【課題】組成物とした際に比較的低粘度であり、発光装置の光の取り出し効率を向上させることができる分散液、該分散液を用いて製造される組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、この封止部材を有する発光装置、この発光装置を備えた照明器具および表示装置ならびに分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】無機酸化物粒子と、前記無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有し、前記分散媒が、疎水性溶媒を含み、前記水の含有量は10ppm以上300ppm以下である、分散液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<1. 分散液>
本実施形態に係る分散液は無機酸化物粒子と、無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、分散媒と、水と、を含有する。
【0016】
そして、本実施形態において、分散媒は疎水性溶媒を含み、かつ、水の含有量が、10ppm以上300ppm以下である。
【0017】
以上により、本実施形態に係る分散液を樹脂成分と混合して組成物を得、当該組成物を用いて発光素子を封止することにより、得られる発光装置の光の明るさが向上する。さらに、このようにして得られる組成物は比較的低粘度となる。
【0018】
詳しく説明すると、表面修飾材料は無機酸化物粒子の表面に付着することにより無機酸化物粒子の分散安定性の向上に寄与する。そして分散液中に存在する微量の水は、表面修飾材料の加水分解を促進し、この結果、表面修飾材料の無機酸化物粒子の表面へ付着が促進される。一方で、後述する組成物を製造する際に混合される樹脂成分は、一般には疎水性を有することから、分散液は、分散媒として疎水性溶媒を含むことが望ましい。しかしながら、分散液が分散媒として疎水性溶媒を含む場合、水は疎水性溶媒と混和しにくい。このため、水が過剰に存在すると、分散液と樹脂成分とを混合して組成物を得る際に、組成物の粘度が上昇してしまう。本発明者らは、このような問題を解決すべく検討したところ、分散液中の水の含有量を所定の範囲に制御することにより、表面修飾材料の加水分解を十分に促進させつつ得られる組成物の粘度の上昇を抑制可能であることを見出した。
以下、分散液に含まれる各成分について説明する。
【0019】
(1.1 無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子は、後述する封止部材中において発光素子から放出される光を散乱させる。また、無機酸化物粒子は、その種類によっては封止部材の屈折率を向上させる。これらにより、無機酸化物粒子は、発光装置の光の明るさの向上に寄与する。
【0020】
本実施形態に係る分散液中に含まれる無機酸化物粒子としては、特に限定されない。本実施形態において、無機酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、シリカ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化銅粒子、酸化スズ粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タングステン粒子、酸化ユーロピウム粒子、酸化イットリウム粒子、酸化モリブデン粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化ゲルマニウム粒子、酸化鉛粒子、酸化ビスマス粒子、および酸化ハフニウム粒子ならびにチタン酸カリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、ニオブ酸カリウム粒子、ニオブ酸リチウム粒子、タングステン酸カルシウム粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ安定化ジルコニア粒子、シリカ安定化ジルコニア粒子、カルシア安定化ジルコニア粒子、マグネシア安定化ジルコニア粒子、スカンジア安定化ジルコニア粒子、ハフニア安定化ジルコニア粒子、イッテルビア安定化ジルコニア粒子、セリア安定化ジルコニア粒子、インジア安定化ジルコニア粒子、ストロンチウム安定化ジルコニア粒子、酸化サマリウム安定化ジルコニア粒子、酸化ガドリニウム安定化ジルコニア粒子、アンチモン添加酸化スズ粒子、およびインジウム添加酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む無機酸化物粒子が好適に用いられる。
【0021】
上述した中でも、透明性や封止樹脂(樹脂成分)との相溶性(親和性)を向上させる観点から、分散液は、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子およびシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
また、無機酸化物粒子は、封止部材の屈折率を向上させる観点から、屈折率が1.7以上であることが好ましい。このような無機酸化物粒子としては、上述したシリカ粒子以外の無機酸化物粒子が挙げられる。
【0023】
無機酸化物粒子は、より好ましくは酸化ジルコニウム粒子および/または酸化チタン粒子であり、特に好ましくは、酸化ジルコニウム粒子である。
【0024】
なお、無機酸化物粒子は、分散液において一次粒子として分散していてもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子として分散していてもよい。通常、無機酸化物粒子は、二次粒子として分散している。
【0025】
分散液における無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、特に限定されないが、例えば10nm以上200nm以下、好ましくは20nm以上150nm以下であり、より好ましくは30nm以上150nm以下である。無機酸化物粒子の平均分散粒子径が10nm以上であることにより、この分散液を用いて製造される後述する発光装置の光の明るさが向上する。また、無機酸化物粒子の平均分散粒子径が200nm以下であることにより、分散液やこれを用いて製造される後述する組成物、封止部材の光の透過率の低下を抑制することができる。その結果、発光装置の光の明るさが向上する。
【0026】
なお、無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、動的光散乱法により得られる散乱強度分布の累積百分率が50%のときの無機酸化物粒子の粒子径D50であることができ、動的光散乱式の粒度分布計(例えば、HORIBA社製、型番:SZ−100SP)により測定することができる。測定は、固形分を5質量%に調整した分散液を対象として光路長10mm×10mmの石英セルを用いて行うことができる。なお本明細書において「固形分」とは、分散液において揮発可能な成分を除去した際の残留物をいう。例えば、分散液1.2gを磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、150℃で1時間加熱した時に、揮発せずに残留する成分(無機酸化物粒子や表面修飾材料等)を固形分とすることができる。
【0027】
また、無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、無機酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の無機粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、表面修飾材料が付着した無機酸化物粒子の平均分散粒子径として測定されてもよい。分散液中には、表面修飾材料が付着した無機酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない無機酸化物粒子とが存在し得るため、通常、無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、これらの混合状態における値として測定される。
【0028】
無機酸化物粒子の平均一次粒子径は、例えば3nm以上100nm以下、好ましくは4nm以上80nm以下、より好ましくは10nm以上60nm以下である。平均一次粒子径が上記範囲であることにより、封止部材の透明性の低下を抑制することができる。この結果、発光装置の光の明るさをより一層向上させることができる。
【0029】
無機酸化物粒子の平均一次粒子径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡での観察により行うことができる。まず、透過型電子顕微鏡により、分散液から無機酸化物粒子を採取したコロジオン膜を観察し、透過型電子顕微鏡画像を得る。次いで、透過型電子顕微鏡画像中の無機酸化物粒子を所定数、例えば100個を選び出す。そして、これらの無機酸化物粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して求める。
【0030】
ここで無機酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している無機酸化物粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0031】
また、分散液中の無機酸化物粒子の含有量は、後述する樹脂成分と混合できれば特に限定されない。分散液中の無機酸化物粒子の含有量は、例えば1質量%以上70質量%以下、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0032】
これにより、分散液の粘度が過剰に大きくなることを抑制できるため、後述する樹脂成分との混合が容易になる。また、樹脂成分と混合後に溶媒(分散媒)量が過剰となることを抑制でき、溶媒の除去が容易となる。
【0033】
以上説明した無機酸化物粒子の表面には、以下に説明する表面修飾材料が付着している。これにより、分散液および当該分散液を用いて製造される分散液中において安定して無機酸化物粒子が分散する。
【0034】
(1.2 表面修飾材料)
本実施形態に係る分散液は、表面修飾材料を含む。この表面修飾材料は、分散液内において、少なくともその一部が無機酸化物粒子の表面に付着して、無機酸化物粒子の凝集を防止する。さらに、樹脂成分との相溶性を向上させる。
【0035】
ここで、表面修飾材料が無機酸化物粒子に「付着する」とは、表面修飾材料が無機酸化物粒子に対し、これらの間の相互作用や反応により接触または結合することをいう。接触としては、例えば物理吸着が挙げられる。また、結合としては、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0036】
このような表面修飾材料としては、無機酸化物粒子に付着でき、後述するような樹脂成分との相溶性が良好なものであれば、特に限定されない。
このような表面修飾材料としては、反応性官能基、例えばアルケニル基、H−Si基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料が好適に用いられる。特に、アルコキシ基を有する表面修飾材料は、水と反応して加水分解し得ることから、本実施形態において好適に用いられる。
【0037】
アルケニル基としては、例えば炭素数2〜5の直鎖または分岐状アルケニル基を用いることができ、具体的にはビニル基、2−プロペニル基、プロパ−2−エン−1−イル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば炭素数1〜5の直鎖または分岐状アルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0038】
アルケニル基、H−Si基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料としては、例えば、以下のシラン化合物、シリコーン化合物および炭素−炭素不飽和結合含有脂肪酸が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、モノメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、およびジフェニルモノエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
シリコーン化合物としては、例えば、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、ジフェニルハイドロジェンシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーンおよびアルコキシ基含有フェニルシリコーン等が挙げられる。
シリコーン化合物は、オリゴマーであってもよく、レジン(ポリマー)であってもよい。
炭素−炭素不飽和結合含有脂肪酸としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0041】
これらの表面修飾材料のなかでも、分散液において無機酸化物粒子同士の凝集を抑制し、透明性の高い封止部材が得られやすい観点において、ビニルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシ片末端ビニル片末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端フェニルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端ジメチルシリコーン、メトキシ基含有フェニルシリコーンおよびメチルフェニルシリコーンの群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0042】
無機酸化物粒子に対する表面修飾材料の量は、特に限定されず、例えば10質量%以上200質量%以下であり、好ましくは30質量%以上150質量%以下であり、より好ましくは、50質量%以上120質量%以下である。表面修飾材料の量が上述した範囲内であると、遊離する表面修飾材料の量を低減しつつ、無機酸化物粒子の分散性を十分に向上させることができる。
【0043】
分散液中において、表面修飾材料と無機酸化物粒子の合計の含有量は、好ましくは2質量%以上80質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下である。これにより、分散液の粘度が過剰に大きくなることを抑制できるため、樹脂成分との混合が容易になる。また、樹脂成分と混合後に溶媒(分散媒)量が過剰となることを抑制でき、溶媒の除去が容易となる。
【0044】
また、本実施形態に係る分散液において、無機酸化物粒子に付着していない、すなわち分散液中に遊離した表面修飾材料(遊離表面修飾材料)の含有量は、無機酸化物粒子および表面修飾材料の合計の含有量に対し、50質量%以下であることが好ましい。
【0045】
遊離表面修飾材料の含有量は、例えば0質量%もしくは0質量%以上、10質量%以上、20質量%以上または30質量%以上であってもよい。
【0046】
なお、本明細書において「遊離表面修飾材料」とは、無機酸化物粒子に付着していない表面修飾材料を意味する。遊離表面修飾材料の含有量は、例えば、以下の方法により算出される値であり、アセトン等の表面修飾材料の良溶媒によって分散液から抽出され得る表面修飾材料の質量に基づき算出される。
【0047】
分散液5g中の液体を、エバポレータで除去して濃縮物を得る。次いで、この濃縮物にアセトンを2g添加して混合し、混合液を作製する。
シリカゲル10gを充填したカラムと、展開溶媒(ヘキサンとアセトンを2:1の体積比で混合)100ccを用いたカラムクロマトグラフィーにて、混合液から分離された抽出液を回収する。この抽出液中の液体をエバポレータにて除去し、得られた残留物を遊離表面修飾材料と仮定し、その質量を測定する。この残留物の質量を、本実施形態の分散液5gに含まれる無機酸化物粒子と表面修飾材料の合計質量で除した値の百分率を計算した結果を、遊離表面修飾材料の含有量とする。
【0048】
(1.3 水)
また、本実施形態に係る分散液は、水を含む。そして、水の含有量は、10ppm以上300ppm以下である。これにより、分散液中に存在する微量の水は、表面修飾材料の加水分解を促進し、この結果、表面修飾材料の無機酸化物粒子の表面へ付着が促進される。そして、無機酸化物粒子の分散性が維持される一方で、遊離表面修飾材料は減少する。一方で、水の含有量が少なくなることにより、分散液が後述する樹脂成分と混和しやすくなり、得られる組成物の粘度が低く維持される。
【0049】
分散液中に含まれる水の含有量が300ppmを超えると、過剰な水が分散液中に含まれる結果、分散液を用いて組成物を製造した際に、水が組成物中の樹脂成分と混和しにくくなり、この結果、得られる組成物の粘度が過度に上昇してしまう。また、分散媒と水との混和が困難となり、分散液の透明性が低下する。さらに、水が過剰に含まれる結果、分散液中の無機酸化物粒子が凝集しやすくなり、無機酸化物粒子の分散性がかえって低下する。一方、分散液中に含まれる水の含有量が、10ppm未満の場合、表面修飾材料の加水分解が不十分となる結果、無機酸化物粒子の表面へ表面修飾材料が十分に付着せず、また、遊離表面修飾材料が増加する。
【0050】
分散液中に含まれる水の含有量は、上述した範囲内であればよいが、好ましくは30ppm以上200ppm以下、より好ましくは50ppm以上100ppm以下である。
【0051】
(1.4 分散媒)
また、本実施形態に係る分散液は、無機酸化物粒子を分散する分散媒を含む。そして本実施形態において、分散媒は、疎水性溶媒を含む。疎水性溶媒は、無機酸化物粒子の分散性に優れるとともに、後述する樹脂成分との相溶性に優れている。このため、分散液と樹脂成分とを混合し、組成物を製造した際においても、無機酸化物粒子の分散状態が維持されやすい。
【0052】
また、疎水性溶媒としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類等が挙げられる。これらの溶媒は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。上述した中でも、芳香族類、特に芳香族炭化水素が好ましい。芳香族類は、後述するシリコーン樹脂との相溶性に優れ、これにより得られる組成物の粘度特性の向上および形成される封止部材の品質(透明性、形状等)の向上に資する。一方で、芳香族類、特に芳香族炭化水素は、疎水性の溶媒であり、一般に芳香族類を使用する際には、水は分散液の安定性を阻害したり、樹脂成分と相溶しにくい結果封止部材の品質を低下させることが予想されるため、水はできる限り排除すべき成分として取り扱われる。本実施形態においては、芳香族類を用いた場合であっても、アルコール系溶媒を介して上述した微量の水が無機酸化物粒子の表面に取り込まれ、分散液における無機酸化物粒子の分散性を維持することができる。
【0053】
このような芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1−フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、o−、m−またはp−キシレン、2−、3−または4−エチルトルエン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
上述した中でも、分散液の安定性や、後述する組成物製造時における分散媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点からは、分散媒は、トルエン、o−、m−またはp−キシレン、ベンゼンからなる群から選択される1種以上が特に好ましく用いられる。
【0055】
また、分散媒として、上述した疎水性溶媒以外の溶媒が含まれてもよい。このような溶媒としては、例えば、後述する製造方法にしたアルコール系溶媒や、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。このような場合においても、分散媒における疎水性溶媒の割合は、例えば95質量%以上、好ましくは99質量%以上である。
【0056】
本実施形態の分散液中における分散媒の含有量は、好ましくは10質量%以上98質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0057】
また、本実施形態に係る分散液は、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等を含んでいてもよい。
【0058】
なお、本明細書において、本実施形態に係る分散液は、樹脂成分を含み、かつ硬化により封止部材を形成可能な本実施形態に係る組成物(封止樹脂組成物)とは区別される。すなわち、本実施形態に係る分散液は、単純に硬化させても封止部材を形成可能な程度には後述する樹脂成分を含まない。より具体的には、本実施形態に係る分散液における、樹脂成分と無機酸化物粒子との質量比率は、樹脂成分:無機酸化物粒子で、0:100〜40:60の範囲にあることが好ましく、0:100〜20:80の範囲にあることがより好ましい。本実施形態に係る分散液は、さらに好ましくは後述する樹脂成分を本質的に含まず、特に好ましくは後述する樹脂成分を完全に含まない。
本実施形態に係る分散液は、後述するように樹脂成分と混合されて発光装置中の封止部材として発光素子の封止に用いられる。
【0059】
<2.分散液の製造方法>
次に、本実施形態に係る分散液の製造方法について説明する。本実施形態に係る分散液の製造方法は、表面修飾材料と水とを混合して混合液を得る第1の工程と、前記混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合し、前記無機酸化物粒子が分散した分散液を得る第2の工程と、前記分散液から前記水の少なくとも一部を除去する第3の工程と、前記分散液を加熱する第4の工程と、を有する。
【0060】
(2.1 第1の工程)
本工程においては、表面修飾材料と水とを混合して混合液を得る。これにより表面修飾材料が添加された水により加水分解され、混合液中において表面修飾材料の一部が加水分解した混合液が得られる。このように予め表面修飾材料の少なくとも一部が加水分解した混合液を用いることにより、後述する分散工程において無機酸化物粒子に表面修飾材料が付着しやすくなる。
【0061】
これに対し、本工程を省略し、分散工程において材料を混合して無機酸化物粒子を分散させた場合、表面修飾材料の加水分解反応が起きにくく、表面修飾材料が十分に付着した無機酸化物粒子を分散させるには、分散のためのエネルギーをより多く付与する必要がある。このため、後述する分散工程において表面修飾材料が不本意に変質したり、十分に無機酸化物粒子に付着しない問題がある。このような場合、遊離した表面修飾材料により分散液が着色したり、無機酸化物粒子の分散性が十分でない問題がある。この結果、得られる分散液を用いて製造される発光装置の光の取出し効率が十分に大きくならない。
【0062】
混合液に混合するための表面修飾材料は、上述した分散液の構成成分として挙げたものを用いることができる。
また、混合液中における表面修飾材料の含有率は、特に限定されないが、例えば20質量%以上70質量%以下、好ましくは30質量%以上60質量%以下、より好ましくは40質量%以上50質量%以下であることができる。
【0063】
また、混合液中における水の含有率は、特に限定されないが、例えば1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下であることができる。これにより、表面修飾材料の加水分解反応を適度に進行させつつ、過剰量の水により後述する第3の工程において水の除去に要する時間が多くなったり、製造される分散液において水が均一に混合されなかったり、無機酸化物粒子の凝集が生じたりすることを防止することができる。
【0064】
また、混合液には、アルコール系溶媒が含まれてもよい。アルコール系溶媒は水と任意の量で混和可能であるとともに、上述した分散媒に含まれる疎水性溶媒とも一定の量相溶可能である。このため、混合液を無機酸化物粒子および疎水性溶媒を含む分散媒と混合した際に、混合液中に含まれる、加水分解された表面修飾材料が無機酸化物粒子に付着しやすくなる。この結果、無機酸化物粒子の分散性が向上するとともに遊離表面修飾材料の量が分散液中において減少する。
【0065】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素数1〜4の分岐または直鎖状アルコール化合物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。またアルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級、第2級および第3級アルコールのいずれであってもよい。またアルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価、二価および三価アルコールのいずれであってもよい。より具体的には、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、メタンジオール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール等が挙げられる。
【0066】
また、水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、アルコール系溶媒を構成するアルコール化合物の炭素数は、好ましくは1以上3以下、より好ましくは1以上2以下である。
上述した中でも、メタノールおよびエタノール、特にメタノールは、上記のアルコール系溶媒の効果を十分に発現することができるために好適に用いることができる。
【0067】
また、混合液中におけるアルコール系溶媒の含有率は、特に限定されないが、例えば20質量%以上70質量%以下、好ましくは30質量%以上60質量%以下、より好ましくは40質量以上50質量%以下であることができる。これにより、混合液中における表面修飾材料の含有量を十分に大きくすることができるとともに、十分な量の水を混合液中に含めることができ、この結果表面修飾材料の加水分解反応を効率よく進行させることができる。
【0068】
また、混合液中には、触媒が添加されてもよい。触媒としては、例えば酸または塩基を用いることができる。
酸は、混合液中において表面修飾材料の加水分解を触媒する。一方塩基は、加水分解された表面修飾材と無機酸化物粒子表面の官能基、例えば水酸基やシラノール基との縮合反応を触媒する。これにより、後述する第2の工程において、表面修飾材料が無機酸化物粒子に付着しやすくなり、無機酸化物粒子の分散安定性が向上する。また、表面修飾材料が無機酸化物粒子に付着しやすくなることにより、遊離表面修飾材料が減少し、分散液、ひいてはこれを用いて製造される組成物、封止部材の光の透過率が向上する。ここで、上記の「酸」とは、いわゆるブレンステッド−ローリの定義に基づく酸をいい、表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを与える物質をいう。また、上記の「塩基」とは、いわゆるブレンステッド−ローリの定義に基づく塩基をいい、ここでは、表面修飾材料の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容する物質をいう。
【0069】
本実施形態に係る分散液に用いることのできる酸としては、表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを供給可能であれば特に限定されず、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、等の無機酸や酢酸、クエン酸、ギ酸、等の有機酸が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
本実施形態に係る製造方法に用いることのできる塩基としては、表面修飾材料の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容可能であれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
上述した中でも、触媒としては酸を用いることが好ましい。酸としては、酸性度の観点から、無機酸が好ましく、また塩酸がより好ましい。
【0072】
また、混合液中における触媒の含有量は、特に限定されず、例えば10ppm以上1000ppm以下、好ましくは20ppm以上800ppm以下、より好ましくは30ppm以上600ppm以下であることができる。これにより表面修飾材料の加水分解反応を十分に促進させつつ、表面修飾材料の不本意な副反応を抑制することができる。
【0073】
また、混合液を調製後、一定の温度で所定の時間保持してもよい。これにより、表面修飾材料の加水分解をより一層促進させることができる。
この処理において、混合液の温度は、特に限定されず、表面修飾材料の種類によって適宜変更できるが、例えば5℃以上65℃以下、好ましくは30℃以上60℃以下である。
【0074】
また、保持時間は、特に限定されないが、例えば10分以上180分以下、好ましくは30分以上120分以下である。
なお、上記の混合液の保持において、混合液を適宜撹拌してもよい。
【0075】
(2.2 第2の工程)
次に、混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合し、無機酸化物粒子が分散した分散液を得る。上述したように加水分解工程において表面修飾材料の加水分解を予め行っている。したがって、本工程においては、表面修飾材料が無機酸化物粒子に付着しやすい状態となっており、本工程において無機酸化物粒子の分散のために投入されるエネルギーを少なくすることができる。この結果、分散時における表面修飾材料の不本意な変質が抑制され、遊離表面修飾材料が少なくなり、分散液の光の透過率が向上する。
【0076】
また、本実施形態においては、混合液に予めアルコール系溶媒が含まれ得る。この場合、アルコール系溶媒が疎水性溶媒と加水分解した表面修飾材料との混和を促進させることができる。これにより、表面修飾材料が無機酸化物粒子により一層付着しやすくなる。
【0077】
上記の混合液と、無機酸化物粒子と、疎水性溶媒とを混合した液(分散液)において、アルコール系溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、1.0質量%以上20質量%以下であることができる。これにより、アルコール系溶媒による上記の疎水性溶媒と加水分解した表面修飾材料との混和をより一層促進させることができる。さらに、疎水性溶媒を十分に分散液中に含ませることができるため、分散液中における無機酸化物粒子の分散性が向上する。アルコール系溶媒の含有量は、好ましくは1.0質量%以上15質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。
【0078】
また、分散液において、疎水性溶媒の含有量に対するアルコール系溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上15質量%以下であることができる。これにより、疎水性溶媒による無機酸化物粒子の分散性向上効果を十分に得つつ、アルコール系溶媒による上記の疎水性溶媒と加水分解した表面修飾材料との混和をより一層促進させることができる。
【0079】
分散液は、例えば、分散液の各成分を混合した後、公知の分散機で分散機の動力等を制御して分散させることにより製造することができる。ここで、本実施形態に係る分散液は、公知の分散機を用いて、分散液中における無機酸化物粒子の粒子径(分散粒子径)がほぼ均一となる様に、過剰なエネルギーは付与せず、必要最低限のエネルギーを付与して分散させることが好ましい。
【0080】
公知の分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。
【0081】
(2.3 第3の工程)
本工程では、分散液から水の少なくとも一部を除去する。これにより、上述した第1の工程、第2の工程においては、表面修飾材料の加水分解に十分な量の水を使用しつつ、一方で、得られる分散液中においては水の含有量を、組成物の粘度の上昇が抑制できる程度に減少させることが可能となる。さらには、水と共に、加水分解により発生するアルコール等を除去することにより、後述する第4の工程において、加熱温度を分散媒の沸点とすることができ、表面修飾材料の反応をより確実に進行させることができる。
【0082】
これに対し、本工程を省略した場合、組成物の粘度を考慮すると、表面修飾材料の加水分解に必要な十分な量の水を使用できない場合がある。あるいは、表面修飾材料の加水分解に必要な十分な量の水を第1の工程、第2の工程において使用した場合、水が最終的に得られる分散液中に多く存在する結果、組成物の粘度が大きくなってしまう。さらには、後述する第4の工程において加熱温度を高くできない結果、表面修飾材料が十分に無機酸化物粒子に付着せず、遊離表面修飾材料が多くなりやすくなる。また、無機酸化物粒子の分散性が十分には向上しない。
【0083】
分散液からの水の除去は、例えば、減圧処理、加熱処理等を適宜組み合わせて行うことができる。具体的には、加熱処理により、分散液の溶媒を還流しつつ、分離された水を除去することにより、簡便に水を除去することができる。例えば、還流は、ディーンスターク装置等を用いることにより行うことできる。
【0084】
したがって、加熱処理を行う場合、加熱温度は、分散媒の還流温度であることができる。なお、分散媒が水と共沸可能な成分を含む場合、還流温度は水と共沸可能な成分の除去とともに変化しうる。例えば分散媒がトルエンを含む場合、還流温度は水と共沸可能な成分の除去とともに、トルエンの還流温度110℃付近まで上昇する。
【0085】
分散液からの水の除去の程度は、特に限定されないが、上述した分散液中の水の含有量の範囲を満足するまで水を除去することが好ましい。
【0086】
また、分散液中にアルコール系溶媒が含まれる場合、本工程において、水と同様にアルコール系溶媒も分散液から除去される。さらには、分散液中に酸が含まれる場合、酸は水ともに除去されうる。
【0087】
また、本工程の上記の水の除去時間は、特に限定されず、水が所望の量まで低減されるまで必要に応じて選択される。
【0088】
なお、本工程において、分散液に疎水性溶媒をさらに添加してもよい。本工程においては、例えば還流時に水とともに疎水性溶媒も除去されうる。この場合において、疎水性溶媒の量が減少するとともに無機酸化物粒子の分散性が低下する場合がある。したがって、疎水性溶媒を適宜分散液に添加することにより、このような問題を防止することができる。
【0089】
また、疎水性溶媒の添加時期は特に限定されず、本工程を通じて継続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。また、添加量も特に限定されず、最終的に得られる分散液中において、所望の量の疎水性溶媒が含まれるように適宜選択される。
【0090】
(2.4 第4の工程)
次に、分散液を加熱する。これにより、表面修飾材料の反応が促進され、無機酸化物粒子により多くの表面修飾材料が付着する。この結果、分散液中に存在する遊離表面修飾材料が減少するとともに、無機酸化物粒子の分散安定性がより一層向上する。本工程においては、第3の工程において水が分散液から一定量除去されている。このため、加熱温度、例えば還流温度を分散媒の沸点とすることができ、表面修飾材料の反応をより確実に進行させることができる。
【0091】
この処理において、分散液の温度は、特に限定されず、表面修飾材料の種類によって適宜変更できるが、例えば40℃以上110℃以下、好ましくは60℃以上110℃以下である。あるいは、分散液の還流温度としてもよい。
【0092】
また、保持時間は、特に限定されないが、例えば30分以上720分以下、好ましくは90分以上180分以下である。
なお、上記の分散液の保持において、混合液を適宜撹拌してもよい。
【0093】
以上の方法により、本実施形態に係る分散液を得ることができる。以上のようにして得られた分散液は、表面修飾材料を予め加水分解することにより、分散時におけるエネルギー投入量が少ないため、表面修飾材料の不本意な変質が抑制されている。また、第1の工程を経ることにより表面修飾材料が十分に無機酸化物粒子に付着し、無機酸化物粒子の分散性が向上している。さらには、遊離表面修飾材料の量も低減されている。以上の結果、これを用いて樹脂成分を含む組成物を製造し、当該組成物を用いて発光素子を封止した際に、発光装置の光の明るさが向上する。
さらには、得られる分散液において、水の含有量を比較的少なくすることができることにより、樹脂成分と混合して組成物を製造した際に、組成物の粘度を低減させることが可能となる。
【0094】
<3. 組成物>
次に、本実施形態に係る組成物について説明する。本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合することにより得られる。したがって、本実施形態に係る組成物は、上述した無機酸化物粒子と、少なくとも一部が無機酸化物粒子に付着した表面修飾材料と、に加え、樹脂成分、すなわち樹脂および/またはその前駆体を含む。
また、本実施形態に係る組成物は、後述するように硬化させて発光素子の封止部材として用いられる。すなわち本実施形態に係る組成物は、封止樹脂組成物である。
【0095】
本実施形態の組成物における、無機酸化物粒子の含有量は、封止部材の透明性が高くしつつ高い光の散乱効率を得る観点においては、0.005質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上30量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
また、表面修飾材料の含有量および遊離表面修飾材料の含有量は、本実施形態に係る分散液における含有量と同様とすることができる。
【0097】
樹脂成分は、本実施形態に係る組成物における主成分である。樹脂成分は、本実施形態に係る組成物を封止材料として用いた際において硬化して発光素子を封止することにより、発光素子に水分、酸素等の外部環境からの劣化因子が到達することを防止する。また、本実施形態において、樹脂成分より得られる硬化物は、基本的に透明であり、発光素子から放出される光を透過させることができる。
【0098】
このような樹脂成分としては、封止材料として用いることができれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂等の樹脂を用いることができる。特に、シリコーン樹脂が好ましい。
【0099】
シリコーン樹脂としては、封止材料として使用されているものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂等を用いることができる。
【0100】
特に、上記表面修飾材料として、アルケニル基、H−Si基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料を用いた場合には、シリコーン樹脂として、H−Si基、アルケニル基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有するシリコーン樹脂を用いることが好ましい。理由を以下に説明する。
【0101】
表面修飾材料のアルケニル基は、シリコーン樹脂中のH−Si基と反応することにより架橋する。表面修飾材料のH−Si基は、シリコーン樹脂中のアルケニル基と反応することにより架橋する。表面修飾材料のアルコキシ基は、シリコーン樹脂中のアルコキシ基と加水分解を経て縮合する。このような結合により、シリコーン樹脂と表面修飾材料とが一体化することから、得られる封止部材の強度や緻密性を向上させることができる。
【0102】
樹脂成分の構造としては、二次元の鎖状の構造であってもよく、三次元網状構造であってもよく、かご型構造であってもよい。
樹脂成分は、封止部材として用いた際に硬化したポリマー状となっていればよく、組成物中において、硬化前の状態、すなわち前駆体であってもよい。したがって、組成物中に存在する樹脂成分は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
【0103】
樹脂成分は、付加反応型のものを用いてもよく、縮合反応型のものを用いてもよく、ラジカル重合反応型のものを用いてもよい。
JIS Z 8803:2011に準拠して測定される25℃における樹脂成分の粘度は、例えば、0.1Pa・s以上100Pa・s以下、好ましくは1Pa・s以上50Pa・s以下、より好ましくは2Pa・s以上10Pa・s以下である。
【0104】
また、本実施形態に係る組成物中における樹脂成分の含有量は、他の成分の残部とすることができるが、例えば80質量%以上99.9質量%以下である。
【0105】
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液由来の分散媒を含んでいてもよく、除去されていてもよい。すなわち、分散液由来の分散媒を完全に除去してもよく、組成物中に組成物の質量に対し1質量%以上10質量%以下程度残存していてもよく、2質量%以上5質量%以下程度残存していてもよい。
また、本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液由来の水を含んでいてもよく、除去されていてもよい。すなわち、分散液由来の水を完全に除去してもよく、組成物中に、分散液及び樹脂成分由来の水を、組成物の質量に対し0.1ppm以上200ppm以下程度残存していてもよく、1ppm以上100ppm以下残存していてもよい。
【0106】
また、本実施形態に係る組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子は、発光素子から放出される特定の波長の光を吸収し、所定の波長の光を放出する。すなわち、蛍光体粒子により光の波長の変換ひいては色調の調整が可能となる。
【0107】
蛍光体粒子は、後述するような発光装置に使用できるものであれば、特に限定されず、発光装置の発光色が所望の色となるように、適宜選択して用いることができる。
本実施形態の組成物中における蛍光体粒子の含有量は、所望の明るさが得られるように、適宜調整して用いることができる。
【0108】
また、本実施形態の組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、防腐剤、重合開始剤、重合禁止剤、硬化触媒、光拡散剤等の、一般的に用いられる添加剤が含有されていてもよい。光拡散剤としては、平均粒子径が1〜30μmのシリカ粒子を用いることが好ましい。
【0109】
また、本実施形態にかかる組成物のJIS Z 8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度は、特に限定されないが、例えば100Pa・s以下、好ましくは5Pa・s以上100Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以上70Pa・s以下であることができる。これにより、組成物の工業的な取扱いが容易となる。さらには、樹脂との混合時に無機酸化粒子を均一に分散させることができる。
【0110】
上述したような組成物の粘度は、樹脂成分の粘度にも依存するが、分散液中の水を上述した範囲内とすることにより、比較的容易に達成可能である。
【0111】
本実施形態に係る組成物は、例えば本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合することにより製造することができる。また、混合後、必要に応じて、分散液に含有されていた分散媒をエバポレータ等で除去してもよい。
【0112】
以上説明した本実施形態によれば、本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合することにより得られる。分散液は、分散媒として疎水性溶媒を含むため樹脂成分と良好に混合可能であるとともに、無機酸化物粒子が十分に分散した状態で過度に凝集することなく組成物中に混合される。また、分散液は、表面修飾材料の不本意な劣化による着色が防止されている。したがって、本実施形態に係る組成物は、封止部材として用いた際に無機酸化物粒子による光透過率の低下を抑制しつつ、無機酸化物粒子による屈折率向上効果や、発光素子から放出される光の散乱効果を十分に発揮することができる。この結果、本実施形態に係る組成物により封止された発光素子を備えた発光装置の光の明るさが向上する。
さらには、分散液中における水が比較的少ないことにより、組成物の粘度の上昇が低減されており、工業的な取扱いが容易である。
【0113】
<4. 封止部材>
本実施形態に係る封止部材は、本実施形態に係る組成物の硬化物である。本実施形態に係る封止部材は、通常、発光素子上に配置される封止部材またはその一部として用いられる。
【0114】
本実施形態に係る封止部材は、上述したように本実施形態に係る組成物を硬化することにより製造することができる。組成物の硬化方法は、本実施形態に係る組成物中の樹脂成分の特性に応じて選択することができ、例えば、熱硬化や電子線硬化等が挙げられる。より具体的には、本実施形態の組成物中の樹脂成分を付加反応や重合反応により硬化することにより、本実施形態の封止部材が得られる。
【0115】
本実施形態に係る封止部材の厚みや形状は、所望の用途や特性に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。
【0116】
封止部材中における無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは20nm以上300nm以下、さらに好ましくは40nm以上200nm以下である。
【0117】
平均分散粒子径が10nm以上である場合には、光の散乱効果を十分に得ることができ、発光装置の光の明るさをより一層向上させることができる。一方で平均分散粒子径が500nm以下である場合、封止部材の透過率を適度に大きくすることができ、発光装置の光の明るさをより一層向上させることができる。
【0118】
なお、封止部材中の無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材の透過型電子顕微鏡観察(TEM)により測定される、個数分布基準の平均粒径(メジアン径、D50)である。また、本実施形態における封止部材中の無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材中における無機酸化物粒子の分散粒子径に基づいて測定、算出される値である。平均分散粒子径は、無機酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の無機酸化物粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、封止部材中の無機酸化物粒子のD50は、表面修飾材料が付着した無機酸化物粒子のD50として測定されてもよい。封止部材中には、表面修飾材料が付着した無機酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない無機酸化物粒子とが存在し得るため、通常、封止部材中の無機酸化物粒子のD50は、これらの混合状態における値として測定される。
【0119】
本実施形態に係る封止部材は、本実施形態に係る組成物の硬化物であるので、光の透過率に優れるとともに、無機酸化物粒子による屈折率向上効果や、発光素子から放出される光の散乱効果が十分に発揮されている。そのため、本実施形態に係る封止部材を用いた発光装置は、放出される光の明るさが向上している。
【0120】
<5. 発光装置>
次に、本実施形態に係る発光装置について説明する。本実施形態に係る発光装置は、上述した封止部材と、当該封止部材に封止された発光素子とを備えている。
発光素子としては、例えば発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられる。特に、本実施形態に係る封止部材は、発光ダイオードの封止に適している。
【0121】
以下、発光素子が、チップ上の発光ダイオード、すなわちLEDチップであり、発光装置がLEDパッケージである例を挙げて、本実施形態に係る発光装置を説明する。
図1は、それぞれ、本発明の実施形態に係る発光装置の一例を示す模式図(断面図)である。なお、図中の各部材の大きさは、説明を容易とするため適宜強調されており、実際の寸法、部材間の比率を示すものではない。
【0122】
図1に示す発光装置(LEDパッケージ)1は、凹部21を有する基板2と、基板2の凹部21の底面上に配置される発光素子(LEDチップ)3と、凹部21において発光素子3を覆うように封止する封止部材4とを備えている。
【0123】
封止部材4は、上述した本実施形態に係る封止部材により構成されている。したがって、封止部材4は、着色が抑制されていることにより光の透過率が高く、また、無機酸化物粒子による屈折率向上効果や、発光素子から放出される光の散乱効果を十分に発揮されている。このため、発光装置1から放出される光の明るさが向上している。また、封止部材4内においては、蛍光体粒子5が分散している。蛍光体粒子5は、発光素子3より出射される光の少なくとも一部の波長を変換する。
【0124】
なお、本発明に係る発光装置は、図示の態様に限定されるものではない。例えば、本発明に係る発光装置は、封止部材中に蛍光体粒子を含まなくてもよい。また、本実施形態に係る封止部材は、封止部材中の任意の位置に存在することができる。また、本発明の一実施形態において、封止部材は複数の層で構成されており、これらの層の構成は同一であっても異なっていてもよい。この場合において、いずれか1以上の層は、本実施形態に係る封止部材により構成される。
【0125】
以上、本実施形態に係る発光装置は、発光素子が本実施形態の封止部材により封止されているため、光の取り出し効率に優れている。
【0126】
なお、本実施形態に係る発光装置は、上述したような本実施形態に係る組成物により発光素子が封止される。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態に係る組成物を用いて発光素子を封止する工程を有する発光装置の製造方法にも関する。同側面において、上記製造方法は、本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合して上記組成物を製造する工程を有していてもよい。さらに、上記組成物を製造する工程において、分散媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0127】
上述したような本実施形態に係る発光装置は、例えば、照明器具および表示装置に用いることができる。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態に係る発光装置を備える照明器具または表示装置に関する。
【0128】
照明器具としては例えば、室内灯、室外灯等の一般照明装置、携帯電話やOA機器等の電子機器のスイッチ部の照明等が挙げられる。
本実施形態に係る照明器具は、本実施形態に係る発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、周囲環境をより明るくすることができる。
【0129】
表示装置としては、例えば携帯電話、携帯情報端末、電子辞書、デジタルカメラ、コンピュータ、テレビ、およびこれらの周辺機器等が挙げられる。
本実施形態に係る表示装置は、本実施形態に係る発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、例えばより鮮明かつ明度の高い表示を行うことができる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0131】
[実施例1]
(分散液の作製)
(1)第1の工程
表面修飾材料としてのメトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越工業化学社製、製品名KR217)5質量部と、メタノール5質量部とを混合した。次いで、水0.4質量部、塩酸(1N)0.2質量部を添加して混合した。次いでこの混合液を60℃で30分撹拌し、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジンの加水分解処理を行った。
【0132】
(2)第2の工程
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)10質量部、トルエン82質量部、上記混合液10.6質量部を混合して、第2の混合液を得、この第2の混合液をビーズミルで6時間分散処理した後、ビーズを除去した。なお、本工程における分散液中におけるメタノールの含有量は、4.9質量%であった。
【0133】
(3)第3の工程
ビーズ除去後の分散液を130℃のオイルバス中において30分間還流し、分散液より水の除去を行った。この後、揮発した量と同等の量のトルエンを分散液に添加した後、分散液を130℃のオイルバス中において30分間還流し、さらなる水の除去を行った。
【0134】
(4)第4の工程
水除去後の分散液を130℃のオイルバス中において6時間還流し、酸化ジルコニウム粒子がメトキシ基含有フェニルシリコーンレジンで表面修飾された実施例1に係る分散液を得た。
【0135】
(分散液の評価)
得られた分散液1.2gを磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、150℃で1時間加熱し、揮発せずに残留する成分の質量を測定し、固形分を測定した。その結果、固形分は33.1質量%であった。なお、固形分は、揮発せずに残留した成分の質量を、分散液の質量(1.2g)で除した値の百分率である。また、得られた固形分は、主として、酸化ジルコニウム粒子および表面修飾材料を含む。したがって、得られた固形分は、分散液中における酸化ジルコニウム粒子および表面修飾材料の合計含有量(表面修飾酸化ジルコニウム粒子)に相当するものと考えられる。
【0136】
得られた分散液の水の含有量を、カールフィッシャー水分計(型番:AQ−2000(電量法、平沼産業社製)で測定した結果、52ppmであった。
また、分散液を燃焼装置で燃焼し、発生した燃焼分解ガスを吸収液に捕集し、イオンクロマトグラフィーで分散液に含まれる塩酸の含有量を測定した結果、1ppm未満(検出限界以下)であった。
さらに、ガスクロマトグラフィー質量分析法により分散液中のメタノールの検出を行った結果、分散液中にメタノールが含まれないことを確認した。
【0137】
さらに、固形分を5質量%になるようにトルエンで希釈した分散液を用いて、波長460nmにおける積分透過率を光路長10mmの石英セルを用いて分光光度計(日本分光社製、型番:V−770)で測定した結果、39%であった。
また、固形分を5質量%になるようにトルエンで希釈した分散液に含まれる酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径D50を粒度分布径(HORIBA社製、型番:SZ−100SP
を用いて測定したところ、32nmであった。
【0138】
(遊離表面修飾材料の含有量の評価)
得られた分散液5g(酸化ジルコニウム粒子と表面修飾材料の合計含有量1.6g)の液体をエバポレータで除去した。
この濃縮物にアセトンを2g添加し、混合して混合液を作製した。
シリカゲル10gを充填したカラムと、展開溶媒(ヘキサンとアセトンを2:1の体積比で混合)100ccを用いたカラムクロマトグラフィーにて、混合液から分離された抽出液を回収した。この回収液の液体をエバポレータにて除去し、得られた残量物を遊離表面修飾材料とし、その質量を測定した。この残留物の質量を、分散液5gに含まれる酸化ジルコニウム粒子と表面修飾材料の合計質量(1.6g)で除した値の百分率を計算した。
その結果、遊離表面修飾材料の含有量は20質量%であった。
【0139】
(組成物の作製)
得られた分散液を10質量部、メチルフェニルシリコーン樹脂(信越化学社製「KER−6150(A/B)(A液:B液=1:1)」屈折率1.41)7.6質量部(A液3.8質量部、B液3.8質量部)を混合した。すなわち、メチルフェニルシリコーン樹脂と表面修飾酸化ジルコニウム粒子の合計含有量のうち、表面修飾酸化ジルコニウム粒子が30質量%となるように混合した。ついで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去することで、表面修飾材料が付着した酸化ジルコニウム粒子とメチルフェニルシリコーン樹脂と反応触媒とを含有した実施例1に係る組成物を得た。
【0140】
(組成物の評価)
得られた実施例1に係る組成物を、薄層石英セルに挟んで厚み(光路長)1mmにした状態で、波長460nmにおける積分透過率を分光光度計(日本分光社製、型番:V−770)を用いて測定した結果、60%であった。
また、得られた実施例1に係る組成物の粘度を、レオメーター(レオストレスRS−6000、HAAKE社製)を用いて剪断速度1(1/s)の条件で測定したところ、31Pa・sであった。なお、粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠して温度25℃にて行った。
【0141】
(LEDパッケージの作製)
得られた組成物1質量部に、メチルフェニルシリコーン樹脂(信越化学工業社製「KER-6150(A/B)を14質量部加えて、組成物中に表面修飾酸化ジルコニウム粒子が2質量%となるように調整し、混合した。この組成物1質量部に蛍光体粒子(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAG)を0.38質量部混合した組成物(表面修飾酸化ジルコニウム粒子と樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38)を、LEDリードフレーム内に300μmの厚みで充填した。その後、室温で3時間保持した。次いで、ゆっくりと組成物を加熱硬化させて封止部材を形成し、実施例1に係る白色LEDパッケージを作製した。
【0142】
得られた白色LEDパッケージについて、全光束測定システム(大塚電子社製)にて、LEDパッケージに電圧3V、電流150mAを印加し測光することにより発光効率を測定した。この結果、実施例1に係る白色LEDパッケージの明るさは、78.3lmであった。
【0143】
[比較例1]
(分散液の作製)
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)10質量部、トルエン82質量部、表面修飾材料としてのメトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越工業化学社製KR217)5質量部、水0.05質量部を混合し、ビーズミルで6時間分散した。次いで、ビーズ除去後の分散液を130℃のオイルバス中において6時間還流し、酸化ジルコニウム粒子がメトキシ基含有フェニルシリコーンレジンで表面修飾された比較例1に係る分散液を得た。
【0144】
(分散液の評価)
得られた比較例1に係る分散液について、実施例1と同様にして、水、塩酸、遊離表面修飾材料の含有量、酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径D50ならびに波長460nmにおける積分透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
(組成物の作製・評価)
実施例1と同様にして、組成物の作製を行い、比較例1に係る組成物を得た。得られた組成物について、実施例1と同様にして、波長460nmにおける積分透過率および粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0146】
(LEDパッケージの作製・評価)
得られた組成物を用い、実施例1と同様にして、比較例1に係る白色LEDパッケージを作製した。得られた白色LEDパッケージについて、実施例1と同様にして発光効率を測定した。結果を表1に示す。
【0147】
[比較例2、3]
(分散液の作製)
第1の工程においてメタノールの混合量を表1に示すように変更し、第3の工程を省略した以外は、実施例1と同様にして、比較例2、3に係る分散液を作製した。なお、第2の工程において添加する混合液の量は、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジンの量が実施例1と同様となるように調節した。また、第2の工程における分散液中におけるメタノールの含有量は、表1に示すとおりである。
【0148】
[比較例4]
第3の工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る分散液を得た。すなわち、実施例1の第2の工程後に、ビーズ除去後の分散液を130℃のオイルバス中において6時間還流し、比較例4に係る分散液を得た。
【0149】
(分散液の評価)
得られた比較例2〜4に係る分散液について、実施例1と同様にして、水、塩酸、遊離表面修飾材料の含有量、酸化ジルコニウム粒子の平均分散粒子径D50ならびに波長460nmにおける積分透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0150】
(組成物の作製・評価)
実施例1と同様にして、組成物の作製を行い、比較例2〜4に係る組成物を得た。得られた組成物について、実施例1と同様にして、波長460nmにおける積分透過率および粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0151】
(LEDパッケージの作製・評価)
得られた組成物を用い、実施例1と同様にして、比較例2〜4に係る白色LEDパッケージを作製した。得られた白色LEDパッケージについて、実施例1と同様にして明るさを測定した。結果を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
実施例1と比較例1〜4との結果より、本発明に係る実施例1においては、得られる組成物の積分透過率が優れており、この結果、得られる発光装置(LEDパッケージ)の光の明るさを向上させることができることが示された。さらに、本発明に係る実施例1においては、得られた組成物の粘度が比較的低く、その取扱いが容易であった。
【0154】
以上のような、実施例1における発光装置(LEDパッケージ)の光の明るさの向上および組成物の粘度の低減効果は、第1の工程および第3の工程を行ったことに起因するものと考えられた。
【0155】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。