【実施例】
【0038】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
[試験例1及び2に係るコンクリート供試体についての箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況の評価]
(コンクリート供試体の作製)
以下の表1に示した材料を用いて、以下の表2の配合にてコンクリート組成物を調製した。コンクリート組成物の調製は、二軸強制練りミキサを用いて行った。具体的には、セメント、細骨材、及び粗骨材を上記ミキサ内に投入して10秒間空練りを行った後、水及び減水剤を上記ミキサ内に投入して90秒間練り混ぜることにより調製した。
調製したコンクリート組成物を平板供試体用型枠(30cm×30cm×5cm)内に打設し、打設後のコンクリート組成物の表面に軽くコテ仕上げを施し、コテ仕上げを施した直後のコンクリート組成物の一方の半面の表面に、目開き0.3mmの篩と目開き0.6mmの篩を用いて分級することにより粒子径を、0.3mmを上回り0.6mm以下に調整したCA材(総質量に対してCA成分を16質量%含む)を散布し、散布後のコンクリート組成物の表面をコテで均した(試験例1)。次に、他方の半面の表面に、目開き0.3mmの篩と目開き0.6mmの篩を用いて分級することにより粒子径を、0.3mmを上回り0.6mm以下に調整したCA材(総質量に対してCA成分を20質量%含む)を散布し、散布後のコンクリート組成物の表面をコテで均した(試験例2)。
CA材中のCA成分は、X線回折/リートベルト法によって求めた。X線回折/リートベルト法は、以下のようにして行った。
(1)まず、粉末状のCA材をX線回折装置(X’Pert MPD、パナリティカル社製)を用いて分析し、X線回折パターンを得た。X線回折測定は、線源としてCuKαを用い、管電圧を45kV、管電流を40mAとし、測定角度範囲2θを10〜140°とする条件で行った。
(2)次に、専用解析ソフト(HighScorePlus、パナリティカル社製)を用いて得られたX線回折パターンをリートベルト解析することにより、CA成分の含有割合を求めた。なお、CA成分の含有割合は、X線回折分析で検出できたCA材中の全成分を100質量%としたときのCA成分の質量割合として求めた。
また、各例において、CA材の散布量は、200g/m
2とした。
【0040】
なお、以下の表2において、細骨材率とは、全骨材の絶対容積に対する細骨材の占める絶対容積の割合を意味し、C×%とは、セメントの質量に対する減水剤の質量割合を意味している。
また、表2において、空気量は、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法」に準拠して測定し、スランプは、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
(箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況の評価)
試験例1及び2に係るコンクリート供試体について箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。箒目挿入可能時間は、コテで均した直後から、表面のコンクリート供試体の表面に過度の湿潤感を感じなくなったときまでに要した時間を測定することにより求めた。箒目挿入状況は、コンクリート供試体の表面に箒目が均一に挿入されているか否かを目視にて評価した。
試験例1及び2に係るコンクリート供試体における箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を以下の表3に示した。
なお、箒目挿入状況は、以下の評価基準に従って目視にて判断した。
◎ 箒目挿入可能であり、かつ、挿入後の箒目が連続した均一なものとなっている。
〇 箒目挿入可能であり、かつ、挿入後の箒目の一部に不連続な部分が認められるものの、比較的均一なものとなっている。
× 箒目挿入不可能
【0044】
[試験例3及び4に係るコンクリート供試体についての箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況の評価]
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するCA材として、総質量に対してCA成分を24質量%含むものを用い(試験例3)、コンクリート組成物の他方の半面に散布するCA材として、CA成分を45質量%含むものを用いた(試験例4)以外は、試験例1及び2と同様にして、試験例3及び4に係るコンクリート供試体を作製した。
【0045】
(箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況の評価)
試験例3及び4に係るコンクリート供試体について、試験例1及び2と同様にして、箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。その結果を以下の表3に示した。
【0046】
[試験例5に係るコンクリート供試体についての箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況の評価]
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に、何らのCA材をも散布しなかった(試験例5)以外は、試験例1及び2と同様にして、試験例5に係るコンクリート供試体を作製した。
【0047】
(箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況の評価)
試験例5に係るコンクリート供試体について、試験例1及び2と同様にして、箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。その結果を以下の表3に示した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3より、CA材を散布することにより作製された試験例1〜4に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布せずに作製された試験例5に係るコンクリート供試体に比べて、箒目挿入可能時間が大幅に短縮されたことが分かる。
このことから、コンクリート組成物の表面にCA材を散布することにより、コンクリート組成物の表面への箒目挿入を促進できることが分かる。
また、表3より、試験例1〜5に係るコンクリート供試体はいずれも、箒目挿入可能であり(評価基準が×のものがなく)、CA材を散布したコンクリート供試体同士で比べると、試験例1〜3に係るコンクリート供試体は、試験例4に係るコンクリート供試体よりも箒目挿入状況が良好であったことが分かる。
このことから、CA成分を10質量%以上30質量%以下含有するCA材をコンクリート組成物の表面に散布することにより、箒目挿入可能時間を大幅に短縮することができ、かつ、箒目挿入状況を特に良好にできる(連続した均一な箒目を挿入できる)ことが分かる。
【0050】
[散布量の影響の評価]
CA成分の含有割合が16質量%、24質量%、及び、45質量%のCA材について、散布量の違いによる箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。粒子径は、0.3mmを上回り0.6mm以下となるように調整した。
具体的には、CA成分の含有割合が16質量%及び24質量%のCA材については、散布量を、それぞれ、50、100、150、及び、250g/m
2とし(試験例1a〜1d、及び、試験例3a〜3d)、CA成分の含有量割合が45質量%のCA材については、散布量を、50、100、及び、150g/m
2とした(試験例4b〜4d)。
試験例1a〜1dに係るコンクリート供試体、試験例3a〜3dに係るコンクリート供試体、及び、試験例4b〜4dに係るコンクリート供試体は、上記試験例1等と同様にして作製した。これらの例に係るコンクリート供試体について、試験例1等と同様にして、箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。その結果を以下の表4に示した。
なお、以下の表4には、試験例1、3、及び、4の評価結果についても併記した。
【0051】
【表4】
【0052】
表3及び表4より、CA材を散布することにより作製された、試験例1a〜1dに係るコンクリート供試体、試験例3a〜3dに係るコンクリート供試体、及び、試験例4b〜4dに係るコンクリート供試体は、いずれも、何らのCA材をも散布せずに作製された試験例5に係るコンクリート供試体(箒目挿入可能時間は180分)に比べて、箒目挿入可能時間が短縮されることが分かる。
特に、試験例1a〜1cに係るコンクリート供試体、試験例3a〜3cに係るコンクリート供試体、及び、試験例4b〜4cに係るコンクリート供試体は、試験例5に係るコンクリート供試体に比べて、箒目挿入可能時間が大幅に短縮されていた。
なお、試験例1dに係るコンクリート供試体、試験例3dに係るコンクリート供試体、及び、試験例4dに係るコンクリート供試体は、CA材の散布量が50g/m
2と少なかったため、散布ムラが生じており、例えば、試験例1dに係るコンクリート供試体においては、最短45分で箒目挿入可能な箇所が生じる一方で、最長150分で箒目挿入可能な箇所も生じていた。
これと同様に、試験例3dに係るコンクリート供試体においては、最短35分で箒目挿入可能な箇所が生じる一方で、最長150分で箒目挿入可能な箇所も生じ、試験例4dに係るコンクリート供試体においては、最短20分で箒目挿入可能な箇所が生じる一方で、最長150分で箒目挿入可能な箇所も生じていた。
【0053】
また、表4より、試験例1a〜試験例4dに係るコンクリート供試体はいずれも、箒目挿入可能であり(評価基準×のものがなく)、各試験例間で比較すると、試験例1b、試験例1c、試験例3b、及び、試験例3cに係るコンクリート供試体は、試験例1a、試験例1d、試験例3a、試験例3d、及び、試験例4b〜4dに係るコンクリート供試体よりも箒目挿入状況が良好であったことが分かる。
これらのことから、CA成分を10質量%以上30質量%以下含有するCA材を、100g/m
2以上250g/m
2以下の量で、コンクリート組成物の表面に散布することにより、箒目挿入可能時間を大幅に短縮することができ、さらに、100g/m
2以上200g/m
2以下の量で、コンクリート組成物の表面に散布することにより、箒目挿入状況を特に良好にできる(連続した均一な箒目を挿入できる)ことが分かる。
【0054】
[粒子径の影響の評価]
CA成分の含有割合が16質量%のCA材について、粒子径の違いによる箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。
具体的には、CA成分の含有割合が16質量%のCA材として、粒子径が0.6mmを上回り1.2mm以下のもの(試験例1A)、粒子径が0.075mmを上回り0.3mm以下のもの(試験例1B)、及び、粒子径が0.075mm以下のもの(試験例1C)を用いた。
試験例1A〜1Cに係るコンクリート供試体は、上記試験例1等と同様にして作製した。CA材の散布量は200g/m
2とした。試験例1A〜1Cに係るコンクリート供試体について、試験例1等と同様にして、箒目挿入可能時間及び箒目挿入状況を評価した。その結果を以下の表5に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
表3及び表5より、CA材を散布することにより作製された、試験例1及び1A〜1Cに係るコンクリート供試体は、いずれも、何らのCA材をも散布せずに作製された試験例5に係るコンクリート供試体(箒目挿入可能時間は180分)に比べて、箒目挿入可能時間が大幅に短縮されることが分かる。
これらの中でも、粒子径が0.6mm以下のCA材を散布することにより作製された試験例1、1B、及び、1Cに係るコンクリート供試体では、より箒目挿入可能時間が短縮されており、特に、粒子径が0.075mm以下のCA材を散布することにより作製された試験例1Cでは、箒目挿入可能時間が顕著に短縮されていた。
【0057】
また、表5より、試験例1及び1A〜1Cに係るコンクリート供試体はいずれも、箒目挿入可能であり、各試験例間で比較すると、試験例1、1B、及び、1Cに係るコンクリート供試体は、試験例1Aに係るコンクリート供試体よりも箒目挿入状況が良好であったことが分かる。
これらのことから、CA成分を10質量%以上30質量%以下含有するCA材として、粒子径が1.2mm以下のものを、コンクリート組成物の表面に散布することにより、箒目挿入可能時間を大幅に短縮することができ、さらに、粒子径が0.6mm以下のものを、コンクリート組成物の表面に散布することにより、箒目挿入状況を特に良好にでき(連続した均一な箒目を挿入でき)、さらに、粒子径を0.075mm以下とすることにより箒目挿入時間を顕著に短縮できることが分かる。