【課題】耐熱性の低い基板を用いた場合であっても、現像密着性や直線性に優れ、かつ、溶剤耐性やアルカリ耐性等に優れた樹脂膜パターンを形成できる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、耐熱温度が140℃以下の基板上に硬化膜を形成するため使用される感光性樹脂組成物であって、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも2個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)3,4−エポキシシクロヘキシル基を2個以上有するエポキシ化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)溶剤と、を含む。(C)成分の含有量は、固形分の全質量に対して、5〜17質量%である。
(F)エポキシ化合物の硬化剤および/または硬化促進剤を含み、前記(C)成分と前記(F)成分との合計量は、固形分の全質量に対して、6〜24質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
前記(D)成分は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるアシルオキシム系光重合開始剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
耐熱温度が140℃以下の基板上に硬化膜パターンを形成して硬化膜付き基板を製造する方法であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、フォトマスクを介して露光して、現像により未露光部を除去し、140℃以下で加熱して硬化膜パターンを形成する、硬化膜付き基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂について説明する。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含む。アルカリ現像性を付与するための酸価を有し、(B)成分の光重合性モノマーと組み合わせて適正な光硬化性を具備することができる樹脂であれば、特に限定なく用いることができる。
【0016】
本発明の1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)の例には、一般式(6)で表されるような1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a−1)と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)を反応させることにより得られる一般式(3)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂が含まれる。
【0018】
(式(3)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
5は、水素原子またはメチル基であり、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基または直結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(4)で表される置換基である。ただし、Zのうち1個以上は一般式(4)で表される置換基であり、nは1〜20の整数である。)
【0020】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2である。)
【0021】
一般式(3)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、単に、「一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂」ともいう)の製造方法について詳細に説明する。
【0022】
先ず、一般式(6)で表される1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a−1)(以下、単に「一般式(6)で表されるエポキシ化合物(a−1)」ともいう)に不飽和基含有モノカルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)を反応させ、重合性不飽和基を含有するジオール化合物を得る。
【0024】
(式(6)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基または直結合である。)
【0025】
エポキシ化合物(a−1)は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。
【0026】
エポキシ化合物(a−1)の原料として使用されるビスフェノール類の例には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等が含まれる。これらは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記不飽和基含有モノカルボン酸化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸以外に、アクリル酸やメタクリル酸に無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸一無水物を反応させた化合物などが含まれる。
【0028】
上記エポキシ化合物(a−1)と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4−355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、重合性不飽和基を含有するジオール化合物であり、一般式(7)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「一般式(7)で表されるジオール(d)」ともいう)である。
【0030】
(式(7)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基または直結合である。)
【0031】
一般式(7)で表されるジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の付加反応、さらにカルボキシ基との反応性を有する重合性不飽和基を有する単官能エポキシ化合物等を反応させて、一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0032】
溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0033】
また、カルボキシ基とエポキシ基との反応においては触媒を使用することが好ましく、特開平9−325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている。
【0034】
次に、エポキシ化合物(a−1)と(メタ)アクリル酸との反応で得られる一般式(7)で表されるジオール(d)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(b)、およびジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸無水物(c)とを反応させて、一般式(3)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0036】
(式(3)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
5は、水素原子またはメチル基であり、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基または直結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(4)で表される置換基である。ただし、Zのうち1個以上は一般式(4)で表される置換基であり、nは1〜20の整数である。)
【0038】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2である。)
【0039】
一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、一般式(7)で表されるジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には−O−、−S−、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0040】
ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等を用いることができる。
【0041】
鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0042】
ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等を用いることができる。
【0044】
鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。また、上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等が含まれる。
【0045】
テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることがより好ましい。また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
一般式(7)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9−325494号公報には、反応温度が90〜140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0047】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、一般式(7)で表されるジオール(d)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)とのモル比が(d):(b):(c)=1:0.01〜1.0:0.2〜1.0となるように反応させることが好ましい。
【0048】
たとえば、(b)酸一無水物、(c)酸二無水物を用いる場合には、一般式(7)で表されるジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[(d)/〔(b)/2+(c)〕]が0.5〜1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が1.0以下である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオール化合物の含有量を増大させることがないのでアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。一方、モル比が0.5を超える場合には、一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大することを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(d)、(b)および(c)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0049】
また、一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価の好ましい範囲は20〜180mgKOH/gであり、80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が20mgKOH/g以上である場合には、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなり、180mgKOH/g以下である場合には、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。なお、酸価は、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0050】
一般式(3)で表されるアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常1000〜100000であり、2000〜20000であることが好ましく、2000〜6000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量が100000未満である場合には、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度に調整しやすく、アルカリ現像に時間を要しすぎることがない。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、着色材を含まない場合は固形分の全質量に対して30〜80質量%であることが好ましく、着色材を含む場合は2質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーを含む。(B)成分は、硬化膜の密着性をより高くし、また、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性を高くして硬化膜の直線再現性をより高くする。ただし、硬化膜を脆くしにくくし、かつ、組成物の酸価の低下を抑制してアルカリ現像液に対する未露光部の溶解性を高めて、硬化膜の直線再現性をより高くするためには、(B)成分の量は高すぎないことが好ましい。
【0053】
少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー(B)の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。なお、これらは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記エチレン性二重結合を有する化合物としての(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーの例には、多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の中の炭素−炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーが含まれる。具体的には、一般式(8)で表される多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基と一般式(9)で表される多価メルカプト化合物のチオール基とを反応させて得られる樹枝状ポリマーがある。
【0056】
(式(8)中、R
9は水素原子またはメチル基であり、R
10はR
11(OH)
kのk個のヒドロキシル基の内l個のヒドロキシル基を式中のエステル結合に供与した残り部分である。好ましいR
11(OH)
kとしては、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖または分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、またはこれらの多価アルコールまたは多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。kおよびlは独立に2〜20の整数であり、k≧lである。)
【0058】
(式(9)中、R
12は単結合または2〜6価のC1〜C6の炭化水素基であり、pはR
12が単結合であるときは2であり、R
12が2〜6価の基であるときは2〜6の整数である。)
【0059】
一般式(8)で示される多官能(メタ)アクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アルコキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
一般式(9)で示される多価メルカプト化合物の例には、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、ビスジメルカプトエタンチオール、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)などが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
また、上記樹枝状ポリマーの合成に際しては、必要に応じて重合防止剤を加えてよい。重合防止剤の例には、ヒドロキノン系化合物、フェノール系化合物が含まれる。これらの具体例には、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール(BHT)などが含まれる。
【0062】
(A)成分と(B)成分との配合割合は、重量比(A)/(B)で、30/70〜90/10であることが好ましく、60/40〜80/20であることがより好ましい。(A)成分の配合割合が30/70以上であると、光硬化後の硬化膜が脆くなりにくく、また、未露光部において塗膜の酸価が低くなりにくいためにアルカリ現像液に対する溶解性の低下を抑制できる。よって、パターンエッジがギザつくことや、シャープにならないといった不具合が生じにくい。また、(A)成分の配合割合が90/10以下であると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が十分なので、所望する架橋構造の形成を行うことができる。また、樹脂成分における酸価が高過ぎないので、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなりにくいことから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物を含む。(C)3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物の例には、一般式(1)または一般式(2)で表されるエポキシ化合物が含まれる。
【0065】
(式(1)中、Xは単結合または内部にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の有機基である。)
【0067】
(式(2)中、a,b,c,dは、それぞれ独立に0または1であり、a+b+c+d=1〜3である。)
【0068】
ここで、一般式(1)で表されるエポキシ化合物のXは、単結合または内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基である。内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基の例には、2価の炭化水素基、炭化水素基の末端の一つまたは二つにカルボキシ基を有する2価の基等が含まれる。なお、上記炭化水素基は内部にエーテル結合性の酸素原子またはエステル結合を有していてもよい。
【0069】
上記2価の炭化水素基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、sec−ブチレン基、メチルイソブチレン基、へキシレン基、デシレン基、ドデシレン基等の直鎖炭化水素基が含まれる。炭化水素基の末端にカルボキシ基を有する2価の基の例には、一般式(10)〜(13)で表される2価の有機基が含まれる。一般式(10)ではgが1であること、一般式(11)ではhが5かつiが1であること、一般式(12)ではjが2であること、一般式(13)ではkが4かつlが1であることが好ましい。
【0071】
(式(10)中、gは1〜20の整数である。)
【0073】
(式(11)中、hは2〜20の整数であり、iは0〜10の整数である。)
【0075】
(式(12)中、jは1〜20の整数である。)
【0077】
(式(13)中、kは0〜18の整数であり、lは1〜10の整数である。)
【0078】
また、一般式(1)で表されるエポキシ化合物の例には、一般式(14)〜(20)で表されるエポキシ化合物が含まれる。これらのエポキシ化合物は、同時に2種類以上を併用してもよい。一般式(14)〜(20)で表されるエポキシ化合物の中では、入手の容易さおよび硬化膜の物性から一般式(17)または一般式(18)で表されるエポキシ化合物であり、gが1であり、hが5かつiが1であることが好ましい。
【0083】
(式(17)中、gは1〜20の整数である。)
【0085】
(式(18)中、hは2〜20の整数であり、iは0〜10の整数である。)
【0087】
(式(19)中、jは1〜20の整数である。)
【0089】
(式(20)中、kは0〜18の整数であり、lは1〜10の整数である。)
【0090】
(C)成分のエポキシ化合物の含有量は、固形分の全質量に対して、5〜17質量%であることが好ましい。(C)成分のエポキシ化合物の含有量を5質量%以上とすることにより耐溶剤性を持たせることができ、(C)成分のエポキシ化合物の含有量を17質量%以下とすることにより耐溶剤性を持たせた上、パターンの基板との密着性を十分に確保できる。
【0091】
また、(C)成分の中では、一般式(2)で表されるエポキシ化合物が好ましい。一般式(2)で表される4個のエポキシシクロヘキシル基を分子内に有するエポキシ化合物を用いることにより、硬化剤および硬化促進剤を用いなくても硬化膜(塗膜)の耐溶剤性を向上させることができる。
【0092】
(C)成分のエポキシ化合物のエポキシ当量は100〜300g/eqであることが好ましい。また、(C)成分のエポキシ化合物の数平均分子量(Mn)は100〜5000であることが好ましい。上記エポキシ当量が100〜300g/eqであり、上記エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)は100〜5000であると、現像時の現像密着性を確保した上で、耐溶剤性のよい硬化膜とすることができる。また、エポキシ当量が300g/eq以下であると、現像速度が適正な範囲となる感光性樹脂組成物の設計が可能であり、硬化膜の耐溶剤性も確保できる。また、1分子中にエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を用いることがより好ましい。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤を含む。
【0094】
(D)成分の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2、4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾ−ル、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾア−ト、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが含まれる。なお、これら光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
特に、着色材を含む感光性樹脂組成物とする場合には、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。具体的化合物群の例には、一般式(5)または一般式(21)で示されるO−アシルオキシム系光重合開始剤が含まれる。これら化合物群の中で、着色材を高顔料濃度で用いる場合および遮光膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるO−アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0097】
(式(5)中、R
6、R
7は、それぞれ独立に、C1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基、C7〜C20のアリールアルキル基またはC4〜C12の複素環基であり、R
8はC1〜C15のアルキル基、C6〜C18のアリール基またはC7〜C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C1〜C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。)
【0099】
(式(21)中、R
13およびR
14はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4〜10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R
15は独立して炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の−CH
2−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。さらに、これらR
13〜R
15の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0100】
(D)成分の含有量は(A)成分と(B)成分の全質量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。(D)成分の含有量が0.1質量%以上であると、適度な光重合の速度を有するので、感度の低下を抑制できる。また、(D)成分の含有量が30質量%以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0101】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)溶剤を含む。
【0102】
(E)感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシ−1−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、ジアセトンアルコール等のアルコール類;α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が含まれる。これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。これらの溶剤は、塗布性等の必要特性とするためにこれらを単独または2種類以上を併用してもよい。
【0103】
(E)成分の含有量は目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物溶液中において60〜90質量%であることが好ましい。
【0104】
本発明の感光性樹脂組成物は、(F)エポキシ化合物の硬化剤および/または硬化促進剤を含んでもよい。本発明の感光性樹脂組成物が140℃以下の低温で焼成する組成物であるときは(C)成分の硬化が不足しやすいため、感光性樹脂組成物は、(C)成分を十分に硬化させるために(F)成分を含むことが好ましい。
【0105】
(F)成分であるエポキシ化合物の硬化剤の例には、アミン系化合物、多価カルボン酸化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。本発明においては多価カルボン酸化合物を好ましく用いることができる。
【0106】
多価カルボン酸化合物の例には、多価カルボン酸、多価カルボン酸の無水物、および多価カルボン酸の熱分解性エステルが含まれる。多価カルボン酸とは1分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物をいい、例えば、コハク酸、マレイン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、フタル酸、3,6−ジヒドロフタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等が含まれる。多価カルボン酸の無水物の例には、上記化合物の酸無水物が含まれる。これは分子間酸無水物でもよいが、一般には分子内で閉環した酸無水物が用いられる。多価カルボン酸の熱分解性エステルの例には、上記化合物のt−ブチルエステル、1−(アルキルオキシ)エチルエステル、1−(アルキルスルファニル)エチルエステル(ただし、アルキルは炭素数1〜20の飽和または不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基は分岐構造や環構造を有していてもよく、任意の置換基で置換されていてもよい)等が含まれる。また、多価カルボン酸化合物としては2つ以上のカルボキシ基を有する重合体または共重合体も用いることができ、そのカルボキシ基は無水物または熱分解性エステルであってもよい。
【0107】
また、上記重合体または共重合体の例には、(メタ)アクリル酸を構成成分として含む重合体または共重合体、無水マレイン酸を構成成分として含む共重合体、テトラカルボン酸二無水物をジアミンやジオールと反応させて酸無水物を開環させた化合物等が含まれる。これらのうち、フタル酸、3,6−ジヒドロフタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸の各無水物を用いることが好ましい。多価カルボン酸化合物をエポキシ化合物の硬化剤として用いる場合の配合比率としては、エポキシ化合物のエポキシ基の1モルに対して、多価カルボン酸化合物のカルボキシ基が0.5〜1.0モル、より好ましくは0.6〜0.95モルになるように配合するのがよい。
【0108】
(F)成分であるエポキシ化合物の硬化促進剤としては、エポキシ化合物の硬化促進剤、硬化触媒、潜在性硬化剤等として知られる公知の化合物を利用することができる。エポキシ化合物の硬化促進剤の例には、三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。上記硬化促進剤の中では、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンもしくは1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンまたはそれらの塩であることが好ましい。
【0109】
上記硬化促進剤の添加量は、エポキシ化合物100質量部に対して0.05〜2質量部であることが好ましく、熱硬化後の樹脂膜パターンの耐薬品性の発現状況等により添加量を調整することができる。
【0110】
また、(C)成分と(F)成分との合計量は、固形分の全質量に対して、6〜24質量%であることが好ましく、8〜22質量%であることがより好ましい。十分な量の(C)成分および(F)成分を含むことにより、形成される硬化膜の線幅再現性、直線再現性、耐溶剤性を十分に高めることができる。
【0111】
また(C)成分のエポキシ基の当量数E
epと(F)成分のエポキシ化合物の硬化剤の当量数との比率は、E
ep/硬化剤=1.5〜2.5であることが好ましい。E
ep/硬化剤が1.5以上であるとエポキシ化合物を十分に硬化させることができるので、未反応のエポキシ化合物が感光性樹脂組成物中に残るのを抑制できる。また、E
ep/硬化剤が2.5以下であると、硬化膜の密着性および直線再現性を十分に高めることができる。
【0112】
本発明の感光性樹脂組成物は、(G)着色材を含んでもよい。
【0113】
上記着色材は、有機顔料または無機顔料からなる群から選択される着色材であることが好ましく、有機黒色顔料または無機黒色顔料からなる群から選択される遮光材であることがより好ましい。(G)成分である着色材の含有量は、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して20〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。着色材が、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して20質量%以上であると、遮光性を十分に得ることができる。着色材が、感光性樹脂組成物中の固形成分に対して80質量%以下であると、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少することがないため、所望する現像特性および膜形成能を得ることができる。
【0114】
(G)成分である黒色有機顔料の例には、ペリレンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラックなどが含まれる。混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合して擬似黒色化されたものが含まれる。黒色無機顔料としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラックなどが含まれる。これらの(G)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記顔料の中では、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との親和性の観点から、カーボンブラックであることが好ましい。また、有機顔料を用いる場合には、平均粒子径50nm以下の微分散を達成するため、微粒化加工がされたもの(BET法による比表面積が50m
2/g以上であるもの)が好ましい。
【0115】
上記(G)成分として使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0116】
また、(G)成分の着色材は、予め溶剤に分散剤とともに分散させて着色材分散液としたうえで、着色膜用感光性樹脂組成物として配合することが好ましい。ここで、分散させる溶剤は、上述したものを使用できる。上述した溶剤の中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等が好ましい。
【0117】
上記分散剤は、各種高分子分散剤等の公知の分散剤を使用することができる。分散剤の例には、従来顔料分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)を特に制限なく使用することができる。上記分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)等が含まれる。特に、顔料への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量が1千〜10万であるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。上記分散剤の配合量については、着色材に対して1〜30質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。
【0118】
また、着色材分散液を調製する際に、上記分散剤に加えて(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の一部を共分散させてもよい。(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の一部を共分散させることにより、露光感度を高感度に維持しやすくし、現像時の密着性が良好で残渣の問題も発生しにくい感光性樹脂組成物とすることができる。その際の(A)成分の配合量は、着色材分散液中2〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。(A)成分が、2質量%以上であると共分散による感度向上、密着性向上、残渣低減といった効果を得ることができる。(A)成分が、20質量%以下であると、特に着色材の含有量が大きいときにも、着色材分散液の粘度が高くなりすぎることなく、均一に分散させることができる。得られた着色材分散液は、(A)〜(F)成分と混合し、必要に応じて他成分を添加して製膜条件に適した粘度に調整することにより、本発明の製造方法に用いる感光性樹脂組成物とすることができる。
【0119】
本発明の感光性樹脂組成物は、(H)シリカ粒子を含むことが好ましい。
【0120】
(H)成分であるシリカ粒子は、気相反応または液相反応といった製造方法や、形状(球状、非球状)は特に制限されない。また、シランカップリング剤処理等で表面処理を行ったシリカ粒子も特に制限なく使用することができる。
【0121】
本発明で使用する(H)成分であるシリカ粒子の種類は特に限定されない。中実シリカを用いてもよいし、中空シリカ粒子を用いてもよい。なお、「中空シリカ粒子」とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子のことである。
【0122】
上記シリカ粒子を使用することにより、当該シリカ粒子を含む遮光膜の屈折率を低くすることができる。
【0123】
上記シリカ粒子の平均粒子径は、1〜95nmであることが好ましく、5〜90nmであることがより好ましい。平均粒子径の小さいシリカ粒子を用いることで、細線パターン側面のがたつきを抑制することができる。また、硬化膜(塗膜)表面の凹凸を低減する効果があり、硬化膜(塗膜)面内の反射率のばらつきを抑制することができる。
【0124】
また、上記シリカ粒子の含有量は、感光性樹脂組成物の全質量に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.1〜2質量部であることがより好ましい。シリカ粒子の含有量が上記範囲内にあると、低反射率化を達成しつつ、良好なパターニング性を担保することができる。
【0125】
上記シリカ粒子の平均粒子径は、動的光散乱法の粒度分布計「粒径アナライザーFPAR−1000」(大塚電子株式会社製)を用い、キュムラント法により測定することができる。
【0126】
また、上記シリカ粒子の屈折率は1.10〜1.47のものを用いることができる。通常のシリカ粒子の屈折率1.45〜1.47のものを用いることができる他、低い屈折率を有する中空シリカ粒子を使用することにより、通常のシリカ粒子のみを含む遮光膜の屈折率よりも遮光膜の屈折率をより低くすることもできる。
【0127】
また、シリカ粒子の屈折率は、上記シリカ粒子を粉末状に処理したものと、屈折率が既知の標準屈折液を混合することにより得られた透明の混合液から求めることができる。この場合、上記混合液の標準屈折液の屈折率をシリカ粒子の屈折率とする。なお、上記シリカ粒子の屈折率は、アッベ屈折率計を用いて測定することができる。
【0128】
また、硬化膜(塗膜)上に形成される層と形成される硬化膜(塗膜)との屈折率の差によって生じる反射を抑制することができるので、反射防止膜等を別途設けなくても反射を抑制することができる。
【0129】
上記シリカ粒子の形状は、真球状であってもよいし、楕円形状であってもよい。本発明で使用するシリカ粒子の形状は真球状であることが好ましい。
【0130】
上記シリカ粒子は、真球度が1.0〜1.5であることが好ましい。シリカ粒子の真球度がこの範囲であれば、粒子形状は真球に近くなる。このため、膜厚の薄い遮光膜中に均質に充填できるようになり、被膜表面平滑性を維持しながら、上記シリカ粒子が被膜表面から外部に露出しない遮光膜を形成できる。そのため、屈折率が低く、十分な強度を有す遮光膜を得ることができる。このような膜面側の低反射を実現できる遮光膜を得ようとする場合、光重合開始剤の選択も重要な要素であり、遮光膜において一般的に使用されるオキシムエステル系光重合開始剤を使用するとともに、固形分中0.5〜5%のチオール化合物を添加することが好ましい。
【0131】
上記シリカ粒子の真球度は、粒子の最長径と最短径の割合(任意の100個のシリカ粒子の平均値)から求めることができる。ここで、シリカ粒子の最長径と最短径とは、シリカ粒子を透過型電子顕微鏡で撮影し、得られた顕微鏡写真からシリカ粒子の最長径と最短径を測定して求められた値である。
【0132】
上記(H)成分であるシリカ粒子は溶剤に分散させたシリカ粒子分散体として他の配合成分と混合することができる。分散剤は、顔料(遮光成分)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0133】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。ここで、熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填材の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0134】
本発明の硬化膜の製造方法は、耐熱温度が140℃以下の基板上に上述した感光性樹脂組成物を塗布し、フォトマスクを介して露光して、現像により未露光部を除去し、140℃以下で加熱して所定の硬化膜パターンを形成する、製造方法である。
【0135】
本発明の硬化膜の製造方法に用いる基板の例には、耐熱温度が140℃以下のPET(ポリエチレンテレフタラート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂製フィルム(プラスチック基板)、樹脂製フィルム上にITOや金などの電極が蒸着あるいはパターニングされたものも基板などが含まれる。ここで、「耐熱温度」とは、基板上への硬化膜のパターン形成等の加工プロセスにおいて基板が暴露しても変形等の問題が生じない温度のことをいう。なお、樹脂製フィルムは延伸処理の程度によっても変化するが、少なくともガラス転移温度(Tg)を超えないことが必要となる。
【0136】
また、本発明の硬化膜の製造方法に用いる他の基板の例には、ガラス基板、シリコンウェハおよびポリイミドフィルム等のように基板自体の耐熱性は高いが基板上に耐熱性の低い薄膜等を形成したものが含まれる。他の基板の具体例には、ガラス、シリコンウェハまたはポリイミドフィルム上に、有機EL(OLED)または有機薄膜トランジスタ(TFT)を形成した有機デバイス付基板等が含まれる。なお、本発明で対象とする耐熱性の低い基板の耐熱温度は、樹脂の種類やデバイスによっても異なるが、80〜140℃であることが好ましい。なお、有機デバイス付基板については、有機デバイス形成後に保護膜、保護フィルム等を形成したものも含む。これらの保護膜、保護フィルム自体の耐熱性が150℃以上であっても、有機デバイスの機能を担保するためには実質的に140℃以下の耐熱性しかない場合には、有機デバイス付基板に該当するためである。
【0137】
本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する方法は、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば、60〜110℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)で1〜3分間行われる。
【0138】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置およびその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。好ましくは、波長365nmの光を一定量照射することにより光硬化させる。
【0139】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250〜450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択できるが、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像温度は、20〜35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0140】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液の例には、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等が含まれる。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜3.0質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜28℃の温度で現像することが好ましい。また、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0141】
現像後、80〜140℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)および20〜90分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われることが好ましく、温度90〜120℃、加熱時間30〜60分の条件で行われることがより好ましい。上記ポストベークは、パターニングされた硬化膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【実施例】
【0142】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
まず、一般式(3)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0144】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W
2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0)
【0145】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0146】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0147】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH−2000(2本)+TSKgelSuper H−3000(1本)+TSKgelSuper H−4000(1本)+TSKgelSuperH−5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS−オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0148】
[モル吸光係数]
アシルオキシム系光重合開始剤のモル吸光係数は、紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。
【0149】
[平均粒子径]
シリカ粒子の平均粒子径は、動的光散乱法の粒度分布計「粒径アナライザーFPAR−1000」(大塚電子株式会社製)を用い、キュムラント法により測定した。
【0150】
また、合成例および比較例で使用する略号は次のとおりである。
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AA :アクリル酸
SA :無水コハク酸
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物)
BPDA :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP:トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
TEA :トリエチルアミン
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0151】
[合成例1]
還留冷却器付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。このフラスコ中にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35モル)、GMA(49.8g、0.35モル)、St(31.2g、0.30モル)にAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間撹拌し、共重合体溶液を得た。
【0152】
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、グリシジル基の95%)、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を添加し、120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え120℃で4時間反応させ、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂溶液(A)−1を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0153】
[合成例2]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(114.4g、0.23モル)、AA(33.2g、0.46モル)、PGMEA(157.0g)およびTEAB(0.48g)を仕込み、100〜105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(35.3g、0.12モル)、THPA(18.3g、0.12モル)を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)−2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0154】
上記の配合成分を表1〜7に示す割合で配合して、実施例1〜43および比較例1〜36の感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1〜7の数値はすべて質量部を表す。表1〜7においては、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を樹脂として記載している。
【0155】
(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)−1:上記合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
(A)−2:上記合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.1質量%)
【0156】
(光重合性モノマー)
(B):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96〜115)、日本化薬株式会社製)
【0157】
(エポキシ化合物)
(C)−1:3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(エポキシ当量130、株式会社ダイセル製)
(C)−2:ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε−カプロラクトン(エポキシ当量197、株式会社ダイセル製)
(C)−3:HiREM−1(エポキシ当量113、四国化成工業株式会社製)
(C)−4:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(EHPE3150、エポキシ当量180、株式会社ダイセル製)
(C)−5:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(EPPN−501H、エポキシ当量160、日本化薬株式会社製)
【0158】
(光重合開始剤)
(D)−1:オキシムエステル系光重合開始剤(アデカアークルズNCI−831、株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)
(D)−2:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
【0159】
(溶剤)
(E)−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(E)−2:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)
【0160】
(硬化剤および硬化促進剤)
(F)−1:無水トリメリット酸
(F)−2:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU(R)、サンアプロ株式会社製)を2.0質量%含有するPGMEA溶液
【0161】
(着色材)
(G)−1:樹脂被覆カーボンブラック25.0質量%、高分子分散剤5.0質量%のPGMEA溶剤の顔料分散体(固形分濃度30.0質量%)
(G)−2:カーボンブラック25.0質量%、高分子分散剤2.0質量%、分散樹脂(合成例2のアルカリ可溶性樹脂(A)−2)8.0質量%のPGMEA溶剤の顔料分散体(固形分濃度35.0質量%)
【0162】
(H)−1:シリカPGMEA分散液「YA010C」(株式会社アドマテックス製、固形分濃度20質量%、平均粒子径10nm)
(H)−2:シリカPGMEA分散液「YA050C」(株式会社アドマテックス製、固形分濃度40質量%、平均粒子径50nm)
(H)−3:シリカPGMEA分散液「YC100C」(株式会社アドマテックス製、固形分濃度50質量%、平均粒子径100nm)
(H)−4:中空シリカイソプロパノール分散液(日揮触媒化成株式会社製、固形分濃度20質量%、平均粒子径、75nm、空隙率46体積%)
【0163】
(界面活性剤)
(I):メガファックF−475(DIC株式会社製、「メガファック」は同社の登録商標)
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
【表6】
【0170】
【表7】
【0171】
[評価]
実施例1〜43、比較例1〜36の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜(塗膜)を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表8〜13に示す。
【0172】
(現像特性評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
表1〜7に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm
2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、露光ギャップを100μmに調整し、上記硬化膜(塗膜)上にライン/スペース=10μm/50μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで80mJ/cm
2の紫外線を照射して、感光部分の光硬化反応を行った。
【0173】
次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm
2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から10秒および20秒間の現像処理を行った後、5kgf/cm
2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて85℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1〜43、および比較例1〜36に係る硬化膜付き基板を得た。
【0174】
[現像特性評価]
(パターン線幅)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後のパターン線幅を測長顕微鏡「XD−20」(株式会社ニコン製)を用いてマスク幅10μmのパターン線幅を測定した。なお、パターン線幅の評価は、BT+10秒の場合とBT+20秒の場合とで行った。
【0175】
(評価基準)
○:パターン線幅が10±2μmの範囲内である
×:パターン線幅が10±2μmの範囲外である
【0176】
(パターン直線性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)の10μmマスクパターンを光学顕微鏡を用いて観察した。なお、パターン直線性の評価は、BT+10秒の場合とBT+20秒の場合とで行った。なお、△以上を合格とした。
【0177】
(評価基準)
○:パターンエッジ部分のギザつきが認められない
△:パターンエッジ部分のギザつきが一部に認められる
×:パターンエッジ部分のギザつきが全体にわたって認められる
【0178】
(パターン密着性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の10μmマスクパターンを光学顕微鏡を用いて観察した。なお、パターン密着性の評価は、BT+20秒の現像条件で行い、△以上を合格とした。
【0179】
(評価基準)
○:パターンに剥離が見られない
△:パターンのごく一部に剥離が見られる
×:パターンの大部分が剥離している
【0180】
(光学濃度(OD)評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
表1〜7に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm
2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、露光ギャップを100μmに調整し、上記硬化膜(塗膜)上にライン/スペース=10μm/50μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで80mJ/cm
2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0181】
次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm
2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間の現像処理を行った後、5kgf/cm
2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて85℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例9〜43、および比較例9〜36に係る硬化膜(塗膜)を得た。
【0182】
[光学濃度評価]
(評価方法)
マクベス透過濃度計を用いて、作製した硬化膜(塗膜)の光学濃度(OD)を評価した。また、基板に形成した硬化膜(塗膜)の膜厚を測定し、光学濃度(OD)の値を膜厚で割った値をOD/μmとした。
【0183】
光学濃度(OD)は次の数式(1)で算出した。
光学濃度(OD)=−log
10T(1)
(Tは透過率を示す)
【0184】
[耐溶剤性評価]
(評価方法)
光学濃度(OD)評価用と同様にして作製した硬化膜(塗膜)の表面をPGMEAに浸漬したウエスで連続して20往復擦った。なお、△以上を合格とした。
【0185】
(評価基準)
○:硬化膜(塗膜)の表面に溶解が見られず、傷も付いていない
△:硬化膜(塗膜)の表面のごく一部に溶解が見られ、ごく一部に傷も付いている
×:硬化膜(塗膜)の表面が軟化しており、大部分に傷が付いている
【0186】
(反射率評価用の硬化膜(塗膜)の作製)
表1〜7に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm
2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて85℃で1分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、熱風乾燥機を用いて85℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例9〜43、比較例9〜36に係る硬化膜付き基板を得た。
【0187】
[反射率評価]
(評価方法)
作製した硬化膜(塗膜)付き基板に対して、紫外可視近赤外分光光度「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて入射角2°で硬化膜(塗膜)側の反射率を測定した。
【0188】
【表8】
【0189】
【表9】
【0190】
【表10】
【0191】
【表11】
【0192】
【表12】
【0193】
【表13】
【0194】
実施例25〜32の評価結果から、(G)成分である着色材の含有量を感光性樹脂組成物中の固形分に対して20〜80質量%とすることにより、遮光性を十分に得ることができるとともに、所望する現像特性(パターン線幅、パターン直線性)を得られることがわかった。これは、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が、現像特性、特にパターン直線性を適正にするのに十分な量となるためであると考えられる。
【0195】
実施例1〜43および比較例1〜36の評価結果から、固形分中における(C)成分の質量が5〜17質量%の範囲にあると、耐溶剤性を満たしつつ、パターンの密着性に優れた硬化膜(塗膜)が得られることがわかった。一方、(C)成分の質量が全固形分の4質量%以下であれば硬化膜(塗膜)の耐溶剤性が不足し、17質量%を超えれば硬化膜(塗膜)の耐溶剤性は満足するが、パターンの密着性が低下し、現像時のパターン剥離が顕著となることがわかった。
【0196】
比較例33〜36の結果から、(C)成分としてエポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物を適用することで、グリシジル基を有するエポキシ化合物を適用した系よりも、耐溶剤性に優れた硬化膜(塗膜)が得られることがわかった。
【0197】
(C)成分としてエポキシシクロヘキシル基を有する(C)−1〜(C)−3を添加した実施例1〜43の硬化膜(塗膜)は総じて耐溶剤性に優れていることがわかった。中でも、(C)成分として4個のエポキシシクロヘキシル基を分子内に有する(C)−2を用いると、硬化膜(塗膜)の耐溶剤性の向上に効果的であることがわかった。
【0198】
実施例39〜43の結果から、(H)シリカ粒子を添加することで塗膜面から測定する反射率を低減できることがわかった。特に、平均粒子径が1〜95nmの平均粒子径が小さい中実・中空シリカ粒子を用いることで、硬化膜(塗膜)表面の凹凸を低減でき、硬化膜(塗膜)面内の反射率のばらつきを抑制することができるためであると考えられる。