特開2020-166165(P2020-166165A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-166165(P2020-166165A)
(43)【公開日】2020年10月8日
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20200911BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20200911BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20200911BHJP
【FI】
   G02B6/122
   G02F1/035
   G02B6/12 361
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-67738(P2019-67738)
(22)【出願日】2019年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】大石 健太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB11
2H147AC01
2H147BA05
2H147BE01
2H147BE13
2H147BG09
2H147CC12
2H147CD02
2H147DA08
2H147EA05A
2H147EA05C
2H147EA14C
2H147EA37A
2H147FA25
2H147FC03
2H147FD15
2H147GA00
2K102AA21
2K102BA02
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102BD09
2K102CA00
2K102CA05
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB05
2K102DC04
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA16
2K102EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板の破損を防止し、生産性を向上した光導波路素子を提供すること。
【解決手段】基板1に光導波路(24,23)を形成した光導波路素子において、基板1の外周10に沿って、少なくとも基板の一部に溝部分3が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光導波路を形成した光導波路素子において、
該基板の外周に沿って、少なくとも該基板の一部に溝部分が形成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、該光導波路は、基板表面に設けたリッジ構造で形成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光導波路素子において、該溝部分よりも該基板の内側に位置すると共に、該溝部分を形成している該基板の凸部が、該基板内を伝搬する不要光を除去するための光導波路を兼ねていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路素子において、該溝部分よりも該基板の内側に位置すると共に、該溝部分を形成している該基板の凸部の少なくとも一部の表面に電極層が形成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光導波路素子において、該基板の厚みは、20μm以下であることを特徴とする光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子に関し、特に、基板に光導波路を形成した光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、ニオブ酸リチウム(LN)などの電気光学効果を有する基板に光導波路を形成した光変調器などの光導波路素子が多用されている。光導波路素子を構成する基板は、30μm以下、より好ましくは20μm以下の薄板とすることにより、変調信号であるマイクロ波と光導波路を伝搬する光波との速度整合が取り易くなり、電界効率が向上する。また、光導波路設計において光導波路素子の小型化にも有利となる。
【0003】
薄板化した基板は、機械強度を増すために、保持基板に接合される。その場合、電界効率や光導波路の特性を考慮し、基板とは異なる低屈折率・低誘電率の材料を使用することができる。その他にも、基板と同じあるいは高屈折率材料の基板に、低屈折率の樹脂層で接着したり、表面に低屈折率層を形成した基板に直接接合することも可能である。
【0004】
薄板を利用した光導波路素子は、基板自体が薄いため非常に割れやすく、製造時の取り扱いが難しい。例えば、素子のウエハ製造工程内には、ウエハピンセット等の保持ジグとの接触や、薄板化のために研磨や接合といった加工工程、フォトマスクを密着させてフォトリソグラフィーによりパターニングをおこなう工程などのように、基板に外力がかかる作業が存在する。それらにより、ウエハの外周あるいは面内の一部に発生した微小なクラックが、その後の製造工程内の温度変化や膜応力といった要因で成長し、ウエハ内の素子全体が不良となる場合もある。
【0005】
またそれ以外にも、1枚のウェハに複数形成された光導波路素子(素子チップ)を切断して分離する場合には、基板に加わる衝撃によりクラック(基板割れ)が発生し、隣接する他の素子まで破損してしまう場合もある。特に面方向に劈開面を有する光学基板、例えばX板のLN基板などでは、劈開面に沿ってクラックが延伸するため、より大きな問題となる。
【0006】
さらに、電気光学効果を有する基板である薄板に使用される材料と、保持基板に使用される材料が異なることから、チップ化した後も筐体等に実装するときの環境温度の変化に伴い、両者の線膨張係数の差により内部応力が生じ、薄板が容易に破損する結果となる。しかも、基板に設ける光導波路をリッジ構造を用いて形成する場合には、基板に厚みの薄い凹部が形成されることとなり、薄板の機械的強度がより一層低下することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6299170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、基板の破損を防止し、生産性を向上した光導波路素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子は、以下の技術的特徴を有する。
(1) 基板に光導波路を形成した光導波路素子において、該基板の外周に沿って、少なくとも該基板の一部に溝部分が形成されていることを特徴とする。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該光導波路は、基板表面に設けたリッジ構造で形成されていることを特徴とする。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光導波路素子において、該溝部分よりも該基板の内側に位置すると共に、該溝部分を形成している該基板の凸部が、該基板内を伝搬する不要光を除去するための光導波路を兼ねていることを特徴とする。
【0012】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光導波路素子において、該溝部分よりも該基板の内側に位置すると共に、該溝部分を形成している該基板の凸部の少なくとも一部の表面に電極層が形成されていることを特徴とする。
【0013】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光導波路素子において、該基板の厚みは、20μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、基板に光導波路を形成した光導波路素子において、該基板の外周に沿って、少なくとも該基板の一部に溝部分が形成されているため、基板の外周側から亀裂が発生した場合でも、該溝部分で基板内側への亀裂の進行を阻止することができるため、基板の破損を防止し、生産性を向上した光導波路素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の光導波路素子の例を示す平面図である。
図2図1の光導波路素子に設けられる光導波路の例を示す平面図である。
図3】本発明の光導波路素子の第1の実施例を示す断面図である。
図4】本発明の光導波路素子の第2の実施例を示す断面図である。
図5】本発明の光導波路素子の第3の実施例を示す断面図である。
図6】本発明の光導波路素子の第4の実施例を示す断面図である。
図7図6の第4の実施例の応用例を示す断面図である。
図8】本発明の光導波路素子を含むウエハ状態を示す平面図である。(a)は外周付近にクラックが発生した場合、(b)はウエハ内部でクラックが発生した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の光導波路素子について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光導波路素子は、図1及び図3に示すように、基板1に光導波路(24,23)を形成した光導波路素子において、該基板1の外周10に沿って、少なくとも該基板の一部に溝部分3が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の光導波路素子に使用される基板1としては、ニオブ酸リチウム(LN)などの電気光学効果を有する基板や、半導体基板などが利用可能である。特に、劈開面がウエハの表面に沿って形成されるX板のLN基板に対しては、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0018】
基板1に形成する光導波路は、LN基板にTiなどの金属を熱拡散したものや、基板表面をドライエッチング等で加工処理し、リッジ構造を形成したものが利用可能である。特に、リッジ構造で形成した場合は、光導波路素子(素子チップ)やウエハが局所的に脆弱になり易いため、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0019】
さらに、本発明の光導波路素子は、基板1が破損し易い、基板1の厚みが薄く、光導波路がリッジ構造のものに、好適に適用することが可能である。基板1の厚さは、変調信号のマイクロ波と光波との速度整合を図るため、20μm以下、より好ましくは10μm以下に設定される。特に、リッジ構造では、光導波路における光の伝搬特性から、凸部での基板の厚みを5μm以下、凹部での基板の厚みを3μm以下に設定する。
【0020】
図1は、本発明の光導波路素子の例を示す平面図である。基板1の中程には、光導波路や変調電極やDCバイアス電極などの制御電極など、光導波路素子の主要部2が配置されている。図2は、図1の主要部2に形成される光導波路の例を示す図であり、図2(a)は一つのマッハツェンダー型光導波路20、図2(b)は複数のマッハツェンダー型光導波路を入れ子型に組み込んだネスト型光導波路21である。さらにより多くのマッハツェンダー型光導波路を組み込んだDP−QPSK変調器などの光導波路であっても良い。
【0021】
図3は、図1の一点鎖線B−B’における基板の一部の断面を示した図であり、主要部に形成される光導波路の一部を符号23,24で示している。光導波路はリッジ構造で形成されている。基板1の表面には、光導波路(23,24)を残して、該光導波路を取り囲むように凹部が形成されている。そして、その外側の光導波路が形成されていない領域には、凸部32の領域が広がっている。
【0022】
本発明の特徴は、基板1の外周10に沿って、基板の一部に溝部分3が形成されていることである。溝部分3は、リッジ構造と同じように、ドライエッチングなどの加工処理で形成することが可能である。当該溝部分3を形成することにより、溝部分3の両側又は片側には、基板1に凸部(31,32)が形成される。溝3は、光導波路の光波の入力部や出力部を除いて、形成することが可能であり、例えば、素子チップを平面視した際に、長方形の素子チップの長辺の近傍で該長辺に沿って、溝を形成することも可能である。
【0023】
図3では省略されているが、基板1の下側には、ガラス材料やLNなどで形成される保持基板が配置固定される。また、必要に応じて、基板1は、樹脂等の接着層を介して、保持基板に接合される。
【0024】
この溝部分3の存在により、図1のように、基板1の外周から亀裂Aが入ってきても、溝部分3で亀裂の進行が止められ、それ以降、点線矢印のように基板1の内側に亀裂が進行することはない。このため、光導波路素子の主要部2は破損から守られ、光導波路素子として機能することが可能となる。
【0025】
溝部分3よりも基板1の内側に位置すると共に、該溝部分3を形成している基板の凸部32は、特許文献1に示すような、基板の外周近傍に形成される不要光を除去するためのスラブ導波路として機能させることも可能である。スラブ導波路のパターン形状に対応し、凸部32はリッジ構造に加工される。
【0026】
図4は、本発明の光導波路素子の第2の実施例を示す断面図である。図4では、外周10に近い凸部31’の外側端部を外周10より離して配置している。このような構成により、基板1の外周に沿った厚みの薄い部分は容易に破損されるが、凸部31’と凸部32により二段階で、内部に亀裂が入るのを防止することが可能となる。
【0027】
図1では、溝部分3は、主要部を除く、外周に沿った領域に形成されているが、例えば、基板の角部や、製造時に基板1を把持する部分の近傍に限定して、溝部分3を形成することも可能である。
【0028】
図5は、本発明の光導波路素子の第3の実施例を示す断面図である。溝部分3’の深さHを、光導波路(23,24)を構成する部分の凹部の深さhより深く形成することで、光導波路部分よりも溝部分3’の方の機械的強度を下げ、より破損し易くし、結果として、光導波路を保護することが可能となる。なお、本発明の光導波路素子は、溝部分3(3’)の深さが、光導波路を構成するリッジ構造の凹部の深さよりも深いものに限定されない。仮に、溝部分の深さが光導波路のリッジ構造の凹部より浅くても、亀裂が発生して広がっていく部分より少しでも機械的強度が低ければ、亀裂の拡大を抑制することが可能となる。
【0029】
図6は、本発明の光導波路素子の第4の実施例を示す断面図である。溝部分3よりも基板1の内側に位置すると共に、溝部分3を形成している基板の凸部32の少なくとも一部の表面に電極層E3が形成されている。このように、機械的強度を高く保持したい基板部分に電極層を設けることで、亀裂が基板内側に進むのをより効果的に防ぐことが可能となる。
【0030】
また、図7に示すように、電極層E3’を溝部分3を含む領域に拡大して配置することも可能である。この場合には溝部分3で亀裂の拡大を抑制することが可能なことに加えて、基板に密着して形成された電極層E3’により基板の亀裂が進みにくくなるため、亀裂の拡大がさらに抑制される。電極層E3’により、幾分、溝部分3が配置されている場所の機械的強度が高くなるが、基板1の溝部分3が形成されていない部分(光導波路のリッジ構造も形成されていない部分)よりは、溝部分3の場所の機械的強度が低くなるため、亀裂の拡大を抑制することが可能となる。
【0031】
図8は、本発明の光導波路素子を含むウエハ状態を示す平面図である。ウエハWには、複数の光導波路素子(素子チップ)が形成されている。各光導波路素子毎には、溝部分3が形成されている。さらに、これらの複数の光導波路素子の外側に、別の溝部分4を設けることも可能である。図8(a)に示すように、ウエハWの外周付近にクラックが発生した場合(×印参照)、実線矢印のように亀裂が進行しても、溝部分4により、溝部分4の内側への亀裂の進行を阻止し、溝部分4の内側に配置される光導波路素子を保護することが可能となる。また、図8(b)に示すように、一部の光導波路素子に亀裂が発生した場合でも、溝部分3により、他の光導波路素子への亀裂の進行を阻止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、基板の破損を防止し、生産性を向上した光導波路素子を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 電気光学効果を有する基板
2 光導波路素子の主要部
23,24 光導波路(リッジ構造)
3,3’ 溝部分
31,32 凸部(基板)
E1〜E3 電極層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8