【実施例】
【0036】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
[実施例1及び2に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
以下の表1に示した材料を用いて、以下の表2の配合にてコンクリート組成物を調製した。コンクリート組成物の調製は、二軸強制練りミキサを用いて行った。具体的には、セメント、細骨材、及び粗骨材を上記ミキサ内に投入して10秒間空練りを行った後、水及び減水剤を上記ミキサ内に投入して90秒間練り混ぜることにより調製した。
調製したコンクリート組成物を平板供試体用型枠(30cm×30cm×5cm)内に打設し、打設後のコンクリート組成物の表面に軽くコテ仕上げを施し、コテ仕上げを施した直後のコンクリート組成物の一方の半面の表面に、C12A7系CA材(総質量に対してC12A7系成分を70%以上含む)の目開き5mmの篩の篩上品を散布し(実施例1)、他方の半面の表面に、目開き2.5mmの篩と目開き5mmの篩を用いて分級することにより粒子径を、2.5mmを上回り5mm以下に調整したC12A7系CA材(総質量に対してC12A7系成分を70%以上含む)を散布し(実施例2)、さらに、打設後のコンクリート組成物の表面が型枠と水平となるようにコテ仕上げを施した。材齢28日まで気中養生して、実施例1及び2に係るコンクリート供試体を作製した。
C12A7系CA材中のC12A7系成分は、X線回折/リートベルト法によって求めた。X線回折/リートベルト法は、以下のようにして行った。
(1)まず、粉末状のC12A7系CA材をX線回折装置(X’Pert MPD、パナリティカル社製)を用いて分析し、X線回折パターンを得た。X線回折測定は、線源としてCuKαを用い、管電圧を45kV、管電流を40mAとし、測定角度範囲2θを10〜140°とする条件で行った。
(2)次に、専用解析ソフト(HighScorePlus、パナリティカル社製)を用いて得られたX線回折パターンをリートベルト解析することにより、C12A7系成分の含有割合を求めた。なお、C12A7系成分の含有割合は、X線回折分析で検出できたC12A7系CA材中の全成分を100質量%としたときのC12A7系成分の質量割合として求めた。
また、各例において、C12A7系CA材の散布量は、200g/m
2とした。
【0038】
なお、以下の表2において、細骨材率とは、全骨材の絶対容積に対する細骨材の占める絶対容積の割合を意味し、C×%とは、セメントの質量に対する減水剤の質量割合を意味している。
また、表2において、空気量は、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法」に準拠して測定し、スランプは、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
(滑り抵抗の評価)
実施例1及び2に係るコンクリート供試体について、滑り抵抗を評価した。滑り抵抗の評価は、舗装調査・試験法便覧(平成19年6月版、日本道路協会編)のS021−2「振り子スキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定方法」に準拠して、表面全域を水道水で濡らした各例に係るコンクリート供試体について、表面のBPN値(滑り抵抗値)を測定することにより行った。すべり抵抗試験は4回行い、1回目を除いた3回の目盛りの読みをBPN単位として記録し、その算術平均値を各例に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値とした。ただし、測定値が大きく変動する場合は、変動が小さくなるまで繰り返し測定を行い、変動が小さくなった後に3回の測定値の読みをBPN単位として記録し、その算術平均を各例に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値とした。実施例1及び2に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値を以下の表3に示した。
なお、上記方法は、株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)で推奨されている、車道用の舗装コンクリート表面のすべり抵抗の評価方法である。
【0042】
[実施例3及び4に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.3mmの篩と目開き0.6mmの篩を用いて分級することにより粒子径0.3mmを上回り0.6mm以下に調整したC12A7系CA材を用い(実施例3)、コンクリート組成物の他方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.075mmの篩と目開き0.15mmの篩を用いて分級することにより粒子径0.075mmを上回り0.15mm以下に調整したC12A7系CA材を用いた(実施例4)以外は、実施例1及び2と同様にして、実施例3及び4に係るコンクリート供試体を作製した。
【0043】
(滑り抵抗の評価)
実施例3及び4に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例3及び4に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表3に示した。
【0044】
[実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体の作製]
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.075mmの篩の篩下品を用い(実施例5)、コンクリート組成物の他方の半面に、何らのCA材をも散布しなかった(比較例1)以外は、実施例1及び2と同様にして、実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体を作製した。
【0045】
(滑り抵抗の評価)
実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
表3より、C12A7系CA材を散布することにより作製された、各実施例に係るコンクリート供試体は、比較例1に係るコンクリート供試体に比べて、BPN値が高くなること、すなわち、滑り抵抗が高くなることが確認された。
また、実施例3〜5に係るコンクリート供試体のBPN値は、実施例1及び2に係るコンクリート供試体のBPN値よりも高くなることが分かった。このことから、散布するC12A7系CA材の粒子径を0.6mm以下とすることにより、より滑り抵抗を高めることができることが分かった。
さらに、各実施例の中でも、実施例3に係るコンクリート供試体のBPN値は特に高い値を示していた。このことから、散布するC12A7系CA材の粒子径を、0.3mmを上回り0.6mm以下とすることにより、特に、滑り抵抗を高めることができることが分かった。
【0048】
[実施例6及び7に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材の散布量を150g/m
2とした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に実施例6に係るコンクリート供試体を作製した。
また、C12A7系CA材の散布量を100g/m
2とした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面側に実施例7に係るコンクリート供試体を作製した。
【0049】
(滑り抵抗の評価)
実施例6及び7に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例6及び7に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表4に示した。
【0050】
[実施例8に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材の散布量を50g/m
2とした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に実施例8に係るコンクリート供試体を作製した。
【0051】
(滑り抵抗の評価)
実施例8に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例8に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表4に示した。なお、以下の表4にも、比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を示した。
【0052】
【表4】
【0053】
表4から、C12A7系CA材の散布量を、50g/m
2(実施例8)、100g/m
2(実施例7)及び150g/m
2(実施例6)としたコンクリート供試体の場合においても、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて滑り抵抗が向上することが確認された。
また、C12A7系CA材の散布量を100g/m
2以上とすることにより、何らのCA材をも散布しなかったコンクリート供試体と比べて滑り抵抗が大きく向上することが確認された。
さらに、C12A7系CA材の散布量を150g/m
2とした場合には、旧日本道路公団の出来形基準値であるBPN値60以上を満足するようになり、特に優れた滑り抵抗性を示すことが確認された。
【0054】
[実施例9に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材をアルミナセメント(JIS R 2511(1995)3種相当品)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面(実施例8の一方の半面と隣り合う半面)側に実施例9に係るコンクリート供試体を作製した。
【0055】
(滑り抵抗の評価)
実施例9に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例9に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表5に示した。
【0056】
[比較例2及び3に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材を珪砂(三久海運製)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に、比較例2に係るコンクリート供試体を作製した。
また、C12A7系CA材を早強ポルトランドセメント(JIS R5210に定める早強ポルトランドセメント)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面側に、比較例3に係るコンクリート供試体を作製した。
【0057】
(滑り抵抗の評価)
比較例2及び3に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。比較例2及び3に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表5に示した。なお、以下の表5にも、比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を示した。
【0058】
【表5】
【0059】
表5から、アルミナセメントを散布して作製されたコンクリート供試体(実施例9)は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて、滑り抵抗が大きく向上することが確認された。
また、珪砂を散布して作製された比較例2に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と同程度の滑り抵抗を示すことが確認された。
さらに、早強ポルトランドセメントを散布して作製された比較例3に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて、滑り抵抗が低下することが確認された。