本発明の汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌を分級する分級工程、分級された長径が0.075mm未満の汚染土壌と、汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水との混合工程、pH調整剤を添加してpHを5.8〜8.6に調整するpH調整工程、凝集剤を添加して固形分を凝集させる凝集剤添加工程、固形分と液分とを分離させる固液分離工程、凝集剤添加工程の上澄液をpH調整工程に還流する第一還流工程及び、固液分離工程の液分をpH調整工程に還流する第二還流工程を有する。
請求項1又は2記載の汚染土壌の浄化方法において、汚染土壌を分級する分級工程の前に、更に汚染土壌を解砕する工程を有し、前記凝集剤添加工程における上澄液を当該解砕工程に還流する第三還流工程及び、前記固液分離工程からの液分を当該解砕工程に還流する第四還流工程を有することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法。
請求項1乃至3いずれかの項記載の汚染土壌の浄化方法において、前記吸着材は平均粒径が3〜100μmの粉末形態であってドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩を含有し、ドロマイト系化合物はCaMg(CO3)2、MgO、CaCO3を含み、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1〜23質量%の割合で含有され、吸着材中にMgOを14〜25質量%含むことを特徴とする、汚染土壌の浄化方法。
請求項5記載の汚染土壌の浄化設備において、更に、汚染土壌を解砕する解砕装置を有し、前記凝集剤添加装置における上澄液を当該解砕装置に還流する第三還流装置及び、前記固液分離装置からの液分を当該解砕装置に還流する第四還流装置を有することを特徴とする、汚染土壌の浄化設備。
【背景技術】
【0002】
トンネル、ダム、造成などの建設・土木工事を実施する際には、掘削によって掘り起こし残土として、掘削ずりが発生する。
かかる掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質である有害金属やその化合物等が含まれることがあるため、これらの有害金属等を除去して第二溶出基準を満足しないと最終処分場へ搬入することができない。
また、工場の跡地等にも、有害金属等が土壌に含まれるために、汚染土壌から有害金属等を除去して、第二溶出基準を満足させる必要がある。
【0003】
例えば、特許第4970627号には、汚染土壌や焼却灰等の汚染物質が付着された粒状体を細粒化するとともに、上記粒状体の表面に付着している重金属類やダイオキシン類等の汚染物質を離脱させるために、内周面に軸方向に沿って取付けられ、中心方向に突出する複数の外羽根を有する円筒状の回転ドラムと、外周面に軸方向に沿って取付けられ径方向に突出する複数の内羽根を有し、上記回転ドラムの内部に回転ドラムに対し偏心して取付けられた、上記回転ドラムと逆方向に回転するロータとを備えた1台の細粒化手段を用い、上記細粒化手段の処理空隙である上記回転ドラムと上記ロータとの間隙に汚染物質が付着した粒状体を投入し、加水しながら、圧縮及び粒状体相互間の擦り合わせの力を作用させて、上記粒状体を独立した粒状体に分離するとともに、上記粒状体の表面に付着している汚染物質を分離する汚染物質が付着した粒状体の処理方法において、上記細粒化処理された粒状体を再度同じ細粒化手段に投入して再処理を行うとともに、再処理時には、上記ロータの偏心量を前回よりも大きくして上記処理空隙を前回より小さくするか、あるいは、上記回転ドラムと上記ロータとの相対的な回転速度を前回より速くするか、ないしは、上記偏心量を前回より大きくしかつ上記回転速度を前回より高速にして、上記粒状体に加える応力を前回より大きくするようにしたことを特徴とする汚染物質が付着した粒状体の処理方法が記載されている。
しかし、上記汚染土壌の処理方法は、高コスト及び高エネルギーを要する。
【0004】
また近年は、汚染土壌の処理方法として、低コスト及び低エネルギーの観点から、キレート剤を用いた湿式洗浄により重金属等をキレート化合物として水溶液中に溶解させ、汚染土壌から除去する方法が提案されている。
【0005】
例えば特開2018−8222号公報には、汚染土壌を湿式洗浄した後に生じる液相から、陰イオンとして存在する有害物質を除去するために、有害物質で汚染された汚染土壌を処理する汚染土壌の処理方法であって、前記汚染土壌にキレート剤を添加して湿式洗浄する洗浄工程と、湿式洗浄後の前記汚染土壌を固液分離する分離工程と、固液分離された固相にセメント、セメント系固化材または石灰系固化材を添加して改質する固相処理工程と、固液分離された液相に固化材及び鉄(III)を含有する添加剤を添加し、前記有害物質を沈殿させて前記液相から除去する液相処理工程と、を有することを特徴とする汚染土壌の処理方法が開示されている。
【0006】
しかし、キレート剤を用いた汚染土壌の処理方法は、キレート剤が有機物であるため時間の経過とともに分解等がおこると重金属が再溶出することとなり、長期安定性に問題があった。
また、セメントや消石灰を使用した汚染土壌の処理方法は、セメントや消石灰はアルカリ性であるため、処理土壌がアルカリ性となってしまい、再利用が困難である。
【0007】
更に、汚染土壌を凝集剤により有害金属等を除去する方法では、土壌汚染対策法(環境省)の第一溶出基準を満足できない場合があり、またキレート剤だけでは、有害金属等を十分に除去できず、第二溶出基準を満足できない場合もあった。
【0008】
そこで、汚染土壌に含まれる有害金属等の汚染物質を除去し、第二溶出基準を満足して最終処分場に持ち込みが可能となる、新規な汚染土壌の浄化方法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、重金属のような有害金属、ハロゲン、土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素や、これらの化合物等の汚染物質(以下、「汚染物質」という。)に汚染された汚染土壌から、汚染物質を有効に吸着して、第二溶出基準を満足するように吸着材を含む洗浄水で処理する、汚染土壌の新規な浄化方法を提供することである。
特に、汚染物質を多く含む細かい粒径の汚染土壌から有効に汚染物質を除去し、汚染土壌全量の再利用可能な汚染土壌の浄化方法を提供することである。
【0011】
また本発明の目的は、汚染物質で汚染された汚染土壌の上記浄化方法を有効に実施することができる、汚染土壌の浄化設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の汚染土壌の浄化方法は、
汚染土壌を分級する分級工程、
分級された長径が0.075mm未満の汚染土壌と、汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水とを混合する混合工程、
pH調整剤を添加してpHを5.8〜8.6に調整するpH調整工程、
次いで、凝集剤を添加して固形分を凝集させる凝集剤添加工程、
固形分と液分とを分離させる固液分離工程、
前記凝集剤添加工程における上澄液を前記pH調整工程に還流する第一還流工程及び、
前記固液分離工程からの液分を前記pH調整工程に還流する第二還流工程を有することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法である。
【0013】
(2)好ましくは上記(1)の汚染土壌の浄化方法において、前記混合工程では更にキレート剤を添加混合することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法である。
【0014】
(3)より好ましくは上記(1)または(2)の汚染土壌の浄化方法において、汚染土壌を分級する分級工程の前に、更に汚染土壌を解砕する工程を有し、前記凝集剤添加工程における上澄液を当該解砕工程に還流する第三還流工程及び、前記固液分離工程からの液分を当該解砕工程に還流する第四還流工程を有することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法である。
【0015】
(4)さらに好ましくは上記(1)乃至(3)のいずれかの汚染土壌の浄化方法において、前記吸着材は平均粒径が3〜100μmの粉末形態であってドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩を含有し、ドロマイト系化合物はCaMg(CO
3)
2、MgO、CaCO
3を含み、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1〜23質量%の割合で含有され、吸着材中にMgOを14〜25質量%含むことを特徴とする、汚染土壌の浄化方法である。
【0016】
(5)本発明の汚染土壌を浄化する設備は、
汚染土壌を分級する分級装置、
分級された長径が0.075mm未満の汚染土壌と、汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水とを混合する混合装置、
pH調整剤を添加するpH調整装置、
凝集剤を添加する凝集剤添加装置、
固形分と液分とを分離させる固液分離装置、
前記凝集剤添加装置内の上澄液を前記pH調整装置に還流するための第一還流装置、及び、
前記固液分離装置内の液分を前記pH調整装置に還流する第二還流装置を備えることを特徴とする、汚染土壌の浄化設備である。
【0017】
(6)好ましくは上記(5)の汚染土壌の浄化設備において、更に、汚染土壌を解砕する解砕装置を有し、前記凝集剤添加装置からの上澄液を当該解砕装置に還流する第三還流装置及び、前記固液分離装置からの液分を当該解砕装置に還流する第四還流装置を備えることを特徴とする、汚染土壌の浄化設備である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の汚染土壌の浄化方法は、重金属のような有害金属、ハロゲン、土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素や、これらの化合物等の汚染物質に汚染された汚染土壌から当該汚染物質を有効に吸着して、第二溶出基準を満足する土壌を得ることが可能となり、これにより管理型最終処分場への土壌の搬入が可能となる。
また、上記本発明の汚染土壌の浄化設備は、重金属のような有害金属、ハロゲン、土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素や、これらの化合物等の汚染物質で汚染された汚染土壌の浄化方法を有効に実施することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の汚染土壌の浄化方法は、
汚染土壌を分級する分級工程、
分級された長径が0.075mm未満の汚染土壌と、汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水とを混合する混合工程、
pH調整剤を添加してpHを5.8〜8.6に調整するpH調整工程、
次いで、凝集剤を添加して固形分を凝集させる凝集剤添加工程、
固形分と液分とを分離させる固液分離工程、
前記凝集剤添加工程における上澄液を前記pH調整工程に還流する第一還流工程及び、
前記固液分離工程からの液分を前記pH調整工程に還流する第二還流工程を有することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法である。
【0021】
また、本発明の汚染土壌を浄化する設備は、
汚染土壌を分級する分級装置、
分級された長径が0.075mm未満の汚染土壌と、汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水とを混合する混合装置、
pH調整剤を添加するpH調整装置、
凝集剤を添加する凝集剤添加装置、
固形分と液分とを分離させる固液分離装置、
前記凝集剤添加装置内の上澄液を前記pH調整装置に還流するための第一還流装置、及び、
前記固液分離装置内の液分を前記pH調整装置に還流する第二還流装置を備えることを特徴とする、汚染土壌の浄化設備である。
【0022】
具体的に、
図1を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の汚染土壌の浄化装置1の一例を示した模式図である。
本発明の汚染土壌の浄化方法は、まず、重金属のような有害金属、ハロゲン、土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素や、これらの化合物等の汚染物質で汚染された汚染土壌2を分級処理する(分級工程3)。
ここで、汚染物質で汚染された汚染土壌2の種類は特に限定されず、トンネル、ダム、造成などの建設・土木工事現場から発生する残土や、工場跡地等の掘削残土等が該当する。
また、土壌の種類としても、岩、石、レキ、砂、シルト等が含まれ、特に限定されない。
【0023】
汚染土壌2を分級装置3(3−1、3−2)に導入することによって分級する。
かかる分級工程における分級処理は、処理する汚染土壌2に応じて、例えば、
図1に示すように、一次分級処理3−1を行い、次いで二次分級処理3−2を行う等、複数の分級装置3を設けて複数回の分級処理をおこなってもかまわない。
【0024】
また、好ましくは、分級工程の前に、汚染土壌の解砕工程を設けて、汚染土壌を解砕装置10に導入して解砕処理(解砕工程)してから上記分級処理をすることが、効率よく汚染土壌2から汚染物質を除去することができるとともに、最終処分場で持ち込める第二溶出基準を満たす汚染処理土壌を多く得ることができることから望ましい。また、解砕処理する際に、解砕処理の効率化から、例えば水のような解砕水を用いて解砕することがより好ましい。
【0025】
汚染土壌2を解砕した後または汚染土壌2をそのまま分級装置(3−1、3−2)に導入するが、段階的な複数の分級処理をすることにより、例えば、汚染土壌粒の長径が100mmを超えるもの、40〜100mm、1〜40mm、0.075〜1mm、0.075mm未満に分級して、粒度100mmを超えるもの、40〜100mm、1〜40mm、0.075〜1mmは、工作物の埋戻し材料、土木構造物の裏込材、道路盛土材料、河川築堤材料、宅地造成用材料、水面埋立用材料等に再利用する。
【0026】
分級処理により土壌粒の長径が0.075mm未満のものを、混合装置4に導入する。
汚染物質は、粒径が小さい土壌粒子に多く含まれることから、本発明を土壌粒の長径が0.075mm未満のものに適用することで、有効に汚染物質を吸着捕獲することができるものである。
混合装置4には、前記土壌粒の長径が0.075mm未満のもの(以下、「シルト」という。)と、汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水とを混合する。
【0027】
前記汚染物質を吸着する吸着材を含む洗浄水は、混合装置4に導入される前に、予め当該吸着材と水とを混合して洗浄水を準備してから導入しても、混合装置に、水及び吸着材を汚染土壌とともに直接添加しても、いずれの配合手法を用いることができるが、好ましくは、混合装置4に導入する前に、予め当該吸着材と水とを混合して洗浄水を準備しておくことが、汚染土壌と均一に混合できる時間が短くなる点から望ましい。
【0028】
本発明に用いる汚染物質を吸着する吸着材としては、特に限定されず、公知の汚染物質吸着材を用いることができる。
好ましくは、当該吸着材は、粉末状であることが、洗浄水中に均一に広く分散されることができるため望ましい。また、洗浄水中の粉末形態とすることで汚染土壌と速やかに反応することが可能であり、汚染物質を効率的に吸着して捕獲することができる。
かかる粉末の平均粒径は、好ましくは3〜100μm、より好ましくは30〜100μmであることが、洗浄水中への均一な分散性の点から望ましい。
【0029】
また、汚染物質を吸着できる吸着材としては、公知の任意の吸着材を用いることができるが、特に、ドロマイト系化合物を含む吸着材が、汚染物質を有効に捕獲して吸着固定することができることから望ましい。
【0030】
ここで、汚染物質は、重金属のような有害金属、ハロゲン、土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素や、これらの化合物等を意味し、例えば、重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が例示でき、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できるが、これらのものに限定されるものではない。
【0031】
吸着材として好適に用いられるドロマイト系化合物は、MgO、CaMg(CO
3)
2及びCaCO
3を必須含有主成分とするものである。
当該成分を含有するドロマイト系化合物としては、例えば、MgO、CaCO
3、CaMg(CO
3)
2を主成分とする半焼成ドロマイトが挙げられる。
前記ドロマイトは、市場で入手し得る任意のものを用いることができ、産地は問わない。
また、半焼成ドロマイトも市場で入手し得る任意の半焼成ドロマイトや、市場で入手し得る任意のドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイトを用いることができ、産地や原料ドロマイトの組成等は問わない。半焼成ドロマイトは、分解反応が完全に完了するまでドロマイトを焼成して得られるものではなく、MgO、CaMg(CO
3)
2及びCaCO
3を必須成分として含むものである。
【0032】
ドロマイトは、石灰石CaCO
3とマグネサイトMgCO
3のモル比が1:1となる複塩構造を有しており、CO
32−基を挟んでCa
2+イオンとMg
2+イオンが交互に層を成して、一般に、MgCO
3の割合が10〜45質量%のものをいう。ドロマイトは、国内に多量に存在しており、ドロマイトを使用した吸着材は、コストや環境負荷の点からも有利である。
【0033】
上記半焼成ドロマイトとしては、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO
3)
2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)となる半焼成ドロマイトを好適に用いることができる。
半焼成ドロマイト中に含まれるCaMg(CO
3)
2相を定量して、上記範囲内のCaMg(CO
3)
2相残留量の半焼成ドロマイトを好適に用いることで、原料となるドロマイト鉱石の産地による組成の相違や、焼成温度等の焼成条件の設定などに関係なく、ドロマイトが最大に優れた汚染物質吸着性能を有することが可能となる。
【0034】
ドロマイトは焼成することで、CaMg(CO
3)
2→MgO+CaCO
3+CO
2で表わされる分解反応を示す。また、ドロマイトの焼成による上記熱分解により、細孔が形成されて汚染物質捕獲性能を発揮しているものと考えられる。
好適には、ドロマイト系化合物は、ドロマイトを焼成した半焼成ドロマイト中のドロマイト相(CaMg(CO
3)
2相)の残留量を粉末X線回折によるリートベルト法により解析して、残留CaMg(CO
3)
2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)、好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)とすることで、特に好適に汚染物質を、より良好に捕獲することを実現することが可能となる。
【0035】
例えば、かかる好適な半焼成ドロマイトは、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO
3)
2相の含有量xが、好ましくは0.4≦x≦35.4(質量%)、より好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)となるように焼成することで製造することができる。
ドロマイトを焼成する温度は、特に限定されず、通常ドロマイトを焼成して半焼成ドロマイトを製造する温度、例えば650〜1000℃で焼成することができる。残留CaMg(CO
3)
2相の含有量が、0.4≦x≦35.4(質量%)となるように焼成すれば焼成時間も制限されるものではない。
【0036】
ドロマイト系化合物を含む吸着材中のMgO含有量は、好ましくは粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析した値で14〜25質量%であり、さらに好適には14〜23質量%である。
かかる吸着材中のMgOは、含有されるドロマイト系化合物由来のものであり、具体的には、ドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイト等由来のものであり、更に好ましくは半焼成ドロマイト由来のものである。
吸着材中のMgO含有量が14質量%未満では、鉛やフッ素等に対する吸着能力が低下する場合があったり、25質量%を超えると、MgOのpHがアルカリ性であるため、汚染物質を吸着したあとの雨水等の水のpHが10以上のアルカリ性を示すこととなり、望ましくない。
【0037】
本発明に用いる吸着材に含まれるドロマイト系化合物は、必須含有成分MgO、CaMg(CO
3)
2、CaCO
3が含まれるように1種類及び/または2種類以上の材料を任意に混合することができる。
一例として21質量%のMgOを含有する半焼成ドロマイトを使用した場合においては、吸着材中の半焼成ドロマイト配合比を約80〜99質量%とすることにより、本発明に用いる吸着材中のMgOの含有量を14〜25質量%とすることができるが、使用するドロマイト系材料に応じて、上記配合比率の制約を受けるものではない。
【0038】
更に、本発明に用いる吸着材には酸性硫酸塩が含まれる。
酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が例示でき、好ましくは硫酸第一鉄を含有する。
酸性硫酸塩を含有することにより、硫酸第一鉄のようにその高い還元作用によって、砒素や六価クロム等の有害金属等に対して、より有効に捕獲することができるとともに、酸性であるため、他のドロマイト系化合物中の含有材料の配合比率を調整することで、当該吸着材を用いて得られる洗浄水を中性付近に保持することを可能とする。
【0039】
また、本発明に用いる吸着材に含まれる酸性硫酸塩は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、内割で、酸性硫酸塩を1〜23質量%、好ましくは14〜21質量%の割合で含むことが望まく、吸着材中に、前記割合でドロマイト系化合物と酸性硫酸塩とを含むことが好ましい。
【0040】
吸着材の一例としては、上記したように、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩を含み、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1〜23質量%の割合で含有され、且つ、吸着材中にMgOを14〜25質量%含む吸着材を好適に用いることができる。
【0041】
本発明に用いる吸着材中に、上記ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩を含有し、これらの各含有量を上記範囲内の量とすることで、より有効に汚染物質等を捕獲することができる。
【0042】
本発明に用いる好適な吸着材は、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で調製した検液のpHが中性付近(環境省の一律排水基準である(5.8〜8.6))となるようにすることができるものである。
【0043】
上記吸着材と水とを混合した洗浄水のpHが最終的に8〜10、好ましくは9〜10で平衡状態に、より好ましくは例えば28日以降には8〜10、好ましくは9〜10となるものである。更に、望ましくは、当該吸着材と水とを混合した初期の洗浄水のpHは6〜8となるものである。
【0044】
上記吸着材を含む洗浄水と汚染土壌(シルト)を、混合装置4内で混合して、汚染土壌中の汚染物質を吸着材に吸着させる。
また、上記混合処理の際に、汚染土壌中の汚染物質の濃度が極めて高い場合、例えば汚染物質を高濃度で含む焼却灰の場合には、必要に応じて、更にキレート剤を混合装置4に追加で添加配合して混合し、汚染物質を捕獲することも可能であるが、本発明においてはキレート剤の添加は必須構成ではない。
また、本発明においては、汚染物質を捕獲したキレート剤は、最終的に固液分離工程で産出される脱水ケーキ中にほぼ回収されるものである。
【0045】
必要に応じて添加配合できるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDA(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などを例示することができる。
【0046】
次いで、混合処理を経たのち、混合装置中の固形分及び液分をpH調整装置5に導入して、pH調整剤を添加する。
かかるpH調整工程においては、例えば、希硫酸や水酸化ナトリウム等の酸成分またはアルカリ成分を添加して、pHを5.8〜8.6の排水基準における中性範囲に調整する。
pHを調整して中性とすることで、その後の凝集剤添加装置6にて、吸着材を含む液分中のフロックを凝集させることが可能となる。
【0047】
pH調整によりpHが5.8〜8.6との排水基準における中性範囲に調整された固形分及び液分を凝集剤添加装置6に導入する。
かかる凝集剤添加装置6では、凝集剤が添加されて、pH調整装置5から導入された液分中のフロックが凝集されて沈殿をする。
【0048】
凝集剤としては、特に限定されず、例えば、無機系凝集剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸鉄または塩化鉄などの鉄含有化合物、あるいは生石灰または消石灰などのカルシウム含有化合物や、ポリ塩化アルミニウム、消石灰、塩化第二鉄などを例示することができる。一方、有機系凝集剤としては、ポリアクリルアミドなどのアニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等を例示することができる。
【0049】
前記凝集剤添加装置6にてフロックが凝集されて沈殿物を形成した後の上澄液は、例えば導管(第一還流装置)12にて上記pH調整装置5に還流されて(第一還流工程)、pH調整装置5において液分として再利用される。
また必要に応じて、上記分級工程の前に解砕工程が設けられる場合には、当該上澄液は、例えば導管(第三還流装置)14にて解砕装置10に還流され(第三還流工程)、汚染土壌2を解砕する際に、好ましくは解砕工程において添加することができる解砕水として再利用される。
【0050】
凝集剤添加装置6中の上澄液を上記のように還流して再利用した後の固形分と液分とを、固液分離装置7に導入する。
凝集剤添加装置で形成されたフロックの沈殿に時間がかかる場合もあることから、固液分離装置の前に、必要に応じて沈殿装置11を設けて、フロックを十分に沈殿させることが望ましい。
【0051】
固液分離装置7に導入された固形分(スラッジ)と液分とを、例えばデカンタ、ろ過等の公知の手段で固液分離処理する(固液分離工程)。
固液分離された液分は、例えば導管(第二還流装置)13にて上記pH調整装置5に還流されて(第二還流工程)、pH調整装置5において液分として再利用される。
また必要に応じて、上記分級工程の前に解砕工程が設けられる場合には、当該液分は、例えば導管(第四還流装置)15にて解砕装置10に還流され(第四還流工程)、汚染土壌を解砕する際に、好ましくは解砕工程にて添加することができる解砕水として再利用される。
【0052】
固液分離装置7にて分離された固形分である脱水ケーキは、0.075mm未満の固形分の集合体であり、第二溶出基準を満足する固形分を得ることが可能となる。
汚染物質により汚染された汚染土壌中の種々の汚染物質を浄化するにあたり、従来のキレート剤を用いた浄化方法では、汚染処理土壌が第二溶出基準を満足できない場合もあったが、本発明によると、汚染物質で汚染された汚染土壌を浄化処理した後の処理土壌は、上記種々の汚染物質を第二溶出基準が満足される程度まで低減させることが可能である。
【0053】
したがって、これまでの浄化処理では、土壌汚染対策法(環境省)に基づく第二溶出量基準以下にまで溶出量を低減させることが困難で、最終処理処分場9に汚染処理土壌を持ち込めなかった汚染土壌であっても、有効に処理して第二溶出基準を満足させることができ、したがって最終処分場で持ち込める汚染処理土壌を多量に産出することでき、最終処分場で処理されることが可能となる。
また、上記したように、汚染土壌の長径が100mmを超えるもの、40〜100mm、1〜40mm、0.075〜1mm、0.075mm未満に分級して、粒度100mmを超えるもの、40〜100mm、1〜40mm、0.075〜1mmのものは、工作物の埋戻し材料、土木構造物の裏込材、道路盛土材料、河川築堤材料、宅地造成用材料、水面埋立用材料等として利用可能であり、本発明により0.075mm未満の汚染土壌も最終処分場への持ち込みが可能となることから、汚染土壌の全量の再利用が可能である。
特に、吸着材としてドロマイト系吸着材を用いた場合には、本発明の汚染処理を実施した処理土壌は中性であるため、植生等の土壌として再利用が可能である。