【解決手段】対象土と混合されて用いられ、セメント系水硬性材料を含有する地盤改良材であって、アルミン酸塩を含有する、地盤改良材。対象土と、セメント系水硬性材料とを含有する、改良土であって、アルミン酸塩を含有する、改良土。対象土と、セメント系水硬性材料とが混合された改良土を作製する、改良土の製造方法であって、前記改良土がアルミン酸塩を含有する、改良土の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記地盤改良材は、硫酸塩を多く含んでいる。また、地盤改良材と水とを混合して混合物を作製すると水和反応によりエトリンガイトが生成される。
ここで、このエトリンガイトの生成過程では前記混合物は膨張するが、対象土と地盤改良材とを混合して改良土を作製する際には、対象土に間隙があるため、通常は、前記膨張は対象土の間隙により緩和され、改良地盤に変状は生じない。
しかし、対象土に地盤改良材が多く混合されたり、対象土と地盤改良材との混合が不十分で改良土中に地盤改良材が偏って多く含まれる部分が生じたりした場合などには、ごくまれに改良地盤に変状が生じ、改良土の膨張が収束するまで道路や構造物を設ける工事を進めることができず、工期が長くなってしまうことがある。
しかしながら、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くすることはこれまで十分に検討がなされていない。
【0005】
そこで、本発明は、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得る地盤改良材及び改良土の製造方法、並びに、改良土の膨張が収束するまでの時間が短い改良土を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意研究したところ、特定の化合物を含有する地盤改良材を用いれば、改良土の膨張収束時間を短くし得ることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る地盤改良材は、対象土と混合されて用いられ、セメント系水硬性材料を含有する地盤改良材であって、
アルミン酸塩を含有する。
【0008】
ここで、本発明に係る地盤改良材の一態様では、前記アルミン酸塩が、アルミン酸カリウム及びアルミン酸ナトリウムの少なくとも一方を含有する。
【0009】
また、本発明に係る地盤改良材の他の態様では、前記アルミン酸塩が、アルミン酸カリウムを含有する。
【0010】
さらに、本発明に係る地盤改良材の他の態様では、前記セメント系水硬性材料がSO
3を含有し、
前記SO
3100質量部に対して、前記アルミン酸塩が、アルミン酸イオン換算で2.3質量部以上含有されている。
【0011】
また、本発明に係る改良土は、対象土と、セメント系水硬性材料とを含有する、改良土であって、
アルミン酸塩を含有する。
【0012】
さらに、本発明に係る改良土の製造方法は、対象土と、セメント系水硬性材料とが混合された改良土を作製する、改良土の製造方法であって、
前記改良土がアルミン酸塩を含有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態に係る地盤改良材は、対象土と混合されて用いられる。
また、本実施形態に係る地盤改良材は、セメント系水硬性材料と、アルミン酸塩とを含有する。
【0018】
前記セメント系水硬性材料は、セメントを含有する。
なお、セメント自体も石膏を含む。
前記セメント系水硬性材料は、前記セメントに含まれる石膏とは別の石膏を含有してもよい。
また、前記セメント系水硬性材料は、高炉スラグを含有してもよい。
前記セメント系水硬性材料は、SO
3を含有する。
前記セメント系水硬性材料は、SO
3を、好ましくは5.1〜14.0質量%、より好ましくは7.2〜11.3質量%含有する。
【0019】
前記セメントは、水硬性セメントである。
前記セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントが挙げられる。また、前記セメントとしては、例えば、該ポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材(ポゾラン)等を混合してなる混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントなども挙げられる。
セメント系水硬性材料は、セメントを、好ましくは30〜94質量%、より好ましくは30〜60質量%含有する。
【0020】
また、前記セメント系水硬性材料は、セメントに高炉スラグが含まれていることにより、高炉スラグを含有していてもよい。また、前記セメント系水硬性材料は、セメントの高炉スラグとは別の高炉スラグを含有してもよい。
【0021】
前記高炉スラグとしては、高炉水砕スラグ等が挙げられる。
すなわち、セメントの高炉スラグとしては、高炉水砕スラグ等が挙げられ、また、セメントの高炉スラグとは別の高炉スラグとしては、高炉水砕スラグの微粉末等が挙げられる。
高炉水砕スラグの微粉末としては、JIS A 6206:2013の“高炉スラグ微粉末”が好ましく、すなわち、比表面積が2,750cm
2/g以上10,000cm
2/g未満のものが好ましい。なお、比表面積は、JIS R 5201:2015の比表面積試験に従って測定することができる。
前記セメント系水硬性材料における高炉スラグの含有割合(セメントの高炉スラグと、セメントの高炉スラグとは別の高炉スラグとの合計の含有割合)は、好ましくは0〜60質量%、より好ましくは25〜51質量%である。
また、高炉スラグは、本実施形態に係る地盤改良材に実質的に含まれなくてもよい。
【0022】
前記石膏としては、無水石膏(CaSO
4 )、半水石膏(CaSO
4 ・0.5H
2 O)、二水石膏(CaSO
4 ・2H
2 O)等が挙げられる。
すなわち、セメントの石膏としては、無水石膏(CaSO
4 )、半水石膏(CaSO
4 ・0.5H
2 O)、二水石膏(CaSO
4 ・2H
2 O)等が挙げられ、また、セメントの石膏とは別の石膏としては、無水石膏(CaSO
4 )、半水石膏(CaSO
4 ・0.5H
2 O)、二水石膏(CaSO
4 ・2H
2 O)等が挙げられる。
前記セメント系水硬性材料における石膏の含有割合(セメントの石膏と、セメントの石膏とは別の石膏との合計の含有割合)は、好ましくは7.4質量%以上、より好ましくは12.6〜25.6質量%、さらにより好ましくは16.2〜25.6質量%である。
【0023】
前記アルミン酸塩としては、アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸リチウム等が挙げられる。
前記アルミン酸塩は、アルミン酸カリウム及びアルミン酸ナトリウムの少なくとも一方を含有することが好ましい。
また、アルミン酸カリウムは、劇物に指定されておらず、取り扱いがしやすいので、前記アルミン酸塩は、アルミン酸カリウムを含有することが特に好ましい。
なお、本実施形態に係る地盤改良材は、アルミン酸塩の水和物が含まれていることにより、アルミン酸を含有していてもよい。
アルミン酸塩の水和物としては、例えば、アルミン酸カリウム・3水和物などが挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る地盤改良材は、前記SO
3100質量部に対して、前記アルミン酸塩を、アルミン酸イオン換算で、好ましくは2.3質量部以上、より好ましくは2.3〜90質量部、さらにより好ましくは2.3〜50質量部含有する。
【0025】
なお、本実施形態に係る地盤改良材は、対象土への添加前に全ての成分が混合された状態になっている必要はなく、成分ごとに対象土に添加されてもよい。
【0026】
本実施形態に係る改良土は、対象土と、セメント系水硬性材料とを含有する。また、本実施形態に係る改良土は、アルミン酸塩を含有する。
【0027】
言い換えれば、本実施形態に係る改良土は、対象土と、本実施形態に係る地盤改良材とを含有する。
【0028】
さらに、本実施形態に係る改良土は、対象土の水とは別の水を更に含有してもよい。また、本実施形態に係る改良土は、対象土の水とは別の水を含有しなくてもよく、言い換えれば、水として、対象土の水のみを含有してもよい。
【0029】
本実施形態に係る改良土は、湿潤状態の対象土1m
3当たりのセメント系水硬性材料の量が、好ましくは100〜1100kg/m
3、より好ましくは400〜1100kg/m
3である。
また、本実施形態に係る改良土は、乾燥状態の対象土100質量部に対して、セメント系水硬性材料を、好ましくは4.7〜118質量部、より好ましくは18.8〜118質量部含有する。
さらに、本実施形態に係る改良土は、前記セメント系水硬性材料100質量部に対して、対象土の水とは別の水を、好ましくは45〜300質量部、より好ましくは60〜130質量部含有する。
また、本実施形態に係る改良土は、セメント系水硬性材料100質量部に対して、水を(対象土の水、及び、対象土の水とは別に加える水の合計で)、好ましくは19〜960質量部、より好ましくは19〜295質量部含有する。
また、本実施形態に係る改良土は、対象土の水とは別の水を含有する場合、セメント系水硬性材料100質量部に対して、水を(対象土の水、及び、対象土の水とは別に加える水の合計で)、好ましくは60〜960質量部、より好ましくは75〜295質量部含有する。
さらに、本実施形態に係る改良土は、水として、対象土の水のみを含有する場合、セメント系水硬性材料100質量部に対して、水(対象土の水)を、好ましくは19〜654質量部、より好ましくは19〜163質量部含有する。
【0030】
本実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土と、セメント系水硬性材料とが混合された改良土を作製する。また、前記改良土は、アルミン酸塩を含有する。
【0031】
言い換えれば、本実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土と、本実施形態に係る地盤改良材とが混合された改良土を作製する。
【0032】
本実施形態に係る改良土の製造方法では、改良土を構成する成分をどのような順序で混ぜてもよい。
例えば、本実施形態に係る改良土の製造方法では、本実施形態に係る地盤改良材を構成する成分と、水とを混合してスラリーを作製し、該スラリーと対象土とを混合することにより、改良土を作製してもよい。
また、本実施形態に係る改良土の製造方法では、前記スラリーを経ずに、本実施形態に係る地盤改良材を構成する成分と、水と、対象土とを混合することにより、改良土を作製してもよい。
さらに、本実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土の水とは別の水を用いずに、本実施形態に係る地盤改良材を構成する成分と、対象土とを混合することにより、改良土を作製してもよい。
また、本実施形態に係る改良土の製造方法では、本実施形態に係る地盤改良材が、対象土への添加前に全ての成分が混合された状態になっている必要はなく、本実施形態に係る地盤改良材の成分ごとに対象土に添加されてもよい。
【0033】
なお、本発明に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0035】
<セメント系水硬性材料>
セメント系水硬性材料としては、下記表1、2のセメント系水硬性材料を作製した。
なお、セメント系水硬性材料におけるSO
3の含有割合(単に「SO
3の含有割合」ともいう。)を下記表1、2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
<添加剤>
添加剤としては、以下の添加剤を用いた。
・アルミン酸ナトリウム
・アルミン酸カリウム3水和物
・水酸化アルミニウム
【0039】
(実施例1)
セメント系水硬性材料としての表1のセメント系水硬性材料Cと、添加剤としてのアルミン酸ナトリウムとを混合して地盤改良材を作製し、該地盤改良材と水とを混合してスラリーを得た。
なお、水は、セメント系水硬性材料100質量部に対して60質量部とした。
また、アルミン酸ナトリウムは、SO
3100質量部に対して、アルミン酸イオン換算で13.4質量部とした。
【0040】
(実施例2)
添加剤としてアルミン酸カリウム・3水和物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
【0041】
(実施例3)
セメント系水硬性材料としての表2のセメント系水硬性材料Iを用い、アルミン酸ナトリウムの量を、SO
3100質量部に対してアルミン酸イオン換算で14.4質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
【0042】
(実施例4〜10)
セメント系水硬性材料の種類、及び、アルミン酸塩の量を下記表5に示すものにしたこと以外は、実施例1と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
なお、「アルミン酸塩の量」とは、「SO
3100質量部に対する、アルミン酸イオン換算でのアルミン酸塩の量(質量部)」を意味する。
【0043】
(実施例11〜13)
アルミン酸ナトリウムの量を下記表6に示す割合にしたこと以外は、実施例1と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
【0044】
(比較例1)
添加剤として水酸化アルミニウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
なお、添加剤の量については、SO
3の量に対する、アルミニウム換算での添加剤の量が実施例1と同じとなるようにした。
【0045】
(比較例2)
添加剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
【0046】
(比較例3)
添加剤を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして、地盤改良材を得、そして、スラリーを得た。
【0047】
<膨張変化試験>
実施例及び比較例のスラリーを型枠に打設し、打設後24時間で脱型し、直方体の供試体(寸法:40mm×40mm×160mm(最長部分))を得た。
そして、供試体を20℃の水の中で養生した。また、水中養生直前を基準(材齢0日)とし、水中養生を開始してから10日までは約1日おきに、14日後からは約7日おきに、最長部分の長さ変化を膨張変化の指標として測定した。
最長部分の長さ変化は、JIS A1129−3:2010「モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法‐第3部:ダイヤルゲージ方法」に準じて測定した。
また、長さ変化率に関し、前回(1回前)に測定した長さ変化率との比較において、長さ変化率の1日当たりの増加量が、0.01%/日以下になった場合に、前回の測定時における材齢を収束日数(膨張が収束するまでの日数)とした。
すなわち、N回目の測定時における、長さ変化率の1日当たりの増加量は、下記式(1)で求め、この増加量が0.01%/日以下になった場合に、(N−1)回目の測定時における材齢を収束日数とした。
N回目の測定時における、長さ変化率の1日当たりの増加量(%/日) = (N回目に測定した長さ変化率(%) − (N−1)回目に測定した長さ変化率(%))/(N回目の測定時における材齢(日) − (N−1)回目の測定時における材齢(日))・・・(1)
収束日数について、実施例1、2及び比較例1、2の結果を下記表3に、実施例3及び比較例3の結果を下記表4に、実施例1、4〜10の結果を表5に、実施例1、11〜13及び比較例1の結果を表6に、実施例1、2、4〜12の結果を
図1に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
表3、4に示すように、早強ポルドランドセメントを含むセメント系水硬性材料のみからなる比較例2、普通ポルドランドセメントを含むセメント系水硬性材料のみからなる比較例3の地盤改良材を用いた場合で、42日後まで膨張が継続していた。
このことから、セメント系水硬性材料と水との反応(水和反応)による生成物であるエトリンガイトが、改良土の膨張の要因と考えられる。
【0052】
表3に示すように、実施例1、2の地盤改良材を用いた場合では、添加剤として水酸化アルミニウムを用いた比較例1の地盤改良材、添加剤を用いなかった比較例2の地盤改良材を用いた場合に比べて、収束日数が短かった。
また、表4に示すように、実施例3の地盤改良材を用いた場合では、添加剤を用いなかった比較例3の地盤改良材を用いた場合に比べて、収束日数が短かった。
また、表5に示すように、実施例1〜3と異なるセメント系水硬性材料を用いた実施例4〜10の地盤改良材を用いた場合でも、収束日数は短かった。
以上の結果から、エトリンガイトの生成反応が改良土の膨張の要因となっており、反応性に富むアルミニウム塩であるアルミン酸塩が存在すると、早期にエトリンガイトの生成反応が終結して、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くすることができると考えられる。
したがって、本発明によれば、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得ることがわかる。
【0053】
【表6】
【0054】
表6、
図1に示すように、SO
3に対するアルミン酸イオン換算での前記アルミン酸塩の量が多いほど、収束日数が短かった。
このことから、SO
3に対するアルミン酸イオン換算での前記アルミン酸塩の量が多いほど、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得ることがわかる。