【課題】遮光膜とした場合の遮光性・硬化性・耐溶剤性に優れながらも、露光による加工だけも確実な硬化ができるような感光性樹脂組成物及びそれによって得られる硬化性及び耐溶剤性に優れた遮光膜を提供する。
遮光膜を製造する方法であって、基板上に、請求項4〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、紫外線露光装置による露光、及びアルカリ水溶液による現像を行って、遮光膜を形成することを特徴とする遮光膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、フォトリソグラフィー法等による光加工技術を適用して遮光膜を得る技術に関するものであり、使用する感光性樹脂組成物に特徴があるので、まずは感光性樹脂組成物の各成分およびそれらの構成比率について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、光重合開始剤、着色材、及び溶剤を必須として含み、特に、着色材にその特徴を有する。
【0011】
<着色材>
本発明の感光性樹脂組成物における着色材(遮光材)としては、遮光膜として形成した場合、光学濃度(OD)が1.0の塗膜で測定した波長365nmの光線の透過率が10%以上となるようなものを用いる必要があり、制限はされないが、黒色有機顔料、混色有機顔料若しくは無機黒色顔料、又はそれらの組み合わせであることが好ましい。黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック等が挙げられる。また、混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。無機黒色顔料としては、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、酸窒化チタン、チタン窒化物等を挙げることができる。
【0012】
これらの着色材(遮光材)は、1種類単独でも2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特に、遮光膜とした場合に上記の光透過率を実現できるために、より好ましくは、黒色有機顔料としてのラクタムブラック、混色有機顔料としてのピグメント・バイオレット23(PV23)及びピグメント・イエロー139(PV139)、並びに/又は無機黒色顔料としては三菱マテリアルの開発品として紹介されているUB−1のような高UV透過性を具備するように処理されたチタンブラックを含むことが好ましい。
【0013】
このような着色材(遮光材)については、上記の光線透過率を実現するためには、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分(組成物を硬化膜とした場合に固形分となるものの合計)中に25〜60質量%(固形分)含有される必要があり、好ましくは、30〜50質量%である。
【0014】
このうち、ピグメント・バイオレット23(PV23)及びピグメント・イエロー139(PV139)を共に含む着色材を使用する場合には、特に、組成物の全固形分中に25〜48質量%含有されることが好ましい。また、当該PV23及びPV139は、組成物の全固形分中に、それぞれ、PV23を20〜36質量%とすることが好ましく、一方で、PY139を4〜12質量%とすることが好ましくい。この際、それらの質量比(PV23/PY139)が2〜4であることが好ましい。
【0015】
なお、本発明における上記着色材は、予め溶剤に分散剤とともに分散させて着色材分散液としたうえで、配合してもよい。ここで、分散させる溶剤は、後述するが、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等が好適に用いられる。使用する分散剤については、各種高分子分散剤等の公知の分散剤を使用することができる。分散剤の具体的な例としては、従来顔料分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)を特に制限なく使用することができるが、例えば、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)等を挙げることができる。特に、顔料への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級又は三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量が1千〜10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤は好適である。この分散剤の配合量については、着色材に対して1〜80質量%であるのがよく、混色有機顔料の場合は30〜75質量%がより好ましく、黒色顔料の場合は10〜50質量%がより好ましい。
【0016】
さらに、着色材分散液を調製する際に、上記分散剤に加えて、後述のアルカリ可溶性樹脂の一部を共分散させることにより、露光感度を高感度に維持しやすくし、現像時の密着性が良好で残渣の問題も発生しにくい感光性樹脂組成物とすることができる。その際のアルカリ可溶性樹脂の配合量は、着色材分散液中2〜20質量%であるのが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0017】
着色材以外の成分についても、以下で説明する。
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂は、分子内に重合性不飽和基と酸性基を有する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、重合性不飽和基の代表的な例としてはアクリル基又はメタクリル基であり、酸性基としてはカルボキシル基を代表的に例示することができる。
【0018】
このアルカリ可溶性樹脂の好ましい重量平均分子量(Mw)と酸価の範囲は、樹脂の骨格によって異なるが、通常Mwは2000〜50000、酸価は60〜120mgKOH/gである。Mwが2000未満の場合はアルカリ現像時のパターンの密着性が低下する虞があり、Mw50000を超える場合は現像性が著しく低下し、適正な現像時間の感光性樹脂組成物を得ることができなくなる虞がある。また、酸価の値が60より小さいとアルカリ現像時に残渣が残りやすくなり、酸価の値が120より大きくなるとアルカリ現像液の浸透が早くなりすぎ、好ましい溶解現像とならず剥離現像がおきてしまうので、いずれも好ましくない。なお、アルカリ可溶性樹脂は1種のみを使用しても、2種以上の混合物を使用してもよい。
【0019】
好ましく適用できるアルカリ可溶性樹脂の第一の例は、重合性不飽和基と酸性基を有するアクリル共重合体である。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類等の共重合体で(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂を挙げることができる。例えば、第一ステップで(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類等を溶剤中で共重合させ、得られた共重合体中のカルボキシル基の一部に、第二ステップでグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を例示することができる。別の例としては、第一ステップでグリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類等を溶剤中で共重合させて得た共重合体に、第二ステップで(メタ)アクリル酸を反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を例示することができる。これら共重合体の中でも好ましく用いることができる例については特開2018−141968に具体的に示されているものを参考にすることができる。
【0020】
(メタ)アクリル酸エルテル類等としては、まずは各種(メタ)アクリル酸エステル類を例示することができ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、エチレングリコール変性のジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性のジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなど炭素数1〜20の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル類を例示することができる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エルテル類等として、各種(メタ)アクリル酸エステル類以外に用いることができる共重合成分としては、フェニル基に置換基を有してもよいスチレンまたはモノマレイミドなどを例示することができる。スチレンのフェニル基の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基などであり、モノマレイミドとしては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどを例示することができる。
【0022】
別の例の第三ステップで使用するジカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物又はそれらカルボン酸化合物の酸一無水物の例としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、クロレンド酸、トリメリット酸、およびそれらの酸一無水物であり、2種類以上を併用することもできる。これらの中で、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸を好ましく用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル類等の種類、配合比率については、所望の硬化物特性を満たすために、適切な組合せを選択することができるが、着色剤の添加量が少ない組成物で透過率が問題になるような場合や、耐光性を良好にする必要性がある場合等には、芳香族基を含有しない(メタ)アクリル酸エステル類等を用いるのが好ましい。
【0023】
また、アルカリ可溶性樹脂の第二の例としては、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸(これは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」の意味である)とを反応させ、得られたヒドロキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物に(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物及び/又は(b)テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物へと誘導されるエポキシ基を2個以上有する化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物を例示することができる。
【0024】
ビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物であり、この反応の際には一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。この反応に用いられるビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3− クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9, 9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4'−ビフェノール、3,3'−ビフェノール等を挙げられる。この中でも、フルオレン−9,9−ジイル基を有するビスフェノール類を特に好ましく用いることができる。
【0025】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物や脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えば、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物があり、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物でもよい。
【0026】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(b)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物、又は、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物があり、更には任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物があり、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が挙げられ、更には任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。
【0027】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸無水物と(b)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01〜10.0であることがよく、より好ましくは0.02以上3.0未満であるのがよい。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量が大となり、アルカリ溶解性が低下する傾向がある。
【0028】
エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、既知の方法、例えば特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。先ず、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と等モルの(メタ)アクリル酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90〜120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90〜130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。この方法で得られたエポキシアクリレート酸付加物は、以下の一般式(2)の骨格を有する。
【化2】
(式中、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R
8は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基又は直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y1及びY2は、それぞれ独立して水素原子又は−OC−Z−(COOH)
m(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1又は2の数を表す)を表し、nは1〜20の整数を表す。)
【0029】
また、上記以外のアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、第一成分として分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物と、第二成分として分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物と、第三成分としてジイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン化合物を挙げることができる。この系統の樹脂としては特開2017−76071に示されているものを参考にすることができる。
【0030】
<少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物>
また、本発明の感光性樹脂組成物には、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(以下、単に、「光重合性化合物」と略す場合がある。)を含む。このような光重合性化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクロイル基を有する樹枝状ポリマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、当該光重合性化合物はアルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには光重合性基を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、モノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクロイル基の数で除したアクリル当量が50〜300であればよいが、より好ましいアクリル当量は80〜200である。なお、この光重合性化合物は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0031】
また、この光重合性化合物のうち、(メタ)アクロイル基を有する樹枝状ポリマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクロイル基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物中のチオール基を付加して得られる樹枝状ポリマーを例示することができる。具体的には、一般式(3)の多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクロイル基と一般式(4)の多価メルカプト化合物中のチオール基を反応させて得られる樹枝状ポリマーを例示できる。
【化3】
ここで、R
8は水素原子またはメチル基を表し、R
9はR
10(OH)
kのk個のヒドロキシル基の内l個のヒドロキシル基を式中のエステル結合に供与した残り部分を表す。好ましいR
10(OH)
kとしては、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖または分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、またはこれらの多価アルコールまたは多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。kおよびlは独立に2〜20の整数を表すが、k≧lである。また、R
11は単結合又は2〜6価のC1〜C6の炭化水素基であり、mはR
11が単結合であるときは2であり、R
11が2〜6価の基であるときは2〜6の整数を表す。
【0032】
一般式(3)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
一般式(4)で示される多価メルカプト化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が挙げることができる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
<光重合開始剤>
本発明の感光性樹脂組成物における光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のO-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。
【0035】
この中でも、特に、O-アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。具体的化合物群としては、以下の一般式(1)または一般式(5)の構造を基本骨格として有するO−アシルオキシム系光重合開始剤を挙げることができる。本発明においては、それらの中でも、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/(mol・cm)以上であるO−アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。また、これら光重合開始剤を2種類以上使用することもできる。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
【化4】
(R
1、R
2は、それぞれ独立にC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基又はC4〜C12の複素環基を表し、R
3はC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基を表す。
ここで、アルキル基およびアリール基はC1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C1〜C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、又は環状のいずれのアルキル基であってもよい。)
【化5】
〔式(5)中、R
12およびR
13はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4〜10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R
14はそれぞれ独立に、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の−CH
2−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。さらに、これらR
12〜R
14の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。〕
【0036】
<溶剤>
本発明の感光性樹脂組成物で使用される溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができ、所望の溶液粘度に調製して用いることができる。
【0037】
<その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記の成分以外に、必要に応じて上記アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂、それらの樹脂の硬化剤および硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。上記アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂としてはエポキシ樹脂等の光ラジカル反応性を有しない樹脂を例示することができ、それらの樹脂の硬化剤および硬化促進剤としては、酸無水物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物等を例示することができる。また、熱重合禁止剤および酸化防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、レベリング剤や消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。また、シランカップリング剤としては3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物の固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマー成分を含む)中の各成分の好ましい構成割合については、上記アルカリ可溶性樹脂の100質量部に対して、上記光重合性化合物が10〜60質量部であり、上記光重合開始剤がこれらアルカリ可溶性樹脂と光重合性化合物との合計量100質量部に対して2〜40質量部である。より好ましくは上記アルカリ可溶性樹脂の100質量部に対して、上記光重合性化合物が30〜50質量部であり、上記光重合開始剤がこれらアルカリ可溶性樹脂と光重合性化合物との合計量100質量部に対して3〜30質量部である。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマー成分を含む)中に、上記の必須となる成分(アルカリ可溶性樹脂、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、光重合開始剤、着色材)を合計で80質量%、好ましくは90質量%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物中に60〜90質量%の範囲で含まれるようにするのがよい。
【0040】
本発明における遮光膜の形成方法は、通常のフォトリソグラフィー法であるが、上記の通り、耐熱性が比較的低い基板を使用する用途にも採用することができるように、高温の熱処理(特に、ポストベーク)は行わないようにすることが好ましく、露光のみでも硬化できることがより好ましい。すなわち、先ず、感光性樹脂組成物をプラスチック基板や有機デバイス付基板等の基板上に塗布し、次いで溶剤を乾燥させた(プリベーク)後、得られた塗膜にフォトマスクを通して紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に、必要あれば、後硬化としてポストベーク(熱焼成)を行う場合もある。プレベークやポストベークの温度としては、用いるプラスチック基板や有機デバイス基板等の基板の耐熱温度を考慮し、ベーキング温度=(耐熱温度−10)℃以下に設定することが必要である。
【0041】
本発明の製造方法に用いる基板、すなわち、上記のような特定の組成物構成からなる感光性樹脂組成物を塗布する基板としては、耐熱温度が140℃以下のPET、PEN等樹脂製フィルム(プラスチック基板)を挙げることができる。ここで、耐熱温度とは、基板上への遮光膜の形成等の加工プロセスにおいて基板が暴露しても変形等の問題が生じない温度であり、樹脂製フィルムについては延伸処理の程度によっても変化するが、少なくともガラス転移温度(Tg)を超えないことが必要となる。また、樹脂製フィルム上にITOや金などの電極が蒸着あるいはパターニングされたものも基板として例示することができる。
【0042】
加えて、本発明の製造方法に用いる他の基板の例としては、ガラス基板やシリコンウェハやポリイミドフィルム等のように基板自体の耐熱性は高いが基板上に耐熱性の低い薄膜等を形成したものを挙げることができる。具体的な例としてはガラスやシリコンウェハやポリイミドフィルム上に有機EL(OLED)や有機薄膜トランジスタ(TFT)を形成した有機デバイス付基板等がある。なお、樹脂製フィルムや有機デバイス付基板等、本発明で特に対象とする耐熱性の低い基板の耐熱温度としては、樹脂の種類やデバイスによっても異なるが、概ね80〜140℃である。なお、有機デバイス付基板については、有機デバイス形成後に保護膜、保護フィルム等を形成したものを含むものとする。なぜなら、これらの保護膜、保護フィルム自体の耐熱性が150℃以上であっても、有機デバイスの機能を担保するためには実質的に140℃以下の耐熱性しかない場合には、有機デバイス付基板に該当するためである。
【0043】
これらの基板上に感光性樹脂組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60〜110℃の温度(基板の耐熱温度―10℃を上限に設定)で1〜3分間行われる。
【0044】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。好ましくは、波長365nmの光を一定量照射することにより光硬化させる。
【0045】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜3質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜28℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0046】
現像後、好ましくは、それで終了とすることがよいが、必要であれば、80〜140℃程度の温度(基板の耐熱温度−10℃を上限に設定)及び20〜90分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われてもよい。このポストベークは、パターニングされた樹脂膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。ポストベークの熱処理条件のより好ましい範囲は、温度90〜120℃(基板の耐熱温度−10℃を上限に設定)、加熱時間30〜60分である。本発明のパターニングされた遮光膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0047】
そして、このような工程を経て得られた本発明の遮光膜は、その光学濃度(OD)が0.8〜4であり、さらには、ODが1.0の膜厚の塗膜で測定した波長365nmの光線の透過率が10%以上であることがよい。この際、膜厚については、0.5〜5μmとなるようにすることがよい。本発明においては、露光による光加工のみでも硬化できるもので、ポストベークで基板の耐熱温度以上といった加熱工程を経ることなく所望の硬化物特性(耐溶剤性等)を具備する遮光膜とできるものであることがよい。遮光膜の膜厚は、表示装置等の設計に依存することになるため、本願発明の感光性樹脂組成物の配合設計の際には、例えば、ODが1.0〜2.5/μmに設定するのがよい。特に、着色材としてPV23及びPY139を併用する系の場合には、ODが1.0〜1.8/μmとなるようにすることが好ましく適用される。
【0048】
本発明の遮光膜の製造方法は、上述したように、熱処理を行わなくても、露光のみで硬化できることが最も好ましく、それと共にアルカリ現像等の操作によって耐熱温度の低い基板に至るまで、当該基板上に遮光膜を形成するのに好適に用いることができる。具体的には、耐熱温度の低い基板を用いる場合等に、各種絶縁膜、カラーフィルター用着色膜、有機EL画素形成用の隔壁材(RGBをインクジェット法により形成する場合等向け)、タッチパネル用絶縁膜および遮光膜等を形成するのに有用であり、これらの樹脂膜パターン付基板を液晶や有機EL等の表示装置用、固体撮影素子用、タッチパネル用の部材向け(主たる用途はディスプレイ用およびタッチパネル用基板である)とすることが可能である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の遮光膜の製造方法に用いる感光性樹脂組成物の調製例から説明し、当該の感光性樹脂組成物の硬化物の特性の評価結果を説明する。
【0050】
先ず、アルカリ可溶性樹脂の合成例を示す。合成例における樹脂の評価は、以下の通りに行った。
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の重量〔W
2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0)。
【0051】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業株式会社製、商品名COM-1600〕を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0052】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー株式会社製商品名HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)〔東ソー株式会社製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min]にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー株式会社製PS−オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0053】
また、合成例及び比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
SA:無水コハク酸
BPFE:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。)
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:テトラヒドロ無水フタル酸
PTMA:ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP:トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ:ハイドロキノン
TEA:トリエチルアミン
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
BzDMA:ベンジルジメチルアミン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0054】
[合成例1]
還留冷却器付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA 300gを入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。このフラスコ中にモノマー混合物(DCPMA77.1g(0.35モル)、GMA 49.8g(0.35モル)、St31.2g(0.30モル)にAIBN 10gを溶解した混合物)を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間撹拌し、共重合体溶液を得た。
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA24.0g(グリシジル基の95%)、TDMAMP 0.8g及びHQ 0.15gを添加し、120℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。
さらに、得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA 30.0g(AA添加モル数の90%)、TEA 0.5gを加え120℃で4時間反応させ、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂溶液(a)−1を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0055】
[合成例2]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE 114.4g(0.23モル)、AA 33.2g(0.46モル)、PGMEA 157g及ぶびTEAB 0.48gを仕込み、100〜105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA 35.3g(0.12モル)、THPA 18.3g(0.12モル)を仕込み、120〜125℃で加熱下に6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(a)−2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。
【0056】
[合成例3]
1Lの4つ口フラスコ内に、PTMA20g(メルカプト基0.19モル)、DPHA212g(アクリル基2.12モル)、PGMEA58g,HQ0.1g、及びBzDMA0.01gを加え、60℃で12時間反応させて、樹枝状ポリマー溶液(b)−2(固形分濃度は80質量%)を得た。得られた樹枝状ポリマーにつき、ヨードメトリー法にてチオール基の消失を確認した。得られた樹枝状ポリマーのMwは10000であった。
【0057】
(感光性樹脂組成物の調製)
全固形分中に占める着色材の固形分濃度(Pcon、質量%)毎に、着色材として混色有機顔料(PV23、PY139)を用いた配合を実施例1〜9、着色材として黒色有機顔料(ラクタムブラック)を用いた配合を実施例10〜16、着色材としてカーボンブラックを用いた配合を比較例1とした(表1、2)。配合に使用した各成分は、以下のとおりで、表中の数値はすべて質量部である。溶剤以外についてはすべて固形分(光反応後に固形分となる光重合性モノマーを含む)の量であり、実際の感光性樹脂組成物の調製においては、a成分については合成例で得た樹脂溶液として添加し、d成分、e成分については、d成分及びe成分を溶剤に分散させた分散体として添加している。
【0058】
〔a〕アルカリ可溶性樹脂:
(a)−1:上記合成例1で得られた樹脂
(a)−2:上記合成例2で得られた樹脂
〔b〕光重合性化合物:
(b)−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(日本化薬(株)製 商品名DPHA、アクリル当量106)
(b)−2:合成例3で得られた樹脂状ポリマー
〔c〕光重合開始剤:
(c)−1:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASFジャパン社製、製品名イルガキュアOXE02)
(c)−2:オキシムエステル系光重合開始剤〔ADEKA社製 アデカクールズNCI−831、一般式(1)の骨格でモル吸光係数23000L/(mol・cm)〕
〔d〕着色剤:
(d)−1:ピグメント・バイオレット23(PV23)(クラリアント社製Hostaperm Violet RL−NF)
(d)−2:ピグメント・イエロー139(PY139)(BASF社製Paliotol Yellow D 1819)
(d)−3:ピグメント・ブルー15:6(PB15:6)(BASF社製Heliogen Blue D 6700 T)
(d)−4:ラクタムブラック(BASF社製Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF)
(d)−5:カーボンブラック(三菱ケミカル社製MA100)
〔e〕分散剤:カチオン性高分子分散剤(味の素ファインテクノ製アジスパーPB821)
〔f〕溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
[評価]
実施例1〜16、比較例1の感光性樹脂組成物を用いて、以下に記す評価を行った。
【0062】
<現像特性(パターン線幅・パターン直線性)の評価>
上記で得られた各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が1.2μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを100μmに調整し、乾燥塗膜の上にライン/スペース=10μm/50μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm
2の紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。
【0063】
次に、この露光済み塗板を25℃、0.04%水酸化カリウム水溶液により1kgf/cm
2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から、+10秒および+20秒の現像後、5kgf/cm
2圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去してガラス基板上に樹脂膜パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて100℃、60分間熱ポストベークした。得られた樹脂膜パターンの20μm線のマスク幅に対する線幅、パターン直線性を評価した。
【0064】
パターン線幅:測長顕微鏡(ニコン社製「XD−20」)を用いてマスク幅20μmのパターン線幅を測定し、20±2μm以内場合は○、20±2μmの範囲外の場合は×とした。
パターン直線性:ポストベーク後の20μmマスクパターンを光学顕微鏡観察し、基板に対する剥離やパターンエッジ部分のギザツキが認められないものを○、一部に認められるものを△、全体に渡って認められるものを×と評価した。
なお、パターン線幅及びパターン直線性の評価は、BT+10秒の場合とBT+20秒の場合とで行った。
【0065】
<OD/μmの評価>
上記で得られた着色剤を含む各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板(コーニング1737)上にポストベーク後の膜厚が1.1μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、ネガ型フォトマスクを被せず、i線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで80mJ/cm
2の紫外線を照射し、光硬化反応を行った。
【0066】
次に、この露光済み塗板を25℃、0.05%水酸化カリウム水溶液を用い1kgf/cm
2のシャワー圧にて60秒の現像後、5kgf/cm
2圧のスプレー水洗を行い、その後、熱風乾燥機を用いて100℃、60分間熱ポストベークした。この塗板のOD値をマクベス透過濃度計を用いて評価した。また、塗板に形成した遮光膜の膜厚を測定し、OD値を膜厚で割った値をOD/μmとした。
【0067】
<耐溶剤性の評価>
OD評価の際と同様に作成した塗板(遮光膜付ガラス板)を用いて、形成した塗膜(遮光膜)の耐溶剤性を評価した。PGMEAに浸漬したウエスで連続して20往復擦り、表面状態を観察し、塗膜表面に溶解が見られず、傷がついていない場合を耐溶剤性○、塗膜表面が溶解したり、軟化して傷が付いた場合を耐溶剤性×とした。また、溶解、傷がごく一部に、限られる場合は△とした。