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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-16679(P2020-16679A)
(43)【公開日】2020年1月30日
(54)【発明の名称】光学系、光学機器、光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20191227BHJP
【FI】
   G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-137476(P2018-137476)
(22)【出願日】2018年7月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(72)【発明者】
【氏名】籔本 洋
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087MA07
2H087MA08
2H087MA09
2H087PA10
2H087PA19
2H087PA20
2H087PB12
2H087PB13
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA39
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA32
2H087RA43
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】合焦領域全体にわたり諸収差、特に色収差の変動を抑えた小型軽量な合焦群を備えた光学系、光学装置及び光学系の製造方法を提供する。
【解決手段】合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、次の条件式を満足する特定レンズを少なくとも1枚有する光学系。1.700 < nd、60.00 < νd。但し、 nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、以下の条件式を満足する特定レンズを少なくとも1枚有する光学系。
1.700 < nd
60.00 < νd
但し、
nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、
νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【請求項2】
前記特定レンズは光学軸をもつ単結晶により構成され、前記光学軸と光学系の光軸とのずれ角度が、以下の条件式を満足する請求項1に記載の光学系。
|θ| < 10.0°
但し、
θ:前記光学軸と光学系の光軸とのずれ角度。
【請求項3】
以下の条件式を満足する請求項1または2に記載の光学系。
−1.00 < βγ < 1.00
但し、
βγ:無限遠合焦状態での前記特定レンズを含むレンズ群よりも像側の光学系全体の合成倍率。
【請求項4】
合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群を、前記特定レンズを含むレンズ群を含めて、少なくとも2つ以上備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
合焦に際して光軸方向に独立して移動する2つのレンズ群を備え、無限遠物体から近距離物体への合焦に際して前記2つのレンズ群間の距離が小さくなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学系。
2ω < 50.0°
但し、
ω:最大撮影半画角。
【請求項7】
以下の条件式を満足する請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学系。
fp < 0.00
但し、
fp:前記特定レンズの焦点距離。
【請求項8】
以下の条件式を満足する請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学系。
0.10 < (−fp)/f < 10.00
但し、
fp:前記特定レンズの焦点距離、
f:無限遠合焦状態における全系の焦点距離。
【請求項9】
以下の条件式を満足する請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学系。
ff < 0.00
但し、
ff:前記特定レンズを含むレンズ群の焦点距離。
【請求項10】
以下の条件式を満足する請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学系。
0.10 < (−ff)/f < 10.00
但し、
ff:前記特定レンズを含むレンズ群の焦点距離、
f:無限遠合焦状態における全系の焦点距離。
【請求項11】
前記特定レンズより物体側に少なくとも一枚の正レンズを有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
以下の条件式を満足する請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学系。
f/d0 < 0.100
但し、
d0:物体から最も物体側のレンズ面の頂点までの光軸上の距離の内で最大距離、
f:無限遠合焦状態における全系の焦点距離。
【請求項13】
以下の条件式を満足する請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学系。
|β| < 0.50
但し、
β:近距離合焦状態における光学系全体の結像倍率。
【請求項14】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群と、
前記特定レンズを含むレンズ群と、
後群と、を有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項15】
前記後群は物体側から順に、
合焦に際して不動のレンズ群と、
合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群と、を有する請求項14に記載の光学系。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の光学系を備えて構成される光学機器。
【請求項17】
合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、以下の条件式を満足する特定レンズを少なくとも1枚配置する光学系の製造方法。
1.700 < nd
60.00 < νd
但し、
nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、
νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ等の撮影光学系に適した光学系、光学機器、光学系の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ材料の軽量化やモータの小型化などに伴って、合焦に際して移動する合焦群の小型軽量化が望まれている。合焦群を小型軽量化するためには、合焦群全体をシンプルに構成するとともに合焦に伴う収差変動をできるだけ少なくしなくてはならない。
従来から合焦に伴う諸収差、特に色収差の変動を抑えるために屈折率や分散の異なる2つ以上の凸レンズと凹レンズを組み合わせる方法が広く用いられてきた(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この方法ではたとえば負のパワーを持つ合焦群の場合、基準となる凹レンズに対して、より分散の高い凸レンズを色消しレンズとして組み合わせて色収差の補正を行わなくてはならない。
そのため、レンズ枚数の増加や、凸レンズのパワーを相殺する分だけ凹レンズのパワーが必要となることによるサグ量の増大などにより、合焦群の体積が大きくなって大型重量化する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−5133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、合焦群に適切な光学材料を用いたり、それに加え光学系全体のパワー配置の工夫をしたりすることによって、合焦領域全体にわたり諸収差、特に色収差の変動を抑えた小型軽量な合焦群を備えた光学系、光学装置及び光学系の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、以下の条件式を満足する特定レンズを少なくとも1枚有する光学系を提供する。
1.700 < nd
60.00 < νd
但し、
nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、
νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【0007】
また、本発明は、前記光学系を備えて構成される光学機器を提供する。
【0008】
また、本発明は、合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、以下の条件式を満足する特定レンズを少なくとも1枚配置する光学系の製造方法を提供する。
1.700 < nd
60.00 < νd
但し、
nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、
νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、合焦群に適切な光学材料を用いたり、それに加え光学系全体のパワー配置の工夫をしたりすることによって、合焦領域全体にわたり諸収差、特に色収差の変動を抑えた小型軽量な合焦群を備えた光学系、光学装置及び光学系の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施例の無限遠合焦状態における光学系断面図である。
図2】第1実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
図3】第1実施例の中間距離合焦状態(β=−0.033)における諸収差図である。
図4】第1実施例の近距離合焦状態(β=−0.124)における諸収差図である。
図5】第2実施例の無限遠合焦状態における光学系断面図である。
図6】第2実施例の無限遠合焦状態における諸収差図である。
図7】第2実施例の中間距離合焦状態(β=−0.033)における諸収差図である。
図8】第2実施例の近距離合焦状態(β=−0.136)における諸収差図である。
図9】光学系を搭載したカメラの構成の一例を示す図である。
図10】光学系の製造方法の一例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の光学系、光学機器、及び光学系の製造方法について説明する。
【0012】
本願の光学系は、合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、次の条件式(1)、(2)を満足する特定レンズを少なくとも1枚有する。なお、本発明においては、他のレンズと区別するため、条件式(1)、(2)を満足するレンズを特定レンズと称する。
1.700 < nd (1)
60.00 < νd (2)
但し、
nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、
νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【0013】
条件式(1)は、特定レンズを構成する硝材のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を規定する式である。当該光学系が条件式(1)を満足する硝材からなる特定レンズを合焦群に少なくとも1枚有することにより、合焦領域全体にわたって諸収差を良好に補正することができる。また、特定レンズの曲率をゆるくしたり、レンズ枚数を減らしたりして合焦群の体積を少なくすることや、合焦群のパワーを強くすることで合焦の際の移動量を少なくできるので、合焦群全体の小型軽量化を図ることができる。
これに対して、当該光学系が条件式(1)を満足する特定レンズを合焦群に含まない場合、少ないレンズ枚数で、合焦領域全体にわたり諸収差の変動を抑えることが困難になる。
そのため、合焦領域全体にわたって良好な光学性能を実現するには、合焦群のパワーを維持するためにレンズ枚数を増加させたり、レンズの曲率を大きくしたりする必要があり、そうするとレンズ群の体積が大きくなったり、レンズのサグ量が増大してレンズが重くなるので、当該光学系の小型軽量化を図ることが困難になる。
【0014】
なお、本発明の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を1.710とすることが好ましく、1.720、1.730、1.740、1.750、さらに1.760であることがより好ましい。このように条件式(1)の下限値が大きいほど、合焦領域全体にわたって良好な光学性能を得ることができる。
【0015】
条件式(2)は、特定レンズを構成する硝材のd線を基準とするアッベ数を規定する式である。当該光学系が条件式(2)を満足する硝材からなる特定レンズを少なくとも1枚有することにより、合焦領域全体にわたり軸上色収差の変動や倍率色収差の変動を抑えることができ、また、合焦群全体の小型軽量化を図ることができる。
これに対して、当該光学系が条件式(2)を満足する特定レンズを合焦群に含まない場合、少ないレンズ枚数で、合焦領域全体にわたり軸上色収差の変動や倍率色収差の変動を抑えることが困難になる。そのため、合焦領域全体にわたって良好な光学性能を実現するには、レンズ枚数を増加させたり、色消しの為のレンズ体積を増やしたりする必要があり、そうするとレンズ群全体の体積の増大を招くため、当該光学系の小型軽量化を図ることが困難になる。
【0016】
なお、本発明の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値が62.00,65.00.68.00、70.00、71.00、さらに72.00であることがより好ましい。このように条件式(2)の下限値が大きいほど、合焦領域全体にわたって良好な光学性能を得ることができる。
【0017】
これら条件式(1)、(2)を満たすことにより、合焦領域全体にわたり諸収差、特に色収差の変動を抑え、合焦群全体の小型軽量化を図ることができる。
条件式(1)、(2)を満足する特定レンズとしては、例えばサファイア(nd=1.768、νd=72.27)やスピネル(nd=1.715、νd=63.6)が該当する。
【0018】
また本願の光学系は、前記特定レンズが光学軸をもつ単結晶により構成され、前記光学軸と光学系の光軸とのずれ角度が、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
|θ| < 10.0° (3)
但し、
θ:前記光学軸と光学系の光軸とのずれ角度。
【0019】
条件式(1)、(2)を満たす硝材として広く実用化されている一軸性結晶材、例えばサファイアを用いる場合にはその強い異方性のため多結晶では散乱が強く光学材料として使用できない。そのため単結晶であることが望ましい。しかし、その場合光学系の光軸と光学軸(結晶軸)を一致させると、サジタル方向成分は複屈折の影響を受けないのに対し、メリジオナル方向成分は複屈折の影響で常光線と異常光線とで異なる挙動をするため光線が分離してしまう。条件式(3)の範囲内であればその分離した光線による結像性能の悪化を抑えることができる。
条件式(3)の上限値を上回ると、光学系が回転対称でなくなり、好ましくない。
【0020】
この効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値が7.00°、5.00°、3.00°、2.00°、1.50°、1.00°、0.50°、0.20°、さらに0.10°であることがより好ましい。
【0021】
また本願の光学系は、次の条件式(4)を満足することが望ましい。
−1.00 < βγ < 1.00 (4)
但し、
βγ:無限遠合焦状態での前記特定レンズを含むレンズ群よりも像側の光学系全体の合成倍率。
【0022】
条件式(4)は詳述すると、無限遠合焦状態での特定レンズを含むレンズ群の像側に隣接して配置されるレンズ群の物体側面から最も像側に配置されるレンズ群の像側面に至るまでの全てのレンズ群から構成される光学系の合成倍率を規定したものである。
条件式(4)の範囲内にあれば、合焦領域全体にわたり像面上の結像状態を良好に保つことができる。特に特定レンズが異方性をもつ結晶から構成されている場合には、条件式(4)を満足する範囲内であれば複屈折性による通常光線と異常光線の結像状態の差が像面上で拡大されることによる光学性能の低下を抑えることができる。
【0023】
条件式(4)の下限値を下回ると、特定レンズを含むレンズ群によって生じる収差が像面上で拡大され好ましくない。
この効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値が−0.80、−0.70、−0.60、−0.50、−0.40、−0.30、−0.20、さらに−0.10であることがより好ましい。
【0024】
条件式(4)の上限値を上回ると、特定レンズを含むレンズ群によって生じる収差が像面上で拡大され好ましくない。
この効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値が0.80、0.70、0.60、0.50、0.40、0.30、0.20、さらに、0.10であることがより好ましい。
【0025】
また本願の光学系は、合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群を、前記特定レンズを含むレンズ群を含めて、少なくとも2つ以上備えることが望ましい。
【0026】
上記のように合焦時に移動する2つ以上のレンズ群を備える構成とすることにより、合焦に伴う収差変動を抑えることができ、合焦領域全体にわたり良好な光学性能を備えた光学系を得ることができる。
【0027】
ここで、2つの合焦群として後述する第1実施例では、第2レンズ群G2及び第4レンズ群G4となっているが、この限りではない。
【0028】
また本願の光学系は、合焦に際して光軸方向に独立して移動する2つのレンズ群を備え、無限遠物体から近距離物体への少なくとも一部の合焦に際して前記2つのレンズ群間の距離が小さくなることが望ましい。
【0029】
上記のように合焦時にレンズ群間の距離が小さくなるように独立して移動する2つのレンズ群を備える構成とすることにより、合焦に伴う像倍率の変化を抑えることができ、合焦領域全体にわたり極めて良好な光学性能を備えた光学系を得ることができる。
ここで、2つの合焦群として後述する第1実施例では、第2レンズ群G2及び第4レンズ群G4となっているが、この限りではない。
【0030】
また本願の光学系は、次の条件式(5)を満足することが望ましい。
2ω < 50.0° (5)
但し、
ω:最大撮影半画角。
【0031】
条件式(5)は、この光学系の半画角の適切な値を規定するものである。この条件式(5)を満足することにより、合焦に伴うコマ収差、像面湾曲及び歪曲収差等の諸収差変動を抑えることができる。また、特定レンズが異方性をもつ単結晶から構成されている場合には、この条件式(5)を満足することにより、特定レンズにおける複屈折の影響を少なくして光学性能が低下してしまうのを防ぐことができる。
なお、この条件式(5)の効果を確実なものとするために、条件式(5)の上限値を45.0°、40.0°、35.0°、さらに30.0°とすることが望ましい。
【0032】
また本願の光学系は、次の条件式(6)を満足することが望ましい。
fp < 0.00 (6)
但し、
fp:前記特定レンズの焦点距離。
【0033】
条件式(6)は、特定レンズの焦点距離の適切な値を規定するものである。この条件式(6)を満足することにより、合焦群を特定レンズのみで構成したとしても、合焦群の移動による諸収差、特に球面収差の変動を抑えることができる。また合焦群を特定レンズ及び色消しレンズで構成したとしても色消レンズの色消し作用は低くてもよくなり、レンズ枚数の増加やサグ量の増加を抑えることができる。
なお、条件式(6)や以降で説明する他の条件式等での長さの単位は特記のない場合には「mm」である。
この条件式(6)の効果を確実なものとするために、条件式(6)の上限値を−1.00、−5.00、−10.00、−15.00、−20.00、−30.00、−40.00、−50.00、−55.00、さらに−60.00とすることが望ましい。
【0034】
なお、特定レンズのパワーを適切に確保するためには、条件式(6)に下限値を定めた次の条件式(6−1)を満足することが望ましい。
−10000 < fp < 0.00 (6−1)
この条件式(6−1)の効果を確実なものとするために、下限値を−1000とすることが好ましい。
【0035】
また本願の光学系は、次の条件式(7)を満足することが望ましい。
0.10 < (−fp)/f < 10.00 (7)
但し、
fp:前記特定レンズの焦点距離、
f:無限遠合焦状態における全系の焦点距離。
【0036】
条件式(7)は、無限遠合焦状態における全系の焦点距離と特定レンズの焦点距離との適切なパワーバランスを規定するものである。この条件式(7)の範囲内であると、合焦領域全体にわたり倍率色収差や歪曲収差の発生が小さくなるため好ましい。条件式(7)の上限値を上回った場合、すなわち特定レンズのパワーが弱い場合には合焦群が大型・重量化する。それを避けるため他のレンズを合焦群に追加してむりやり小型化したりすると、球面収差をはじめとする諸収差の合焦に伴う変動を抑えるのが困難になる。特に特定レンズが異方性を持つ結晶から構成されている場合には、条件式(7)の範囲内であると複屈折の影響が小さく、また収差補正を良好に行うことができる。
【0037】
なお、この条件式(7)の効果を確実なものとするために、条件式(7)の上限値を、8.00、5.00、3.00、2.00、1.50、さらに1.00とすることが望ましい。また、この条件式(7)の効果を確実なものとするために、条件式(7)の下限値を、0.20、0.40、0.48、0.55、0.60、0.70、さらに0.80とすることが望ましい。
【0038】
また本願の光学系は、次の条件式(8)を満足することが望ましい。
ff < 0.00 (8)
但し、
ff:前記特定レンズを含むレンズ群の焦点距離。
【0039】
条件式(8)は、特定レンズを含むレンズ群の焦点距離の適切な値を規定するものである。この条件式(8)を満足することにより、合焦群を特定レンズのみで構成したとしても、合焦群の移動による諸収差、特に球面収差の変動を抑えることができる。また合焦群を特定レンズ及び色消しレンズで構成したとしても色消レンズの色消し作用は低くてもよくなり、レンズ枚数の増加やサグ量の増加を抑えることができる。
この条件式(8)の効果を確実なものとするために、条件式(8)の上限値を−5.00、−10.00、−15,00、−20.00、−25.00、−30.00、さらに−40.00とすることが望ましい。
【0040】
なお、特定レンズのパワーを適切に確保するためには、条件式(8)に下限値を定めた次の条件式(8−1)を満足することが望ましい。
−10000 < ff < 0.00 (8−1)
この条件式(8−1)の効果を確実なものとするために、下限値を−1000とすることが好ましい。
【0041】
また本願の光学系は、次の条件式(9)を満足することが望ましい。
0.10 < (−ff)/f < 10.00 (9)
但し、
ff:前記特定レンズを含むレンズ群の焦点距離、
f:無限遠合焦状態における全系の焦点距離。
【0042】
条件式(9)は、無限遠合焦状態における全系の焦点距離と特定レンズを含むレンズ群の焦点距離との適切なパワーバランスを規定するものである。この条件式(9)の範囲内であると、合焦領域全体にわたり倍率色収差や歪曲収差の発生が小さくなるため好ましい。条件式(9)の上限値を上回った場合、すなわち特定レンズのパワーが弱い場合には合焦群が大型・重量化する。それを避けるため他のレンズを合焦群に追加してむりやり小型化したりすると、球面収差をはじめとする諸収差の合焦に伴う変動を抑えるのが困難になる。特に特定レンズが異方性を持つ結晶から構成されている場合には、条件式(9)の範囲内であると複屈折の影響が小さく、また収差補正を良好に行うことができる。
【0043】
なお、この条件式(9)の効果を確実なものとするために、条件式(9)の上限値を9.00、8.00、7.00、6.00、5.00、4.00、3.00、2.00、さらに1.00とすることが望ましい。また、この条件式(9)の効果を確実なものとするために、条件式(9)の下限値を0.20、0.30、0.40、0.50、さらに0.60とすることが望ましい。
【0044】
また本願の光学系は、前記特定レンズより物体側に少なくとも一枚の正レンズを有することが望ましい。
【0045】
このように特定レンズより物体側に少なくとも一枚の正レンズを配置することで、近軸光線高を下げ、合焦に伴う収差変動を抑えることができ、光学系全体の光学性能を良好に保つことができる。特に、特定レンズが異方性をもつ単結晶から構成されている場合には、それに加えて球面収差の発生量が常光線と異常光線とで異なるために生じる光学性能の低下を抑えることができる。
【0046】
また本願の光学系は、次の条件式(10)を満足することが望ましい。
f/d0 < 0.100 (10)
但し、
d0:物体から最も物体側のレンズ面の頂点までの光軸上の距離の内で最大距離、
f:無限遠合焦状態における全系の焦点距離。
【0047】
条件式(10)は、d0と、無限遠合焦状態における全系の焦点距離との適切なパワーバランスを規定し、諸収差の発生を抑えるものである。ここでd0は光学系として成立し実際に使用される値である。すなわち使用時に無限遠合焦状態が実現可能な光学系であればd0が無限大(∞)となり、条件式(10)を満足する。しかし、例えば原稿読取用光学系のように近距離合焦状態のみの使用だけで無限遠合焦状態では使用できない光学系についてd0は有限の値となり、この条件式(10)の範囲内でないと諸収差を適切に抑えることができない。
条件式(10)の上限値を上回ると、適切なパワーバランスを保持することができなくなり諸収差の発生が大きくなってしまう。
なお、この条件式(10)の効果を確実なものとするために、条件式(10)の上限値を0.090、0.080、0.070、0.060、0.050、0.040、0.030、さらに0.020とすることが望ましい。
【0048】
また本願の光学系は、次の条件式(11)を満足することが望ましい。
|β| < 0.50 (11)
但し、
β:近距離合焦状態における光学系全体の結像倍率。
【0049】
条件式(11)は、近距離合焦状態における光学系全体の結像倍率を規定するものである。この条件式(11)の範囲内であると、軸上色収差の発生が抑制され好ましい。条件式(11)の上限値を上回ると色収差が結像面上で拡大され好ましくない。この効果をより確実なものとするためには、上限値を0.45、0.40、0.38、0.35、0.30、0.25、さらに0.20とすることが望ましい。
【0050】
また本願の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、前記特定レンズを含むレンズ群と、後群と、を有することが望ましい。
【0051】
このように特定レンズを含むレンズ群は物体側に正の屈折力を有する第1レンズ群を有することで、近軸光線高を下げ、合焦に伴う収差変動を抑えることができ、特に、特定レンズが異方性をもつ結晶から構成されている場合には、複屈折性に伴う像面湾曲や歪曲収差の常光と異常光の差を小さくできる。
【0052】
また本願の光学系は、前記後群は物体側から順に、合焦に際して不動のレンズ群と、合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群と、を有することが望ましい。
【0053】
このように後群にも合焦群を設けることにより、特定レンズを含むレンズ群(合焦群である第2レンズ群)の移動に伴う像倍率の変化や諸収差を後群の合焦群で低減させることができ、光学系全体の光学性能をさらに良好とすることができる。
なお、無限遠物体から近距離物体への少なくとも一部の合焦に際して、第2レンズ群が像側へ移動するとともに前記後群の合焦群が物体側に移動することが望ましい。この場合、第2レンズ群よりも像側のレンズ群で発生する諸収差を良好に補正することができ、結像面中心から周辺にいたるまで高性能な光学系を提供することができる。さらにこの効果を確実なものとするには、前記後群の合焦群の像側に合焦時に不動のレンズ群を有することが望ましい。
【0054】
本願の光学機器は、上述した光学系を備える。
【0055】
ここで、本実施形態の光学系OLを備えたカメラ(光学装置)の一例について説明する。図9は、光学系OLを搭載したカメラ1の構成の一例を示す図である。
【0056】
図9に示すように、カメラ1は、撮影レンズ2として光学系OLを備えたレンズ交換式のいわゆるミラーレスカメラである。
カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、不図示のOLPF(Optical low pass filter:光学ローパスフィルタ)を介して撮像部3の撮像面上に被写体像を形成する。そして、撮像部3に設けられた光電変換素子によって被写体像が光電変換されて被写体の画像が生成される。この画像は、カメラ1に設けられたEVF(Electronic view finder:電子ビューファインダ)4に表示される。これにより、撮影者は、EVF4を介して被写体を観察することができる。また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、撮像部3で生成された被写体の画像が不図示のメモリーに記憶される。このようにして、撮影者はカメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0057】
カメラ1に撮影レンズ2として搭載した光学系OLは、後述の各実施例からも分かるようにその特徴的なレンズ構成によって、合焦群が小型軽量な構成を有し、諸収差及び色収差が良好に補正され、良好な光学性能を有している。したがって、カメラ1によれば、小型軽量な構成を有し、諸収差及び色収差が良好に補正され、良好な光学性能を有する光学機器を実現することができる。
【0058】
なお、カメラ1として、ミラーレスカメラの例を説明したが、本実施形態の光学装置は、これに限定されるものではない。例えば、カメラ本体にクイックリターンミラーを有し、ファインダ光学系によって被写体を観察する一眼レフタイプのカメラに、上述の光学系OLを搭載した場合でも、カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0059】
本願の光学系の製造方法は、合焦に際して光軸方向に移動するレンズ群に、次の条件式(1)、(2)を満足する特定レンズを少なくとも1枚配置するようにする。
1.700 < nd (1)
60.00 < νd (2)
但し、
nd:前記特定レンズのd線に対する屈折率、
νd:前記特定レンズのd線を基準とするアッベ数。
【0060】
以下、実施形態に係る光学系OLの製造方法の概略について、図10を参照して説明する。まず、条件式(1)、(2)を満足する特定レンズを備えた合焦群及びその他のレンズ群を準備する(S1)。次に、各レンズ群を所定箇所に配置する(S2)。そして、合焦群を合焦の際に光軸方向に移動するように配置する(S3)。
【0061】
上述の光学系の製造方法によれば、合焦領域全体にわたり諸収差及び色収差の変動を抑えた小型軽量な合焦群を備えた光学系を製造することができる。
【0062】
なお、以上で説明した条件及び構成は、それぞれが上述した効果を発揮するものであり、全ての条件及び構成を満たすものに限定されることはなく、いずれかの条件又は構成、或いは、いずれかの条件又は構成の組み合わせを満たすものでも、上述した効果を得ることが可能である。
【0063】
また、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0064】
本発明において、レンズ群とは、合焦時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。
【0065】
また、合焦レンズ群はオートフォーカスにも適用でき、オートフォーカス用の(超音波モータ等の)モータ駆動にも適している。
【0066】
また、レンズ群または部分レンズ群を光軸に直交方向の変位成分を持つように移動させ、または、光軸を含む面内方向に回転移動(揺動)させて、手振れによって生じる像ブレを補正する防振レンズ群としてもよい。
【0067】
また、レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
【0068】
開口絞りSは、レンズ群の中或いは外に配置されるのが好ましいが、開口絞りとしての部材を設けずに、レンズの枠でその役割を代用してもよい。
【0069】
さらに、各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。
【0070】
以上のような構成により、良好な光学性能を有し、明るい光学系OL、この光学系OLを有する光学機器及び光学系OLの製造方法を提供することができる。
【0071】
以下、本実施形態に係る各実施例について、図面に基づいて説明する。以下に、表1、表2を示すが、これらは第1実施例、第2実施例における各諸元の表である。
【0072】
なお、第1実施例に係る図1に対する各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。ゆえに、他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していても、それらは他の実施例とは必ずしも共通の構成ではない。
【0073】
各実施例では収差特性の算出対象として、C線(波長656.3nm)、d線(波長587.6nm)、F線(波長486.1nm)、g線(波長435.8nm)を選んでいる。
【0074】
表中の(基本諸元)において、fは光学系OL全系の焦点距離、FNOはFナンバー、ωは半画角(最大入射角、単位:°)、Yは像高、TLはレンズ全長(光軸上でのレンズ最前面からレンズ最終面までの距離に、BFを加えたもの)、BFはバックフォーカス(光軸上でのレンズ最終面から近軸像面までのフィルタ等を介した実距離)、BF(空気換算長)はバックフォーカス(光軸上でのレンズ最終面から近軸像面までの距離を空気換算した距離)を示す。
【0075】
表中の(面データ)において、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序、rは各光学面の曲率半径、dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離である面間隔、ndは光学部材の材質のd線に対する屈折率、νdは光学部材の材質のd線を基準とするアッベ数をそれぞれ示す。物面は物体面、(可変)は可変の面間隔、曲率半径の「∞」は平面又は開口、(絞り)は開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示す。空気の屈折率「1.000000」は省略する。
【0076】
表中の(レンズ群焦点距離)において、群初面は各群の最も物体側の面番号を、群焦点距離は各群の焦点距離を示す。
【0077】
表中の(可変間隔データ)において、無限遠合焦状態、中間距離合焦状態及び近距離合焦状態のそれぞれにおける各可変間隔diを示す。ここで、diは、第i面と第(i+1)面の可変間隔を示す。なお、d0は物体から最も物体側のレンズ面の頂点までの光軸上の距離を示す。
【0078】
表中の(条件式)には、上記の条件式(1)〜(11)に対応する値を示す。
【0079】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面間隔d、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
【0080】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での説明を省略する。
【0081】
(第1実施例)
図1は、本願の第1実施例に係る光学系の無限遠合焦状態の断面図である。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、フィルタ群FLとから構成されている。
【0082】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸正レンズL11、及び、両凸正レンズL12と両凹負レンズL13とを接合した接合正レンズで構成されている。また、第2レンズ群G2は、両凹負レンズL21で構成されている。また、第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸正レンズL31、両凸正レンズL32と両凹負レンズL33とを接合した接合負レンズ、平凹負レンズL34、及び、両凸正レンズL35で構成されている。また、第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸正レンズL41、及び、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状の負レンズL42で構成されている。また、第5レンズ群G5は、両凹負レンズL51で構成されている。また、開口絞りSは、第3レンズ群G3内の両凹負レンズL33と平凹負レンズL34の間に配置されている。
【0083】
また、この光学系において、無限遠から至近物点への合焦は、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側に移動させるとともに第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側に移動させることにより行うように構成されている。
【0084】
この光学系によって撮像素子上に像が結像されて撮影が行われる。図1には前述の撮像素子を保護するフィルタ群FL、及び光学系の像面Iが図示されている。
以下の表1に、第1実施例における各諸元の値を示す。
【0085】
(表1)第1実施例
(基本諸元)
f 82.45
FNO 1.97
ω 14.5
Y 21.60
TL 110.03
BF 18.06
BF(空気換算長) 17.51

(面データ)
面番号 r d nd νd
0(物面) ∞ (可変)
1 90.5647 5.105 1.497820 82.57
2 -263.3971 0.100
3 51.0450 9.224 1.497820 82.57
4 -72.0468 1.500 1.720467 34.71
5 230.7021 (可変)
6 -360.0005 1.500 1.768240 72.27
7 63.0001 (可変)
8 41.4111 6.329 2.001000 29.12
9 -317.6815 1.000
10 153.9239 4.349 1.497820 82.57
11 -67.0484 1.500 1.829805 27.72
12 30.4046 6.487
13(絞り) ∞ 8.125
14 ∞ 1.500 1.621018 32.16
15 81.7945 0.100
16 52.9304 4.968 1.922493 32.94
17 -128.3954 (可変)
18 132.7759 3.829 1.868256 36.78
19 -84.0049 0.873
20 -63.3617 2.000 1.756462 24.89
21 -193.9865 (可変)
22 -43.2875 3.000 1.734181 25.21
23 463.5335 16.435
24 ∞ 1.600 1.516800 64.13
25 ∞ 0.025
像面 ∞

(レンズ群焦点距離)
レンズ群 群初面 群焦点距離
第1レンズ群 1 86.90
第2レンズ群 6 -69.68
第3レンズ群 8 60.66
第4レンズ群 18 112.36
第5レンズ群 22 -53.79

(可変間隔データ)
無限遠合焦状態 中間距離合焦状態 近距離合焦状態
f 82.45
β ― -0.033 -0.124
d0 ∞ 2489.137 690.000
d5 2.280 3.880 8.779
d7 7.518 5.918 1.019
d17 18.182 16.090 11.312
d21 2.497 4.588 9.367

(条件式)
(1) nd = 1.768
(2) νd = 72.27
(3) |θ|= 0.00°
(4) βγ = -0.033
(5) 2ω = 29.1°
(6) fp = -69.68
(7) (−fp)/f = 0.85
(8) ff = -69.68
(9) (−ff)/f = 0.85
(10) f/d0 = 0.000
(11) |β|= 0.12
【0086】
図2図3、及び図4はそれぞれ、本願の第1実施例に係る光学系の無限遠合焦状態における諸収差図、中間距離合焦状態(β=−0.033)における諸収差図、及び近距離合焦状態(β=−0.124)における諸収差図である。
図2図3、及び図4より、本実施例に係る光学系は無限遠合焦状態、中間距離合焦状態、及び近距離合焦状態の全ての領域にわたって諸収差が良好に補正され優れた結像性能を有していることがわかる。特に色収差に関してもこれら全ての領域で良好に補正されていることがわかる。
なお、第1実施例では両凹負レンズL21が条件式(1)、(2)を満足する特定レンズであり、この特定レンズの硝材は単結晶であるサファイアから構成されており、光学軸が光学系の光軸と同一方向となるように構成されている。
【0087】
(第2実施例)
図5は、本願の第2実施例に係る光学系の無限遠合焦状態の断面図である。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、フィルタ群FLとから構成されている。
【0088】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸正レンズL11、及び、両凸正レンズL12と両凹負レンズL13とを接合した接合正レンズで構成されている。また、第2レンズ群G2は、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状の正レンズL21と両凹負レンズL22とを接合した接合負レンズで構成されている。また、第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸正レンズL31、両凸正レンズL32と両凹負レンズL33とを接合した接合負レンズ、平凹負レンズL34、両凸正レンズL35、両凸正レンズL36、物体側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状の負レンズL37、及び、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状の負レンズL38で構成されている。また、開口絞りSは、第3レンズ群G3内の両凹負レンズL33と平凹負レンズL34の間に配置されている。
【0089】
また、この光学系において、無限遠から至近物点への合焦は、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側に移動させることにより行うように構成されている。
【0090】
この光学系によって撮像素子上に像が結像されて撮影が行われる。図5には前述の撮像素子を保護するフィルタ群FL、及び光学系の像面Iが図示されている。
以下の表2に、第2実施例における各諸元の値を示す。
【0091】
(表2)第2実施例
(基本諸元)
f 82.46
FNO 1.84
ω 14.5
Y 21.60
TL 110.02
BF 18.00
BF(空気換算長) 17.45

(面データ)
面番号 r d nd νd
0(物面) ∞ (可変)
1 76.9890 5.085 1.684767 56.08
2 -538.5651 0.100
3 52.6337 6.814 1.497820 82.57
4 -307.9777 1.500 1.849440 26.27
5 145.6644 (可変)
6 -211.7835 2.587 1.808090 22.74
7 -85.3507 1.500 1.768240 72.27
8 51.3216 (可変)
9 40.7438 5.334 1.998541 29.22
10 -7839.0445 0.100
11 55.4583 5.383 1.497820 82.57
12 -80.4080 1.500 1.721212 26.24
13 24.6507 6.093
14(絞り)∞ 1.500
15 ∞ 1.500 1.720435 25.85
16 55.8767 0.100
17 37.7186 5.122 1.699926 55.16
18 6094.3563 13.146
19 83.0033 4.022 1.949229 30.93
20 -126.7654 3.179
21 316.0002 2.000 1.756462 24.89
22 111.7514 7.488
23 -30.9685 1.500 1.470472 85.31
24 -125.1041 16.364
25 ∞ 1.600 1.516800 64.13
26 ∞ 0.030
像面 ∞

(レンズ群焦点距離)
レンズ群 始面 焦点距離
第1レンズ群 1 75.49
第2レンズ群 6 -54.23
第3レンズ群 9 59.27

(可変間隔データ)
無限遠合焦状態 中間距離合焦状態 近距離合焦状態
f 82.46
β ― -0.033 -0.136
d0 ∞ 2560.474 690.000
d5 6.702 9.009 15.974
d8 9.772 7.466 0.500

(条件式)
(1) nd = 1.768
(2) νd = 72.27
(3) |θ|= 0.00°
(4) βγ = -0.058
(5) 2ω = 29.1°
(6) fp = -41.52
(7) (−fp)/f = 0.50
(8) ff = -54.23
(9) (−ff)/f = 0.66
(10) f/d0 = 0.000
(11) |β|= 0.14
【0092】
図6図7、及び図8はそれぞれ、本願の第2実施例に係る光学系の無限遠合焦状態における諸収差図、中間距離合焦状態(β=−0.033)における諸収差図、及び近距離合焦状態(β=−0.136)における諸収差図である。
図6図7、及び図8より、本実施例に係る光学系は無限遠合焦状態、中間距離合焦状態、及び近距離合焦状態の全ての領域にわたって諸収差が良好に補正され優れた結像性能を有していることがわかる。特に色収差に関してもこれら全ての領域で良好に補正されていることがわかる。
なお、第2実施例では両凹負レンズL22が条件式(1)、(2)を満足する特定レンズであり、この特定レンズの硝材は単結晶であるサファイアから構成されており、光学軸が光学系の光軸と同一方向となるように構成されている。
【0093】
OL 光学系
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
S 開口絞り
FL フィルタ部
I 像面
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2018年8月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10