【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人情報通信研究通信機構、「高度通信・放送研究開発委託研究/高い環境耐性を有するキャリアコンバータ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】光導波路と導体パターンとが形成された光学基板と、光学基板を支持する支持基板と、を有する光導波路素子であって、導体パターンは、電気接続が行われる範囲として規定された少なくとも一つの電気接続エリアを含み、光学基板は、電気接続エリアに対応する部分において光学基板を貫通するように当該光学基板の素材が除去された基板除去部を有し、電気接続エリアの少なくとも一部は、基板除去部を介して支持基板上に形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態に係る光導波路素子は、LN基板を用いて構成される光変調素子であるが、本発明に係る光導波路素子は、これには限られない。本発明は、LN基板以外にも電気光学効果や熱光学効果、音響光学効果をもつ基板を用いた電極を有している光導波路素子や、光変調以外の機能を有する光導波路素子にも、同様に適応することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路素子および光導波路デバイスの構成を示す図である。本実施形態では、光導波路素子はマッハツェンダ光導波路を用いて光変調を行う光変調素子102であり、光導波路デバイスは、当該光変調素子102を用いた光変調デバイス100である。
【0015】
光変調デバイス100は、筺体104の内部に光変調素子102を収容する。なお、筺体104は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0016】
光変調デバイス100は、筺体104内に光を入力するための入力光ファイバ106と、光変調素子102により変調された光を筺体104の外部へ導く出力光ファイバ108と、を有する。
【0017】
光変調デバイス100は、また、光変調素子102に光変調動作を行わせるための高周波電気信号を外部から受信するためのコネクタ110と、当該コネクタ110が受信した高周波電気信号を光変調素子102の信号電極の一端へと中継するための中継基板112を備える。また、光変調デバイス100は、光変調素子102の信号電極の他端に接続される、電気信号の反射を抑制するために所定のインピーダンスを有する終端器114を備える。ここで、光変調素子102の信号電極と、中継基板112及び終端器114と、の間は、例えば金属ワイヤ等のボンディングにより電気的に接続される。
【0018】
また、光変調デバイス100は、リードピン116および117と、中継基板118および115を備える。リードピン116は、光変調素子102に設けられた後述するバイアス電極である導体パターン230d,230eへ、筺体104の外部から与えられるバイアス電圧を、中継基板118を介して入力する。また、リードピン117は、中継基板115を介して、光変調素子102に設けられた光検出器119において検出される信号を、筺体104の外部に設けられた電子回路へ出力する。ここで、光検出器119は、光変調素子102を構成するマッハツェンダ光導波路の出力導波路から分岐させた光を受信し、当該光変調素子102の出力光をモニタするための、例えばフォトダイオード(PD、Photo Diode)である。リードピン116、117は、例えばガラス端子である。
【0019】
図2は、
図1に示す光変調デバイス100の筺体104に収容される光導波路素子である光変調素子102の構成を示す図である。
【0020】
光変調素子102は、例えばLNで構成される光学基板220と、光学基板220を支持する支持基板222と、を有する。光学基板220上には、光導波路224(図示太線の点線)が形成されている。光導波路224は、例えば2本の並行導波路226a、226bを含むマッハツェンダ光導波路である。ここで、光学基板220は、本実施形態では厚さが10μm以下まで薄く加工されており、光導波路224は、リブ型光導波路として構成されている。また、支持基板222は、その機械強度が、少なくとも上記薄く加工された光学基板220よりも堅牢となるように、光学基板220よりも厚く構成されている。また支持基板222は、リブ型光導波路構造が成り立つように、石英やサファイヤ、光学ガラス等の光学基板よりも屈折率の低い材料からなる基板、あるいはSiやLNなどの光学基板220と同じあるいはより高い屈折率を持つ基板の表面に、光学基板220よりも低屈折率の層(SiO2等)が積層された基板が用いられる。
【0021】
光学基板220上には、また、導体パターン230a、230b、230c、230d、230e、230f、230g(以下、総称して導体パターン230ともいう)が形成されている。導体パターン230は、光導波路224を伝搬する光波を制御する電極を構成する。具体的には、導体パターン230a、230b、230cは、入力される高周波電気信号により並行導波路226a、226bの屈折率を当該高周波の電気波形に応じて変化させる信号電極である。導体パターン230aは、電気信号を伝搬する信号導体パターンであり、導体パターン230b、230cは、接地電位に接続される接地導体パターンである。
【0022】
また、導体パターン230d,230eは、入力される直流電圧により、上記信号電極による屈折率変化の動作点(基準点)を設定するバイアス電極である。また、導体パターン230f,230gは、光検出器119の2つの電極に接続されている。
【0023】
導体パターン230には、例えば金属ワイヤ242との電気接続が行われる範囲として予め規定された電気接続エリア240a、240b、240c、240d、240e、240f、240g、240h、240j、240k、240m、240n、240p、240q、240r、240s、240t、240u、240v、240w、240y1、240y2、240z1、240z2、(以下、総称して電気接続エリア240ともいう)が設けられている。
【0024】
例えば、電気接続エリア240a、240b、240y1、240y2、240z1、240z2は、それぞれ、導体パターン230d、230e、230f、230gの一部を構成する矩形の導体として形成されたいわゆる電気接続パッド(以下、単にパッドともいう)である。また、電気接続エリア240c、240dは、導体パターン230aの図示上下の端部にそれぞれ設けられた矩形のパッド(図示点線矩形部分)であり、それぞれテーパ上に形成された遷移パターンを介して線路部分と接続されている。
【0025】
また、例えば、電気接続エリア240e、240f、240g、240h、240p、240q、240r、240sは、パッドのような特定の形状をもった導体パターン部分として構成されたものではなく、幅広の導体パターン230bを構成する導体平面内に区画された円形の範囲として規定されている。同様に、電気接続エリア240j、240k、240m、240n、240t、240u、240v、240wは、導体パターン230cを構成する導体平面内に区画された円形の範囲として規定されている。
【0026】
特に、本実施形態に係る光変調素子102は、光学基板220の電気接続エリア240に対応する部分に、それぞれ、光学基板220を厚さ方向に貫通するように当該光学基板220の素材が除去された基板除去部250a、250b、250c、250d、250g、250h、250m、250n、250p、250q、250r、250s、250t、250u、250v、250w、250y1、250y2、250z1、250z2(以下、総称して基板除去部250ともいう)が設けられている。
【0027】
ここで、電気接続エリア240a、240b、240g、240h、240m、240n、240p、240q、240r、240s、240t、240u、240v、240w、240y1、240y2、240z1、240z2に対応する部分に、それぞれ基板除去部250a、250b、250g、250h、250m、250n、250p、250q、250r、250s、250t、250u、250v、250w、250y1、250y2、250z1、250z2が設けられている。また、光変調素子102の図示下側の辺に並べて配された電気接続エリア240c、240e、240jに対応する部分に、一つの基板除去部250cが設けられ、光変調素子102の図示上側の辺に並べて配された電気接続エリア240d、240e、240kに対応する部分に、一つの基板除去部250dが設けられている。
【0028】
そして、電気接続エリア240のそれぞれは、その少なくとも一部が、対応する基板除去部250を介して支持基板222上に形成されている。
【0029】
ここで、本実施形態では、電気接続エリア240は、それぞれ、ボールボンディングやウェッジボンディング等のワイヤボンディングにより金属ワイヤが接合される部分として設けられている。そして、基板除去部250のそれぞれは、平面視において、当該ワイヤボンディングにより形成されるワイヤ接合部の大きさ及び当該ワイヤボンディングの位置精度を考慮した大きさ(コンタクトサイズ)を包含する大きさで形成されている。本実施形態では、コンタクトサイズは直径40μmの円である。すなわち、基板除去部250のそれぞれは、平面視において少なくとも直径40μmの円を包含する大きさで形成されている。
【0030】
なお、電気接続エリア240は、光学基板220外の電気部品(例えば中継基板112、118や、終端器114)と接続されるほか、光学基板220外に配された導体(例えば、金属ワイヤ242)を介して他の電気接続エリア240に電気的に接続され得る。例えば、
図2に示す電気接続エリア240gと240mとの間、及び240hと240nとの間は、その例である。
【0031】
上記の構成を有する光変調素子102は、光学基板220のうち電気接続エリア240に対応する部分に当該光学基板220を貫通するように基板除去部250が設けられ、且つ、電気接続エリア240の少なくとも一部が基板除去部250を介して支持基板222上に形成されている。このため、電気接続エリア240に対して例えば金属ワイヤをボンディング等する際に、ワイヤボンダのキャピラリにより電気接続エリア240に加えられる加圧力は、薄く加工された光学基板220には印加されず、基板除去部250を介して支持基板222に加えられることとなる。したがって、光変調素子102では、光学基板220上の導体パターン230との電気的接続を行う際の、当該光学基板220における割れの発生を防止して、接続不良や製造歩留まり低下を防止することができる。
【0032】
図3は、
図2に示す光変調素子102のA部の部分詳細図である。また、
図4は、
図3に示すA部におけるaa断面矢視図である。電気接続エリア240gは、ボンディングの位置精度等を考慮して設定された上記コンタクトサイズ(直径40μmの円)以上の大きさで設けられている。基板除去部250gは、光学基板220を厚さ方向に貫通する貫通孔として設けられている。また、基板除去部250gは、平面視において電気接続エリア240gを包含する大きさで形成されており、したがって、少なくとも直径40μmの円を包含する大きさで形成されている。この基板除去部250gの範囲内において、導体パターン230bのうち電気接続エリア240g及びその周辺が、支持基板222上に形成される。そして、支持基板222上に形成された電気接続エリア240g内に、金属ワイヤ242が接合される。特に高周波信号が伝搬する導体パターンの近傍では、電気接続エリア240g及びその周辺のパターンとが基板除去部による段差により分断されないように、光学基板220の厚さよりも厚い導体で形成されていることが好ましい。
【0033】
図5は、
図2に示す光変調素子102のB部の部分詳細図である。また、
図5は、
図6に示すB部におけるbb断面矢視図である。上述したように、電気接続エリア240aは、導体パターン230dの一部を構成する矩形の導体として形成されたいわゆるパッドである。基板除去部250aは、上述した基板除去部250gと同様に光学基板220を厚さ方向に貫通する貫通孔として設けられており、且つ、平面視において少なくとも40μmの円を包含するサイズで形成されている。
【0034】
この基板除去部250aの範囲内において、電気接続エリア240aの一部が、当該基板除去部250aを介して支持基板222上に形成される。そして、電気接続エリア240aのうち基板除去部250aを介して支持基板222上に形成された部分に、金属ワイヤ242が接合される。
【0035】
なお、基板除去部250aは、電気接続エリア240aを構成するパッドの大きさや、コンタクトサイズの大きさに依存して、当該パッドの全体、したがって電気接続エリア240aの全体を包含するように形成されるものとすることもできる。この場合、電気接続エリア240aは、その全体が基板除去部250aを介して支持基板222上に形成される。
【0036】
すなわち、電気接続エリア240は、当該電気接続エリア240のうちコンタクトサイズに相当する大きさの部分が支持基板222上に形成される限りにおいて、その少なくとも一部が基板除去部250を介して支持基板222上に形成されていればよい。
【0037】
図7は、
図2に示す光変調素子102のC部の部分詳細図である。また、
図8および
図9は、それぞれ、
図7に示すC部におけるcc断面矢視図およびdd断面矢視図である。電気接続エリア240e、240jは、それぞれ、接地導体パターンである幅広の導体パターン230b、230cを構成するそれぞれの導体平面内に区画された円形の範囲として規定されている。また、電気接続エリア240cは、信号導体パターンである導体パターン230aの図示下側の端部に設けられた矩形のパッド(
図7においては、右斜め線でハッチングされた矩形部分として示されている)として形成されている。これらの電気接続エリア240e、240c、240jは、光学基板220の図示下側の外縁の近傍に図示左右方向に並べて配されている。
【0038】
そして、これらの3つの電気接続エリア240e、240c、240jに対し、一つの基板除去部250cが設けられている。すなわち、基板除去部250cは、複数の電気接続エリア240e、240c、240jに対して設けられている点が、上述した基板除去部250g、250aと異なる。また、基板除去部250cは、上述した基板除去部250g、250aと同様に光学基板220を厚さ方向に貫通するように構成されているが、光学基板220の外縁に開口を持つ矩形の切り欠きとして構成されている点が、基板除去部250g、250aと異なる。
【0039】
導体パターン230b、230cを構成する導体平面内のそれぞれに円形で区画された電気接続エリア240e、240jは、それぞれ、上述した電気接続エリア240gと同様に、コンタクトサイズ(例えば直径40μmの円)以上の大きさで設けられている。基板除去部250cは、これらの電気接続エリア240e、240jを包含するように、したがって、これらの電気接続エリア240e、240jに含まれるコンタクトサイズのエリアを包含するように、形成されている。
【0040】
信号導体パターンである導体パターン230aは、その端部にパッドとして形成された電気接続エリア240cにつながる線路部分230a−1(図示左斜め線のハッチング部)を含む。また、電気接続エリア240cは、例えばその幅方向がテーパ状に変化する形状で設けられた遷移パターン230a−2を介して線路部分230a−1と接続されている。
【0041】
また、上記パッドとして設けられた電気接続エリア240cは、当該電気接続エリア240cの直近における線路部分230a−1の線路幅W1に対し、当該線路幅と同じ方向に測った幅W2が広く形成されている。
【0042】
そして、上記パッドである電気接続エリア240cの少なくとも一部は、基板除去部250cを介して支持基板222上に形成されている。そして、基板除去部250cは、光学基板220の他の部分との境界250c−1が線路部分230a−1の下に形成されないように、例えば遷移パターン230a−2の下部に形成されるように、配されている。
【0043】
光変調素子102の上記C部における構成では、複数の電気接続エリア240が一つの基板除去部250により支持基板222上に形成されるので、光学基板220に設けられる貫通孔や切り欠きの数を減らすことができる。このため、光学基板220の加工工程を単純化してコストを低減することができる。また、基板除去部250cは、その境界250c−1が微細なパターンである線路部分230a−1の下部に形成されないので、線路部分230a−1の断線、形状不良等を防止することができる。
【0044】
なお、上記C部においては、3つの電気接続エリア240e、240c、240jに対して一つの基板除去部250cを設けるものとしたが、これには限られない。少なくとも2つの電気接続エリア240に対して一つの基板除去部250が設けられるものとし、当該一つの基板除去部を介して、上記少なくとも2つの電気接続エリア240のそれぞれの少なくとも一部が支持基板222上に形成されるものとすることができる。
【0045】
また、一つの基板除去部250が設けられる上記少なくとも2つの電気接続エリア240は、上記C部と同様に、少なくとも一つの信号導体パターンである導体パターン230の電気接続エリア240と、少なくとも一つの接地導体パターンである導体パターン230の電気接続エリア240と、を含むものとすることができる。
【0046】
この構成によれば、例えば、近接して並べて配置されやすい、信号線路を構成する信号導体パターン及び接地導体パターンの2つの電気接続エリアに対し、それぞれ個別に2つの基板除去部250を隣接して設ける場合に発生し得る、当該2つの基板除去部250間での光学基板220の割れや欠けを防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、電気接続エリア240には金属ワイヤ242が接続されるのものとしたが、これには限られない。電気接続エリア240は、例えばフリップチップボンディングによりハンダバンプを介した接続が行われるものとすることができる。
図10は、電気接続エリア240に対してそのようなフリップチップボンディングによる接続を行う場合の構成の一例を示す図である。
図10は、電気接続エリア240e、240c、240jとの接続部分を示す
図7のC部詳細図に相当する図である。なお、
図10において、
図7と同じ構成要素については、
図7における符号と同じ符号を用いて示している。
【0048】
図示の例では、中継基板112に代えて、フリップチップボンディングを行うよう構成された中継基板112´が用いられている。
図11は、
図10におけるee断面矢視図である。中継基板112´は、当該中継基板112´の裏面(
図11における図示下側の面)に設けられた電極(不図示)と、例えば電極接続エリア240jとの間が、ハンダバンプ243を介して接続されている。本構成では、フリップチップボンディングに際して、ハンダバンプ243を介して中継基板112´から印加される圧力は、光学基板220に印加されることなく支持基板222に印加されるので、上述した金属ワイヤ242による接続を行う場合と同様に、光学基板220の割れ等の損傷の発生を防止して、接続不良や製造歩留まり低下を防止することができる。
【0049】
また、基板除去部の形状、すなわち、基板除去部と光学基板220の他の部分との境界の形状は、
図2、3、5、7に記載の矩形形状には限られない。
図12、
図13は、基板除去部250の第1及び第2の変形例を示した図である。
図12、
図13は、
図2のA部を示した
図3に相当する図である。
【0050】
図12に示す基板除去部1050gは、基板除去部250gと同様の構成を有するが、矩形形状の四隅の屈曲部が曲線となっている点が基板除去部250gと異なる。また、
図13に示す、基板除去部1150gは、基板除去部250gと同様の構成を有するが、矩形に代えて、円形に構成されている点が基板除去部250gと異なる。これらの基板除去部1050g、1150gは、上記境界が、加工歪や製造プロセス内の温度変動、使用環境温度の変動に伴って発生する応力が集中しやすい屈曲を含まない形状(角を含まない連続した曲率を有する形状)で形成されているので、光学基板220の製造プロセス中の除去部での光学基板のヒビ発生の防止や機械的な安定性を向上することができる。なお、基板除去部の形状は、これらに限らず、例えば楕円形や多角形で構成されるものとすることもできる。
【0051】
また、基板除去部は、当該基板除去部を介して視認可能な支持基板222上の範囲に、導体パターン230が形成されていない支持基板222の部分を含むよう形成されるものとすることができる。
図14は、基板除去部250のそのような第3の変形例を示す図である。
図14は、
図2のB部を示した
図5に相当する図である。
図14に示す基板除去部1250aは、基板除去部250aと同様の構成を有するが、図示横方向の幅が、電気接続エリア240aの幅を超えて広がり、基板除去部1250aを介して視認可能な支持基板222上の範囲に、電気接続エリア240aが形成されていない部分を含んでいる。
【0052】
これにより、電気接続エリア240aに電気接続を行う際、例えば金属ワイヤ242をボンディングする際に、基板除去部250aの位置を視認することができるので、当該電気接続を基板除去部250a内の電気接続エリア240aの部分の位置に、上記電気接続を精度よく行うことができる。
【0053】
また、上述の実施形態を示した
図4、6、8、9では、基板除去部250の上部に形成される導体パターン230の上面が平坦であるものとしたが、これには限られない。導体パターン230は、基板除去部と光学基板220の他の部分との境界に対応する部分おいて段差を有するように形成されるものとすることができる。
【0054】
図15及び
図16は、導体パターン230のそのような第1および第2の変形例を示す図である。
図15、
図16に示す導体パターン1330a、1430aは、導体パターン230aと同様の構成を有するが、基板除去部250aの図示左右の境界の位置に対応する部分であるそれぞれ2つの境界部1332、1432(いずれも図示点線楕円内)において、段差を有するように構成されている点が異なる。ここで、境界部1332は、当該段差が
図15に示す断面視において屈曲部を有するのに対し、境界部1432は、上記段差が、
図16に示す断面視において曲線で構成されている。
【0055】
図15及び
図16に示すような導体パターン1330a,1430aは、基板除去部250の境界に対応する部分に段差を有するので、電気接続エリア240aに電気接続を行う際、例えば金属ワイヤ242をボンディングする際に、導体パターン1330a、1430aの上記境界部1332、1432に形成された段差をたよりに、基板除去部250aの位置を視認することができる。このため、当該電気接続を基板除去部250a内の電気接続エリア240aの部分の位置に精度よく行うことができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態およびその変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0057】
例えば、本実施形態では、光導波路素子として、LN基板である光学基板220上に一対の並行導波路226a、226bを含む単一のマッハツェンダ光導波路を構成する光導波路224が形成された光変調素子102を示したが、本発明が適用される光導波路素子は、これには限られない。
【0058】
光導波路素子は、電気接続の際に割れ等の機械的破壊が発生し得る程度に薄く構成された、LN以外の材料を光学基板として用いるものであってもよい。
【0059】
また、本発明に係る基板除去部が形成される光導波路素子は、本実施形態のように、LN基板を光学基板として用いたものであって、より複雑な構成の光導波路が形成された光導波路素子であってもよい。例えば、光導波路素子は、
図17に示すような、いわゆるネスト型マッハツェンダ光導波路を2つ用いて構成されるDP−QPSK変調を行う光変調素子1502であるものとすることができる。
【0060】
この光変調素子1502は、例えば、光学基板220と同様のLN基板である光学基板1520と、当該光学基板1520に接合された支持基板222とで構成されている。光学基板1520には、光導波路1524が形成されている。ここで、光導波路1524は、2つのいわゆるネスト型マッハツェンダ光導波路で構成されており、2つのネスト型マッハツェンダ光導波路が構成する、それぞれ4本の並行導波路で構成される2つの並行導波路群1526a、1526bを含む。
【0061】
また、光学基板1520には、導体パターン1530a、1530b、1530c、1530d、1530e、1530f(以下、総称して導体パターン1530という)が形成されている。ここで、導体パターン1530a、1530bは、並行導波路群1526a、1526bを伝搬する光波をそれぞれ制御する信号電極であり、導体パターン1530c、1530d、1530e、1530fは、バイアス電極である。
【0062】
そして、上述した実施形態に係る光導波路素子である光変調素子102の導体パターン230と同様に、導体パターン1530は、例えば金属ワイヤ242による電気接続が行われる範囲として規定された少なくとも一つの電気接続エリアを含む。ここで、上記金属ワイヤ242による電気接続の部分は、
図17においては、金属ワイヤ242の端部の黒丸で示されている。また、
図17においては、冗長な記載を避けて理解を容易にするため、金属ワイヤのすべてには符号242を付していない。符号242が付された図形と同じ図形は金属ワイヤ242を示すものであり、光学基板1520上に示された、それぞれの金属ワイヤの端部の黒丸は、電気接続エリアが規定される部分であるものと理解されたい。
【0063】
そして、光変調素子1502は、光変調素子102と同様に、光学基板1520が、電気接続エリアに対応する部分において光学基板1520を貫通するように光学基板の素材が除去された基板除去部を有し、電気接続エリアの少なくとも一部は、基板除去部を介して支持基板222上に形成されているものとすることができる。
【0064】
なお、
図17に示す光変調素子1502では、図示左方から光導波路1524に入射された光は、それぞれQPSK変調された2つの出力光として図示右方から出力される。この2つの出力光は、従来技術に従い適切な空間光学系により偏波合成されて一つの光ビームにまとめられ、例えば光ファイバに結合されて伝送路光ファイバへと導かれる。
【0065】
また、上述した実施形態においては、電気接続エリア240に用いる電気接続は、金属ワイヤとの電気的接続であるものとしたが、これには限られない。上記電気接続は、例えば、種類に応じて、金属ワイヤ以外の導体ワイヤ、金属リボンを含む導体リボン、またはフリップチップボンディングにおけるハンダバンプとの接続であるものとすることができる。それらの接続では、ワイヤを用いた場合よりも接続に強い圧力が必要となるため、本願の構成がより好適に適用できる。
【0066】
また、上述した実施形態においては、コンタクトサイズを直径40μmの円であるものとしたが、これには限られない。コンタクトサイズは、電気接続エリア240に用いる電気接続の種類に応じて他の大きさ又は他の形状とすることができる。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態に示す光導波路素子である光変調素子102は、光導波路224と導体パターン230とが形成された光学基板220と、光学基板220を支持する支持基板222と、を有する。導体パターン230は、電気接続が行われる範囲として規定された少なくとも一つの電気接続エリア240を含む。また、光学基板220は、電気接続エリア240に対応する部分において光学基板220を貫通するように当該光学基板220の素材が除去された基板除去部250を有する。そして、電気接続エリア240の少なくとも一部は、基板除去部250を介して支持基板222上に形成されている。
【0068】
この構成によれば、電気接続エリア240に対して例えば金属ワイヤ242をボンディング等する際には、ワイヤボンダのキャピラリにより電気接続エリア240に加えられる加圧力は、薄く加工された光学基板220には印加されず、基板除去部250を介して支持基板222に加えられることとなる。したがって、光変調素子102では、光学基板220上の導体パターン230との電気的接続を行う際の、当該光学基板220における割れの発生を防止して、接続不良や製造歩留まり低下を防止することができる。
【0069】
また、光変調素子102では、光学基板220の厚さは10μm以下である。この構成によれば、例えば薄く加工された光学基板220上に形成されたリブ型光導波路により構成される光導波路素子において、光学基板220における割れの発生を防止して、接続不良や製造歩留まり低下を防止することができる。尚、これまでの説明では光学基板の厚さが10μm以下として説明したが、5μm以下の場合はより上記の効果を奏することができ、更に2μm以下の場合は更に効果を奏することができる。
【0070】
また、光変調素子102では、例えば電気接続エリア240cは、導体パターン230aの一部として構成される矩形の電気接続パッドであり、導体パターン230aは、電気接続パッドである電気接続エリア240cにつながる線路部分230a−1を含む。電気接続パッドである電気接続エリア240cは、その直近における線路部分230a−1の線路幅W1に対し、当該線路幅W1と同じ方向に測った幅W2が広く形成されている。そして、電気接続パッドである電気接続エリア240cの少なくとも一部は、基板除去部250cを介して支持基板222上に形成される。また、基板除去部250cは、光学基板220の他の部分との境界250c−1が線路部分230a−1の下に形成されないように配されている。
【0071】
この構成によれば、線路部分230a−1の断線等の発生を防止することができる。
【0072】
また、光変調素子102では、基板除去部250は、少なくとも直径40μmの円を包含する大きさで形成されている。この構成によれば、電気接続エリア240に対しワイヤボンディングにより電気接続を行う場合にも、ワイヤボンダのキャピラリによる光学基板220への加圧を効果的に回避することができる。
【0073】
また、光変調素子102では、例えば基板除去部250cは、光学基板220の外縁に開口を有するよう形成されている。この構成によれば、割れや欠けが発生しやすい光学基板220の外縁部の構造を単純化して、当該外縁部における機械強度を確保することができる。
【0074】
また、光変調素子102では、導体パターンとして、基板除去部250と光学基板220の他の部分との境界に対応する境界部1332、1432部分において段差を有する導体パターン1330a、1430aを用いることができる。この構成によれば、電気接続エリア240aに電気接続を行う際、例えば金属ワイヤ242をボンディングする際に、導体パターン230の上記境界部に形成された段差をたよりに、基板除去部250aの位置を視認することができるので、当該電気接続を基板除去部250a内の電気接続エリア240aの部分の位置に、上記電気接続を精度よく行うことができる。
【0075】
また、光変調素子102では、少なくとも2つの電気接続エリア240が、一つの基板除去部250を介して支持基板222上に形成され得る。この構成によれば、光学基板220に設ける基板除去部250の数を減らして、光学基板220の加工工程を単純化してコストを低減することができる。
【0076】
また、光変調素子102では、導体パターン230は、電気信号を伝搬する信号導体パターンである例えば導体パターン230aと、接地電位に接続される接地導体パターンである例えば導体パターン230b、230cと、を含む。そして、上記少なくとも2つの電気接続エリア240は、少なくとも一つの信号導体パターンの電気接続エリア(たとえば、電気接続エリア240c)と、少なくとも一つの接地導体パターンの電気接続エリア(たとえば、電気接続エリア240e及び又は240j)と、を含み得る。
【0077】
この構成によれば、近接して並べて配置されやすい、信号線路を構成する信号導体パターン及び接地導体パターンの2つの電気接続エリアに対し、それぞれ個別に2つの基板除去部250を隣接して設ける場合に発生し得る、当該2つの基板除去部250間の光学基板220の部分の割れや欠けを防止することができる。
【0078】
また、光変調素子102では、基板除去部250は、光学基板220の他の部分との境界が、屈曲を含まない形状で形成され得る。この構成によれば、基板除去部は、その境界が、加工歪や環境温度の変動に伴って発生する応力が集中しやすい屈曲を含まないので、光学基板220の機械的な安定性を向上することができる。
【0079】
また、光変調素子102では、基板除去部250は、当該基板除去部250を介して視認可能な支持基板222上の範囲に、導体パターン230が形成されていない部分を含むよう形成され得る。この構成によれば、電気接続エリア240aに電気接続を行う際、例えば金属ワイヤ242をボンディングする際に、基板除去部250aの位置を視認することができるので、当該電気接続を基板除去部250a内の電気接続エリア240aの部分の位置に、精度よく行うことができる。
【0080】
また、光変調素子102では、電気接続エリア240は、光学基板220外に配された導体である例えば金属ワイヤ242を介して、他の電気接続エリア240に電気的に接続されている。この構成によれば、光学基板220の破損を心配することなく、光学基板220内での導体パターン230間の電気的接続を自由に行うことができるので、光変調素子102の設計自由度を向上することができる。
【0081】
また、光変調素子102では、電気接続エリア240には、金属ワイヤ242等の導体ワイヤのほか、導体リボン、またはハンダバンプが接続され得る。この構成によれば、光学基板220の破損を防止しつつ、種々の導体を用いて導体パターン230に対する電気接続を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態に係る光導波路デバイスである光変調デバイス100は、上記いずれかの光導波路素子である光変調素子102と、当該光変調素子を収容する筺体と、を有する。この構成によれば、光学基板220の破損発生の確率を低減して製造歩留まりの良い電気接続を行い得るので、安価で信頼性の高い光導波路デバイスを安定的に生産することが可能となる。