【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、生物系特定産業技術研究支援センター 「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究) 産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【課題】ナノセルロースとナノカーボンとをナノレベルにおいて秩序ある配置とすることで相乗的な効果を引き出し、ナノセルロースとナノカーボンとの比率を調整することにより導電体から半導体までの性質を制御することのできるナノセルロース・ナノカーボン複合構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】大部分のナノカーボンが凝集体を構成しない単体の状態であって、当該ナノカーボンの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合した構造単位を集積した複合構造体の体積抵抗率の値が、1×10
Ω・cmの範囲内にある。ここで、ナノカーボンは、カーボンナノチューブ、グラフェン及び高結晶性カーボンブラックより選択される1又は2以上で構成され、ナノセルロースは、セルロースナノファイバーで構成されている。
前記ナノセルロースは、水素結合性ポリマーを介して前記ナノカーボンの表面に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体。
前記水素結合性ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又は、白子由来高分子量のDNAであることを特徴とする請求項4に記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記各非特許文献においては、ナノセルロースであるセルロースナノファイバーとナノカーボンであるカーボンナノチューブとを組み合わせているが、いずれも単に物理的に混合したものである。従って、形成された構造体もセルロースナノファイバーとカーボンナノチューブとが物理的に重なったものに過ぎず、セルロースナノファイバーとカーボンナノチューブとが無秩序(ランダム的)に配置されている。特に、セルロースナノファイバーは、主にバインダーのような役割を果たし、セルロースナノファイバー・カーボンナノチューブ複合構造体に柔軟性または機械強度をもたらすことが主要な目的となっている。
【0008】
このように、これまでの応用研究は、ナノセルロース・ナノカーボン複合構造体というよりナノセルロース・ナノカーボン混合構造体ともいうべきものであって、電気的特性はナノカーボンであるカーボンナノチューブのみに依存し、物性的特性はナノセルロースであるセルロースナノファイバーのみに依存している。従って、ナノセルロースのナノレベル構造と電気的特性(特に絶縁性)、及び、ナノカーボンのナノレベル構造と電気的特性(特に導電性)をナノレベルで組み合わせて相乗的な効果を未だ見出せていないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題に対処して、ナノセルロースとナノカーボンとをナノレベルにおいて秩序ある配置とすることで相乗的な効果を引き出し、ナノセルロースとナノカーボンとの比率を調整することにより導電体から半導体までの性質を制御することのできるナノセルロース・ナノカーボン複合構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、凝集体を構成しない単体のナノカーボンと分散性の高い単体のナノセルロースとを複合することにより、上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体は、請求項1の記載によれば、
大部分のナノカーボンが凝集体を構成しない単体の状態であって、
当該ナノカーボンの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合した構造単位を集積した複合構造体の体積抵抗率の値が、1×10
−4Ω・cm〜1×10
12Ω・cmの範囲内にあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体であって、
前記ナノカーボンは、カーボンナノチューブ、グラフェン及び高結晶性カーボンブラックより選択される1又は2以上で構成され、
前記ナノセルロースは、セルロースナノファイバーで構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体であって、
前記ナノカーボンは、カーボンナノチューブ及びグラフェンで構成され、
当該カーボンナノチューブ及び前記セルロースナノファイバーが結合した構造単位がグラフェンとグラフェンとの間にインターカレートされて構成された新たな構造単位が集積した複合構造体であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体であって、
前記ナノセルロースは、水素結合性ポリマーを介して前記ナノカーボンの表面に結合していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項4に記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体であって、
前記水素結合性ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又は、白子由来高分子量のDNAであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の製造方法は、請求項6の記載によれば、
請求項1〜5のいずれか1つに記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体を製造する方法であって、
ナノセルロースを媒質中に分散して第1のスラリーを調整する工程と、
ナノカーボンを媒質中に分散して孤立分散液を調整する工程と、
前記第1のスラリーに前記孤立分散液を混合して第2のスラリーを調整する工程と、
前記第2のスラリーから薄膜等の複合構造体を成形する成形工程とを有し、
前記ナノセルロースと前記ナノカーボンとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を制御することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項6に記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の製造方法であって、
前記第2のスラリーに膨張黒鉛を添加しながら分散及びインターカレーション処理を行い第3のスラリーを調整する工程を有し、
前記成形工程において、第2のスラリーに替えて第3のスラリーから複合構造体を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体は、大部分のナノカーボンが凝集体を構成しない単体の状態にある。また、この単体のナノカーボンの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合して構造単位を構成している。そして、この構造単位が集積した複合構造体の体積抵抗率の値が、1×10
−4Ω・cm〜1×10
12Ω・cmの範囲内にある。
【0019】
よって、ナノセルロースとナノカーボンとをナノレベルにおいて秩序ある配置とすることで相乗的な効果を引き出し、ナノセルロースとナノカーボンとの比率を調整することにより導電体から半導体までの性質を制御することのできるナノセルロース・ナノカーボン複合構造体を提供することができる。
【0020】
また、上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体において、ナノカーボンは、カーボンナノチューブ、グラフェン及び高結晶性カーボンブラックより選択される1又は2以上で構成してもよい。また、当該構造体において、ナノセルロースは、セルロースナノファイバーで構成してもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0021】
また、上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体において、ナノカーボンは、カーボンナノチューブ及びグラフェンで構成され、当該カーボンナノチューブ及びセルロースナノファイバーが結合した構造単位がグラフェンとグラフェンとの間にインターカレートされて構成された新たな構造単位が集積した複合構造体で構成してもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0022】
また、上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体において、ナノセルロースは、水素結合性ポリマーを介してナノカーボンの表面に結合してもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に且つより効果的に発揮することができる。
【0023】
また、上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体において、水素結合性ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又は、白子由来高分子量のDNAであってもよい。このことにより、上記作用効果をより具体的に発揮することができる。
【0024】
また、上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の製造方法は、請求項1〜5のいずれか1つに記載のナノセルロース・ナノカーボン複合構造体を製造する方法であって、第1のスラリーを調整する工程、孤立分散液を調整する工程、第2のスラリーを調整する工程、及び、成形工程を有している。第1のスラリーを調整する工程においては、ナノセルロースを媒質中に分散する。孤立分散液を調整する工程においては、ナノカーボンを媒質中に分散する。第2のスラリーを調整する工程においては、第1のスラリーに孤立分散液を混合する。また、成形工程においては、第2のスラリーから薄膜等の複合構造体を成形する。
【0025】
よって、これらの工程を経ることにより、ナノセルロースとナノカーボンとをナノレベルにおいて秩序ある配置とすることで相乗的な効果を引き出し、ナノセルロースとナノカーボンとの比率を調整することにより導電体から半導体までの性質を制御することのできるナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の製造方法を提供することができる。
【0026】
また、上記構成によれば、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の製造方法は、上記各工程に加え第3のスラリーを調整する工程を有していてもよい。第3のスラリーを調整する工程においては、第2のスラリーに膨張黒鉛を添加しながら分散及びインターカレーション処理を行い第3のスラリーを調整する。また、成形工程においては、第3のスラリーから薄膜等の複合構造体を成形する。このことにより、上記作用効果をより具体的に且つより効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体及びその製造方法を実施形態により説明する。なお、本発明は、下記の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0029】
まず、本発明において使用するナノセルロースについて説明する。樹木の木部や綿繊維などを構成するセルロース分子は、直鎖状であって30〜40本が規則的に束になった幅約3nmのセルロースミクロフィブリルを形成する。セルロースミクロフィブリルは、更に束になってフィブリルを形成し、更に集合してセルロール繊維を形成する。特にセルロースミクロフィブリルは、多くの水素結合を介して強固に構成されており簡単に分離することができない。
【0030】
ナノセルロースとは、一般にセルロースミクロフィブリル単位、或いは、その集合体であって幅が数十nm以下にまで分離された有機系のナノ素材をいう。ナノセルロースは、高い結晶構造に由来する優れた熱寸法安定性、熱伝導性及び絶縁性を有している。ナノセルロースには、ミクロンレベルの長さを有するセルロースナノファイバー(以下「CNF」ともいう)と、150nm以下の長さを有するセルロースナノクリスタル(以下「CNC」ともいう)に大別される。本発明においては、ナノセルロースの種類や幅と長さ等を特に限定するものではないが、ある程度の長さを有するCNFを使用することが好ましい。
【0031】
また、CNFを製造する技術は、既に多く知られている。例えば、オリフィスやホモジナイザー、高圧水流等を使用した物理的操作、セルロースの膨潤剤や酸化剤等の化学薬品を使用した化学的操作、セルロース分解酵素等を使用した生化学的操作、更にはバクテリアが産生するバクテリアセルロースなども製造されている。また、製造されたCNFの表面を化学改質して、様々な用途で検討されている。
【0032】
本発明においては、CNFの製造法や使用するCNFの幅と長さ等を特に限定するものではないが、化学的操作の1つであるTEMPO酸化セルロースナノファイバー(以下「TOCN」ともいう)を使用するようにしてもよい。また、本実施形態においては、CNFとしてTOCNを使用して説明する。
【0033】
なお、TOCN製造に使用するTEMPO(2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxyl)とは、ニトロキシルラジカルの一種でありセルロースの酸化触媒として作用する。TEMPO酸化により、結晶性のセルロースミクロフィブリルの表面に露出しているC6位の水酸基が選択的にカルボキシ基に酸化される。その後の解繊処理で幅約3nmのセルロースミクロフィブリルに分離し、細い繊維幅と大きなアスペクト比を特徴とする。TOCNの製造及び用途については多く紹介されており(基本特許:特許第5970915号)、ここではその詳細は省略する。
【0034】
次に、ナノカーボンについて説明する。ナノカーボンとは、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノダイヤモンドなどが代表的なものとして挙げられる。本発明においては、ナノカーボンの種類や幅と長さ等を特に限定するものではないが、その電気特性を考慮して使用することが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、ナノカーボンのうち、カーボンナノチューブ(以下「CNT」ともいう)、グラフェン(以下「GP」ともいう)に加え、カーボンブラック(以下「CB」ともいう)の一種であるアセチレンブラック(以下「AB」ともいう)等の結晶性の高いカーボン系のナノ素材を使用することが好ましい。また、CNTを使用する場合には、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であってもよく、或いは単層カーボンナノチューブ(SWCNT)であってもよい。また、ナノカーボンの表面を化学修飾して使用してもよい。
【0036】
これらのナノカーボンは、活性の高いπ電子雲に由来する優れた電気伝導性及び熱伝導性を持っている。本発明においては、これらのナノカーボンの特性に上記ナノセルロースの特性である優れた熱寸法安定性、熱伝導性及び絶縁性を加えて相乗効果を発揮させることを目的とする。
【0037】
そのために、本発明においては、ナノカーボンの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合した構造単位を構成し、この構造単位を集積して複合構造体を構成する。つまり、ナノカーボンやナノセルロースがそれぞれ凝集体を形成することなく単体として結合して構造単位を構成している状態をいう。例えば、1本のCNTと1本又は複数本のCNFが結合し、或いは、1枚のGPと複数本のCNFが結合して構造単位を構成する。また、1本のCNTと1本又は複数本のCNFが結合して初期の構造単位を構成し、この初期の構造単位がGPとGPとの間にインターカレートした状態で最終的な構造単位を構成する場合も含むものとする。ここで、化学的又は物理的に結合するとは、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力等による結合などをいう。
【0038】
次に、本実施形態に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体をその製造方法に従って具体的に説明する。本実施形態に係る製造方法は、CNFスラリー(第1のスラリー)を調整する工程、孤立分散液を調整する工程、成形用スラリー(第2・第3のスラリー)を調整する工程、及び、成形工程を有している。以下、各工程について説明する。
【0039】
<CNFスラリー調整工程>
この工程においては、ナノセルロース(CNFを使用)を媒質中に分散して第1のスラリー(CNFスラリー)を調整する。なお、本実施形態においては、CNFとしてTOCNを使用し、媒質として水を使用した。TOCNは、その表面にカルボキシ基を有しており、これをNa塩型(−COONa)で使用してもよく、酸型(−COOH)に変換してから使用してもよい。なお、本実施形態においては、Na塩型で使用し、水中で各CNFが電気的に反発して分散性が向上すると共に、弱いゲルを形成してスラリー状となる。なお、必要により分散剤や安定剤を使用してもよい。
【0040】
本実施形態において使用するCNFの繊維幅は、一般に1〜10nm程度であることが好ましく、長さは300〜3000nm程度であることが好ましい。また、CNFのカルボキシ基量は、特に限定するものではないが、一般に0.01〜3.0mmol/g程度である。また、上述のように、本実施形態においてはCNF(TOCN)をNa塩型で使用して分散性の良好な状態でCNT等のナノカーボン分散液と混合することにより、本発明の目的であるナノカーボンの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合して相乗効果を発現する。
【0041】
<孤立分散液調整工程>
この工程においては、ナノカーボンを媒質中に分散して孤立分散液を調整する。なお、本実施形態においては、ナノカーボンとしてCNT、GP、高結晶性CBの一種であるABを使用し、媒質として水を使用した。以下、CNTを分散したものをCNT孤立分散液、GPを分散したものをGP孤立分散液、ABを分散したものをAB孤立分散液ともいう。また、CNT、GP、ABなどのナノカーボンは単一成分として使用してもよく、或いは2種以上混合して複合成分として使用してもよい。また、本実施形態において使用するナノカーボンの大きさ(直径や長さなど)は、一般的に定義される範囲であって特に限定するものではない。例えば、CNTの直径は、0.4〜100nm(単層〜多層)である。また、GPの厚さは、1〜10nmであり、エリアサイズは1〜30(μm)
2程度であることが好ましい。
【0042】
ナノカーボンを水中に分散して孤立分散液を調整する装置・方法については、多く検討されており、本実施形態において特に限定するものではない。但し、本実施形態においては、ナノカーボンを孤立分散することが重要である。ここで、ナノカーボンとしてCNTを例にして孤立分散について説明する。
【0043】
CNTは、チューブ間のファンデルワールス力などによって複数のCNTがチューブ凝集体を形成する。本実施形態においては、CNTの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合して相乗効果を発現することが重要である。そこで、大部分のCNTが凝集体を構成しない単体の状態でCNFと結合することが必要である。ここで、大部分のCNTとは、特に数値限定をするものではない。しかし、好ましくはCNTの50%以上、更に好ましくはCNTの60%以上が凝集体を構成することなく均一に分散している状態がよい。
【0044】
この工程における孤立分散液の調整法は、特に限定するものではない。例えば、CNTの分散方法としては、親水性及び疎水性を有する界面活性剤(例えば、特開2007−039623号公報を参照)からなる単一組成ミセル又は混合ミセル水溶液を準備し、これにCNTを添加して分散処理する方法などが挙げられる。また、オリフィスを用いた分散方法(特開2015−013772号公報を参照)も提案されている。なお、本実施形態においては、まず、ボールミルなどを使用して疎水性のCNTなどに水親和性をもたせる湿潤処理を行った。次に、ビーズミルなどを使用して湿潤処理したCNTなどに界面活性剤等を配合して分散処理を行った。
【0045】
孤立分散液におけるナノカーボンの比率は、後工程でCNFスラリーと混合する際の操作性と、最終成形したナノセルロース・ナノカーボン複合構造体におけるナノセルロースとナノカーボンとの比率を考慮して調整する。なお、本発明においては、ナノセルロースとナノカーボンとの比率を調整することにより導電体から半導体までの性質を制御することができる。
【0046】
また、孤立分散液調整工程において、湿潤処理したナノカーボンに水素結合性ポリマー(以下「HBP」ともいう)を配合して分散処理を行うようにしてもよい。なお、孤立分散液中へのHBPの配合は必須の操作ではないが、ナノカーボンの表面にナノセルロースを化学的又は物理的に結合させるために採用することが好ましい。ここで、HBPとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又は、白子由来高分子量のDNAであることが好ましいが、これらに限定するものではなく、ナノカーボンと水素結合を形成するポリマーであればよい。
【0047】
ここで、HBPの作用について説明する。これらのポリマーは、親水性であることにより水分散系である孤立分散液に容易に配合されると共に、分子が柔軟でCNTなどのナノカーボンの表面に沿って水素結合及びファンデルワールス力により結合することができる。その結果、CNTの場合にはチューブ表面の一部を被覆し、また一部はチューブに巻回して安定に結合する。また、GPの場合には、その表面の一部を被覆する。その結果、孤立分散液の分散状態が安定すると共に、後工程で孤立分散液をCNFスラリーと混合した際に、ナノカーボンの表面にナノセルロースが化学的又は物理的に結合し易くなり結合が強くなるものと考えられる。ここで、ナノカーボンに混合するHBPの量は、特に限定するものではない。例えば、ナノカーボンの重量に対して0.1〜1000%、好ましくは10〜200%程度である。
【0048】
<成形用スラリー調整工程>
この工程においては、第1のスラリー(CNFスラリー)に孤立分散液を混合する。CNTを例にして説明すると、CNFスラリーにCNT孤立分散液を混合して第2のスラリー(CNF・CNTスラリー)を調整する。
【0049】
CNFスラリーを例にしてこの工程を説明する。CNFが均一に分散したCNFスラリーと、CNTにHBPが一部被覆又は巻回した状態で孤立分散状態を維持したCNT孤立分散液を混合して分散処理する。混合操作に使用する装置は、特に限定するものではない。例えば、ボールミルやビーズミルなどを使用することができる。
【0050】
更に、この工程においては、上記のようにして調整した第2のスラリーに対して、膨張黒鉛を添加しながら分散及びインターカレーション処理を行って第3のスラリー(これをGP/CNF・CNT/GPスラリーという)を調整することができる。
【0051】
ここで、膨張黒鉛とは、黒鉛のGP層間が天然黒鉛よりも広げられている黒鉛をいうものとする。このような膨張黒鉛を用いた場合、GP層間が広げられているため、CNFとCNTとが結合した初期の構造単位をこの状態で挿入することができる。これを本発明におけるインターカレーション処理とする。このインターカレーション処理に使用する装置は、特に限定するものではない。ここでも、ボールミルやビーズミルなどを使用することができる。
【0052】
この工程においては、混合する各スラリーと各分散液の成分比率を変化させることにより、第2のスラリー(CNF・CNTスラリー)及び第3のスラリー(GP/CNF・CNT/GPスラリー)において、CNFとCNTとの混合比率、又は、CNFとCNTとGPとの混合比率を調整することができる。
【0053】
<成形工程>
この工程においては、上記のようにして調整した第2のスラリー(CNF・CNTスラリー)又は第3のスラリー(GP/CNF・CNT/GPスラリー)を用いて薄膜等の複合構造体を成形する。複合構造体の成形方法は、特に限定するものではないが、本実施形態においては、各スラリーをテフロン(登録商標)材質で加工されたシャーレに移し、恒温槽の中で乾燥した後、シャーレから剥離して複合構造体の薄膜を得た。なお、成形工程において成形する複合構造体の形状は、薄膜に限るものではなく、立体的な複合構造体を成形し、或いは、インクジェット等を利用して回路等を成形するようにしてもよい。
【0054】
このようにして得られた複合構造体において、ナノセルロースとナノカーボンとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を制御することができる。例えば、金・銀・銅などの金属の体積抵抗率の値は、10
−6Ω・cm(CGS単位系)程度であり、ガラスなどの絶縁体の体積抵抗率の値は、10
14Ω・cm以上であるとされている。本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の体積抵抗率の値は、使用するナノセルロースの種類と電気的特性、これに組み合わせるナノカーボンの種類と電気的特性、及び、これらの混合比率によって、導電体から半導体までの性質を制御することができる。
【0055】
これは、ナノセルロースのナノレベル構造と電気的特性(特に絶縁性)、及び、ナノカーボンのナノレベル構造と電気的特性(特に導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果を発揮して、ナノセルロース・ナノカーボン複合構造体のバンドギャップ(ナノカーボンの自由π電子の遷移エネルギー準位)の制御を実現することができるものと考えられる。よって、本発明に係るナノセルロース・ナノカーボン複合構造体の体積抵抗率の値は、1×10
−4Ω・cm〜1×10
12Ω・cmの範囲内、好ましくは、1×10
−2Ω・cm〜1×10
9Ω・cmの範囲内、更に好ましくは、1×10
−1Ω・cm〜1×10
6Ω・cmの範囲内で任意に制御することができる。
【0056】
次に、上述のように説明したナノセルロース・ナノカーボン複合構造体及びその製造方法について、各実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の各実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
本実施例1においては、セルロースナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(MWCNT)との混合比率の異なる8種類のCNF・CNT複合構造体の薄膜試料を作製した。
【0058】
<CNFスラリー調整工程>
本実施例1では、TEMPO酸化CNF(TOCN)を水に分散したCNFスラリーを調整した。具体的には、第一工業製薬株式会社から提供された繊維幅約3nm、繊維長約1000nm、カルボキシ基はNa塩型としたTOCNの2重量%水分散液をCNFスラリーとして、CNFとCNTとの混合比率を変化させるために水で希釈して使用した。
【0059】
<CNT孤立分散液調整工程>
本実施例1では、CNTを水に分散してCNT孤立分散液を調整した。具体的には、CNTとしてMWCNT「NC7000」(Nanocyl社製、ベルギー)を使用した。使用したMWCNTの平均直径は約9.5nm、平均長さは約1500nmであった。まず、所定量の脱イオン水とDMSO(Dimethyl Sulfoxide)を含む湿潤液にCNTを添加し、ボールミル(直径20mmのジルコニアビーズを50%充填)を使用して所定時間の湿潤処理を行った。
【0060】
次に、湿潤処理したCNTスラリーを取り出し、所定量の界面活性剤及び水素結合性ポリマー(HBP)としてのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を添加した。これらをビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズを70%充填)を使用して、粒度分布がD90<50nmになるまで分散処理を行い、3重量%のCNTを含むCNT孤立分散液を調整した。
【0061】
<成形用スラリー調整工程>
本実施例1では、CNFスラリーにCNT孤立分散液を混合してCNF・CNTスラリーを調整した。具体的には、上記工程と同じビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズを70%充填)を使用して、所定時間の混合処理を行った。なお、この工程においては、CNFスラリー中のCNF濃度とCNT孤立分散液中のCNT濃度とを考慮することにより、CNFとCNTとの混合比率の異なる8種類のCNF・CNTスラリーを調整した。
【0062】
<成形工程>
本実施例1では、CNF・CNTスラリーから複合構造体薄膜を成形した。具体的には、先の工程で調整した8種類のCNF・CNTスラリーをそれぞれテフロン(登録商標)材質で加工されたシャーレに移し、恒温槽の中(温度、150℃)で40分間乾燥した後、シャーレから剥離して8種類のCNF・CNT複合構造体薄膜を得た。得られた8種類の複合構造体薄膜の厚みは、全ての薄膜において25±5μm(乾燥試料)であった。
【0063】
<性能評価>
次に、本実施例1で得られた8種類のCNF・CNT複合構造体薄膜を試料として、それらの性能を評価した。評価は、薄膜の体積抵抗率を測定することにより導電体から半導体までの性質を確認した。試験法として、JIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠して測定した。なお、試料1は、CNF100%の絶縁体であるので測定をしていない。各試料の体積抵抗率の値を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1において、本実施例1に係る8種類のCNF・CNT複合構造体薄膜においては、CNFとCNTとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を1.2×10
−2Ω・cm〜6.2×10
9Ω・cmという広い範囲内で制御することができた。この効果の要因としては、これまで説明したように、CNFのナノレベル構造と電気的特性(絶縁性)、及び、CNTのナノレベル構造と電気的特性(導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果として発現したものと考えられる。
【0066】
そこで、本実施例1において、成形用スラリーとして調整したCNF・CNTスラリーの状態を確認した。
図1は、CNF・CNTスラリー内部の状態を観察した電子顕微鏡(SEM)写真である。具体的には、試料3のCNF・CNTスラリーを1000倍希釈して乾燥状態とし、スラリーの構造単位(CNFとMWCNTとが結合したもの)の状態を観察した。
図1において、細長い糸のように写っているものが構造単位(CNFとMWCNTとが結合したもの)であって、大部分の構造単位が凝集体を構成することなくスラリー中に分布していることが分かる。
【0067】
また、本実施例1において、CNF・CNT複合構造体薄膜の状態を確認した。
図2は、CNF・CNT複合構造体薄膜の断面の状態を観察した電子顕微鏡(SEM)写真である。具体的には、試料3のCNF・CNT複合構造体薄膜を引き裂いて断面を露出させ、その状態を観察した。
図3において、細長い糸のように写っている多くのものが構造単位X(CNFとMWCNTとが結合したもの)であって、大部分の構造単位Xが凝集体を構成することなく独立した状態で複合構造体薄膜を構成していることが分かる。
【実施例2】
【0068】
本実施例2においては、セルロースナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(SWCNT)との混合比率の異なる8種類のCNF・CNT複合構造体の薄膜試料を作製した。
【0069】
<CNFスラリー調整工程>
本実施例2では、上記実施例1と同様にして、TEMPO酸化CNF(TOCN)を水に分散したCNFスラリーを調整した。
【0070】
<CNT孤立分散液調整工程>
本実施例2では、CNTを水に分散してCNT孤立分散液を調整した。具体的には、CNTとしてSWCNT「TUBALL」(OCSiAl社製、ロシア)を使用した。使用したSWCNTの平均直径は約3nm、平均長さは約5000nmであった。本実施例2においては、上記実施例1と同様にして湿潤処理と分散処理とを行い、0.5重量%のCNTを含むCNT孤立分散液を調整した。なお、本実施例2においても、HBPとしてのHPCを配合した。
【0071】
<成形用スラリー調整工程>
本実施例2では、上記実施例1と同様にして、CNFスラリーにCNT孤立分散液を混合してCNFとCNTとの混合比率の異なる8種類のCNF・CNTスラリーを調整した。
【0072】
<成形工程>
本実施例2では、上記実施例1と同様にして、8種類のCNF・CNTスラリーから複合構造体薄膜を成形した。得られた8種類の複合構造体薄膜の厚みは、全ての薄膜において25±5μm(乾燥試料)であった。
【0073】
<性能評価>
次に、本実施例2で得られた8種類のCNF・CNT複合構造体薄膜を試料として、上記実施例1と同様にして、薄膜の体積抵抗率を測定した。なお、試料21は、CNF100%の絶縁体であるので測定をしていない。各試料の体積抵抗率の値を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2において、本実施例2に係る8種類のCNF・CNT複合構造体薄膜においては、CNFとCNTとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を8.3×10
−4Ω・cm〜8.5×10
8Ω・cmという広い範囲内で制御することができた。この効果の要因としては、これまで説明したように、CNFのナノレベル構造と電気的特性(絶縁性)、及び、CNTのナノレベル構造と電気的特性(導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果として発現したものと考えられる。
【0076】
そこで、本実施例2において、成形用スラリーとして調整したCNF・CNTスラリーの状態を確認した。
図3は、CNF・CNTスラリー内部の状態を観察した電子顕微鏡(SEM)写真である。具体的には、試料25のCNF・CNTスラリーを1000倍希釈して乾燥状態とし、スラリーの構造単位(CNFとSWCNTとが結合したもの)の状態を観察した。
図3において、細長い糸のように写っているものが構造単位(CNFとSWCNTとが結合したもの)であって、大部分の構造単位が凝集体を構成することなくスラリー中に分布していることが分かる。
【0077】
また、本実施例2において、成形用スラリーの構造単位1本の形状を確認した。
図4は、CNF・CNTスラリーの構造単位(CNFとSWCNTとが結合したもの)の形状(長さ・太さ)を観察した原子間力顕微鏡(AFM)写真と解析データである。具体的には、試料25のCNF・CNTスラリーの構造単位(CNFとSWCNTとが結合したもの)1本の長さと太さを観察した。
図4において、(A)AFM写真の観察対象Wが構造単位であり、(B)解析データにおいて太さの変化が認められる。このことにより、CNTを中心にその表面にHBPを介してCNFが結合した状態にあるものと考えられる。
【実施例3】
【0078】
本実施例3においては、セルロースナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(MWCNT)とグラフェン(GP)との混合比率の異なる8種類のGP/CNF・CNT/GP複合構造体の薄膜試料を作製した。すなわち、ナノカーボンとしてCNTとGPとが併用され、GPとGPとの間にCNFとCNTとが結合した初期の構造単位(CNF・CNT)をインターカレートした複合構造体の薄膜試料を作製した。
【0079】
<CNFスラリー調整工程>
本実施例3では、上記実施例1と同様にして、TEMPO酸化CNF(TOCN)を水に分散したCNFスラリーを調整した。
【0080】
<CNT孤立分散液調整工程>
本実施例3では、上記実施例1と同様にして、CNT(MWCNT)を水に分散してCNT孤立分散液を調整した。なお、本実施例3においても、HBPとしてのHPCを配合した。
【0081】
<CNF・CNTスラリー調整工程>
本実施例3では、上記実施例1と同様にして、CNFスラリーにCNT孤立分散液を混合してCNF・CNTスラリーを調整した。
【0082】
<成形用GP/CNF・CNT/GPスラリー調整工程>
本実施例3では、上記工程で得られたCNF・CNTスラリーに膨張黒鉛を混合してGPとGPの間に初期の構造単位(CNF・CNT)をインターカレートしたGP/CNF・CNT/GPスラリーを調整した。具体的には、上記工程と同じビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズを70%充填)を使用して、CNF・CNTスラリーに膨張黒鉛を添加しながら所定時間の分散及びインターカレーション処理を行った。
【0083】
膨張黒鉛は、鱗片状黒鉛の層間に硫酸等をインターカレートした粉末(伊藤黒鉛工業株式会社製)に高温膨張処理(高温炉にて室温〜510℃の昇温膨張処理)をしてから使用した。なお、この工程においては、CNF・CNTスラリー中のCNF濃度とCNT濃度、及び、膨張黒鉛として投入するGPの量を考慮することにより、CNFとCNTとGPとの混合比率の異なる8種類のGP/CNF・CNT/GPスラリーを調整した。
【0084】
<成形工程>
本実施例3では、上記実施例1と同様にして、8種類のGP/CNF・CNT/GPスラリーから複合構造体薄膜を成形した。得られた8種類の複合構造体薄膜の厚みは、全ての薄膜において25±5μm(乾燥試料)であった。
【0085】
<性能評価>
次に、本実施例3で得られた8種類のGP/CNF・CNT/GP複合構造体薄膜を試料として、上記実施例1と同様にして、薄膜の体積抵抗率を測定した。なお、試料31は、CNF100%の絶縁体であるので測定をしていない。各試料の体積抵抗率の値を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3において、本実施例3に係る8種類のGP/CNF・CNT/GP複合構造体薄膜においては、CNFとCNTとGPとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を1.1×10
−2Ω・cm〜3.8×10
6Ω・cmという広い範囲内で制御することができた。この効果の要因としては、これまで説明したように、CNFのナノレベル構造と電気的特性(絶縁性)、及び、CNTとGPとのナノレベル構造と電気的特性(導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果として発現したものと考えられる。
【0088】
また、本実施例3において、GP/CNF・CNT/GP複合構造体薄膜の状態を確認した。
図5は、GP/CNF・CNT/GP複合構造体薄膜の内部の状態を観察した電子顕微鏡(SEM)写真である。具体的には、試料37のGP/CNF・CNT/GP複合構造体薄膜を引き裂いて断面を露出させ、その状態を観察した。
図5において、大きな断片Yは、GPである。また、細長い糸のように写っているZがGPとGPとの間にインターカレートした初期の構造単位(CNF・CNT)であって、大部分の初期の構造単位が凝集体を構成することなくGPとGPとの間にインターカレートした状態で最終的な構造単位(GP/CNF・CNT/GP)を構成し、これらが集積してGP/CNF・CNT/GP複合構造体薄膜を構成していることが分かる。
【実施例4】
【0089】
本実施例4においては、セルロースナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(MWCNT)とアセチレンブラック(AB)との混合比率の異なる8種類のCNF・CNT・AB複合構造体の薄膜試料を作製した。すなわち、ナノカーボンとしてCNTとABとが混合された複合構造体の薄膜試料を作製した。
【0090】
<CNFスラリー調整工程>
本実施例4では、上記実施例1と同様にして、TEMPO酸化CNF(TOCN)を水に分散したCNFスラリーを調整した。
【0091】
<CNT孤立分散液調整工程>
本実施例4では、上記実施例1と同様にして、CNT(MWCNT)を水に分散してCNT孤立分散液を調整した。なお、本実施例4においても、HBPとしてのHPCを配合した。
【0092】
<CNF・CNTスラリー調整工程>
本実施例4では、上記実施例1と同様にして、CNFスラリーにCNT孤立分散液を混合してCNF・CNTスラリーを調整した。
【0093】
<成形用CNF・CNT・ABスラリー調整工程>
本実施例4では、上記工程で得られたCNF・CNTスラリーにABを混合してCNF・CNT・ABスラリーを調整した。具体的には、上記工程と同じビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズを70%充填)を使用して、CNF・CNTスラリーにアセチレンブラック粉末(デンカ株式会社製)を添加しながら所定時間の混合処理を行った。なお、この工程においては、CNF・CNTスラリー中のCNF濃度とCNT濃度、及び、投入するABの量を考慮することにより、CNFとCNTとABとの混合比率の異なる8種類のCNF・CNT・ABスラリーを調整した。
【0094】
<成形工程>
本実施例4では、上記実施例1と同様にして、8種類のCNF・CNT・ABスラリーから複合構造体薄膜を成形した。得られた8種類の複合構造体薄膜の厚みは、全ての薄膜において25±5μm(乾燥試料)であった。
【0095】
<性能評価>
次に、本実施例4で得られた8種類のCNF・CNT・AB複合構造体薄膜を試料として、上記実施例1と同様にして、薄膜の体積抵抗率を測定した。なお、試料41は、CNF100%の絶縁体であるので測定をしていない。各試料の体積抵抗率の値を表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
表4において、本実施例4に係る8種類のCNF・CNT・AB複合構造体薄膜においては、CNFとCNTとABとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を3.2×10
−1Ω・cm〜7.2×10
8Ω・cmという広い範囲内で制御することができた。この効果の要因としては、これまで説明したように、CNFのナノレベル構造と電気的特性(絶縁性)、及び、CNTとABとのナノレベル構造と電気的特性(導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果として発現したものと考えられる。
【実施例5】
【0098】
本実施例5においては、セルロースナノファイバー(CNF)とグラフェン(GP)との混合比率の異なる9種類のCNF・GP複合構造体の薄膜試料を作製した。
【0099】
<CNFスラリー調整工程>
本実施例5では、上記実施例1と同様にして、TEMPO酸化CNF(TOCN)を水に分散したCNFスラリーを調整した。
【0100】
<GP分散液調整工程>
本実施例5では、所定量の脱イオン水とDMSO(Dimethyl Sulfoxide)を含む湿潤液に高温膨張処理(高温炉にて室温〜510℃の昇温膨張処理)を行った膨張黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製)を添加し、上記実施例1と同様にして、湿潤処理と分散処理を行ってGP孤立分散液を調整した。なお、本実施例5においても、HBPとしてのHPCを配合した。
【0101】
<CNF・GPスラリー調整工程>
本実施例5では、上記実施例1と同様にして、CNFスラリーにGP孤立分散液を混合してCNFとGPとの混合比率の異なる9種類のCNF・GPスラリーを調整した。
【0102】
<成形工程>
本実施例5では、上記実施例1と同様にして、9種類のCNF・GPスラリーから複合構造体薄膜を成形した。得られた9種類の複合構造体薄膜の厚みは、全ての薄膜において25±5μm(乾燥試料)であった。
【0103】
<性能評価>
次に、本実施例5で得られた9種類のCNF・GP複合構造体薄膜を試料として、上記実施例1と同様にして、薄膜の体積抵抗率を測定した。各試料の体積抵抗率の値を表5に示す。
【0104】
【表5】
【0105】
表5において、本実施例5に係る9種類のCNF・GP複合構造体薄膜においては、CNFとGPとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を8.6×10
−4Ω・cm〜2.6×10
12Ω・cmという広い範囲内で制御することができた。この効果の要因としては、これまで説明したように、CNFのナノレベル構造と電気的特性(絶縁性)、及び、GPのナノレベル構造と電気的特性(導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果として発現したものと考えられる。
【実施例6】
【0106】
本実施例6においては、セルロースナノファイバー(CNF)とアセチレンブラック(AB)との混合比率の異なる9種類のCNF・AB複合構造体の薄膜試料を作製した。
【0107】
<CNFスラリー調整工程>
本実施例6では、上記実施例1と同様にして、TEMPO酸化CNF(TOCN)を水に分散したCNFスラリーを調整した。
【0108】
<AB孤立分散液調整工程>
本実施例6では、所定量の脱イオン水とDMSO(Dimethyl Sulfoxide)を含む湿潤液にアセチレンブラック粉末(デンカ株式会社製)を添加し、上記実施例1と同様にして、湿潤処理と分散処理を行ってAB孤立分散液を調整した。なお、本実施例6においても、HBPとしてのHPCを配合した。
【0109】
<CNF・ABスラリー調整工程>
本実施例6では、上記実施例1と同様にして、CNFスラリーにAB孤立分散液を混合してCNFとABとの混合比率の異なる9種類のCNF・ABスラリーを調整した。
【0110】
<成形工程>
本実施例6では、上記実施例1と同様にして、9種類のCNF・ABスラリーから複合構造体薄膜を成形した。得られた9種類の複合構造体薄膜の厚みは、全ての薄膜において25±5μm(乾燥試料)であった。
【0111】
<性能評価>
次に、本実施例6で得られた9種類のCNF・AB複合構造体薄膜を試料として、上記実施例1と同様にして、薄膜の体積抵抗率を測定した。各試料の体積抵抗率の値を表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6において、本実施例6に係る9種類のCNF・AB複合構造体薄膜においては、CNFとABとの混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を3.7×10
−2Ω・cm〜6.6×10
13Ω・cmという広い範囲内で制御することができた。この効果の要因としては、これまで説明したように、CNFのナノレベル構造と電気的特性(絶縁性)、及び、ABのナノレベル構造と電気的特性(導電性)をナノレベルで組み合わせることにより相乗的な効果として発現したものと考えられる。
【0114】
これまで説明したように、上記実施形態によれば、ナノセルロースの種類、ナノカーボンの種類と組み合わせを選択することにより、また、これらの成分の混合比率を調整することにより、体積抵抗率の値を広い範囲内で制御することができた。よって、本発明においては、ナノセルロースとナノカーボンとをナノレベルにおいて秩序ある配置とすることで相乗的な効果を見出し、ナノセルロースとナノカーボンとの比率を調整することにより導電体から半導体までの性質を制御することのできるナノセルロース・ナノカーボン複合構造体及びその製造方法を提供することができる。
【0115】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態においては、ナノセルロースとしてCNFの1種であるTEMPO酸化CNF(TOCN)を使用したが、これに限るものではなく、TOCN以外のCNFやCNF以外のナノセルロースを使用するようにしてもよい。
(2)上記実施形態においては、ナノカーボンとしてMWCNT単独、SWCNT単独、MWCNTとGPとの組み合わせ、MWCNTとAPとの組み合わせ、GP単独、AB単独を使用したが、これに限るものではなく、他の組み合わせや他のナノカーボンを使用するようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、CNTとABとの組み合わせにおいてCNF・CNTスラリー調整後にABを投入してCNF・CNT。ABスラリーを調整したが、これに限るものではなく、CNTとABとを混合してから孤立分散液を調整し、これをCNFスラリーに混合するようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、孤立分散液に水素結合性ポリマー(HBP)を配合するものであるが、これに限るものではなく、HBPを配合することなく孤立分散液を調整するようにしてもよい。
(5)上記実施形態においては、HBPとしてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用するものであるが、これに限るものではなく、他のHBPを配合するようにしてもよい。
(6)上記実施形態においては、ナノセルロース・ナノカーボン複合構造体としてスラリーから薄膜を成形するものであるが、これに限るものではなく、立体的な複合構造体を成形し、或いは、インクジェット等を利用して回路等を成形するようにしてもよい。