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特開2020-158661地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-158661(P2020-158661A)
(43)【公開日】2020年10月1日
(54)【発明の名称】地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/08 20060101AFI20200904BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20200904BHJP
【FI】
   C09K17/08 P
   E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-60452(P2019-60452)
(22)【出願日】2019年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】植田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅彦
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB07
2D040CA01
2D040CA04
2D040CA10
4H026CA06
4H026CB05
4H026CB06
(57)【要約】
【課題】本発明は、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得る地盤改良材等を提供する。
【解決手段】本発明は、対象土と混合されて用いられ、セメント系水硬性材料を含有する地盤改良材であって、アロフェンを含有する、地盤改良材等である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象土と混合されて用いられ、セメント系水硬性材料を含有する地盤改良材であって、
アロフェンを含有する、地盤改良材。
【請求項2】
前記セメント系水硬性材料がSOを含有し、
前記SO100質量部に対して、前記アロフェンが、28〜185質量部含有されている、請求項1に記載の地盤改良材。
【請求項3】
対象土と、セメント系水硬性材料とを含有する、改良土であって、
アロフェンを含有する、改良土。
【請求項4】
対象土と、セメント系水硬性材料とが混合された改良土を作製する、改良土の製造方法であって、
前記改良土がアロフェンを含有する、改良土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路、構造物等の基礎の強度が不足する場合などには、対象となる土(以下、「対象土」ともいう。)の強度を高めるために、セメントを含むセメント系水硬性材料が含有された地盤改良材と、対象土とを混合して、改良土が作製されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−057050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記地盤改良材は、硫酸塩を多く含んでいる。また、地盤改良材と水とを混合して混合物を作製すると水和反応によりエトリンガイトが生成される。
ここで、このエトリンガイトの生成過程では前記混合物は膨張するが、対象土と地盤改良材とを混合して改良土を作製する際には、対象土に間隙があるため、通常は、前記膨張は対象土の間隙により緩和され、改良地盤に変状は生じない。
しかし、対象土に地盤改良材が多く混合されたり、対象土と地盤改良材との混合が不十分で改良土中に地盤改良材が偏って多く含まれる部分が生じたりした場合などには、ごくまれに改良地盤に変状が生じ、改良土の膨張が収束するまで道路や構造物を設ける工事を進めることができず、工期が長くなってしまうことがある。
しかしながら、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くすることはこれまで十分に検討がなされていない。
【0005】
そこで、本発明は、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得る地盤改良材及び改良土の製造方法、並びに、改良土の膨張が収束するまでの時間が短い改良土を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意研究したところ、アロフェンを含有する地盤改良材を用いれば、改良土の膨張収束時間を短くし得ることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る地盤改良材は、対象土と混合されて用いられ、セメント系水硬性材料を含有する地盤改良材であって、
アロフェンを含有する。
【0008】
ここで、本発明に係る地盤改良材の一態様では、前記セメント系水硬性材料がSOを含有し、
前記SO100質量部に対して、前記アロフェンが、28〜185質量部含有されている。
【0009】
また、本発明に係る改良土は、対象土と、セメント系水硬性材料とを含有する、改良土であって、
アロフェンを含有する。
【0010】
さらに、本発明に係る改良土の製造方法は、対象土と、セメント系水硬性材料とが混合された改良土を作製する、改良土の製造方法であって、
前記改良土がアロフェンを含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】SOの量に対するアロフェンの量と、スラリーの膨張が収束するまでの時間(収束日数)との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態に係る地盤改良材は、対象土と混合されて用いられる。
また、本実施形態に係る地盤改良材は、セメント系水硬性材料と、アロフェンとを含有する。
【0015】
前記対象土は、水を含有する。
【0016】
前記セメント系水硬性材料は、セメントを含有する。
なお、セメント自体も石膏を含む。
前記セメント系水硬性材料は、前記セメントに含まれる石膏とは別の石膏を含有してもよい。
また、前記セメント系水硬性材料は、高炉スラグを含有してもよい。
前記セメント系水硬性材料は、SOを含有する。
前記セメント系水硬性材料は、SOを、好ましくは5.1〜14.0質量%、より好ましくは7.2〜11.3質量%含有する。
【0017】
前記セメントは、水硬性セメントである。
前記セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントが挙げられる。また、前記セメントとしては、例えば、該ポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材(ポゾラン)等を混合してなる混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントなども挙げられる。
セメント系水硬性材料は、セメントを、好ましくは30〜94質量%、より好ましくは30〜60質量%含有する。
【0018】
また、前記セメント系水硬性材料は、セメントに高炉スラグが含まれていることにより、高炉スラグを含有していてもよい。また、前記セメント系水硬性材料は、セメントの高炉スラグとは別の高炉スラグを含有してもよい。
【0019】
前記高炉スラグとしては、高炉水砕スラグ等が挙げられる。
すなわち、セメントの高炉スラグとしては、高炉水砕スラグ等が挙げられ、また、セメントの高炉スラグとは別の高炉スラグとしては、高炉水砕スラグの微粉末等が挙げられる。
高炉水砕スラグの微粉末としては、JIS A 6206:2013の“高炉スラグ微粉末”が好ましく、すなわち、比表面積が2,750cm/g以上10,000cm/g未満のものが好ましい。なお、比表面積は、JIS R 5201:2015の比表面積試験に従って測定することができる。
前記セメント系水硬性材料における高炉スラグの含有割合(セメントの高炉スラグと、セメントの高炉スラグとは別の高炉スラグとの合計の含有割合)は、好ましくは0〜60質量%、より好ましくは25〜51質量%である。
また、高炉スラグは、本実施形態に係る地盤改良材に実質的に含まれなくてもよい。
【0020】
前記石膏としては、無水石膏(CaSO4 )、半水石膏(CaSO4 ・0.5H2 O)、二水石膏(CaSO4 ・2H2 O)等が挙げられる。
すなわち、セメントの石膏としては、無水石膏(CaSO4 )、半水石膏(CaSO4 ・0.5H2 O)、二水石膏(CaSO4 ・2H2 O)等が挙げられ、また、セメントの石膏とは別の石膏としては、無水石膏(CaSO4 )、半水石膏(CaSO4 ・0.5H2 O)、二水石膏(CaSO4 ・2H2 O)等が挙げられる。
前記セメント系水硬性材料における石膏の含有割合(セメントの石膏と、セメントの石膏とは別の石膏との合計の含有割合)は、好ましくは7.4質量%以上、より好ましくは12.6〜25.6質量%、さらにより好ましくは16.2〜25.6質量%である。
【0021】
本実施形態に係る地盤改良材は、アロフェンを含むもの(試薬、粘土(好ましくは粘土粉末)など)が含まれていることにより、アロフェンを含有していてもよい。
アロフェンを含むものとしては、アロフェンを40質量%以上含有することが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る地盤改良材は、前記SO100質量部に対して、前記アロフェンを、好ましくは1〜310質量部、より好ましくは15〜200質量部、更により好ましくは28〜185質量部、特により好ましくは60〜120質量部含有する。
なお、アロフェンを含むもの中のアロフェンの含有量、及び、地盤改良材中のアロフェンの含有量は、北川、「土壌中のアロフェンおよび非晶質無機成分の定量に関する研究」(農技研報 B、(1977)、第29号、p.1〜48)に報告された「8N HCl−0.5N NaOH交互溶解法」に従って測定することができる。
【0023】
なお、本実施形態に係る地盤改良材は、対象土への添加前に全ての成分が混合された状態になっている必要はなく、成分ごとに対象土に添加されてもよい。
【0024】
本実施形態に係る改良土は、対象土と、セメント系水硬性材料とを含有する。また、本実施形態に係る改良土は、アロフェンを含有する。
【0025】
言い換えれば、本実施形態に係る改良土は、対象土と、本実施形態に係る地盤改良材とを含有する。
【0026】
さらに、本実施形態に係る改良土は、対象土の水とは別の水を更に含有してもよい。また、本実施形態に係る改良土は、対象土の水とは別の水を含有しなくてもよく、言い換えれば、水として、対象土の水のみを含有してもよい。
【0027】
本実施形態に係る改良土は、湿潤状態の対象土1m当たりのセメント系水硬性材料の量が、好ましくは100〜1100kg/m、より好ましくは400〜1100kg/mである。
また、本実施形態に係る改良土は、乾燥状態の対象土100質量部に対して、セメント系水硬性材料を、好ましくは4.7〜118質量部、より好ましくは18.8〜118質量部含有する。
さらに、本実施形態に係る改良土は、前記セメント系水硬性材料100質量部に対して、対象土の水とは別の水を、好ましくは45〜300質量部、より好ましくは60〜130質量部含有する。
また、本実施形態に係る改良土は、セメント系水硬性材料100質量部に対して、水を(対象土の水、及び、対象土の水とは別に加える水の合計で)、好ましくは19〜960質量部、より好ましくは19〜295質量部含有する。
また、本実施形態に係る改良土は、対象土の水とは別の水を含有する場合、セメント系水硬性材料100質量部に対して、水を(対象土の水、及び、対象土の水とは別に加える水の合計で)、好ましくは60〜960質量部、より好ましくは75〜295質量部含有する。
さらに、本実施形態に係る改良土は、水として、対象土の水のみを含有する場合、セメント系水硬性材料100質量部に対して、水(対象土の水)を、好ましくは19〜654質量部、より好ましくは19〜163質量部含有する。
【0028】
本実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土と、セメント系水硬性材料とが混合された改良土を作製する。また、前記改良土は、アロフェンを含有する。
【0029】
言い換えれば、本実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土と、本実施形態に係る地盤改良材とが混合された改良土を作製する。
【0030】
本実施形態に係る改良土の製造方法では、改良土を構成する成分をどのような順序で混ぜてもよい。
例えば、本実施形態に係る改良土の製造方法では、本実施形態に係る地盤改良材を構成する成分と、水とを混合してスラリーを作製し、該スラリーと対象土とを混合することにより、改良土を作製してもよい。
また、本実施形態に係る改良土の製造方法では、前記スラリーを経ずに、本実施形態に係る地盤改良材を構成する成分と、水と、対象土とを混合することにより、改良土を作製してもよい。
さらに、本実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土の水とは別の水を用いずに、本実施形態に係る地盤改良材を構成する成分と、対象土とを混合することにより、改良土を作製してもよい。
また、本実施形態に係る改良土の製造方法では、本実施形態に係る地盤改良材が、対象土への添加前に全ての成分が混合された状態になっている必要はなく、本実施形態に係る地盤改良材の成分ごとに対象土に添加されてもよい。
【0031】
本実施形態に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0032】
すなわち、本実施形態に係る地盤改良材は、対象土と混合されて用いられる。
また、本実施形態に係る地盤改良材は、セメント系水硬性材料、及び、アロフェンを含有する。
斯かる地盤改良材は、アロフェンにより、改良土の膨張収束時間を短くし得る。
なお、対象土にアロフェンが含まれている場合、改良土は、対象土由来のアロフェンを含むことになるが、本実施形態に係る地盤改良材由来のアロフェンを更に含むことで、改良土の膨張収束時間を短くし得る。
【0033】
なお、本発明に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る地盤改良材、改良土、及び、改良土の製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0035】
<地盤改良材>
地盤改良材としては、下記表1の材料及び混合割合で地盤改良材を作製した。
なお、地盤改良材におけるSOの含有割合(単に「SOの含有割合」ともいう。)を下記表1に示す。
また、アロフェンを含む粘土粉末(以下、単に「粘土粉末」ともいう。)としては、下記表2のものを用いた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
(実施例、比較例、及び、参考例)
下記表3に示す粘土粉末を用い、上記表1及び下記表3に示す配合例の混合割合の地盤改良材を作製し、該地盤改良材と水とを混合してスラリーを得た。なお、水は、地盤改良材100質量部に対して60質量部とした。また、「アロフェンの量」とは、「SO100質量部に対する、アロフェンの量(質量部)」を意味する。
【0039】
【表3】
【0040】
<膨張変化試験>
実施例、比較例及び参考例のスラリーを型枠に打設し、打設後24時間で脱型し、直方体の供試体(寸法:40mm×40mm×160mm(最長部分))を得た。
そして、供試体を20℃の水の中で養生した。また、水中養生直前を基準(材齢0日)とし、水中養生を開始してから10日までは約1日おきに、14日後からは約7日おきに、最長部分の長さ変化を膨張変化の指標として測定した。
最長部分の長さ変化は、JIS A1129−3:2010「モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法‐第3部:ダイヤルゲージ方法」に準じて測定した。
また、長さ変化率に関し、前回(1回前)に測定した長さ変化率との比較において、長さ変化率の1日当たりの増加量が、0.01%/日以下になった場合に、前回の測定時における材齢を収束日数(膨張が収束するまでの日数)とした。
すなわち、N回目の測定時における、長さ変化率の1日当たりの増加量は、下記式(1)で求め、この増加量が0.01%/日以下になった場合に、(N−1)回目の測定時における材齢を収束日数とした。
N回目の測定時における、長さ変化率の1日当たりの増加量(%/日) = (N回目に測定した長さ変化率(%) − (N−1)回目に測定した長さ変化率(%))/(N回目の測定時における材齢(日) − (N−1)回目の測定時における材齢(日))・・・(1)
収束日数について、比較例1、参考例1〜3、及び、実施例1〜6の結果を下記表4に、実施例4、7〜12の結果を下記表5に、比較例1、参考例1〜3、及び、実施例1〜6の結果を図1に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
表4に示すように、セメント系水硬性材料のみからなる比較例1の地盤改良材を用いた場合で、42日後まで膨張が継続していた。
このことから、セメント系水硬性材料と水との反応(水和反応)による生成物であるエトリンガイトが、改良土の膨張の要因と考えられる。
【0044】
表4に示すように、実施例1〜6の地盤改良材を用いた場合では、アロフェンを用いなかった比較例1の地盤改良材を用いた場合に比べて、収束日数が短かった。
また、表4、図1に示すように、SOに対するアロフェンの量が多いほど、収束日数が短かった。
また、表5に示すように、実施例1〜6と異なる地盤改良材を用いた実施例7〜10の場合でも、収束日数は短かった。実施例11、12では、SOの量が多くても、アロフェンを含む地盤改良材を用いれば、収束日数が短かった。
以上の結果から、エトリンガイトの生成反応が改良土の膨張の要因となっており、アロフェンが存在すると、早期にエトリンガイトの生成反応が終結して、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くすることができると考えられる。
したがって、本発明によれば、改良土の膨張が収束するまでの時間を短くし得ることがわかる。
図1