全体に渡って塩素濃度が低い。具体的には、塩素濃度が全体に渡って1×10
19atoms/cm
3未満である。したがって、この銅めっき被膜は高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された構成を有していない。
【0113】
・ピンホール
つぎに、化学研磨後のピンホールの数を測定した。
実施例1、2および比較例1で得られた銅張積層板に対して化学研磨を行なった。化学研磨液として硫酸と過酸化水素とを主成分とした液(三菱ガス化学株式会社製CPE−750を10倍に希釈した液)を用いた。厚さ2μmの銅めっき被膜を0.5μmまで減膜した。化学研磨の後、ピンホールの数を測定した。測定は、ベースフィルム側からハロゲンランプを照射して、金属顕微鏡により視野内に存在する透過光の数を計数することにより行った。ここで、金属顕微鏡の視野は1.81mm×2.27mmである。3視野の透過光の数の総数をピンホール数とした。
【0114】
その結果を表2に示す。実施例1、2は比較例1に比べてピンホールが少ないことが確認された。これより、高塩素濃度層と低塩素濃度層とが交互に積層された銅めっき被膜であれば、ピンホールの発生を抑制できることが確認された。また、銅めっき被膜に含まれる高塩素濃度層の数が多いほうがピンホールの発生を抑制できることが確認された。銅めっき被膜に含まれる高塩素濃度層の数が6層以上であれば、ピンホールの発生を十分に抑制できる。
【0115】
【表2】