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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-156285(P2020-156285A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】発電装置及び送信装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20200828BHJP
   H02N 1/00 20060101ALI20200828BHJP
   H02K 35/02 20060101ALI20200828BHJP
【FI】
   H02N2/18
   H02N1/00
   H02K35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-55110(P2019-55110)
(22)【出願日】2019年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】巳波 敏生
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武
(72)【発明者】
【氏名】村上 修一
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681BB08
5H681BB14
5H681BC00
5H681DD24
5H681DD27
5H681DD53
5H681DD82
5H681EE10
5H681FF03
5H681FF04
5H681GG32
(57)【要約】
【課題】導線の周囲に形成される十Hzオーダの低周波数の交流磁場を用いて発電することができ、しかも幅広い電流域に適用可能な発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置100は、交流が流れる導線Wに対して変位可能に設けられた永久磁石3と、導線Wの周囲に形成される交流磁場によって永久磁石3が振動した場合、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換するカンチレバー1と、永久磁石3の振幅を磁力によって制限する磁石5とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流が流れる導線に対して変位可能に設けられた永久磁石と、
前記導線の周囲に形成される交流磁場によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と、
前記永久磁石の振幅を磁力によって制限する制限部と
を備える発電装置。
【請求項2】
前記制限部は、
前記永久磁石の振動方向両外側にそれぞれ配置された2つの磁石を備え、
前記磁石は、
前記永久磁石に対向する面に該永久磁石と同極の磁極を有する
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記永久磁石に対する前記2つの磁石の距離を調整する調整部を備える
請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記永久磁石と、前記磁石との間を隔てる隔壁を備える
請求項2又は請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発電装置と、
信号を送信する送信部と
を備え、
前記送信部は、
前記発電装置から出力される電圧にて駆動する送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流磁場を永久磁石の運動エネルギーに変換し、当該運動エネルギーを電力に変換する発電装置及び送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子を有する弾性体としてのカンチレバーと、交流が流れる導線に対してカンチレバーの一端を固定する固定部と、カンチレバーの他端に設けられた永久磁石と、導線の周囲に形成される交流磁場によって振動する永久磁石の運動エネルギーを圧電素子によって電気エネルギーに変換し、出力する発電装置が開示されている。特許文献1の発電装置は、導線の周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場に基づいて発電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−22366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発電装置においては、交流電流が大きくなると、発生する磁場も大きくなり、永久磁石に働く力も大きくなる。そうすると、圧電素子に掛かる応力が大きくなり、圧電素子が破損するおそれがある。このため、交流電流が大き過ぎる導線には、当該発電装置を適用できないという問題がある。また、磁場に対する永久磁石の振れ幅が小さくなるように、圧電素子及びカンチレバーの弾性を調整することも考えられるが、交流電流が小さい導線に配置した場合の発電量が小さくなるという問題がある。
このように、特許文献1に係る発電装置は、適用可能な導線の電流範囲を大きくすることが困難であるという技術的問題があった。
なお、永久磁石の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する他の発電機構を用いる場合であっても、永久磁石の可動範囲は一定範囲に制限されるべきものであり、永久磁石が大きく振動すると、発電機構が破損するおそれがある。従って、上記と同様の問題が生ずる。
【0005】
本発明の目的は、導線の周囲に形成される十Hzオーダの低周波数の交流磁場を用いて発電することができ、しかも幅広い電流域に適用可能な発電装置及び当該発電装置を備えた送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本態様に係る発電装置は、交流が流れる導線に対して変位可能に設けられた永久磁石と、前記導線の周囲に形成される交流磁場によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と、前記永久磁石の振幅を磁力によって制限する制限部とを備える。
【0007】
本態様にあっては、永久磁石は、導線の周囲に形成される交流磁場によって振動する。変換部は、永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する。変換部は、例えば圧電部材である。本態様に係る発電装置は、交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場をエネルギー源として発電することが可能である。
交流電流が大きくなると、永久磁石の振幅も大きくなるが、制限部は磁力の反発力を利用して永久磁石の振幅を制限する。従って、交流電流が大きい場合においても変換部が損傷することはなく、発電を行うことができる。また、磁力を用いて非接触で永久磁石の振幅を制限する構成であるため、制限部の機械的損耗もなく、発電装置の長寿命化を図ることができる。また、交流電流が小さい場合、永久磁石の振幅は小さいため、永久磁石に働く制限部の磁力は小さい。従って、永久磁石の振幅が小さくなることが原因で、発電量が小さくなることはない。
このように、本態様に係る発電装置は幅広い電流域に適用することができる。
なお、永久磁石の振動周波数、即ち共振周波数は、交流磁場の周波数に略一致させる構成が好ましい。例えば、交流磁場の周波数が50Hzである場合、永久磁石の振動周波数を50Hzとし、交流磁場の周波数が60Hzである場合、永久磁石の振動周波数を60Hzとする構成が望ましい。但し、所要の電力が得られる範囲で永久磁石の振動周波数を交流磁場の周波数からずらした構成も本発明に含まれる。
また、本態様に係る導線は、電流を通ずることが可能な材料で形成された線状の部材であり、レール状の導通部材、バスバー、角柱状の導体、長手方向を有する板状の導体も導線に含まれる。また、導線は特定の用途のものに限定されるものでは無く、アース線であっても良い。
【0008】
本態様に係る発電装置は、前記制限部は、前記永久磁石の振動方向両外側にそれぞれ配置された2つの磁石を備え、前記磁石は、前記永久磁石に対向する面に該永久磁石と同極の磁極を有する。
【0009】
本態様にあっては、交流電流が大きく、永久磁石の振幅が大きくなった場合、永久磁石は制限部の磁石に接近し、磁石の磁力によって反発力を受ける。当該永久磁石の振幅は制限される。反発力は、制限部の磁石と、永久磁石との距離の2乗に反比例するため、永久磁石の振幅は効果的に制限される。
一方、交流電流が小さく、永久磁石の振幅が小さい場合、永久磁石は、制限部の磁石に接近しない。上記の通り、反発力は、制限部の磁石と、永久磁石との距離の2乗に反比例するため、永久磁石が受ける制限部の磁力は限定的である。
以上の通り、2つの磁石を永久磁石の振動方向外側に配する簡単な構成で、永久磁石3の振幅を交流電流の大きさに応じて制限することができる。
【0010】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石に対する前記2つの磁石の距離を調整する調整部を備える。
【0011】
本態様にあっては、永久磁石の共振周波数は、制限部との間に働く磁力の影響を受けて変動する。調整部は、制限部の磁石と、永久磁石との距離を調整することによって、共振周波数を調整し、当該共振周波数を交流の周波数に合わせることができる。例えば、変換部、永久磁石等の部品の特性にバラツキがある場合であっても、容易に共振周波数を交流の周波数に合わせることができる。
【0012】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石と、前記磁石との間を隔てる隔壁を備える。
【0013】
本態様にあっては、隔壁によって、永久磁石と、磁石とが接触することを避けることができる。例えば、製造工程において、永久磁石又は制限部を配置する際、強力な吸引力によって永久磁石と制限部の磁石との間に指が挟まれたりすることを防ぐことができる。
【0014】
本態様に係る送信装置は、上記のいずれか一つの発電装置と、信号を送信する送信部とを備え、前記送信部は、前記発電装置から出力される電圧にて駆動する。
【0015】
本態様にあっては、発電装置にて変換された電気エネルギーを用いて送信部を駆動することができる。従って、電源を用意することができない環境であっても、送信部から信号を送信させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導線の周囲に形成される十Hzオーダの低周波数の交流磁場を用いて発電することができ、しかも幅広い電流域に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る発電装置の斜視図である。
図2】本実施形態1に係る発電装置の平面図である。
図3】本実施形態1に係る発電装置の正面図である。
図4】導線の周囲に配された永久磁石に働く力を説明するための概念図である。
図5】導線に対する永久磁石の位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すベクトル図である。
図6】導線に対する永久磁石の位置と、当該永久磁石に働くx軸方向の力の大きさ及び向きとの関係を示すコンター図である。
図7】本実施形態2に係る発電装置の平面図である。
図8】本実施形態3に係る発電装置を示す正面図である。
図9】本実施形態4に係る電圧調整装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る発電装置100の斜視図、図2は、発電装置100の平面図、図3は、発電装置100の正面図である。本発明の実施形態1に係る発電装置100は、十Hzオーダの低周波数の交流が流れる導線Wを保持する基部10と、圧電部材を有する弾性体としてのカンチレバー(変換部)1と、カンチレバー1の固定端1aを、導線Wに対して固定する固定部2と、カンチレバー1の自由端1bに設けられた永久磁石3と、カンチレバー1の圧電部材に発生した電圧を出力する出力部4と、永久磁石3の振幅を磁力によって制限する2つの磁石(制限部)5とを備える。
【0019】
本実施形態1においては、導線Wは、電流を通ずることが可能な断面略円形の材料で形成された線状の部材であり、導線Wは50Hz又は60Hzの系統電源に接続されているものとする。発電装置100は、導線Wの周囲に形成される交流磁場を永久磁石3の運動エネルギーに変換し、永久磁石3の運動エネルギーを圧電部材によって電気エネルギーに変換することによって、発電するものである。
なお、上記導線Wの構成は一例であり、永久磁石3を振動させる交流磁場を形成可能な電流が流れる構成であれば、その形状は特に限定されるものでは無く、レール状の導通部材、バスバー、角柱状の導体、長手方向を有する板状の導体であっても良い。また、導線Wは、部分的に方形板状のような非線状部分を有していても良く、全体として所定方向に交流電流が流れるような形状であれば良い。当該非線状部分に発電装置100を固定する構成も本発明に含まれる。更に、導線Wは、必ずしも直線状である必要は無く、部分的に湾曲していても良い。更にまた、導線Wは特定の用途のものに限定されるものでは無く、アース線であっても良い。以下、本実施形態1では、導線Wが直線状の部材であるものとして説明する。
【0020】
基部10は、平板状の第1半体及び第2半体を有する。第1半体及び第2半体は、例えば図1に示すように基部10の下半分及び上半分をそれぞれ構成しており、ボルトでねじ止めされている。第1半体及び第2半体は互いに対向する面、つまり第1半体の上面と、第2半体の下面に導線Wが嵌まる直線状の溝部を有する。第2半体及び第2半体は、溝部に導線W挟み込むようにして、当該導線Wを保持している。
【0021】
カンチレバー1は、バイモルフ型圧電素子を用いてなる発電部材である。カンチレバー1は、外力によって弾性変形が可能な導電部材からなる長板部と、厚み方向に分極した2枚の板状ないしシート状の圧電部材とを備え、2枚の圧電部材が長板部を挟み込むように当該長板部の両面に貼り合わされている。また、2枚の圧電部材には、それぞれシート状の電極が設けられている。
長板部を構成する部材は、例えばステンレス等の金属である。圧電部材は、例えば圧電セラミックスである。長板部の長手方向一端部は固定部2に固定される固定端1aであり、長板部の長手方向他端部は外力によって変位可能な自由端1bである。自由端1bが変位した場合、2枚の圧電部材はそれぞれ伸張及び伸縮し、電極及び長板部間に電圧が発生する。
なお、ここではバイモルフ型圧電素子を説明したが、片面のみに圧電部材を張り付けたユニモルフ構造であっても良い。圧電部材は、導線Wの周囲に形成される交流磁場によって振動する永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部の一例である。
【0022】
固定部2は、カンチレバー1の固定端1aを基部10の適宜箇所、例えば上面に固定する部材である。より詳細には、固定部2は、カンチレバー1の自由端1bが、導線Wの中心線方向及び導線Wの径方向に略直交する方向(図3中、左右方向)に変位又は振動するように、カンチレバー1を保持している。言い換えると、カンチレバー1の厚み方向と、上記中心線方向及び径方向とが略直交するように、固定部2は、カンチレバー1の固定端1aを保持している。
【0023】
永久磁石3は、矩形板状をなし、厚み方向が導線Wの径方向を向く姿勢でカンチレバー1の自由端1bに固定されている。厚み方向とは、永久磁石3の縦寸法、横寸法及び高さ寸法の内、最も長さが短い方向を意味する。永久磁石3は、図3に示すように、導線W及び永久磁石3の離隔方向、つまり厚み方向に並ぶ単一対のN極3a及びS極3bを有する。なお、永久磁石3の形状及び導線Wに対する姿勢は本発明の本質的な構成では無く、あくまで一構成例を示したものである。本実施形態1では、永久磁石3を構成するN極3a及びS極3bが上記離隔方向に配列している点がより重要である。
【0024】
このようにカンチレバー1の自由端1bに固定された永久磁石3は、交流が流れる導線Wに対して変位可能であり、導線Wの周囲に形成される交流磁場によって、図3中左右方向の力を受け、振動する。永久磁石3が振動する原理については後述する。
カンチレバー1に設けられた永久磁石3の振動周波数は、導線Wの周囲に形成される交流磁場の周波数に略一致するように構成されている。例えば、交流磁場の周波数が50Hzである場合、永久磁石3の振動周波数を50Hzとし、交流磁場の周波数が60Hzである場合、永久磁石3の振動周波数を60Hzとする。なお、振動周波数が交流磁場の周波数に略一致するとは、所要の電力が得られる範囲で、振動周波数を交流磁場の周波数からずれた構成も本実施形態1に係る発電装置100に含まれることを意味する。
【0025】
出力部4は、カンチレバー1の電極と、長板部とに接続されており、永久磁石3の振動により伸縮した圧電部材に発生した電圧を出力する回路である。出力部4は、例えば整流回路及び平滑コンデンサを備える。整流回路は、例えばダイオードブリッジ回路である。ダイオードブリッジは2つの順接続されたダイオードからなる直列回路を2組並列させた回路構成である。整流回路の入力端子は圧電部材及び長板部に接続されており、整流回路の出力端子対には平滑コンデンサの各端子が接続されている。整流回路は、カンチレバー1の圧電部材に発生した交流を全波整流し、平滑コンデンサにて平滑化された直流の電圧を負荷Rへ出力する。
【0026】
本実施形態に係る2つの磁石5は、永久磁石3の振幅を制限するためのものである。2つの磁石5は、永久磁石3の振動方向両外側に、当該永久磁石3と反発する向き及び姿勢でそれぞれ配置されている。磁石5は、永久磁石3と同様の矩形板状をなし、厚み方向に貫通した固定用のボルト穴を有する。磁石5は、基部10の上面、永久磁石3の振動方向両外側の部位にボルトで固定されている。2つの磁石5は、図3に示すように、永久磁石3のN極3aに対向する面に、同極のN極5aを有する。同様に、永久磁石3のS極3bに対向する面に、同極のS極5bを有する。要するに、磁石5は、振動する永久磁石3が磁石5に接近した際、反発力が働くような位置にN極5a及びS極5bを有する。
磁石5は、例えばフェライト磁石、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石等であるが、その種類は特に限定されるものではない。また、磁石5の形状、磁極の形成方法も特に限定されるものではない。
【0027】
また、発電装置100は、永久磁石3に対する2つの磁石5の距離を調整する調整部として、基部10に長穴10aを設けても良い。長穴10aは、磁石5を基部10に固定するボルトが挿通する穴である。磁石5のネジ止め位置を調整することによって、永久磁石3に対する2つの磁石5の距離を調整することができる。なお、長穴10aは調整部の一例である。基部10に設けられたネジ機構で永久磁石3に対する磁石5の位置を調整するように構成しても良い。また、磁石5のボルト穴を長穴に形成して、磁石5を位置調整可能に構成しても良い。
【0028】
<導線Wの近くに配された永久磁石3に働く力>
図4は、導線Wの周囲に配された永久磁石3に働く力を説明するための概念図である。導線Wに電流を流すとアンペールの法則に従って、導線Wの周囲に磁界が形成される。図4中、x軸、y軸及びz軸は直交座標系の座標軸であり、z軸の正方向(紙面手前方向)に電流が流れるものとする。導線W周辺の磁界はx軸方向及びy軸方向に勾配を有する。y軸方向を向いた磁気双極子を有する永久磁石3を導線Wの近傍に配した場合、永久磁石3が受ける磁気力は下記式(1)及び(2)で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
図5は、導線Wに対する永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すベクトル図である。永久磁石3に働く力の大きさは、導線Wからの距離のみに依存するが、永久磁石3に働く力の方向は、導線Wに対する位置によって異なる。永久磁石3は、導線Wに対する位置にかかわらず、図5に示すように、x軸方向に並ぶS極及びN極を有するものとする。電流は紙面奥向きに流れている。図5中、導線Wの上下及び左右の位置では、x軸方向の力が働き、x軸又はy軸に対して45度の位置ではy軸方向の力が働いていることが分かる。
【0031】
図6は、導線Wに対する永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働くx軸方向の力の大きさ及び向きとの関係を示すコンター図である。図6Aは、シミュレーション結果の出力画像をグレースケールで示すコンター図であり、図6Bは、グレースケールで表現できない力の向き(色)を便宜上、ハッチングの有無で模式的に示したコンター図である。図6B中、ハッチングが付されていない白抜きの領域P1は、永久磁石3に左方向の力が働くことを示し、ハッチングが付されている領域P2は、永久磁石3に右方向の力が働くことを示している。破線で示すように、x軸及びy軸に対して略45度の境界で区分けされた4つの領域中、図6中、左右の領域P1(図6B中、白抜きの領域P1)に配された永久磁石3には、白抜き左矢印で示すように左方向の力が働き、図6中、上下の領域P2(図6B中、ハッチングが付された領域P2)に配された永久磁石3には、白抜き右矢印で示すように右方向の力が働く。このように、領域P1と、領域P2とでは、永久磁石3に働く力の向きが左右逆向きである。発電装置100の永久磁石3を振動させて発電を行う場合、同一方向の力が働くように、領域P1又は領域P2のいずれか一方の領域を利用することが好ましい。
【0032】
<圧電振動発電素子の支配方程式>
カンチレバー1の自由端1bに永久磁石3を設けてなる圧電振動発電素子の支配方程式は、図6中、導線Wの上下、即ちy軸上に永久磁石3を配した場合、下記式(3)及び(4)で表される。なお、導線Wの左右、即ちx軸上に永久磁石3を配した場合の支配方程式も同様にして表される。
【0033】
【数2】
【0034】
<磁石5による永久磁石3の振幅制限>
永久磁石3と、磁石5との間に生ずる反発力は、永久磁石3と磁石5との距離の2乗に反比例する。導線Wを流れる電流が大きくなると、永久磁石3の振幅が大きくなり、磁石5との距離が小さくなる。そうすると、永久磁石3と、磁石5との間に反発力が発生し、永久磁石3の振幅を抑える方向に力が働く。従って、交流電流が大きい場合、永久磁石3の振幅を制限することができる。
導線Wに流れる電流が小さい場合、永久磁石3の永久磁石3の振幅は小さく、磁石5との距離が大きくなる。そうすると、永久磁石3と、磁石5との間に働く力は2乗に反比例して小さくなる。従って、永久磁石3の振動を妨げるような力は働かず、発電量が低下するおそれはない。
【0035】
<本実施形態に係る発電装置100の作用効果>
以上の通り、本実施形態1に係る発電装置100によれば、導線Wの周囲に形成される十Hzオーダの低周波数の交流磁場を用いて発電することができ、しかも幅広い電流域に適用することができる。
また、ゴム、スプリング等を永久磁石3の振動方向外側に配し、衝撃を吸収することによって、永久磁石3の振幅を制限する構成に比べて、永久磁石3の固定部2に負荷がかかることなく、長期信頼性が得られる。
【0036】
更に、2つの磁石(制限部)5を永久磁石3の振動方向外側に配する簡単な構成で、永久磁石3の振幅を交流電流の大きさに応じて制限することができる。
【0037】
更にまた、長穴(調整部)10aを用いて、磁石5と、永久磁石3との距離を調整することによって、共振周波数を調整し、永久磁石3の共振周波数を交流の周波数に合わせることができる。
【0038】
更にまた、圧電部材を用いた簡単な構成で永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0039】
(実施形態2)
図7は本実施形態2に係る発電装置200の平面図である。実施形態2に係る発電装置200は、永久磁石3と、図7中左側に配された第1の磁石5との間を隔てる第1の隔壁206を備える。また、発電層値200は、図7中右側に配された永久磁石3と、第2の磁石5との間を隔てる第2の隔壁206とを備える。隔壁206は非磁性体材料かならなる板状の部材であり、隔壁206は、永久磁石3と、磁石5の間を隔てるように、基部10に固定されている。隔壁206の配置箇所は、永久磁石3の振動を妨げない構成であれば特に限定されるものではない。
【0040】
実施形態2に係る発電装置200によれば、永久磁石3と、磁石5とが接触することを避けることができる。例えば、製造工程において、永久磁石3又は磁石5を配置する際、強力な吸引力によって永久磁石3と磁石5の間に指が挟まれたりすることを防ぐことができる。また、製造工程において、磁石5が永久磁石3に衝突し、カンチレバー1が損傷することを防ぐことができる。
【0041】
(実施形態3)
本実施形態3に発電装置300は永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する構成が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図8は本実施形態3に係る発電装置300を示す正面図である。作図の便宜上、固定部2の図示を省略している。実施形態3に係る発電装置300は、圧電部材を有しない弾性体としてのカンチレバー(不図示)と、カンチレバーの固定端を、十Hzオーダの低周波数の交流が流れる導線Wに対して固定する固定部2と、カンチレバーの自由端に設けられた永久磁石3と、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換するエレクトレット発電機306と、エレクトレット発電機306によって変換された電気エネルギーを出力する出力部4とを備える。カンチレバーの自由端に設けられた永久磁石3は、図8中、左右方向に振動する。
【0043】
エレクトレット発電機306は、実施形態1の圧電部材に代えて設けられたものであり、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。エレクトレット発電機306は、複数のエレクトレット361aを有する第1電極基板361と、複数の各エレクトレット361aそれぞれに対向する複数の対向電極362aを有する導電性の第2電極基板362とを備える。エレクトレット361aは電荷を蓄えた荷電体である。エレクトレット361aは半永久的に電荷を保持し、電場を形成する。第1電極基板361は、複数のエレクトレット361aが永久磁石3の振動方向に並ぶような姿勢で永久磁石3に固定されている。第1電極基板361は所定の可動範囲を有する。
【0044】
第2電極基板362は、複数の対向電極362aが複数のエレクトレット361aそれぞれに対向する姿勢で、導線Wに対する位置が変化しないように固定されている。例えば、第2電極基板362は固定部2に固定されている。対向電極362aは導電性の部材であり、静電誘導によって電荷が蓄えられる。
【0045】
導線Wの周囲に形成される交流磁場によって永久磁石3は図8中、横方向に振動する。永久磁石3が振動すると、エレクトレット361aと、対向電極362aとの相対位置が変化し、電荷が移動する。エレクトレット発電機306は、このようにして、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、電荷の移動によって生じた電圧は出力部4から出力される。
【0046】
本実施形態3に係る発電装置300によれば、導線Wの周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場に基づいて発電を行うことができ、永久磁石3の振幅を第1電極基板361の可動範囲内に抑えることができる。本実施形態3では、エレクトレット発電機306を用いた簡単な構成で永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0047】
実施形態3では、実施形態1の圧電部材に代えてエレクトレット発電機306を備える例を説明したが、実施形態2に係る圧電部材に代えて、エレクトレット発電機306を備えても良い。また、第1電極基板361を永久磁石3に設け、第2電極基板362を導線Wに対して固定する例を説明したが、第2電極基板362を永久磁石3に設け、第1電極基板361を導線Wに対して固定しても良い。
【0048】
圧電部材の代替手段としてエレクトレット発電機306を説明したが、磁歪素子を有する発電機等、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換可能な公知の発電機を圧電部材に代えて用いても良い。
【0049】
(実施形態4)
図9は、本実施形態4に係る電圧調整装置を示すブロック図である。実施形態4に係る電圧調整装置は、系統に接続された導線Wの電圧を調整するための電圧調整機407と、電圧調整機407の状態を検出する検出装置408と、当該検出装置408にて検出された検出情報を外部へ無線送信する送信装置409とを備える。電圧調整機407は、例えば、SVR(Step Voltage Regulator)、SVC(static var compensator)等であり、検出情報は、電圧調整機407の上流側及び下流側の電圧、電流、電圧調整内容等である。
【0050】
実施形態4に係る送信装置409は、実施形態1に係る発電装置100と、当該発電装置100が出力する電力にて駆動し、検出装置408によって検出された検出情報に係る信号を無線送信する送信部491とを備える。発電装置100は、導線Wの周囲に形成される交流磁場に基づいて発電し、電圧を送信部491へ出力し、送信部491は、発電装置100から出力される電圧にて駆動する。
【0051】
実施形態4に係る電圧調整装置によれば、発電装置100が出力する電圧を用いて送信部491を駆動することができる。従って、電源を用意することができない環境、例えば、送電線の途中に設けられた電圧調整機407の側に発電装置100及び送信部491を配し、電圧調整機407に係る情報を外部へ無線送信することができる。
【0052】
なお、実施形態4では、実施形態1に係る発電装置100を備える例を説明したが、言うまでも無く、実施形態2〜3に係る発電装置200,300を用いて、実施形態4に係る電圧調整装置を構成しても良い。
また、永久磁石3を変位可能に支持する構成としてカンチレバー1を例示したが、振動磁場によって永久磁石3が移動できる構成であれば、支持機構は特にカンチレバー1に限定されるものではない。
【0053】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
100発電装置、1カンチレバー(変換部)、1a固定端、1b自由端1b、2固定部、3永久磁石、4出力部、5磁石(制限部)、10a長穴(調整部)、206隔壁、W導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9