(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-131088(P2020-131088A)
(43)【公開日】2020年8月31日
(54)【発明の名称】アンモニア除去剤、アンモニア除去方法及びアンモニア除去システム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/02 20060101AFI20200803BHJP
C01C 1/10 20060101ALI20200803BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20200803BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20200803BHJP
【FI】
B01J20/02 A
C01C1/10 A
C02F1/28 M
B01D53/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-25772(P2019-25772)
(22)【出願日】2019年2月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創出プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】小島 由継
(72)【発明者】
【氏名】市川 友之
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 裕樹
【テーマコード(参考)】
4D020
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D020AA10
4D020BA23
4D020BB03
4D020CB25
4D020DA02
4D020DB08
4D624AA01
4D624AB13
4D624BA14
4D624BB05
4D624BC04
4D624CA01
4G066AA50B
4G066BA09
4G066CA29
4G066DA08
(57)【要約】
【課題】アンモニアを十分に除去することができるアンモニア除去剤、アンモニア除去方法及びアンモニア除去システムを提供する。
【解決手段】アンモニア除去方法では、水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を主成分とするアンモニア除去剤を使用して、アンモニアを除去する。アンモニア除去システム6は、アンモニアが流れる配管5に面するように配置され、水を貯める貯水槽7と、貯水槽7に接続された管路9と、管路9の途中に配設され、アンモニア水に含まれるアンモニアを除去するアンモニア除去器10とを備え、アンモニア除去器10は、水に難溶な層状リン酸塩を主成分とし、アンモニアを吸蔵する吸蔵材12を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を主成分とするアンモニア除去剤。
【請求項2】
前記層状リン酸塩がペレット状を呈している請求項1記載のアンモニア除去剤。
【請求項3】
水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を主成分とするアンモニア除去剤を使用して、アンモニアを除去するアンモニア除去方法。
【請求項4】
アンモニア水に前記層状リン酸塩を加えることにより前記水分散体を生成し、前記アンモニア水から前記アンモニアを除去する請求項3記載のアンモニア除去方法。
【請求項5】
配管内から漏出したアンモニアを除去するアンモニア除去システムであって、
前記配管に面するように配置され、水を貯める貯水槽と、
前記貯水槽に接続された管路と、
前記管路の途中に配設され、アンモニア水に含まれるアンモニアを除去するアンモニア除去器とを備え、
前記アンモニア除去器は、水に難溶な層状リン酸塩を主成分とし、前記アンモニアを吸蔵する吸蔵材を有するアンモニア除去システム。
【請求項6】
前記層状リン酸塩がペレット状を呈している請求項5記載のアンモニア除去システム。
【請求項7】
前記貯水槽には、前記管路の両端が接続されており、
前記管路における前記アンモニア除去器よりも下流側には、前記管路を流れる水を循環させるポンプが配設されている請求項5または6記載のアンモニア除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア除去剤、アンモニア除去方法及びアンモニア除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを除去する技術としては、例えば特許文献1に記載されているように、フィブリル化した繊維に対してリン酸ジルコニウムを担持し、これを湿式抄紙により平板状化したアンモニアガス吸着用フィルタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−181389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、リン酸ジルコニウムにアンモニアガスが吸着される。しかし、例えばアンモニア消費設備に使用されるアンモニア除去剤としては、アンモニアを十分に除去することが難しい。
【0005】
本発明の目的は、アンモニアを十分に除去することができるアンモニア除去剤、アンモニア除去方法及びアンモニア除去システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、アンモニアの除去について鋭意検討を重ねた結果、水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を使用すると、水のみを使用した場合、あるいは水に分散されていない層状リン酸塩を使用した場合に比べて、アンモニアが除去されやすくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の一態様に係るアンモニア除去剤は、水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を主成分とする。
【0008】
このような水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散液を主成分とするアンモニア除去剤を使用することにより、層状リン酸塩にアンモニアが吸蔵されやすくなる。これにより、アンモニアを十分に除去することができる。
【0009】
層状リン酸塩がペレット状を呈していてもよい。この場合には、層状リン酸塩と水とが分離しやすくなる。
【0010】
また、本発明の他の態様に係るアンモニア除去方法は、水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を主成分とするアンモニア除去剤を使用して、アンモニアを除去する。
【0011】
このように水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散液を主成分とするアンモニア除去剤を使用することにより、層状リン酸塩にアンモニアが吸蔵されやすくなる。これにより、アンモニアを十分に除去することができる。
【0012】
アンモニア水に層状リン酸塩を加えることにより水分散体を生成し、アンモニア水からアンモニアを除去してもよい。この場合には、アンモニアを除去するシステムの構成を簡単化しつつ、アンモニアを十分に除去することができる。
【0013】
また、本発明の更に他の態様は、配管内から漏出したアンモニアを除去するアンモニア除去システムであって、配管に面するように配置され、水を貯める貯水槽と、貯水槽に接続された管路と、管路の途中に配設され、アンモニア水に含まれるアンモニアを除去するアンモニア除去器とを備え、アンモニア除去器は、水に難溶な層状リン酸塩を主成分とし、アンモニアを吸蔵する吸蔵材を有する。
【0014】
このようなアンモニア除去システムにおいては、配管内から漏出したアンモニアが貯水槽において水に吸収されることで、アンモニア水が得られる。そして、アンモニア水が管路を流れてアンモニア除去器に供給される。このとき、アンモニア除去器は、水に難溶な層状リン酸塩を主成分とする吸蔵材を有している。このため、アンモニア水に層状リン酸塩が混ざることで、層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体が生成される。従って、層状リン酸塩にアンモニアが吸蔵されやすくなる。これにより、アンモニアガスを十分に除去することができる。また、アンモニア水からアンモニアが除去されるため、アンモニア除去システムの構成を簡単化しつつ、アンモニアを十分に除去することができる。
【0015】
層状リン酸塩がペレット状を呈していてもよい。この場合には、層状リン酸塩と水とが分離しやすくなる。
【0016】
貯水槽には、管路の両端が接続されており、管路におけるアンモニア除去器よりも下流側には、管路を流れる水を循環させるポンプが配設されていてもよい。この場合には、アンモニアが除去された水が貯水槽及び管路を循環するため、アンモニア除去システムの構成を更に簡単化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンモニアを十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンモニア除去システムを備えたアンモニア消費設備を示す概略構成図である。
【
図2】層状リン酸塩の一例としてα型層状リン酸ジルコニウムの結晶の構造モデルを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るアンモニア除去方法の一例を示す図である。
【
図4】室温(25℃)におけるアンモニア水中のアンモニア濃度とアンモニア蒸気濃度との関係を示すグラフである。
【
図5】実施例1及び比較例1〜3による測定結果を示す表である。
【
図6】実施例2による測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニア除去システムを備えたアンモニア消費設備を示す概略構成図である。
図1において、アンモニア消費設備1は、アンモニアタンク2と、気化器3と、アンモニア消費装置4とを備えている。
【0021】
アンモニアタンク2は、アンモニア(NH
3)を液体状態で貯蔵するタンクである。気化器3は、アンモニアタンク2から導出された液体状態のアンモニアを気化させて、アンモニアガスを生成する。アンモニア消費装置4は、気化器3により得られたアンモニアガスを消費する装置である。アンモニア消費装置4は、例えばガスタービン、エンジンまたは改質器等である。気化器3とアンモニア消費装置4とは、複数の配管5により接続されている。配管5内には、アンモニアガスが流れる。配管5同士は、継手5aを介して接続されている。
【0022】
アンモニア消費設備1は、本実施形態のアンモニア除去システム6を更に備えている。アンモニア除去システム6は、配管5内から漏出したアンモニアを除去するシステムである。アンモニア除去システム6は、配管5の継手5a等のようにアンモニア漏出のおそれがある箇所に設けられる。アンモニア除去システム6は、貯水槽7と、シャワー8と、管路9と、アンモニア除去器10と、ポンプ11とを備えている。
【0023】
貯水槽7は、複数の配管5に面するように配置されている。貯水槽7は、水Wを貯める施設である。シャワー8は、貯水槽7の上方に配置されている。シャワー8は、配管5の継手5aから漏出したアンモニアに向けて水Wを噴出させる。管路9の両端は、貯水槽7に接続されている。管路9内には、水Wが流れる。
【0024】
アンモニア除去器10は、管路9の途中に配設されている。アンモニア除去器10は、アンモニア水に含まれるアンモニアを除去する。アンモニア除去器10は、アンモニア水に含まれるアンモニアを吸蔵する吸蔵材12を有している。吸蔵材12は、層状リン酸塩を主成分としている。層状リン酸塩は、水に難溶な物質である。なお、吸蔵材12は、層状リン酸塩のみからなっていてもよいし、層状リン酸塩に他の成分が多少含まれていてもよい。
【0025】
層状リン酸塩は、単独でもアンモニアを除去するアンモニア除去剤として使用可能である。ただし、本実施形態では、水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体(以下、層状リン酸塩の水分散体ということがある)を主成分とした物質がアンモニア除去剤として使用される。なお、アンモニア除去剤は、層状リン酸塩の水分散体のみからなっていてもよいし、層状リン酸塩の水分散体に他の成分が多少含まれていてもよい。
【0026】
層状リン酸塩としては、層状リン酸ジルコニウム、層状リン酸チタニウム、層状リン酸錫、層状リン酸セリウム、層状リン酸ハフニウムまたは層状リン酸アルミニウムの水和物等が挙げられる。
【0027】
図2は、層状リン酸塩の一例としてα型層状リン酸ジルコニウムの結晶の構造モデルを示す図である。
図2において、α型層状リン酸ジルコニウム13は、ジルコニウム層14の上下にリン酸水素基15が3点で結合した二次元ヘテロポリマー層16を基本シートとし、リン原子に結合したOH基が隣接する基本シートの方向へ垂直に突き出ている。隣り合うジルコニウム層14の層間距離Lは、例えば0.7nm〜2.0nmである。
【0028】
隣り合うジルコニウム層14の間にアンモニアが入り込むことで、アンモニアがα型層状リン酸ジルコニウム13に吸蔵される。なお、アンモニアがα型層状リン酸ジルコニウム13に吸蔵されると、隣り合うジルコニウム層14の層間距離Lは、例えば25%程度拡がる。
【0029】
また、アンモニア除去器10は、層状リン酸塩の水分散体について水と層状リン酸塩とを分離する分離部17を有している。分離部17としては、濾過器または遠心分離器等が用いられる。なお、分離部17は、アンモニア除去器10とは別体であってもよい。
【0030】
ポンプ11は、管路9におけるアンモニア除去器10よりも下流側に配設されている。ポンプ11は、管路9を流れる水Wを循環させる。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係るアンモニア除去方法の一例を示す図である。
図3において、配管5の継手5aからアンモニアが漏出したときは、まず
図3(a)に示されるように、シャワー8からアンモニアに向けて水を噴出させる。
【0032】
すると、
図3(b)に示されるように、アンモニアが水に吸収されてアンモニア水が得られ、そのアンモニア水が貯水槽7に貯まるようになる。そして、ポンプ11によりアンモニア水を循環させると、貯水槽7内のアンモニア水がアンモニア除去器10に供給される。このとき、吸蔵材12の主成分である層状リン酸塩がアンモニア水に混ざることで、結果的に層状リン酸塩の水分散体を主成分としたアンモニア除去剤が生成されることとなる。
【0033】
アンモニア除去器10では、アンモニア水に含まれるアンモニアが吸蔵材12に吸蔵されることで、アンモニア水からアンモニアが除去される。アンモニアが除去された水Wは、管路9を流れて貯水槽7に戻る。このため、
図3(c)に示されるように、水Wが貯水槽7及び管路9を循環するようになる。
【0034】
その後、水WのpHを測定することでアンモニアが除去されたことが確認されたときは、貯水槽7内の水を排出する。そして、アンモニア除去器10の吸蔵材12を取り出し、吸蔵材12を加熱して再生する。これにより、吸蔵材12を再利用することができる。
【0035】
ここでは、配管5内からアンモニアが漏出したときは、シャワー8からアンモニアに向けて水を噴出させているが、特にその手法には限られず、貯水槽7内に水Wを予め貯めておいてもよい。この場合には、配管5内からアンモニアが漏出すると、アンモニアが貯水槽7内の水Wに吸収されるため、貯水槽7にアンモニア水が貯まることになる。
【0036】
ところで、一般にアンモニア除去剤としては水が用いられる。アンモニアは、水に大量に溶解する。
図4は、室温(25℃)におけるアンモニア水中のアンモニア濃度とアンモニア蒸気濃度との関係を示すグラフである。
図4から分かるように、アンモニア蒸気濃度とアンモニア水中のアンモニア濃度とは同程度であることから、水を使ってアンモニア蒸気濃度を低減するためには、大量の水が必要である。
【0037】
これに対し、本実施形態では、水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散液を主成分とするアンモニア除去剤を使用することにより、層状リン酸塩にアンモニアが吸蔵されやすくなる。従って、アンモニア除去剤として水のみを使用した場合、あるいはアンモニア除去剤として水に分散されていない層状リン酸塩を使用した場合に比べて、アンモニア濃度が大きく低減される。これにより、アンモニアを十分に除去することができる。また、大量の水を必要としなくても、アンモニア蒸気濃度を十分に低減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、配管5内から漏出したアンモニアが貯水槽7において水に吸収されることで、アンモニア水が得られる。そして、アンモニア水が管路9を流れてアンモニア除去器10に供給される。このとき、アンモニア除去器10は、水に難溶な層状リン酸塩を主成分とする吸蔵材12を有している。このため、アンモニア水に層状リン酸塩が混ざることで、層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体が生成される。従って、アンモニア水中において層状リン酸塩にアンモニアが吸蔵されやすくなる。これにより、アンモニア除去システム6の構成を簡単化しつつ、アンモニアガスを十分に除去することができる。
【0039】
また、本実施形態では、層状リン酸塩がペレット状を呈しているので、層状リン酸塩と水とが分離しやすくなる。
【0040】
また、本実施形態では、アンモニアが除去された水が貯水槽7及び管路9を循環するため、アンモニア除去システム6の構成を更に簡単化することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、水に難溶な層状リン酸塩を主成分とした物質をアンモニア水に加えることにより、アンモニア水からアンモニアを除去しているが、特にその形態には限られず、例えば水に難溶な層状リン酸塩が水に分散された状態の水分散体を主成分とするアンモニア除去剤をアンモニアに散布することにより、アンモニアを除去してもよい。
【0042】
また、上記実施形態のアンモニア除去剤では、層状リン酸塩がペレット状を呈しているが、特にその形態には限られず、層状リン酸塩が粉末状を呈していてもよい。
【0043】
また、上記実施形態のアンモニア除去システムは、アンモニア消費設備に適用されているが、本発明は、特にアンモニア消費設備には限られず、例えばアンモニアローリーやボンベにアンモニアを充填する設備等にも利用可能である。
【実施例】
【0044】
実施例1
アンモニア除去剤として、第1稀元素化学製の層状リン酸ジルコニウム(CZP−100、(HPO
4)2H
2O、分子量301、層間距離0.76nm、カチオン交換容量(理論値):6.6mmol/g)1gを水30gに分散させて、層状リン酸ジルコニウムの水分散体を生成した。アンモニアガスとして、NH
3を1010ppm含むN
2(大陽日酸購入品)を用いた。内容積32Lのデシケータを真空引きした後、アンモニアガスをデシケータ内に大気圧まで導入した。デシケータ内にはファンが配置されており、デシケータ内は強制対流雰囲気になっている。デシケータ上部の孔からデシケータ内に層状リン酸ジルコニウムの水分散体を投入した後、アンモニア濃度の時間変化を測定した。アンモニア濃度の測定には、北川式ガス採取器と3種類の検知管(105SM:NH
30.1〜1%、105SB:NH
350〜900、105SD:NH
30.2〜20ppm)を使用した。測定結果を
図5に示す。
【0045】
比較例1
アンモニア除去剤として、イオン交換水30gを用いた。アンモニアガスとして、NH
3を1010ppm含むN
2(大陽日酸購入品)を用いた。実施例1と同様にして、アンモニア濃度の時間変化を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0046】
比較例2
アンモニア除去剤として、イオン交換水60gを用いた。アンモニアガスとして、NH
3を1010ppm含むN
2(大陽日酸購入品)を用いた。実施例1と同様にして、アンモニア濃度の時間変化を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0047】
比較例3
アンモニア除去剤として、ナカライテスク製のリン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO
4・2H
2O、分子量172、ASSAY min.98%)1gを用いた。アンモニアガスとして、NH
3を1010ppm含むN
2(大陽日酸購入品)を用いた。実施例1と同様にして、アンモニア濃度の時間変化を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0048】
アンモニア除去性能評価
実施例1のようにアンモニア除去剤として層状リン酸ジルコニウムの水分散体を用いた場合は、比較例1,2のようにアンモニア除去剤として水のみを用いた場合や、比較例3のようにアンモニア除去剤として層状構造を有しないリン酸水素カルシウム二水和物水を用いた場合に比べて、空間中の残存アンモニア濃度が大きく低減された。これは、層状リン酸ジルコニウムにアンモニアが大量に吸蔵したためである。以上により、本発明の効果が実証された。
【0049】
実施例2
アンモニア除去剤として、第1稀元素化学製の層状リン酸ジルコニウム(CZP−100、(HPO
4)2H
2O、分子量301、層間距離0.76nm、カチオン交換容量(理論値):6.6mmol/g)2gを用いた。25℃で100mlの水にアンモニアを加え、2500ppmのアンモニア水を生成した。EUTECH製のCyberScanpH310pH計を用いて測定したアンモニア水のpHは、11となった。アンモニア水に層状リン酸ジルコニウム2gを加え、アンモニア濃度及びpHの時間変化を測定した。アンモニア濃度は、アンモニア計(Thermo scientific orion ammonia combination electrode 951201)により測定した。測定結果を
図6に示す。
【0050】
アンモニア水中において、層状リン酸ジルコニウムがアンモニアを吸蔵し、アンモニア濃度が2440ppmから0.1ppmまで大きく低下した。アンモニア水のpHは、11から6.5に変化した。従って、本発明の効果が実証された。
【0051】
比較例4
アンモニア除去剤として、ナカライテスク製のリン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO
4・2H
2O、分子量172、ASSAY min.98%)1gを用いた。25℃で100mlの水にアンモニアを加え、2500ppmのアンモニア水を生成した。実施例2と同様にして測定したアンモニア水のpHは、11となった。アンモニア水にリン酸水素カルシウム二水和物2gを加え、実施例2と同様にしてアンモニア濃度及びpHの時間変化を測定した。
【0052】
その結果、アンモニア濃度は、リン酸水素カルシウム二水和物の添加前後で、約2500ppmから殆ど変化しなかった。
【符号の説明】
【0053】
5…配管、6…アンモニア除去システム、7…貯水槽、9…管路、10…アンモニア除去器、11…ポンプ、12…吸蔵材、13…α型層状リン酸ジルコニウム(層状リン酸塩)、W…水。