【課題】エンジン室内に吸気された外気が熱交換器を通過するように構成された建設機械を、粉塵等が大量に浮遊する環境下で使用した場合にも、防塵フィルタのクリーニングに起因する作業効率の低下を抑制する。
【解決手段】エンジン室15a内にエンジン31、熱交換器35及び冷却ファン33が配置されており、冷却ファン33によってエンジン室15a内に吸気された外気が熱交換器35を通過する。熱交換器35の吸気側に、エンジン室15aに対し独立して吸気室15bが設けられている。吸気室15bには、外部に開口した吸気口50aを有する吸気筒50が接続されている。吸気筒50は、吸気口50aから吸気室15bとの接続部50bまでの間に屈曲部50cを有し、屈曲部50cの外側コーナーの内壁面の下流側に集塵ポケット51が設けられている。
エンジン室内にエンジン、熱交換器及び冷却ファンが配置されており、前記冷却ファンによって前記エンジン室内に吸気された外気が前記熱交換器を通過するように構成された建設機械であって、
前記熱交換器の吸気側に、前記エンジン室に対し独立して吸気室が設けられており、
前記吸気室には、外部に開口した吸気口を有する吸気筒が接続されており、
前記吸気筒は、前記吸気口から前記吸気室との接続部までの間に屈曲部を有し、
前記屈曲部の外側コーナーの内壁面の下流側に集塵ポケットが設けられている、
建設機械。
前記吸気筒における前記屈曲部から前記接続部までの部分の断面積は、前記冷却ファンの回転面の面積よりも小さく、且つ、前記吸気筒における前記吸気口から前記屈曲部までの部分の断面積よりも大きい、
請求項10に記載の建設機械。
前記集塵ポケットは、前記吸気筒における前記屈曲部から前記接続部までの下流部分のうち前記外側コーナー側を区画する仕切り板と、当該下流部分の前記外側コーナー側の壁部とに囲まれた領域である、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の建設機械。
前記吸気筒における前記屈曲部から前記接続部までの下流部分の前記吸気口側の内壁面は、当該下流部分の前記外側コーナー側の内壁面に対し、前記接続部の前記吸気口側の端部よりも近接している、
請求項1〜16のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建設機械で用いられている防塵フィルタは、熱交換器等に目詰まりを生じさせるサイズの大きい粉塵等をメッシュに付着させるように構成されている。防塵フィルタのメッシュに付着する粉塵等の量が増えてくると、サイズの小さい粉塵等も防塵フィルタのメッシュに付着し始め、やがて、メッシュ穴がふさがって空気が防塵フィルタを通過しにくくなりオーバーヒートの原因となるので、そうなる前に、防塵フィルタのクリーニングを行う必要がある。
【0006】
しかしながら、産業廃棄現場や解体現場のように、粉塵等が大量に浮遊する環境下で建設機械を使用すると、防塵フィルタに付着した粉塵等のクリーニングを頻繁に行う必要があるため、建設機械の作業効率が低下するという問題が生じる。
【0007】
前記に鑑み、本発明は、エンジン室内に吸気された外気が熱交換器を通過するように構成された建設機械を、粉塵等が大量に浮遊する環境下で使用した場合にも、防塵フィルタのクリーニングに起因する作業効率の低下を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明に係る建設機械は、エンジン室内にエンジン、熱交換器及び冷却ファンが配置されており、冷却ファンによってエンジン室内に吸気された外気が熱交換器を通過するように構成された建設機械であって、熱交換器の吸気側に、エンジン室に対し独立して吸気室が設けられており、吸気室には、外部に開口した吸気口を有する吸気筒が接続されており、吸気筒は、吸気口から吸気室との接続部までの間に屈曲部を有し、屈曲部の外側コーナーの内壁面の下流側に集塵ポケットが設けられている。
【0009】
本発明に係る建設機械によると、熱交換器の吸気側に設けられた吸気室に、屈曲部を有する吸気筒が接続されており、当該屈曲部の外側コーナーの内壁面の下流側に集塵ポケットが設けられている。このため、吸気筒の吸気口から吸気された外気に含まれる粉塵等(以下、ダストと称する)のうち、熱交換器等に目詰まりを生じさせる比較的サイズの大きいダスト(以下、大径ダストと称する)の一部又は全部を吸気筒の屈曲部において慣性分離して集塵ポケットに回収することができる。すなわち、大径ダストの一部又は全部は、吸気口から吸気された空気のように屈曲部で滑らかに方向転換することはできず、屈曲部の外側コーナーの内壁面に衝突した後、当該内壁面に沿って進み、その後、集塵ポケットに回収される。従って、ダストが大量に浮遊する環境下で建設機械を使用した場合にも、従来の建設機械のように防塵フィルタに付着したダストのクリーニングを頻繁に行う必要がなくなるので、作業効率の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る建設機械において、外側コーナーの内壁面は円弧状であってもよい。
【0011】
このようにすると、屈曲部の外側コーナーの内壁面近傍で渦流が発生することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0012】
本発明に係る建設機械において、外側コーナーの内壁面は角部を有し、屈曲部には、角部を覆うように導風板が設けられていてもよい。
【0013】
このようにすると、屈曲部の外側コーナーの内壁面近傍で渦流が発生することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0014】
本発明に係る建設機械において、吸気筒は、屈曲部において90°曲がっていてもよい。尚、本発明において、「90°」とは数学的に厳密な90°を意味するものではなく、製造・取り付け誤差等を考慮した実質的な「90°」を意味する。
【0015】
このようにすると、屈曲部によってダストの慣性分離を十分に行えると共に、吸気筒を屈曲部において鋭角に曲げて構成した場合と比べて、吸気時に圧力損失が発生することを抑制できる。このような作用効果を得るために、屈曲部における吸気筒の屈曲角は、好ましくは85°以上95°以下の範囲、より好ましくは87.5°以上92.5°の範囲、さらに好ましくは89°以上91°以下の範囲であってもよい。
【0016】
本発明に係る建設機械において、吸気口から吸気された外気を集塵ポケットの内部にさらに吸気する他のファンが設けられていてもよい。
【0017】
このようにすると、いったん集塵ポケットに回収されたダストが、集塵ポケットの外へ再度飛散することを抑制できる。
【0018】
また、この場合、集塵ポケットには、外部に通じる開口が設けられており、当該開口又はその近傍に他のファンが配置されていてもよい。
【0019】
このようにすると、他のファンにより集塵ポケットの内部に吸気された空気と共にダストをそのまま外部に排出することができるので、集塵ポケットに回収されたダストを廃棄する手間を省くことができる。
【0020】
本発明に係る建設機械において、吸気筒内において集塵ポケットの内部から外部に引き出されており、集塵ポケット内の圧力を低減する戻し流路が設けられていてもよい。
【0021】
このようにすると、次のような効果を得ることができる。すなわち、集塵ポケット内の圧力を低減する機構が存在しない場合、(1) 集塵ポケット内の圧力が上昇してダストが集塵ポケット内に入りにくくなるという問題、及び、(2) いったん集塵ポケットに回収されたダストが風圧によって集塵ポケットの外へ押し出されるという問題、が生じるおそれがある。それに対して、集塵ポケット内の圧力を低減する戻し流路を設けることによって、前述の(1) 、(2) の問題が生じることを抑制できる。
【0022】
また、この場合、戻し流路は、吸気筒の外側コーナー側の内壁面に沿って集塵ポケットの内部から吸気口近傍まで連通していてもよい。
【0023】
このようにすると、吸気口に近づくほど吸気筒内の圧力が低くなるため、戻し流路の入口(つまり集塵ポケットの内部)と出口(つまり吸気口近傍)との間の圧力差が大きくなるので、集塵ポケット内の圧力を効果的に低減することができる。
【0024】
また、この場合、戻し流路における吸気口近傍の出口は、吸気口の開口面に対し垂直又はほぼ垂直に開口されていてもよい。
【0025】
このようにすると、戻し流路における吸気口近傍の出口から排出される空気の流れが、吸気口から吸気される外気の流れを阻害することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0026】
本発明に係る建設機械において、吸気筒における少なくとも吸気口から屈曲部までの部分の断面積は、冷却ファンの回転面の面積よりも小さくてもよい。
【0027】
このようにすると、吸気口から吸気される空気の流速を増大させることができるため、より多くのダストを屈曲部の外側コーナーの内壁面に衝突させることができるので、より多くのダストを集塵ポケットに回収することができる。
【0028】
また、この場合、吸気筒における屈曲部から接続部までの部分の断面積は、冷却ファンの回転面の面積よりも小さく、且つ、吸気筒における吸気口から屈曲部までの部分の断面積よりも大きくてもよい。
【0029】
このようにすると、吸気口から吸気される空気の流速をさらに増大させることができるため、さらに多くのダストを屈曲部の外側コーナーの内壁面に衝突させることができるので、さらに多くのダストを集塵ポケットに回収することができる。
【0030】
本発明に係る建設機械において、吸気筒における吸気口の近傍は、吸気口から離れるに従って断面積が小さくなる誘い形状を有していてもよい。
【0031】
このようにすると、吸気時に圧力損失が発生することを抑制できる。
【0032】
本発明に係る建設機械において、集塵ポケットは、回収したダストを外部に取り出し可能に構成されていてもよい。
【0033】
このようにすると、集塵ポケットに回収されたダストの量が増えて集塵ポケットの外へダストが飛び出しやすくなることを抑制できる。
【0034】
本発明に係る建設機械において、集塵ポケットは、吸気筒における屈曲部から接続部までの下流部分のうち外側コーナー側を区画する仕切り板と、当該下流部分の外側コーナー側の壁部とに囲まれた領域であってもよい。
【0035】
このようにすると、吸気筒における屈曲部から接続部までの下流部分に仕切り板を設けるだけで集塵ポケットを構成することができる。
【0036】
また、この場合、集塵ポケット内には、回収したダストが蓄積される集塵ケースが着脱可能に配置されており、下流部分の外側コーナー側の壁部は、集塵ケースと共に外部に開放可能に構成されていてもよい。
【0037】
このようにすると、吸気筒の壁部の一部を開放するだけで、集塵ケースに回収されたダストを簡単に取り出すことができる。
【0038】
また、この場合、仕切り板における少なくとも屈曲部側の端部は、屈曲部に対応して曲がっていてもよい。
【0039】
このようにすると、集塵ポケットの入口が拡がるため、屈曲部の外側コーナーの内壁面に衝突して跳ね返ったダストが集塵ポケットに入りやすくなる。
【0040】
本発明に係る建設機械において、吸気筒における屈曲部から前記接続部までの下流部分の吸気口側の内壁面は、当該下流部分の外側コーナー側の内壁面に対し、接続部の吸気口側の端部よりも近接していてもよい。
【0041】
このようにすると、吸気筒における屈曲部から接続部までの下流部分の吸気口側の内壁面近傍で渦流が発生することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0042】
本発明に係る建設機械において、吸気筒における屈曲部から接続部までの部分は、吸気室の上面に垂直又はほぼ垂直に接続されていてもよい。
【0043】
このようにすると、屈曲部の外側コーナーの内壁面に衝突した後のダストを重力によって効率よく集塵ポケットに回収することができる。
【0044】
本発明に係る建設機械において、吸気室内に、熱交換器の吸気側を密閉して囲むダクトが配置されており、ダクトの吸気口には防塵フィルタが設けられていてもよい。
【0045】
このようにすると、熱交換器等に目詰まりを生じさせる大径ダストのうち、集塵ポケットに回収されなかった大径ダストを防塵フィルタによって除去することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によると、エンジン室内に吸気された外気が熱交換器を通過するように構成された建設機械を、ダストが大量に浮遊する環境下で使用した場合にも、防塵フィルタのクリーニングに起因する作業効率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(実施形態)
以下、実施形態に係る建設機械について、図面を参照しながら説明する。
【0049】
図1は、実施形態に係る建設機械の構成を示す側面図であり、
図2は、実施形態に係る建設機械における上部旋回体の内部構成を示す背面図である。尚、
図1及び
図2においては、上下や前後左右の方向を矢印で示しており、特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれらの矢印で示す方向に従って説明する。
【0050】
図1及び
図2に示すように、建設機械10は、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体20とを備えている。上部旋回体20には、アタッチメント13、キャブ14、機械室15、アッパーフレーム21等が設けられている。建設機械10は、例えば小旋回型であり、旋回半径が小さくなるように、上部旋回体20は相対的に小さく構成されている。
【0051】
アタッチメント13は、上部旋回体20の前部に設置され、ブーム13a、アーム13b及びバケット13c等から構成されている。ブーム13a、アーム13b及びバケット13cはそれぞれ、油圧制御された油圧シリンダ13dの伸縮に連動して動作し、掘削等の作業を行う。ブーム13a等の操作は、キャブ14において行われる。
【0052】
アッパーフレーム21は、上部旋回体20の下部に設置されており、キャブ14や機械室15等は、アッパーフレーム21の上に設けられている。キャブ14は、例えば矩形箱形の運転室であり、アタッチメント13に隣接して上部旋回体20に設置されている。機械室15は、上部旋回体20の後部に設置されている。
【0053】
機械室15は、上部旋回体20の後部の外周縁に沿って搭載されたカウンタウエイト22と、カウンタウエイト22と共に機械室15の周囲を覆う機械室カバー16とによって区画されている。カウンタウエイト22は、アタッチメント13との間で前後のバランスを確保するためのものである。カウンタウエイト22の両側部には、メンテナンス開口23が形成されている。メンテナンス開口23は、機械室15内に配設された各種機器のメンテナンスを行うための開口である。メンテナンス開口23は、後方カバー24によって開閉可能に塞がれている。
【0054】
機械室15内には、エンジン31が、その駆動軸が車両左右方向を向くように配置されている。機械室15の内部には、エンジン31の他にも、油圧ポンプ32や、熱交換器35、冷却ファン33及び吸気ダクト40等の冷却装置が収容されている。具体的には、空気流通方向の上流側から順に、吸気ダクト40、熱交換器35、冷却ファン33、エンジン31及び油圧ポンプ32が横並びに配置されている。
【0055】
機械室15の内部は、仕切壁17によって、熱交換器35、冷却ファン33及びエンジン31が配置されたエンジン室15aと、吸気ダクト40が配置された吸気室15bとに仕切られている。
【0056】
熱交換器35は、コア面が車両左右方向を向くように配置されている。熱交換器35は、例えばラジエータから構成されている。冷却ファン33は、エンジン31の駆動軸の左端部に接続され、エンジン31と熱交換器35との間に配設されている。冷却ファン33の周囲は、ファンシュラウド34によって覆われており、熱交換器35を通過した空気がエンジン31に向かって導かれるようになっている。油圧ポンプ32は、エンジン31の駆動軸の右端部に接続されている。吸気ダクト40は、熱交換器35の吸気側を密閉して囲むダクトであり、吸気ダクト40の吸気口には、熱交換器35等に目詰まりを生じさせる大径ダストを除去するための防塵フィルタ44が設けられている。
【0057】
吸気室15bには、外部に開口した吸気口50aを有する吸気筒50が接続されている。具体的には、吸気室15bの上面となる機械室カバー16の左側上部に設けられた開口16aに、吸気筒50の接続部50bが取り付けられている。一方、エンジン室15aの上面となる機械室カバー16の右側上部には、排気口16bが設けられている。
【0058】
建設機械10では、エンジン31の駆動時に、機械室15の内部に左側から右側ヘ向かう空気の流れが形成され、熱交換器35でその空気と熱交換する冷媒によってエンジン31等が冷却される。具体的には、冷却ファン33の回転によって吸気筒50の吸気口50aから外気が機械室15の内部に取り入れられる。取り入れられた空気は、吸気筒50、吸気室15b、防塵フィルタ44、吸気ダクト40を通過してエンジン室15aに入り、熱交換器35を通過する際に熱交換器35を流れる冷媒の熱を吸熱して熱気となり、排気口16bから機械室15の外に排出される。
【0059】
本実施形態では、吸気筒50は、吸気口50aから接続部50bまでの間に屈曲部50cを有し、屈曲部50cの外側コーナー内壁面の下流側(吸気された空気が流れていく方向)に集塵ポケット51が設けられている。集塵ポケット51は、例えば、
図2に示すように、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分のうち外側コーナー側を区画する仕切り板52と、当該下流部分の外側コーナー側の壁部とに囲まれた領域として構成することができる。
【0060】
以上に説明した本実施形態の建設機械10によると、熱交換器35の吸気側に設けられた吸気室15bに、屈曲部50cを有する吸気筒50が接続されており、当該屈曲部50cの外側コーナー内壁面の下流側に集塵ポケット51が設けられている。このため、吸気筒50の吸気口50aから吸気された外気に含まれるダストのうち、熱交換器35等に目詰まりを生じさせる大径ダストの一部又は全部を屈曲部50cにおいて慣性分離して集塵ポケット51に回収することができる。すなわち、大径ダストの一部又は全部は、吸気口50aから吸気された空気のように屈曲部50cで滑らかに方向転換(
図2の実線矢印参照)することはできず、屈曲部50cの外側コーナーの内壁面に衝突した後、当該内壁面に沿って進み、その後、集塵ポケット51に回収される(
図2の破線矢印参照)。従って、ダストが大量に浮遊する環境下で建設機械10を使用した場合にも、従来の建設機械のように防塵フィルタに付着したダストのクリーニングを頻繁に行う必要がなくなるので、作業効率の低下を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態の建設機械10によると、吸気筒50の屈曲部50cの外側コーナー内壁面の断面形状が円弧状であるため、屈曲部50cの外側コーナー内壁面近傍で渦流が発生することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0062】
また、本実施形態の建設機械10によると、吸気筒50は、屈曲部50cにおいて90°又はほぼ90°曲がっている。すなわち、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分は、吸気室15bの上面に垂直又はほぼ垂直に接続されており、吸気筒50における吸気口50aから屈曲部50cまでの上流部分は、水平又はほぼ水平に設けられている。これにより、屈曲部50cによってダストの慣性分離を十分に行えると共に、吸気筒50を屈曲部50cにおいて鋭角に曲げて構成した場合と比べて、吸気時に圧力損失が発生することを抑制できる。このような作用効果を得るために、屈曲部50cにおける吸気筒50の屈曲角は、好ましくは85°以上95°以下の範囲、より好ましくは87.5°以上92.5°の範囲、さらに好ましくは89°以上91°以下の範囲であってもよい。
【0063】
また、本実施形態の建設機械10によると、吸気筒50における吸気口50aの近傍は、吸気口50aから離れるに従って断面積が小さくなる誘い形状を有する。このため、吸気時に圧力損失が発生することを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の建設機械10によると、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分の吸気口50a側の内壁面は、当該下流部分の外側コーナー側内壁面に対し、接続部50bの吸気口50a側の端部よりも近接している。このため、吸気筒50の下流部分における吸気口50a側の内壁面近傍で渦流が発生することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0065】
また、本実施形態の建設機械10によると、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分は、吸気室15bの上面に垂直又はほぼ垂直に接続されている。このため、屈曲部50cの外側コーナー内壁面に衝突した後のダストを、重力によって効率よく集塵ポケット51に回収することができる。
【0066】
また、本実施形態の建設機械10によると、吸気室15b内に、熱交換器35の吸気側を密閉して囲む吸気ダクト40が配置されており、吸気ダクト40の吸気口には、熱交換器35等に目詰まりを生じさせる大径ダストを除去するための防塵フィルタ44が設けられている。このため、集塵ポケット51に回収されなかった大径ダストを防塵フィルタ44によって除去することができる。
【0067】
尚、本実施形態の建設機械10において、集塵ポケット51は、回収したダストを外部に取り出し可能に構成されていてもよい。このようにすると、集塵ポケット51に回収されたダストの量が増えて集塵ポケット51の外へダストが飛び出しやすくなることを抑制できる。
【0068】
以下、回収したダストを外部に取り出し可能に構成された集塵ポケット51を有する吸気筒50の一例について、
図3〜
図5を参照しながら説明する。
【0069】
図3(a)及び(b)はそれぞれ、吸気筒50の一例における通常状態の端面図及び斜視図、
図4(a)及び(b)はそれぞれ、吸気筒50の一例における下流部分の外側コーナー側の壁部を開放した状態の端面図及び斜視図、
図5(a)及び(b)はそれぞれ、吸気筒50の一例における下流部分の外側コーナー側の壁部を開放して集塵ケースを取り出した状態の端面図及び斜視図である。
【0070】
図3(a)及び(b)に示すように、吸気筒50は、吸気口50aから接続部50bまでの間に屈曲部50cを有し、屈曲部50cの外側コーナー内壁面の下流側に集塵ポケット51が設けられている。集塵ポケット51は、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分のうち外側コーナー側を区画する仕切り板52と、当該下流部分の外側コーナー側の壁部53とに囲まれた領域として構成されている。ここで、外側コーナー側の壁部53は、外部に開放可能に構成されている。
【0071】
具体的には、外側コーナー側の壁部53の下端と吸気筒50の接続部50bとは、水平方向に間隔をあけて設けられた2つのヒンジ部材54によって連結されている。外側コーナー側の壁部53は、ヒンジ部材54周りに回動可能に支持されている。一方、外側コーナー側の壁部53の上端及び吸気筒50の屈曲部50cにはそれぞれ、水平方向に間隔をあけて2つずつ配置された一対のロック部材55、56が設けられ、ロック部材55、56によって外側コーナー側の壁部53を閉じ位置で固定することができる。ロック部材55、56は、例えば、外側コーナー側の壁部53の上端と屈曲部50cとに跨がって係合可能なパッチン鍵から構成されている。
【0072】
また、集塵ポケット51内には、回収したダスト90が蓄積される集塵ケース57が着脱可能に配置されている。集塵ケース57は、外側コーナー側の壁部53がロック部材55、56によって集塵ケース57に固定されると、外側コーナー側の壁部53と仕切り板52とに挟まれることによって固定される。ここで、外側コーナー側の壁部53に、集塵ケース57を固定位置で保持する支持部58を設けてもよい。また、仕切り板52の下部を外側コーナー側の壁部53に向けて傾斜させ(つまり、集塵ポケット51を下すぼまり形状に構成し)、集塵ケース57の仕切り板52側の外形も仕切り板52の形状に合わせることによって、集塵ケース57の自重によって集塵ケース57の位置決めを行えるようにしてもよい。
【0073】
以上に説明した吸気筒50によると、吸気筒50を通じた通常状態の吸気を行う場合には、
図3(a)及び(b)に示すように、ロック部材55、56によって外側コーナー側の壁部53を閉じ位置で固定する。また、回収したダスト90を外部に取り出す作業を行う場合には、まず、
図4(a)及び(b)に示すように、ロック部材55、56のロックを解除して、集塵ケース57と共に外側コーナー側の壁部53をヒンジ部材54周りに開き位置まで回動させる。続いて、
図5(a)及び(b)に示すように、集塵ケース57を取り外して集塵ケース57内のダスト90を廃棄する。このように、外側コーナー側の壁部53を開放するだけで、集塵ケース57に回収されたダスト90を簡単に取り出すことができる。
【0074】
尚、吸気筒50(接続部50b)は、例えば締結ボルト59を用いて吸気室15bの上面(機械室カバー16の上部)に取り付けてもよい。
【0075】
また、仕切り板52における少なくとも屈曲部50c側の端部は、屈曲部50cに対応して曲がっていてもよい。このようにすると、集塵ポケット51の入口が拡がるため、屈曲部50cの外側コーナー内壁面に衝突して跳ね返ったダストが集塵ポケット51(つまり集塵ケース57)に入りやすくなる。
【0076】
(変形例1)
以下、変形例1に係る建設機械について、図面を参照しながら説明する。
【0077】
図6は、変形例1に係る建設機械における吸気筒及び吸気室の断面構成を示す図である。尚、
図6において、
図2に示す前述の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0078】
本変形例が前述の実施形態と異なっている点は、
図6に示すように、吸気筒50の吸気口50aから吸気された外気を集塵ポケット51の内部にさらに吸気する小型ファン61が設けられていることである。
【0079】
本変形例によると、いったん集塵ポケット51に回収されたダストが、集塵ポケット51の外へ再度飛散することを抑制できる。
【0080】
尚、本変形例において、小型ファン61により集塵ポケット51の内部に吸気された空気と共にダストをそのまま外部に排出するために、
図6に示すように、集塵ポケット51に外部に通じる開口62を設け、当該開口62又はその近傍に小型ファン61を配置してもよい。これにより、集塵ポケット51に回収されたダストを廃棄する手間を省くことができる。開口62は、例えば、集塵ポケット51の内奥、具体的には、接続部50bの外側コーナー側の壁部に設けてもよい。
【0081】
(変形例2)
以下、変形例2に係る建設機械について、図面を参照しながら説明する。
【0082】
図7は、変形例2に係る建設機械における吸気筒及び吸気室の断面構成を示す図である。尚、
図7において、
図2に示す前述の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0083】
本変形例が前述の実施形態と異なっている点は、
図7に示すように、集塵ポケット51内の圧力を低減するために、吸気筒50の外側コーナー側の内壁面に沿って集塵ポケット51の内部から吸気口50a近傍まで連通する戻し流路70が設けられていることである。具体的には、集塵ポケット51の内部から吸気口50a近傍まで外側コーナー側の内壁面近傍を区画する仕切り壁71が形成され、仕切り壁71の集塵ポケット51側には、戻し流路70の入口となる開口72が、仕切り壁71の吸気口50a側には、戻し流路70の出口となる開口73がそれぞれ形成されている。
【0084】
本変形例によると、次のような効果を得ることができる。すなわち、集塵ポケット51内の圧力を低減する機構が存在しない場合、(1) 集塵ポケット51内の圧力が上昇してダストが集塵ポケット51内に入りにくくなるという問題、及び、(2) いったん集塵ポケット51に回収されたダストが風圧によって集塵ポケット51の外へ押し出されるという問題、が生じるおそれがある。それに対して、本変形例のように、集塵ポケット51内の圧力を低減する戻し流路70を設けることによって、前述の(1)、(2) の問題が生じることを抑制できる。
【0085】
また、本変形例によると、戻し流路70が、吸気筒50の外側コーナー側の内壁面に沿って集塵ポケット51の内部から吸気口50a近傍まで連通している。このようにすると、吸気口50aに近づくほど吸気筒50内の圧力が低くなるため、戻し流路70の入口(つまり集塵ポケット51の内部)と出口(つまり吸気口50a近傍)との間の圧力差が大きくなるので、集塵ポケット51内の圧力を効果的に低減することができる。
【0086】
尚、本変形例において、戻し流路70において吸気口50a近傍の出口となる開口73の開口面は、吸気口50aの開口面に対し垂直又はほぼ垂直に設定されていてもよい。このようにすると、戻し流路70における吸気口0a近傍の出口となる開口73から排出される空気の流れが、吸気口50aから吸気される外気の流れを阻害することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0087】
また、本変形例において、戻し流路70の出口(出口側の開口)は、吸気口50a近傍に限定されることなく、吸気筒50内における集塵ポケット51の外部であって集塵ポケット51の内部よりも圧力が低い任意の箇所に配置可能である。
【0088】
また、本変形例において、吸気筒50の外側コーナー側の内壁面と仕切り壁71とを用いて戻し流路70を構成したが、これに代えて、例えば、吸気筒50内において集塵ポケット51の内部から外部に引き出されたチューブ等を用いて戻し流路70を構成してもよい。
【0089】
(変形例3)
以下、変形例3に係る建設機械について、図面を参照しながら説明する。
【0090】
図8は、変形例3に係る建設機械における吸気筒及び吸気室の断面構成を示す図である。尚、
図8において、
図2に示す前述の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0091】
本変形例の特徴は、
図8に示すように、吸気筒50における少なくとも吸気口50aから屈曲部50cまでの上流部分の断面積が、冷却ファン33(
図2参照)の回転面の面積よりも小さいことである。
【0092】
本変形例によると、吸気口50aから吸気される空気の流速を増大させることができるため、より多くのダストを吸気筒50の屈曲部50cの外側コーナー内壁面に衝突させることができるので、より多くのダストを集塵ポケット51に回収することができる。
【0093】
また、本変形例において、
図8に示すように、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分の断面積が、冷却ファン33の回転面の面積よりも小さく、且つ、吸気筒50における吸気口50aから屈曲部50cまでの上流部分の断面積よりも大きくてもよい。このようにすると、吸気口50aから吸気される空気の流速をさらに増大させることができるため、さらに多くのダストを屈曲部50cの外側コーナー内壁面に衝突させることができるので、さらに多くのダストを集塵ポケット51に回収することができる。
【0094】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は前述の実施形態及び変形例に限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、前述の変形例の任意の2つ以上を相互に組み合わせてもよい。すなわち、前述の実施形態及び変形例の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0095】
また、前述の実施形態では、アタッチメントとしてバケットを備える建設機械を例示したが、エンジン室内に吸気された外気が熱交換器を通過するように構成された建設機械であれば、本発明は適用可能であり、例えば、バケット以外のアタッチメントを備える建設機械に本発明を適用してもよい。
【0096】
また、前述の実施形態では、吸気筒50の屈曲部50cの外側コーナー内壁面の断面形状を円弧状にしたが、これに代えて、例えば
図9に示すように、屈曲部50cの外側コーナー内壁面に角部を設ける一方、屈曲部50cに当該角部を覆うように導風板80を設けてもよい。このようにしても、屈曲部50cの外側コーナー内壁面近傍で渦流が発生することを抑制できるので、吸気効率の低下を抑制できる。
【0097】
また、前述の実施形態では、吸気筒50を吸気室15bの上面に接続したが、吸気室15bにおける吸気筒50の接続箇所は特に限定されない。例えば
図10に示すように、吸気室15bの左側面に吸気筒50を接続してもよい。具体的には、吸気室15bの左側面となる機械室カバー16に設けられた開口16aに、吸気筒50の接続部50bを取り付けてもよい。この場合、吸気筒50における屈曲部50cから接続部50bまでの下流部分を、吸気室15bの左側面に水平又はほぼ水平に接続し、吸気筒50における吸気口50aから屈曲部50cまでの上流部分を、下流部分に対して垂直又はほぼ垂直に設けてもよい。このようにしても、屈曲部50cの外側コーナー内壁面に衝突した後のダストを、効率よく集塵ポケット51に回収することができる。
【0098】
また、前述の実施形態では、回収したダストを外部に取り出し可能な集塵ポケット51の構成として、
図3〜
図5に示す構成を例示したが、これに代えて、例えば、吸気筒50の壁部から集塵ポケット51をそのまま引き出せるように構成してもよい。
【0099】
また、前述の実施形態では、吸気筒50の内部に集塵ポケット51を設けたが、屈曲部50cの外側コーナー内壁面の下流側であれば、例えば、吸気筒50に外付けで集塵ポケットを設けたり、吸気室15bにおける吸気筒50の接続箇所近傍に集塵ポケットを設けたりしてもよい。