【解決手段】中心体34の周囲に鎧装42を有する敷設物10から鎧装を除去するための鎧装除去治具50であって、中心体を挿入する貫通孔61を有する枠体60と、枠体から、貫通孔に挿入された中心体から離隔する方向に向かって突出した把手70とを備え、枠体が、貫通孔の入り口61aの周囲に、軸断面形状が入り口に中心体を挿入する方向とは逆側に向かって尖鋭となる楔状とした。
前記楔状の断面形状は、内側部分が前記中心体を挿入する方向に平行であり、外側部分が前記中心体を挿入する方向とは逆側に向かうにつれて前記貫通孔側に寄る方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の鎧装除去治具。
前記把手は、前記貫通孔に挿入された中心体から離隔する、互いに逆となる二方向に向かって延出された二本の棒状体からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の鎧装除去治具。
前記枠体の前記貫通孔の入り口側の先端部を前記貫通孔の入り口から見た形状が、円弧の凸部側が前記貫通孔の中心側を向いた複数の円弧を、前記貫通孔の入り口に沿って並べた形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の鎧装除去治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の海底ケーブルは、鉄線鎧装の内側及び外側にジュート等で構成される座床層等の層を配置し、これらの内外のジュート等の層に粘着性を有する防腐性コンパウンド等の液体を塗布して、鉄線鎧装の腐食防止を図っていた。
一方、海底ケーブルは、新規の敷設作業時や既設の海底ケーブルのメンテナンス作業時において、ケーブル端部を他の海底ケーブル等の接続対象物と接続する作業が行われる場合がある。
この場合、従来から、複数作業者が接続端部の鉄線鎧装を手で除去する作業が行われていた。
また、鉄線鎧装に塗布された防腐性コンパウンドの粘着力の影響により、鉄線鎧装除去作業は、非常に身体的負担が大きく、長時間を要し、作業者が数多く必要となる等の問題が生じていた。
また、防腐性コンパウンドの粘着力と鉄線の弾性力とにより、作業時には鉄線が予期せぬ方向にはねる場合があり、除去作業に細心の注意が必要となるという問題も生じていた。
【0005】
本発明は、作業性に優れる鎧装除去治具及び鎧装除去方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
中心体の周囲に鎧装を有する敷設物から前記鎧装を除去するための鎧装除去治具であって、
前記中心体を挿入する貫通孔を有する枠体と、
前記貫通孔に挿入された中心体から離隔する方向に向かって前記枠体から突出した把手とを備え、
前記貫通孔の入り口の周囲が、前記中心体を挿入する方向とは逆側に向かって尖鋭となる楔状の断面形状であることを特徴とする。
【0007】
上記発明において、前記楔状の断面形状は、内側部分が前記中心体を挿入する方向に平行であり、外側部分が前記中心体を挿入する方向とは逆側に向かうにつれて前記貫通孔側に寄る方向に傾斜している形状としても良い。
上記発明において、前記枠体が、前記貫通孔を中心として複数に分割可能としても良い。
上記発明において、前記枠体を円筒状としても良い。
上記発明において、前記枠体の外周に円錐面を有する形状としても良い。
上記発明において、前記枠体の外周に、複数の溝又は複数の凸条部を備える構成としても良い。
上記発明において、前記複数の溝又は前記複数の凸条部は、螺旋状に形成しても良い。
上記発明において、前記枠体の前記貫通孔の入り口側の先端部を鋸歯状としても良い。
上記発明において、前記把手は、前記貫通孔に挿入された中心体から離隔する、互いに逆となる二方向に向かって延出された二本の棒状体からなる構成としても良い。
上記発明において、前記枠体の前記貫通孔の入り口側の先端部を前記貫通孔の入り口から見た形状を、円弧の凸部側が前記貫通孔の中心側を向いた複数の円弧を、前記貫通孔の入り口に沿って並べた形状としても良い。
【0008】
また、他の発明は、前記鎧装除去治具を用いて前記敷設物の中心体の周囲から前記鎧装を除去する鎧装除去方法であって、
前記敷設物の端部に対して、前記枠体の前記貫通孔の入り口側の先端部を突き当てて、
前記把手によって、前記敷設物の前記中心体を中心として前記枠体を回転させながら、前記貫通孔に前記中心体を挿入することで当該中心体から前記鎧装を剥離させることを特徴とする。
【0009】
また、他の発明は、複数の溝又は複数の凸条部が螺旋状に形成されている前記鎧装除去治具を用いて前記敷設物の中心体の周囲から前記鎧装を除去する鎧装除去方法であって、
前記鎧装は、前記中心体の周囲に螺旋状に並んで設けられた複数の抗張力線からなり、
前記複数の抗張力線の螺旋の巻き方向と前記枠体の前記複数の溝又は前記複数の凸条部の螺旋の巻き方向とが一致し、
前記敷設物の端部に対して、前記枠体の前記貫通孔の入り口側の先端部を突き当てて、
前記把手によって、前記敷設物の前記中心体を中心として前記枠体を前記複数の抗張力線の螺旋の巻き方向に回転させながら、前記貫通孔に前記中心体を挿入することで当該中心体から前記鎧装を剥離させることを特徴とする。
【0010】
また、他の発明は、把手が二本の棒状体からなる前記鎧装除去治具を用いて前記敷設物の中心体の周囲から前記鎧装を除去する鎧装除去方法であって、
前記鎧装は、前記中心体の周囲に螺旋状に並んで設けられた複数の抗張力線からなり、
前記敷設物の端部に対して、前記枠体の前記貫通孔の入り口側の先端部を突き当てて、
前記把手によって、前記敷設物の前記中心体を中心として前記枠体を前記複数の抗張力線の螺旋の巻き方向に回転させながら、前記貫通孔に前記中心体を挿入することで当該中心体から前記鎧装を剥離させると共に、
前記剥離した前記鎧装の前記複数の抗張力線のいずれかの隙間から外側に前記二本の棒状体を突出させた状態で前記枠体の回転操作を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明は、敷設物の中心体から鎧装の全てを同時に剥離させることができ、作業性に優れる鎧装除去治具及び鎧装除去方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の概要]
本実施形態では、敷設物としての海底ケーブルのケーブル端部において鎧装を除去するための鎧装除去治具について説明する。
図1は海底ケーブル10のケーブル長手方向に垂直な断面(軸垂直断面)を示す断面図である。
【0014】
[海底ケーブル]
海底ケーブル10は、三本の電力ケーブルコア20と、介在部31を介してこれら三本の電力ケーブルコア20を内包する座床層41と、座床層41の外側に形成された鎧装42と、鎧装42の外側に形成されたジュート等の最外層43とを備えている。
【0015】
各電力ケーブルコア20は、中心に導体部21を備え、当該導体部21から外側に向かって順番に内部半導電層22,架橋ポリエチレン絶縁層23,外部半導電層24等が被覆されている。
三本の電力ケーブルコア20はいずれも外径が等しく、各電力ケーブルコア20が他の二本の電力ケーブルコア20と接するように撚り合わされている。
【0016】
この座床層41の内周は、海底ケーブル10のケーブル長手方向に直交する断面において、撚り合わされた三本の電力ケーブルコア20に外接する円形である。そして、座床層41と三本の電力ケーブルコア20との隙間領域には、介在部31としてのジュート等が充実されている。
また、介在部31には、一本または複数本の電力保安通信線33等が複合される場合がある。
上記各電力ケーブルコア20、介在部31及び電力保安通信線33が、海底ケーブル10の中心体34を構成している。例えば、電力保安通信線33は、二本とも光ファイバーケーブルである。
【0017】
鎧装42は、座床層41の外周において、周方向に並べられた複数の抗張力線44からなる。抗張力線44は、中実の線材であって、防食性コンパウンドを塗布した亜鉛めっき鉄線、または直径6mmの亜鉛めっき鉄線以上の機械的強度を有する金属線が使用される。各抗張力線44は、座床層41の外周において一様に螺旋状に巻回されている。
【0018】
座床層41と最外層43は、鎧装42を構成する抗張力線44の内側と外側とに配置され、いずれも層状に配置されたジュート等からなる。
これら座床層41と最外層43には、粘着性の防腐性コンパウンドが塗布され腐食防止を図っている。
【0019】
[鎧装除去治具]
図2は鎧装除去治具50の使用態様を示す説明図、
図3は鎧装除去治具50の平面図、
図4は鎧装除去治具50の軸断面図である。
鎧装除去治具50は、
図2に示すように、海底ケーブル10の端部において、中心体34の周囲から鎧装42を除去するための器具である。
【0020】
上記鎧装除去治具50は、
図2〜
図4に示すように、中心体34を挿入する貫通孔61を有する枠体60と、枠体60から、貫通孔61に挿入された中心体34から離隔する方向に向かって突出した把手70とを備えている。
鎧装除去治具50は、その性質上、所定の強度が要求されるので、枠体60及び把手70は、適度に剛性を有する材料、例えば、鋼材等の金属から形成されている。
【0021】
[枠体]
枠体60は、円筒状であり、その内側が貫通孔61となっている。以下、枠体60の円筒形状の中心線に沿った方向を軸方向という。
貫通孔61は、枠体60の軸方向の全長に渡って貫通している。そして、枠体60の軸方向の一端部(
図4における下側)から他端部(
図4における上側)に向かう方向に、貫通孔61に対して海底ケーブル10の中心体34が挿入される。つまり、貫通孔61における軸方向の一端部側が中心体34を挿入する入り口61aとなっている。そして、枠体60の軸方向と貫通孔61に対する中心体34の挿入方向は一致している。
【0022】
また、貫通孔61には中心体34が挿入される機能上、貫通孔61の内径は中心体34の外径に等しいか若干大きいことが望ましい。
なお、以下の説明では、便宜的に、枠体60の軸方向の一端部側を「下」側といい、枠体60の軸方向の他端部側を「上」側という。
【0023】
枠体60の下端部における貫通孔61の入り口61aの周囲は、軸方向に沿った断面形状が、中心体34を挿入する方向とは逆側(下側)に向かって尖鋭となる楔状となっている。以下、楔状の断面形状となっている枠体60の先端部を便宜的に、「ブレード62」と称する。
このブレード62は、枠体60の全周に渡って軸断面形状が一様となる周壁状となっている。即ち、枠体60の内側は内径が一定であり、外径が下端部に向かうに従って漸減することでブレード62が形成されている。ブレード62の円形の先端部の径は、貫通孔61の入り口61aの内径とほぼ一致する。ブレード62の先端部は、ブレード62の下端部であり、鎧装42の除去作業時に海底ケーブル10と接触する部分である。また、
図4に示すように、ブレード62は、枠体60の下端部の全周にわたって形成されている。枠体60の軸方向の一端部から他端部に向かう方向に沿って、ブレード62の外周面62aの外径は漸増している。また、ブレード62の内周面62bの内径は、例えば一定である。
また、枠体60の下端部における貫通孔61の入り口61aの断面形状は、内側部分が軸方向に平行であり、外側部分が軸方向の一端部から他端部に向かうにつれて貫通孔61側(枠体60の中心線側)に寄る方向に傾斜している。
【0024】
このブレード62は、座床層41を掻き取って、海底ケーブル10に対して中心体34の外周から、少なくとも鎧装42及び最外層43を、場合によっては鎧装42、座床層41及び最外層43を剥離して除去する機能を有することから、先端部の軸断面の角度は鋭角であって微小な角度であることが好ましい。ブレード62の先端部の軸断面の角度とは、外周面62aと内周面62bとのなす角である。ブレード62の先端部の径は、座床層41の内径以上座床層41の外径以下であることが望ましい。
また、ブレード62となる部分は、熱処理などの硬化処理を施しても良い。
【0025】
枠体60はブレード62部分を除いて、内径及び外径が一定である。そして、枠体60は、貫通孔61を中心として軸方向に沿って二分割可能な半割構造となっている。
図5は枠体60の分解平面図である。図示のように、枠体60は、軸垂直断面形状が略半円弧状となる第一枠体部材63及び第二枠体部材64に分割可能である。
【0026】
第一枠体部材63は、軸方向から見て略半円弧の一端部に、径方向の内側を減肉してなる重合部631を有し、軸方向から見て略半円弧の他端部に、径方向の外側を減肉してなる重合部632を有している。
また、第二枠体部材64は、軸方向から見て略半円弧の一端部に、径方向の外側を減肉してなる重合部641を有し、軸方向から見て略半円弧の他端部に、径方向の内側を減肉してなる重合部642を有している。
【0027】
そして、第一枠体部材63の重合部631と第二枠体部材64の重合部641とを重ね合わせ、第一枠体部材63の重合部632と第二枠体部材64の重合部642とを重ね合わせて、重合部631と重合部641で合致する位置と、重合部632と重合部642で合致する位置とにそれぞれ設けられた不図示のネジ穴を通じて止めネジ65を締結することで第一枠体部材63と第二枠体部材64を一体的に連結することができる。
【0028】
図1に示すように、鎧装除去治具50は、枠体60の貫通孔61に海底ケーブル10の中心体34の一端部を挿入し、中心体34の他端部側に向かって鎧装除去治具50を進行させながら鎧装42等の剥離除去が行われる。
このため、鎧装42の除去長さが長くなると、鎧装除去治具50は、中心体34の一端部から遠方まで移動することになり、作業完了後等に鎧装除去治具50を取り外すためには、遠方の中心体34の一端部まで引き戻す作業が必要となる。換言すると、鎧装42を除去している海底ケーブル10から鎧装除去治具50を取り外す場合、鎧装除去治具50は鎧装42の除去部分の長さに相当する距離を移動させる必要がある。そのため、鎧装42の除去長さが長くなるにつれて、鎧装42の移動距離が増加し、作業負担が増える。
しかしながら、枠体60を第一枠体部材63と第二枠体部材64とに分割可能とすることで、鎧装除去治具50を移動させずにその場で海底ケーブル10から取り外すことが可能となり、作業負担を軽減することができる。
【0029】
[把手]
把手70は、枠体60に連結される。例えば、
図3に示すように、把手70は、枠体60の外周面66から延設されている。把手70は、貫通孔61に挿入された中心体34から離隔する、互いに逆となる二方向に向かって延出された二本の棒状体である。即ち、各把手70は、枠体60の上端部の外周面上から、枠体60の直径方向の両端部に個別に延出された棒状体である。
把手70は、枠体60の直径方向外側に延びる棒状体であることから、鎧装除去治具50による鎧装42等の除去作業において、
図2に示すように、剥離除去された複数の抗張力線44の隙間から外側に突出した状態となり、各把手70を掴んで容易に作業を行うことができる。
【0030】
[鎧装の除去作業]
上記鎧装除去治具50による海底ケーブル10の鎧装42等の除去作業について
図2に基づいて説明する。
鎧装除去の際には、海底ケーブル10の一端部の端面に対して、中心体34が枠体60の貫通孔61の入り口61aの内側となるようにブレード62の先端を突き当てる。例えば、枠体60の下端部を座床層41に突き当てる。
そして、作業者は、二つの把手70の一方又は両方を掴んで、ブレード62が海底ケーブル10の一端部の端面から海底ケーブル10の他端部に向かって押し込みながら、枠体60の中心線回りに回転させる。これにより、ブレード62の先端が、海底ケーブル10の軸方向に沿って座床層41に侵入し、中心体34と鎧装42等との間を裂くように剥離させることができ、剥離した鎧装42等は、ブレード62の傾斜に従って中心体34から離隔する方向にガイドされる。また、海底ケーブル10の中心体34は、枠体60の貫通孔61の内部に挿入され、枠体60の他端部側に抜けてゆく。
【0031】
上記枠体60の回転操作方向は、例えば、螺旋状の抗張力線44の巻き方向に一致させて行われる。即ち、海底ケーブル10に対して鎧装除去治具50が進行する方向について、鎧装42の各抗張力線44が巻かれている方向に枠体60を回転させる。
これにより、剥離除去された各抗張力線44の外側に突出した状態となる各把手70は、各抗張力線44の螺旋に沿って移動するので、回転操作を容易に行うことができる。
【0032】
[発明の実施形態の技術的効果]
鎧装除去治具50は、枠体60の直径方向外側に突出した把手70を有し、貫通孔61の入り口61aの周囲に、中心体34を挿入する方向に沿った断面形状が枠体60の一端部側に向かって尖鋭な形状となる周壁状のブレード62を有している。
鎧装除去治具50がこのような構成であるため、海底ケーブル10の端部に対して、枠体60のブレード62の先端部を突き当てて、把手70によって、海底ケーブル10の中心体34を中心として枠体60を回転させながら、貫通孔61に中心体34を挿入させる、という簡単な操作で、海底ケーブル10の中心体34から全ての抗張力線44を同時に剥離させることが可能となり、作業者の効果的な負担軽減を実現することが可能となる。
【0033】
さらに、鎧装除去治具50のブレード62の軸断面形状が枠体60の一端部側に向かって尖鋭となる形状であるため、中心体34から鎧装42等を剥離させる場合に、鎧装42を構成する複数の抗張力線44を中心体34から離隔する方向に誘導することができる。このため、抗張力線44の挙動を予測することが容易となり、予期せぬ方向にはねることを抑制することができ、かかる面からも作業負担の軽減を図ることが可能となる。
特に、鎧装除去治具50のブレード62の軸断面形状が、内側部分(貫通孔61側)が軸方向に平行であり、外側部分(外周面62a側)が下方に向かうにつれて貫通孔61側に寄る方向に傾斜しているので、中心体34を良好に挿通させながら、抗張力線44を中心体34から離隔する方向に誘導することができ、円滑な作業を行うことが可能となる。
【0034】
また、鎧装除去治具50の枠体60は、貫通孔61を中心として二つに分割可能であるため、海底ケーブル10の剥離除去作業を長距離行う場合でも、枠体の60を分割させることでその場で取り外すことが可能となる。これにより、鎧装除去治具50を取り外す場合に、海底ケーブル10の開始端部まで押し戻す作業を不要とし、作業負担のさらなる軽減を実現することが可能となる。
【0035】
また、鎧装除去治具50の枠体60を円筒状としているので、鎧装42等の剥離除去作業において、枠体60を海底ケーブル10の中心体34に沿わせて安定的に移動させることができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0036】
また、鎧装除去治具50の把手70は、枠体60の軸線に対する直径方向両側に向かって個別に延出された二本の棒状体から構成されている。
このため、鎧装42を構成する複数の抗張力線44の隙間から各把手70を外側に突出させると共に、各抗張力線44に沿って容易に移動させることができるので、鎧装42等の剥離除去作業の作業性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0037】
また、上記把手70は、鎧装42を構成する各抗張力線44が中心体34の外周に螺旋状に巻かれている場合に、当該各抗張力線44の巻き方向に沿って枠体60を回転操作することに適しており、このような螺旋状の抗張力線44からなる鎧装42を有する海底ケーブル10に対して、容易且つ良好な作業性をもって剥離除去作業を行うことが可能となる。
【0038】
[把手の連結位置について]
図2〜
図4に示す鎧装除去治具50では、枠体60の上端部(ブレード62とは逆側の端部)に把手70を設ける構成を例示している。この構成の場合には、鎧装42等の剥離除去作業の開始時において、把手70が邪魔にならず、鎧装除去治具50を海底ケーブル10の端部に設置できるため、作業性の向上を図る効果を得ることができる。
【0039】
但し、把手70の連結位置については、枠体60の上端部に限定されず軸方向におけるいずれの位置に設けてもよい。
例えば、
図6に示すように、枠体60の下端部(ブレード62側の端部)に把手70を設けても良い。
把手70をこのように配置した場合には、鎧装42等の剥離除去作業において、鎧装除去治具50を中心体34に沿って移動させる場合に、枠体60の向きを適正に制御し易くなり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
[枠体の他の例(1)]
図2〜
図4に示す鎧装除去治具50では、円筒状の枠体60を例示したが、これに限定されない。
例えば、
図7に示す鎧装除去治具50Aのように、軸方向長さを短くした円形枠からなる枠体60Aを適用しても良い。
この場合、海底ケーブル10が湾曲等を生じている部分があるような場合でも、中心体34に沿って鎧装除去治具50Aを移動させて円滑に鎧装42等の剥離除去作業を行うことが可能となる。
【0041】
[枠体の他の例(2)]
図8に示す枠体60Bのように、枠体60Bの外周には、枠体60Bの軸方向に沿って周方向に一定の間隔で複数の溝65Bを設けてもよい。例えば、溝65Bの幅は抗張力線44の外径と同じである。なお、
図8では、把手70の図示を省略している。また、枠体60と同様に、枠体60Bも貫通孔を中心として複数の部材に分割可能だが、その図示は省略している。
このように、枠体60Bの外周に溝65Bを設けた場合には、鎧装42等の剥離除去作業において、各抗張力線44を安定的にガイドすることができ、複数の抗張力線44を予定された方向により効果的に誘導することができ、抗張力線44が予期せぬ方向にはねることをより効果的に抑制することが可能となる。
また、剥離除去作業において、中心体34に対する枠体60Bの移動動作が各抗張力線44に妨げられず、より円滑に移動動作を行うことが可能となる。
また、鎧装42等の剥離除去作業の観点から、各溝65Bは抗張力線44の巻き方向と一致させた螺旋状とすることが好ましい。複数の溝65Bが螺旋状に形成されていると、螺旋状に巻かれている各抗張力線44をさらに安定的にガイドすることができる。
【0042】
[枠体の他の例(3)]
また、
図9に示す枠体60Cのように、枠体60Cの外周には、枠体60Cの軸方向に沿って周方向に一定の間隔で複数の凸条部65Cを設けてもよい。例えば、複数の凸条部65Cの間隔は抗張力線44の外径と同じである。なお、
図9も把手70の図示を省略している。また、枠体60と同様に、枠体60Cも貫通孔を中心として複数の部材に分割可能だが、その図示は省略している。
枠体60Cの外周に凸条部65Cを設けた場合も、前述の溝65Bの場合と同様に、各抗張力線44を効果的に誘導し、抗張力線44が予期せぬ方向にはねることを効果的に抑制する。また、剥離除去作業時の枠体60Cの移動動作を円滑に行うことができる。
また、剥離除去作業の観点から、各凸条部65Cは、抗張力線44の巻き方向と一致させた螺旋状とすることが好ましい。複数の凸条部65Cが螺旋状に形成されていると、螺旋状に巻かれている各抗張力線44をさらに安定的にガイドすることができる。
【0043】
[枠体の他の例(4)]
図2〜
図4に示す鎧装除去治具50では、ブレード62を除いて外径が一定の円筒状の枠体60を例示したが、これに限定されない。
例えば、
図10及び
図11に示す枠体60Dのように、外周に円錐面を有する形状としても良い。なお、
図10及び
図11では把手70の図示を省略している。また、枠体60Dも貫通孔を中心として複数の部材に分割可能だが、その図示は省略している。
【0044】
この枠体60Dは、ブレード62Dを除いて外周が一つの円錐面からなり、縮径した端部にブレード62Dが設けられている。
また、
図11に示すように、枠体60Dの周壁は、厚さが軸方向について一定であり、貫通孔61Dはブレード62D側に向かって縮径した形状となっている。
枠体60Dは、外周に円錐面を有する形状なので、海底ケーブル10の鎧装42等の剥離除去作業において、鎧装42等を枠体60Dの径方向外側に効果的に押し出すことができ、剥離作業をより有効に行うことが可能となる。
【0045】
[枠体の他の例(5)]
また、外周に円錐面を有する形状の枠体の他の例として、
図12に示す枠体60Eを挙げることができる。この
図12でも把手70の図示を省略している。また、枠体60Eも貫通孔を中心として複数の部材に分割可能だが、その図示は省略している。
【0046】
この枠体60Eは、ブレード62Eも含めて外周が一つの円錐面からなり、縮径した先端部がブレード62Eとなっている。
また、
図12に示すように、貫通孔61Eの内径が軸方向全長に渡って一定であり、枠体60Eの周壁は、厚さがブレード62E側に向かって漸減する形状となっている。
枠体60Eもまた、枠体60Dと同様に、外周に円錐面を有する形状なので、海底ケーブル10の鎧装42等の剥離除去作業において、鎧装42等を枠体60Eの径方向外側に効果的に押し出すことができ、剥離作業をより有効に行うことが可能となる。
【0047】
なお、上記枠体60D及び60Eの場合も、その外周に前述した溝65B又は凸条部65Cを設けてもよいことは言うまでもない。
【0048】
[ブレードの他の例(1)]
上述したいずれの枠体の場合も、
図13に示すブレード62Fのように、その先端部を鋸歯状に形成しても良い。鋸歯の形状は、ブレード62Fの軸方向に沿って区画され、ブレード62Fの先端部の内径は、上記ブレード62,62D,62Eの先端部の内径と同じである。
このブレード62Fは、先端部が鋸歯状であるため、海底ケーブル10の鎧装42等の剥離除去作業において、枠体を回転操作する場合に、中心体34の外周から鎧装42等を断ち切るように分離することができ、剥離除去作業を効果的且つ効率的に行うことが可能となる。
【0049】
[ブレードの他の例(2)]
上述したいずれの枠体の場合も、
図14に示すブレード62Gのように、その先端部を貫通孔61Gの入り口61Gaから見た形状が、円弧の凸部側が貫通孔61Gの中心側を向いた複数の円弧を、貫通孔61Gの入り口61Gaに沿って並べた形状に形成しても良い。なお、
図14は、ブレード62Gの先端部のエッジ形状のみを示している。ブレード62Gの先端部の内径は、上記ブレード62,62D,62E,62Fの先端部の内径と異なる。貫通孔61Gの中心側からみた場合、ブレード62Gの先端部には、複数の円弧状の凸部が周方向に間隔をあけずに連続して設けられている。換言すると、ブレード62Gの外側からみた場合、ブレード62Gの先端部には、複数の円弧状の凹部が周方向に間隔をあけずに連続して設けられている。
このブレード62Gは、海底ケーブル10の鎧装42等の剥離除去作業において、その先端部が鎧装42を構成する複数の抗張力線44の外周に沿って剥離を促すことができ、剥離除去作業を効果的に行うことが可能となる。
また、ブレード62Gの先端部が各抗張力線44をガイドする機能を有するので、各抗張力線44をより効果的に誘導することが可能となる。
このような剥離除去作業や抗張力線44の誘導の効率化の観点から、上記の凹部の曲率は、抗張力線44の軸垂直断面の曲率と同じであることが好ましい。
【0050】
[その他]
上記実施形態では、敷設物として、海底ケーブルを例示したがこれに限定されない。鎧装除去治具は、中心体の周囲に鎧装を有するあらゆる敷設物に対する鎧装除去を有効に行うことが可能である。例えば、海中以外で使用される鎧装ケーブルや、配管を中心体とする鎧装配管にも、鎧装除去治具を使用することが可能である。
【0051】
また、上述した鎧装除去治具の枠体は、いずれも、貫通孔を中心として三つ以上に分割可能としても良い。
また、把手は棒状に限らず、各抗張力線の隙間を通しやすいあらゆる形態の把手を使用することが出来る。例えば、把手は、板状であっても良い。
また、把手の本数は、2本に限らず、単数でも、3本以上の複数でもよい。
また、海底ケーブル10が中心体34の外周に鎧装42を備えれば、中心体34の構成は特に限定されるものではない。例えば、三本の電力ケーブルコア20の外径は異なってもよい。また、電力ケーブルコア20の本数は、単数でも、2本もしくは4本以上の複数でもよい。電力保安通信線33の本数は、単数でも、3本以上の複数でもよい。海底ケーブル10は電力保安通信線33を具備しなくてもよい。
また、鎧装42は、
図1に示すように座床層41の外周上に設けられる1層の抗張力線44から構成されてもよいし、2層以上の抗張力線44から構成されてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、各枠体60,60A,60B,60C,60D,60Eに示すように、その下端部における貫通孔61の入り口61aの周囲において、軸方向に沿った断面形状が、中心体34を挿入する方向とは逆側に向かって尖鋭となる楔状となっている構造を例示している。そして、これらの楔状形状は、いずれも、枠体の内周面が一様、即ち、軸方向の全長に渡って、内径が等しいか、或いは、内壁面が一定の角度で傾斜する例をしている。
しかしながら、楔状の形状については、上記に限定されず、例えば、
図15に示すように、中心体34を挿入する方向とは逆側に向かって尖鋭となる形状であって、楔状の先端に向かって、外径が徐々に縮径し、内径が徐々に拡大する形状としても良い。枠体60Dの場合はもともと内径が徐々に縮径する形状だがこの場合には、先端部において、内径の縮小率が減少する形状とすることが好ましい。
また、断面楔状という場合には、斜面の断面形状が直線状に限らず外側に凸となる曲線状や内側に凹となる曲線状としても良い。