波長380nmの光の透過率が40%以上であり、波長350nmの光の透過率が30%以下であり、波長315nmの光の透過率が10%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記ガラス板は、Ce、Sn、Ti、からなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有する、請求項5または6に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性ガラス物品が一対のガラス板が接着層を介して接合された合わせガラスであり、前記合わせガラスは、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T315nm超400nm以下が3%以上、前記波長315nm以下の光透過率T315nm以下が60%以下、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率が65%以下、かつ日射熱取得率が0.70以下の波長選択透過性合わせガラスである、請求項5に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうちいずれか一方のガラス板のいずれか一方の主面にLow−E膜が設けられている、請求項8〜10のいずれかに記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記一対のガラス板のうちいずれか一方のガラス板の主面にLow−E膜が形成されている場合、前記Low−E膜は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス1以外のガラス板の主面に設けられている、請求項14に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性ガラス1は、Ce、Sn、Ti、からなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有する、請求項14〜16のいずれかに記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記一対のガラス板のうちいずれか一方のガラス板の主面にLow−E膜が形成されている場合、前記Low−E膜は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス2以外のガラス板の主面に設けられている、請求項18に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性ガラス2は、波長380nmの光の透過率が80%以上であり、波長350nmの光の透過率が30%以下であり、波長315nmの光の透過率が10%以下である、請求項18または19に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性合わせガラスが、波長380nmの光の透過率が80%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下である、請求項21に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が、波長360nm未満の光を吸収する成分を含有する、請求項22または23に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板間に、一方の面からもう一方の面へ透過する光の少なくとも一部を方向転換して透過させる光方向転換シートを備えており、前記一対のガラス板のうち、一方のガラス板と、前記光方向転換シートとが第1の接着層により接合されており、前記一対のガラス板のうち、他方のガラス板と、前記光方向転換シートとが第2の接着層により接合されている、請求項8〜24のいずれかに記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性ガラス物品が間隔をあけて配置された複数枚のガラス板を有する複層ガラスであり、前記複層ガラスは、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上、前記波長315nm以下の光透過率T315nm以下が板厚6mm換算で60%以下、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率が65%以下であり、かつ日射熱取得率が0.70以下の波長選択透過性複層ガラスである、請求項5に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記Low−E膜は、前記波長選択透過性複層ガラスを構成する前記ガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス3以外のガラス板の主面に設けられている、請求項29に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性ガラス3は、Ce、Sn、Ti、からなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有する、請求項29〜31のいずれかに記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記Low−E膜は、前記波長選択透過性複層ガラスを構成するいずれか1つのガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス4以外のガラス板の主面に設けられている、請求項33に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記波長選択透過性ガラス4は、波長380nmの光の透過率が80%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下である、請求項33または34に記載の波長選択透過性ガラス物品。
前記Low−E膜は、ガラス板側から順に、第1誘電体層、第1Ag含有層、第1バリア層、第2誘電体層、第2Ag含有層、第2バリア層、第3誘電体層が積層されたものである、請求項33〜38のいずれかに記載の波長選択透過性ガラス物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近視には屈折近視と軸性近視があり、多くは軸性近視である。軸性近視においては、眼軸長の伸長に伴って近視が進行し、伸長は不可逆的である。
近年、子供らが戸外活動、すなわち屋外の太陽光の下で、長い時間活動することで、近視の進行が抑制される要因となりうることが知られている。
その一方で、眼は紫外線を受けることで様々な損傷を受けることが知られている。具体的には屋外等のUVB(波長280〜315nmの紫外線)は、角膜炎や白内障に影響を及ぼしやすいことが知られている。
一方、特定波長光を透過し、特定波長光よりも波長が短い紫外線を透過しない、波長選択透過性ガラスはこれまでに存在していない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、眼軸長の伸長を抑制する効果を奏する特定波長光を透過し、当該特定波長光以外の紫外線の透過率が低く、かつ、遮熱性に優れた波長選択透過性ガラス物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、下記式で表される波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が1%以上、下記式で表される波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率が65%以下、かつ日射熱取得率が0.70以下である、波長選択透過性ガラス物品を提供する。
【数1】
【数2】
(上記式中、A
kは、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための、波長k(nm)における重み付け係数であり、T
kは、波長k(nm))における透過率である。)
【0011】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、下記式で表される波長360〜400nmの光透過率T
360-400nmが3%以上が好ましい。
【数3】
(上記式中のA
kおよびT
kは上記と同様である。)
【0012】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、下記式で表される波長400〜760nmの光透過率T
400-760nmが1%以上が好ましい。
【数4】
(上記式中、A´
kは、ISO−9050:2003で規定される光透過率(D65光源)Tv_D65を算出するための、波長k(nm)における重み付け係数であり、T
kは上記と同様である。)
【0013】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、波長380nmの光の透過率が40%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下が好ましい。
【0014】
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第1形態は単板ガラスであり、前記単板ガラスは、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、前記波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率が65%以下、かつ日射熱取得率0.70以下の波長選択透過性単板ガラスである。
【0015】
第1形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性単板ガラスは前記光透過率T
360-400nmが3%以上が好ましい。
【0016】
第1形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性単板ガラスは前記光透過率T
400-760nmが1%以上が好ましい。
【0017】
第1形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第1態様は、前記波長選択透過性単板ガラスが、ガラス板、および該ガラス板のいずれか一方の主面に設けられたLow−E膜で構成されており、
前記ガラス板は、Fe
2O
3で表した全鉄含有量が0.001〜10質量%であり、Fe−Redoxの値が5〜80%である。
【0018】
第1形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、Ti、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0019】
第1形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、Ce、Sn、Ti、からなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0020】
第1形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0021】
第1形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:60〜80%、Al
2O
3:0〜7%、MgO:0〜10%、CaO:4〜20%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%を含有することが好ましい。
【0022】
第1形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜80%、Al
2O
3:7%超30%以下、B
2O
3:0〜15%、MgO:0〜15%、CaO:0〜6%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%、ZrO
2:0〜10%を含有することが好ましい。
【0023】
第1形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜70%、Al
2O
3:10〜30%、B
2O
3:0〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる少なくとも1種:5〜30%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種:0%以上7%以下を含有することが好ましい。
【0024】
第1形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2態様は、前記波長選択透過性単板ガラスが、ガラス板、該ガラス板のいずれか一方の主面に設けられた波長選択透過性膜、および該ガラス板のいずれか一方の主面に設けられたLow−E膜で構成されており、前記単板ガラスは波長380nmの光の透過率が80%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下である。
【0025】
第1形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性膜、および前記Low−E膜は、前記ガラス板の互いに異なる主面に設けられていることが好ましい。
【0026】
第1形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板および前記波長選択透過性膜の少なくとも一方に波長380nmの光を発光する成分を含有することが好ましい。
【0027】
第1形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記ガラス板は、波長360nmの光の透過率が50%以上が好ましい。
【0028】
第1形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性膜は、波長360nm未満の光を吸収する成分を含有することが好ましい。
【0029】
第1形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性膜は、波長360nm未満の光を反射する成分を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2形態は、一対のガラス板が接着層を介して接合された合わせガラスであり、前記合わせガラスは、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、前記波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率が65%以下であり、かつ日射熱取得率0.70以下の波長選択透過性合わせガラスである。
【0031】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスは前記光透過率T
360-400nmが3%以上が好ましい。
【0032】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスは前記光透過率T
400-760nmが1%以上が好ましい。
【0033】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第1態様は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうちいずれか一方のガラス板のいずれか一方の主面にLow−E膜が設けられている。
【0034】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2態様は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が、前記光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であり、前記光透過率T
315nm以下が60%以下であり、かつ、前記接着層が熱線吸収能を有する。
【0035】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2態様において、前記接着層が熱線吸収材料を含有することが好ましい。
【0036】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第3態様は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうち少なくとも一方が、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上、かつ前記波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下の波長選択透過性ガラス1である。
【0037】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記一対のガラス板のうちいずれか一方のガラス板の主面にLow−E膜が形成されている場合、前記Low−E膜は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス1以外のガラス板の主面に設けられていることが好ましい。
【0038】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は前記光透過率T
360-400nmが板厚6mm換算で3%以上が好ましい。
【0039】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は前記光透過率T
400-760nmが板厚6mm換算で1%以上が好ましい。
【0040】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、Fe
2O
3で表した全鉄含有量が0.001〜10質量%、Fe−Redoxの値が5〜80%が好ましい。
【0041】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、Ti、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0042】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、Ce、Sn、Ti、からなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0043】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0044】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:60〜80%、Al
2O
3:0〜7%、MgO:0〜10%、CaO:4〜20%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%を含有することが好ましい。
【0045】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜80%、Al
2O
3:7%超30%以下、B
2O
3:0〜15%、MgO:0〜15%、CaO:0〜6%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%、ZrO
2:0〜10%を含有することが好ましい。
【0046】
第2形態の第3態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス1は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜70%、Al
2O
3:10〜30%、B
2O
3:0〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる少なくとも1種:5〜30%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種:0%以上7%以下を含有することが好ましい。
【0047】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第4態様は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうち少なくとも一方が、ガラス板と、該ガラス板の主面に設けられた膜とを含み、前記光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であり、前記光透過率T
315nm以下が60%以下である波長選択透過性ガラス2である。
【0048】
第2形態の第4態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記一対のガラス板のうちいずれか一方のガラス板の主面にLow−E膜が形成されている場合、前記Low−E膜は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス2以外のガラス板の主面に設けられていることが好ましい。
【0049】
第2形態の第4態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス2は、波長380nmの光の透過率が80%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下であることが好ましい。
【0050】
第2形態の第4態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス2は、前記ガラス板および前記膜の少なくとも一方に波長380nmの光を発光する成分を含有することが好ましい。
【0051】
第2形態の第4態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス2の前記ガラス板は、波長360nmの光の透過率が50%以上であることが好ましい。
【0052】
第2形態の第4態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス2の前記膜は、波長360nm未満の光を吸収する成分を含有することが好ましい。
【0053】
第2形態の第4態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス2の前記膜は、波長360nm未満の光を反射する成分を含有することが好ましい。
【0054】
第2形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第5態様は、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が、前記光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、かつ前記光透過率T
315nm以下が60%以下である。
【0055】
第2形態の第5態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスが、波長380nmの光の透過率が80%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下が好ましい。
【0056】
第2形態の第5態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が波長380nmの光を発光する成分を含有することが好ましい。
【0057】
第2形態の第5態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が、波長360nmの光の透過率が50%以上であることが好ましい。
【0058】
第2形態の第5態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が、波長360nm未満の光を吸収する成分を含有することが好ましい。
【0059】
第2形態の第5態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記接着層が、波長360nm未満の光を反射する成分を含有することが好ましい。
【0060】
第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性合わせガラスを構成する前記一対のガラス板間に、一方の面からもう一方の面へ透過する光の少なくとも一部を方向転換して透過させる光方向転換シートを備えており、前記一対のガラス板のうち、一方のガラス板と、前記光方向転換シートとが第1の接着層により接合されており、前記一対のガラス板のうち、他方のガラス板と、前記光方向転換シートとが第2の接着層により接合されていてもよい。
【0061】
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第3形態は、間隔をあけて配置された複数枚のガラス板を有する複層ガラスであり、前記複層ガラスは、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上、前記波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率が65%以下、かつ日射熱取得率0.70以下の波長選択透過性複層ガラスである。
【0062】
第3形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性複層ガラスは前記光透過率T
360-400nmが3%以上が好ましい。
【0063】
第3形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性複層ガラスは前記光透過率T
400-760nmが1%以上が好ましい。
【0064】
第3形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第1態様は、前記波長選択透過性複層ガラスを構成する前記ガラス板のうち少なくとも1つが、前記波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上、前記波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下の波長選択透過性ガラス3であり、前記波長選択透過性複層ガラスを構成する前記ガラス板のうちいずれか1つのガラス板のいずれか一方の主面にLow−E膜が設けられている。
【0065】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記Low−E膜は、前記波長選択透過性複層ガラスを構成する前記ガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス3以外のガラス板の主面に設けられていることが好ましい。
【0066】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は前記光透過率T
360-400nmが板厚6mm換算で3%以上が好ましい。
【0067】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は前記光透過率T
400-760nmが板厚6mm換算で1%以上が好ましい。
【0068】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、Fe
2O
3で表した全鉄含有量が0.001〜10質量%、Fe−Redoxの値が5〜80%が好ましい。
【0069】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、Ti、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0070】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、Ce、Sn、Ti、からなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0071】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。
【0072】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:60〜80%、Al
2O
3:0〜7%、MgO:0〜10%、CaO:4〜20%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%を含有することが好ましい。
【0073】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜80%、Al
2O
3:7%超30%以下、B
2O
3:0〜15%、MgO:0〜15%、CaO:0〜6%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%、ZrO
2:0〜10%を含有することが好ましい。
【0074】
第3形態の第1態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス3は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜70%、Al
2O
3:10〜30%、B
2O
3:0〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる少なくとも1種:5〜30%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種:0%以上7%以下を含有することが好ましい。
【0075】
第3形態の本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2態様は、前記波長選択透過性複層ガラスを構成するガラス板のうち少なくとも1つが、ガラス板と、該ガラス板の主面に設けられた膜とを含み、前記光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、かつ前記光透過率T
315nm以下が60%以下の波長選択透過性ガラス4であり、前記波長選択透過性複層ガラスを構成するいずれか1つのガラス板のいずれか一方の主面にLow−E膜が設けられている。
【0076】
第3形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記Low−E膜は、前記波長選択透過性複層ガラスを構成するいずれか1つのガラス板のうち、前記波長選択透過性ガラス4以外のガラス板の主面に設けられていることが好ましい。
【0077】
第3形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス4は、波長380nmの光の透過率が80%以上、波長350nmの光の透過率が30%以下、かつ波長315nmの光の透過率が10%以下が好ましい。
【0078】
第3形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス4は、前記ガラス板および前記膜の少なくとも一方に波長380nmの光を発光する成分を含有することが好ましい。
【0079】
第3形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス4の前記ガラス板は、波長360nmの光の透過率が50%以上が好ましい。
【0080】
第3形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス4の前記膜は、波長360nm未満の光を吸収する成分を含有することが好ましい。
【0081】
第3形態の第2態様の本発明の波長選択透過性ガラス物品において、前記波長選択透過性ガラス4の前記膜は、波長360nm未満の光を反射する成分を含有することが好ましい。
【0082】
また、本発明は、壁に形成された開口部に、前記いずれかの波長選択透過性ガラス物品が窓部材として設置された建物を提供する。
【発明の効果】
【0083】
本発明によれば、特定波長光を透過するが、より短波長の紫外線をほとんど透過せず、かつ、遮熱性に優れた波長選択透過性ガラス物品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本明細書において「波長380nmにおける光の透過率」等はその波長における透過率であり、「光透過率T
315nm超400nm以下」、「光透過率T
400-760nm」等は、ISO−9050:2003で規定される波長ごとの重みづけ係数を加味した透過率をいうものとする。
【0086】
また、「特定短波長光吸収成分」とは、波長360nm未満の光を吸収する成分をいい、「特定短波長光反射成分」とは、波長360nm未満の光を反射する成分をいう。
【0087】
一方、日射透過率は、JIS−R3106(1998年)により定められる日射透過率をいうものとする。日射熱取得率(η値)は、ガラス物品の第1の面(室外側)から入射される全太陽熱に対する、第2の面(室内側)まで直接透過される熱(透過熱)と、ガラス物品に吸収され、その後第2の面から放出される熱との総和の割合で表される。すなわち、(ガラス物品を透過する日射の放射束+ガラス物品に吸収されて室内側に伝達される熱流束)/入射する日射の放射束、によって求められる。
【0088】
以下、本発明の波長選択透過性ガラス物品について図面を参照して説明する。
【0089】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、下記式で表される波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が1%以上である。
【数5】
前記式中、A
kは、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための、波長k(nm)における重み付け係数であり、T
kは、波長k(nm)における透過率である。
【0090】
したがって、前記式は、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための重み付け係数のうち、315nm超400nm以下の波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0091】
尚、ISO−9050:2003におけるA
kは波長kが5nm毎に規定されるため、前記式のシグマにおけるk=315nm超の際のA
kは、本発明においてはk=320nmの際のA
kとして扱うこととする。
【0092】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、光透過率T
315nm超400nm以下が1%以上であることにより、近視の進行を抑制する効果が期待される。本発明の波長選択透過性ガラス物品は、光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0093】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、下記式で表される波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下である。
【数6】
前記式中、A
kおよびT
kは、上記と同様である。したがって、前記式は、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための重み付け係数のうち、300〜315nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0094】
なお、300〜315nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用するのは、ISO−9050:2003で規定される重み付け係数(A
k)の値が波長300nm未満については0で設定されているからである。
【0095】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、光透過率T
315nm以下が60%以下であることにより、当該波長域の光による眼の様々な損傷を抑制することができる。本発明の合わせガラスは、光透過率T
315nm以下が45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0096】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、日射透過率が65%以下であり、かつ日射熱取得率が0.70以下である。日射透過率および日射熱取得率が上記範囲であることにより、遮熱性に優れている。
【0097】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、下記式で表される波長360〜400nmの光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましい。
【数7】
上記式中、A
kおよびT
kは、上記と同様である。したがって、上記式は、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための重み付け係数のうち、360〜400nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用し、この波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、この波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0098】
本発明の波長選択透過性ガラス物品において、光透過率T
360-400nmが3%以上であれば近視の進行を抑制する効果を特に期待される。
本発明の波長選択透過性ガラス物品は光透過率T
360-400nmが5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0099】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、上述した特定波長域以外の光の透過率は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、下記式で表される波長400〜760nmの光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましい。
【数8】
上記式中、T
kは、上記と同様である。A´
kは、ISO−9050:2003で規定される光透過率T
400-760nm(D65光源)Tv_D65を算出するための、波長k(nm)における重み付け係数である。
【0100】
したがって、上記式は、ISO−9050:2003で規定される光透過率T
400-760nm(D65光源)Tv_D65を算出するための重み付け係数のうち、400〜760nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0101】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、光透過率T
400-760nmが1%以上であることにより、ガラス背面の視認性を得やすくなるため、樹脂、金属、壁材と比較して、ガラス特有の光沢、質感を認知することが容易になり、意匠性を高められる。
光透過率T
400-760nmのより好ましい範囲は、本発明の波長選択透過性ガラス物品の用途により異なるが、400〜760nmの光を透過することが求められる用途の場合、光透過率T
400-760nmが、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0102】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、波長380nmの光の透過率が40%以上であることが好ましい。そのような波長選択透過性ガラス物品は、近視進行抑制効果の高い光を十分に透過する。波長380nmの光の透過率は、より好ましくは50%以上である。
【0103】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、波長350nmの光の透過率が、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、特に好ましくは10%以下である。そのような波長選択透過性ガラス物品は波長350nm以下の光の強度を低減できるので、本発明の波長選択透過性ガラス物品を建築物や自動車の窓ガラスに使用すると、当該波長域の光による日焼け等が抑制できる。
【0104】
本発明の波長選択透過性ガラス物品は、波長315nmの光の透過率が好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、特に好ましくは1%以下である。本ガラス物品は315nm以下の光をほとんど透過しないので、本ガラス物品を建築物や自動車の窓ガラスに使用すると、当該波長域の光による激しい日焼け等が防止できる。
【0105】
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第1形態は単板ガラスである。本発明における単板ガラスは、ガラス板の少なくとも一方の主面に所定の機能膜が形成されたものを指す。
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第1形態の単板ガラス(以下、本明細書において、本発明の単板ガラスと記載する。)は、後述する条件を満たす波長選択透過性単板ガラスである。
【0106】
本発明の単板ガラスは、光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であり、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0107】
本発明の単板ガラスは、光透過率T
315nm以下が60%以下であり、45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0108】
本発明の単板ガラスは、日射透過率が65%以下である。
【0109】
本発明の単板ガラスは、日射熱取得率が0.70以下である。
【0110】
本発明の単板ガラスは、光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0111】
本発明の単板ガラスは、光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0112】
本発明の単板ガラスは、日射熱取得率が0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.50以下であることが特に好ましい。
【0113】
図1は、本発明に単板ガラスの第1態様の一構成例を示した図である。
図1に示す単板ガラス10は、ガラス板11、および該ガラス板11のいずれか一方の主面に設けられたLow−E膜12で構成されている。
【0114】
本発明における熱線遮蔽膜(熱線反射膜、熱線吸収膜、低放射膜(Low−E膜)ともいう)の構成としては熱線を反射(遮蔽)する機能を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、低放射性能を有するAgを含有する層(以下、Ag含有層ともいう)を有する膜であることが好ましく、Ag層またはPd等の金属元素を含有する銀合金からなる膜であってもよい。銀合金とする場合、銀合金の全体中、Ag以外の金属元素の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0115】
また、Ag含有層を、誘電体層間に配置した構成、すなわち、第1誘電体層、Ag含有層、第2誘電体層のように積層した構成とすることが好ましい。
【0116】
誘電体層の構成材料は、各種の金属酸化物および金属窒化物が挙げられる。
【0117】
金属酸化物としては、Zn、Ti、Sn、Si、Al、TaおよびZrから選ばれる少なくとも1種の金属元素の酸化物を主成分とするものが挙げられる。他には、例えば、Alを含む酸化亜鉛(Aluminum-doped Zinc Oxide: AZO)、Snを含む酸化亜鉛(Tin-doped Zinc Oxide: TZO)が挙げられる。Alを含む酸化亜鉛としては、ZnとAlとの合計量に対するAlの割合が1〜10原子%であるものが好ましく、3〜7原子%であるものがより好ましい。Snを含む酸化亜鉛としては、ZnとSnとの合計量に対するSnの割合が10〜90質量%であるものが好ましく、20〜80質量%であるものがより好ましい。
【0118】
また、金属窒化物としては、SiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属の窒化物を主成分とするものが挙げられる。
【0119】
Ag含有層を上記の様に第1誘電体層、第2誘電体層により挟んだ構成とする場合に、第1誘電体層、第2誘電体層の構成は異なる材料から構成されていても良い。また、Low−E膜として、Ag含有層を複数層含むように該Ag含有層を複数層積層した構成としても良い。この場合、誘電体層に関しても同様に複数層積層した構成とすることができる。
【0120】
また、上記のようにAg含有層と、誘電体層とを積層する場合には、Ag含有層と、誘電体層との間にバリア層を配置することもできる。バリア層は、Ag含有層の酸化等を抑制するために設けられる。すなわち、Ag含有層上に第2の誘電体層等の他の層を成膜する際、Ag含有層が酸化されるおそれがあるが、バリア層を設けることで、Ag含有層の酸化を抑制して所望の光学特性とすることが容易となる。前記バリア層は、具体的には例えばTi、Zn、Cr、Ni、Cr、Al、Zn、W、Pd、Au、Pt、Si、Sn、Nb、Ta、Hf、Zrから選ばれる少なくとも1種の金属を主成分とするもの等を配置することができる。また、TiO
2、ZnO、SnO
2、In
2O
3、Nb
2O
5から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を主成分とするもの等を配置することができる。
【0121】
Low−E膜の厚さは特に限定されるものではなく、要求される遮熱性能(熱線反射性能)や、膜の構成等により選択することができるが、0.05μm以上0.4μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.3μm以下であることがより好ましい。また、本発明では、可視光吸収が大きいAg層の厚み(Ag層が複数ある場合は、合計値)を従来技術より厚くすることが可能となる。
【0122】
各誘電体層の厚さは15〜85nmであることが好ましい。各Ag含有層の厚さは10〜17nmであることが好ましい。各バリア層の厚さは2〜10nmであることが好ましい。
【0123】
また、熱線反射性能を高めるためにAg含有層を複数、例えば2層設けることが好ましい。Ag含有層を2層設ける場合、ガラス板11のいずれか一方の主面に、第1誘電体層、第1Ag含有層、第1バリア層、第2誘電体層、第2Ag含有層、第2バリア層、第3誘電体層をこの順に設けることが好ましい。
【0124】
特に、前記の誘電体層にAlを含む酸化亜鉛(AZO)を用い、Agからなる層を2層設け、バリア層に酸化チタンを用いる構成(ガラス板/第1AZO層/第1Ag層/第1酸化チタン層/第2AZO層/第2Ag層/第2酸化チタン層/第3AZO層)とした場合、所望の遮熱性能(熱線反射性能)が得られるだけでなく、近視の進行抑制に有用な光を透過し且つ有害な光を吸収することができるため、Low−E膜によって遮熱性だけでなく紫外領域における波長選択透過性を同時に実現でき、最も好ましい。また、このLow−E膜は可視光の反射光および透過光の色調が既存のLow−E膜に近いため、外観の点でも好ましい。
【0125】
Low−E膜を上記の構成とする場合、各層の厚さは以下の範囲とすることが好ましい。
第1誘電体層(第1AZO層):30〜55nm
第1Ag含有層(第1Ag層):10〜17nm
第1バリア層(第1酸化チタン層):2〜5nm
第2誘電体層(第2AZO層):70〜85nm
第2Ag含有層(第1Ag層):10〜17nm
第2バリア層(第2酸化チタン層):2〜5nm
第3誘電体層(第3AZO層):15〜27nm
【0126】
また、本発明におけるLow−E膜の構成として、低放射性能を有する金属酸化膜を有する膜であることが好ましく、酸化スズ層またはFやSb等の金属元素を含有する酸化スズからなる膜であってもよい。
【0127】
Low−E膜は、ガラス板のいずれの主面に設けてもよいが、本発明の単板ガラスの使用時に室内側となる主面に設けることが膜面の劣化を防止し、長期間使用においても遮熱性を損なわない点から好ましい。
【0128】
本発明の単板ガラスの第1態様における光透過率T
315nm超400nm以下および光透過率T
315nm以下には、ガラス板の鉄含有量、および、ガラス板に含まれる鉄における二価の鉄(Fe
2+)と、三価の鉄(Fe
3+)との割合が影響する。すなわち、ガラス板の鉄含有量は、光透過率T
315nm超400nm以下および光透過率T
315nm以下に影響する。一方、ガラス板に含まれる鉄における二価の鉄(Fe
2+)と、三価の鉄(Fe
3+)との割合は、光透過率T
315nm以下に影響する。本明細書では、ガラス板に含まれる鉄における二価の鉄(Fe
2+)と、三価の鉄(Fe
3+)との割合の指標として、Fe−Redoxを用いる。Fe−Redoxとは、Fe
2O
3換算の全鉄含有量に対するFe
2O
3換算のFe
2+含有量の割合である。
【0129】
本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、Fe
2O
3で表した全鉄含有量が0.001〜10質量%であり、Fe−Redoxの値が5〜80%であることが好ましい。
Fe
2O
3で表した全鉄含有量が0.001質量%以上であることにより、大型窯でのガラスの溶解性、脱泡性が向上する。0.01質量%以上であることがより好ましく、0.03質量%以上であることがさらに好ましく、0.04質量%以上であることが一層好ましく、0.05質量%以上であることが最も好ましい。一方、Fe
2O
3で表した全鉄含有量が10質量%以下であることにより、近紫外波長領域の光を通しやすくする効果がある。また、ガラス背面の視認性を得やすくなるため、樹脂、金属、壁材と比較して、ガラス特有の光沢、質感を認知することが容易になり、意匠性を高められる。7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。さらに酸化物基準の質量%表示で、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましい。
Fe−Redoxが5%以上であることにより、大型窯での脱泡性が向上し、ガラスの遮熱性が向上する。7%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがより好ましく、25%以上であることがより好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが最も好ましい。一方、Fe−Redoxが80%以下であることにより、波長315nm超400nm以下の光を通しやすくし、大型窯での生産時におけるガラス原料の溶解性が向上し、溶解時に使用する燃料を減らすことができる。75%以下であることがより好ましく、70%以下であることがより好ましく、65%以下であることがより好ましく、60%以下であることが最も好ましい。
【0130】
本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、波長315nm以下の光を吸収する作用を有する微量成分を含有することが好ましい。波長315nm以下の光を吸収する作用を有する微量成分の具体例としては、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、Ti、W、Mn、As、Sb、Uが挙げられる。本発明の波長選択透過性ガラスは、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、Ti、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上5質量%以下含有することが好ましい。上記の成分を合量で0.1質量ppm以上含有することにより、波長315nm以下の光を吸収する作用が発揮される。上記の成分を合量で1質量ppm以上含有することがより好ましく、5質量ppm以上含有することがさらに好ましい。一方、上記の成分の含有量が合量で5質量%以下であることにより、耐水性や耐薬品性に代表されるガラスの安定性が劣化することがなく、大型窯での原料コストが増大することがなく、生産時のガラスの色制御、安定化が困難になることがない。上記の成分を合量で2質量%以下含有することがより好ましく、1質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0131】
上記の成分の中でも、Ce、Sn、Tiが波長315nm以下の光を吸収する作用が高いため好ましい。
本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、Ce、Sn、Tiからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の合量で0.1質量ppm以上含有することが好ましく、1質量ppm以上含有することがより好ましく、5質量ppm以上含有することがさらに好ましい。一方、ガラスの着色等を抑えることを考慮すると、上記の成分を合量で5質量%以下含有することが好ましく、2質量%以下含有することがより好ましく、1質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0132】
また酸化物基準の質量%表示で、CeO
2が0.1〜0.8%であり、TiO
2が0〜0.6%であり、SnO
2が0〜0.6%であることが好ましく、CeO
2が0.2〜0.6%であり、TiO
2が0〜0.4%であり、SnO
2が0〜0.4%であることがより好ましく、CeO
2が0.35〜0.45%であり、TiO
2が0〜0.2%であり、SnO
2が0〜0.2%であることがさらに好ましい。
【0133】
また、ガラス板において、CeO
2/(CeO
2+TiO
2+Fe
2O
3)(式中のCeO
2、TiO
2、Fe
2O
3はそれぞれの酸化物の質量%の値を意味する。)が0.2%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上、さらに好ましくは0.5%以上であると、近視進行を抑制する効果の高い光透過率T
360-400nmを保持したまま、波長315nm以下の光を吸収し、かつ、光透過率T
400-760nmを維持する効果を有するため、好ましい。また、0.95%以下、好ましくは0.90%以下、より好ましくは0.85%以下であると、着色が抑えられるため好ましい。
【0134】
また同様に、近視進行を抑制する効果の高い光透過率T
360-400nmを保持したまま、波長315nm以下の光を吸収し、かつ、光透過率T
400-760nmを維持する効果、並びに、着色を抑える効果のために、CeO
2+3×TiO
2+6×SnO
2(式中のCeO
2、TiO
2、Fe
2O
3はそれぞれの酸化物の質量%の値を意味する。)が、0.1〜2.0%であると好ましく、0.3〜1.5%であるとより好ましく、0.41〜1.2%であるとさらに好ましい。
【0135】
したがって、ガラス板において、酸化物基準の質量%表示で、Fe
2O
3で表した全鉄含有量が0.04〜0.15%、CeO
2が0.35〜0.45%であり、TiO
2が0〜0.2%であり、SnO
2が0〜0.2%であり、CeO
2+3×TiO
2+6×SnO
2が0.41〜1.2%であり、Fe−Redoxが25〜65%であることが、最も好ましい。
【0136】
また、上記の成分の中でも、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、W、Mn、As、Sb、Uは、波長315nm以下の紫外線を吸収して、可視光に変換する作用を有する。本発明の合わせガラス(1)において、波長選択透過性ガラスは、Au、Ag、Sn、希土類元素(La、Yを除く)、W、Mn、As、Sb、Uからなる群から選択される少なくとも1つの元素を酸化物換算の質量%の合量で0.1質量ppm以上含有することが好ましく、1質量ppm以上含有することがより好ましく、5質量ppm以上含有することがさらに好ましい。一方、上記の成分を合量で5質量%以下含有することが好ましく、2質量%以下含有することがより好ましく、1質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0137】
本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、金属コロイドによる表面プラズモン吸収を起こさせるために、1族から14族からなる群から選択される少なくとも1つの金属元素のコロイドを含有することが好ましい。この目的で含有させるコロイドは、粒径が1μm以下のコロイド粒子であると好ましく、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは300nm以下である。また、金属元素は、Ag、Au、Cuからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0138】
また、本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、清澄剤としてSO
3、Cl、Fを合量で1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下含有してもよい。また、波長選択透過性ガラスは、着色剤としてSe、Co、Ti、Cr、V、その他の遷移金属元素などを合量で1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下含有してもよい。
【0139】
また、本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、ガラス中の水分量が90〜800質量ppmであることが好ましい。90質量ppm以上であることにより、ガラスの成形域温度が下がり、曲げ加工が容易になる。また、赤外線吸収強度が上がり、遮熱性能が向上する。一方で800ppm以下であることにより、耐水性、耐薬品性に代表されるガラスの安定性が低下することがなく、また、クラックやキズに対する耐性が低下することがない。
【0140】
本発明の単板ガラスの第1態様におけるガラス板は、そのガラス母組成を、その用途に応じて適宜選択することができる。
本発明の単板ガラスの第1態様の用途が、建材用の窓ガラスや内装ガラス、自動車用窓ガラス等である場合、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:60〜80%、Al
2O
3:0〜7%、MgO:0〜10%、CaO:4〜20%、Na
2O:7〜20%、K
2O:0〜10%を含有することが好ましい。
また、上記ガラスとしてアルカリアルミノシリケートガラスを用いる場合、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO
2:45〜70%、Al
2O
3:10〜30%、B
2O
3:0〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる少なくとも1種:5〜30%、Li
2O、Na
2OおよびK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種:0%以上7%以下を含有することが好ましい。
【0141】
本発明の単板ガラスの第1態様では、ガラス板のいずれか一方の主面に設けられたLow−E膜で遮熱性を達成しているが、ガラス板の組成で遮熱性を達成してもよい。
ガラス板の組成で遮熱性を達成する方法としては、ガラス素地に赤外線吸収性のイオンを加えることが挙げられる。この場合、ガラス素地はソーダライムシリカ系とし、還元剤を加えるなどして二価の鉄の赤外線域の吸収を増大し、熱線吸収能を付与することが可能である。
Low−E膜の代わりに、赤外線遮蔽粉末をマトリックス中に分散させた塗布液を形成し、その塗布液をガラス基板上に塗布し成膜することにより赤外線遮蔽性を付与する方法も挙げられる。この特徴は、導電性酸化物微粒子を赤外線遮蔽膜中で凝集させることなく、高度に分散させることにより実現でき、可視光透過率を高く保ったまま、導電性酸化物微粒子内の自由電子によるプラズマ振動により、赤外線を遮蔽することが可能である。
導電性酸化物微粒子としては、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物、またはこれらにSbもしくはFをドープしたドープ物からなる微粒子などがあげられる。これらの材料のうち、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)微粒子、酸化亜鉛微粒子、および、ITO(スズドープ酸化インジウム)、および、フッ素が含有されたITO(フッ素含有ITO)微粒子からなる群から選ばれる1種以上が例示される。マトリックス成分は、有機系の樹脂や、酸化ケイ素前駆体がよい。酸化ケイ素の前駆体としては、シラン化合物を加水分解、重縮合させて得られるものや、未変性のシリコーン樹脂、水ガラス、ポリシラザン等が挙げられる。有機系樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等、透明性を損なわない材料であれば使用できる。
Low−E膜の代わりに、熱線反射膜をガラス面に形成し、赤外線遮蔽性を付与する方法も挙げられる。
【0142】
図2は、本発明の単板ガラスの第2態様の一構成例を示した図である。
図2に示す単板ガラス20は、ガラス板21、該ガラス板21のいずれか一方の主面に設けられた波長選択透過性膜22、および該ガラス板21のいずれか一方の主面に設けられたLow−E膜23で構成されている。
なお、
図2に示す単板ガラス20では、波長選択透過性膜22、およびLow−E膜23が、ガラス板21の異なる主面に設けられているが、両者が同一の主面に設けられていてもよい。この場合、ガラス板21の側から、Low−E膜、波長選択透過性膜の順に設けられていることが遮熱性の観点から好ましい。
但し、
図2に示す単板ガラス20のように、ガラス板21の異なる主面に波長選択透過性膜22、およびLow−E膜23を設けることが製膜のしやすさの点で好ましく、またこの場合においてLow−E膜23を室外側に配置することによって高い遮熱性能を得られるため好ましい。
また、Low−E膜は、ガラス板のいずれの主面に設けてもよいが、本発明の単板ガラスの使用時に室内側となる主面に設けることが遮熱性の観点から好ましい。
なお、Low−E膜については、本発明の単板ガラスの第1態様について記載したのと同様である。
また、本発明の単板ガラスの第2態様では、ガラス板の一方の主面に設けたLow−E膜で遮熱性を達成しているが、本発明の単板ガラスの第1態様について記載したのと同様に、ガラス板の組成で遮熱性を達成してもよく、ガラス板の一方の主面に熱線遮蔽膜を設けて遮熱性を達成してもよい。
【0143】
本発明の単板ガラスの第2態様において、ガラス板21および波長選択透過性膜22の少なくとも一方に波長380nmの光を発光する成分を含有することが、近視進行抑制効果が高くなるので好ましい。発光する成分は、波長360nm未満の光を吸収して発光することが好ましい。その場合、発光が最大となる波長は、360nm以上が好ましく、360〜400nmの範囲にあることがより好ましい。
【0144】
本発明の単板ガラスの第2態様の構成要素について以下に記載する。
【0145】
(ガラス板21)
本発明の単板ガラスの第2態様において、ガラス板21の厚さは、所定の透過率が得られる限り、特に限定されない。本発明の単板ガラスの用途が建築物の窓ガラスである場合には、一般的には、20mm以下、15mm以下、10mm以下、8mm以下であり、2mm以上、3mm以上、4mm以上であり、通常6mmである。自動車用の窓ガラスの場合、その板厚は1〜5mmである。
【0146】
ガラス板21は、波長360nmの光を50%以上透過することが好ましい。そのようなガラス板は、近視進行抑制効果の高い光をよく透過し、かつ扱いやすいからである。この点について以下に説明する。
【0147】
通常、ガラス組成中に特定短波長光吸収成分を含まないガラスは、400nm以下の光をある程度透過する。例えば
図9中のbは少量のFe
2O
3を含む一般的な窓用ガラス板の透過スペクトル例を示している。また、
図10中のbは特定短波長光吸収成分をほとんど含まないディスプレイ用ガラス板の透過スペクトルの例を示している。これらの一般的なガラス板は、波長360nmの光を50%以上透過し、波長380nmの光を80%以上透過するので、ガラス板21として好ましい。
【0148】
なお、通常の窓ガラスに含まれるFe
2O
3は、色調調整剤や原料中の不純物として含まれる成分であるが、特定短波長光吸収成分としても機能することが知られている。一方、従来から紫外線吸収ガラスとして、種々の特定短波長光吸収成分を含むガラスが開発されている。例えば特定短波長光吸収成分としてCeO
2またはFe
2O
3等を含むものがある。
【0149】
これらの紫外線吸収ガラスは、特定短波長光吸収成分として金属イオンを含有するものが多い。金属イオンは通常、比較的ブロードな光吸収特性を示すので、紫外線吸収ガラスの多くは、幅広い波長域の光を吸収する。その場合、波長360nmの光の透過率が低いガラスは、波長380nmの光の透過率も低くなる。そこで、これらの紫外線吸収成分を適切な配合とする必要がある。
【0150】
紫外線吸収ガラスとしては、ガラス中に微粒子が析出する等によって特定の波長だけを吸収するガラスも知られている。しかし、そのようなガラスは熱的または化学的に不安定なので、扱いにくい。
【0151】
ガラス板21の光透過率T
400-760nmは特に限定されず、本ガラス物品の用途に応じて適宜設定できる。
【0152】
ガラス板21のガラス組成は、所望の透過率が得られるものであれば、特に限定されない。ガラス板21のガラス組成としては、たとえば、一般的な窓ガラスに用いられるソーダライムガラスや、ディスプレイ基板に用いられる(無アルカリ)アルミノボロシリケートガラス、化学強化用として用いられるアルカリアルミノシリケートガラスが、強度や耐久性に優れているので好ましい。
【0153】
光透過率をより低くしたい場合には、ガラス板は、前述の特定短波長光吸収成分を含有するガラスがより好ましい。
【0154】
(波長選択透過性膜)
波長選択透過性膜22は、波長360nm未満の光を吸収する成分または波長360nm未満の光を反射または散乱する成分を含むことが好ましい。その場合、単板ガラス20の光透過率は、ガラス板21の光透過率より低くなる。
【0155】
波長選択透過性膜22の厚さは、所望の透過率が得られる限り、特に限定されないが、より好ましい光透過特性を得るためには、たとえば1μm以上であり、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、膜の厚さは、通常は100μm以下である。
【0156】
波長選択透過性膜22の材質は特に限定されず、樹脂等の有機物でもよく、無機物でもよい。
【0157】
波長選択透過性膜22は、波長360nm未満の光を吸収する特定短波長光吸収成分または波長360nm未満の光を反射する特定短波長光反射成分を含有することが好ましい。その場合、波長選択透過性膜22は、その全体が特定短波長光吸収成分または特定短波長光反射成分で構成されてもよく、マトリクス中に特定短波長光吸収成分または特定短波長光反射成分が分散または溶解しているものでもよい。なお、特定短波長光反射成分は波長360nm未満の光を散乱する成分(以下、特定短波長光散乱成分ともいう)として作用することがある。
【0158】
波長選択透過性22が特定短波長光反射成分を含有する場合は、光学特性の安定性の点から、膜の表面が特定短波長光反射成分で構成されていることが好ましい。また特定短波長光反射成分は、波長360nm未満の光が適度に散乱されるように配置されることが好ましい。
【0159】
波長選択透過性膜22が特定短波長光反射成分で構成される場合、波長選択透過性膜22は誘電体積層膜で構成されることが好ましい。その場合、積層膜を構成する層の数、各層の材質および配置順等を適正に設計することにより、積層膜に波長360nm未満の光(特定短波長光)の反射特性を発現させることができる。
【0160】
たとえば、積層膜は、透明な基板の第1の表面に近い側から、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層を順次積層することにより構成され、屈折率の高い「高屈折率層」と屈折率が低い「低屈折率層」が交互に積層された構成が好ましい。
【0161】
すなわち、第1の層および第3の層は、第2の層および第4の層よりも大きな屈折率を有することが好ましい。その場合、第1の層および第3の層の屈折率は、2.0以上が好ましく、2.1以上がより好ましい。このような「高屈折率層」を構成する材料としては、例えば、チタニア、酸化ニオブ、ジルコニア、セリア、および酸化タンタル等が挙げられる。
【0162】
第1の層の厚さは、5nm〜20nmが好ましい。第3の層の厚さは、45nm〜125nmが好ましい。第3の層は、第1の層と同じ材質で構成されてもよい。
【0163】
第2の層および第4の層の屈折率は、1.4〜1.8が好ましい。このような「低屈折率層」を構成する材料としては、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。シリカには、アルミニウムなどの他の元素がドープしてもよい。第2の層の厚さは、15nm〜45nmが好ましい。第4の層の厚さは、0nm〜110nmが好ましい。
【0164】
また第5の層、第6の層、…第nの層(nは、5以上の整数)が存在してもよい。
【0165】
また、最外層直下は、必ずしも低屈折率層である必要はなく、最外層の直下は、高屈折率層でもよい。
【0166】
積層膜を構成する各層は、いかなる方法で設置されてもよい。各層は、例えば、蒸着法、スパッタ法、およびCVD(化学気相成長)法等により成膜できる。
【0167】
波長選択透過性膜22がマトリクス中に特定短波長光吸収成分を含有する構成の場合には、特定短波長光吸収成分は均一に溶解しているか光を散乱しない程度の小粒子で分散していることが好ましい。そのような場合にはヘイズ値が小さくなる。膜のヘイズ値は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0168】
波長選択透過性膜22のマトリクス成分は、波長315nm超400nm以下の光を透過するものが好ましく、例えば、二酸化ケイ素のような無機マトリクス、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメラミン樹脂のような有機マトリクス並びに有機化合物と無機化合物が複合した有機無機マトリクスなどが挙げられる。
【0169】
有機マトリクスは、波長315nm超400nm以下の光を透過するために、フッ素樹脂が好ましい。マトリクス成分は可視光域(400〜760nm。以下同じ。)の波長に吸収を有していない化合物が好ましいが、着色が許容される場合は可視光域の波長に吸収を有してもよい。
【0170】
波長選択透過性膜22が特定短波長光吸収成分を含有する場合、該特定短波長光吸収成分は、波長315nm以下の光を吸収する成分が好ましい。特定短波長光吸収成分は粉末でもよく、液状でもよい。波長選択透過性膜22がそのような成分を含有することで、ガラス板21として一般的な窓ガラスを用いても、有害な波長域の光を遮断するガラス物品が得られる。
【0171】
特定短波長光吸収成分としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル系化合物およびシュウ酸アニリド系化合物から選択される1種以上を含む、いわゆる紫外線吸収剤と呼ばれるものが挙げられる。
【0172】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−4−ヒドロキシ−5−[5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(2H−ベンゾチリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールおよび2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0173】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2
‘−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンおよび2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0174】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−2’,4’−ジメトキシベンゾフェノンおよび2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0175】
マロン酸エステル系化合物としては、例えば、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッドジメチルエステル等が挙げられる。
【0176】
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)−エタンジアミン、N−(4−ドデシルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)−エタンジアミン等が挙げられる。
【0177】
本発明において、これら特定短波長光吸収成分は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することも可能である。
【0178】
波長選択透過性膜22は、発光を生じる成分を含有することがより好ましい。特定短波長光吸収成分が波長360nm未満の光を吸収して波長380nm前後の発光を生じる成分であることがより好ましい。そのような成分を含むことで近視進行抑制効果の高い光を効果的に透過し、有害な波長域の光を遮断することができる。
【0179】
発光を生じる成分としては、例えば、蛍光ガラス、Eu(II)ドープBaFX(X=Cl,I)、Eu(II)ドープCaWO
3、トリアゾール誘導体の蛍光色素、並びにビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体およびビススチリルビフェニル誘導体といった蛍光増白剤などが挙げられる。
【0180】
特定短波長光吸収成分および発光を生じる成分は、可視光域の波長に吸収を有していない化合物が好ましいが、着色が許容される場合は可視光域の波長に吸収を有していてもよい。
【0181】
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2形態は合わせガラスである。本発明における合わせガラスは、一対のガラス板が接着層を介して接合されたものを指す。
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第2形態の合わせガラス(以下、本明細書において、本発明の合わせガラスと記載する。)は、後述する条件を満たす波長選択透過性合わせガラスである。
【0182】
本発明の合わせガラスは、光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であり、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0183】
本発明の合わせガラスは、光透過率T
315nm以下が60%以下であり、45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0184】
本発明の合わせガラスは、日射透過率が65%以下である。
【0185】
本発明の合わせガラスは、日射熱取得率が0.70以下である。
【0186】
本発明の合わせガラスは、光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0187】
本発明の合わせガラスは、日射熱取得率が0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.50以下であることが特に好ましい。
【0188】
本発明の合わせガラスは、光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0189】
図3は、本発明の合わせガラスの一構成例の断面図である。
図3において、左側が室外側、右側が室内側である。
【0190】
図3に示す合わせガラス30は、窓などの開口部や内装用建材に取り付けられ、太陽光などの室外の光を室内に透過させる。窓は、例えば建物の窓、乗り物の窓などのいずれでもよい。
【0191】
図3に示す合わせガラス30は、太陽光などの室外の光を室内に透過させる。合わせガラス30は、室外側から室内側に向けて、第1ガラス板31、第1接着層33、光方向転換シート35、第2接着層34、第2ガラス板32をこの順で有する。
本発明の合わせガラスにおいて、光方向転換シートは任意の構成である。本発明の合わせガラスが、光方向転換シートを有していない場合、第1ガラス板と第2のガラス板が接着層を介して直接接合される。
【0192】
第1ガラス板31は、光方向転換シート33を基準として室外側に配設される。第1ガラス板31は、未強化ガラス、化学強化ガラス、または熱強化ガラスなどである。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。成形方法としては、フロート法、フュージョン法などが挙げられる。化学強化ガラスは、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化したものである。熱強化ガラスは、均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化したものである。
詳しくは後述するが、第1ガラス板31は、波長選択透過性ガラス1、若しくは、波長選択透過性ガラス2で構成される場合がある。
【0193】
第1接着層33は、光方向転換シート35と第1ガラス板31とを接着する。第1接着層33は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または紫外線硬化性樹脂などで構成される。第1接着層33は、好ましくは、ビニル系ポリマー、エチレン‐ビニル系モノマー共重合体、スチレン系共重合体、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂から選択される一種類以上で構成される。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)が典型的である。熱硬化性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)が典型的である。第1接着層33が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂で構成される場合、熱処理によって接着が行われる。また、第1接着層33が紫外線硬化性樹脂で構成される場合、紫外線照射によって接着が行われる。
第1接着層33は紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤としては、一般的なものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、トリアジン系、オキザニリド系、ニッケル錯塩系、無機系などが使用できる。無機系としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等の粒子が使用できる。
【0194】
第2接着層34は、第1接着層33と同様に、紫外線吸収剤を含んでもよい。第2接着
層34の材料と、第1接着層33の材料との共通化を図ることができ、管理コストや製造
コストを低減することができる。
【0195】
光方向転換シート35は、室外から室内に向かう光、別の言い方をすると一方の面からもう一方の面に透過する光、の少なくとも一部を方向転換して透過させる。光方向転換シート35は、光の向きを例えば斜め下向きから斜め上向きに換えるため、太陽光などの室外の光を室内の奥まで取り入れることができ、室内の明るさ感を向上させることができる。
【0196】
図3に示す光方向転換シート35は、光の鉛直方向の向きを下向きから上向きに換えるが、室内の構造などによっては、光の水平方向の向きを換えてもよい。
【0197】
光方向転換シート35は、室外から室内に向かう光の少なくとも一部を方向転換して透過させる。光方向転換シート35は、一般的なものであってよく、例えば表面に複数のプリズム構造(凹凸構造)を形成した透明シートや、シート中に凹状溝を形成した透明シートなどで構成される。光方向転換シート35は凹凸構造をなす光方向転換面を有し、光方向転換面において光の方向転換が行われる。
【0198】
光方向転換シート35は、第1ガラス板31と第2ガラス板32との間に配設され、合わせガラス30の内部に配設される。そのため、光方向転換シート35の損傷が防止でき、また、合わせガラス30の耐貫通性が改善し、防犯効果が向上する。
【0199】
凹凸構造の凹部には、充填材が充填されてもよい。充填材の屈折率と、透明シートの屈折率とは異なる。屈折率差が光方向転換面の両側で大きいほど、光方向転換面において全反射が生じやすくなる。全反射が生じやすいように、充填材が選定される。つまり、充填材が凹部に充填されることで、充填されない場合に比べて屈折率差が大きくなるように、充填材が選定される。また、光方向転換シート35の凹凸構造の凹部に充填材が充填されることで、光方向転換シート35の平坦化も可能である。
【0200】
第2接着層34は、光方向転換シート35と第2ガラス板32とを接着する。第2接着層34は、第1接着層33と同様に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等で構成される。
【0201】
第2ガラス板32は、光方向転換シート35を基準として室内側に配設される。第2ガラス板32は、第1ガラス板31と同様に、未強化ガラス、化学強化ガラス、または熱強化ガラスなどである。
詳しくは後述するが、第2ガラス板32は、波長選択透過性ガラス1、若しくは、波長選択透過性ガラス2で構成される場合がある。
【0202】
第2ガラス板32は、型板ガラス、フロストガラスなどであってよく、凹凸面を有してよい。この場合、第2ガラス板32は、加工性に優れた未強化ガラスであってよい。型板
ガラスは、ガラス板の表面にロールの型模様を転写したものである。フロストガラスは、ガラス板の表面をブラスト処理した後、さらに化学処理したものである。
【0203】
第2ガラス板32における室内側の表面は凹凸面であって、当該凹凸面が光散乱面を形成してよい。凹凸面の左右両側で屈折率が異なることで、凹凸面の通過時に光が散乱され、光方向転換シート35の凹凸構造に起因するぎらつきが緩和できる。
【0204】
上記の光散乱面は、第2ガラス板32における室内側の表面に光散乱性微粒子を含有する膜を形成することにより得たものであってもよい。
【0205】
上記の光散乱性微粒子の形状としては、球状粒子、棒状粒子、りん片状粒子、針状粒子などを使用でき、これらのうち、球状粒子、りん片状粒子が、ぎらつきを緩和する効果が高いため好ましい。
【0206】
また、上記の光散乱性微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等利用することができるが、膜の屈折率上昇を抑える観点から、シリカが好ましい。
【0207】
また、上記の光散乱性微粒子の粒径は、0.3〜2μmが好ましく、0.5〜1.5μmがより好ましい。粒子径が0.3μm以上であれば、光散乱効果が充分に発揮される。粒子径が2μm以下であれば、塗布液中における分散安定性が良好となる。このような粒径とすることにより最適な光散乱が得られ光方向転換シート35の凹凸構造に起因するぎらつきが緩和できる。
【0208】
上記の光散乱性微粒子の含有量は、膜の固形分を100%とすると、0.3〜30質量%が、光散乱効果が十分に発揮できるため好ましい。また、0.5〜5質量%が耐摩耗性の点から好ましい。
【0209】
上記の光散乱性微粒子を含有する膜の膜厚は0.3μm〜10μmの範囲で適宜作製することができる。膜厚が薄ければ、経済的であり、膜厚が厚いときには、紫外線吸収剤を添加することで、波長選択透過性を付与することも可能である。
【0210】
尚、光散乱面としての凹凸面は、光方向転換シート35を基準として室外側に配設されてもよい。光方向転換シート35への入射光が散乱でき、光方向転換シート35の凹凸構造に起因するぎらつきが緩和できる。この場合、第1ガラス板31が型板ガラス、フロストガラスなどであってよく、第1ガラス板31における室外側の表面が凹凸面であって、当該凹凸面が光散乱面を形成してよい。
【0211】
図3に示す合わせガラス30は、ガラス板を2枚有するが、3枚以上有してもよい。例えば、合わせガラスは、第1ガラス板31よりも室外側に第1ガラス板31と接着される第3ガラス板を有してもよい。また、合わせガラス30は、第2ガラス板32よりも室内側に第2ガラス板と接着される第4ガラス板を有してもよい。この場合、第3ガラス板および/または第4ガラス板が、後述する波長選択透過性ガラス1、若しくは、波長選択透過性ガラス2で構成される場合がある。
【0212】
本発明の合わせガラスの色調は、その用途に応じて適宜選択することができる。本発明では、ガラスの色調の指標として、A光源を用いて測定した主波長Dwを用いる。
本発明の合わせガラスは、A光源を用いて測定した主波長Dwが380〜700nmであることが、用途に応じた様々な色調のガラスを包含するため好ましい。
例えば、主波長Dwが380〜480nmのガラスは紫色系のガラスであり、主波長Dwが460〜510nmのガラスは青色系のガラスであり、主波長Dwが500〜570nmのガラスは緑色系のガラスであり、主波長Dwが580〜700nmのガラスは赤色系のガラスである。
【0213】
本発明の合わせガラスの第1態様では、一対のガラス板のうちいずれか一方の主面にLow−E膜を設けることにより遮熱性を達成する。Low−E膜については、本発明の単板ガラスの第1態様について記載したのと同様である。
本発明の合わせガラスの第1態様において、Low−E膜を設けるガラス板、および、Low−E膜を設ける主面は特に限定されない。したがって、
図3に示す合わせガラス30の場合、第1ガラス板31にLow−E膜を設けても、第2ガラス板32にLow−E膜を設けてもよい。また、これらのガラス板の室外側の主面にLow−E膜を設けても、室内側の主面にLow−E膜を設けてもよい。但し、遮熱性の観点からは、第2ガラス板にLow−E膜を設けることが好ましい。この場合、室外側の主面に設けてもよく、室内側の主面に設けてもよい。
【0214】
本発明の合わせガラスの第2態様では、接着層が熱線吸収能を有することで遮熱性を達成する。なお、上述した赤外線遮蔽粉末を接着層に配合することにより、接着層に熱線吸収能を付与することが可能である。
図3に示す合わせガラス30の場合、第1接着層33に熱線吸収能を付与しても、第2接着層34に熱線吸収能を付与してもよい。第1接着層33、および第2接着層34の両方に熱線吸収能を付与してもよい。具体的には、赤外線遮蔽粉末としてITO微粒子を接着層に配合することが好ましい。
【0215】
本発明の合わせガラスの第3態様は、一対のガラス板のうち少なくとも一方が、光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上、光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下の波長選択透過性ガラス1である。
【0216】
合わせガラスの第3態様において、一対のガラス板のうちいずれか一方が波長選択透過性ガラス1であってもよく、両方が波長選択透過性ガラス1であってもよい。いずれか一方が波長選択透過性ガラスの場合、合わせガラスの使用時に室外側に位置するガラス板を波長選択透過性ガラス1とすること、
図3に示す合わせガラス30の場合、第1のガラス板31を波長選択透過性ガラス1とすることが以下の理由から好ましい。
室外側に位置する第1ガラス板31を光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下の波長選択透過性ガラス1とすれば、第1ガラス板31に対し室内側に位置する、第1接着層33、光方向転換シート35、および第2接着層34の光劣化を抑制できる。
また、第2ガラス板32は、図示した態様のように室内側の表面を凹凸面とする場合があるため、ガラス板の製造上の観点からも第1ガラス板31を波長選択透過性ガラス1とすることが好ましい。
【0217】
合わせガラスの第3態様において、遮熱性を合わせガラスの第2態様で達成する場合、Low−E膜は、波長選択透過性ガラス1以外のガラス板の主面に設けることが好ましい。
【0218】
合わせガラスの第3態様において、波長選択透過性ガラス1は光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0219】
合わせガラスの第3態様において、波長選択透過性ガラス1は光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0220】
合わせガラスの第3態様において、波長選択透過性ガラス1は光透過率T
360-400nmが板厚6mm換算で3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0221】
合わせガラスの第3態様において、波長選択透過性ガラス1は光透過率T
400-760nmが板厚6mm換算で1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0222】
合わせガラスの第3態様において、波長選択透過性ガラス1はA光源を用いて測定した主波長Dwが板厚6mm換算で380〜700nmであることが好ましい。
【0223】
合わせガラスの第3態様における波長選択透過性ガラス1としては、単板ガラスの第1態様で示したガラス板を用いることができる。
【0224】
本発明の合わせガラスの第4態様は、一対のガラス板のうち少なくとも一方が、ガラス板と、該ガラス板の主面に設けられた膜とを含み、光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、光透過率T
315nm以下が60%以下の波長選択透過性ガラス2である。
【0225】
合わせガラスの第4態様において、一対のガラス板のうちいずれか一方が波長選択透過性ガラス2であってもよく、両方が波長選択透過性ガラス2であってもよい。いずれか一方が波長選択透過性ガラス2の場合、合わせガラスの使用時に室外側に位置するガラス板を波長選択透過性ガラス2とすること、
図3に示す合わせガラス30の場合、第1のガラス板31を波長選択透過性ガラス2とすることが以下の理由から好ましい。
室外側に位置する第1ガラス板31を光透過率T
315nm以下が60%以下の波長選択透過性ガラス2とすれば、第1ガラス板31に対し室内側に位置する、第1接着層33、光方向転換シート35、および第2接着層34の光劣化を抑制できる。
また、第2ガラス板32は、図示した態様のように室内側の表面を凹凸面とする場合があるため、ガラス板の製造上の観点からも第1ガラス板31を波長選択性ガラス物品とすることが好ましい。
【0226】
合わせガラスの第4態様において、遮熱性を合わせガラスの第2態様で達成する場合、Low−E膜は、波長選択透過性ガラス2以外のガラス板の主面に設けることが好ましい。
【0227】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は光透過率T
315nm超400nm以下が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0228】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は光透過率T
315nm以下が45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0229】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0230】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0231】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は波長380nmの光の透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0232】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は波長350nmの光の透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0233】
合わせガラスの第4態様において、波長選択透過性ガラス2は波長315nmの光の透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0234】
合わせガラスの第4態様における波長選択透過性ガラス2としては、単板ガラスの第2態様で示したガラス板および波長選択透過性膜の組合せを用いることができる。
【0235】
本発明の合わせガラスの第5態様は、接着層を波長選択透過性とすることにより、合わせガラスの波長選択透過性を達成する。これにより、一対のガラス板の選択肢が広がり、合わせガラスに意匠性を付与することが可能である。
【0236】
合わせガラスの第5態様は、接着層の光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であり、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0237】
合わせガラスの第5態様において、接着層の光透過率T
315nm以下が60%以下であり、45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0238】
合わせガラスの第5態様において、接着層は光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0239】
合わせガラスの第5態様において、接着層は光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0240】
合わせガラスの第5態様において、接着層は波長380nmの光の透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0241】
合わせガラスの第5態様において、接着層は波長350nmの光の透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0242】
合わせガラスの第5態様において、接着層は波長315nmの光の透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0243】
(接着層)
接着層の材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール(以下、「PVB」と記載する。)、アクリル系粘着剤、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。各接着層の材料は、同じものでもよく、異なるものでもよい。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、可塑化ポリビニルアセタール、可塑化ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル、可塑化飽和ポリエステル、ポリウレタン、可塑化ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0244】
接着層の厚さは、接着層としての機能が保たれる厚さであればよく、例えば、0.01〜1.5mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。
【0245】
接着層は、所定の紫外線吸収剤を添加することにより、波長選択透過性を付与することができる。具体的には、波長360nm未満の紫外線を吸収する作用が高い紫外線吸収剤を添加することにより、波長選択透過性を付与することができる。
【0246】
波長360nm未満の紫外線を吸収する作用が高い紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤などが使用できる。無機系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等の粒子が使用できる。上記紫外線吸収剤を選択すると、眼に有害な光を吸収することができ、近視の進行抑制に有用な光を透過させることができる。なかでも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、波長360nm未満の紫外線を効率よく吸収することができるので好ましい。
【0247】
図5は、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤およびヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤として広く用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の透過スペクトルである。
図5に示す透過スペクトルは下記条件で測定した。
セル長:10mm
溶媒 :シクロヘキサノン
濃度 :10mg/1L
図5に示すように、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤およびヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤として広く用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に比べてより短波長側の透過率が低くなっており、波長360nm未満の紫外線を吸収する作用が高いことが確認できる。
【0248】
図6は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を0.2質量%、若しくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を5質量%添加したPVB層(厚さ0.76mm)の透過スペクトルである。
図6に示すように、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を添加したPVB層は、紫外線吸収剤として広く用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加したPVB層に比べて、波長360nm以上の紫外光の透過率が高くなっており、特定波長選択透過性が発揮されていることが確認できる。
【0249】
接着層に対する紫外線吸収剤の添加量は、接着層の厚さにもよるが、0.1〜10質量%が望ましい。添加量が0.1〜10質量%の場合は、有用な光を透過し、有害な光を吸収することが可能である。0.1質量%以下であると、有害な光を十分に吸収することができず、10質量%より多い場合は、接着層よりブリードアウトし、接着不良となる恐れがある。これらは、1種を用いてもよく、また、2種以上を併用することも可能である。
【0250】
図3に示す合わせガラス30の場合、上記の紫外線吸収剤は、第1接着層33および第2接着層34のうち、いずれかのみに添加してもよく、両方に添加してもよい。第1接着層および第2接着層の両方に上記の紫外線吸収剤を添加した場合、第1接着層33と第2接着層34の構成材料との共通化を図ることができ、管理コストや製造コストを低減することができる。
【0251】
また、本発明の合わせガラスは、上記以外の構成要素を波長選択透過性とすることにより、合わせガラスの波長選択透過性を達成してもよい、
図3に示す合わせガラス30の場合、光方向転換シート35を波長選択透過性とすることにより、合わせガラス30の波長選択透過性を達成してもよい。
【0252】
赤外線遮蔽粉末としてITO微粒子を接着層に配合する場合、単板ガラスの第1態様で示した特定組成の波長選択透過性ガラスを用いて合わせガラスを形成してもよく、単板ガラスの第2態様で示したガラス板および波長選択透過性膜の組合せを用いて合わせガラスを形成してもよく、接着層に赤外線遮蔽粉末と紫外線吸収剤とを添加してもよい。
【0253】
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第3形態は複層ガラスである。本発明における複層ガラスは、間隔をあけて配置された複数枚のガラス板を有する。
本発明の波長選択透過性ガラス物品の第3形態の複層ガラス(以下、本明細書において、本発明の複層ガラスと記載する。)は、後述する条件を満たす波長選択透過性複層ガラスである。
【0254】
本発明の複層ガラスは、光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上であり、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0255】
本発明の複層ガラスは、光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下であり、45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0256】
本発明の複層ガラスは、日射透過率が65%以下である。
【0257】
本発明の複層ガラスは、日射熱取得率が0.70以下である。
【0258】
本発明の複層ガラスは、光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0259】
本発明の複層ガラスは、光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0260】
本発明の複層ガラスは、日射熱取得率が0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.50以下であることが特に好ましい。
【0261】
図4は、本発明の複層ガラスの一構成例の断面図である。
図4に示す複層ガラス40において、2枚のガラス板41、42がスペーサー43を介して対向するように配置されている。
図4に示す複層ガラス40は、2枚のガラス板41、42、およびスペーサー43により画定されるガス層44を有している。
【0262】
以下、複層ガラスの構成について具体的に説明する。
<ガラス板>
複層ガラスを構成するガラス板41、42としては特に限定されるものではなく、公知の各種ガラス板を用いることができる。具体的には例えばフロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入板ガラス、線入板ガラス、熱線吸収板ガラス、それらを用いた合わせガラス、強化ガラス(風冷強化ガラス、化学強化ガラス)等が挙げられる。
【0263】
また、ガラス板41、42の材質についても特に限定されるものではなく、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の各種ガラスを用いることができる。
【0264】
ガラス板41、42の厚さについても特に限定されるものではなく、複層ガラスに要求される強度、サイズ、断熱性能等に応じて選択することができるが、1mm〜10mmとすることが好ましい。
【0265】
上記の様に複層ガラスは複数枚のガラス板から構成されるが、各ガラス板の厚さは同じであっても良く、異なる厚さのガラス板を組み合わせて用いても良い。
【0266】
<ガス層>
ガス層44は、ガラス板間に設けられた層(空間)であり、特に別途ガスによる置換を行わずに空気層とすることもできる。また、各種ガスにより置換した層、例えばAr、Kr等の断熱性ガスにより置換した断熱性ガス層とすることができ、または、減圧した減圧層とすることもできる。
【0267】
断熱性ガスにより置換した断熱性ガス層、または、減圧した減圧層の場合、ガラス板間の伝熱を抑制することができ、複層ガラスの断熱性能を高めることができるためより好ましい。
【0268】
ガス層44の厚さ(幅)は特に限定されるものではなく、要求される複層ガラス全体の厚さ、断熱性能等に応じて選択することができる。具体的には例えば、2mm〜20mmであることが好ましく、3mm〜16mmであることがより好ましい。
【0269】
なお、ここでいうガス層44の厚さとは、ガラス板41、42の内側主面にLow−E膜や波長選択透過性膜等が設けられている場合は、該膜または反射防止面の表面からの距離を意味する。
<スペーサー>
スペーサー43については特に限定されるものではなく、ガラス板間を所定の間隔に保持し、封止できるものであればよい。具体的には例えば樹脂やガラス、金属により構成することができる。また、ガス層44側のガラス板41、42の主面において結露しないように、ガス層44内の湿度を低減するため乾燥剤をスペーサー内に配置することもできる。
【0270】
本発明の複層ガラスの第1態様は、複層ガラスを構成するガラス板のうち少なくとも1つが、光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で3%以上、光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下の波長選択透過性ガラス3であり、複層ガラスを構成するいずれか1つのガラス板のいずれか1つの主面にLow−E膜が設けられている。Low−E膜については、本発明の単板ガラスの第1態様について記載したのと同様である。
【0271】
複層ガラスの第1態様において、Low−E膜は、波長選択透過性ガラス3以外のガラス板の主面に設けることが好ましい。
【0272】
Low−E膜を設ける主面については特に限定されるものではないが、Low−E膜は一般的に耐擦傷性能が弱く傷つきやすいこと、そして耐湿性能が低く大気中の水分により膜が腐食する可能性があることから、外気や傷の原因となる埃等と接触する機会を低減するため、複層ガラスを構成するガラス板が対向する面、すなわち、封止される領域内(ガス層44内)に設けることが好ましい。例えば、
図4の複層ガラス40の場合、ガラス板41のガス層44に面する側の主面、またはガラス板42のガス層44に面する側の主面設けることが好ましい。この点については、後述する複層ガラスの第2態様についても同様である。
【0273】
複層ガラスの第1態様において、複数のガラス板のうちいずれか1つが波長選択透過性ガラス3であってもよく、2つ以上のガラス板が波長選択透過性ガラス3であってもよい。
【0274】
複層ガラスの第1態様において、波長選択透過性ガラス3は光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0275】
複層ガラスの第1態様において、波長選択透過性ガラス3は光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0276】
複層ガラスの第1態様において、波長選択透過性ガラス3は光透過率T
360-400nmが板厚6mm換算で3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0277】
複層ガラスの第1態様において、波長選択透過性ガラス3は光透過率T
400-760nmが板厚6mm換算で1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0278】
複層ガラスの第1態様において、波長選択透過性ガラス3はA光源を用いて測定した主波長Dwが板厚6mm換算で380〜700nmであることが好ましい。
【0279】
複層ガラスの第1態様における波長選択透過性ガラス3としては、単板ガラスの第1態様で示したガラス板を用いることができる。
【0280】
本発明の複層ガラスの第2態様は、複数のガラス板のうち少なくとも1つが、ガラス板と、該ガラス板の主面に設けられた膜とを含み、光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、光透過率T
315nm以下が60%以下の波長選択透過性ガラス4であり、複層ガラスを構成するいずれか1つのガラス板のいずれか1つの主面にLow−E膜が設けられている。Low−E膜については、本発明の単板ガラスの第1態様について記載したのと同様である。
【0281】
複層ガラスの第2態様において、Low−E膜は、波長選択透過性ガラス4以外のガラス板の主面に設けることが好ましい。
【0282】
複層ガラスの第2態様において、複数のガラス板のうちいずれか1つが波長選択透過性ガラス4であってもよく、2つ以上のガラス板が波長選択透過性ガラス4であってもよい。
【0283】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は光透過率T
315nm超400nm以下が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
【0284】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は光透過率T
315nm以下が45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0285】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は光透過率T
360-400nmが3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0286】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は光透過率T
400-760nmが1%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0287】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は波長380nmの光の透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましくい。
【0288】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は波長350nmの光の透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0289】
複層ガラスの第2態様において、波長選択透過性ガラス4は波長315nmの光の透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0290】
複層ガラスの第2態様における波長選択透過性ガラス2としては、単板ガラスの第2態様で示したガラス板および波長選択透過性膜の組合せを用いることができる。
【実施例】
【0291】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【0292】
(実施例1−1〜1−29)
実施例1−1〜1−29では、本発明の合わせガラスの第1態様に用いる波長選択透過性ガラス1を以下に示す手順で作製した。
【0293】
下記表1〜表6に示すガラス組成となるように、酸化物等の一般的に使用されるガラス原料を適宜選択し、混合物を白金るつぼに入れ、1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入し、3時間溶融し、脱泡、均質化した後、型材に流し込み、ガラス転移点から約30℃高い温度にて1時間以上保持した後、毎分0.3〜1℃の冷却速度にて室温まで徐冷し、実施例1−1〜1−29の板状のガラスサンプル(板厚6mm)を作製した。
【0294】
得られたガラスサンプルについて、分光光度計により測定したガラスサンプルのスペクトル曲線から下式(1)を用いてFe−Redoxを算出した。
Fe−Redox(%)=−log
e(T
1000nm/91.4)/(Fe
2O
3量×t×20.79)×100 ・・・(1)。
ただし、
T
1000nmは、分光光度計(Perkin Elmer社製、Lambda950)により測定した波長1000nmの透過率(%)であり、
tは、ガラスサンプルの厚さ(cm)であり、
Fe
2O
3量は、蛍光X線測定によって求めた、Fe
2O
3換算の全鉄含有量(%=質量百分率)である。
また、波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下、波長360〜400nmの光透過率T
360-400nm、波長315nm以下の光透過率T
315nm以下、波長400〜760nmの光透過率T
400-760nm、主波長Dwについては分光光度計(Perkin Elmer社製、Lambda950)を用いて測定した。結果を表1〜表6に示した。
【表1】
【0295】
【表2】
【0296】
【表3】
【0297】
【表4】
【0298】
【表5】
【0299】
【表6】
【0300】
実施例1−1〜1−29のガラスは、いずれも波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、かつ波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下であった。本発明の合わせガラスの第1態様の波長選択透過性ガラス1として、実施例1−1〜1−18のガラスを用いた場合、単板の光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上となり、光透過率T
315nm以下が60%以下となると考えられる。
【0301】
(実施例1A)
旭硝子株式会社製の熱線反射膜付きガラス「商品名:サンカットΣクリア」の素板を上記実施例1−22の組成のガラスに変えて実施例1Aを作成した。ガラスの厚さは6mmとした。実施例1Aのガラス物品は、熱線遮蔽膜を有し、近視の進行抑制に有用な波長選択透過性を有する。
【0302】
(比較例1B)
上記実施例1−22の組成からなる厚さ6mmのガラス板を比較例1Bとした。比較例1Bのガラス物品は、熱線遮蔽膜を有さず、近視の進行抑制に有用な波長選択透過性を有する。
【0303】
(比較例1C)
旭硝子株式会社製の熱線反射膜付きガラス「商品名:サンカットΣクリア」を比較例1Cとした。ガラスは厚さ6mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)である。比較例1Cのガラス物品は、熱線遮蔽膜を有し、近視の進行抑制に有用な波長選択透過性を有さない。
【0304】
(比較例1D)
厚さ6mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)を比較例1Dとした。比較例1Dは、遮熱性、近視の進行抑制に有用な波長選択透過性をともに有さない。
【0305】
上記の実施例1A、比較例1B、比較例1C、比較例1Dのガラス物品についてJIS R3106−1998を準用して分光透過率を測定した。波長300〜400nmにおける透過スペクトルを
図7に示す。
波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下、波長315nm以下の光透過率T
315nm以下、波長360〜400nmの光透過率T
360-400nm、波長400〜760nmの光透過率T
400-760nm、波長380nmの光の透過率T
380nm、波長350nmの光の透過率T
350nm、日射透過率(%)および日射熱取得率(η値)を表7に示す。
【0306】
【表7】
【0307】
実施例1Aのガラスは、目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)を抑えつつ近視の進行抑制に有用な光(T
380nm)を透過させ、加えて日射の透過と日射熱の取得を抑制し遮熱効果を備えていることがわかる。一方、比較例1Bのガラスは目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)を抑えつつ近視の進行抑制に有用な光(T
380nm)を透過させることができるが、日射透過率および日射熱取得率が高く遮熱性に乏しい。比較例1Cのガラスは一定の遮熱効果を有しているものの、目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)が高い。また、比較例1Dのガラスは遮熱性に乏しく、かつ目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)が高い。
【0308】
(実施例2−1〜2−5)
実施例2−1〜2−5では、本発明の合わせガラスの第2態様に用いる波長選択透過性ガラス2を以下に示す手順で作製した。
[実施例2−1]
厚さ2mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:Dragontrail)上に、スパッタ法により、第1の層〜第4の層からなる、合計4層からなる積層膜を形成した。この積層膜は、特定短波長光反射成分からなる。
【0309】
積層膜は、ガラス板に近い側から、以下の層構成とした:
第1の層:Nb
2O
5層、厚さ29.0nm、
第2の層:SiO
2層、厚さ22.3nm、
第3の層:Nb
2O
5層、厚さ102.1nm、
第4の層:SiO
2層、厚さ96.1nm。
【0310】
第1および第3の層は、ターゲットとしてNbO
Xターゲット(x<2)を使用し、Ar+O
2雰囲気(酸素8vol%)下でのスパッタ法により成膜した。スパッタ圧力は、0.37Paとした。
【0311】
第2および第4の層は、ターゲットとしてSiターゲットを使用し、Ar+O
2雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタ法により成膜した。スパッタ圧力は、0.17Paとした。
【0312】
次いで裏面にも同様のNb
2O
5、SiO
2膜を形成して波長選択透過性ガラス物品を得る。得られたガラス物品についてJIS R3106−1998を準用して分光透過率を測定した。波長300〜400nmにおける透過スペクトルを
図8に示す。
【0313】
また、波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下、波長315nm以下の光透過率T
315nm以下、波長360〜400nmの光透過率T
360-400nm、波長400〜760nmの光透過率T
400-760nm、波長380nmの光の透過率T
380nm、波長350nmの光の透過率T
350nm、波長315nmの光の透過率T
315nmをまとめて表8に示す。またガラス板の波長350nmの光の透過率を表8に示す。
【0314】
[実施例2−2]
実施例2−1と同様にして、厚さ2mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:Dragontrail)上に、スパッタリング法により、第1の層〜第8の層からなる、合計8層からなる積層膜を形成した。この積層膜は特定短波長光反射成分からなる。
【0315】
積層膜は、ガラス板に近い側から、以下の層構成とした:
第1の層:Nb
2O
5層、厚さ0.6nm、
第2の層:SiO
2層、厚さ87.2nm、
第3の層:Nb
2O
5層、厚さ13.8nm、
第4の層:SiO
2層、厚さ45.6nm、
第5の層:Nb
2O
5層、厚さ34.1nm、
第6の層:SiO
2層、厚さ23.4nm、
第7の層:Nb
2O
5層、厚さ31.0nm、
第8の層:SiO
2層、厚さ98.1nm。
【0316】
次いで裏面にもNb
2O
5、SiO
2膜を形成して波長選択透過性ガラス物品を得た。裏面の積層膜は、ガラス板に近い側から以下の層構成とした:
第1の層:Nb
2O
5層、厚さ6.6nm、
第2の層:SiO
2層、厚さ79.0nm、
第3の層:Nb
2O
5層、厚さ20.0nm、
第4の層:SiO
2層、厚さ38.6nm、
第5の層:Nb
2O
5層、厚さ39.1nm、
第6の層:SiO
2層、厚さ20.4nm、
第7の層:Nb
2O
5層、厚さ35.0nm、
第8の層:SiO
2層、厚さ101.0nm。
【0317】
両面に積層膜を形成したガラス物品の波長300nm〜400nmにおける透過スペクトルを
図9に示す。また、実施例2−1と同様にして透過率を表8に示す。
【0318】
[実施例2−3]
アルコール溶剤(日本アルコール販売株式会社製、商品名:ソルミックスAP−1)の50g、テトラメトキシシランの12g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの3.8g、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの10g、酢酸の11g、イオン交換水の11gを混合してコート液を得た。
【0319】
このコート液は特定短波長光吸収成分として2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンを含み、マトリクス成分としてテトラメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む。
【0320】
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)上に前記のコート液をアプリケータで塗布し、150℃で30分乾燥して波長選択透過性ガラス物品を得た。その透過スペクトルを
図10中のaに示す。また、実施例2−1と同様にして透過率を表8に示す。なお、
図10中の破線bは、前述の膜を形成していない厚さ2mmソーダライムガラス板(参考例)の透過スペクトルである。
【0321】
[実施例2−4]
厚さ0.5mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:Dragontrail)を用いた他は実施例2−3と同様にして波長選択透過性ガラス物品を得た。その透過スペクトルを
図11中のaに示す。また、実施例2−1と同様にして透過率を表7に示す。なお、
図11中の破線bは、前述の膜を形成していない厚さ0.5mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(参考例)の透過スペクトルである。
【0322】
[実施例2−5]
酢酸ブチル(純正化学株式会社製)54.6g、マトリクス成分としてシリコン・アクリル樹脂溶液45.4g、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッドジメチルエステル0.02gを混合してコート液を得た。
【0323】
このコート液は特定短波長光吸収成分として[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッドジメチルエステル(クラリアントジャパン製、商品名:PR25)を含み、マトリクス成分としてシリコン・アクリル系樹脂(DIC株式会社製:BZ−1160)を含む。
【0324】
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)上に前記のコート液をアプリケータで塗布し、100℃で30分乾燥して6μmの波長選択透過性ガラス物品を得た。
【0325】
その透過スペクトルを
図12中のaに示す。また、実施例2−1と同様にして透過率を表8に示す。なお、
図12中の破線bは、前述の膜を形成していない厚さ2mmソーダライムガラス板(参考例)の透過スペクトルである。
【0326】
【表8】
【0327】
表8および
図8〜12に示すように、実施例2−1〜実施例2−5の波長選択透過性ガラス物品は、波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上、且つ波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下であった。本発明の合わせガラスの第2態様の波長選択透過性ガラス2として、実施例2−1〜2−5のガラス物品を用いた場合、合わせガラスの光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上となり、光透過率T
315nm以下が60%以下となると考えられる。
【0328】
(例3−1〜3−4)
例3−1〜3−4では、光方向転換シートを有する本発明の波長選択透過性合わせガラスを以下に示す手順で作製した。例3−1、例3−4は実施例であり、例3−2、例3−3は比較例である。
[例3−1(実施例)]
実施例2−5で作製した第1のガラス板および第2のガラス板として型板ガラスを用いて、室外から室内側に向けて、第1のガラス板、第1接着層としてのポリビニルブチラール(以下、PVB、厚さ0.76mm)、光方向転換シート、第2接着層としてのPVB(厚さ0.76mm)、第2のガラス板を順に積層し、積層体を仮圧着させた後、オートクレーブを用いて真空加熱圧着を行い、例3−1の合わせガラスを得た。
【0329】
[例3−2、3−3(比較例)]
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)を第1のガラス板、第2のガラス板として型板ガラスを用い、室外から室内側に向けて、第1のガラス板、第1接着層としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するPVB(厚さ0.76mm)、光方向転換シート、第2接着層としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するPVB(厚さ0.76mm)、第2のガラス板を順に積層し、例3−1と同様の方法で圧着して例3−2の合わせガラスを得た。
【0330】
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)を第1のガラス板、第2のガラス板として実施例2−5で作製したガラス板を用型板ガラス、室外から室内側に向けて、第1のガラス板、接着層としてPVB(厚さ0.76mm)、第2のガラス板を順に積層し、例3−1と同様の方法で圧着して例3−3の合わせガラスを得た。
【0331】
[例3−4(実施例)]
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)を第1のガラス板、第2のガラス板として型板ガラスを用い、室外から室内側に向けて、第1のガラス板、第1接着層として波長選択透過性接着層である、ヒドロキシトリアジン系紫外線吸収剤を0.2質量%含有するPVB(厚さ0.76mm)、光方向転換シート、第2接着層としてPVB(厚さ0.76mm)、第2のガラス板を順に積層し、例3−1と同様の方法で圧着して例3−4の合わせガラスを得た。
【0332】
例3−1,3−2,3−3,3−4の透過スペクトルを
図13に示す。また、各波長域での光の透過率を表9に示す。なお、
図13の曲線aは例3−1を、曲線bは例3−2を、曲線cは例3−3を、曲線dは例3−4を表す。
【0333】
【表9】
【0334】
(配光分布特性評価)
例3−1,3−2,3−3,3−4について、合わせガラスの垂直方向に対して、入射光を0°の角度で入射し、合わせガラスを透過した透過光を基板垂直方向に対して0〜−90°の角度で検出位置を変え、角度ごとの透過率の値を計測する。前記透過率は、可視光の代表として波長555nmの光を、前記特定波長光の代表として波長380nmの光の値を測定する。
角度を変えて透過率を測定した結果を配光分布特性として
図14(例3−1)、
図15(例3−2)、
図16(例3−3)および
図17(例3−4)、に示す。
図14〜17において、破線は波長555nmの光の透過率を示し、実線は波長380nmの光の透過率を示す。
【0335】
例3−1、3−4の波長選択透過性合わせガラスは、波長555nmの光、波長380nmの光ともに拡散しているのに対し、例3−2の合わせガラスは、波長555nmの光は拡散するが、波長380nmの光は拡散していないことが分かる。例3−3の合わせガラスは、波長555nmの光、波長380nmの光ともに入射方向に対し直線的には透過するが、その他の方向には光が拡散しないことが分かる。
【0336】
(例4−1:実施例)
例4−1では、本発明の複層ガラスを以下に示す手順で作製した。厚さ3mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)上に、スパッタリング法により、合計7層からなる下記の積層膜を形成した。この積層膜は特定短波長光反射成分からなる。
【0337】
積層膜は、ガラス板に近い側から、以下の層構成とした。下記の第1AZO層、第2AZO層および第3AZO層において、酸化アルミニウムと酸化亜鉛の質量比は5:95である。
第1誘電体層(第1AZO層):45nm
第1Ag含有層(第1Ag層):14nm
第1バリア層(第1酸化チタン層):3nm
第2誘電体層(第2AZO層):75nm
第2Ag含有層(第1Ag層):12nm
第2バリア層(第2酸化チタン層):3nm
第3誘電体層(第3AZO層):24nm
【0338】
上記の積層膜付きガラス板を用いて複層ガラスを得た。複層ガラスのもう一方のガラスとして厚さ3mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)を用い、両ガラスの間隔を12mm開け、ガラス間のスペースは空気層とした。
【0339】
(例4−2:比較例)
例4−2は、熱線遮蔽膜を有し、近視の進行抑制に有用な波長選択透過性を有しない比較例の複層ガラスである。ここでは、旭硝子株式会社製のLow−E膜付き複層ガラスであるサンバランスピュアクリア(商品名)を用いた。
【0340】
例4−2の複層ガラスは、厚さ3mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)2枚を用い、両ガラスの間隔を12mm開け、ガラス間のスペースは空気層とした。
【0341】
(例4−3:比較例)
例4−3は、遮熱性、近視の進行抑制に有用な波長選択透過性をともに有しない比較例である。ここでは、厚さ3mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)2枚を用い、両ガラスの間隔を12mm開け、ガラス間のスペースは空気層とすることにより複層ガラスとしたものである。
【0342】
例4−1、例4−2および例4−3の透過スペクトルを
図18に示す。また、各波長域での光の透過率を表10に示す。
【0343】
【表10】
【0344】
例4−1(実施例)の複層ガラスは、目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)を抑えつつ近視の進行抑制に有用な光(T
380nm)を透過させ、加えて日射の透過と日射熱の取得を抑制し遮熱効果を備えていることがわかる。一方、例4−2(比較例)の複層ガラスは一定の遮熱効果を有しているものの、目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)が高い。また、例4−3(比較例)の複層ガラスは遮熱性に乏しく、かつ目に有害な短波長の光の透過率(T
350nm)が高い。