【解決手段】本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、評価対象となるフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求める予備試験工程と、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートからモルタル成分を取り出すか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程と、モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程と、前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定する最大応力測定工程と、前記最大応力測定工程で測定した前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記予備試験工程で求めた対応関係とに基づいて、前記フレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程と、を備える。
評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求める予備試験工程と、
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの一部をサンプリングし、サンプリングした前記フレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程と、
前記モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程と、
前記モルタル成分成形工程で得た前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定する最大応力測定工程と、
前記最大応力測定工程で測定した前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記予備試験工程で求めた対応関係とに基づいて、前記練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程と、を備える
フレッシュコンクリートの性状評価方法。
評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との第1対応関係を求め、さらに前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記成形モルタルの垂直ひずみとの第2対応関係を求める予備試験工程と、
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの一部をサンプリングし、サンプリングした前記フレッシュコンクリートからから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程と、
前記モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程と、
前記モルタル成分成形工程で得た前記成形モルタルの垂直ひずみを測定するひずみ測定工程と、
前記ひずみ測定工程で測定した前記成形モルタルの垂直ひずみと、前記予備試験工程で求めた第1及び第2対応関係とに基づいて、前記練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程と、を備える
フレッシュコンクリートの性状評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、評価対象である硬練りコンクリートは、単位水量、水セメント比、骨材(細骨材及び粗骨材)の形状や粒度、粗骨材の最大寸法、細骨材率、及び、化学混和剤の種類や添加量などの影響を受けて、変形し難くなっている。そのため、硬練りコンクリートを変形させるためには、比較的大きな衝撃荷重を加える必要がある。
【0007】
ところで、各種の試験を行うためのコンクリート試料を作製する試験室や施工現場においては、通常、複数回にわたって硬練りコンクリートを練り混ぜることから、練り混ぜバッチごと(以下、単にバッチごとともいう)に硬練りコンクリートの性状を評価する必要がある。そして、バッチごとの硬練りコンクリートの性状を同じ条件で評価するためには、バッチごとの硬練りコンクリートに対して、衝撃荷重を同じ条件で付加する必要がある。そのため、通常、バッチごとの硬練りコンクリートへの衝撃荷重の付加には、錘を所定の高さまで持ち上げて対象物に落下させるマーシャル自動突き固め装置のような専用の装置が用いられる。
【0008】
しかしながら、マーシャル自動突き固め装置のような専用の装置は、錘を所定の高さまで持ち上げる必要があるため、高さ方向の寸法が比較的大きくなる(例えば、175cm程度の大きさになる)。そのため、前記専用装置を用いた試験自体は大掛かりなものになる。
そのため、フレッシュ状態の硬練りコンクリートの性状を比較的簡便に評価できる方法が要望されている。
【0009】
また、試験室や施工現場において、練り混ぜ後の超速硬コンクリートの締りは、上述のように、熟練した作業者の触感により評価されるが、複数回にわたって超速硬コンクリートを練り混ぜる場合、バッチごとに超速硬コンクリートの締りを触感によって評価することは、作業者にとって煩わしいことである。
したがって、フレッシュ状態の超速硬コンクリートの性状を、比較的簡便に評価できる方法が要望されている。
さらに、作業者の触感による判断は、定性的な基準に基づくものであることから、練り混ぜ後の超速硬コンクリートの締りをより客観的に評価するためには、締りを数値化しておいた方が望ましい。
【0010】
そこで、本発明は、フレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価することができるフレッシュコンクリートの性状評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討したところ、フレッシュコンクリートをウェットスクリーニングして取り出したモルタル成分、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分を成形し、成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定することにより、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価できることを見出して、本発明を想到するに至った。
また、本発明者らは、上記成形モルタルの垂直ひずみを測定することにより、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価できることも見出した。
【0012】
即ち、本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、
評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求める予備試験工程と、
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの一部をサンプリングし、サンプリングした前記フレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程と、
前記モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程と、
前記モルタル成分成形工程で得た前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定する最大応力測定工程と、
前記最大応力測定工程で測定した前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記予備試験工程で求めた対応関係とに基づいて、前記練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程と、を備える。
【0013】
斯かる構成によれば、モルタル成分調整工程において、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整し、モルタル成分成形工程において成形して得た前記モルタル成分の成形モルタルについて、最大応力測定工程にて圧縮方向の最大応力を測定するので、衝撃荷重のような比較的大きな荷重を加えずとも、比較的小さな荷重で成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定することができる。
そのため、試験室や施工現場において高さ方向の寸法が比較的大きな専用装置を用いなくても、成形モルタルの最大応力を測定することができる。
また、モルタル成分調整工程において、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整し、モルタル成分成形工程において成形して得た前記モルタル成分の成形モルタルについて、性状評価工程において、最大応力測定工程にて測定した成形モルタルの圧縮方向の最大応力と予備試験工程で求めた対応関係との対応関係に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価することができる。そのため、試験室や施工現場において、複数回にわたってフレッシュコンクリートを練り混ぜる場合に、練り混ぜバッチごとに触感による性状評価を行う必要がなくなる。
したがって、フレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価することができる。
さらに、性状評価工程において、最大応力測定工程にて測定した成形モルタルの圧縮方向の最大応力と予備試験工程で求めた対応関係との対応関係に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価することができるので、フレッシュコンクリートの性状をより客観的に評価することができる。
【0014】
また、上記フレッシュコンクリートの性状評価方法においては、
前記フレッシュコンクリートは、急結成分を含有するフレッシュコンクリートまたはスランプが9cm以下であるフレッシュコンクリートであってもよい。
【0015】
斯かる構成によれば、フレッシュコンクリートの性状を比較的評価し難い、急結成分を含有するフレッシュコンクリートまたはスランプが9cm以下であるフレッシュコンクリートであっても、比較的簡便にフレッシュコンクリートの性状を評価することができる。
【0016】
また、本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、
評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との第1対応関係を求め、さらに前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記成形モルタルの垂直ひずみとの第2対応関係を求める予備試験工程と、
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの一部をサンプリングし、サンプリングした前記フレッシュコンクリートからから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程と、
前記モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程と、
前記モルタル成分成形工程で得た前記成形モルタルの垂直ひずみを測定するひずみ測定工程と、
前記ひずみ測定工程で測定した前記成形モルタルの垂直ひずみと、前記予備試験工程で求めた第1及び第2対応関係とに基づいて、前記練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程と、を備える。
【0017】
斯かる構成によれば、モルタル成分調整工程において、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整し、モルタル成分成形工程において成形して得た前記モルタル成分の成形モルタルについて、ひずみ測定工程にて垂直ひずみを測定するので、衝撃荷重のような比較的大きな荷重を加えずとも、比較的小さな荷重で垂直ひずみを測定することができる。
そのため、試験室や施工現場において高さ方向の寸法が比較的大きな専用装置を用いなくても、成形モルタルの垂直ひずみを測定することができる。
また、モルタル成分調整工程において、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整し、モルタル成分成形工程において成形して得た前記モルタル成分の成形モルタルについて、性状評価工程において、ひずみ測定工程で測定した成形モルタルの垂直ひずみと予備試験工程で求めた第1及び第2対応関係とに基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価することができる。そのため、試験室や施工現場において、複数回にわたってフレッシュコンクリートを練り混ぜる場合に、練り混ぜバッチごとに触感による性状評価を行う必要がなくなる。
したがって、フレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価することができる。
さらに、性状評価工程において、ひずみ測定工程で測定した成形モルタルの垂直ひずみと予備試験工程で求めた第1及び第2対応関係とに基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価することができるので、フレッシュコンクリートの性状をより客観的に評価することができる。
【0018】
また、上記フレッシュコンクリートの性状評価方法においては、
前記フレッシュコンクリートは、急結成分を含有するフレッシュコンクリートまたはスランプが9cm以下であるフレッシュコンクリートであってもよい。
【0019】
斯かる構成によれば、フレッシュコンクリートの性状を比較的評価し難い、急結成分を含有するフレッシュコンクリートまたはスランプが9cm以下であるフレッシュコンクリートであっても、比較的簡便にフレッシュコンクリートの性状を評価することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価することができるフレッシュコンクリートの性状評価方法を提供することを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、急結成分を含有するフレッシュコンクリート(すなわち、フレッシュ状態の超速硬コンクリート)の性状を評価する例について説明する。
【0023】
<第1実施形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法>
図1に示したように、本発明の第1実施形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、
評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求める予備試験工程(S0)と、
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの一部をサンプリングし、サンプリングした前記フレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程(S1)と、
前記モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程(S2)と、
前記モルタル成分成形工程で得た前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定する最大応力測定工程(S3)と、
前記最大応力測定工程で測定した前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記予備試験工程で求めた対応関係とに基づいて、前記練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程(S4)と、を備える。
【0024】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法では、上記工程の全てを試験室または施工現場で行ってもよいし、上記工程の一部(例えば、予備試験工程S0)を試験室で行い、残りの工程(例えば、モルタル成分調整工程S1、モルタル成分成形工程S2、最大応力測定工程S3、及び、性状評価工程S4)を施工現場で行ってもよい。
なお、本明細書において、評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合とは、JIS A 5308:2014「レディーミクストコンクリート」に規定する各材料の1回計量分量の計算値の許容差を満足するものである。
【0025】
(予備試験工程S0)
予備試験工程S0では、例えば、以下のようにして、フレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求めることができる。
(1)触感評価用のフレッシュコンクリートと最大応力測定用のフレッシュコンクリートとを準備する。
(2)触感評価用のフレッシュコンクリートについて、作業者が触感により性状(「締り」状態)を評価する。例えば、フレッシュコンクリートが指で容易に押せないものの、該フレッシュコンクリートが団子状に丸めることができる状態であれば、「締り」状態であると評価する。
(3)最大応力測定用のフレッシュコンクリートをウェットスクリーニングすることにより粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出し、該モルタル成分を所定の形状に成形して成形モルタルを得て、該成形モルタルに除々に増加する静荷重を付加して前記成形モルタルの圧縮方向(垂直方向)の最大応力を測定する。
ウェットスクリーニングは、JIS Z 8801−1:2006「試験用ふるい」に規定する公称目開き4.75mmのふるい上に最大応力測定用のフレッシュコンクリートを載置した後、例えば、上記ふるいにバイブレータを当てて、140〜200Hzの振動数で目視判断にてモルタル成分を有効に取り出すことができなくなるまでふるうことにより行うことができる。このような場合、粒子径が4.75mmを上回る骨材が粗骨材となる。
ここで、本明細書では、上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力とは、荷重計(例えば、デジタルプッシュプルゲージ)で、上記成形モルタルの形状が崩れ始めるときに上記成形モルタルに付加されている力を測定し、前記静荷重を付加している成形モルタルの断面積で荷重計による測定値を除することにより求めることができるものを意味するが、上記成形モルタルの形状が崩れ始めるときに上記成形モルタルに付加されている力は、上記成形モルタル中の超速硬セメントの硬化反応が進むにつれて大きくなる。そのため、このような成形モルタルの最大応力を測定するために、上記成形モルタルに付加する静荷重を増加させる。
(4)時間ごとの最大応力の値と、触感による「締り」状態と最大応力との対応関係を、例えば、
図3のように図示する。なお、
図3においては、配合1及び2ともに最大応力が0.1N/mm
2のときが、触感による「締り」状態に相当する。これにより、フレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求めることができる。
なお、予備試験工程S0は、最大応力測定工程S3を実施する前であれば、どのタイミングで実施してもよい。
【0026】
(モルタル成分調整工程S1)
モルタル成分調整工程S1では、例えば、急結成分を含有するセメント(以下、超速硬セメントともいう)、細骨材、粗骨材、及び、水を含む練り混ぜ後のフレッシュコンクリートをウェットスクリーニングしてモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は、上記フレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分を調整する。ウェットスクリーニングは、上記と同様にして行うことができる。
ウェットスクリーニングするフレッシュコンクリートは、練り混ぜ直後のものであってもよい。
練り混ぜ直後とは、ミキサからコンクリートを排出してから目視判断および触感によりコンクリートの性状(例えば、スコップなどで掬い上げるときの粘性や変形性など)が変化しない時間までを意味する。
なお、細骨材及び粗骨材としては、各種公知のものを用いることができる。
【0027】
本実施形態において、超速硬セメントは、急結成分として、鉱物系の急結成分であるカルシウムアルミネート成分(以下、CA成分ともいう)を含む。CA成分としては、12CaO・7Al
2O
3、CaO・Al
2O
3、CaO・2Al
2O
3、3CaO・Al
2O
3、11CaO・7Al
2O
3・CaF
2、4CaO・3Al
2O
3・SO
3等が挙げられる。上記超速硬セメントは、上記CA成分を単独で(単相として)含んでいてもよいし、複数(混合相として)含んでいてもよい。
なお、上記超速硬セメントとしては、例えば、ジェットセメント(住友大阪セメント株式会社製)を挙げられる。
【0028】
上記超速硬セメントは、該超速硬セメントの総質量に対して、急結成分を3質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、5質量%以上25質量%以下含むことがより好ましい。
なお、上記超速硬セメントがCA成分を含む場合、CA成分の含有割合は、X線回折/リートベルト法(X線回折パターンをリートベルト法により解析する方法)によって求めることができる。X線回折/リートベルト法の詳細については、後述する実施例の項にて説明する。
【0029】
上記超速硬セメントは、上記CA成分のうち、C12A7系成分(ただし、CはCaOを意味し、AはAl
2O
3を意味する)を主成分として含んでいることが好ましい。上記C12A7系成分としては、C12A7、C11A7・CaX
2(ただし、Xは、F、Cl、Brなどのハロゲン)が挙げられる。なお、以下では、C12A7系成分を主成分として含む超速硬セメントをC12A7系超速硬セメントとも称する。
C12A7系超速硬セメントは、主成分としてのC12A7系成分を15質量%以上含んでいることが好ましく、20質量%以上含んでいることがより好ましい。
【0030】
C12A7系超速硬セメント中のC12A7系成分の含有割合は、X線回折/リートベルト法によって求めることができる。C12A7系超速硬セメントは、実質的にアーウィン(3CaO・3Al
2O
3・CaSO
4)を含んでいないことが好ましい。
なお、実質的にアーウィンを含んでいないとは、上記のX線回折/リートベルト法によって、C12A7系超速硬セメントの鉱物組成を求めたときに、C12A7系超速硬セメント中のアーウィンの含有割合が1.0質量%未満であることを意味する。
【0031】
(モルタル成分成形工程S2)
モルタル成分成形工程S2では、モルタル成分調整工程S1で調整したモルタル成分を所定の形状に成形して成形モルタルを得る。成形モルタルは、例えば、所定形状の型枠(例えば、円筒状の型枠)内に所定量の上記モルタル成分を入れて、上記型枠の形状に成形することにより得ることができる。
【0032】
(最大応力測定工程S3)
最大応力測定工程S3では、モルタル成分成形工程S2において得られた上記成形モルタルに除々に増加する静荷重を付加し、上記成形モルタルの形状が崩れ始めるときに上記成形モルタルに付加されている力を測定し、前記静荷重を付加している成形モルタルの断面積で荷重計による測定値を除することにより上記圧縮モルタルの圧縮方向の最大応力を求める。上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力は、上述のようにして測定する。上記静荷重は、上記成形モルタルに均一に付加することが好ましい。
【0033】
上述のように、最大応力測定工程S3で除々に増加する静荷重を付加する上記成形モルタルは、ウェットスクリーニングすることにより、4.75cmを上回る比較的大きな粒子径の粗骨材が取り除かれるように調整されるか、または、上記粗骨材を含まないように調整されているので、上記成形モルタルを変形させるのに衝撃荷重のような比較的大きな荷重を必要としない。したがって、比較的小さな静荷重を付加することにより、上記成形モルタルを変形させて、上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力を求めることができる。
【0034】
(性状評価工程S4)
性状評価工程S4では、最大応力測定工程S3で測定した成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、予備試験工程S0において求めた触感による「締り」状態と最大応力との対応関係(
図3参照)とに基づいて、急結成分を含有するフレッシュコンクリートの性状を評価する。
例えば、
図3に示したように、急結成分を含有する配合1のフレッシュコンクリートについては、「締り」状態になったときの成形モルタルの圧縮方向の最大応力は0.1N/mm
2になっているので、最大応力測定工程S3で測定した成形モルタルの圧縮方向の最大応力が0.1N/mm
2になったときに、急結成分を含有する配合1のフレッシュコンクリートが「締り」状態になったと評価することができる。
また、
図3に示したように、急結成分を含有する配合2のフレッシュコンクリートについては、「締り」状態になったときの成形モルタルの圧縮方向の最大応力が0.1N/mm
2になっているので、最大応力測定工程S3で測定した成形モルタルの圧縮方向の最大応力が0.1N/mm
2になったときに、急結成分を含有する配合2のフレッシュコンクリートが「締り」状態になったと評価することができる。
【0035】
このように、モルタル成分調整工程S1において練り混ぜ後のフレッシュコンクリートから得たモルタル成分を用いて、性状評価工程S4において、最大応力測定工程S3で測定した上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、予備試験工程S0で求めた対応関係とに基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価することができるので、複数回にわたってフレッシュコンクリートを練り混ぜる場合に、練り混ぜバッチごとに触感による性状評価を行う必要がなくなる。
【0036】
<第2実施形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法>
図2に示したように、本発明の第2実施形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、
評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のフレッシュコンクリートについての作業者の触感による性状評価と、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のモルタル成分の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との第1対応関係を求め、さらに前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と、前記成形モルタルの垂直ひずみとの第2対応関係を求める予備試験工程(S0’)と、
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの一部をサンプリングし、サンプリングした前記フレッシュコンクリートから粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出してモルタル成分を調整するか、または、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合でモルタル成分を調整するモルタル成分調整工程(S1’)と、
前記モルタル成分を成形して成形モルタルを得るモルタル成分成形工程(S2’)と、
前記モルタル成分成形工程で得た前記成形モルタルの垂直ひずみを測定するひずみ測定工程(S3’)と、
前記ひずみ測定工程で測定した前記成形モルタルの垂直ひずみと、前記予備試験工程で求めた第1及び第2対応関係とに基づいて、前記練り混ぜ後のフレッシュコンクリートの性状を評価する性状評価工程(S4’)と、を備える。
【0037】
本実施形態に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法では、上記工程の全てを試験室または施工現場で行ってもよいし、上記工程の一部(例えば、予備試験工程S0’)を試験室で行い、残りの工程(例えば、モルタル成分調整工程S1’、モルタル成分成形工程S2’、ひずみ測定工程S3’、及び、性状評価工程S4’)を施工現場で行ってもよい。
【0038】
(予備試験工程S0’)
予備試験工程S0’では、例えば、予備試験工程S0と同様にして、上記第1対応関係を
図3に示したように求めることができる。
また、予備試験工程S0’では、例えば、以下のようにして、上記第2対応関係を求めることができる。
(1)垂直ひずみ測定用のフレッシュコンクリートを準備する。
(2)垂直ひずみ測定用のフレッシュコンクリートをウェットスクリーニングすることにより粗骨材を取り除いてモルタル成分を取り出し、該モルタル成分を所定の形状に成形して成形モルタルを得て、該成形モルタルに所定時間ごとに静荷重を付加して前記成形モルタルの垂直方向(圧縮方向)のひずみを測定する。上記成形モルタルに付加する静荷重は、一定重さの錘(例えば、2kg以上5kg以下の一定重さの錘)を、上記成形モルタルの垂直方向上面側に載置することにより行うことができる。上記成形モルタルの垂直方向のひずみは、モルタルスランプ用検尺を用いた測定により求めることができる。詳しくは、成形モルタルの高さの減少割合を測定することにより求めることができる。
ウェットスクリーニングは、上記と同様にして行うことができる。
(3)第1対応関係を求めるために測定した前記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と前記成形モルタルの垂直方向のひずみとの対応関係を、例えば、
図4のように図示する。これにより、上記第2対応関係を求めることができる。
なお、
図4に示した第2対応関係を求めるために用いた急結成分を含有するフレッシュコンクリートは、
図3の配合1と同じ配合のものである。
また、
図4においては、上記成形モルタルの垂直方向上面側に載置する錘の重さを2kg及び5kgとした例について示している。
予備試験工程S0’は、ひずみ測定工程S3’を実施する前であれば、どのタイミングで実施してもよい。
【0039】
(モルタル成分調整工程S1’)
モルタル成分調整工程S1’は、モルタル成分調整工程S1と同様に行う。
【0040】
(モルタル成分成形工程S2’)
モルタル成分成形工程S2は、モルタル成分成形工程S2と同様に行う。
【0041】
(ひずみ測定工程S3’)
ひずみ測定工程S3’では、モルタル成分成形工程S2’において得られた上記成形モルタルに所定時間ごとに静荷重を付加して上記成形モルタルの垂直ひずみ(垂直方向のひずみ)を測定する。上記静荷重は、上記成形モルタルに均一に付加することが好ましい。
ひずみ測定工程S3’において、上記成形モルタルに付加する静荷重は、一定重さの錘(例えば、2kg以上5kg以下の一定重さの錘)を、上記成形モルタルの垂直方向上面側に載置することにより行うことができる。
ひずみ測定工程S3’において、上記成形モルタルの垂直ひずみは、上記したように、モルタルスランプ用検尺を用いた測定により求めることができる。
【0042】
(性状評価工程S4’)
性状評価工程S4’では、ひずみ測定工程S3’で測定した成形モルタルの垂直ひずみと、予備試験工程S0’において求めた、対応関係1(
図3)及び対応関係2(
図4)とに基づいて、急結成分を含有するフレッシュコンクリートの性状を評価する。
例えば、急結成分を含有するフレッシュコンクリートの性状は、
図3及び4を用いて、以下のように評価することができる。
まず、
図3から、急結成分を含有する配合1のフレッシュコンクリートについては、「締り」状態になったときの上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力が0.1N/mm
2になっていることが分かる。
次に、
図4から、急結成分を含有する配合1のフレッシュコンクリートでは、所定時間ごとに上記成形モルタルの垂直方向上面側に載置する錘を2kgとした場合には、上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力が0.1N/mm
2となると、上記成形モルタルの垂直ひずみが3〜5%となっており、所定時間ごとに上記成形モルタルの垂直方向上面側に載置する錘を5kgとした場合には、上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力が0.1N/mm
2となると、上記成形モルタルの垂直ひずみが6〜9%となっていることが分かる。
そのため、ひずみ測定工程S3’において、所定時間ごとに上記成形モルタルの垂直方向上面側に2kgの錘を載置した場合には、上記成形モルタルの垂直ひずみが3〜5%となったときに、
図3及び4を参照することにより、急結成分を含有する配合1のフレッシュコンクリートは「締り」状態になったと評価することができる。
また、ひずみ測定工程S3’において、所定時間ごとに上記成形モルタルの垂直方向上面側に5kgの錘を載置した場合には、上記成形モルタルの垂直ひずみが6〜9%となったときに、
図3及び4を参照することにより、急結成分を含有する配合1のフレッシュコンクリートは「締り」状態になったと評価することができる。
【0043】
このように、モルタル成分調整工程S1’において練り混ぜ後のフレッシュコンクリートから得たモルタル成分を用いて、性状評価工程S4’において、ひずみ測定工程S3’
で測定した上記成形モルタルの垂直ひずみと、予備試験工程S0’で求めた第1及び第2対応関係とに基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価することができるので、複数回にわたってフレッシュコンクリートを練り混ぜる場合に、練り混ぜバッチごとに触感による性状評価を行う必要がなくなる。
【0044】
なお、上記第1及び第2実施形態では、急結成分を含有するフレッシュコンクリートが、セメント、細骨材、粗骨材、及び、水を含む例について説明したが、急結成分を含有するフレッシュコンクリートは、減水剤や遅延剤などの添加剤を含んでいてもよい。急結成分を含有するフレッシュコンクリートが減水剤や遅延剤などの添加剤を含む場合には、上記第1及び第2実施形態に示した各対応関係に変動が生じることが予測される。そのため、減水剤や遅延剤などの添加剤を含むフレッシュコンクリートについて、このような各対応関係を別途求めておくことが望ましい。
【0045】
また、上記第1及び第2実施形態では、急結成分を含有するフレッシュコンクリート、すなわち、超速硬コンクリートの性状を評価する例について説明したが、本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法によれば、スランプが9cm以下である硬練りコンクリートの性状についても評価することができる。
上記硬練りコンクリートにおいては、振動ローラなどによって締固めを行ったときの上記硬練りコンクリートの締め固まり性をフレッシュコンクリートの性状として評価する必要があるが、上記硬練りコンクリートの締め固まり性と、上記硬練りコンクリートから得た成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を求めておけば、第1実施形態に示したのと同様に、上記硬練りコンクリートの締め固まり性、すなわち、上記硬練りコンクリートの性状を評価することができる。
また、上記硬練りコンクリートの締め固まり性と成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係に加えて、上記成形モルタルの圧縮方向の最大応力と上記成形モルタルの垂直ひずみとの対応関係を求めておけば、第2実施形態に示したのと同様に、上記硬練りコンクリートの締め固まり性、すなわち、上記硬練りコンクリートの性状を評価することができる。
【0046】
さらに、本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、超速硬コンクリートや硬練りコンクリート以外のコンクリートにも採用することができる。
【0047】
また、上記第1実施形態の予備試験工程S0及び第2実施形態の予備試験工程S0’では、モルタル成分をウェットスクリーニングすることにより調整する例について示したが、モルタル成分は、粗骨材を含有しない以外は評価対象となるフレッシュコンクリートと同配合のものを用いることにより調整してもよい。
【0048】
本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係るフレッシュコンクリートの性状評価方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0049】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
[実施例1]
(作業者の触感による性状と成形モルタルの圧縮方向の最大応力との関係を示す図)
表1に示した配合1及び2の急結成分を含有するフレッシュコンクリートについて、触感評価用のフレッシュコンクリートと最大応力測定用のフレッシュコンクリートとを準備した。
触感評価用のフレッシュコンクリートについては、作業者が触感により性状(「締り」状態)を評価した。
最大応力測定用のフレッシュコンクリートについては、JIS Z 8801−1:2006「試験用ふるい」に規定する公称目開き4.75mmのふるいを用いてウェットスクリーニングしてモルタル成分を得て、該モルタル成分を中空の円筒状型枠(内径25mm×高さ40mm)内に入れて、円筒状の成形モルタルを得た。
なお、ウェットスクリーニングは、上記ふるいにバイブレータを当てて、140〜200Hzの振動数で目視判断にてモルタル成分を有効に取り出すことができなくなるまでふるうことにより行った。
次に、上記円筒状の成形モルタルを軸方向が垂直方向と一致するように配し、上記円筒状の成形モルタルの上面に除々に増加する静荷重を付加して上記円筒状の成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定した。
上記円筒状の成形モルタルの圧縮方向の最大応力は、デジタルプッシュプルゲージ(型番RX−FL、アイコーエンジニアリング社製)で、上記円筒状の成形モルタルの形状が崩れ始めるときに上記円筒状の成形モルタルに付加されている力を測定し、上記静荷重を付加している円筒状の成形モルタルの断面積でデジタルプッシュプルゲージによる測定値を除することにより求めた。
次に、触感評価用のフレッシュコンクリートについての触感による「締り」状態と上記円筒状の成形モルタルの圧縮方向の最大応力との対応関係を
図3に示したように求めた。
図3に示したように、配合1のフレッシュコンクリートについては、作業者が「締り」状態であると判断した時間は23分であり、このときの上記円筒状の成形モルタルの圧縮方向の最大応力は、0.1N/mm
2であった。
また、
図3に示したように、配合2のフレッシュコンクリートについては、作業者が「締り」状態であると判断した時間は30分であり、このときの上記円筒状の成形モルタルの圧縮方向の最大応力は、0.1N/mm
2であった。
【0051】
【表1】
【0052】
ここで、表1において、Wは水を意味し、Cはセメントを意味し、SPはAE減水剤を意味し、SLはJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に従って測定したスランプを意味し、Airは空気量を意味し、CTは外気温を意味する。
また、SPの単位のC×質量%は、セメントの質量に対するAE減水剤の質量割合を意味し、Airの単位の容積%は、コンクリートの全容積に対する空気の容積割合を意味する。
なお、Airは、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法」に準拠して測定し、スランプは、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して測定した。
また、表1中のCA成分は、X線回折/リートベルト法によって求めた。X線回折/リートベルト法は、以下のようにして行った。
(1)まず、配合1及び2のセメントをX線回折装置(X’Pert MPD、パナリティカル社製)を用いてそれぞれ分析し、X線回折パターンを得た。X線回折測定は、線源としてCuKαを用い、管電圧を45kV、管電流を40mAとし、測定角度範囲2θを10〜140°とする条件で行った。
(2)次に、専用解析ソフト(HighScorePlus、パナリティカル社製)を用いて得られたX線回折パターンをリートベルト解析することにより、CA成分の含有割合を求めた。なお、CA成分の含有割合は、X線回折分析で検出できた配合1及び2のセメント中の全成分を100質量%としたときのCA成分の質量割合として、それぞれ求めた。
【0053】
(
図3を用いたフレッシュコンクリートの性状評価)
試験室において、表1の配合1及び2のフレッシュコンクリートをミキサにて練り混ぜ、ミキサ排出直後に各配合のフレッシュコンクリートをサンプリングし、各配合のフレッシュコンクリートについて上記と同様にウェットスクリーニングしてモルタル成分を得た後、外径25mm×高さ40mmの円筒状の成形モルタルを得た。
上記各円筒状の成形モルタルの垂直方向上面に除々に増加する静荷重を付加しながら、
図3の作成の際に用いたデジタルプッシュプルゲージ(型番RX−FL、アイコーエンジニアリング社製)を用いて、各円筒状の成形モルタルの圧縮方向の最大応力を測定しつつ、
図3を参照しながら、配合1及び2のフレッシュコンクリートの性状を評価した。
その結果、配合1のフレッシュコンクリートから得た円筒状の成形モルタルは、練り混ぜ後23分で最大応力が0.1N/mm
2になったことから、作業者は、配合1のフレッシュコンクリートが「締り」状態になったと判断でき、また、配合2のフレッシュコンクリートから得た円筒状の成形モルタルは、練り混ぜ後30分で最大応力が0.1N/mm
2になったことから、作業者は、配合2のフレッシュコンクリートが「締り」状態になったと判断できた。
また、試験室において、上記練り混ぜとは別のバッチで練り混ぜた配合1及び2のフレッシュコンクリートについて上記と同様に性状評価を行ったところ、上記所定箇所の場合と同様に、配合1のフレッシュコンクリートについては打設後23分で最大応力が0.1N/mm
2になり、配合2のフレッシュコンクリートについては打設後30分で最大応力が0.1N/mm
2になった。すなわち、同配合のフレッシュコンクリートについて再現良く最大応力を評価できることが分かった。
このことから、作業者の触感によらずとも、練り混ぜバッチごとに、配合1及び2のフレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価できること分かる。
【0054】
[実施例2]
(成形モルタルの圧縮方向の最大応力と成形モルタルの垂直ひずみとの関係を示す図)
表1に示した配合1の急結成分を含有するフレッシュコンクリートについて、垂直ひずみ測定用のフレッシュコンクリートを2個準備した。
垂直ひずみ測定用のフレッシュコンクリートは、最大応力測定用のフレッシュコンクリートと同様に処理して、円筒状の成形モルタルを得た。
これらの円筒状の成形モルタルを軸方向が垂直方向と一致するように配し、一方の円筒状の成形モルタルの上面に所定時間ごとに2kgの錘を載置し、他方の円筒状の成形モルタルの上面に所定時間ごとに5kgの錘を載置して、上記一方及び他方の円筒状の成形モルタルの垂直ひずみを測定した。上記一方及び他方の円筒状の成形モルタルの垂直ひずみは、モルタルスランプ用検尺を用いて測定した。
最大応力測定用のフレッシュコンクリートから得られた円筒状の成形モルタルの最大応力と、上記一方及び他方の垂直ひずみ測定用のフレッシュコンクリートから得られた円筒状の成形モルタルの垂直ひずみとの対応関係を
図4に示したように求めた。
図4に示したように、2kgの錘を載置したときの上記一方の円筒状の成形モルタルの垂直ひずみが3〜5%になったとき、最大応力測定用の円筒状の成形モルタルの最大応力は0.1N/mm
2であった。すなわち、2kgの錘を載置した場合、成形モルタルの垂直ひずみが3〜5%になると、配合1のフレッシュコンクリートは、作業者が「締り」状態と評価した性状になることが分かった。
また、
図4に示したように、5kgの錘を載置したときの上記他方の円筒状の成形モルタルの垂直ひずみが6〜9%になったとき、最大応力測定用の円筒状の成形モルタルの最大応力は0.1N/mm
2であった。すなわち、5kgの錘を載置した場合、成形モルタルの垂直ひずみが6〜9%になると、配合1のフレッシュコンクリートは、作業者が「締り」状態と評価した性状になることが分かった。
【0055】
(
図3及び4を用いたフレッシュコンクリートの性状評価)
試験室において、表1の配合1のコンクリートをミキサにて練り混ぜ、ミキサ排出直後に配合1のフレッシュコンクリートをサンプリングし、配合1のフレッシュコンクリートについて上記と同様にウェットスクリーニングしてモルタル成分を得た後、外径25mm×高さ40mmの円筒状の成形モルタルを2個得た。
これらの円筒状の成形モルタルを軸方向が垂直方向を一致するように配し、一方の円筒状の成形モルタルの上面に所定時間ごとに2kgの錘を載置し、他方の円筒状の成形モルタルの上面に所定時間ごとに5kgの錘を載置して、上記一方及び他方の円筒状の成形モルタルの垂直ひずみを測定しつつ、
図3及び4を参照しながら、配合1のフレッシュコンクリートの性状を評価した。
その結果、2kgの錘を載置した上記一方の成形モルタルの垂直ひずみが3%になり、5kgの錘を載置した上記他方の成形モルタルの垂直ひずみが6%になったタイミングで、作業者は、
図3及び4を参照して、配合1のフレッシュコンクリートが「締り」状態になったと判断できた。
上記のように、
図3及び4を用いた配合1のフレッシュコンクリートの性状評価は、1回サンプリングを行い、しかも、円筒状の成形モルタルの上面に錘を載置するだけでフレッシュコンクリートの性状を評価できるものであるので、作業者は煩わしさを感じなかった。
また、試験室において、上記練り混ぜとは別のバッチで練り混ぜた配合1のフレッシュコンクリートについて上記と同様に性状評価を行ったところ、上記所定箇所の場合と同じタイミングで2kgの錘を載置した配合1のフレッシュコンクリートの垂直ひずみは4%になり、5kgの錘を載置した上記他方の成形モルタルの垂直ひずみは7%になった。すなわち、同配合のフレッシュコンクリートについて、同じ重さの錘を載置することにより再現良くひずみを評価できることが分かった。
このことから、作業者の触感によらずとも、練り混ぜバッチごとに、配合1のフレッシュコンクリートの性状を比較的簡便に評価できること分かる。
【0056】
[比較例1]
試験室において、表1の配合1及び2のコンクリートをミキサにて練り混ぜ、ミキサ排出直後に、作業者が配合1及び2のコンクリートをサンプリングして、所定時間ごとに触感により配合1及び2のフレッシュコンクリートの性状を評価した。
その結果、作業者は、配合1のフレッシュコンクリートが練り混ぜ後23分で「締り」状態になったと判断し、配合2のフレッシュコンクリートが打設後30分で「締り」状態になったと判断した。
また、試験室において、上記練り混ぜとは別のバッチで練り混ぜた配合1及び2のフレッシュコンクリートについて上記と同様に触感により性状評価を行ったが、作業者はバッチごとに触感による評価をする必要があったため、煩わしさを感じた。
さらに、「締り」状態が数値化されていないため、すなわち、「締り」状態を定量的に評価できなかったため、バッチごとに「締り」状態が正確に評価できているか否かは不明であった。