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特開2020-13913厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、および厚膜抵抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-13913(P2020-13913A)
(43)【公開日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、および厚膜抵抗体
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20191220BHJP
   C03C 8/24 20060101ALI20191220BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20191220BHJP
【FI】
   H01C7/00 324
   C03C8/24
   C03C3/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-135502(P2018-135502)
(22)【出願日】2018年7月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幕田 富士雄
【テーマコード(参考)】
4G062
5E033
【Fターム(参考)】
4G062AA09
4G062BB01
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4G062DA04
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4G062MM31
4G062NN29
4G062PP09
4G062PP11
5E033AA18
5E033AA25
5E033AA27
5E033BB06
(57)【要約】
【課題】所望の抵抗値およびTCRを有しながら、電流ノイズが小さいという、良好な電気的特性を有しながら、鉛を実質的に含まない厚膜抵抗体を提供する。
【解決手段】導電性成分は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含み、ガラス成分は、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有する、厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、および厚膜抵抗体が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末と、ガラスフリットとを含み、
前記導電性粉末は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含み、および、
前記ガラスフリットは、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマス(Bi)を1質量%以上5質量%以下含有する、
厚膜抵抗体用組成物。
【請求項2】
前記導電性粉末の含有量は、5質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項3】
前記ガラスフリットのガラスの軟化点は、550℃以上750℃以下である、請求項1または2に記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項4】
前記ガラスフリットのガラスの熱膨張係数は、40×10−7/K以上100×10−7/K以下の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項5】
酸化チタン、酸化ニオブ、酸化錫および酸化銅から選択される少なくとも1種を、前記導電性粉末と前記ガラスフリットの合計質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下の範囲でさらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項6】
厚膜抵抗体用組成物と有機ビヒクルとを含み、前記厚膜抵抗体用組成物として、請求項1〜5のいずれかに記載の厚膜抵抗体用組成物が用いられている、厚膜抵抗体用ペースト。
【請求項7】
前記有機ビヒクルの含有量は、前記厚膜抵抗体用ペーストの質量に対して、30質量%以上50質量%以下である、請求項6に記載の厚膜抵抗体用ペースト。
【請求項8】
導電性成分とガラス成分を含む焼成体からなり、
前記導電性成分は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含み、および、
前記ガラス成分は、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有する、
厚膜抵抗体。
【請求項9】
前記導電性成分の含有量は、5質量%以上30質量%以下である、請求項8に記載の厚膜抵抗体。
【請求項10】
前記ガラス成分のガラスの軟化点は、550℃以上750℃以下である、請求項8または9に記載の厚膜抵抗体。
【請求項11】
前記ガラス成分のガラスの熱膨張係数は、40×10−7/K以上100×10−7/K以下の範囲にある、請求項8〜10のいずれかに記載の厚膜抵抗体。
【請求項12】
酸化チタン、酸化ニオブ、酸化錫、および酸化銅から選択される少なくとも1種を、前記導電性成分と前記ガラス成分の合計質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下の範囲でさらに含有する、請求項8〜11のいずれかに記載の厚膜抵抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗部品における厚膜抵抗体の形成に使用される、厚膜抵抗体用組成物および厚膜抵抗体用ペースト、並びに、これらを用いて形成された厚膜抵抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抵抗部品における抵抗体皮膜としては、ペーストを用いて形成される厚膜抵抗体と、膜形成材料のスパッタリングなどにより形成される薄膜抵抗体とが存在する。これらのうち、厚膜抵抗体は、その製造設備が安価で、かつ、その生産性も高いことから、チップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗部品において、広範に利用されている。
【0003】
厚膜抵抗体は、厚膜抵抗体用ペーストをセラミック基板上に印刷し、焼成することにより形成される。この厚膜抵抗体用ペーストは、導電性粉末と、ガラスフリットと、これらを印刷に適したペースト状にするための有機ビヒクルとにより、実質的に構成される。導電性粉末としては、二酸化ルテニウム(RuO)やパイロクロア型ルテニウム系酸化物(PbRu7−X、BiRu)などのルテニウム(Ru)系酸化物が、ガラスフリットとしては、ホウケイ酸鉛ガラス(PbO−SiO−B)やアルミノホウケイ酸鉛ガラス(PbO−SiO−B−Al)などの鉛を多量に含むホウケイ酸鉛系ガラスが、それぞれ使用されている。
【0004】
導電性粉末としてルテニウム系酸化物が使用される理由は、主にその濃度の変化に対して抵抗値がなだらかに変化するという特性を有するためである。また、ガラスフリットにホウケイ酸鉛系ガラスが使用される理由は、Ru系酸化物との濡れ性が良好であり、その熱膨張係数が基板の熱膨張係数に近く、焼成時の粘性などにおいて適しているためである。
【0005】
しかしながら、有害な鉛を含んだ厚膜抵抗体用ペーストの使用は、環境問題の観点から望ましくないため、近年、鉛を含まない厚膜抵抗体用ペーストの実用化が強く求められている。
【0006】
このため、現在、鉛を含まない厚膜抵抗体用ペーストの研究開発が進められており、厚膜抵抗体ペーストに用いられる厚膜抵抗体用組成物において、鉛を含まないガラスフリットの提案がなされている。たとえば、特開平8−253342号公報には、5〜70モル%のBi、18〜35モル%のSiO、0.1〜40モル%のCuO、5〜25モル%のZnO、0.5〜40モル%のCoO、0.5〜40モル%のFe、および0.5〜40モル%のMnOを含み、鉛およびカドミニウムを含まないガラスフリットが開示されている。また、特開2003−257242号公報には、重量比率で、アルカリ金属が1%以下、Biが10〜30%、SiOが25〜40%、BaOが30〜40%、ZnOが5〜7%、Alが4〜7%、Bが0.01〜8%の組成で構成される鉛を含有しないガラスフリットが開示されている。このように、これらの文献における厚膜抵抗体用組成物および厚膜抵抗体用ペーストにおいては、酸化ビスマス(Bi)を含むガラスフリットが用いられている。しかしながら、ガラスフリット中の酸化ビスマスには抵抗値を下げる効果があるため、酸化ビスマスの含有量が多くなるに従って、抵抗ペースト中の導電性粉末の割合を少なくせざるを得ず、それに応じて、得られる抵抗体において電流ノイズが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−253342号公報
【特許文献2】特開2003−257242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、良好な電気的特性を有する抵抗体を形成することができる、鉛を含まない厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、および厚膜抵抗体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の厚膜抵抗体用組成物は、導電性粉末と、ガラスフリットとを含み、
前記導電性粉末は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含み、および、
前記ガラスフリットは、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマス(Bi)を1質量%以上5質量%以下含有する、
ことを特徴とする。
【0010】
前記ガラスフリットにおける、酸化ビスマスを除く組成が、30質量%以上50質量%以下の酸化珪素(SiO)、10質量%以上25質量%以下の酸化硼素(B)、5質量%以上15質量%以下のアルカリ土類金属酸化物(RO:RはCa、Sr、およびBaから選択される少なくとも1種)、10質量%以上30質量%以下の酸化亜鉛(ZnO)、2質量%以上6質量%以下のアルミナ(Al)、10質量%以下のアルカリ金属酸化物(RO:RはLi、Na、およびKから選択される少なくとも1種)からなることが好ましい。
【0011】
前記ガラスフリットのガラスの軟化点は、550℃以上750℃以下であることが好ましい。
【0012】
前記ガラスフリットのガラスの熱膨張係数は、40×10−7/K以上100×10−7/K以下の範囲にあることが好ましい。
【0013】
本発明の厚膜抵抗体用組成物は、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化錫(SnO)、酸化タンタル(Ta)、および酸化銅(CuO、CuO)から選択される少なくとも1種を、前記導電性粉末と前記ガラスフリットの合計質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下の範囲でさらに含有することが好ましい。
【0014】
本発明の厚膜抵抗体用ペーストは、厚膜抵抗体用組成物と有機ビヒクルとを含み、前記厚膜抵抗体用組成物として、本発明の厚膜抵抗体用組成物が用いられていることを特徴とする。
【0015】
前記有機ビヒクルの含有量は、前記厚膜抵抗体用ペーストの質量に対して、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の厚膜抵抗体は、導電性成分とガラス成分を含む焼成体からなり、前記導電性成分は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含み、および、前記ガラス成分は、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有する、ことを特徴とする。
【0017】
前記ガラス成分における、酸化ビスマスを除く組成が、30質量%以上50質量%以下の酸化珪素(SiO)、10質量%以上25質量%以下の酸化硼素(B)、5質量%以上15質量%以下のアルカリ土類金属酸化物(RO:RはCa、Sr、およびBaから選択される少なくとも1種)、10質量%以上30質量%以下の酸化亜鉛(ZnO)、2質量%以上6質量%以下のアルミナ(Al)、10質量%以下のアルカリ金属酸化物(RO:RはLi、Na、およびKから選択される少なくとも1種)からなることが好ましい。
【0018】
前記ガラス成分のガラスの軟化点は、550℃以上750℃以下であることが好ましい。
【0019】
前記ガラス成分のガラスの熱膨張係数は、40×10−7/K以上100×10−7/K以下の範囲にあることが好ましい。
【0020】
本発明の厚膜抵抗体は、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化錫(SnO)、酸化タンタル(Ta)、および酸化銅(CuO、CuO)から選択される少なくとも1種を、前記導電性成分と前記ガラス成分の合計質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下の範囲でさらに含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、および厚膜抵抗体は、有害な鉛を含有することなく、良好な電気的特性を発揮することができるため、従来の鉛を含む厚膜抵抗体ペーストに代替することで、環境汚染の問題のないチップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗部品を提供できるため、その工業的価値はきわめて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体ペースト、および厚膜抵抗体について、詳細に説明する。
【0023】
(1)厚膜抵抗体用組成物
本発明の厚膜抵抗体用組成物は、導電性粉末と、ガラスフリットとを含み、前記導電性粉末は、二酸化ルテニウム(RuO)、ルテニウム酸カルシウム(CaRuO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、およびルテニウム酸バリウム(BaRuO)から選択される少なくとも1種を含み、および、前記ガラスフリットは、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有することを特徴とする。
【0024】
[導電性粉末]
本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成する導電性粉末は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含む。これらの導電性粉末は、公知の製造方法により得ることができる。
【0025】
ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、あるいはルテニウム酸バリウムは、二酸化ルテニウム粉末と、カルシウム、ストロンチウム、あるいはバリウムの水酸化物または炭酸塩とを機械的に混合し、熱処理した後に、粉砕する乾式法により得ることができる。また、粒径が小さく、均一なこれらの粉末を得る場合には、アルカリ水溶液に、塩化ルテニウムと、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、あるいは塩化バリウムとを含む溶液を添加して、沈澱させ、その沈澱物を洗浄し、乾燥させた後、約600℃以上900℃以下の温度で焙焼する工程が採用される。
【0026】
導電性粉末のBET法による平均粒径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。これにより、焼成により得られる厚膜抵抗体において、その抵抗値のばらつきや電流ノイズの大きさを適切に抑制することが可能となる。
【0027】
本発明の厚膜抵抗体用組成物において、導電性粉末の含有量は、得られる厚膜抵抗体における所望の抵抗値、導電性粉末およびガラスフリットの種類および粒径に応じて、適宜調整される。たとえば、面積抵抗値が5kΩ以上の高抵抗の抵抗体を得る場合には、通常、導電性粉末の含有量は、5質量%以上30質量%以下となる。
【0028】
[ガラスフリット]
本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成するガラスフリットは、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有することを特徴とする。
【0029】
ここで、「鉛を実質的に含まない」とは、ガラスフリットにおける鉛の含有量がRoHS指令の規制値(0.1質量%)以下であるか、または、鉛の含有量が通常の測定機器において検出限界以下であることを意味する。
【0030】
ガラスフリット中の酸化ビスマスは、厚膜抵抗体としたときに抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistance:TCR)をプラス(+)側に移動させる役割を果たす。
【0031】
ガラスフリット中の酸化ビスマスの含有量は、1質量%以上5質量%以下とする。ガラスフリット中の酸化ビスマスの含有量が1質量%以上であれば、TCRをプラス(+)側に移動させる効果が十分発揮できる。ガラスフリット中の酸化ビスマスの含有量が5質量%を超えると、得られる厚膜抵抗体において、その抵抗値が低くなりすぎてしまうため、好ましくない。
【0032】
本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成するガラスフリットにおける、その他のガラス成分については、基本的には限定されないが、特に、アルミノホウケイ酸アルカリ土類亜鉛ガラス(SiO−B−RO−ZnO−Al:RはCa、Sr、およびBaから選択される少なくとも1種)の場合には、酸化ビスマス(Bi)を1質量以上5質量%以下のほか、酸化珪素(SiO)を30質量%以上50質量%以下、酸化硼素(B)を10質量%以上25質量%以下、アルカリ土類金属酸化物(RO:RはCa、Sr、およびBaから選択される少なくとも1種)を5質量%以上15質量%以下、酸化亜鉛(ZnO)を10質量%以上30質量%以下、アルミナ(Al)を2質量%以上6質量%以下、アルカリ金属酸化物(RO:RはLi、Na、およびKから選択される少なくとも1種)を10質量%以下含有するガラスフリットを用いることが好ましい。
【0033】
本発明の厚膜抵抗体用組成物において、その他にも、ホウケイ酸ガラス(SiO−B)、アルミノホウケイ酸ガラス(SiO−B−Al)、あるいはホウケイ酸アルカリ土類ガラス(SiO−B−RO:RはCa、Sr、およびBaから選択される少なくとも1種)、に、酸化ビスマス(Bi)を1質量以上5質量%以下、添加したガラスフリットも好適に用いることができる。
【0034】
本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成するガラスフリットの平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定によるD50(メジアン径)において、5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下の範囲であることがより好ましい。ガラスフリットの粒径が微細であれば、厚膜抵抗体中の導電パスを微細にすることができ、よって、厚膜抵抗体の抵抗値のばらつきや電流ノイズを抑制することが可能となる。所望の平均粒径のガラスフリットを得るためには、熔融し冷却したガラスフリットを、ボールミル、ジェットミルなどの公知の粉砕方法を用いて粉砕すればよい。
【0035】
本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成するガラスフリットにおいて、ガラスの軟化点は、550℃以上750℃以下の範囲にあることが好ましく、600℃以上700℃以下の範囲にあることがより好ましい。ガラスの軟化点が550℃よりも低いと、厚膜抵抗体用ペーストを焼成して抵抗体を形成する際にガラスフリットが融けすぎて、抵抗体のパターンが崩れてしまうからである。一方、ガラスの軟化点が750℃よりも高いと、ガラスフリットが熔融しにくくなり、導電性粉末との馴染み(濡れ)が悪くなるため、得られる厚膜抵抗体の電流ノイズが増大する。
【0036】
ここで、軟化点は、ガラスを示差熱分析法にて大気中で、5℃/分以上20℃/分以下で昇温、加熱し、得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度である。
【0037】
本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成するガラスフリットにおいて、ガラスの熱膨張係数は、40×10−7/K以上100×10−7/K以下の範囲にあることが好ましく、50×10−7/K以上90×10−7/K以下の範囲にあることがより好ましい。たとえば、アルミナ基板を用いる場合、この範囲の熱膨張係数を有するガラスからなるガラスフリットを用いることによって、得られる厚膜抵抗体の熱膨張係数が、アルミナ基板の熱膨張係数に近い値になるため、引張応力の問題がなくなる。熱膨張係数はガラスフリットを棒状に成形して、熱機械的分析装置(TMA)で測定することができる。
【0038】
なお、上記したガラスフリットの軟化点や熱膨張係数については、ガラスフリットの組成を検討することによって制御することが可能である。
【0039】
厚膜抵抗体用組成物におけるガラスフリットの含有量についても、得られる厚膜抵抗体における所望の抵抗値、導電性粉末およびガラスフリットの種類および粒径に応じて、適宜調整される。たとえば、面積抵抗値が5kΩ以上の高抵抗の抵抗体を得る場合には、通常、導電性粉末の含有量に応じて、ガラスフリットの含有量は、70質量%以上95質量%以下となる。
【0040】
[任意の含有成分]
本発明の厚膜抵抗体用組成物において、導電性粉末とガラスフリットのほかに、酸化チタン(TiO)や酸化ニオブ(Nb)を添加することもできる。特に、酸化チタン(TiO)や酸化ニオブ(Nb)は、電流ノイズを低減する効果を有するが、TCRをマイナス(−)側に移動させるという問題がある。本発明の厚膜抵抗用組成物において、ガラスフリット中に酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有させることで、酸化チタン(TiO)や酸化ニオブ(Nb)の添加量を増やすことができ、TCRをゼロに近く保ちながら、電流ノイズを小さくすることが可能となる。
【0041】
その他にも、たとえば、面積抵抗値や抵抗温度係数などの電気的特性の調整、膨張係数の調整、耐電圧性の向上、その他の改質を目的として、本発明の厚膜抵抗体用組成物において、導電性粉末とガラスフリットのほかに、酸化錫(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化銅(CuO、CuO)などの無機成分を適宜含有することができる。
【0042】
これらの無機成分の含有量は、導電性粉末とガラスフリットの合計質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下の範囲とすることが一般的である。
【0043】
(2)厚膜抵抗体用ペースト
本発明の厚膜抵抗体用ペーストは、厚膜抵抗体用組成物と有機ビヒクルとを含み、該厚膜抵抗体用組成物として、上記の本発明の厚膜抵抗体用組成物が用いられていることを特徴とする。具体的には、本発明の厚膜抵抗体用ペーストは、本発明の厚膜抵抗体用組成物と有機ビヒクルの混練物により構成される。以下、詳細を説明する。
【0044】
[有機ビヒクル]
厚膜抵抗体用ペーストを構成する有機ビヒクルは、少なくとも樹脂と溶剤により構成される。
【0045】
有機ビヒクルとして用いることができる樹脂としては、エチルセルロース樹脂、ブチラール樹脂(ポリビニルブチラール)、アクリル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、ガラスが軟化する前の温度で分解する樹脂が好ましい。より好ましくは、500℃以下の温度で分解する樹脂が好ましい。
【0046】
樹脂を溶解する溶剤としては、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテートなどを用いることができる。
【0047】
これらの樹脂と溶剤により調合された有機ビヒクルの樹脂と溶剤の配合比は、所望する粘度や用途によって適宜調整することができる。
【0048】
また、厚膜抵抗体用ペーストに要求される連続印刷性を考慮し、ペーストの乾燥速度を制御する観点から、高い沸点を有する可塑剤をさらに加えることができる。この場合の可塑剤の配合比も、所望する乾燥速度に応じて適宜調整することができる。
【0049】
厚膜抵抗体用ペーストに対する有機ビヒクルの割合は特に限定されることはないが、厚膜抵抗体用ペーストの質量に対して、30質量%以上50質量%以下とすることが一般的である。
【0050】
[その他の成分]
本発明の厚膜抵抗体用ペーストは、厚膜抵抗体用組成物と有機ビヒクルのほかに、添加剤を含むことができる。たとえば、導電性粉末やその他の無機成分などの凝集を防ぐ観点から、分散剤を含むことができる。また、塗布作業性の観点から、レオロジーコントロール剤を含むことができる。
【0051】
[厚膜抵抗体用ペーストの調製方法]
厚膜抵抗体用ペーストの調製は、公知の技術を用いればよく、たとえば、3本ロールミル、ボ−ルミルなどを用いることができる。
【0052】
厚膜抵抗体用ペーストでは、導電性粉末、ガラスフリット、その他の無機成分などの凝集を解し、これらを有機ビヒクル中に分散させることが望ましい。
【0053】
(3)厚膜抵抗体
本発明の厚膜抵抗体は、導電性成分とガラス成分を含む焼成体からなり、前記導電性成分は、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含み、前記ガラス成分は、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有する、ことを特徴とする。すなわち、本発明の厚膜抵抗体は、本発明の厚膜抵抗体用ペーストを用いて形成され、本発明の厚膜抵抗体用組成物を含む焼成体により構成される。
【0054】
したがって、導電性成分は、本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成する導電性粉末と同様の組成となり、ガラス成分は、本発明の厚膜抵抗体用組成物を構成するガラスフリットと同様の組成となる。このため、導電性成分およびガラス成分についての説明は、ここでは省略する。
【0055】
以下、厚膜抵抗体の製造方法について説明する。なお、厚膜抵抗体の抵抗値は、厚膜抵抗体中の導電性粉末とガラスフリットの割合で適宜調整することが可能である。
【0056】
[厚膜抵抗体の製造方法]
本発明の厚膜抵抗体の製造方法は、以下の内容に限定されるものではなく、処理条件などについては、公知の手段および方法を用いて、適宜変更することができる。
【0057】
まず、厚膜抵抗体用ペーストを基板に塗布する塗布工程を行う。すなわち、アルミナなどのセラミックス基板上に銀(Ag)、パラジウム(Pd)などからなる電極を形成し、その上に、本発明の厚膜抵抗体用ペーストを、スクリーン印刷などの手段により塗布する。
【0058】
次に、厚膜抵抗体用ペーストが塗布された基板を焼成する焼成工程を行い、厚膜抵抗体を作製する。具体的には、塗布工程において、基板に塗布された厚膜抵抗体用ペーストを、オーブンなどを用いて乾燥させて、その後、ベルト炉などを用いて焼成して、導電性成分とガラス成分とを含む焼成体を得る。なお、基本的には、厚膜抵抗体用ペーストに含まれていた、導電性粉末およびガラスフリットに起因する以外の成分、すなわち、有機ビヒクルを構成する樹脂および溶剤、さらには、その他の有機物添加剤は、焼成工程を経てすべて分解される。
【0059】
以上のような工程により、本発明の厚膜抵抗体が得られる。
【0060】
本発明の厚膜抵抗体によれば、二酸化ルテニウム、ルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、およびルテニウム酸バリウムから選択される少なくとも1種を含む導電性成分と、鉛を実質的に含まず、かつ、酸化ビスマスを1質量%以上5質量%以下含有するガラス成分とにより少なくとも構成され。よって、鉛を含有せず、かつ、抵抗値が高く、電流ノイズが小さく、良好な電気的特性を有する厚膜抵抗体が提供される。
【0061】
本発明の厚膜抵抗体は、導電性成分とガラス成分のほかに、酸化チタン(TiO)や酸化ニオブ(Nb)を含むことができる。
【0062】
以上においては、主として特定の実施形態を用いて本発明について説明を行い、また、本発明を実施するための最良の構成、方法などについて開示を行った。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成に関して、当業者が、省略、追加、変更ないしは修正を加えることは可能であり、これらについても、本発明の範囲に包含される。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例および比較例によって,本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0064】
[厚膜抵抗体用組成物の作製]
(導電性粉末)
二酸化ルテニウムは、水酸化ルテニウムを大気中にて800℃で2時間焙焼することにより作製した。そのBET平均粒径は、0.050μmであった。
【0065】
その他の導電性粉末は、二酸化ルテニウムと、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、または炭酸バリウムとを混合し、得られた混合物を800℃で2時間焙焼することにより作製した。その後、粉砕することによって粒径を調整した。それぞれのBET平均粒径に関しては、ルテニウム酸カルシウムが0.054μm、ルテニウム酸ストロンチウムが0.059μm、ルテニウム酸バリウムが0.058μmであった。
【0066】
(ガラスフリット)
表1に、本発明の実施例および比較例で用いた、7種類(a〜g)のガラスフリットの組成を示す。ガラスフリットは、通常の手段である混合、溶融、急冷、および粉砕の工程を経ることによって作製した。なお、粉砕工程において、それぞれのガラスフリットを、粒径がレーザ回折式粒度分布測定によるD50(メジアン径)で2μm以下(1.2μm〜1.7μm)となるまで粉砕した。
【0067】
(有機ビヒクル)
有機ビヒクルとして、エチルセルロースをターピネオールに溶解したものを使用した。混合比は、エチルセルロース:ターピネオールを1:9とした。
【0068】
[厚膜抵抗体用ペーストの作製]
厚膜抵抗体の目標とする焼成後の膜厚および面積抵抗値を、それぞれ7μm〜9μmおよび10kΩ(±15%)に設定し、実施例1〜13、および、比較例1〜6として、上述した導電性粉末、ガラスフリット、および、無機成分としての酸化チタンを、表2に示す割合で含有する厚膜抵抗体用組成物と、有機ビヒクルとを、表2に示す割合で混合し、3本ロ−ルミルで混練して、厚膜抵抗体用抵抗ペーストを作製した。
【0069】
[厚膜抵抗体の作製]
実施例1〜13、および、比較例1〜6のそれぞれについて、あらかじめAgPdペーストを用いて電極を形成しておいたアルミナ基板上に、上記の通りに作製した厚膜抵抗体用ペーストを、幅1mmで、電極間が1mm(1mm×1mm)となるサイズにスクリ−ン印刷により塗布し、その後、基板に塗布された厚膜抵抗体用ペーストを、オーブンを用いて150℃で10分間乾燥した後、ベルト焼成炉を用いて、ピ−ク温度850℃、ピーク時間9分、焼成時間をトータルで30分とする条件にて、焼成することにより、表2に示す厚膜抵抗体をそれぞれ作製した。
【0070】
[厚膜抵抗体の評価]
それぞれの実施例および比較例で製造した厚膜抵抗体の電気特性を評価するため、それぞれの厚膜抵抗体について、以下のように、面積抵抗値、抵抗温度係数(TCR)、電流ノイズを測定した。
【0071】
(面積抵抗値)
厚膜抵抗体の面積抵抗値は、マルチメータ(KEITHLEY社製、Model2001)を用いて、4端子法にて測定した。
【0072】
(抵抗温度係数)
抵抗温度係数は、次のように計算した。
【0073】
高温抵抗温度係数(HTCR)=[(R125−R25)/R25(125−25)]×10 (ppm/℃)
【0074】
低温抵抗温度係数(CTCR)=[(R−55−R25)/R25(−55−25)]×10 (ppm/℃)
【0075】
ここで、R25は25℃での抵抗値、R125は125℃での抵抗値、R−55は−55℃での抵抗値である。
【0076】
(電流ノイズ)
電流ノイズは、ノイズメータ(Quan−Tech社製、Model315C)を用いて、1/10W印加にて測定した。
【0077】
実施例1〜13、および、比較例1〜6について、面積抵抗値、抵抗温度係数、および電流ノイズのそれぞれの測定結果を、表3に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
[考察]
以上の本発明の実施例と比較例で作製された厚膜抵抗体の電気的特性から酸化ビスマス(Bi)を含むガラス成分を含有している厚膜抵抗体(実施例1〜13は、ガラス成分に酸化ビスマスを含まない比較例1〜6との比較において、面積抵抗値が所望の値である10kΩ±15%にあり、かつ、TCRが±60ppm/℃以下と、同程度でありながら、電流ノイズが−10dB以下と、十分に小さくなっており、厚膜抵抗体として優れていることが理解される。なお、酸化ビスマス含有量の多い比較例5は、酸化ビスマスの含有量の増加に応じて、導電性粉末の含有量が少なくなったため、電流ノイズが増大していた。