(54)【発明の名称】重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、それを含む感光性樹脂組成物、それを硬化してなる硬化物、その硬化物を構成成分として含むタッチパネルおよびカラーフィルター
【課題】現像特性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法、上記不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、上記不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物、上記感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化物、上記硬化物を構成成分として含むタッチパネルおよびカラーフィルターを提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェット用の活性線硬化型インクは、式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物(a)と、不飽和基含有モノカルボン酸と、の反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)を反応させる、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法。
請求項1に記載の製造方法で得られた重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂のカルボキシ基に対して、さらにカルボキシ基に反応する基と、重合性不飽和基と、を有する化合物を反応させる、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法。
請求項2に記載の製造方法で得られた重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の水酸基に対して、さらにジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物を反応させる、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法。
前記感光性樹脂組成物の固形分中、(A)成分は1〜55質量%であり、(C)成分は前記(A)成分100質量部に対して0〜100質量部であり、(B)成分は前記(A)成分と前記(C)成分との合計量100質量部に対して0.1〜40質量部であり、(E)成分は1〜95質量%である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
請求項5〜9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物をフォトリソグラフィー法によりパターニングし、前記パターニングした感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の式(2)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂は、1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)を反応させることにより得られる。また、上記重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、原料となるエポキシ化合物としていくつかのオキシアルキレン基と、2個のシクロアルキル基を1分子内に2個有するエポキシ化合物(a−1)を用いることを特徴とする。
【0022】
【化5】
(式(2)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、Xは内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−または単結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは水素原子または式(3)で示される置換基であり、ただし、Zの少なくとも1つは式(3)で表される置換基であり、Gは水素原子または式(4)で表される置換基であり、aは平均値が0〜10であり、bは0〜4であり、nは平均値が1〜20である。)
【0024】
【化7】
(式(3)、(4)中、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5は炭素数2〜4の炭化水素基であり、Lは2または3価のカルボン酸残基であり、cは0または1であり、dおよびeは0、1または2であり、d+eは1または2である。)
【0025】
下記式(2)で表される、1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、単に、「重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂」ともいう)の製造方法について詳細に説明する。
【0026】
先ず、式(1)で表される1分子内に2個のエポキシシクロアルキル基を有するエポキシ化合物(a−1)(以下、単に「エポキシ化合物(a−1)」ともいう)に不飽和基含有モノカルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)を反応させ、エポキシ(メタ)アクリレートを得る。
【0027】
【化8】
(式(1)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜3の炭化水素基であり、Xは内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−または単結合である。ただし、aは平均値が0〜10であり、bは0〜4である。)
【0028】
上記不飽和基含有モノカルボン酸化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸以外に、アクリル酸やメタクリル酸に無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸一無水物を反応させた化合物などが含まれる。
【0029】
上記エポキシ化合物(a−1)と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4−355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、重合性不飽和基を含有するジオール化合物であり、式(6)で表されるジオール(d)である。
【0030】
【化9】
(式(6)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、Xは内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−または単結合である。ただし、aは平均値が0〜10であり、bは0〜4である。)
【0031】
式(1)で表されるエポキシ化合物(a−1)のXは、内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−または単結合である。内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基の例には、2価の炭化水素基、炭化水素基の末端の一つまたは二つにカルボキシ基を有する2価の基などが含まれる。なお、上記炭化水素基は内部にエーテル結合性の酸素原子またはエステル結合を有していてもよい。
【0032】
2価の炭化水素基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、sec−ブチレン基、メチルイソブチレン基、へキシレン基、デシレン基、ドデシレン基などの直鎖または分岐鎖を有する炭化水素基が含まれる。また、炭化水素基の末端にエステル基を有する2価の基の例には、式(7)〜(10)で表される2価の有機基が含まれる。
【0033】
【化10】
(式(7)中、gは1〜20の整数である。)
【0034】
【化11】
(式(8)中、hは2〜20の整数であり、iは0〜10の整数である。)
【0035】
【化12】
(式(9)中、jは1〜20の整数である。)
【0036】
【化13】
(式(10)中、kは0〜18の整数であり、lは1〜10の整数である。)
【0037】
上記式(1)における2つのシクロヘキサン環はXを介して結合している。上記シクロヘキサン環はそれぞれの1位および2位で酸素原子と結合し、4位または5位でXと結合している。Xの結合位置は4位または5位のいずれでもよく、4位と5位でランダムに結合していてもよい。
【0038】
式(1)で表されるエポキシ化合物(a−1)の具体例には、式(11)〜(17)で表されるエポキシ化合物が含まれる。
【0039】
【化14】
(式(11)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10である。)
【0040】
【化15】
(式(12)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10である。)
【0041】
【化16】
(式(13)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10である。)
【0042】
【化17】
(式(14)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10であり、gは1〜20の整数である。)
【0043】
【化18】
(式(15)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10であり、hは2〜20の整数であり、iは0〜10の整数である。)
【0044】
【化19】
(式(16)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10であり、jは1〜20の整数である。)
【0045】
【化20】
(式(17)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、aは平均値が0〜10であり、kは0〜18の整数であり、lは1〜10の整数である。)
【0046】
一般式(6)で表されるジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の付加反応、さらにカルボキシ基との反応性を有する重合性不飽和基を有する単官能エポキシ化合物等を反応させて、一般式(2)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0047】
溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0048】
また、カルボキシ基とエポキシ基との反応においては触媒を使用することが好ましく、特開平9−325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている。
【0049】
次に、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られる式(6)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)とを反応させて、式(18)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、「式(18)で表されるアルカリ可溶性樹脂」と記載。)を得ることができる。
【0050】
【化21】
(式(18)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、Xは内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2、−Si(CH
3)
2−、−O−または単結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Z’は水素原子または式(19)で表される置換基である。ただし、aは平均値が0〜10であり、bは0〜4であり、nは平均値が1〜20である。)
【0051】
【化22】
(式(19)中、Lは2または3価のカルボン酸残基であり、rは1または2である。)
【0052】
式(18)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、式(6)で表されるジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には−O−、−S−、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0053】
ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等を用いることができる。
【0054】
鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0055】
ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等を用いることができる。
【0057】
鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。また、上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等が含まれる。
【0058】
テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることがより好ましい。また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
式(6)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9−325494号公報には、反応温度が90〜140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0060】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(d)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)とのモル比が(d):(b):(c)=1:0.01〜1.0:0.2〜1.0となるように反応させることが好ましい。
【0061】
たとえば、(b)酸一無水物、(c)酸二無水物を用いる場合には、重合性不飽和基を含有するジオール化合物(エポキシ(メタ)アクリレート)(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[(d)/〔(b)/2+(c)〕]が0.5〜1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が1.0以下である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオール化合物の含有量を増大させることがないのでアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。一方、モル比が0.5を超える場合には、式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大することを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、上記式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(d)、(b)および(c)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0062】
式(6)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応で得られるアルカリ可溶性樹脂は、式(2)中のGが全て水素原子である、式(18)の構造を有する。本実施形態では、式(18)のカルボキシ基に対して、式(20)で表される不飽和基含有エポキシ化合物を反応させる。式(18)と式(20)で表される不飽和基含有エポキシ化合物との反応は、公知の方法を使用することができ、例えば、式(6)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレートの製造方法を用いることができる。これにより、式(2)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を得ることができる。さらに、上記重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の水酸基に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物を反応させてもよい。
【0063】
【化23】
(式(20)中、R
4は水素原子またはメチル基であり、R
5は炭素数2〜4の炭化水素基であり、cは0または1である。)
【0064】
式(18)のカルボキシ基に対する式(20)で表される不飽和基含有エポキシ化合物のエポキシ基のモル比は、式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の光反応の感度(重合性二重結合の量の大小による)や酸価を調整する目的で任意に変更できる。また、式(20)のモル数は、(b)成分のモル数と(c)成分のモル数の2倍の合計モル数に対して、90%以下であればアルカリ現像性の付与が可能であり、光パターニング性を有する感光性樹脂組成物に用いることができる。また、光反応の感度向上効果を付与したい場合は、10%以上にすることが必要であるので、10〜90%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。また、使用する式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、20〜180であることが好ましく、30〜120であることがより好ましい。
【0065】
本発明の式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常1000〜100000であり、2000〜20000であることが好ましい。重量平均分子量が1000以上の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量が100000未満である場合には、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度に調整しやすく、アルカリ現像に時間を要しすぎることがない。上記アルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定は、「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)を用いて測定することができる。
【0066】
次に、式(21)の不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、「式(21)で表されるアルカリ可溶性樹脂」と記載する)について説明する。なお、式(21)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、式(2)、および式(5)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂との混合物である。
【0067】
式(21)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造方法は、式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造方法で実施することができるが、第一ステップの1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と不飽和基含有モノカルボン酸を反応させる際に、(a)成分として上記エポキシ化合物(a−1)とビスフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂(a−2)とを併用する。
【0068】
【化24】
(式(21)中、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは水素原子または式(3)で示される置換基である。ただし、Zの少なくとも1つは式(3)で表される置換基であり、Gは水素原子または式(4)で表される置換基であり、WおよびW’は、後述する式(24)で表される2価の有機基Pおよび/または後述する式(25)で表される2価の有機基Qで表される2価の有機基を示す。ただし、fは平均値が1〜20である。)
【0069】
ビスフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂(a−2)は式(22)で表される。
【0070】
【化25】
(式(22)中、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
10は炭素数2〜4の炭化水素基である。また、Mは−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基または単結合を示し、dは0〜10の平均値(但し0は含まず)を示す。)
【0071】
上記(a−2)成分は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、式(21)に示すようなオリゴマーとなるが、個々の分子は異なるmの値となり、上記のとおりmの平均値としては0超10以下であり、0.05以上5以下であることが好ましい。
【0072】
上記(a−2)成分の原料として使用されるビスフェノール類の例には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等およびこれらの誘導体が含まれる。上記ビスフェノール類の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。(a―2)成分の原料として使用されるビスフェノール類は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
式(21)で表される化合物の製造の第一ステップでは、(a−1)成分と(a−2)成分とを、(a−1)成分100質量部に対して、(a−2)成分を10〜100質量部(好ましくは、30〜60質量部)になるように添加し、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物(a−1)および(a−2)の合計のモル数の2倍の(メタ)アクリル酸を反応させ、エポキシ(メタ)アクリレート(d’)を得る。この反応は前述のように、溶剤中で触媒を用いて実施することが好ましい。なお、(a−1)の1モルに対して2モルの(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレートと、別途(a−2)の1モルに対して2モルの(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレートとを混合してエポキシ(メタ)アクリレート(d’)を得ても構わない。
【0074】
第二ステップでは、第一ステップで得たエポキシ(メタ)アクリレート(d’)に、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)を反応させ、式(23)の1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下「式(22)のアルカリ可溶性樹脂」と記載)を得る。
【0075】
【化26】
(式(23)中、Yは4価のカルボン酸残基であり、Z’は水素原子または式(19)で表される置換基であり、WおよびW’は、後述する式(24)で表される2価の有機基Pおよび/または後述する式(25)で表される2価の有機基Qで表される2価の有機基を示す。ただし、fは平均値が1〜20である。)
【0076】
ここで、式(23)で表されるアルカリ可溶性樹脂の個々の1分子内においてfは整数であり、当該1分子内におけるPおよびQで表されるユニット数をそれぞれfPおよびfQとした場合にf=fP+fQである。なお、W’=Pである場合はfQ≠0であり、W’=Qである場合はfP≠0であり、W’がPのときはWが必ずQを含み、W’がQのときはWが必ずPを含む。
【0077】
【化27】
(式(24)中、R
1は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
2は炭素数1〜3の炭化水素基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、Xは内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基、−CO−、−SO
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−または単結合である。ただし、aは平均値が0〜10であり、bは0〜4である。)
【0078】
【化28】
(式(25)中、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基であり、R
10は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
11は水素原子またはメチル基である。また、Mは−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニレン基または直結合である。ただし、dは平均値が0〜10である。)
【0079】
第二のステップにおいて、式(23)のアルカリ可溶性樹脂を製造する際に使用する酸成分(b)および(c)の種類、添加量、および反応条件等については、式(18)のアルカリ可溶性樹脂を製造する場合と同様である。
【0080】
第三のステップでは、式(23)で表されるアルカリ可溶性樹脂に、式(20)で表される不飽和基含有エポキシ化合物を反応させる。この反応についても、式(18)のアルカリ可溶性樹脂から式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂を製造する場合と同様にして、式(23)で表されるアルカリ可溶性樹脂から式(21)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得る。式(20)のモル数は、(b)成分のモル数と(c)成分のモル数の2倍の合計モル数に対して、90%以下であればアルカリ現像性の付与が可能であり、光パターニング性を有する感光性樹脂組成物に用いることができる。また、光反応の感度向上効果を付与したい場合は、10%以上にすることが必要であるので、10〜90%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。
【0081】
式(21)で表されるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、1000〜100000であることがよく、2000〜30000であることが好ましい。また式(21)のアルカリ可溶性樹脂の酸価は、20〜180であることがよく、30〜120であることが好ましい。
【0082】
次に、本発明の式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂および/または式(21)のアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物について説明する。(E)分散質を含む場合と含まない場合で、好ましい感光性樹脂組成物の成分比率が異なるが、先ずは、(E)分散質を含まない場合について説明する。
【0083】
(A)式(2)および/または式(21)で表されるアルカリ可溶性樹脂に、(B)光重合開始剤を添加し、溶剤を使用して塗膜を形成するのに適した溶液粘度にすることによって、感光性樹脂組成物を得る。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物としては、当該感光性樹脂組成物の固形分中、(A)成分は1〜55質量%であり、(C)成分は上記(A)成分100質量部に対して0〜100質量部であり、(B)成分は上記(A)成分と上記(C)成分との合計量100質量部に対して0.1〜40質量部であり、(E)成分は1〜95質量%である。
【0085】
また、上記(A)成分は、式(2)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、式(5)で表される樹脂と、を含み、式(2)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の質量m
A−1と、式(5)で表される樹脂の質量m
A−2との比率は、m
A−1/m
A−2=75/25〜25/75である。
【0086】
【化29】
(式(5)中、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
10は炭素数2〜4の炭化水素基であり、R
11は水素原子またはメチル基である。また、Mは−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、9,9−フルオレニレン基または直結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは水素原子または式(3)で表される置換基である。ただし、Zの少なくとも1つは式(3)で表される置換基であり、Gは水素原子または式(4)で表される置換基を示す。dは平均値が0〜10であり、mは平均値が1〜20である。)
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物における(B)光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2、4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾ−ル、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾア−ト、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが含まれる。なお、これら光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
特に、後述する着色剤等の分散質を含む感光性樹脂組成物とする場合には、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。具体的化合物群としては、式(26)または式(27)で示されるO−アシルオキシム系光重合開始剤がある。それらの中でも、着色剤を高顔料濃度で用いる場合および遮光膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるO−アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0089】
【化30】
(式(26)中、R
12、R
13は、それぞれ独立にC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基またはC4〜C12の複素環基を表し、R
14はC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基を表す。ここで、アルキル基およびアリール基はC1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C1〜C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、または環状のいずれのアルキル基であってもよい。)
【0090】
【化31】
(式(27)中、R
15およびR
16はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4〜10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R
17は独立して炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の−CH
2−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。さらに、これらR
15〜R
17の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0091】
感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類が含まれる。これらを単独または2種類以上を併用して溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物溶液中60〜90質量%の範囲が好ましい。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物には、上述したような(A)特定構造のアルカリ可溶性樹脂と(B)光重合開始剤に加えて、必要に応じて、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーや、(D)エポキシ基を2つ以上含むエポキシ化合物またはエポキシ樹脂を添加することができ、これら(C)成分と(D)成分を併用して使用することができる。
【0093】
(C)光重合性モノマーの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;デンドリマー型多官能アクリレートが含まれる。これらの光重合性モノマーは、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
また、当該少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、光重合性基を2個以上有して不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋することができるものを用いることが好ましい。なお、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
【0095】
(D)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ化合物の例には、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、エポキシシリコーン樹脂等が含まれる。これらは、1種類の化合物のみを用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(E)成分を含まない感光性樹脂組成物において、(C)成分および/または(D)成分を使用する場合の好ましい配合比率は、(C)成分が(A)成分100質量部に対して0〜100質量部であり、(D)成分を使用する場合には(A)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましい。(C)成分を使用する目的は、感光性樹脂組成物の光硬化反応の感度を向上させることであり、添加量を増せば感度は高くなる。ただし、(A)成分よりも多量に添加すると感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性が不足して現像性が低下することになる。一方、(D)成分を添加する目的は、光硬化反応、アルカリ現像に引き続き、熱硬化により光パターニングした膜の物性を向上させることであり、特にエポキシ基を2つ以上有す売るエポキシ化合物を用いた場合、樹脂成分を架橋することにより表面硬度等を改善することができる。ただし、光硬化成分に対して量が多すぎると光パターニング性に悪影響を及ぼすことになる。
【0097】
上述の感光性樹脂組成物は、(E)分散質を加えた感光性樹脂組成物として使用することもできる。分散質入りの感光性樹脂組成物として使用する場合の好ましい配合比率は、光硬化により固化する成分を含めた固形分中に(A)成分の含有量は1〜55質量%であり、(C)成分は(A)成分の100質量部に対して0〜100質量部であり、(B)成分は(A)成分と(C)成分の合計量100質量部に対して0.1〜40質量部であり、(E)は固形分中1〜95質量%であり、(D)成分を使用する場合は(A)成分と(C)成分の合計量100質量部に対し5〜30質量部であることが好ましい。
【0098】
本発明で使用できる(E)分散質としては、1〜1000nmの平均粒径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒径)で分散されたものであれば、従来感光性樹脂組成物に用いられている公知の分散質を特に制限なく使用することができる。
【0099】
ここで、黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラックなどが含まれる。混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合された顔料が含まれる。白色顔料の例には、酸化チタン顔料、複合酸化物顔料;ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機フィラーが含まれる。これらの(E)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
また、上記(E)分散質は目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。たとえば、カラーフィルターのブラックマトリクスの製造に用いられる遮光レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料等を用いることができ、カラーフィルターの画素の製造に用いられる着色レジストとしては、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紫色の有機顔料等を用いることができ、プリント配線板の絶縁膜の製造に用いられるソルダーレジストとしては、有機顔料、無機顔料、無機フィラー等を用いることができ、タッチパネルの前面ガラスの意匠に用いられる加飾レジストとしては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色有機顔料、白色顔料等を、高硬度、高耐久性の透明レジストとしてはシリカ等の透明フィラーを用いることができ、それぞれ適宜選定して使用することができる。
【0101】
なお、(E)成分として使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0102】
(E)成分の着色剤の配合割合については、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して1〜80質量%であることが好ましい。
【0103】
上記(E)成分は溶剤に分散させた着色剤分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、この際には分散剤(E’成分)を添加することができる。分散剤は、顔料(着色剤)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0104】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色剤への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量が1千〜10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、着色剤に対して1〜35質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0105】
上述のように、本発明の感光性樹脂組成物は様々な(E)分散質を加えた感光性樹脂組成物として、例えば耐光性の要求のある用途に使用することができる。
【0106】
なお、本発明では、必要に応じて、光または熱によって重合または硬化するその他の樹脂成分を併用してもよい。その他の樹脂成分としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック類から誘導されるノボラックエポキシ樹脂に(メタアクリル酸および酸無水物を反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類との共重合体中のカルボキシ基にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂等が挙げられる。
【0107】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。ここで、硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれ、硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0108】
本発明の硬化物は、本発明の感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成される。その製造工程としては、先ず、感光性樹脂組成物溶液を基板表面に塗布し、次いで溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、このようにして得られた被膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、さらにアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、さらに後硬化としてポストベークを行う方法が挙げられる。ここで、感光性樹脂組成物溶液を塗布する基板としては、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等が用いられる。
【0109】
感光性樹脂組成物溶液を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナ−機を用いる方法等の何れの方法を採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃で、1〜10分間行われることが好ましい。
【0110】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250〜450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20〜35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0111】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分の感光性樹脂組成物を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を0.03〜1重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜27℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0112】
このようにして現像した後、180〜250℃で、20〜100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。ただし、製膜する基板等の耐熱性が低い場合には、80〜180℃で、30〜100分間のポストベーク条件にできるように組成物の配合を設計することもできる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化物は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【実施例】
【0113】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
まず、式(2)で表される構造を含む重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0115】
[固形分濃度]
合成例および比較合成例中で得られた樹脂溶液、感光性樹脂組成物等の1gをガラスフィルター〔質量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の質量〔W
2(g)〕から下記式(1)より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0)
【0116】
[酸価]
樹脂溶液をテトラヒドロフランに溶解させ、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して、固形分1gあたりに必要となったKOHの量を酸価とした。
【0117】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH−2000(2本)+TSKgelSuperH−3000(1本)+TSKgelSuperH−4000(1本)+TSKgelSuper−H5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS−オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0118】
また、合成例および比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
HBPA−EA1:水添BisAエポキシ(エポキシ当量201g/eq)(式(1)
の骨格を有する)とアクリル酸との反応物(エポキシ基とカルボ
キシ基の等当量反応物)
HBPA−EA2:水添BisAエポキシ(エポキシ当量265g/eq)(式(1)
の骨格を有する)とアクリル酸との反応物(エポキシ基とカルボ
キシ基の等当量反応物)
BPA−EA :BisAエポキシ(エポキシ当量189g/eq)(式(22)
の骨格を有する)とアクリル酸との反応物(エポキシ基とカル
ボキシ基の等当量反応物)
BPF−EA :Bisフェノールフルオレン型エポキシ(エポキシ当量250
g/eq)(式(22)の骨格を有する)とアクリル酸との反応
物(エポキシ基とカルボキシル基の等当量反応物)
BPDA :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
HPMDA :1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0119】
[合成例1]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、HBPA−EA1の50%PGMEA溶液(329.1g)と、BPDA(44.1g)と、THPA(22.8g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−1を得た。得られた樹脂の固形分濃度は61.2質量%、酸価(固形分換算)は123.1mgKOH/g、および分子量(Mw)は3210であった。
【0120】
[合成例2]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、HBPA−EA1の50%PGMEA溶液(340.0g)と、HPMDA(34.7g)と、THPA(23.6g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−2を得た。得られた樹脂の固形分濃度は61.1質量%、酸価(固形分換算)は120.4mgKOH/g、および分子量(Mw)は3230であった。
【0121】
[合成例3]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、HBPA−EA2の50%PGMEA溶液(338.2g)と、BPDA(36.8g)と、THPA(19.0g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−3を得た。得られた樹脂の固形分濃度は73.8質量%、酸価(固形分換算)は93.0mgKOH/g、および分子量(Mw)は4980であった。
【0122】
[合成例4]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、HBPA−EA2の50%PGMEA溶液(338.2g)と、HPMDA(28.0g)と、THPA(19.0g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−4を得た。得られた樹脂の固形分濃度は64.2質量%、酸価(固形分換算)は100.8mgKOH/g、および分子量(Mw)は3960であった。
【0123】
[比較合成例1]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、BPA−EAの50%PGMEA溶液(325.1g)と、BPDA(45.6g)と、THPA(23.6g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、を仕込み、120〜125℃で加熱下に6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−5を得た。得られた樹脂の固形分濃度は68.5質量%、酸価(固形分換算)は113.0mgKOH/g、および分子量(Mw)は2080であった。
【0124】
[比較合成例2]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にBPA−EAの50%PGMEA溶液(335.6g)と、HPMDA(35.9g)と、THPA(24.3g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−6を得た。得られた樹脂の固形分濃度は69.5質量%、酸価(固形分換算)は116.5mgKOH/g、および分子量(Mw)は2630であった。
【0125】
[比較合成例3]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中に、BPF−EAの50%PGMEA溶液(313.7g)と、BPDA(47.1g)と、THPA(24.3g)と、TEAB(0.43g)と、PGMEA(8.5g)と、仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、アルカリ可溶性樹脂(i)−7を得た。得られた樹脂の固形分濃度は56.55質量%、酸価(固形分換算)は103.0mgKOH/g、および分子量(Mw)は3600であった。
【0126】
次に、感光性樹脂組成物および硬化物に係る実施例および比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、以降の実施例および比較例で用いた原料および略号は以下の通りである。
【0127】
(i)−1 :上記合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−2 :上記合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−3 :上記合成例3で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−4 :上記合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−5 :上記比較合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−6 :上記比較合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂
(i)−7 :上記比較合成例3で得られたアルカリ可溶性樹脂
(ii) :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(iii) :Irgacure184(BASF社製、「Irgacure」は同
社の登録商標)
(iv) :カーボンブラック20.0質量%、高分子分散剤5.0質量%のP
GMEA分散液(固形分25.0%、カーボンブラックの平均二次
粒径162nm)
(v) :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0128】
[感光性樹脂組成物の評価]
表1に、合成例1〜4、比較例1および2の感光性樹脂組成物溶液の各成分の含有量(単位は質量%)を示す。
【0129】
【表1】
【0130】
(サンプル作製)
実施例1〜4、比較例1および2の感光性樹脂組成物溶液を、ガラス板上にスピンコ−タ−を用いて1.5μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを介さずに500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cm
2の紫外線を照射して露光した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像液処理を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、加熱硬化処理を行い、硬化膜(硬化膜を形成したガラス基板)を得た。
【0131】
上記硬化膜を形成したガラス基板について透過率および屈折率を評価した。その結果を表2に示す。
【0132】
(透過率の測定方法)
分光光度計「UH−4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。
【0133】
(評価基準)
評価は下記の基準で行った。
○:光透過率は85%以上である
×:光透過率は85%未満である
【0134】
(屈折率の測定方法)
プリズムカップラー膜厚・屈折計「モデル2010/M」(メトリコン社製)を用いて、633nmの光線の屈折率を測定した。なお、測定した屈折率は表2に示している。
【0135】
【表2】
【0136】
上記実施例1〜4、比較例1および2の結果から明らかなように、本発明の式(1)のアルカリ可溶性樹脂(i)−1〜(i)−4を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、透過率は高く、屈折率は低い硬化物が得られることが分かった。
【0137】
[着色感光性樹脂組成物の評価]
表3に、合成例5〜8、比較例3および4の着色感光性樹脂組成物溶液の各成分の含有量(単位は質量%)を示す。
【0138】
【表3】
【0139】
(反射率測定用のサンプル作製)
実施例5〜8および比較例3、4の着色感光性樹脂組成物溶液を、ガラス板上にスピンコ−タ−を用いて1.5μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを介さずに500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cm
2の紫外線を照射して露光した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像液処理を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行い、着色硬化膜(着色硬化膜を形成したガラス基板)を得た。
【0140】
上記着色硬化膜を形成したガラス基板について反射率を測定した。その結果を表4に示す。
【0141】
(反射率の測定方法)
分光光度計「UH−4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、Y値を測定した。
【0142】
(評価基準)
着色硬化膜表面の外観を目視で確認した。
◎:色ムラが全く確認されない
〇:表面の1/4以下の領域に色ムラが観察される
△:表面の1/3以下の領域に色ムラが観察される
×:全体に色ムラが観察される
【0143】
【表4】
【0144】
(アルカリ現像性評価用のサンプル作製)
実施例5〜8、比較例3および4の着色感光性樹脂組成物溶液を、ガラス板上にスピンコ−タ−を用いて1.5μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、パターン形成用のマスクを介して500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cm2の紫外線を照射して露光した。露光後、23℃の0.15%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像液処理を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行い、着色硬化膜(着色硬化膜を形成したガラス基板)を得た。
【0145】
上記着色硬化膜を形成したガラス基板について、アルカリ現像性および密着性を評価した。その結果を表5に示す。
【0146】
(評価方法:アルカリ現像性)
現像時において、乾燥した着色感光性樹脂組成物の薄膜が現像液に溶解するかどうかを目視で確認した。
【0147】
(評価基準:アルカリ現像性)
○:現像時において、紫外線を照射していない領域が現像液に溶解する
×:現像時において、紫外線を照射していない領域が現像液に溶解しないか、破片
として剥離する
【0148】
(評価方法:密着性)
レジスト膜パターンの細線形成を光学顕微鏡「ECLIPSE LV100」(株式会社Nikon製)で確認した。
【0149】
(評価基準:密着性)
○:L/S(ライン幅/スペース幅)が20μm/20μm以上のパターンが残渣
なく形成されているもの
×:L/S(ライン幅/スペース幅)が20μm/20μm未満のパターンが形成
されていないか、パターンの裾引きや残渣が目立つもの
【0150】
【表5】
【0151】
上記実施例5〜8、比較例3および4の結果から明らかなように、本発明の式(1)のアルカリ可溶性樹脂(i)−1〜(i)−4を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、精細なパターン形成をすることができることがわかった。