【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
<製造例1>
多糖類として未精製のグルコマンナンを精製したグルコマンナンと、増粘剤としてキサンタンガムと、ゲル化促進剤として塩化カリウムと、活性炭としてクロマトグラフィー用活性炭と、を用いて以下の方法により活性炭ハイドロゲルを形成した。
【0063】
(グルコマンナンの精製)
以下の方法により精製したグルコマンナンを用いた。
【0064】
まず、三角フラスコに500mLの滅菌蒸留水を加え、撹拌の準備をした。そして、当該三角フラスコ中で、コンニャク製粉(製造元:株式会社 荻野商店、群馬県下仁田町、粒状)3.0gを5mLのエタノールに懸濁させた。マグネチックスターラーを用いて、500mLの滅菌蒸留水を撹拌しながら、エタノールに懸濁したコンニャク製粉を少量ずつ加えた。
【0065】
エタノールに懸濁したコンニャク製粉を滅菌蒸留水に加えた後、室温にて約1時間、継続的に撹拌することにより未精製グルコマンナン水溶液を作製した。なお、滅菌蒸留水の撹拌は、マグネチックスターラー等の撹拌機構を備えた装置によって撹拌した。
【0066】
1時間継続的に撹拌した未精製グルコマンナン水溶液に、タンパク質等の異物を除去するために1gの活性炭(クロマトグラフィー用、和光純薬)と、防腐剤として終濃度1mMのEDTA水溶液と、を添加し、さらに1時間撹拌した。
【0067】
そして、撹拌終了後、室温にて10,000×g、10分間遠心分離を行い、上澄みを回収した。さらに上澄みに残存している活性炭を除去するため、上澄みに対して10,000×g、10分間遠心分離を行い、2回遠心分離後の上澄みを精製グルコマンナン水溶液(0.6重量%)とした。
【0068】
(活性炭ハイドロゲルの製造)
0.6重量%の精製グルコマンナン水溶液8mLと、蒸留水に溶解させることにより調製した0.5重量%キサンタンガム水溶液3mLと、10重量%塩化カリウム水溶液1mLと、を混合し、400mgの活性炭(クロマトグラフィー用、和光純薬)を加えた。マイクロウェーブオーブンを用いて、活性炭を懸濁させた水溶液を70℃以上の温度で加熱することによりグルコマンナンおよびキサンタンガムを溶解させ、ゲル化用溶液を作製した。
【0069】
内口径が2.0mmのチューブに注射筒を装着し、ピストンで吸い上げることにより、チューブ内にゲル化用溶液1.5mLを入れた。当該溶液を室温まで冷却した後、ピストンで押し出すことにより、チューブ内の溶液を水中に押し出した。これにより糸状に形成した活性炭ハイドロゲルを作製した。活性炭ハイドロゲルは、直径が2.0mm、長さが0.5mであった。作製された活性炭ハイドロゲルの外観を
図1の(b)に示す。
【0070】
<製造例2>
ゲル化用溶液12mLをペトリ皿(直径8cm)上で冷却することによりゲル化させた以外は製造例1と同様に、シート状に形成した活性炭ハイドロゲルを作製した。活性炭ハイドロゲルは、直径が8cm、厚さが2.5mmであった。
【0071】
<製造例3>
活性炭を加えなかった以外は製造例1と同様に、ハイドロゲルを作製した。
【0072】
<製造例4>
活性炭を加えなかった以外は製造例2と同様に、ハイドロゲルを作製した。
【0073】
<実施例1A>
1μg/mLのエチジウムブロマイド溶液10mLに製造例1の活性炭ハイドロゲルを加え、ローテーター(傾斜45度、17rpm)で活性炭ハイドロゲルと吸着反応させた。10分毎に吸着反応させたエチジウムブロマイド溶液50μLをマイクロチューブに分取し、0.1−20kbpのDNAマーカー(178μg/μL、Gene Ladder wide 2, NIPPON GENE)1μLを加えて混合しアガロースゲル撮影装置(UVイルミネーター;Model BioDoc-It(登録商標) Imaging system, UVP社製)により写真撮影した。
【0074】
<実施例1B>
1μg/mLのエチジウムブロマイド溶液を倍希釈し、50μLをマイクロチューブに分取し、0.1−20kbpのDNAマーカー(178μg/μL、Gene Ladder wide 2, NIPPON GENE)1μLを加えて混合したこと以外は実施例1Aと同様の実験を行った。
【0075】
実施例1Aの結果を
図7の(a)のチューブ9から16に示す。チューブ9から16におけるエチジウムブロマイドと活性炭ハイドロゲルとの吸着反応時間は、それぞれ、0分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、および70分である。実施例1Bの結果を
図7の(a)のチューブ1から8に示す。チューブ1は、エチジウムブロマイドを1倍希釈(1.000μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ2は2倍希釈(0.500μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ3は4倍希釈(0.250μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ4は8倍希釈(0.125μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ5は16倍希釈(0.0625μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ6は32倍希釈(0.0313μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ7は64倍希釈(0.016μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)、チューブ8は128倍希釈(0.008μg/mLのエチジウムブロマイド溶液)した結果である。
【0076】
図7の(b)は、チューブ9の吸光光度を1.0とした場合における、チューブ10から16における吸光光度の割合である。実施例1Aの結果と実施例1Bの結果とを照らし合わせて作製した。チューブ3(4倍希釈)の吸光度がチューブ11(結合時間20分)の吸光度と同程度(0.25)であったため、チューブ11の吸光度を0.25とした。チューブ14〜16の吸光度はチューブ4(8倍希釈)の吸光度である0.125以下とした。
図7の(b)より、活性炭ハイドロゲルの、エチジウムブロマイドとの接触時間は、10分間という短時間で効率的にエチジウムブロマイドを除去できることが分かった。
【0077】
<実施例2>
未精製のキサンタンガム商品(製造元:マルゴーコーポレーション)と、未精製のグルコマンナン商品(ファインマンナン、製造元:株式会社 荻野商店、群馬県下仁田町)と、を用いた以外は製造例2と同様に活性炭ハイドロゲルを作製した。
【0078】
エチジウムブロマイド溶液10mLに製造例2の活性炭ハイドロゲルを加え、ローテーター(傾斜45度、17rpm)で規定時間、活性炭ハイドロゲルと吸着反応させた。吸着反応させたエチジウムブロマイド溶液50μLをマイクロチューブに分取した。各マイクロチューブに、0.1−20kbpのDNAマーカー(178μg/μL、Gene Ladder wide 2, NIPPON GENE)1μLを添加し、アガロースゲル撮影装置(UVイルミネーター;Model BioDoc-It(登録商標) Imaging system, UVP社製)により写真撮影した。
【0079】
<実施例3>
未精製のキサンタンガム商品(製造元:マルゴーコーポレーション)と、未精製のグルコマンナン(製造元:茂木食品工業株式会社、群馬県下仁田町)と、を用いた以外は実施例2と同様にして、活性炭ハイドロゲルを作製し、同様の実験を行った。
【0080】
実施例2の結果を
図3の(a)に、実施例3の結果を
図3の(b)に示す。なお、
図3の(a)中、チューブ1は0分、チューブ2は20分、チューブ3は40分、そしてチューブ4は60分、エチジウムブロマイド溶液と活性炭ハイドロゲルとを吸着反応させた結果を示す。
図3の(b)中、チューブ5は0分、チューブ6は20分、チューブ7は40分、そしてチューブ8は60分、エチジウムブロマイド溶液と活性炭ハイドロゲルとを吸着反応させた結果を示す。
【0081】
その結果、未精製の多糖類(グルコマンナンおよびキサンタンガム)を用いて作製された活性炭ハイドロゲルは、精製した多糖類を用いて作製された実施例1Aの活性炭ハイドロゲルと同様のエチジウムブロマイド吸着パターンを示すことがわかった。このことから、未精製の多糖類を用いて活性炭ハイドロゲルを作製した場合であっても、当該活性炭ハイドロゲルは、優れたエチジウムブロマイド吸着能を示すことがわかった。
【0082】
<実施例4>
色素を1mL、0.5%キサンタンガム水溶液を5mL、0.6%グルコマンナン水溶液を3mL、10%塩化カリウム1mL、蒸留水2mLを加えた。加えた溶液を加熱溶解することにより、ゲル化用溶液を作製したこと以外は製造例1と同様にして、直径2.0mm、長さ50cmの色素を含有したハイドロゲルを作製した。当該ハイドロゲルを8mLの蒸留水に加えた。当該ハイドロゲルから蒸留水に溶出してくる色素の量を吸光度測定により評価した。色素として、424nmと615nmとに吸収スペクトルを持つ緑色の色素(Fast Digestion Green,10X,ThermoFisher,Green Dye)を用いた。
【0083】
次に、色素が溶出した蒸留水に糸状に形成した活性炭ハイドロゲルを加えた。また、対照として、色素が溶出した蒸留水に粉末の活性炭を加えた。なお、粉末で加えた活性炭の量は、活性炭ハイドロゲル中に含まれる量(50mg)と理論上同じである。
【0084】
図4の(a)は活性炭ハイドロゲルによる異物の除去作用について424nmにおいて評価したグラフであり、
図4の(b)は活性炭ハイドロゲルによる異物の除去作用について615nmにおいて評価したグラフである。
図4の(a)および
図4の(b)中、「Dyeゲル」として、色素を含有したハイドロゲルを含む蒸留水の吸光度測定の結果を示し、「活性炭ハイドロゲル」として、糸状に形成した活性炭ハイドロゲルを含む、色素が溶出した蒸留水の吸光度測定の結果を示し、「活性炭粉末」として、活性炭粉末を含む、色素が溶出した蒸留水の吸光度測定の結果を示す。
【0085】
「Dyeゲル」に示すように、色素を含有したハイドロゲルを蒸留水に加えてから10分経過で色素の80%以上が、色素を含有したハイドロゲルから蒸留水中へ移動した。「活性炭ハイドロゲル」、および「活性炭粉末」に示すように、色素が溶出した蒸留水に活性炭ハイドロゲルまたは活性炭粉末を加えてから1時間経過後には、色素の80%以上が活性炭に吸着された。この結果から、活性炭を活性炭ハイドロゲルという形態にした場合であっても、活性炭による異物を除去する作用は阻害されないことがわかる。
【0086】
<実施例5>
製造例2の活性炭ハイドロゲルを不織布(5cm×6cm、再生PET65%、ポリエチレン35%、日本生協連、金星製紙株式会社、高知県高知市)に移し、ポリシーラー(SUREシーラーNL−301P、(株)石埼電機製作所)で加熱融着し、活性炭ハイドロゲルパックを作製した。当該ゲルパックを、CBB G250(クマシーブリリアントブルー)を加えた溶液に加え、7時間または10時間撹拌することにより、吸着反応を行った。吸着反応後の溶液の590nmにおける吸光度を測定した。吸光度の測定結果を
図5に示す。なお、CBB G250を加えた溶液は、有機溶媒および酸性溶媒(例えば、10重量%の酢酸および20重量%のメタノールを含む100mLの溶媒)を含む。
【0087】
図5中、「1」は活性炭ハイドロゲルを加える前のCBB G250を加えた溶液の吸光度を示し、「2」はCBB G250を加えた溶液に活性炭ハイドロゲルを加え、撹拌を7時間継続した後のCBB G250を加えた溶液の吸光度を示し、「3」はCBB G250を加えた溶液に活性炭ハイドロゲルを加え、撹拌を10時間継続した後のCBB G250を加えた溶液の吸光度を示す。
【0088】
図5の「3」の結果より、10時間継続して活性炭ハイドロゲルをCBB G250と接触させることにより、活性炭がCBB G250を吸収したことがわかる。この結果から、活性炭ハイドロゲルは、水溶液だけでなく、有機溶媒または酸性溶媒の場合でも異物を除去できることがわかる。
【0089】
<実施例6A>
蓋付きの200mLガラス瓶に、100mLのTAE緩衝液(pH8.0;40mM Tris−HCl、20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA)およびスターラーバーを入れた。当該ガラス瓶に、アガロース(Recenttec株式会社製)1.5gを投入し、蓋をして上下に2〜3回程度、素早く振盪した。マイクロウェーブオーブンを用いて、上記ガラス瓶を100℃で2分程度加熱し、アガロースを溶解させた。
【0090】
電気泳動装置に付属しているサンプルコーム(8ウェル用)およびゲルプレート(幅54mm、長さ60mm、高さ10mm)をゲル作製用トレーにそれぞれセットした。当該ゲル作製用トレーに調製したアガロース溶液13mLを流し込み、室温で1時間放置することによって、ゲル化させた。
【0091】
固化したゲルの上にTAE緩衝液を少量入れ、サンプルコームを注意深く抜き取った。
【0092】
電気泳動装置(Mupidミニゲル泳動槽、ミューピッド社(旧アドバンス社)製)にゲルをセットした。マーカーDNAを1μL、ローディング液(製品名:6×Loading Buffer Orange G、ニッポンジーン社製)2μL、10mM Tris−0.1mM EDTA(pH 8.0)9.0μLを加え混合することにより、電気泳動試料を調製した。各レーンの電気泳動試料として、レーン1において0.1−20kbpのDNAマーカーを用い、レーン2において25〜100bpのDNAマーカーを用いた。
【0093】
ゲルに形成されたウェルに、電気泳動試料を10μL加えた。100Vで30分間、室温にて電気泳動を行った。泳動バッファーとしては、TAE緩衝液(pH8.0;40mM Tris−HCl、20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA)を用いた。なお、電気泳動は、Molecular Cloning: A LABORATORY MANUAL, T. Maniatis, EF Fritsch, J. Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982を参考にして常法により実施した。その後、電気泳動を行ったアガロースゲルにおいて、吸着反応を行なっていないエチジウムブロマイド(濃度1.0μg/ml)を用いてDNAを染色した。
【0094】
アガロースゲル撮影装置(UVイルミネーター;Model BioDoc-It(登録商標) Imaging system, UVP社製)を用いて電気泳動後のゲルを撮影した。
【0095】
<実施例6B>
エチジウムブロマイド(濃度1.0μg/ml)50mLを含む溶液に製造例2の活性炭ハイドロゲルを加え、2時間吸着反応させた。吸着反応後のエチジウムブロマイドを用いて、DNAの染色を行ったこと以外は実施例6Aと同様に、実験を行った。
【0096】
<実施例6C>
5時間吸着反応を行った以外は、実施例6Bと同様に、実験を行った。
【0097】
<実施例6D>
エチジウムブロマイド(濃度1.0μg/ml)50mLを含む溶液に製造例4のハイドロゲルを加え、一晩吸着反応させた。吸着反応後のエチジウムブロマイドを用いて、DNAの染色を行ったこと以外は実施例6Aと同様に、実験を行った。
【0098】
<実施例6E>
エチジウムブロマイド(濃度1.0μg/ml)50mLを含む溶液に活性炭粉末400mgを加え、一晩吸着反応させた。吸着反応後のエチジウムブロマイドを用いて、DNAの染色を行ったこと以外は実施例6Aと同様に、実験を行った。
【0099】
<実施例6F>
エチジウムブロマイド(濃度1.0μg/ml)50mLを含む溶液に製造例4のハイドロゲルを加え、一晩吸着反応させた。吸着反応後のエチジウムブロマイドを用いて、DNAの染色を行ったこと以外は実施例6Aと同様に、実験を行った。
【0100】
<実施例6G>
エチジウムブロマイド(濃度1.0μg/ml)50mLを含む溶液に製造例1の活性炭ハイドロゲルを加え、2時間吸着反応させた。吸着反応後のエチジウムブロマイドを用いて、DNAの染色を行ったこと以外は実施例6Aと同様に、実験を行った。
【0101】
<実施例6H>
実施例6Fにおいて、電気泳動後のゲルを撮影した後、吸着反応を行っていないエチジウムブロマイドを用いて当該ゲルを染色した。
【0102】
<実施例6I>
実施例6Gにおいて、電気泳動後のゲルを撮影した後、吸着反応を行っていないエチジウムブロマイドを用いて当該ゲルを染色した。
【0103】
実施例6A〜実施例6Iの電気泳動結果をそれぞれ、
図6の(a)〜
図6の(i)に示す。
【0104】
図6の(a)は、活性炭ハイドロゲルまたは活性炭粉末によりエチジウムブロマイドの吸着反応を行わなかった結果、
図6の(b)は、製造例2の活性炭ハイドロゲルによりエチジウムブロマイドの2時間の吸着反応を行った結果、
図6の(c)は、製造例2の活性炭ハイドロゲルによりエチジウムブロマイドの5時間の吸着反応を行った結果を示す。
図6の(a)〜(c)では、活性炭ハイドロゲルと、エチジウムブロマイドと、の接触時間が長くなるにつれ、DNAが染色されていないことから、活性炭ハイドロゲルにより、エチジウムブロマイドが除去されることが認められた。
【0105】
図6の(d)は、製造例4のハイドロゲルにエチジウムブロマイドを24時間接触させた後にDNAの染色を行った結果を示す。活性炭を含まないハイドロゲルでは、十分にエチジウムブロマイドを長時間接触させた場合においても、エチジウムブロマイドを十分除去できなかったことがわかる。
【0106】
図6の(e)は、
図6の(b)、(c)および(g)において用いた活性炭ハイドロゲルに含まれる活性炭の理論量と同量の活性炭粉末をエチジウムブロマイドに加え、一晩処理を行った結果を示す。
図6の(e)ではDNAが染色されていないことより、エチジウムブロマイドが完全に除去されたことがわかる。そのため、
図6の(b)、(c)、および(g)において用いた活性炭ハイドロゲルでは、エチジウムブロマイドをすべて除去するために十分な活性炭の量が含まれていることが認められた。
【0107】
図6の(f)は、製造例3のハイドロゲルに2時間接触させた後にDNAの染色を行った結果を示す。
図6の(f)ではDNAがうっすらと染色された。
図6の(g)は、製造例1の活性炭ハイドロゲルに2時間接触させた後にDNAの染色を行った結果を示す。
図6の(g)ではDNAは染色されなかった。
図6の(f)の結果および
図6(g)の結果により、製造例1の活性炭ハイドロゲルに含まれる活性炭の作用により、エチジウムブロマイドの吸着除去が行われたことがわかる。
【0108】
図6の(h)および
図6の(i)は、
図6の(f)および
図6の(g)において用いたハイドロゲルに対して新しいエチジウムブロマイド(すなわち、活性炭ハイドロゲルまたは活性炭粉末による吸着反応を行っていないエチジウムブロマイド)を加えた結果である。その結果、
図6の(h)および
図6の(i)ではエチジウムブロマイドによりDNAが染色された。以上より、実施例6Fおよび実施例6Gでは、電気泳動したゲルに確実にDNAがロードされているにも拘わらず、染色に必要なエチジウムブロマイドが吸着反応で除去されているため、DNAの染色像が観察されないことがわかる。
【0109】
<実施例7>
次に、活性炭ハイドロゲルによる紫外線遮断作用について
図8の(a)から
図8の(d)を用いて説明する。
【0110】
図8の(a)および
図8の(c)に示すように、シャーレを用いてシート状の活性炭ハイドロゲルを形成した。
図8の(a)に示される活性炭ハイドロゲルは、シャーレ全域を覆う大きさのシート状の活性炭ハイドロゲルにおいて、分銅を用いて、その中央部に複数の丸穴を形成することにより作製された。そして、シャーレの鉛直下方に、1μg/mLのエチジウムブロマイドと、プラスミドDNA(20ng/mL、PUC19,GIBCO BRL)と、を添加した1.2重量%アガロースゲルを設置した。そして、シャーレの鉛直上方より、UVPゲル撮影装置により撮影を行った。なお、活性炭ハイドロゲルは、実施例1Aと同様に作製したゲル化用溶液1.5mLを用いて作製した。
【0111】
エチジウムブロマイドはDNAにインターカレーションすることにより、蛍光を発する。
図8の(b)に示すように、アガロースゲルから放出される蛍光は、シート状の活性炭ハイドロゲルにより遮断された。そして、活性炭ハイドロゲルに形成された丸穴から蛍光が確認された。
【0112】
次に、シャーレの略半分を覆う大きさのシート状の活性炭ハイドロゲルを作製した(
図8の(c)を参照のこと)。そして、シャーレの鉛直下方に、エチジウムブロマイドと、DNAと、を含むマイクロチューブを設置した。そして、シャーレの鉛直上方より、UVPゲル撮影装置に撮影を行った。
【0113】
図8の(d)に示すように、シャーレの活性炭ハイドロゲルに覆われていない部分に設置されたマイクロチューブから放出される紫外線以外は、シート状の活性炭ハイドロゲルにより遮断された。
【0114】
これらのように、シート状に形成された活性炭ハイドロゲルは紫外線を遮断する作用を有することが認められた。活性炭ハイドロゲルによる紫外線を遮断する作用は、活性炭ハイドロゲルが黒色をしていることに起因すると考えられる。また、活性炭ハイドロゲルによる紫外線を遮断する作用は、本発明により、活性炭を均一にシート状に自由に形成できたからこそ生じるものである。
【0115】
<実施例8:活性炭ハイドロゲルのしなやかさの評価>
活性炭ハイドロゲルのしなやかさを
図9の(a)および
図9の(b)に示す方法により評価した。そして、評価した結果を
図9の(c)に示す。
【0116】
活性炭ハイドロゲルの組成および結果について表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
(しなやかさの評価試験方法)
表1のNo.1〜10に示すグルコマンナンの量およびキサンタンガムの量を含む活性炭ハイドロゲル溶液を作製した。当該溶液には、10重量%塩化カリウム水溶液1mLおよび400mgの活性炭(クロマトグラフィー用、和光純薬)も含まれている。
【0119】
作製した活性炭ハイドロゲル溶液12mLを50mLの試薬瓶(岩城ガラス製、製品名:メジューム瓶 50mL)に加えた。この時、活性炭ハイドロゲルの上面から底面までの距離は12mmであった。活性炭ハイドロゲルの上面に、重さが1.220mgのプラスチックのループ(MINIPLAST製、製品名:Quadloop 1μl Sphere end)を載置した。そして、プラスチックのループが上面から沈んだ距離を測定した。測定の結果、ゲルの破壊が起こらず、かつ、上面の沈んだ距離が8mm以下の場合を「○」とし、8mmより大きい場合を「×」とした。なお、本しなやかさの評価試験における判定基準によるしなやかさの評価の結果は、糸状の活性炭ハイドロゲルの形成の可否と符号していた。具体的には、上面の沈んだ距離が8mm以下の場合では、糸状の活性炭ハイドロゲルを形成できた。また、上面の沈んだ距離が8mmより大きい場合では、糸状の活性炭ハイドロゲルを形成できなかった。
【0120】
(しなやかさの評価試験の結果)
No.1〜5、7、および8の活性炭ハイドロゲルでは、上面の沈んだ距離が4mm以下となり、当該活性炭ハイドロゲルは、よりしなやかな活性炭ハイドロゲルであることが示された。
【0121】
また、No.6および9の活性炭ハイドロゲルでは、上面の沈んだ距離が8mm以下となり、当該活性炭ハイドロゲルは、しなやかな活性炭ハイドロゲルであることが示された。
【0122】
さらに、No.10の活性炭ハイドロゲルでは、上面の沈んだ距離が8mmを超え、当該活性炭ハイドロゲルは、しなやかではない活性炭ハイドロゲルであることが示された。