【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発−300GHz帯シリコン半導体CMOSトランシーバ技術−」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】送信機(10)は、ベースバンド信号(BB)と搬送信号(LO)とが入力され、ベースバンド信号と搬送信号とを混合して得られた中間周波数信号(IF)に搬送信号を重ね合わせた信号を出力する変調部(11)と、変調部の後段に接続され、変調部の出力信号を逓倍する周波数混合部(13)とを備え、変調部が、印加されるバイアス電圧(VB)により、中間周波数信号に重ね合わせる搬送信号の振幅電圧が調整可能に構成されている。
ベースバンド信号と搬送信号とが入力され、前記ベースバンド信号と前記搬送信号とを混合して得られた中間周波数信号に前記搬送信号を重ね合わせた信号を出力する変調部と、
前記変調部の後段に接続され、前記変調部の出力信号を逓倍する周波数混合部とを備え、
前記変調部が、印加されるバイアス電圧により、前記中間周波数信号に重ね合わせる前記搬送信号の振幅電圧が調整可能に構成されている
ことを特徴とする送信機。
前記変調部が、前記ベースバンド信号と前記搬送信号とを混合して前記中間周波数信号を生成する変調器と、入力された前記搬送信号を前記バイアス電圧に応じた振幅電圧にして出力する振幅調整器と、前記変調器の出力信号と前記振幅調整器の出力信号とを加算する加算器とを有する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の送信機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信機において、ベースバンド信号を線型性よく高周波の送信信号にアップコンバートすること以外に、送信信号に含まれるさまざまな信号成分のうち中間周波数信号の基本波成分の強度を上げるかということも重要な課題の一つである。
【0005】
そこで、本発明は、送信信号に含まれる中間周波数信号の基本波成分の強度を最大にすることができる送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従った送信機は、ベースバンド信号と搬送信号とが入力され、前記ベースバンド信号と前記搬送信号とを混合して得られた中間周波数信号に前記搬送信号を重ね合わせた信号を出力する変調部と、前記変調部の後段に接続され、前記変調部の出力信号を逓倍する周波数混合部とを備え、前記変調部が、印加されるバイアス電圧により、前記中間周波数信号に重ね合わせる前記搬送信号の振幅電圧が調整可能に構成されているものである。
【0007】
前記周波数混合部は、前記変調部の出力信号の周波数を2倍する2乗回路を有していてもよく、前記バイアス電圧は、前記中間周波数信号に重ね合わされる前記搬送信号の振幅電圧が前記中間周波数信号の振幅電圧と等しくなるような値に設定されていることが好ましい。
【0008】
あるいは、前記周波数混合部は、前記変調部の出力信号の周波数を3倍する3乗回路を有していてもよく、前記バイアス電圧は、前記中間周波数信号に重ね合わされる前記搬送信号の振幅電圧が前記中間周波数信号の振幅電圧の√2倍になるような値に設定されていることが好ましい。
【0009】
例えば、前記変調部が、前記ベースバンド信号と前記搬送信号とを混合して前記中間周波数信号を生成する変調器と、入力された前記搬送信号を前記バイアス電圧に応じた振幅電圧にして出力する振幅調整器と、前記変調器の出力信号と前記振幅調整器の出力信号とを加算する加算器とを有するものである。
【0010】
例えば、前記変調部がギルバートセルで構成されており、前記ギルバートセルの差動入力対の一方にシングルエンド信号としての前記ベースバンド信号が接続され、他方に前記バイアス電圧が接続されている。
【0011】
前記ベースバンド信号が直交位相振幅変調された信号であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
中間周波数信号に重ね合わされる搬送信号の振幅電圧に応じて周波数混合部による逓倍後の送信信号に含まれる中間周波数信号の基本波成分の強度が変化する。本発明によると、変調部に印加するバイアス電圧により中間周波数信号に重ね合わせる搬送信号の振幅電圧を調整できるため、バイアス電圧を最適値にして送信信号に含まれる中間周波数信号の基本波成分の強度を最大にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0016】
≪実施形態≫
図1は、本発明の一実施形態に係る送信機のブロック図である。本実施形態に係る送信機10は、変調部11と、増幅部12と、周波数混合部13とを備えている。送信機10は、図略のベースバンドユニットから出力されたベースバンド信号(以下、BB信号という)を高周波(例えば、300GHz帯)の無線周波数信号(以下、RF信号という)にアップコンバートして送信する。
【0017】
変調部11には、図略のベースバンドユニットから出力されたBB信号と、図略の局部発振器から出力された搬送信号(以下、LO信号という)とが入力される。変調部11は、BB信号とLO信号とを混合して得られた中間周波数信号(以下、IF信号という)にLO信号を重ね合わせた信号を出力する。すなわち、一般的な変調部はLO信号を用いてBB信号をアップコンバートしてIF信号を出力するのに対し、変調部11は、IF信号だけでなく、LO信号を漏洩させて出力する。
【0018】
さらに変調部11にはバイアス電圧VBが印加されている。変調部11においてIF信号にLO信号をどの程度の振幅電圧にして重ね合わせるかは、変調部11に印加するバイアス電圧VBにより調整できるようになっている。
【0019】
図2は、一例に係る変調部11のブロック図である。変調部11は、変調器111と、振幅調整器112と、加算器113とを備えている。変調器111は、BB信号にLO信号を乗算してIF信号を生成する。振幅調整器112は、入力されたLO信号をバイアス電圧VBに応じた振幅電圧にして出力する。加算器113は、変調器111の出力信号と振幅調整器112の出力信号とを加算する。これにより、変調部11から、IF信号にLO信号を重ね合わせた信号が出力される。便宜上、この信号を“αLO+IF”と表す。αはIF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧が調整可能であることを表している。
【0020】
図1へ戻り、増幅部12は、変調部11から出力される信号を増幅する。なお、増幅部12は、IF信号およびLO信号の帯域において十分なゲインを有するものとする。
【0021】
周波数混合部13は、増幅部12から出力される信号をアップコンバートしてRF信号を生成する。具体的には、周波数混合部13は、一般的な周波数逓倍器と同様にCMOS素子を用いて構成することができ、また、周波数逓倍特性を有する他の能動素子や受動素子で構成することもできる。ただし、一般的な周波数逓倍器とは異なり、周波数混合部13は、IF信号とLO信号とが重ね合わされた信号(αLO+IF)を逓倍する。後述するように周波数混合部13として2乗回路や3乗回路が使用可能である。
【0022】
次に、本実施形態に係る送信機10のより具体的な構成例について説明する。
【0023】
≪第1の具体例≫
図3は、第1の具体例に係る送信機のブロック図である。第1の具体例に係る送信機10Aは、
図1に示した送信機10における変調部11をSDBM(Semi Double Balanced Mixer)11Aで具体化し、さらに周波数混合部13を2乗回路13Aで具体化したものである。なお、SDBMとはギルバートセルを用いて構成される一般的なDBM(Double Balanced Mixer)を一部変形した回路であり、SDBMという呼び名は発明者による造語である。
【0024】
図4は、第1の具体例に係る送信機10Aにおける変調部(SDBM11A)の回路図である。同図に示すように、SDBM11Aはギルバートセルで構成することができる。
【0025】
一般にギルバートセルは、2つの差動スイッチングトランジスタペアを交差接続した回路(以下、交差接続回路という)と、差動増幅回路とが縦積み、すなわち直列に接続されて構成される。ギルバートセルでBB信号とLO信号を混合する場合、交差接続回路にLO信号を差動入力し、差動増幅回路にBB信号を差動入力するのが一般的である。これに対して、SDBM11Aでは、ギルバートセルにおける差動増幅回路にBB信号を差動入力せずに、差動入力対の一方にシングルエンド信号としてのBB信号を接続し、他方にバイアス電圧VBを接続している。すなわち、SDBM11Aでは、敢えてBB信号をアンバランスに入力している。
【0026】
一般にギルバートセルにおいて、LO信号が高周波になると交差接続回路を構成するトランジスタのゲート−ドレイン間の寄生容量を通じて出力側へLO信号の漏れ(図中の破線矢印)が大きくなるが、差動増幅回路の入力バランスが取れていればLO信号の漏れとLO信号の反転信号の漏れとが打ち消しあってIF信号に重ね合わされるLO信号はキャンセルされる。ところが、SDBM11Aでは差動増幅回路の差動入力がアンバランスであるため、LO信号の漏れとLO信号の反転信号の漏れとの打ち消しが不十分となりIF信号にLO信号が重ね合わされる。すなわち、SDBM11Aから、IF信号にLO信号を重ね合わせた差動信号(αLO+IF)が出力される。さらに、係数α、すなわち、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧はバイアス電圧VBにより調整することができる。
【0027】
次にSDBM11Aのシミュレーション結果を示す。LO信号を136GHzに設定し、BB信号を1−21GHzの範囲で変化させてシミュレーションを行った。
図5Aは、バイアス電圧VBを0Vに設定したときの変調部(SDBM11A)出力に含まれる各種信号強度を表すグラフである。
図5Bは、バイアス電圧VBを0.9Vに設定したときの変調部出力に含まれる各種信号強度を表すグラフである。横軸はBB信号の周波数を表し、縦軸は各種信号の強度を表す。グラフには変調部出力に含まれるIF信号、LO信号、およびイメージ信号のそれぞれの上側波帯(136−186GHz)および下側波帯(116−136GHz)の強度をプロットしている。
【0028】
例えば、BB信号が10GHzのところを見ると、バイアス電圧VBが0Vのとき、変調器出力に含まれるLO信号の強度はおよそ−7dBmである(
図5Aを参照)。一方、バイアス電圧VBが0.9Vのとき、変調器出力に含まれるLO信号の強度はおよそ−1.5dBmである(
図5Bを参照)。この結果から、SDBM11Aでは、バイアス電圧VBにより、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧を調整できることがわかる。
【0029】
図4へ戻り、SDBM11Aから出力された差動信号(αLO+IF)は増幅部12により増幅されて2乗回路13Aに入力される。2乗回路13Aは、差動信号(αLO+IF)の周波数を2倍にしてRF信号を出力する。なお、2乗回路13Aは、ペアトランジスタで構成されたアクティブダブラ(周波数ダブラともいう)などの既知の回路であるため、回路構成の詳細な説明については省略する。
【0030】
2乗回路13Aは実質的に次の(1)式で表される演算を実行する。
【0031】
(αLO+βIF)
2=α
2LO
2+2αβ・LO・IF+β
2IF
2 …(1)
ただし、(1)式中、LOはLO信号、IFはIF信号を表す。また、α、βはそれぞれLO信号およびIF信号の振幅電圧を表す。
【0032】
このように、2乗回路13AにおいてIF信号とLO信号とが重ね合わされた信号を2乗することで、(1)式の右辺第2項で表されるIF信号の1次高調波成分(基本波成分ともいう)および右辺第3項で表されるIF信号の2次高調波成分が生成される。このうち、IF信号の基本波成分が送信機10AからRF信号として出力すべき信号である。したがって、2乗回路13Aの後段に所望の帯域の信号を通過させる図略のバンドパスフィルタを設けてIF信号の基本波成分を通過させるようにすればよい。
【0033】
(1)式の右辺各項の係数は各成分の振幅電圧を表す。すなわち、IF信号の基本波成分(RF信号)の振幅電圧は2αβ、IF信号の2次高調波成分の振幅電圧はβ
2でそれぞれ表される。ここで、RF信号の振幅電圧、すなわち、(1)式の右辺第2項の係数(2αβ)が最大になる条件について考える。LO信号とIF信号のトータルの信号強度が一定、すなわち、α
2+β
2=1という条件で右辺第2項の係数(2αβ)が最大になるのはα=βのときである。すなわち、LO信号の振幅電圧をIF信号の振幅電圧と等しくしたときにRF信号の振幅電圧を最大化することができ、結果としてRF信号の強度が最大となる。
【0034】
図6は、LO信号強度とRF信号強度との関係を表すグラフである。ここではIF信号の周波数を136GHz、強度を−10dBmにしている。同グラフからわかるように、LO信号の振幅電圧とIF信号の振幅電圧とが同じ、すなわち、LO信号の強度がIF信号の強度と同じ−10dBmのとき、RF信号の強度は最大となる。
【0035】
上記知見から、送信機10Aから出力されるRF信号の強度を最大にするには、SDBM11Aにおいて、バイアス電圧VBを、LO信号の振幅電圧がIF信号の振幅電圧と等しくなるような値に設定すればよいと言える。
【0036】
≪第2の具体例≫
図7は、第2の具体例に係る送信機のブロック図である。第2の具体例に係る送信機10Bは、直交位相振幅変調されたBB信号を変調できるようにしたものである。詳細には、送信機10Bは、
図1に示した送信機10における変調部11をSDBQM(Semi Double Balanced Quadrature Mixer)11Bで具体化し、さらに周波数混合部13を2乗回路13Aで具体化したものである。なお、SDBQMとは2つギルバートセルを用いて構成される一般的なDBQM(Double Balanced Quadrature Mixer)を一部変形した回路であり、SDBQMという呼び名は発明者による造語である。
【0037】
図8は、第2の具体例に係る送信機10Bにおける変調部(SDBQM11B)の回路図である。同図に示すように、SDBQM11Bは2つギルバートセルで構成することができる。第1のギルバートセル(同図の左側に配置されたギルバートセル)はBB信号およびLO信号の同相位相成分であるBB
I信号およびLO
I信号の混合を行う。第2のギルバートセル(同図の右側に配置されたギルバートセル)はBB信号およびLO信号の直交位相成分であるBB
Q信号およびLO
Q信号の混合を行う。
【0038】
いずれのギルバートセルにおいても、SDBM11Aの例と同様に、差動増幅回路にはBB
I信号およびBB
Q信号を差動入力せずに、差動入力対の一方にシングルエンド信号としてのBB
I信号およびBB
Q信号を接続し、他方にバイアス電圧VBを接続している。すなわち、SDBQM11Bでは、敢えてBB
I信号およびBB
Q信号をアンバランスに入力している。
【0039】
これにより、LO
I信号の漏れとLO
I信号の反転信号の漏れとの打ち消し、およびLO
Q信号の漏れとLO
Q信号の反転信号の漏れとの打ち消しがいずれも不十分となりIF信号にLO信号が重ね合わされる。すなわち、SDBQM11Bから、IF信号にLO信号を重ね合わせた差動信号(αLO+IF)が出力される。さらに、係数α、すなわち、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧はバイアス電圧VBにより調整することができる。
【0040】
送信機10Bでも送信機10Aと同様に、バイアス電圧VBは、LO信号の振幅電圧がIF信号の振幅電圧と等しくなるような値に設定すればよい。これにより、送信機10Aから出力されるRF信号の強度を最大にすることができる。
【0041】
≪効果≫
上述したように、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧に応じて周波数混合部13による逓倍後のRF信号に含まれるIF信号の基本波成分の強度が変化する。本実施形態に係る送信機10では、変調部11に印加するバイアス電圧VBによりIF信号に重ね合わせるLO信号の振幅電圧を調整できるため、バイアス電圧VBを最適値にしてRF信号に含まれるIF信号の基本波成分の強度を最大にすることができる。
【0042】
≪変形例≫
図4に示したギルバートセルではBB信号およびバイアス電圧VBは差動増幅回路におけるトランジスタのゲートに接続されているが、BB信号およびバイアス電圧VBを交差接続回路のペアトランジスタの共通ソースに直接接続してもよい。
図9は、
図4に示したギルバートセルの変形例を示す。
図9に示したギルバートセルではBB信号およびバイアス電圧VBが交差接続回路のペアトランジスタの共通ソースに直接接続されている。なお、
図8に示したギルバートセルについても
図9と同様の考えに基づいて変形可能である。
【0043】
変調部11の一例として
図4、
図8および
図9に示したギルバートセルはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)で構成されているが、NPN型バイポーラトランジスタなどの別のタイプのトランジスタでギルバートセル、すなわち変調部11を構成してもよい。
【0044】
周波数混合部13に3乗回路を用いてもよい。なお、3乗回路は周波数トリプラといったような既知の回路であるため、回路構成の詳細な説明については省略する。
【0045】
3乗回路としての周波数混合部13は実質的に次の(2)式で表される演算を実行する。
【0046】
(αLO+βIF)
3=α
3LO
3+3α
2β・LO
2・IF
+3αβ
2・LO・IF
2+β
3IF
3 …(2)
ただし、(2)式中、LOはLO信号、IFはIF信号を表す。また、α、βはそれぞれLO信号およびIF信号の振幅電圧を表す。
【0047】
このように、3乗回路においてIF信号とLO信号とが重ね合わされた信号を3乗することで、(2)式の右辺第2項で表されるIF信号の1次高調波成分(基本波成分ともいう)、右辺第3項で表されるIF信号の2次高調波成分、および右辺第4項で表されるIF信号の3次高調波成分が生成される。このうち、IF信号の基本波成分が送信機10からRF信号として出力すべき信号である。したがって、3乗回路としての周波数混合部13の後段に所望の帯域の信号を通過させる図略のバンドパスフィルタを設けてIF信号の基本波成分を通過させるようにすればよい。
【0048】
(2)式の右辺各項の係数は各成分の振幅電圧を表す。すなわち、IF信号の基本波成分(RF信号)の振幅電圧は3α
2β、IF信号の2次高調波成分の振幅電圧は3αβ
2、IF信号の3次高調波成分の振幅電圧はβ
3でそれぞれ表される。ここで、RF信号の振幅電圧、すなわち、(2)式の右辺第2項の係数(3α
2β)が最大になる条件について考える。LO信号とIF信号のトータルの信号強度が一定、すなわち、α
2+β
2=1という条件で右辺第2項の係数(3α
2β)が最大になるのはα=√2βのときである。すなわち、LO信号の振幅電圧をIF信号の振幅電圧の√2倍にしたときにRF信号の振幅電圧が最大化することができ、結果としてRF信号の強度が最大となる。
【0049】
上記知見から、周波数混合部13として3乗回路を用いる場合、送信機10から出力されるRF信号の強度を最大にするには、変調部11において、バイアス電圧VBを、LO信号の振幅電圧がIF信号の振幅電圧の√2倍になるような値に設定すればよいと言える。
【0050】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0051】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0052】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信機において、ベースバンド信号を線型性よく高周波の送信信号にアップコンバートすること以外に、送信信号に含まれるさまざまな信号成分のうち中間周波数信号の基本波成分の強度を上げるかということも重要な課題の一つである。
【0005】
そこで、本発明は、送信信号に含まれる中間周波数信号の基本波成分の強度を最大にすることができる送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従った送信機は、ベースバンド信号と搬送信号とが入力され、前記ベースバンド信号と前記搬送信号とを混合して得られた中間周波数信号に前記搬送信号を重ね合わせた信号を出力する変調部と、前記変調部の後段に接続され、前記変調部の出力信号を逓倍する周波数混合部とを備え、前記変調部が、印加されるバイアス電圧により、前記中間周波数信号に重ね合わせる前記搬送信号の振幅電圧が調整可能に構成されているものである。
【0007】
前記周波数混合部は、前記変調部の出力信号の周波数を2倍する2乗回路を有していてもよく、前記バイアス電圧は、前記中間周波数信号に重ね合わされる前記搬送信号の振幅電圧が前記中間周波数信号の振幅電圧と等しくなるような値に設定されていることが好ましい。
【0008】
あるいは、前記周波数混合部は、前記変調部の出力信号の周波数を3倍する3乗回路を有していてもよく、前記バイアス電圧は、前記中間周波数信号に重ね合わされる前記搬送信号の振幅電圧が前記中間周波数信号の振幅電圧の√2倍になるような値に設定されていることが好ましい。
【0009】
例えば、前記変調部が、前記ベースバンド信号と前記搬送信号とを混合して前記中間周波数信号を生成する変調器と、入力された前記搬送信号を前記バイアス電圧に応じた振幅電圧にして出力する振幅調整器と、前記変調器の出力信号と前記振幅調整器の出力信号とを加算する加算器とを有するものである。
【0010】
例えば、前記変調部がギルバートセルで構成されており、前記ギルバートセルの差動入力対の一方にシングルエンド信号としての前記ベースバンド信号が接続され、他方に前記バイアス電圧が接続されている。
【0011】
前記ベースバンド信号が直交位相振幅変調された信号であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
中間周波数信号に重ね合わされる搬送信号の振幅電圧に応じて周波数混合部による逓倍後の送信信号に含まれる中間周波数信号の基本波成分の強度が変化する。本発明によると、変調部に印加するバイアス電圧により中間周波数信号に重ね合わせる搬送信号の振幅電圧を調整できるため、バイアス電圧を最適値にして送信信号に含まれる中間周波数信号の基本波成分の強度を最大にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0016】
≪実施形態≫
図1は、本発明の一実施形態に係る送信機のブロック図である。本実施形態に係る送信機10は、変調部11と、増幅部12と、周波数混合部13とを備えている。送信機10は、図略のベースバンドユニットから出力されたベースバンド信号(以下、BB信号という)を高周波(例えば、300GHz帯)の無線周波数信号(以下、RF信号という)にアップコンバートして送信する。
【0017】
変調部11には、図略のベースバンドユニットから出力されたBB信号と、図略の局部発振器から出力された搬送信号(以下、LO信号という)とが入力される。変調部11は、BB信号とLO信号とを混合して得られた中間周波数信号(以下、IF信号という)にLO信号を重ね合わせた信号を出力する。すなわち、一般的な変調部はLO信号を用いてBB信号をアップコンバートしてIF信号を出力するのに対し、変調部11は、IF信号だけでなく、LO信号を漏洩させて出力する。
【0018】
さらに変調部11にはバイアス電圧VBが印加されている。変調部11においてIF信号にLO信号をどの程度の振幅電圧にして重ね合わせるかは、変調部11に印加するバイアス電圧VBにより調整できるようになっている。
【0019】
図2は、一例に係る変調部11のブロック図である。変調部11は、変調器111と、振幅調整器112と、加算器113とを備えている。変調器111は、BB信号にLO信号を乗算してIF信号を生成する。振幅調整器112は、入力されたLO信号をバイアス電圧VBに応じた振幅電圧にして出力する。加算器113は、変調器111の出力信号と振幅調整器112の出力信号とを加算する。これにより、変調部11から、IF信号にLO信号を重ね合わせた信号が出力される。便宜上、この信号を“αLO+IF”と表す。αはIF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧が調整可能であることを表している。
【0020】
図1へ戻り、増幅部12は、変調部11から出力される信号を増幅する。なお、増幅部12は、IF信号およびLO信号の帯域において十分なゲインを有するものとする。
【0021】
周波数混合部13は、増幅部12から出力される信号をアップコンバートしてRF信号を生成する。具体的には、周波数混合部13は、一般的な周波数逓倍器と同様にCMOS素子を用いて構成することができ、また、周波数逓倍特性を有する他の能動素子や受動素子で構成することもできる。ただし、一般的な周波数逓倍器とは異なり、周波数混合部13は、IF信号とLO信号とが重ね合わされた信号(αLO+IF)を逓倍する。後述するように周波数混合部13として2乗回路や3乗回路が使用可能である。
【0022】
次に、本実施形態に係る送信機10のより具体的な構成例について説明する。
【0023】
≪第1の具体例≫
図3は、第1の具体例に係る送信機のブロック図である。第1の具体例に係る送信機10Aは、
図1に示した送信機10における変調部11をSDBM(Semi Double Balanced Mixer)11Aで具体化し、さらに周波数混合部13を2乗回路13Aで具体化したものである。なお、SDBMとはギルバートセルを用いて構成される一般的なDBM(Double Balanced Mixer)を一部変形した回路であり、SDBMという呼び名は発明者による造語である。
【0024】
図4は、第1の具体例に係る送信機10Aにおける変調部(SDBM11A)の回路図である。同図に示すように、SDBM11Aはギルバートセルで構成することができる。
【0025】
一般にギルバートセルは、2つの差動スイッチングトランジスタペアを交差接続した回路(以下、交差接続回路という)と、差動増幅回路とが縦積み、すなわち直列に接続されて構成される。ギルバートセルでBB信号とLO信号を混合する場合、交差接続回路にLO信号を差動入力し、差動増幅回路にBB信号を差動入力するのが一般的である。これに対して、SDBM11Aでは、ギルバートセルにおける差動増幅回路にBB信号を差動入力せずに、差動入力対の一方にシングルエンド信号としてのBB信号を接続し、他方にバイアス電圧VBを接続している。すなわち、SDBM11Aでは、敢えてBB信号をアンバランスに入力している。
【0026】
一般にギルバートセルにおいて、LO信号が高周波になると交差接続回路を構成するトランジスタのゲート−ドレイン間の寄生容量を通じて出力側へLO信号の漏れ(図中の破線矢印)が大きくなるが、差動増幅回路の入力バランスが取れていればLO信号の漏れとLO信号の反転信号の漏れとが打ち消しあってIF信号に重ね合わされるLO信号はキャンセルされる。ところが、SDBM11Aでは差動増幅回路の差動入力がアンバランスであるため、LO信号の漏れとLO信号の反転信号の漏れとの打ち消しが不十分となりIF信号にLO信号が重ね合わされる。すなわち、SDBM11Aから、IF信号にLO信号を重ね合わせた差動信号(αLO+IF)が出力される。さらに、係数α、すなわち、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧はバイアス電圧VBにより調整することができる。
【0027】
SDBM11Aから出力された差動信号(αLO+IF)は増幅部12により増幅されて2乗回路13Aに入力される。2乗回路13Aは、差動信号(αLO+IF)の周波数を2倍にしてRF信号を出力する。なお、2乗回路13Aは、ペアトランジスタで構成されたアクティブダブラ(周波数ダブラともいう)などの既知の回路であるため、回路構成の詳細な説明については省略する。
【0028】
2乗回路13Aは実質的に次の(1)式で表される演算を実行する。
【0029】
(αLO+βIF)
2=α
2LO
2+2αβ・LO・IF+β
2IF
2 …(1)
ただし、(1)式中、LOはLO信号、IFはIF信号を表す。また、α、βはそれぞれLO信号およびIF信号の振幅電圧を表す。
【0030】
このように、2乗回路13AにおいてIF信号とLO信号とが重ね合わされた信号を2乗することで、(1)式の右辺第2項で表されるIF信号の1次高調波成分(基本波成分ともいう)および右辺第3項で表されるIF信号の2次高調波成分が生成される。このうち、IF信号の基本波成分が送信機10AからRF信号として出力すべき信号である。したがって、2乗回路13Aの後段に所望の帯域の信号を通過させる図略のバンドパスフィルタを設けてIF信号の基本波成分を通過させるようにすればよい。
【0031】
(1)式の右辺各項の係数は各成分の振幅電圧を表す。すなわち、IF信号の基本波成分(RF信号)の振幅電圧は2αβ、IF信号の2次高調波成分の振幅電圧はβ
2でそれぞれ表される。ここで、RF信号の振幅電圧、すなわち、(1)式の右辺第2項の係数(2αβ)が最大になる条件について考える。LO信号とIF信号のトータルの信号強度が一定、すなわち、α
2+β
2=1という条件で右辺第2項の係数(2αβ)が最大になるのはα=βのときである。すなわち、LO信号の振幅電圧をIF信号の振幅電圧と等しくしたときにRF信号の振幅電圧を最大化することができ、結果としてRF信号の強度が最大となる。
【0032】
上記知見から、送信機10Aから出力されるRF信号の強度を最大にするには、SDBM11Aにおいて、バイアス電圧VBを、LO信号の振幅電圧がIF信号の振幅電圧と等しくなるような値に設定すればよいと言える。
【0033】
≪第2の具体例≫
図5は、第2の具体例に係る送信機のブロック図である。第2の具体例に係る送信機10Bは、直交位相振幅変調されたBB信号を変調できるようにしたものである。詳細には、送信機10Bは、
図1に示した送信機10における変調部11をSDBQM(Semi Double Balanced Quadrature Mixer)11Bで具体化し、さらに周波数混合部13を2乗回路13Aで具体化したものである。なお、SDBQMとは2つギルバートセルを用いて構成される一般的なDBQM(Double Balanced Quadrature Mixer)を一部変形した回路であり、SDBQMという呼び名は発明者による造語である。
【0034】
図6は、第2の具体例に係る送信機10Bにおける変調部(SDBQM11B)の回路図である。同図に示すように、SDBQM11Bは2つギルバートセルで構成することができる。第1のギルバートセル(同図の左側に配置されたギルバートセル)はBB信号およびLO信号の同相位相成分であるBB
I信号およびLO
I信号の混合を行う。第2のギルバートセル(同図の右側に配置されたギルバートセル)はBB信号およびLO信号の直交位相成分であるBB
Q信号およびLO
Q信号の混合を行う。
【0035】
いずれのギルバートセルにおいても、SDBM11Aの例と同様に、差動増幅回路にはBB
I信号およびBB
Q信号を差動入力せずに、差動入力対の一方にシングルエンド信号としてのBB
I信号およびBB
Q信号を接続し、他方にバイアス電圧VBを接続している。すなわち、SDBQM11Bでは、敢えてBB
I信号およびBB
Q信号をアンバランスに入力している。
【0036】
これにより、LO
I信号の漏れとLO
I信号の反転信号の漏れとの打ち消し、およびLO
Q信号の漏れとLO
Q信号の反転信号の漏れとの打ち消しがいずれも不十分となりIF信号にLO信号が重ね合わされる。すなわち、SDBQM11Bから、IF信号にLO信号を重ね合わせた差動信号(αLO+IF)が出力される。さらに、係数α、すなわち、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧はバイアス電圧VBにより調整することができる。
【0037】
送信機10Bでも送信機10Aと同様に、バイアス電圧VBは、LO信号の振幅電圧がIF信号の振幅電圧と等しくなるような値に設定すればよい。これにより、送信機10Aから出力されるRF信号の強度を最大にすることができる。
【0038】
次に
SDBQM11Bのシミュレーション結果を示す。LO信号を136GHzに設定し、BB信号を1−21GHzの範囲で変化させてシミュレーションを行った。
図7Aは、バイアス電圧VBを0Vに設定したときの変調部(
SDBQM11B)出力に含まれる各種信号強度を表すグラフである。
図7Bは、バイアス電圧VBを0.9Vに設定したときの変調部出力に含まれる各種信号強度を表すグラフである。横軸はBB信号の周波数を表し、縦軸は各種信号の強度を表す。グラフには変調部出力に含まれるIF信号、LO信号、およびイメージ信号のそれぞれの上側波帯(136−186GHz)および下側波帯(116−136GHz)の強度をプロットしている。
【0039】
例えば、BB信号が10GHzのところを見ると、バイアス電圧VBが0Vのとき、変調器出力に含まれるLO信号の強度はおよそ−7dBmである(
図7Aを参照)。一方、バイアス電圧VBが0.9Vのとき、変調器出力に含まれるLO信号の強度はおよそ−1.5dBmである(
図7Bを参照)。この結果から、
SDBQM11Bでは、バイアス電圧VBにより、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧を調整できることがわかる。
【0040】
図8は、LO信号強度とRF信号強度との関係を表すグラフである。ここではIF信号の周波数を136GHz、強度を−10dBmにしている。同グラフからわかるように、LO信号の振幅電圧とIF信号の振幅電圧とが同じ、すなわち、LO信号の強度がIF信号の強度と同じ−10dBmのとき、RF信号の強度は最大となる。
【0041】
≪効果≫
上述したように、IF信号に重ね合わされるLO信号の振幅電圧に応じて周波数混合部13による逓倍後のRF信号に含まれるIF信号の基本波成分の強度が変化する。本実施形態に係る送信機10では、変調部11に印加するバイアス電圧VBによりIF信号に重ね合わせるLO信号の振幅電圧を調整できるため、バイアス電圧VBを最適値にしてRF信号に含まれるIF信号の基本波成分の強度を最大にすることができる。
【0042】
≪変形例≫
図4に示したギルバートセルではBB信号およびバイアス電圧VBは差動増幅回路におけるトランジスタのゲートに接続されているが、BB信号およびバイアス電圧VBを交差接続回路のペアトランジスタの共通ソースに直接接続してもよい。
図9は、
図4に示したギルバートセルの変形例を示す。
図9に示したギルバートセルではBB信号およびバイアス電圧VBが交差接続回路のペアトランジスタの共通ソースに直接接続されている。なお、
図6に示したギルバートセルについても
図9と同様の考えに基づいて変形可能である。
【0043】
変調部11の一例として
図4、
図6および
図9に示したギルバートセルはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)で構成されているが、NPN型バイポーラトランジスタなどの別のタイプのトランジスタでギルバートセル、すなわち変調部11を構成してもよい。
【0044】
周波数混合部13に3乗回路を用いてもよい。なお、3乗回路は周波数トリプラといったような既知の回路であるため、回路構成の詳細な説明については省略する。
【0045】
3乗回路としての周波数混合部13は実質的に次の(2)式で表される演算を実行する。
【0046】
(αLO+βIF)
3=α
3LO
3+3α
2β・LO
2・IF
+3αβ
2・LO・IF
2+β
3IF
3 …(2)
ただし、(2)式中、LOはLO信号、IFはIF信号を表す。また、α、βはそれぞれLO信号およびIF信号の振幅電圧を表す。
【0047】
このように、3乗回路においてIF信号とLO信号とが重ね合わされた信号を3乗することで、(2)式の右辺第2項で表されるIF信号の1次高調波成分(基本波成分ともいう)、右辺第3項で表されるIF信号の2次高調波成分、および右辺第4項で表されるIF信号の3次高調波成分が生成される。このうち、IF信号の基本波成分が送信機10からRF信号として出力すべき信号である。したがって、3乗回路としての周波数混合部13の後段に所望の帯域の信号を通過させる図略のバンドパスフィルタを設けてIF信号の基本波成分を通過させるようにすればよい。
【0048】
(2)式の右辺各項の係数は各成分の振幅電圧を表す。すなわち、IF信号の基本波成分(RF信号)の振幅電圧は3α
2β、IF信号の2次高調波成分の振幅電圧は3αβ
2、IF信号の3次高調波成分の振幅電圧はβ
3でそれぞれ表される。ここで、RF信号の振幅電圧、すなわち、(2)式の右辺第2項の係数(3α
2β)が最大になる条件について考える。LO信号とIF信号のトータルの信号強度が一定、すなわち、α
2+β
2=1という条件で右辺第2項の係数(3α
2β)が最大になるのはα=√2βのときである。すなわち、LO信号の振幅電圧をIF信号の振幅電圧の√2倍にしたときにRF信号の振幅電圧が最大化することができ、結果としてRF信号の強度が最大となる。
【0049】
上記知見から、周波数混合部13として3乗回路を用いる場合、送信機10から出力されるRF信号の強度を最大にするには、変調部11において、バイアス電圧VBを、LO信号の振幅電圧がIF信号の振幅電圧の√2倍になるような値に設定すればよいと言える。
【0050】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0051】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0052】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。