【実施例】
【0049】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0050】
<実施例1−1>
非対称性イミドとして、フッ素イオンを9ppm及び水素を8ppmそれぞれ含む「化合物1」1.0モルの単独塩に水16.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0051】
<実施例1−2>
対称性イミドとして、表1に「化合物3」として示されるカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CF
3SO
2)
2NK)を用いた。実施例1−1と同じ「化合物1」0.8モルと、フッ素イオンを8ppm及び水素を4ppmそれぞれ含む「化合物3」0.2モルとを混合した混合塩に水13.5モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0052】
<実施例1−3>
実施例1−1と同じ「化合物1」0.6モルと、実施例1−2と同じ「化合物3」0.4モルとを混合した混合塩に水11.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0053】
<実施例1−4>
実施例1−1と同じ「化合物1」0.4モルと、実施例1−2と同じ「化合物3」0.6モルとを混合した混合塩に水22.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0054】
<実施例1−5>
実施例1−1と同じ「化合物1」0.2モルと、実施例1−2と同じ「化合物3」0.8モルとを混合した混合塩に水34.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0055】
<実施例1−6>
フッ素イオンを26ppm及び水素を11ppmそれぞれ含む「化合物1」0.8モルと、フッ素イオンを12ppm及び水素を30ppmそれぞれ含む「化合物3」0.2モルとを混合した混合塩に水13.5モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0056】
<実施例1−7>
実施例1−6と同じ「化合物1」0.6モルと、実施例1−6と同じ「化合物3」0.4モルとを混合した混合塩に水11.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0057】
<実施例1−8>
実施例1−6と同じ「化合物1」0.4モルと、実施例1−6と同じ「化合物3」0.6モルとを混合した混合塩に水22.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0058】
<比較例1>
実施例1−2と同じ対称性イミド構造のカリウム塩である「化合物3」1モルの単独塩に水42.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0059】
図1に、化合物1と化合物3の混合塩である実施例1−2〜1−5、化合物1の単独塩である実施例1−1、及び化合物3の単独塩である比較例1のカリウム塩の各組成比と溶解に必要なそれぞれの水分量を示す。
図1において、縦軸は(水のモル数)/(全カリウム塩のモル数)を示し、横軸は化合物1と化合物3の合計量に対する化合物1のモル比を示す。
図1から、実施例1−2〜1−5の混合塩又は実施例1−1の非対称性イミド構造の単独塩では、(水のモル数)/(全カリウム塩のモル数)が11.0〜34.0で水溶液になることが実証された。一方、比較例1の対称性イミド構造の単独塩では(水のモル数)/(全カリウム塩のモル数)が42.0にならないと水溶液にならないことが実証された。
【0060】
<実施例2>
実施例1−1と同じ「化合物1」0.12モルと、実施例1−2と同じ「化合物3」0.08モルと、スルホン酸カリウム塩として、フッ素イオンを8ppm及び水素を3ppmそれぞれ含む「化合物8」0.8モルとを混合した混合塩に水2.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0061】
<実施例3−1>
非対称性イミドとして、フッ素イオンを7ppm及び水素を7ppmそれぞれ含む「化合物2」1モルの単独塩に水6.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0062】
<実施例3−2>
実施例3−1と同じ「化合物2」0.8モルと、実施例1−2と同じ「化合物3」0.2モルとを混合した混合塩に水4.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0063】
<実施例3−3>
実施例3−1と同じ「化合物2」0.6モルと実施例1−2と同じ「化合物3」0.4モルとを混合した混合塩に水3.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0064】
<実施例3−4>
実施例3−1と同じ「化合物2」0.4モルと実施例1−2と同じ「化合物3」0.6モルとを混合した混合塩に水9.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0065】
<実施例3−5>
実施例3−1と同じ「化合物2」0.2モルと実施例1−2と同じ「化合物3」0.8モルとを混合した混合塩に水18.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0066】
図2に、化合物2と化合物3の混合塩である実施例3−2〜3−5、化合物2の非対称性イミド構造の単独塩である実施例3−1、及び化合物3の前述した対称性イミド構造の単独塩である比較例1のカリウム塩の各組成比と溶解に必要なそれぞれの水分量を示す。
図2の縦軸は
図1と同じである。横軸は化合物2と化合物3の合計量に対する化合物2のモル比を示す。
図2から、実施例3−2〜3−5の混合塩又は実施例3−1の非対称性イミド構造の単独塩では、(水のモル数)/(全カリウム塩のモル数)が3.0〜18.0で水溶液になることが実証された。一方、比較例1の対称性イミド構造の単独塩では(水のモル数)/(全カリウム塩のモル数)が42.0にならないと水溶液にならないことが実証された。
【0067】
<実施例4>
実施例1−1と同じ「化合物1」0.2モルと、非対称性イミドとして、フッ素イオンを8ppm及び水素を9ppmそれぞれ含む、表1に「化合物4」として示されるカリウム(ノナフルオロブタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((C
4F
9SO
2)(CF
3SO
2)NK)0.2モルと、対称性イミドとして、フッ素イオンを6ppm及び水素を1ppmそれぞれ含む、表1に「化合物5」として示されるカリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((C
2F
5SO
2)
2NK)「化合物5」0.6モルとを混合した混合塩に水38.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0068】
<実施例5>
実施例1−1と同じ「化合物1」0.5モルと、実施例3−1と同じ「化合物2」0.5モルとを混合した混合塩に水2.5モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0069】
<比較例2>
非対称性イミドとして、実施例3−1と同じ「化合物3」と、対称性イミドとして、フッ素イオンを8ppm及び水素を4ppmそれぞれ含む、表1に「化合物6」として示されるカリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((C
3F
7SO
2)
2NK)を用いた。「化合物3」0.3モルと、「化合物6」0.7モルとを混合した混合塩に水120.0モルを加え、50℃で加熱溶融し、室温におけるカリウム塩の飽和水溶液としての電解液を調製した。
【0070】
<評価試験>
前記実施例1−1〜実施例1−8、比較例1、実施例2、実施例3−1〜実施例3−5、実施例4、実施例5及び比較例2の18種類の電解液中のフッ素イオン含有量と、水素含有量と、これらの電解液を用いたコイン型カリウムイオン二次電池のクーロン効率(充放電効率)をそれぞれ測定した。以下、各測定方法について述べる。
【0071】
(1)フッ素イオン含有量
化合物1〜6、8のそれぞれのフッ素イオン含有量、及び電解液中のフッ素イオン含有量はイオンクロマトグラフ(サーモ社製 ICS−2100)により測定した。
【0072】
(2)水素含有量
化合物1〜6、8のそれぞれの水素含有量、及び電解液中の水素含有量は
1H−NMR(ブルカー社製 AV400M)の測定結果より、その濃度を算出した。
【0073】
(3)クーロン効率
測定に用いた二次電池の構成は次の通りである。正極は、85質量%のKCoO
2、9質量%のPVDF及び6質量%のアセチレンブラックを含む正極合材層と、チタン製の集電体とにより構成した。負極は、85質量%のK
4Ti
5O
12、5質量%のPVDF及び10質量%のアセチレンブラックを含む負極合材層と、アルミニウム製の集電体とにより構成した。セパレータはガラス繊維不織布フィルターを用いた。25℃の温度で1.7V〜2.8Vの範囲で、二次電池の充放電を10サイクル行い、10サイクル目の値をクーロン効率とした。
【0074】
以下の表2に、18種類の電解液について、混合塩又は非対称性イミド構造のカリウム塩を構成するカリウム塩の種類と比率、カリウム塩1モルに対する水のモル量、フッ素イオン含有量及び水素含有量、並びに18種類の電解液を用いた二次電池のクーロン効率をそれぞれ示す。混合塩又は非対称性イミド構造のカリウム塩を構成するカリウム塩の種類と比率は、カリウム塩1及びカリウム塩2として、またスルホン酸カリウム塩の種類と比率は、カリウム塩3として、それぞれ示した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2から明らかなように、比較例1では、非対称性イミドのカリウム塩を用いず、対称性イミドのカリウム塩のみを用いた(1モル)ため、カリウム塩1モルに対する水のモル量はそれぞれ42.0モル必要であった。これらの電解液を用いた二次電池のクーロン効率は90.3%と高くなかった。
【0077】
比較例2では、対称性イミドのカリウム塩として、化合物6のカリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((C
3F
7SO
2)
2NK)を用いたため、カリウム塩1モルに対する水のモル量は120.0モル必要であった。これらの電解液を用いた二次電池のクーロン効率は76.8%とそれほど高くなかった。
【0078】
これに対して実施例1−1〜実施例1−8、実施例2、実施例3−1〜実施例3−5、実施例4及び実施例5では、カリウム塩が本発明の第1の観点の要件を備えた単独塩又は混合塩であって、その組成割合が本発明の第1の観点の要件を備えるため、カリウム塩1モルに対する水のモル量は2モル以上40モル未満であった。そのため、これらの電解液を用いた二次電池のクーロン効率は94.2%〜98.5%と高かった。
【0079】
(4)電位窓の確認
実施例2の電解液について、以下の3極式電気化学セルを用いてリニアスープボルタムグラム測定を行い、その電位窓を確認した。測定温度は25℃、掃引速度は0.1mV/秒とした。
作用極及び対極:白金又はアルミニウム
参照電極:Ag/AgCl(飽和KCl)
以上の結果を
図3に示す。
図3の結果から、実施例2の電解液の電位窓が白金電極の場合、2.4Vと算出され、白金電極とアルミ電極の組合せでは、3.1Vと算出された。