【解決手段】ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルム10が開示される。樹脂フィルム10の引張弾性率が4.0GPa以上である。樹脂フィルム10を向かい合う樹脂フィルム間の距離が3mmになるまでU字型に折り曲げて戻すことを繰り返す屈曲試験において、樹脂フィルム10が破断するまで樹脂フィルム10を折り曲げる回数が100000回を超える。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。各図において、同一又は対応する要素には同一符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0014】
〔樹脂フィルム〕
図1は、樹脂フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図1に示す樹脂フィルム10は、ポリイミド系高分子を含有し、対向する一対の主面10a及び10bを有する。
【0015】
樹脂フィルム10の引張弾性率は、4.0GPa以上である。樹脂フィルム10を向かい合う樹脂フィルム間の距離が3mmになるまでU字型に折り曲げて戻すことを繰り返す屈曲試験において、当該樹脂フィルム10が破断するまで樹脂フィルム10を折り曲げる回数が、100000回を超える。本明細書において、屈曲試験において樹脂フィルムが折り曲げられる回数を「屈曲回数」ということがある。
【0016】
ポリイミド系高分子を含有する樹脂フィルム10が、引張弾性率及び屈曲試験に関して上記要件を満たすことにより、粘着層/樹脂フィルム/ハードコート層の積層体において、ハードコート層の表面の硬度を十分に高めることができる。
【0017】
図2は、粘着層/樹脂フィルム/ハードコート層の積層体からなる積層体の一実施形態を示す断面図である。
図2に示す積層体30は、樹脂フィルム10と、樹脂フィルム10の一方の主面10a上に積層された機能層20と、樹脂フィルム10の他方の主面10b上に積層された機能層21とを有する積層体である。本実施形態に係る樹脂フィルム10によれば、機能層20がハードコート層で、機能層21が粘着層であるとき、機能層(ハードコート層)20の表面Sの硬度を高めることができる。機能層20及び21としてのハードコート層及び粘着層の詳細については、後述される。
【0018】
樹脂フィルム10の引張弾性率は、4GPa以上であり、好ましくは5GPs以上であり、また10GPa以下であることが好ましく、8GPa以下であることがより好ましい。引張弾性率がこれら数値範囲内にあることにより、表面Sの硬度向上の点に加え、屈曲回復性の点でも優れた効果が得られる。
【0019】
上記屈曲試験において樹脂フィルム10が破断するまでの屈曲回数は、100000回を超える。屈曲試験において「樹脂フィルムが破断する」とは、樹脂フィルムが部分的に又は全体的に破断する、すなわち厚み方向の全体にわたって分断された部分が生じることを意味する。屈曲回数が100000回に達した時点で樹脂フィルムが破断しない場合、樹脂フィルムが破断するまでの屈曲回数は、100000回を超えるとみなされる。本発明者らの知見によれば、100000回の屈曲回数までの屈曲試験に基づいて、樹脂フィルムによる表面Sの硬度向上に対する寄与を評価することができる。屈曲試験の詳細については、後述の実施例において説明される。
【0020】
樹脂フィルム10の黄色度(YI値)は、フレキシブルデバイスの視認性等の観点から、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。樹脂フィルム10の黄色度は、通常0.5以上であり、1以上であってもよい。
【0021】
樹脂フィルム10は、ポリイミド系高分子を含む。本明細書において、ポリイミド系高分子とは、式(PI)、式(a)、式(a’)及び式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種以上含む重合体を意味する。なかでも、式(PI)で表される繰り返し構造単位が、ポリイミド系高分子の主な構造単位であると、フィルムの強度及び透明性の観点で好ましい。式(PI)で表される繰り返し構造単位は、ポリイミド系高分子の全繰り返し構造単位に対し、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、殊更好ましくは90モル%以上であり、殊更さらに好ましくは98モル%である。
【0023】
式(PI)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a)中のG
2は3価の有機基を表し、A
2は2価の有機基を表す。式(a’)中のG
3は4価の有機基を表し、A
3は2価の有機基を表す。式(b)中のG
4及びA
4は、それぞれ2価の有機基を表す。
【0024】
式(PI)中、Gで表される4価の有機基の有機基(以下、Gの有機基ということがある)としては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれる基が挙げられる。Gの有機基は、樹脂フィルム10の透明性及び屈曲性の観点から、4価の環式脂肪族基又は4価の芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基及び2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基等が挙げられる。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、Gの有機基は、環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する単環式芳香族基、フッ素系置換基を有する縮合多環式芳香族基又はフッ素系置換基を有する非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。本明細書においてフッ素系置換基とは、フッ素原子を含む基を意味する。フッ素系置換基は、好ましくはフルオロ基(フッ素原子,−F)及びパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくはフルオロ基及びトリフルオロメチル基である。
【0025】
より具体的には、Gの有機基は、例えば、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及び、これらのうちの任意の2つの基(同一でもよい)を有しこれらが直接又は結合基により相互に連結された基から選ばれる。結合基としては、−O−、炭素数1〜10のアルキレン基、−SO
2−、−CO−又は−CO−NR−(Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す)が挙げられる。
【0026】
Gで表される4価の有機基の炭素数は通常2〜32であり、好ましくは4〜15であり、より好ましくは5〜10であり、さらに好ましくは6〜8である。Gの有機基が環式脂肪族基又は芳香族基である場合、これらの基を構成する炭素原子のうちの少なくとも1つがヘテロ原子で置き換えられていてもよい。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられる。
【0027】
Gの具体例としては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)又は式(26)で表される基が挙げられる。式中の*は結合手を示す。式(26)中のZは、単結合、−O−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH
2−Ar−、−Ar−C(CH
3)
2−Ar−又は−Ar−SO
2−Ar−を表す。Arは炭素数6〜20のアリール基を表し、例えば、フェニレン基であってもよい。これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
【0029】
式(PI)中、Aで表される2価の有機基の有機基(以下、Aの有機基ということがある)としては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される基が挙げられる。Aで表される2価の有機基は、2価の環式脂肪族基及び2価の芳香族基から選ばれることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、及び2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基が挙げられる。樹脂フィルムの透明性、及び着色の抑制の観点から、Aの有機基には、フッ素系置換基が導入されていることが好ましい。
【0030】
より具体的には、Aの有機基は、例えば、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及びこれらの内の任意の2つの基(同一でもよい)を有しそれらが直接又は結合基により相互に連結された基から選ばれる。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられ、結合基としては、−O−、炭素数1〜10のアルキレン基、−SO
2−、−CO−又は−CO−NR−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を含む)が挙げられる。
【0031】
Aで表される2価の有機基の炭素数は、通常2〜40であり、好ましくは5〜32であり、より好ましくは12〜28であり、さらに好ましくは24〜27である。
【0032】
Aの具体例としては、以下の式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基が挙げられる。式中の*は結合手を示す。Z
1〜Z
3は、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−SO
2−、−CO−又は―CO―NR−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す)を表す。下記の基において、Z
1とZ
2、及び、Z
2とZ
3は、それぞれ、各環に対してメタ位又はパラ位にあることが好ましい。また、Z
1と末端の単結合、Z
2と末端の単結合、及び、Z
3と末端の単結合とは、それぞれメタ位又はパラ位にあることが好ましい。Aの1つの例において、Z
1及びZ
3が−O−であり、かつ、Z
2が−CH
2−、−C(CH
3)
2−又は−SO
2−である。これらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
【0034】
A及びGの少なくとも一方を構成する水素原子のうちの少なくとも1つの水素原子が、フッ素系置換基、水酸基、スルホン基及び炭素数1〜10のアルキル基等からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で置換されていてもよい。また、Aの有機基及びGの有機基がそれぞれ環式脂肪族基又は芳香族基である場合に、A及びGの少なくとも一方がフッ素系置換基を有することが好ましく、A及びGの両方がフッ素系置換基を有することがより好ましい。
【0035】
式(a)中のG
2は、3価の有機基である。この有機基は、3価の基である点以外は、式(PI)中のGの有機基と同様の基から選択することができる。G
2の例としては、Gの具体例として挙げられた式(20)〜式(26)で表される基の4つの結合手のうち、いずれか1つが水素原子に置き換わった基を挙げることができる。式(a)中のA
2は式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0036】
式(a’)中のG
3は、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。式(a’)中のA
3は、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0037】
式(b)中のG
4は、2価の有機基である。この有機基は、2価の基である点以外は、式(PI)中のGの有機基と同様の基から選択することができる。G
4の例としては、Gの具体例として挙げられた式(20)〜式(26)で表される基の4つの結合手のうち、いずれか2つが水素原子に置き換わった基を挙げることができる。式(b)中のA
4は、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0038】
樹脂フィルム10に含まれるポリイミド系高分子は、ジアミン類と、テトラカルボン酸化合物(酸クロライド化合物およびテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸化合物類縁体を含む)又はトリカルボン酸化合物(酸クロライド化合物及びトリカルボン酸無水物などのトリカルボン酸化合物類縁体を含む)の少なくとも1種類とを重縮合することによって得られる縮合型高分子であってもよい。さらにジカルボン酸化合物(酸クロライド化合物などの類縁体を含む)を重縮合させてもよい。式(PI)又は式(a’)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(a)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びトリカルボン酸化合物から誘導される。式(b)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びジカルボン酸化合物から誘導される。
【0039】
テトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸化合物、脂環式テトラカルボン酸化合物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。テトラカルボン酸化合物は、好ましくはテトラカルボン酸二無水物である。テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0040】
ポリイミド系高分子の溶媒に対する溶解性、並びに樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、テトラカルボン酸化合物は、脂環式テトラカルボン化合物又は芳香族テトラカルボン酸化合物等であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、テトラカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式テトラカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族テトラカルボン酸化合物から選ばれることが好ましく、フッ素系置換基を有する脂環式テトラカルボン酸化合物であることがさらに好ましい。
【0041】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。トリカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物から選ばれる。トリカルボン酸化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリイミド系高分子の溶媒に対する溶解性、並びに樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、トリカルボン酸化合物は、脂環式トリカルボン酸化合物又は芳香族トリカルボン酸化合物であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、トリカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式トリカルボン酸化合物又はフッ素系置換基を有する芳香族トリカルボン酸化合物であることがより好ましい。
【0043】
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。ジカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物から選ばれる。ジカルボン酸化合物は、2種以上併用してもよい。
【0044】
ポリイミド系高分子の溶媒に対する溶解性、並びに樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジカルボン酸化合物は、脂環式ジカルボン酸化合物又は芳香族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、ジカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式ジカルボン酸化合物又はフッ素系置換基を有する芳香族ジカルボン酸化合物であることがさらに好ましい。
【0045】
ジアミン類としては、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンが挙げられ、これらは2種以上併用してもよい。ポリイミド系高分子の溶媒に対する溶解性、並びに樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジアミン類は、脂環式ジアミン及びフッ素系置換基を有する芳香族ジアミンから選ばれることが好ましい。
【0046】
このようなポリイミド系高分子を使用すれば、特に優れた屈曲性を有し、高い光透過率(例えば、550nmの光に対して85%以上、好ましくは88%以上)、低い黄色度(YI値、5以下、好ましくは3以下)、及び低いヘイズ(1.5%以下、好ましくは1.0%以下)を有する樹脂フィルムが得られ易い。
【0047】
ポリイミド系高分子は、異なる複数の種類の上記の繰り返し構造単位を含む共重合体でもよい。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、通常10,000〜500,000である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、好ましくは、50,000〜500,000であり、さらに好ましくは70,000〜400,000である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算分子量である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きいと高い屈曲性を得られやすい傾向があるが、ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きすぎると、ワニスの粘度が高くなり、加工性が低下する傾向がある。
【0048】
ポリイミド系高分子は、上述のフッ素系置換基等によって導入できるフッ素原子等のハロゲン原子を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子がハロゲン原子を含むことにより、樹脂フィルムの弾性率を向上させ且つ黄色度を低減させることができる。これにより、樹脂フィルムに発生するキズ及びシワ等が抑制され、且つ、樹脂フィルムの透明性を向上させることができる。ハロゲン原子として好ましくは、フッ素原子である。ポリイミド系高分子におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系高分子の質量を基準として、1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。
【0049】
樹脂フィルム10は、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子と適切に組み合わせることのできる紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
【0050】
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂フィルムの全体質量に対して、通常1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。紫外線吸収剤がこれらの量で含まれることで、樹脂フィルム10の耐候性を高めることができる。
【0051】
樹脂フィルム10は、無機粒子等の無機材料を更に含有していてもよい。無機材料は、ケイ素原子を含むケイ素材料が好ましい。樹脂フィルム10がケイ素材料等の無機材料を含有することで、樹脂フィルム10の引張弾性率を容易に4.0GPa以上とすることができる。ただし、樹脂フィルム10の引張弾性率を制御する方法は、無機材料の配合に限られない。
【0052】
ケイ素原子を含むケイ素材料としては、シリカ粒子、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等の4級アルコキシシラン、シルセスキオキサン誘導体等のケイ素化合物が挙げられる。これらのケイ素材料の中でも、樹脂フィルム10の透明性及び屈曲性の観点から、シリカ粒子が好ましい。
【0053】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、通常、100nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が100nm以下であると透明性が向上する傾向がある。
【0054】
樹脂フィルム中のシリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で求めることができる。シリカ粒子の一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による定方向径とすることができる。平均一次粒子径は、TEM観察により一次粒子径を10点測定し、それらの平均値として求めることができる。樹脂フィルムを形成する前のシリカ粒子の粒子分布は、市販のレーザー回折式粒度分布計により求めることができる。
【0055】
樹脂フィルム10において、ポリイミド系高分子と無機材料との配合比は、両者の合計を10として、質量比で、1:9〜10:0であることが好ましく、3:7〜10:0であることがより好ましく、3:7〜8:2であることがさらに好ましく、3:7〜7:3であることがよりさらに好ましい。ポリイミド系高分子及び無機材料の合計質量に対する無機材料の割合は、通常20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上であり、通常90質量%以下であり、好ましくは70質量%以下である。ポリイミド系高分子と無機材料(ケイ素材料)との配合比が上記の範囲内であると、樹脂フィルムの透明性及び機械的強度が向上する傾向がある。また、樹脂フィルム10の引張弾性率を容易に4.0GPa以上とすることができる。
【0056】
樹脂フィルム10は、透明性及び屈曲性を著しく損なわない範囲で、ポリイミド系高分子及び無機材料以外の成分を更に含有していてもよい。ポリイミド系高分子及び無機材料以外の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤、滑剤、増粘剤及びレベリング剤が挙げられる。ポリイミド系高分子及び無機材料以外の成分の割合は、樹脂フィルム10の質量に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0057】
樹脂フィルム10がポリイミド系高分子及びケイ素材料を含有するとき、少なくとも一方の主面10aにおける、窒素原子に対するケイ素原子の原子数比であるSi/Nが8以上であることが好ましい。この原子数比Si/Nは、X線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)によって、主面10aの組成を評価し、これによって得られたケイ素原子の存在量と窒素原子の存在量から算出される値である。
【0058】
樹脂フィルム10の主面10aにおけるSi/Nが8以上であることにより、後述する機能層20との充分な密着性が得られる。密着性の観点から、Si/Nは、9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
【0059】
樹脂フィルム10の厚さは、積層体30が適用されるフレキシブルデバイスに応じて適宜調整されるが、通常10〜500μmであり、15〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましく、30〜100μmであることがさらに好ましい。樹脂フィルム10の厚さは、ことさら好ましくは、50〜100μmであり、最も好ましくは70〜90μmである。このような構成の樹脂フィルム10は、特に優れた屈曲性、及び実用上十分な強度を有する。
【0060】
次に、本実施形態の樹脂フィルム10の製造方法の一例を説明する。樹脂フィルムの製造に使用されるポリイミド系高分子ワニスは、公知のポリイミド系高分子の合成手法で重合された溶媒可溶なポリイミド系高分子を溶媒に溶解して調製される。溶媒は、ポリイミド系高分子を溶解する溶媒であればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(GBL)、及びそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0061】
無機材料を含有する樹脂フィルムを製造する場合、ポリイミド系高分子ワニスに、無機材料を添加し、公知の撹拌法により撹拌及び混合して、ケイ素材料が均一に分散された分散液を調製する。紫外線吸収剤を配合する場合は、この分散液に紫外線吸収剤を加えることができる。
【0062】
ポリイミド系高分子ワニス又は分散液は、無機粒子(シリカ粒子等)同士の結合に寄与するアルコキシシランなどの金属アルコキシドを含んでいてもよい。このような化合物を含む分散液を用いることで、樹脂フィルムの透明性等の光学特性を維持しながら、無機粒子の配合割合を大きくすることができる。この化合物は、好ましくは、アミノ基を有するアルコキシシランである。このような化合物と無機粒子との組み合わせは、高い弾性率を達成するとともに、屈曲試験において樹脂フィルムが破損するまでの屈曲回数を増大させることにも寄与できる。
【0063】
ポリイミド系高分子ワニス又は分散液は、さらに水を含んでいてもよい。水の含有量は、ポリイミド系高分子ワニス又は分散液の質量に対して、通常、0.1〜10質量%である。水の使用も、高い弾性率を達成するとともに、屈曲試験において樹脂フィルムが破断するまでの屈曲回数を増大させることに寄与できる。
【0064】
ポリイミド系高分子又は分散液は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤、滑剤、増粘剤及びレベリング剤が挙げられる。
【0065】
樹脂フィルムは、適宜の公知の方法で製造することができる。製造方法の例としては、次の方法が挙げられる。上記のポリイミド系高分子ワニス又は分散液を、例えば、公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により基材に塗布して塗膜を形成する。その塗膜を乾燥して、フィルムを形成する。その後、基材からフィルムを剥離することによって、樹脂フィルム10が得られる。基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ステンレス鋼(SUS)ベルト又はガラス基材が挙げられる。
【0066】
塗膜の乾燥、及び/又はベーキングのために、塗膜を加熱してもよい。塗膜の加熱温度は、通常50〜350℃である。塗膜の加熱は、不活性雰囲気下又は減圧下で行ってもよい。塗膜を加熱することにより溶媒を蒸発させ、除去することができる。樹脂フィルムは、塗膜を50〜150℃で乾燥する工程と、乾燥後の塗膜を180〜350℃でベーキングする工程とを含む方法により、形成されてもよい。
【0067】
樹脂フィルムの少なくとも一方の主面には、表面処理を施してもよい。表面処理は、好ましくはUVオゾン処理である。UVオゾン処理により、Si/Nを容易に8以上とすることができる。ただし、Si/Nを8以上とする方法は、UVオゾン処理に限られない。
樹脂フィルム10の主面10a及び/又は10bには、後述する機能層との密着性を向上するために、プラズマ処理又はコロナ放電処理のような表面処理が施されていてもよい。
【0068】
UVオゾン処理は、200nm以下の波長を含む公知の紫外光源を用いて行うことができる。紫外光源の例として、低圧水銀ランプが挙げられる。紫外光源としては、紫外光源を備えた各種市販装置を用いてもよい。市販装置としては、例えば、テクノビジョン社製の紫外線(UV)オゾン洗浄装置UV−208が挙げられる。
【0069】
このようにして得られる本実施形態の樹脂フィルム10は、屈曲性に優れる。また、少なくとも一方の主面10aにおいて、ケイ素原子と窒素原子との原子数比であるSi/Nを8以上としたときに、後述する機能層20との優れた密着性が得られる。
【0070】
〔積層体〕
図3は、積層体の一実施形態を示す断面図である。
図3に示す積層体30は、樹脂フィルム10と樹脂フィルム10の一方の主面10aに積層された機能層20とを有する積層体である。
【0071】
機能層20は、積層体30をフレキシブルデバイスの光学部材若しくは表示部材の基材、又は前面板として用いるときに、積層体30にさらに機能(性能)を付与するための層であり得る。ここで、本明細書において、光学部材とは、表示装置におけるタッチセンサー等のセンサー部又は信号発信部を、表示部材は表示装置における有機EL装置又は液晶表示装置等の画像表示部を、それぞれ意味する。
【0072】
機能層20は、紫外線吸収、表面に高硬度を発現する機能、粘着性、色相調整及び屈折率調整からなる群から選択される少なくとも1種の機能を有する層であることが好ましい。
【0073】
機能層20としての、紫外線吸収の機能を有する層(紫外線吸収層)は、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂及び熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。機能層20として紫外線吸収層を設けることにより、光照射による黄色度の変化を容易に抑制することができる。
【0074】
紫外線吸収層の主材としての紫外線硬化型、電子線硬化型、又は熱硬化型の透明樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリレートで等が挙げられる。紫外線吸収剤は、樹脂フィルム10に含まれ得る紫外線吸収剤として例示されたものと同様の化合物から選択することができる。
【0075】
紫外線吸収層は、400nm以下の波長の光(例えば波長313nmの光)を95%以上吸収する層であってもよい。言い換えると、紫外線吸収層は、400nm以下の波長の光(例えば波長313nmの光)の透過率が5%未満である層であってもよい。紫外線吸収層は、このような透過率が得られる濃度の紫外線吸収剤を含むことができる。光照射による積層体の黄色度の増大を抑制する観点から、紫外線吸収層(機能層20)における紫外線吸収剤の含有量の割合は、紫外線吸収層の質量を基準として、通常1質量%以上であり、3質量%以上であることが好ましく、通常10質量%以下であり、8質量%以下であることが好ましい。
【0076】
機能層20としての、表面に高硬度を発現する機能層(ハードコート層)は、例えば、樹脂フィルムの表面の鉛筆硬度よりも高い鉛筆硬度を有する表面を積層体に与える層である。このハードコート層は、特に限定されないが、ポリ(メタ)アクリレート類に代表される、紫外線硬化型、電子線硬化型又は熱硬化型の樹脂を含む。ハードコート層は、光重合開始剤、有機溶媒を含んでもよい。ポリ(メタ)アクリレート類は、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及び他の多官能ポリ(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の(メタ)アクリレート類から形成されるポリ(メタ)アクリレートである。ハードコート層は、上記成分の他に、シリカ、アルミナ、ポリオルガノシロキサン等の無機酸化物を含んでもよい。
【0077】
機能層20としての、粘着性の機能を有する層(粘着層)は、積層体30を他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0078】
粘着層は、重合性官能基を有する成分を含む樹脂組成物から構成されていてもよい。この場合、積層体30を他の部材に密着させた後に粘着層を構成する樹脂組成物をさらに重合させることにより、強固な接着を実現することができる。樹脂フィルム10と粘着層との接着強度は、0.1N/cm以上が好ましく、0.5N/cm以上がより好ましい。
【0079】
粘着層は、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を材料として含んでいてもよい。この場合、事後的にエネルギーを供給することで樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
【0080】
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
【0081】
機能層20としての、色相調整の機能を有する層(色相調整層)は、積層体30を目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層であってもよい。着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト及びカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等の体質顔料;塩基性染料、酸性染料及び媒染染料等の染料を挙げることができる。
【0082】
機能層20としての、屈折率調整の機能を有する層(屈折率調整層)は、樹脂フィルム10とは異なる屈折率を有し、積層体に所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。
【0083】
屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタル等が挙げられる。顔料の平均粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。顔料の平均粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。
【0084】
屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物又は金属窒化物等が挙げられる。
【0085】
機能層20は、積層体30の用途に応じて、上記の機能を適宜有する。機能層20は、単層であっても、複数の層であってもよい。各層が1つの機能又は2つ以上の機能を有していてもよい。
【0086】
機能層20は、表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有することが好ましい。この場合の機能層20は、「表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する単層」、「表面に高硬度を発現する機能と紫外線吸収の機能を有する層とを含む多層」、又は、「表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する単層と高硬度を発現する層とを含む多層」を含むことが好ましい。
【0087】
機能層20の厚さは、積層体30が適用されるフレキシブルデバイスに応じて適宜調整されるが、1μm〜100μmであることが好ましく、2μm〜80μmであることがより好ましい。機能層20は、典型的には、樹脂フィルム10よりも薄い。
【0088】
積層体30は、樹脂フィルム10の主面10a上に機能層20を形成することにより得ることができる。機能層20は、公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、形成することができる。
【0089】
機能層20としての紫外線吸収層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂などの主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
【0090】
機能層20としてのハードコート層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、ハードコート層を形成する樹脂を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
【0091】
機能層20としての粘着層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、粘着層を形成する粘着剤を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
【0092】
機能層20としての色相調整層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、色相調整層を形成する顔料等と、顔料等が分散される樹脂などの主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
【0093】
機能層20としての屈折率調整層は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、屈折率調整層を形成する無機粒子等と、無機粒子等が分散される樹脂等の主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
【0094】
機能層20としての、表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する単層は、樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂等の主材と、ハードコート層を形成する樹脂とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。主材となる樹脂とハードコート層を形成する樹脂とは、同じであってもよい。
【0095】
表面に高硬度を発現する機能と紫外線吸収の機能を有する層とを含む多層の機能層は、次の方法で形成することができる。
樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂などの主材とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより紫外線吸収層を形成する。次いで、その紫外線吸収層に、ハードコート層を形成する樹脂を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることによりハードコート層を形成してもよい。この方法により、表面に高硬度を発現する機能を有する層と紫外線吸収の機能を有する層とを含む多層の機能層が形成される。
【0096】
表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する単層と高硬度を発現する層とを含む多層の機能層は、次の方法で形成することができる。
樹脂フィルム10の主面10aに、紫外線吸収剤と、紫外線吸収剤が分散される樹脂などの主材と、ハードコート層を形成する樹脂とを含む分散液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させて、表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する単層を形成し、さらに、その単層上に、ハードコート層を形成する樹脂を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥及び硬化させることにより、ハードコート層を形成してもよい。この方法により、表面に高硬度を発現する機能及び紫外線吸収の機能を有する層と表面に高硬度を発現する機能を有する層とを含む多層の機能層が形成される。
【0097】
このようにして得られる本実施形態の積層体30は、屈曲性に優れる。積層体30は、フレキシブルデバイスの光学部材若しくは表示部材の基材、又は前面板に適用する場合に要求される透明性、耐紫外線特性、及び表面に高硬度を発現する機能等の機能性を有することができる。積層体30は、樹脂フィルム10の主面10aにおけるSi/Nが8以上である場合、樹脂フィルム10と機能層20との密着性も優れている。さらに、機能層20が表面に高硬度を発現する機能を有する層(ハードコート層)である場合、機能層20が高い表面硬度を有することができる。
【0098】
図4も、積層体の一実施形態を示す断面図である。
図4に示す積層体30は、
図3の積層体と同様の樹脂フィルム10及び機能層20に加えて、樹脂フィルム10と機能層20との間に設けられたプライマー層25を更に有している。プライマー層25は、樹脂フィルム10の一方の主面10aに積層されている。機能層20は、プライマー層25の樹脂フィルム10と接する主面とは反対側の主面25aに積層されている。
【0099】
プライマー層25は、プライマー剤から形成された層であり、樹脂フィルム10及び機能層20との密着性を高めることのできる材料を含んでいることが好ましい。プライマー層25に含まれる化合物が、樹脂フィルム10に含まれるポリイミド系高分子又はケイ素材料等と、界面において化学結合していてもよい。
【0100】
プライマー剤として、例えば、紫外線硬化型、熱硬化型又は2液硬化型のエポキシ系化合物のプライマー剤が挙げられる。プライマー剤は、ポリアミック酸であってもよい。これらのプライマー剤は、樹脂フィルム10及び機能層20との密着性を高めるために好適である。
【0101】
プライマー剤は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤は、縮合反応により樹脂フィルム10に含まれるケイ素材料と化学結合してもよい。シランカップリング剤は、特に樹脂フィルム10に含まれるケイ素材料の配合比が高い場合に好適に用いることができる。
【0102】
シランカップリング剤としては、ケイ素原子と、該ケイ素原子に共有結合した1〜3個のアルコキシ基とを有するアルコキシシリル基を有する化合物が挙げられる。ケイ素原子にアルコキシ基が2個以上共有結合している構造を含む化合物が好ましく、ケイ素原子にアルコキシ基が3個共有結合している構造を含む化合物がより好ましい。上記アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等が挙げられる。なかでも、メトキシ基及びエトキシ基がケイ素材料との反応性を高めることができるため好ましい。
【0103】
シランカップリング剤は、樹脂フィルム10及び機能層20との親和性の高い置換基を有することが好ましい。樹脂フィルム10に含まれるポリイミド系高分子との親和性の観点から、シランカップリング剤の置換基は、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基又はイソシアネート基であることが好ましい。機能層20が(メタ)アクリレート類を含む場合、プライマー層25に用いるシランカップリング剤が、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基又はスチリル基を有していると、親和性が高まるので好ましい。これらのなかでも、メタクリル基、アクリル基及びアミノ基から選ばれる置換基を有するシランカップリング剤は、樹脂フィルム10及び機能層20との親和性に優れる傾向を示すため好ましい。
【0104】
プライマー層25の厚さは、機能層20に応じて適宜調整されるが、0.01nm〜20μmであることが好ましい。エポキシ系化合物のプライマー剤を用いる場合には、プライマー層25の厚さは0.01μm〜20μmであることが好ましく、0.1μm〜10μmであることがより好ましい。シランカップリング剤を用いる場合には、プライマー層25の厚さは0.1nm〜1μmであることが好ましく、0.5nm〜0.1μmであることがより好ましい。
【0105】
図4の積層体30は、例えば、樹脂フィルム10の主面10aに、プライマー剤を溶解した溶液を塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜を乾燥及び硬化してプライマー層を形成することを含む方法により、製造することができる。その他の部材の形成方法は、
図3の積層体30と同様である。プライマー層25は、機能層20と同時に硬化させてもよいし、機能層20を形成する前に別途硬化させてもよい。
【0106】
本実施形態の積層体は、高い透明性を有するとともに、屈曲時に優れた視認性を維持することができる。また、この積層体は、優れた屈曲性も有することができる。また、樹脂フィルムと機能層との間に、プライマー層が設けられている場合、樹脂フィルムと機能層の密着性が高くなる。積層体は、フレキシブルデバイスの光学部材若しくは表示部材の基材、又は前面板に適用する場合に要求される透明性、耐紫外線特性及び表面硬度等の機能性を有することができる。
【0107】
樹脂フィルム及び積層体の構成は、適宜変形が可能である。例えば、
図2の積層体30のように、樹脂フィルムの両側に機能層をそれぞれ設けることができる。この場合、それぞれの機能層と樹脂フィルムとの間に、プライマー層を設けてもよい。
【0108】
〔表示装置(フレキシブルデバイス)〕
図5は、表示装置の一実施形態を示す断面図である。
図5に示す表示装置100は、有機EL装置50と、タッチセンサー70と、前面板90とを有する。これらは通常、筐体に収容されている。有機EL装置50とタッチセンサー70との間、及びタッチセンサー70と前面板90との間は、たとえば不図示の光学接着剤(Optical Clear Adhesive、OCA)で接着されている。
【0109】
有機EL装置50は、有機EL素子51と、第1の基板55と、第2の基板56と、封止材59とを有する表示部材である。
【0110】
有機EL素子51は、一対の電極(第1電極52及び第2電極53)と、発光層54とを有している。発光層54は、第1電極52と第2電極53との間に配置されている。
【0111】
第1電極52は、光透過性を有する導電性材料によって形成されている。第2電極53も、光透過性を有していてもよい。第1電極52及び第2電極53としては、公知の材料を採用することができる。
【0112】
発光層54は、有機EL素子を構成する公知の発光材料によって形成することができる。発光材料は、低分子化合物と高分子化合物のいずれでもよい。
【0113】
第1電極52と第2電極53との間に電力が供給されると、発光層54にキャリア(電子及び正孔)が供給され、発光層54に光が生じる。発光層54で生じた光は、第1電極52及び第1の基板55を介して有機EL装置50の外部に射出される。
【0114】
第1の基板55は、光透過性を有する材料から形成される。第2の基板56は、光透過性を有していてもよい。第1の基板55と第2の基板56とは、有機EL素子の周囲を取り囲むように配置されている封止材59によって貼り合わされている。第1の基板55、第2の基板56及び封止材59が、有機EL素子を内部に封止する封止構造を形成している。第1の基板55及び/又は第2の基板56は、ガスバリア材であることが多い。
【0115】
第1の基板55及び第2の基板56のいずれか一方または両方の形成材料として、ガラス等の無機材料又はアクリル系樹脂等の公知の透明樹脂を用いることができる。これら部材として、上述した本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用することもできる。
【0116】
本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用し得る第1の基板55及び第2の基板56は、本実施形態における表示部材の基材又はガスバリア材に該当する。このような第1の基板55及び第2の基板56を有する有機EL装置50は、本実施形態に係る積層体を採用するため、屈曲性に優れる。
【0117】
タッチセンサー70は、タッチセンサー基材71と、タッチセンサー基材71上に形成された検出素子を有する素子層72とを有する光学部材である。
【0118】
タッチセンサー基材71は、光透過性を有する材料によって形成される。タッチセンサー基材71として、ガラス等の無機材料又はアクリル系樹脂等の公知の透明樹脂を用いることができる。タッチセンサー基材71として、上述した本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用することもできる。
【0119】
素子層72には、半導体素子、配線、抵抗等から構成される公知の検出素子が形成されている。検出素子の構成としては、マトリクススイッチ、抵抗膜方式、静電容量式など、公知の検出方式を実現する構成を採用することができる。
【0120】
本実施形態に係る積層体を採用し得るタッチセンサー基材71は、本実施形態における光学部材に該当する。このようなタッチセンサー基材71を有するタッチセンサー70は、本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用するため、屈曲性に優れる。
【0121】
前面板90は、光透過性を有する材料から形成される。前面板90は表示装置の表示画面側の最表層に位置し、表示装置を保護する保護部材として機能する。前面板は、ウィンドウフィルムと称されることもある。前面板90としては、ガラス等の無機材料又はアクリル系樹脂等の公知の透明樹脂を用いることができる。前面板90として、上述した本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用することもできる。前面板90として積層体を採用する場合、通常、機能層が表示装置の外側に位置する向きで積層体が配置される。
【0122】
本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用し得る前面板90は、本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を採用するため、屈曲性に優れる。
【0123】
表示装置100が、有機EL装置50、タッチセンサー70及び前面板90から選ばれる1つ以上の構成部材として、本実施形態に係る積層体を採用すると、全体として優れた屈曲性を有することができる。すなわち、表示装置100は、フレキシブルデバイスであることができる。また、表示装置100の外表面が、高い表面硬度を有することができる。
【0124】
本実施形態に係る樹脂フィルム又は積層体を適用可能な装置(フレキシブルデバイス)は、上記表示装置に限らない。例えば、光電変換素子が形成された基板と、基板表面に設けられた前面板とを有する太陽電池にも採用可能である。この場合、太陽電池の基板又は前面板として、本実施形態に係る積層体を採用すると、太陽電池が全体として優れた屈曲性を有することができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0126】
[実施例1]
窒素置換した重合槽に、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、触媒及び溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込んだ。仕込み量は、式(1)で表される化合物75.0g、式(2)で表される化合物36.5g、式(3)で表される化合物76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとした。式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とのモル比は3:7、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物の合計と式(1)で表される化合物とのモル比は、1.00:1.02であった。
【0127】
【化4】
【0128】
重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合した。この加熱中に、液中の水を除去した。その後、精製及び乾燥により、ポリイミド(式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子)を得た。
【0129】
次に、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液、及び、水を混合し、30分間攪拌した。これらの攪拌は、米国特許番号US8,207,256B2に記載の方法に準拠して行った。
【0130】
ここで、シリカ粒子とポリイミドの質量比を60:40、アミノ基を有するアルコキシシランの量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して1.67質量部、水の量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して10質量部とした。
【0131】
混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して乾燥した。その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱し、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムにおけるシリカ粒子の含有量は60質量%である。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、2.3であった。
【0132】
[実施例2]
ポリイミドを、300℃のガラス転移温度を有するポリイミド(三菱ガス化学社製「ネオプリム」、式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子)に変更し、樹脂フィルムを形成するための混合溶液におけるシリカ粒子とポリイミドの質量比を30:70に変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、1.8であった。
【0133】
[実施例3]
ポリイミドを河村産業(株)製「KPI−MX300F(100)、式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子」に変更し、樹脂フィルムを形成するための混合溶液におけるシリカ粒子とポリイミドの質量比を20:80に変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、2.2であった。
【0134】
[比較例1]
300℃のガラス転移温度を有するポリイミド(三菱ガス化学社製「ネオプリム」、式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子)を用い、このポリイミドのみを溶解したγ−ブチロラクトン溶液をガラス基板に塗布した。その他は実施例1と同様にして、80μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、1.8であった。
【0135】
[比較例2]
ポリイミドを、390℃のガラス転移温度を有するポリイミド(三菱ガス化学社製「ネオプリム」、式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子)に変更したこと以外は比較例1と同様にして、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、1.4であった。
【0136】
[比較例3]
樹脂フィルムを形成するための混合溶液に、アミノ基を有するアルコキシシランを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、2.5であった。
【0137】
[比較例4]
ポリイミドを、300℃のガラス転移温度を有するポリイミド(三菱ガス化学社製「ネオプリム」、式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子)に変更し、樹脂フィルムを形成するための混合溶液におけるシリカ粒子とポリイミドの質量比を40:60に変更し、アミノ基を有するアルコキシシランを混合溶液に加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして、厚み80μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、2.2であった。
【0138】
(評価)
1)弾性率
弾性率の測定装置として、島津製作所製、オートグラフAG−ISを用いた。幅10mm、長さ100mmの短冊状の樹脂フィルムを試験片として準備した。チャック間距離50mm、速度20mm/分の条件で引張試験を行い、樹脂フィルムの引張弾性率を測定した。
【0139】
2)ガラス転移温度(Tg)
測定装置として、TA Instruments製、DSC Q200を用いた。試料量:5mg、温度域:室温〜400℃、昇温速度:10℃/分の条件で、樹脂フィルムの示差操作熱量測定(DSC)を行った。得られたDSC曲線から、ガラス転移温度を求めた。
【0140】
3)黄色度(YI値)
樹脂フィルムの黄色度(Yellow Index:YI値)を、日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計V−670によって測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、樹脂フィルムをサンプルホルダーにセットして、300nm〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求めた。YI値を、下記の式に基づいて算出した。
YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Y
【0141】
4)屈曲試験
図6は、屈曲試験の方法を示す概略図である。試験装置として、ユアサシステム機器株式会社製 卓上型耐久試験機「DLDMLH−FS」を使用した。
図6の屈曲試験は、面状体無負荷U字伸縮試験とも称される。
図6の(a)に示すように、平面形状の1枚の短冊状の樹脂フィルム10(幅10mm×長さ100mm)の両末端を、それぞれ、対向配置された1対のプレート1a及び1bの間、及び、対向配置されたもう1対のプレート2a及び2bの間に挟んだ状態で固定した。プレート1a及びプレート2aを、樹脂フィルム10の同じ面側に配置させた。次いで、
図6の(b)に示されるように、プレート1a及び2aを内側にして、これらプレートが向き合うように樹脂フィルムをU字型に折り曲げた。このとき、折り曲げられて向き合う樹脂フィルム10間の距離2Rを3mmに設定した。その後、折り曲げられた樹脂フィルム10を、再び
図6の(a)の状態に戻した。これを1サイクルとして、1サイクル/1.2秒の周期で樹脂フィルム10を繰り返し折り曲げた(屈曲した)。屈曲回数(サイクル数)が100000回になるまで試験を継続した。試験終了前に積層体が破断した場合、その時点の屈曲回数を記録した。
【0142】
5)鉛筆硬度(樹脂フィルム)
ガラス基材上に固定された樹脂フィルムの鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4に準拠して測定した。鉛筆硬度の測定における荷重は1kgとした。
【0143】
6)鉛筆硬度(粘着層/樹脂フィルム/ハードコート層)
樹脂フィルムの一方の主面上に、ハードコート剤(UVHC7800G(商品名)、Momentive社製)を用いて、80℃で3分の加熱、及び500mJ/cm
2の照射エネルギーの露光を含む硬化条件で、厚さ5〜6μmのハードコート層を形成させ、樹脂フィルム及びハードコート層(機能層)からなる積層体を作製した。
ガラス基材上に、アクリル系粘着剤を用いて厚さ25μmで弾性率約1MPaの粘着層を形成させた。この粘着層に、上記積層体を、樹脂フィルムが粘着層側になる向きで貼り付けた。この状態で、ハードコート層表面の鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4に準拠して測定した。鉛筆硬度の測定における荷重は1kgfとした。
【0144】
【表1】
【0145】
表1に評価結果を示す。実施例の樹脂フィルムは、4GPa以上の引張弾性率を有するとともに、屈曲試験において100000の屈曲回数まで破断しなかった。一方、比較例1の樹脂フィルムは、100000回の屈曲回数で破断しなかったが、その弾性率が4.0GPa未満であった。
比較例2の樹脂フィルムは、4.0GPa未満であり、30000回未満の屈曲回数で破断した。比較例3の樹脂フィルムは、4.0GPa以上の弾性率を有するものの、1000回未満の屈曲回数で破断した。比較例4の樹脂フィルムは、4.0GPa以上の弾性率を有するものの、20000回未満の屈曲回数で破断した。ガラス基材/樹脂フィルムの積層体における樹脂フィルム表面の鉛筆硬度は、実施例と比較例1、2、3、4とで差異は認められなかった。しかし、粘着層/樹脂フィルム/ハードコート層の積層体におけるハードコート層表面の鉛筆硬度は、実施例の樹脂フィルムの場合のみ、十分に高い値が示された。この結果から、樹脂フィルムが、4GPa以上の引張弾性率、及び100000回を超える屈曲回数の両方を満たすことで、粘着層/樹脂フィルム/ハードコート層の積層体におけるハードコート層表面に十分な硬度を付与できることが確認された。