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特開2020-143193係合部を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-143193(P2020-143193A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】係合部を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20200814BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20200814BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20200814BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20200814BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20200814BHJP
【FI】
   C08L67/03
   C08L33/06
   C08K7/14
   C08K7/16
   B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-39170(P2019-39170)
(22)【出願日】2019年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA24
4F206AA25
4F206AA45
4F206AB25
4F206AR12
4F206JA07
4F206JF01
4J002BG032
4J002CD05
4J002CF051
4J002DL006
4J002EJ060
4J002FA046
4J002FA082
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】耐ヒートショック性及び組立性(係合部の割れ耐性)に優れ、製造時においてイソシアネートガスなどの有害ガスを発生しない、係合部を有する成形品を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と、(B)コア層のゴムがアクリル系ゴムでありシェル層の成分が反応性官能基を有する、平均粒子径0.3μm以下のアクリル系コアシェル型ポリマーと、(C)ガラス繊維とを含み、カルボジイミド化合物を含まないポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物からなることを特徴とする、係合部を有する成形品により、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と、
(B)コア層のゴムがアクリル系ゴムでありシェル層の成分が反応性官能基を有する、平均粒子径0.3μm以下のアクリル系コアシェル型ポリマーと、
(C)ガラス繊維とを含み、
カルボジイミド化合物を含まないポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物からなることを特徴とする、
係合部を有する成形品。
【請求項2】
アクリル系ゴムが、アクリル酸C〜C12アルキルエステルを主成分とするポリマーである、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
シェル層の成分が、0℃以上のガラス転移温度を有する硬質樹脂成分である、請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
反応性官能基が、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、酸無水物基、酸塩化物基からなる群から選択される一種以上の反応性官能基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係合部を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品に関する。詳しくは、耐ヒートショック性及び他部材との組立性のいずれにおいてもバランス良く優れた係合部を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂成品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」とも呼ぶ)などのポリアルキレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、電気的性質、その他物理的、化学的性質に優れ、かつ、加工性が良好であるため、エンジニアリングプラスチックとして自動車部品、電気・電子部品等の広範な用途に使用されている。特に、外部からの水分や埃、または衝撃等によるダメージを保護する目的で、電子部品が搭載された基板を収容するケース材及び、センサーケースやコネクター端子等が内包されるインサート成形品、ギヤやモーターなどを保護するアクチュエーターケース等の用途において好ましく用いられている。
【0003】
一方でこれらの成形品には、自動車のエンジンルーム内や屋外など温度変化の厳しい環境下での使用に耐えるべく、耐ヒートショック性の更なる改善や、ケースとしての使用に必要な耐衝撃性も求められている。これらの要求に対し、例えば、特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、耐衝撃改良剤として熱可塑性エラストマー又はコアシェルポリマーを所定量配合したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されており、特許文献2、3には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、コア層がアクリル系ゴムで構成された、特定の粒子径を有するコアシェル型ポリマーと、ガラス繊維を所定量配合したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また特許文献4には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、カルボジイミド化合物と、繊維状充填剤と、エラストマーを配合してなる、耐ヒートショック性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
【0005】
一方、従来から、2つのユニット、部品等をスナップフィット構造(一方に設けた穴等に他方に設けた突起またはフックを係合させる構造)により係合させて組み付けるためのスナップフィッティングが多用されている。また、ボスやリブ等の凹凸形状部を相手部材の対応形状部と係合させるといった構造も多用されている。スナップフィッティングを構成する被係合部材が、あるいは係合部材と被係合部材の両者が樹脂製の場合には、両者の弾力性を利用して係合や取り外しが容易であること、振動に対して疲労しにくいこと等から、車載用コネクターやスパイラルハンガー用クイックジョイント等に使用されている。また、センサーやアクチュエーターケースにおいても、内蔵部品を固定するためのサポートやボス、軸受け等の係合部が樹脂で設けられる場合がある。ただし、これらにおいて部品を組み付ける際、使用する樹脂によっては係合部が折損してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−169367号公報
【特許文献2】特開2009−155448号公報
【特許文献3】国際公開2008/032636号パンフレット
【特許文献4】国際公開2009/150831号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐ヒートショック性及び組立性(係合部の割れ耐性)に優れ、製造時においてイソシアネートガスなどの有害ガスを発生しない、係合部を有する成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と、(B)コア層のゴムがアクリル系ゴムでありシェル層の成分が反応性官能基を有する、平均粒子径0.3μm以下のアクリル系コアシェル型ポリマーと、(C)ガラス繊維とを含み、カルボジイミド化合物を含まないポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物からなることを特徴とする、係合部を有する成形品により、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)に関する。
(1)(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と、(B)コア層のゴムがアクリル系ゴムでありシェル層の成分が反応性官能基を有する、平均粒子径0.3μm以下のアクリル系コアシェル型ポリマーと、(C)ガラス繊維とを含み、カルボジイミド化合物を含まないポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物からなることを特徴とする、係合部を有する成形品。
(2)アクリル系ゴムが、アクリル酸C〜C12アルキルエステルを主成分とするポリマーである、(1)に記載の成形品。
(3)シェル層の成分が、0℃以上のガラス転移温度を有する硬質樹脂成分である、(1)または(2)に記載の成形品。
(4)反応性官能基が、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、酸無水物基、酸塩化物基からなる群から選択される一種以上の反応性官能基である、(1)から(3)のいずれか一項に記載の成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐ヒートショック性及び組立性(係合部の割れ耐性)に優れ、製造時においてイソシアネートガスなどの有害ガスを発生しない、係合部を有する成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スナップフィット評価用成形片を示す図である。
図2】スナップフィット挿入試験の状態を示す模式図である。
図3】耐ヒートショック性試験で用いた試験片を示す図であって、(A)は上面図であり、(B)は(A)におけるB−B線で切断した断面図であり、(C)は(A)におけるC−C線で切断した断面図である。
図4図3に示す試験片で用いたインサート部材を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
<ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物>
本発明の実施形態のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂と、(B)コア層のゴムがアクリル系ゴムでありシェル層の成分が反応性官能基を有する、平均粒子径0.3μm以下のアクリル系コアシェル型ポリマーと、(C)ガラス繊維とを含み、カルボジイミド化合物を含まない。以下、ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
[(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂]
本発明の実施形態に係るポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物のベース樹脂である(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる熱可塑性ポリエステル樹脂のうち、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、ジオール成分としてアルキレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするものである。
【0015】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、主成分以外のジカルボン酸成分やジオール成分、さらに他の共重合可能なモノマーとして、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等(以下、共重合性モノマーという場合がある)を組み合わせたコポリエステルも使用できる。
【0016】
主成分以外のジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドテカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などのC4−40程度のジカルボン酸、好ましくはC4−14程度のジカルボン酸)、脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などのC4−40程度のジカルボン酸、好ましくはC8−12程度のジカルボン酸)、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、メチルイソフタル酸、メチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’−ジオキシ安息香酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸などのC8−16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)などが挙げられる。テレフタル酸と組み合わせて用いるのに好ましいジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらを二種以上組み合わせて用いることもできる。ただし、共重合性モノマーとしてのジカルボン酸成分全体の好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸化合物であるとよい。さらに必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリアルキレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
【0017】
主成分以外のジオール成分としては、脂肪族アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどのC2−12程度の脂肪族ジオール、好ましくはC2−10程度の脂肪族ジオールのうち、主成分として使用するもの以外の脂肪族アルカンジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(C2−4程度のオキシアルキレン単位を複数有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)などが挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−( 4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを併用してもよい。ただし、共重合性モノマーとしてのジオール成分全体の好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上がアルキレングリコールであるとよい。さらに必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状の熱可塑性ポリエステル樹脂を得ることもできる。
【0018】
オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトン等が含まれる。
【0019】
なお、コポリエステルにおいて、共重合性モノマーの割合は、例えば、0.01モル%以上30モル%以下程度の範囲から選択でき、通常、1モル%以上25モル%以下程度、好ましくは3モル%以上20モル%以下程度、更に好ましくは5モル%以上15モル%以下程度である。また、ホモポリエステルとコポリエステルとを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.01モル%以上30モル%以下(好ましくは1モル%以上25モル%以下程度、更に好ましくは3モル%以上20モル%以下程度、特に好ましくは5モル%以上15モル%以下程度)となる範囲であり、通常、前者/後者=99/1〜1/99(質量比)、好ましくは95/5〜5/95(質量比)、更に好ましくは90/10〜10/90(質量比)程度の範囲から選択できる。
【0020】
好ましいポリアルキレンテレフタレート樹脂には、アルキレンテレフタレート単位を主成分(例えば、50〜100モル%、好ましくは75〜100モル%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート)などのホモポリエステル、アルキレンテレフタレート単位を主成分として共重合成分にアルキレンイソフタレート単位を含有するコポリエステル、アルキレンテレフタレート単位を主成分として共重合成分にアルキレンナフタレート単位を含有するコポリエステル]が含まれ、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
特に好ましいポリアルキレンテレフタレート樹脂は、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレートなどのC2−4アルキレンテレフタレート単位を80モル%以上(特に90モル%以上)含むホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂など)である。
【0022】
これらの内、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、特にポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0023】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量が多過ぎると、耐加水分解性を損なう可能性がある。
【0024】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の効果を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.6〜1.3dL/gであるのが好ましく、0.7〜1.2dL/gであるのがより好ましい。かかる範囲の固有粘度のポリアルキレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.8dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0025】
なお、ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、市販品を使用してもよく、ジカルボン酸成分又はその反応性誘導体と、ジオール成分又はその反応性誘導体と、必要により共重合可能なモノマーとを、慣用の方法、例えばエステル交換、直接エステル化法等により共重合(重縮合)することにより製造したものを使用してもよい。
【0026】
[(B)アクリル系コアシェル型ポリマー]
コアシェル型ポリマーは、コア層(コア部)と、このコア層(コア層の表面)の一部又は全部を被覆するシェル層とを含む多層構造を有するポリマーである。コアシェル型ポリマーにおいて、好ましくは、コア層はゴム成分(軟質成分)を有し、シェル層は好ましくは硬質成分で構成される。
【0027】
コア層は、通常、ゴム成分で構成されている場合が多く、本発明の実施形態では、アクリル系ゴムが用いられる。ゴム成分のガラス転移温度は、例えば、好ましくは0℃未満(例えば、−10℃以下)、より好ましくは−20℃以下(例えば、−180〜−25℃程度)、更に好ましくは−30℃以下(例えば、−150〜−40℃程度)である。
【0028】
ゴム成分として用いられ得るアクリル系ゴムは、アクリル系モノマー[特に、アルキルアクリレート(ブチルアクリレート等のアクリル酸C〜C12アルキルエステル、好ましくはアクリル酸C〜Cアルキルエステル、更に好ましくはアクリル酸C〜Cアルキルエステル)等のアクリル酸エステル]を主成分とするポリマーである。アクリル系ゴムは、アクリル系モノマーの単独又は共重合体(アクリル系モノマー同士の共重合体、アクリル系モノマーと他の不飽和結合含有モノマーとの共重合体等)であってもよく、アクリル系モノマー(及び他の不飽和結合含有モノマー)と架橋性モノマーとの共重合体であってもよい。
【0029】
架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸系単量体{多官能性(メタ)アクリレート[例えば、ブチレンジ(メタ)アクリレート等のアルキレン(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(又はオリゴ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(ポリ)ヒドロキシアルカンポリ(メタ)アクリレート等]のビニル系単量体(例えば、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等);グリシジル(メタ)アクリレート等}、重合性不飽和結合を有する加水分解縮合性化合物[例えば、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤(3−トリメトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシラン等)等]、アリル系化合物(例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、モノアリルマレート、モノアリルフマレート、トリアリル(イソ)シアヌレート等)等が挙げられる。これらの架橋性モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0030】
アクリル系ゴムにおいて、アクリル酸エステル(特に、アルキルアクリレート)の割合は、アクリル系ゴム全体に対して、例えば、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜99質量%、更に好ましくは80〜98質量%程度である。また、アクリル系ゴムにおいて、架橋性モノマーの割合は、アクリル酸エステル100質量部に対して、例えば、より好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜5質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部程度である。
【0031】
なお、コア層は、アクリル系ゴムを主成分とする場合であっても、さらに非ゴム成分(例えば、後述の硬質樹脂成分)を含んでいてもよい。
【0032】
コア層の構造は、均一な構造であってもよく、不均一な構造(サラミ構造等)であってもよい。
【0033】
コアシェル型ポリマーにおいて、シェル層は、通常、硬質樹脂成分(またはガラス状樹脂成分)で構成されていることが多い。硬質樹脂成分のガラス転移温度は、例えば、0℃以上(例えば、20℃以上)の範囲から選択でき、例えば、30℃以上(例えば、30〜300℃程度)、好ましくは50℃以上(例えば、60〜250℃程度)、更に好ましくは70℃以上(例えば、80〜200℃程度)である。
【0034】
このような硬質樹脂成分は、通常、ビニル系重合体(ビニル系単量体の重合体)で構成されている。ビニル系重合体(樹脂)において、ビニル系単量体(ビニル系モノマー)としては、ビニル系重合体を上記のようなガラス転移温度に調整できる限り特に限定されず、例えば、メタクリル系モノマー[例えば、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のC〜C20アルキルメタクリレート、好ましくはC〜C10アルキルメタクリレート、更に好ましくはC〜Cアルキルメタクリレート)、アリールメタクリレート(フェニルメタクリレート等)、シクロアルキルメタクリレート(シクロヘキシルメタクリレート等)等のメタクリル酸エステル等]等の他、前記例示のモノマー[例えば、アクリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー(例えば、スチレン等)、オレフィン系モノマー、シアン化ビニル系モノマー(例えば(メタ)アクリロニトリル等)]等が挙げられる。これらビニル系単量体は、単独又は2種以上組み合わせて使用されてもよい。ビニル系単量体は、メタクリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、シアン化ビニル系モノマーから選択された少なくとも1種[特に、少なくともメタクリル酸エステル(メチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート等)]を重合成分とする重合体である場合が多い。
【0035】
シェル層は、コア層の一部又は全部を被覆していれば、単一の層であってもよく、複数の層で形成されていてもよい。
【0036】
コアシェル型ポリマーにおいて、コア層とシェル層の合計に対するコア層の成分の割合は、80質量%超100質量%未満が好ましく、より好ましくは85質量%以上95質量%以下(例えば約90質量%)、更に好ましくは90質量%以上92質量%以下である。コア層の割合が80質量%超であると、耐ヒートショック性の改善効果が十分得られやすい。コア層の割合が95質量%以下であれば、コアシェル型ポリマーの製造における難易度の点で有利となるため、入手性や品質安定性の面で好ましい。なお、コア層とシェル層の各成分の割合は、H−NMRのチャートにおける各構成成分由来のピーク部の積分値から算出するという分析により確認することが可能だが、通常、コアシェル型ポリマーを製造する際の各モノマーの配合比率にほぼ一致するため、これを元に算定することも可能である。
【0037】
本発明の実施形態において、(B)コアシェル型ポリマーが、シェル層の成分に反応性官能基を有しているため、樹脂組成物の耐ヒートショック性が特に優れている。
【0038】
前記反応性官能基の種類としては、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、酸無水物基、酸塩化物基等が挙げられ、中でもエポキシ基が好ましい。前記反応性官能基の量は、コアシェル型ポリマー100gに対し1mmol以上40mmol以下であることが好ましく、さらに好ましくは2mmol以上20mmol以下であり、またさらに好ましくは3mmol以上15mmol以下である。1mmol以上の官能基を有することで、耐ヒートショク性はさらに優れる傾向にある。一方、40mmol以下であるとき、樹脂組成物の流動性が低下しにくい傾向にあるため好ましい。
【0039】
本発明の実施形態において、(B)コアシェル型ポリマーの平均粒子径は、0.3μm以下である。平均粒子径が0.3μmを超えている場合、組立性(係合部の割れ耐性)に劣ることがある。平均粒子径が0.3μm以下である場合、そのようなコアシェル型ポリマーを製造することが比較的容易であり、製造コストの面でも好ましい。また、平均粒子径が0.3μm以下であれば、得られるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物が組立性(係合部の割れ耐性)に優れたものとなる。(B)コアシェル型ポリマーの平均粒子径の下限値は特に限定されないが、0.01μm未満の場合、製造時の粒子径制御が難しくなるため、製造コストの面では、平均粒子径が0.01μm以上であることが好ましい。なお、本発明において「平均粒子径」はラテックスの状態のコアシェル型ポリマーを、日機装株式会社製MICROTRAC UPA150を用いて測定した体積平均粒子径(μm)を指す。
【0040】
このようなコアシェル型ポリマーは、特に、シェル層が硬質成分で構成される場合、硬質成分であるシェルにより粒子径が安定化されるため、押出時や成形時の溶融混練条件によるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物中における分散状態(平均粒子径)のバラつきが抑えられる点で、他のエラストマーに対し有利である。
【0041】
[(C)ガラス繊維]
ガラス繊維は、ガラスを融解、牽引して繊維状にしたものである。繊維状にして使われる場合、一般のアルカリガラスでは表面の劣化による強度の低下が著しいため、原料として使用されるガラスには、石英ガラスなどの無アルカリガラスが使われることが好ましい。またガラス繊維は、入手性や強度及び剛性の面から、好適に使用できる。
【0042】
[カルボジイミド化合物]
カルボジイミド化合物は、化学式−N=C=N−で表される官能基を含む化学物質の総称である。有機合成化学において、カルボジイミド化合物は脱水縮合剤として主に用いられる。よく使われる例としてはカルボン酸に対するアミド結合、もしくはエステル結合形成の促進である。カルボジイミド化合物をポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物中に添加する場合、耐加水分解性や耐ヒートショック性の向上効果が得られるが、当該樹脂組成物の成形時等に、カルボジイミド化合物に由来する有毒なイソシアネートガスが発生するといった不都合が生じる。本実施形態においては、カルボジイミド化合物を用いないことにより、係合部を有する成形品の製造時において、イソシアネートガスなどの有害ガスを発生しないという効果を得ることが可能である。
【0043】
[その他の成分]
本発明の実施形態のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、耐加水分解性改善剤(例えば、エポキシ樹脂等)、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、染料や顔料等の着色剤、離型剤、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することが可能である。
【0044】
[調製方法]
本発明の実施形態のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物は、従来、樹脂組成物を調製するために一般に用いられる設備及び方法を用いて容易に調製できる。例えば、各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練り混み、押し出してペレットを調製した後、成形する方法、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1種又は2種以上を直接投入する方法等、いずれも使用することが可能である。
【0045】
<成形品>
本発明の実施形態の成形品は、本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法は特に限定されず、公知の成形方法を採用することができる。本発明の実施形態に係る成形品は、好ましくは、本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物と金属又は無機固体からなるインサート部材とをインサート成形してなるインサート成形品である。金属及び無機固体は特に限定されず、金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、銅等が例示され、樹脂基板上に形成された電子回路などの金属導体部もこれに含まれる。無機固体としては、セラミック等が例示される。インサート成形は、従来公知の方法で行うことができる。
【0046】
[スナップフィット部]
本発明のスナップフィット部の取り付けられる対象物は特に限定されない。係合部及び被係合部が板状物、管状物、筺状物に取り付けられていてもよく、あるいはこれらを組み合わせて使用することもできる。係合部及び被係合部は嵌着、脱着が可能であっても、脱着できなくてもよい。これらの物体に取り付けられるスナップフィット部の数には特に制限はなく1以上必要な個数である。スナップフィット部を複数設ける場合には、力のバランス、使用時に外れにくいことなどを考慮して、対称の位置やパイプでは180度ずらした位置に等に設けることができる。
【0047】
本発明のスナップフィット部は、具体的には、車輌のハーネス(配線)のコネクター、スパイラルハンガー用クイックジョイント、配管のフィッティング、平面部に対する筐体状カバー、テレビ等とアンテナとの配線のジョイント、アース線の延長等に使用される。なお、スナップフィット部は、成形品の一部に設けられるが、成形時に一体として設けられてもよいし、後から融着、接着、ねじ込み、ネジ止め等の固定手段によって設けてもよい。また、スナップフィット部を管の端部等に設ける場合、管の内面が細くならないように、スナップフィット部の一部が管の外側に出っ張るようにすることもできるし、管の外面に出っ張りがあっては困る場合には、管の内側に出っ張るようにすることができる。
【0048】
[実施例]
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<材料>
・(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂
ウィンテックポリマー(株)製 PBT樹脂、固有粘度0.69dl/g、末端カルボキシル基量24meq/kg
・(B)アクリル系コアシェル型ポリマー
B−1:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が90質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径3μm
B−2:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が90質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径20μm
B−3:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が90質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径30μm
B−4:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が80質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径0.1μm
B−5:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が80質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径0.2μm
B−6:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が80質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径0.5μm
B−7:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が80質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径1.4μm
B−8:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が80質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径3.3μm
B−9:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が80質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径10.5μm
B−10:コア層にブチルアクリレート重合体(アクリル系ゴム)、シェル層にメチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体(ビニル系共重合体)を使用し、コア層の比率が90質量%であり、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの比率が9質量%:1質量%であるアクリル系コアシェル型ポリマー、平均粒子径3μm
・(C)ガラス繊維
日本電気硝子(株)製、製品名:ECS03T−187
・酸化防止剤
BASFジャパン(株)製、製品名:Irganox1010
・耐加水分解性改善剤
三菱化学(株)製エポキシ樹脂、製品名:エピコートJER1004K
【0050】
<実施例1、比較例1〜9>
(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、各成分を表1に示す割合で混合した後、30mmφの2軸押出機(日本製鋼所製TEX−30)を用いて、シリンダー温度260℃、吐出量15kg/h、スクリュ回転数130rpmで溶融混練して押出し、ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物からなるペレットを得た。次いで、このペレットから射出成形により各種試験片を作製し、下記物性の評価を行った。結果をあわせて表1に示す。
【0051】
[溶融粘度]
上記ペレットを140℃で3時間乾燥後、ISO11443に準拠し、キャピログラフ1B(東洋精機製作所社製)を用いて、炉体温度260℃、キャピラリーφ1mm×20mmL、剪断速度1000sec−1にて溶融粘度を測定した。
【0052】
[引張強さ]
上記ペレットを140℃で3時間乾燥後、樹脂温度260℃、金型温度80℃、射出時間15秒、冷却時間15秒で、ISO3167引張試験片を射出成形し、ISO527−1,2に準拠して、引張強さを測定した。
【0053】
[組立性(係合部割れ耐性)]
図1に示すようなスナップフィット評価用成形品を使用し、スナップフィット挿入試験を行った。スナップフィット挿入試験は、図1の成形片を用い、図2に示すように挿入力Faを加えスナップフィットを組み付けた際に、スナップフィット部が折れるかどうかで判断した。試験はn=5で行い、1本も折れがなかったものを○、1本でも折れたものを×とした。
【0054】
[耐衝撃性(シャルピー衝撃強度)]
上記ペレットを成形温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、シャルピー衝撃試験片を作製し、ISO179/1eAに準拠して、23℃でシャルピー衝撃強度を測定した。
【0055】
[耐ヒートショック性]
上記ペレットと、L字型板状の金属製インサート部材とを用い、射出成形により図3,4に示す試験片をインサート成形し、耐ヒートショック性を評価した。図3は、インサート成形した試験片20を示す図であり、(A)は上面図であり、(B)は(A)におけるB−B線で切断した断面図であり、(C)は(A)におけるC−C線で切断した断面図である。図4は、インサート部材22を示す図である。樹脂部材21は、上記のようにして得られた樹脂組成物ペレットを用いて成形されたものである。上記ペレットを用いて、樹脂温度260℃、金型温度65℃、射出時間25秒、冷却時間10秒で、試験片成形用金型[幅w1 25mm×L1 70mm×L2 70mm、厚さt1 3.6mmのL字型板状樹脂部の内部に、幅w2 21mm×L3 90mm×L4 90mm、厚さt2 1.6mm(断面の幅w2/厚さt2比が13.1)のL字型鉄板をインサートする金型]に、一部の樹脂部の厚さTが最小肉厚として1mmとなるようにインサート射出成形して試験片20を製造した。図4に示すL字型板状インサート部材の両端部近傍にある2つ穴h1、h2は、金型内のピンに嵌め込んでインサート部材22を固定するためのものである。図3に示す樹脂部材21の穴h3は、金型内のピンでL字型板状インサート部材22を押さえ付けて固定し、その状態で樹脂を充填したとき、樹脂がピンを回り込んで流動したことで形成されたものである。また、図3(A)には、樹脂を充填するサイドゲートS1(幅:4mm、厚さ:3mm)の位置を一点鎖線で示している。当該サイドゲートSは、樹脂部21の右側面下端部からの距離d1が1mmとなる上方に位置している。
得られた試験片20について、冷熱衝撃試験機を用いて、140℃にて1時間30分加熱後、−40℃に降温して1時間30分冷却し、更に、140℃に昇温する過程を1サイクルとする耐ヒートショック試験を行い、成形品にクラックが入るまでのサイクル数を測定して、5個のサンプルの平均破壊寿命が100サイクル以上のものを〇、100サイクル未満のものを×として評価した。
【0056】
[イソシアネートガス]
射出成形時に吸引ポンプ(0.25L/min)に繋いだジーエルサイエンス社製TENAX−TA管を用いて1Lの臭気を捕集し、ゲステル社製TDS3/CISで加熱脱着後、アジレントテクノロジー社製GC−MS(HP7890/5975C)にてイソシアネートを同定した。イソシアネートが検出されなかったものを〇、イソシアネートが検出されたものを×として評価した。
【0057】
【表1】
図1
図2
図3
図4