【解決手段】鋼材の防錆補修方法は、鋼材の施工対象領域をケレン処理して鋼材の素地を調整する素地調整工程ST11と、素地を調整した施工対象領域上にプライマーを塗布して下地層を設けるプライマー塗布工程ST12と、下地層上に樹脂を塗布して鋼材表面への水分及び酸素の透過を防ぐ樹脂層を設ける樹脂塗布工程ST13と、樹脂層上に接着剤を塗布する接着剤塗布工程ST14と、接着剤を介して樹脂層上に当該樹脂層への紫外線の透過を防ぐ紫外線防止層を設ける紫外線防止層形成工程ST15と、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鋼材の防錆補修方法は、鋼材の施工対象領域をケレン処理して前記鋼材の素地を調整する素地調整工程と、前記素地を調整した前記施工対象領域上にプライマーを塗布して下地層を設けるプライマー塗布工程と、前記下地層上に樹脂を塗布して前記鋼材表面への水分及び酸素の透過を防ぐ樹脂層を設ける樹脂塗布工程と、前記樹脂層上に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤を介して前記樹脂層上に当該樹脂層への紫外線の透過を防ぐ紫外線防止層を設ける紫外線防止層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る鋼材の防錆補修方法によれば、樹脂層により鋼材表面に対する酸素、水分及び大気中の塵埃の接触を防ぐことができるので、鋼材の錆に基づく腐食の進行を防ぐことができる。そして、樹脂層上に紫外線防止層を設けるので、樹脂層に対する紫外線を紫外線防止層が反射又は吸収し、紫外線による樹脂層の劣化を防ぐことが可能となる。これにより、塗装と略同様の施工方法で鋼材の防錆補修効果が得られるので、2日〜3日の短期間で防錆補修を行うことができる。さらに、補修工事に伴う設計期間及び大掛かりな工事に伴って生じうる人手及び材料費用が不要となるので、安価に防錆補修を行うことができる。したがって、鋼材の防錆補修方法は、腐食した鋼材を短期間で安価に防錆補修可能な鋼材の防錆補修方法を実現することが可能となる。
【0010】
本発明に係る鋼材の防錆補修方法においては、更に、前記紫外線防止層上に当該紫外線防止層を保護する保護層を設ける保護層形成工程を含むことが好ましい。この方法により、保護層によって紫外線防止層を保護することができるので、紫外線防止層への他の物質の接触に伴う紫外線防止層の破損を防ぐことができ、樹脂層への紫外線の透過より確実に防ぐことができる。
【0011】
本発明に係る鋼材の防錆補修方法においては、前記樹脂が、ポリウレア樹脂であることが好ましい。この方法により、弾性の高いポリウレア樹脂が鋼材と良好に密着すると共に、膜厚が1mm以上確保可能となるので、一般的な塗装と比較して10倍以上の膜厚とすることが可能となり、鋼材表面を効率よく保護することが可能となる。
【0012】
本発明に係る鋼材の防錆補修方法においては、前記接着剤が、エポキシ含浸接着剤であることが好ましい。この方法により、樹脂層と紫外線防止層とを効率よく接着することが可能となる。
【0013】
本発明に係る鋼材の防錆補修方法においては、前記紫外線防止層が、炭素繊維強化樹脂を含むことが好ましい。この方法により、紫外線防止層が軽量になると共に、強度、弾性、耐食性及び耐摩耗性が良好となるので、紫外線防止層の破損を防止することが可能となる。
【0014】
本発明に係る鉄塔の防錆補修方法は、鉄塔を構成する鋼材の施工対象領域をケレン処理して前記鋼材の素地を調整する素地調整工程と、前記素地を調整した前記施工対象領域上にプライマーを塗布して下地層を設けるプライマー塗布工程と、前記下地層上に樹脂を塗布して前記鋼材表面への水分及び酸素の透過を防ぐ樹脂層を設ける樹脂塗布工程と、前記樹脂層上に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤を介して前記樹脂層上に当該樹脂層への紫外線の透過を防ぐ紫外線防止層を設ける紫外線防止層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る鉄塔の防錆補修方法によれば、樹脂層により鋼材表面に対する酸素、水分及び大気中の塵埃の接触を防ぐことができるので、鋼材の錆に基づく腐食の進行を防ぐことができる。そして、樹脂層上に紫外線防止層を設けるので、樹脂層に対する紫外線を紫外線防止層が反射又は吸収し、紫外線による樹脂層の劣化を防ぐことが可能となる。これにより、塗装と略同様の施工方法で鋼材の防錆補修効果が得られるので、2日〜3日の短期間で防錆補修を行うことができる。さらに、補修工事に伴う設計期間及び大掛かりな工事に伴って生じうる人手及び材料費用が不要となるので、安価に防錆補修を行うことができる。したがって、鉄鋼の防錆補修方法は、腐食した鋼材を短期間で安価に防錆補修可能な鉄鋼の防錆補修方法を実現することが可能となる。
【0016】
本発明に係る鉄塔の防錆補修鋼材は、鋼材本体と、前記鋼材本体上の腐食部を含む領域に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられ、前記鋼材表面への水分及び酸素の透過を防ぐ樹脂層と、前記樹脂層上に設けられ、樹脂層への紫外線の透過を防ぐ紫外線防止層と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る防錆補修鋼材によれば、樹脂層により鋼材本体表面に対する酸素、水分及び大気中の塵埃の接触を防ぐことができるので、鋼材本体の錆に基づく腐食の進行を防ぐことができる。そして、樹脂層上に紫外線防止層を設けるので、樹脂層に対する紫外線の照射を紫外線防止層が反射又は吸収して防ぐことが可能となる。これにより、塗装と略同様の防錆効果が得られるので、2日〜3日の短期間で腐食部を補修することができる。さらに、補修に伴う設計期間及び大掛かりな工事に伴って生じる人手及び材料費用が不要となるので、安価に防錆を行うことができる。したがって、防錆補修鋼材は、腐食した鋼材を短期間で安価に防錆補修可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、短期間かつ安価に鋼材の防錆補修が可能な鋼材の防錆補修方法、鉄塔の防錆補修方法及び防錆補修鋼材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法が適用される山形鋼鉄塔の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す山形鋼鉄塔の下部の模式的な拡大図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法が適用された主柱材の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る防錆補修鋼材の断面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法の概略を示すフロー図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明の実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
【
図6E】
図6Eは、本発明の実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
【
図6F】
図6Fは、本発明の実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施の形態に係る防錆補修鋼材における防錆補修部の施工例の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施の形態に係る防錆補修鋼材における防錆補修部の施工例の一例を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、本発明の実施の形態に係る防錆補修鋼材における防錆補修部の施工例の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る防錆補修鋼材における防錆補修部の施工例の他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係る紫外線防止層形成工程における施工例を示す例である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施例に係る等辺山形鋼の部材劣化レベルAの鋼材を示す写真である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施例に係る等辺山形鋼の部材劣化レベルBの鋼材を示す写真である。
【
図11C】
図11Cは、本発明の実施例に係る等辺山形鋼の部材劣化レベルCの鋼材を示す写真である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施例に係る等辺山形鋼の2種ケレン処理を示す写真である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施例に係る等辺山形鋼の2種軽微ケレン処理を示す写真である。
【
図12C】
図12Cは、本発明の実施例に係る等辺山形鋼の3種ケレン処理を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態によって何ら限定されるものではない。
【0021】
以下の実施の形態においては、本実施の形態に係る防錆補修方法を鉄塔に適用する例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法が適用される山形鋼鉄塔の模式図であり、
図2は、
図1に示す山形鋼鉄塔の下部の模式的な拡大図である。
図1及び
図2に示すように、山形鋼鉄塔100は、地上から高さ方向に沿って立設される鉄塔本体101と、鉄塔本体101から水平方向に突出する腕金材102とを備える。鉄塔本体101は、地表から鉄塔本体101の上端まで高さ方向に沿って配置された4つの主柱材111と、水平方向に配置され、主柱材111同士を連結する複数の水平材112とを備える。主柱材111同士及び主柱材111と水平材112とは、主柱材111及び水平材112に対して傾斜して配置された複数の斜材113によって連結されている。
【0022】
主柱材111は、地面に対して所定の角度で傾斜して配置される複数の山形鋼が、端部に設けられた継手部114同士を重ね合わせてボルトナットで接合されてなる。また、最下部の主柱材111は、一端部の継手部114を上方に突出させた状態で多端部がコンクリート基礎(不図示)に埋設されて固定されている。
【0023】
腕金材102は、鉄塔本体101から水平方向に沿って突出する左右一対の腕金主材121と、鉄塔本体101と腕金主材121の先端との間に傾斜して配置された左右一対の腕金吊材122とを備える。腕金吊材122は、鉄塔本体101と各腕金主材121の先端とを連結している。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法が適用された主柱材111の一例を示す図である。
図3に示す例では、主柱材111の一部に本実施の形態に係る防錆補修方法が施されてなる防錆補修鋼材1を有する。この防錆補修鋼材1は、継手部114を介して2つの主柱材111aと主柱材111b間に亘って設けられている。防錆補修鋼材1は、錆などによる主柱材111の腐食を防止する。
【0025】
図4は、本実施の形態に係る防錆補修鋼材1の断面模式図である。
図1に示すように、防錆補修鋼材1は、防錆処理の施工対象となる鋼材本体11と、鋼材本体11上に設けられた防錆補修部12とを含む。防錆補修部12は、鋼材本体11上に設けられた下地層13と、下地層13上に設けられた樹脂層14と、樹脂層14上に設けられた紫外線防止層15と、紫外線防止層15上に設けられた保護層16とを備える。なお、防錆補修鋼材1においては、保護層16は、必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて省略可能である。
【0026】
鋼材本体11としては、風雨などにより錆などの腐食が生じるものが用いられる。鋼材本体11としては、錆などの腐食が既に生じたものを用いてもよく、錆などの腐食が未だ生じていないものを用いてもよい。鋼材本体11としては、鉄、鋼などの各種金属製の鋼材が用いられる。また、鋼材本体11としては、めっき処理により表面にめっき層が設けられためっき鋼材を用いてもよく、未処理の鋼材を用いてもよい。これらの中でも、鋼材本体11としては、鉄塔などに用いられる亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼材が好適に用いられる。この場合、亜鉛めっき鋼材としては、亜鉛めっき層を有するものを用いてもよく、錆などによる腐食のために、亜鉛めっき層が消失して表面に錆などが生じたものを用いてもよい。鋼材本体11としては、鉄塔などの構造体に用いられている既設の鋼材であってもよく、構造体に用いられる前の単体の鋼材本体11であってもよい。また、鋼材本体11としては、送電用の鉄塔などの構造体で使用され、表面が既に錆などにより腐食されたものを用いてもよく、未使用で腐食のないものを用いてもよい。鋼材本体11として、表面に錆が生じた鋼材を用いる場合には、ケレン処理などにより表面の錆及び塗装などを除去して用いる。
【0027】
下地層13は、鋼材本体11の表面に塗布されることにより、鋼材補修部12の施工対象となる鋼材本体11の表面を平滑化して鋼材本体11と樹脂層14との間の接着性を向上する。下地層13は、主剤及び硬化剤を所定割合で含有したプライマーを、鋼材本体11の表面に塗布して硬化することにより設けられる。下地層13のプライマーとしては、例えば、エポキシ変性ウレタン樹脂(例えば、商品名:「FP-UL1」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)が用いられる。下地層13の厚みは、例えば、50μm以上500μm以下である。下地層13のプライマーは、エポキシ変性ウレタン樹脂に限らず、鋼材本体11と樹脂層14の材質に合わせて適宜選定可能である。
【0028】
樹脂層14は、鋼材本体11表面に対する水分、塩分及び酸素などの低い透過性を有し、鋼材本体11表面と水分、塩分及び酸素との接触を阻止する。また、樹脂層14は、耐衝撃性及び耐摩耗性を有し、鋼材本体11を衝撃及び摩耗から保護する。さらに、樹脂層14は、施工対象となる鋼材本体11の表面に継手部114などの段差を有する場合には段差を平滑化する。樹脂層14は、例えば、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂などの樹脂を含有する。ポリウレア樹脂としては、例えば、商品名:「FU-Z」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製が用いられる。樹脂層14の厚みは、鋼材本体11表面に対する水分、塩分及び酸素の透過性を低減する観点、及び鋼材本体11に対する耐衝撃性及び耐摩耗性の観点から、0.1mm以上5mm未満であることが好ましく、0.5mm以上1.2mm未満であることがより好ましく、0.8mm以上0.9mm未満であることが更に好ましい。
【0029】
紫外線防止層15は、樹脂層14に対する紫外線などを吸収又は反射し、紫外線による劣化から樹脂層14を保護する。紫外線防止層15としては、樹脂層14に対する紫外線を吸収又は反射により防ぐことができるものであれば制限はない。紫外線防止層15としては、例えば、母材の樹脂を繊維により強化した繊維強化樹脂のシートや樹脂を含浸させる前の繊維強化シートが用いられる。紫外線防止層15として、繊維強化樹脂のシート(繊維強化シートに樹脂を含浸させたものを含む)を用いることにより、樹脂層14上に接着剤を介して貼着することにより、紫外線防止層15を設けることができる。なお、繊維強化シートは、接着剤を含浸させることにより繊維強化樹脂となる。また、紫外線防止層15は耐摩耗性、耐衝撃性を有する部材を使用することで、再塗装時にケレンを行った場合に樹脂層14を保護する役割を果たす。
【0030】
繊維強化樹脂としては、樹脂層14に対する紫外線を吸収又は反射できるものであれば特に制限はなく、例えば、ガラス繊維強化樹脂(GFRP:Glass―Fiber―Reinforced Plastics)、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon―Fiber―Reinforced Plastics)、ボロン繊維強化樹脂(BFRP:Boron Fiber―Reinforced Plastics)、アラミド繊維強化樹脂(AFRP:Aramid―Fiber―Reinforced Plastics)、及び高分子繊維強化樹脂などが挙げられる。これらの中でも、軽量、高強度・高弾性、高耐食性、絶縁性、高摩耗性などの観点から、炭素繊維強化樹脂が好ましい。炭素繊維強化樹脂としては、PAN系炭素繊維強化樹脂及びピッチ系炭素繊維強化樹脂などの各種炭素繊維強化樹脂を用いることができる。これらの中でも、耐摩耗性により優れる観点から、PAN系炭素繊維強化樹脂及びピッチ系炭素繊維強化樹脂が好ましく、ピッチ系炭素繊維強化樹脂がより好ましい。また、炭素繊維強化樹脂としては、樹脂層14上に貼着により紫外線防止層15を設けることができる観点から、炭素繊維強化樹脂シート(炭素繊維強化シートに樹脂を含浸させたものを含む)が好ましい。炭素繊維強化樹脂としては、例えば、商品名:「トウシート」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製が用いられる。
【0031】
保護層16は、紫外線防止層15を水分や酸素の透過を防ぐとともに、紫外線から保護する。保護層16としては、例えば、フッソ系塗料(商品名:「ボンフロン鉄塔用上塗 #2200」、AGCコーテック株式会社製)などが用いられる。保護層16の厚みは、紫外線防止層15に対する水分や酸素、紫外線からの保護の観点から、例えば、40μm以上である。以下、本実施の形態に係る防錆補修方法について詳細に説明する。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法の概略を示すフロー図である。
図5に示すように、本実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法は、例えば、送電用の鉄塔などの亜鉛めっき処理が施された亜鉛めっき鋼材に錆などの腐食が生じた際に、錆などが生じた腐食部を含む領域に施工することにより、腐食部の更なる錆の進行を防ぐものである。本実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法は、施工対象となる鋼材本体11の素地をケレン処理により調整する素地調整工程ST11と、素地を調整した鋼材本体11上にプライマーを塗布して下地層13を設けるプライマー塗布工程ST12と、下地層13上に樹脂を塗布して樹脂層14を設ける樹脂塗布工程ST13と、樹脂層14上に接着剤を塗布する接着剤塗布工程ST14と、接着剤を介して樹脂上に紫外線防止層15を設ける紫外線防止層形成工程ST15とを含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0033】
図6Aから
図6Fは、本実施の形態に係る防錆補修方法の説明図である。
図6Aに示すように、施工対象となる鋼材本体11は、表面に錆などの腐食が生じた腐食部11Aに対応した腐食領域A1を有する。
図6Bに示すように、素地調整工程ST11では、鋼材本体11表面の施工対象領域A2の素地を調整する。施工対象領域A2は、鋼材本体11に生じた錆などを含む腐食部11Aの腐食領域A1より広い範囲に設定されることが好ましい。これにより、紫外線防止層15を設けた後の鋼材補修部12の端部の浮きなどを防いで鋼材補修部12と鋼材本体11とをより確実に密着させることができる。また、後述する紫外線防止層15の貼付工程において、例えば、鋼材本体11の端部で紫外線防止シートを折り返して紫外線防止層15を設けた場合であっても、紫外線防止層15の紫外線防止シートの弾性に基づく紫外線防止層15の浮きを防ぐことができる。施工対象領域A2は、上述した効果がより向上する観点から、腐食領域A1に加えて、腐食部11Aの端部より10mm以上広い範囲A3を含むことが好ましく、20mm以上広い範囲A3を含むことがより好ましく、30mm以上広い範囲A3を含むことが更に好ましく、また施工時間を短縮する観点から、腐食部11Aの端部より60mm以下の範囲A3を含むことが好ましく、50mm以下の範囲A3を含むことがより好ましく、40mm以下の範囲A3を含むことが更に好ましい。
【0034】
素地調整工程ST11では、例えば、ケレン処理により素地の調整を実施する。ケレン処理では、電動工具又は手工具により錆、埃、汚れを除去する。ケレン処理としては、1種ケレン処理、2種ケレン処理、2種軽微ケレン処理及び3種ケレン処理のいずれでもよい。本実施の形態においては、1種ケレン処理とは、ブラスト法、酸洗浄、剥離剤を用いて錆及び塗装を完全に除去するケレン処理であり、2種ケレン処理とは、ディスクサンダーなどの電動工具を用いて完全に錆を除去するケレン処理であり、2種軽微ケレン処理とは、ワイヤーカップなど電動工具で脆弱な錆のみを除去するケレン処理であり、3種ケレンとは、錆及浮き塗膜をワイヤーブラシ、スクレーバー、ケレン棒、サンドペーパーなどの手工具を用いて錆除去するケレン処理である。本実施の形態によれば、工事費が高価な1種ケレン処理を行う必要がなく、工事費が安価な2種ケレン、2種軽微ケレン処理及び3種ケレン処理でも鋼材の防錆処理を実現することができる。
【0035】
プライマー塗布工程ST12では、
図6Cに示すように、素地調整工程ST11で素地を調整した鋼材本体11上の施工対象領域A2上にプライマーを塗布して下地層13を設ける。プライマー塗布工程ST12では、施工対象領域A1の錆及び塵埃をブロアー、ウエスで除塵した後、アセトンなどの有機溶剤で油分などの汚れを拭きとる。そして、素地を調整した鋼材本体11上に予め主剤及び硬化剤を所定の配合比率で混合したプライマーを均一に塗布した後、所定時間乾燥させて下地層13を設ける。ここでは、必要に応じて乾燥後の下地層13をサンドペーパーなどにより平滑化処理してもよい。
【0036】
樹脂塗布工程ST13では、
図6Dに示すように、下地層13上に樹脂を塗布して樹脂層14を設ける。これにより、鋼材本体11の施工対象領域A2上に、高弾性層としての樹脂層14を設けることができる。樹脂塗布工程ST13では、予め主剤及び硬化剤を所定の配合比率で混合した硬化性樹脂を下地層13上に均一に塗布する。ここでは、塗布後の樹脂の段差が1mm以内となるようにすることが好ましい。
【0037】
また、樹脂塗布工程ST13では、施工対象となる鋼材本体11の施工対象領域A2の端部から所定範囲の他の導電性部材にも樹脂を塗布することが好ましい。これにより、施工後に防錆補修部1の紫外線防止層15と鋼材本体11の施工対象領域A2の端部から所定範囲の他の導電性部材との接触を防ぐことができるので、紫外線防止層15と他の導電性部材との導通による電位差に基づく腐食を防ぐことが可能となる。上記所定範囲としては、例えば、施工対象領域A2の端部から10mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0038】
また、樹脂塗布工程ST13では、樹脂の塗布後、樹脂の硬化前に樹脂層12の表面が平滑となるように整形する。ここでは、例えば、鋼材本体11の継ぎ手部114で生じる段差部114A(
図3参照)では、樹脂を厚塗りして段差部114A間の段差を解消することが好ましい。これにより、継ぎ手部114を介して複数の鋼材本体11間に渡って防錆補修部11を設けることができるので、複数の鋼材本体11間を連続的に補修することが可能となる。
【0039】
樹脂塗布工程ST13では、樹脂の塗布後に所定時間乾燥処理する。乾燥時間としては、例えば、3時間以上24時間以下である。樹脂塗布工程ST13では、樹脂層14が硬化した後、カッター及びサンドペーパーなどを使用して樹脂層14表面を整形する。これにより、紫外線防止層15を設ける際に、紫外線防止層15の曲がりを防いで樹脂層14に隙間なく接着させることができる。特に、鋼材本体11として、山形鋼を用いる場合には、角部120が樹脂層14の塗布時に余盛になるので、樹脂層14表面を整形することが好ましい。
【0040】
接着剤塗布工程ST14では、樹脂層14上に接着剤を塗布する。接着剤塗布工程ST14では、乾燥した樹脂層14上に所定の比率で混合されたエポキシ含浸樹脂を樹脂層14上に塗布する。ここでは、エポキシ含浸接着剤は、紫外線防止層15の形成面より広範囲に塗布することが好ましい。また、エポキシ含浸接着剤は、樹脂層14上の塗布量を増やすことにより、紫外線防止層15を設けた後の脱泡を容易にすることができる。特に、エポキシ含浸接着剤は、鋼材本体11として、山形鋼を用いる場合には、角部120の塗布量を平面部より増やすことにより、角部120における気泡の残留を防ぐことができる。
【0041】
紫外線防止層形成工程ST15では、接着剤を介して樹脂層14上に紫外線防止層15を設ける。ここでは、例えば、樹脂層14上に紫外線防止シートを貼着する。これにより、防錆補修鋼材1は、紫外線防止層15により樹脂層14表面に到達する光線中の紫外線を遮ることができるので、樹脂層14の劣化を抑制することができる。紫外線防止層15としては、紫外線を防ぐことができるものであれば、特に制限はなく、上述した各種繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂などを用いることができる。また、紫外線防止層15としては、繊維強化樹脂からなるシートだけではなく、樹脂を含浸させる前の繊維強化シートを用いることもできる。これらの中でも、炭素繊維強化樹脂を用いることにより、腐食減肉した鋼材本体11の強度を回復することができる。
【0042】
紫外線防止層形成工程ST15では、まず、紫外線防止層15の貼着対象となる鋼材11の部材スケッチを行う。部材スケッチでは、鋼材本体11の部材が重なっている箇所の形状、ボルト締結により固定されている継手部114などの形状に合わせて紫外線防止層15を切り取り加工する。ここでは、予め作成したスケッチ図を用いることが好ましい。これにより、例えば、鉄鋼塔の鋼材本体11に施工する場合には、予め作成したスケッチ図の各寸法を鉄塔上部の作業員から下部作業員に連絡できるので、部材スケッチを迅速に行うことができる。
【0043】
シートの切り取り加工では、紫外線防止層15の上下端をマスキングテープなどでベニヤ板などの固定部材に固定する。これにより、紫外線防止層15として、柔らかく損壊しやすい炭素繊維強化樹脂を用いた場合であっても、マスキングテープで紫外線防止層15を固定部材に固定することにより、紫外線防止層15の損壊を防ぐことができる。
【0044】
次に、紫外線防止層形成工程ST15では、
図6Eに示すように、樹脂層14上に紫外線防止層15を設ける。ここでは、紫外線防止層15は、施工対象領域A2内に設けられた樹脂層14よりも狭い紫外線防止層形成領域A4に設けることが好ましい。これにより、紫外線防止層15として導電性を有する炭素繊維強化樹脂を用いた場合であっても、紫外線防止層15と鋼材本体11との接触を防ぐことができるので、電位差腐食を防ぐことができる。施工対象領域A2は、上述した効果がより向上する観点から、紫外線防止層形成領域A4の端部より10mm以上広い範囲とすることが好ましく、20mm以上広い範囲とすることがより好ましく、30mm以上広い範囲とすることが更に好ましく、また施工時間を短縮する観点から、紫外線防止層形成領域A4の端部より60mm以下の範囲とすることが好ましく、50mm以下の範囲とすることがより好ましく、40mm以下の範囲とすることが更に好ましい。
【0045】
なお、紫外線防止層形成工程ST15においては、例えば、鋼材本体11が接続される継手部114などでは、紫外線防止層15の端部を相互に重ね合わせることが好ましい。
【0046】
次に、紫外線防止層形成工程ST15では、樹脂層14上に紫外線防止シートを貼着した紫外線防止層15上からローラーなどで押圧し、紫外線防止層15と樹脂層14との間に介在する気泡を押し出して脱泡する。これにより、紫外線防止層15と樹脂層14とを密着させることができる。
【0047】
次に、紫外線防止層15上にエポキシ含浸接着剤などの樹脂を塗布して紫外線防止層15上に保護層16を形成する。ここでは、必要に応じてローラーなどで保護層16を押圧して脱泡処理してもよい。これにより、紫外線防止層15上に更に保護層16を設けることができるので、紫外線防止層15を水分や酸素の透過から保護して樹脂層14への紫外線から保護することができる。なお、保護層16は、必ずしも設ける必要はない。
【0048】
図7A〜
図7Cは、本実施の形態に係る防錆補修鋼材1の施工例の一例を示す図である。
図7A〜
図7Cに示す例では、防錆補修鋼材1は、防錆補修部12が山形鋼の鋼材本体11の一対の平面部111の両端部でそれぞれ折り返されて設けられている。この場合、
図7Aに示すように、山形鋼の鋼材本体11の一対の平面部110の表面11a側から裏面11b側の所定範囲を紫外線防止層形成領域A4として設定し、設定した紫外線防止層形成領域A4より広い範囲に施工対象領域A2を設定し、表面調整して下地層13を設ける。次に、
図7Bに示すように、下地層13上に樹脂層14を設ける。次に、
図7Cに示すように、樹脂層14にエポキシ含浸接着剤を塗布した後、一対の平面部110の表面側11aから裏面側11bにかけて紫外線防止層15を構成する紫外線防止シートを一対の平面部110の両端部で表面11a側から裏面11b側に折り返して鋼材本体11に貼着する。この結果、防錆補修部12は、山形鋼の鋼材本体11の表面11a側に角部120を介して一方の平面部110の端部から他方の平面部110の端部に亘って設けられ、裏面11b側の端部に折り返し部12Aを有する。
【0049】
図8は、本実施の形態に係る防錆補修鋼材1の施工例の他の例を示す図である。
図8に示すように、防錆補修鋼材1の防錆補修部12は、山形鋼の鋼材11の裏面11b側に設けてもよい。この場合、紫外線防止層15を構成する紫外線防止シートは、一対の平面部110の両端部で裏面11b側から表面11a側に折り返して鋼材本体11に貼着する。この結果、防錆補修部12は、山形鋼の鋼材本体11の裏面11b側に角部120を介して一方の平面部110の端部から他方の平面部110の端部に亘って設けられ、表面11a側の端部に折り返し部(不図示)を有する。このように施工した場合であっても、鋼材本体11の裏面11b側から鋼材本体11表面への水分及び空気の接触を防ぐことができるので、鋼材本体11の更なる腐食を防止することができる。
【0050】
図9は、紫外線防止層形成工程ST15における施工例を示す例である。上述したように、紫外線層形成工程ST15では、樹脂層14上に塗布したエポキシ含浸接着剤を塗布してから紫外線防止層15を樹脂層14上に貼着する。ここで、接着剤として用いるエポキシ樹脂などは、低温(例えば、5℃以下)においては、硬化反応の速度が低下して紫外線防止層15の紫外線防止シートなどの貼着が困難となる場合がある。この場合、
図9に示すように、鋼材本体11の施工対象領域を気泡緩衝材200で覆った後、鋼材本体11の施工対象領域の近傍に発熱体201A、201B及び201Cを固定する。発熱体201A、201B及び201Cとしては、例えば、使い捨てカイロなどが挙げられる。これにより、例えば、冬季に屋外に配置された鋼材本体11に防錆補修部11Aを施工する場合であっても、鋼材本体11の施工対象領域を所望の温度以上に保つことできるので、効率よく紫外線防止層15を貼着することができる。なお、鋼材本体11の表面温度は、発熱体201A、201B及び201Cの間隔を調整することにより適宜調整可能である。
【0051】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、樹脂層14により鋼材本体11表面に対する酸素、水分及び大気中の塵埃の接触を防ぐことができるので、鋼材本体11の錆に基づく腐食の進行を防ぐことができる。そして、樹脂層14上に紫外線防止層15を設けるので、樹脂層14に対する紫外線の照射を紫外線防止層15が反射又は吸収して防ぐことが可能となる。これにより、塗装と略同様の施工方法で鋼材本体11の防錆補修効果が得られるので、2日〜3日の短期間で防錆補修を行うことができる。さらに、補修工事に伴う設計期間及び大掛かりな工事に伴って生じる人手及び材料費用が不要となるので、安価に防錆補修を行うことができる。したがって、鋼材の防錆補修方法は、腐食した鋼材を短期間で安価に防錆補修可能な鋼材の防錆補修方法を実現することが可能となる。
【0052】
また、上記実施の形態によれば、樹脂層14が鋼材本体11に密着すると共に、一般的な塗装と比較して樹脂層14の膜厚を厚くすることが可能となるので、鋼材本体11の表面に対する酸素、水分及び大気中の塵埃を効率よく遮断することができる。そして、腐食した鋼材本体11の部材交換が不要となるので、部材交換に伴う高度な設計及び大掛かりな工事に伴い生じる人手及び材料費用が不要となる。また、2日〜3日の停電期間で施工を完了できるので、短期間で作業を行うことが可能となる。さらに、人手で運搬可能な資材及び機材を用いて施工できるので、既設の鋼材に対して施工する場合であっても、ヘリコプター運搬などの高額な工事費は発生せず、コンプレッサー及び発電機などの大型資機材も不要となる。そして、施工に必要な工事用地の確保や、工事用地確保のための地権者交渉及び樹木の伐採などの工事準備期間が不要となり、補修対象箇所の発見以降短時間で安価に補修が可能となる。
【0053】
また、上記実施の形態によれば、防錆補修部11の耐食性及び耐摩耗性を極めて高くできるので、キズなどによる欠損が腐食の原因となりにくく、再塗装のケレン作業に対しても、再度施工するような手間がかからない。また、錆が残っている状態でも施工可能であり、防錆補修部11と鋼材本体11との密着性が高いので、水及び酸素などの腐食因子が鋼材本体11表面に供給されず、錆の発生及び発達が抑制され、錆が残っている状態でも施工可能となる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
本発明者らは、上述した実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法を施工した防錆処理鋼材を作成し、腐食促進試験を実施して防錆効果を評価した。なお、以下の実施例では、防錆処理鋼材は、一方の平面部110Aの全表面に防錆処理を施し、他方の平面部110Bの一部の表面に防錆処理を施した防錆処理鋼材A(
図10A参照)、一方の平面部110A及び他方の平面部110Bの全表面に防錆処理を施した防錆処理鋼材B(
図10B参照)、一方の平面部110A、他方の平面部110B及び角部120の全ての面に防錆処理を施し、且つ、炭素繊維強化樹脂の平面部の端部を裏面に折り返した防錆処理鋼材C(
図10C参照)について作成した。
【0056】
<腐食促進試験>
腐食促進試験機(型番:「BQD−2型」、板橋理化工業株式会社製)JASO M 609−91に準拠して腐食促進試験を実施した。35%塩化ナトリウム水溶液を温度35℃±1℃の条件で2時間噴霧し、温度60℃±1℃、湿度30%RHの条件で4時間乾燥した後、温度50℃±2℃、湿度95RH%以上の条件で湿潤させた。上記3工程からなる1サイクルを360サイクル(東京地区22年間に相当)実施し、以下の評価を実施した。
【0057】
(表面状態観察)
腐食促進試験前後の鋼材をルーペで観察し、変形及び異常膨れについて以下の基準で評価した。
○:変形及び異常膨れなし
×:変形又は異常膨れあり
【0058】
(断面状態観察)
腐食促進試験前後の鋼材の断面をマイクロスコープで観察して内部腐食の状況を確認し、以下の基準で評価した。
○:錆の進行及び膨れなし
×:錆の進行又は膨れあり
【0059】
(塗膜付着力)
腐食促進試験前後の鋼材の付着力をアドヒージョンテスター(型番:「KH−AT−A AT11163」、 DeFelsko社製)で測定して鋼材と炭素繊維強化樹脂との密着力を確認し、以下の基準で評価した。
○:付着力の低下なし
△:付着力の低下あり
【0060】
(表面剥離観察)
腐食促進試験後の鋼材から炭素繊維強化樹脂及びポリウレア樹脂を除去し、鋼材の表面をマイクロスコープで観察した。
○:錆の進行なし
×:錆の進行あり
【0061】
(総合評価)
表面状態観察、断面状態観察、塗膜付着力及び表面剥離観察の結果について以下の基準で評価した。
◎:全ての評価が良好
○:付着力以外の評価が良好
×:表面状態の評価が不良
【0062】
(実施例1)
等辺山形鋼の鋼材(部材劣化レベルA(
図11A参照):全表面腐食)に2種ケレン処理(
図12A参照)を施した後、プライマー(商品名:「FP-UL1」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を塗布して23℃で3時間乾燥させてプライマー層を設けた。次に、ポリウレア樹脂(商品名:「FU-Z」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を塗布した後、23℃で12時間硬化させて樹脂層を設けた後、エポキシ含浸接着剤(商品名:「FR-E9P」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を樹脂層上に塗布して炭素繊維シート(商品名:「FTS-C8-30」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を含浸・接着した。その後、炭素繊維シートの脱泡処理をした後、フッソ系塗料(商品名:「ボンフロン鉄塔用上塗 #2200」、AGCコーテック株式会社製)を樹脂層上に塗布して上塗り層を設けて防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0063】
(実施例2)
等辺山形鋼の鋼材(部材劣化レベルA)に代えて、等辺山形鋼の鋼材(部材劣化レベルB(
図11B参照):塗膜下腐食軽微)を用いたこと以外、は実施例1と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0064】
(実施例3)
等辺山形鋼の鋼材(部材劣化レベルB)に代えて、等辺山形鋼の鋼材(部材劣化レベルC(
図11C参照):塗膜下腐食軽微)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0065】
(実施例4)
ケレン処理を2種軽微ケレン処理(
図12B参照)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0066】
(実施例5)
ケレン処理を2種軽微ケレン処理に変更したこと以外は、実施例2と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0067】
(実施例6)
ケレン処理を2種軽微ケレン処理に変更したこと以外は、実施例3と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0068】
(実施例7)
ケレン処理を3種ケレン処理(
図12C参照)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0069】
(実施例8)
ケレン処理を3種ケレン処理に変更したこと以外は、実施例2と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0070】
(実施例9)
ケレン処理を3種ケレン処理に変更したこと以外は、実施例3と同様にして防錆処理鋼材を作成した。評価結果を下記表1に示す。
【0071】
(比較例1)
防錆処理を施さずに腐食促進試験をして評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から分かるように、上記実施の形態に係る鋼材の防錆補修方法を施した防錆処理鋼材A,B,Cにおいては、2種軽微以上のケレン処理を施すことにより、表面状態観察、断面状態観察、付着力測定及び表面剥離観察のいずれにおいても良好な結果が得られることが分かる(実施例1〜実施例9)。特に、表面状態観察では、浮き、はがれ、錆の発生は見られなかった。2種軽微ケレンでは、旧塗膜面に残留した錆及び旧塗膜は除去しきれていないが、促進試験後でも錆の進行による膨れなどは見られなかった。塗膜と比較して圧倒的に高強度で厚い樹脂層及び炭素繊維強化樹脂層により水及び酸素の浸入を防御できることが分かる。また、3種のケレン処理を施しても、付着力測定以外では良好な結果が得られることが分かる。これらの結果から、上記実施の形態によれば、塗膜と比較して圧倒的に高強度で厚い樹脂層及び炭素繊維強化樹脂層により水及び酸素の浸入を防御できることが分かる。これに対して、防錆処理を施工しなかった鋼材では、鋼材表面の腐食を防ぐことができず、表面状態が著しく悪化することが分かる(比較例1)。