【実施例】
【0048】
<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>
以下に、本実施例における層状金属水酸化物のナノ粒子の製造方法を説明する。なお、本実施例では、水熱合成法にしたがって、層状金属水酸化物のナノ粒子を製造した。
【0049】
まず、0.6M MgCl
2水溶液(5mL)と、0.2M AlCl
3水溶液(5mL)とを混合して、MgCl
2の最終濃度が0.3Mであり、かつ、AlCl
3の最終濃度が0.1Mである、溶液A(10mL)を調製した。
【0050】
別途、0.3M NaOH水溶液(20mL)と、0.026M Na
2CO
3水溶液(20mL)とを混合して、NaOHの最終濃度が0.15Mであり、かつ、Na
2CO
3の最終濃度が0.013Mである、溶液B(40mL)を調製した。
【0051】
200mL容量の三角フラスコに溶液Bを加え、当該三角フラスコ内の溶液Bを撹拌しながら、当該溶液Bに対して溶液Aを加えた。その後、溶液Aと溶液Bとの混合物を室温にて10分間撹拌し、白色の生成物を形成させた。
【0052】
溶液Aと溶液Bとの混合物を遠心分離し、白色の沈殿物を回収した。当該沈殿物をイオン交換水によって2回洗浄した。
【0053】
洗浄後の沈殿物を40mLのイオン交換水に懸濁し、水熱合成法にしたがって、層状金属水酸化物のナノ粒子を製造した。なお、反応条件は100℃とし、反応時間は、4時間とした。なお、水熱合成法の詳細については、AU2005318862A1に記載の方法にしたがった。
【0054】
<2.層状金属水酸化物のナノ粒子の物性評価>
当該試験では、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>において作製した層状金属水酸化物のナノ粒子の物性を評価した結果について以下に説明する。
【0055】
層状金属水酸化物のナノ粒子の粒子径および結晶の形状については、走査型電子顕微鏡観察(SEM)および動的光散乱測定(DLS)を用いて評価した。また、層状金属水酸化物のナノ粒子に含まれるAlおよびMgの含有量、および組成については、結合プラズマ発光分光分析(ICP)を用いて評価した。
【0056】
<2−1.走査型電子顕微鏡観察(SEM)および動的光散乱測定(DLS)>
以下に、走査型電子顕微鏡観察の試験方法、および、試験結果について説明する。また、以下に、動的光散乱測定の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載されている、水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用いた。
【0057】
以下に、走査型電子顕微鏡観察の試験方法について説明する。
【0058】
(使用機器)
走査型電子顕微鏡:S4800(日立製)。
【0059】
(測定条件)
加速電圧:15kV(通常時)
20kV(EDX使用時)。
【0060】
次いで、走査型電子顕微鏡観察の試験結果について説明する。
【0061】
作製した層状金属水酸化物のナノ粒子は、六角形の板状結晶が認められた。
【0062】
以下に、動的光散乱測定の試験方法について説明する。
【0063】
(使用機器)
動的光散乱測定器:ELSZ‐1000ZS(大塚電子株式会社製)
次いで、動的光散乱測定の試験結果について説明する。
【0064】
作製した層状金属水酸化物のナノ粒子は、平均粒子径が、約60nmであった。
【0065】
<2−2.結合プラズマ発光分光分析(ICP)>
以下に、結合プラズマ発光分光分析の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>の欄に記載の水熱合成法によって得られた層状金属水酸化物のナノ粒子を用いた。
【0066】
以下に、結合プラズマ発光分光分析の試験方法について説明する。
【0067】
(使用機器)
ICP測定装置:iCAP6500(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)。
【0068】
(測定条件)
測定元素:AlおよびMg
測定方向:アキシャル
試料形態:液体
検量線条件:絶対検量線法。
【0069】
(試料調整方法)
試料10mgを1mlのNHO
3に溶解させ、超純水で50mlに定容した。定容した試料を5倍希釈し測定用試料とした。
【0070】
Al用標準溶液として、2.0、4.0、6.0および8.0ppmのAl(NO
3)
3・9H
2Oを含む溶液を調整し、当該溶液を用いて検量線を作成した。
【0071】
Mg用標準溶液として、用いて2.5、5.0、7.5、および10ppmのMg(NO
3)
2・6H
2Oを含む溶液を調整し、当該溶液を用いて検量線を作成した。
【0072】
次いで、結合プラズマ発光分光分析の試験結果について説明する。
【0073】
作製した層状金属水酸化物のナノ粒子に含まれる、Alの含有量は3.12ppm、Mgの含有量は5.07ppmであった。また、作製した層状金属水酸化物のナノ粒子の組成は、Mg
1.8Al
1(OH)
2(CO
3)
0.5・0.67H
2Oであった。
【0074】
以上をまとめると、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>により作製した層状金属水酸化物は、粒子径がおよそ60nm、かつ、六角形の板状結晶のMg
1.8Al
1(OH)
2(CO
3)
0.5・0.67H
2Oの層状金属水酸化物が得られた。
【0075】
<3.二酸化炭素の吸着脱離試験>
以下に、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>に記載の層状金属水酸化物のナノ粒子を用いた。比較対象試験として、<1.層状金属水酸化物のナノ粒子の製造>に記載の層状金属水酸化物と二酸化炭素との接触の際に水を添加せず二酸化炭素の吸着脱離試験を行った。
【0076】
以下に、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験方法について説明する。
【0077】
(使用機器)
質量分析計:JMS−Q1050GC(日本電子株式会社製)。
【0078】
(測定方法)
(1)石英管セルに石英ウールと約30mgの層状金属水酸化物試料とを入れた。
(2)アルゴン100cc/min.流通環境下で、電気炉を用いて層状金属水酸化物試料を200℃まで加熱し、約1時間恒温を維持した。
(3)層状金属水酸化物試料を350℃まで加熱し、層状金属水酸化物試料から二酸化炭素を脱離させた。
(4)二酸化炭素脱離後、層状金属水酸化物試料を200℃まで冷却して、当該層状金属水酸化物試料に二酸化炭素とアルゴンとの混合ガス、および、必要に応じて水、を1気圧にて1時間接触させることにより、層状金属水酸化物試料へ二酸化炭素を再吸着させた。なお、混合ガスの流量は、100cm
3/min.である。なお、当該層状金属水酸化物試料に接触させる二酸化炭素および水の量は、下記の(a)および(b)に示すように調整した。
【0079】
(a)水は、液体の状態で添加した。水の添加量は、添加せず(0cc/h)、1.2cc/h、2.4cc/h、そして3.6cc/hと変更して当該層状金属水酸化物試料に添加した。なお、水が当該層状金属水酸化物試料と接触する環境では、200℃の高温のため、水は水蒸気となる。そのため、水を1.2cc/h添加する場合では、二酸化炭素の割合が20%、40%、60%、80%および、100%の場合、各々、水蒸気分圧が2.16×10
4Paとなる。また、水を2.4cc/h添加する場合では、二酸化炭素の割合が20%、40%、60%、80%および、100%の場合、各々、水蒸気分圧が3.57×10
4Paとなる。また、水を3.6cc/h添加する場合では、二酸化炭素の割合が20%、40%、60%、80%および、100%の場合、各々、水蒸気分圧が4.55×10
4Paとなる。
【0080】
(b)二酸化炭素は、混合ガスに占める二酸化炭素の割合を20%、40%、60%、80%および、100%と調整することにより、二酸化炭素が当該層状金属水酸化物試料に接触する量を調整した。なお、二酸化炭素の分圧は、水を1.2cc/h添加する場合には、混合ガスに占める二酸化炭素の割合を20%、40%、60%、80%および、100%としたとき、各々、1.59×10
4Pa、3.19×10
4Pa、4.78×10
4Pa、6.37×10
4Pa、7.97×10
4Paとなる。また、二酸化炭素の分圧は、水を2.4cc/h添加する場合には、混合ガスに占める二酸化炭素の割合を20%、40%、60%、80%および、100%としたとき、各々、1.31×10
4Pa、2.63×10
4Pa、3.94×10
4Pa、5.25×10
4Pa、6.56×10
4Paとなる。また、二酸化炭素の分圧は、水を3.6cc/h添加する場合には、混合ガスに占める二酸化炭素の割合を20%、40%、60%、80%および、100%としたとき、各々、1.12×10
4Pa、2.23×10
4Pa、3.35×10
4Pa、4.46×10
4Pa、5.58×10
4Paとなる。
(5)系内に残留している二酸化炭素および水をアルゴンで置換した。
【0081】
上記工程(3)から(5)を1サイクルとした工程を複数回行い、各工程における二酸化炭素脱離量をガスクロマトグラフ質量分析計にて測定した。
【0082】
次いで、二酸化炭素の吸着脱離試験の試験結果について説明する。
【0083】
図2および3において、「0サイクル」は、上記(1)から(3)を行った時の二酸化炭素の脱離量を示し、「1サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を1回目に行った際の二酸化炭素の脱離量を示し、「2サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を2回目に行った際の二酸化炭素の脱離量を示す。「3サイクル」は、上記(4)、(5)および(3)を3回目に行った際の二酸化炭素の脱離量を示す。
【0084】
図1において、水蒸気分圧と、二酸化炭素分圧と、を変更することによる、0サイクル目に脱離した二酸化炭素量の量に対する、1サイクル目に脱離した二酸化炭素の量の割合(LDH再生率とも称する)を示す。
【0085】
図1では、水蒸気分圧が約1.00×10
4Pa以上であれば、二酸化炭素分圧に応じて、LDH再生率が増加することが明らかとなった。
【0086】
図2は、水蒸気分圧が3.5×10
4Pa、および二酸化炭素の分圧が6.5×10
4Paの場合における、3サイクルまでの二酸化炭素の脱離量の推移を示す。また、
図3は、水を添加せず(換言すれば水蒸気分圧が0Pa)、二酸化炭素の分圧が1.0×10
5Paの場合における、3サイクルまでの二酸化炭素の脱離量の推移を示す。
【0087】
図2では、水蒸気が存在する条件下にて層状金属水酸化物試料に二酸化炭素を吸着させることにより、二酸化炭素の吸着および脱離する量の低下が抑制された。これにより、二酸化炭素の吸着方法を調節することにより、複数回繰り返し利用した場合であっても、二酸化炭素の吸着および脱離する量の低下を抑制できることが明らかとなった。
【0088】
一方、
図3では、水蒸気が存在しない条件下にて層状金属水酸化物試料に二酸化炭素を吸着させた。サイクル数の増加に応じて層状金属水酸化物試料から脱離する二酸化炭素の量が低下した。そして層状金属水酸化物試料から脱離する二酸化炭素の量が低下することに伴い、当該層状金属水酸化物試料に吸着される二酸化炭素の量も低下した。
【0089】
<4.粉末X線回折測定(XRD)>
以下に、粉末X線回折測定の試験方法、および、試験結果について説明する。なお、当該試験には、<3.二酸化炭素の吸着脱離試験>に記載の1サイクル目が終了した時点における層状金属水酸化物試料のナノ粒子を用いた。
【0090】
以下に、粉末X線回折測定の試験方法について説明する。
(使用機材)
X線回折装置:D8−ADVANCE(Burker AXS株式会社製)
ディテクター:D8−ADVANCE VANTEC(Burker AXS株式会社製)
測定線源:波長1.5418ÅのCu Kα
フィルター:Ni
(測定条件)
X線管負荷:40mA、35kV
測定角度:5.0−70.0deg
サンプリング間隔:0.007deg
発散スリット(入射):0.6mm
受光スリットDetector Slit:12.09mm
Antiscattering Slit:7.87mm
ディテクター受光角:3.00°
次いで、粉末X線回折測定の試験結果について説明する。
【0091】
図4にXRDによる測定結果を示す。
図4に示すように1サイクル目が終了した時点における層状金属水酸化物試料は層構造を維持していることが明らかとなった。