【解決手段】銅張積層板は、A)銅箔層に二次元的に分布するドットパターンを準備する工程、B)ポリイミド層を介してドットパターンを撮影し、出力画像として生成させる工程、C)出力画像を入力画像であるドットパターンと同じドット数に分割し、各ドットを白ドット又は黒ドットに分類し、ドット毎に輝度を数値化して度数分布を求め、平均値及び標準偏差を演算する工程、及び、D)所定の式に基づき信号ノイズ比を算出する工程、を含む視認性評価方法でドットの視認性が評価され、光量を所定の範囲内に設定して視認性を評価した場合、信号ノイズ比が6以上となるように、製造される。
ポリアミド酸溶液を銅箔上に直接塗布した後、熱処理により乾燥、硬化することにより、ポリイミド層と、このポリイミド層の少なくとも片側の面に積層された銅箔層とを有する銅張積層板を製造する銅張積層板の製造方法であって、
前記銅張積層板が、次の工程A〜工程D;
A)前記銅箔層に二次元的に分布するドットパターンを準備する工程、
B)前記ポリイミド層を介して、撮像装置によって前記ドットパターンを撮影し、撮影されたドットパターン像を出力画像として生成させる工程、
C)前記出力画像を入力画像である前記ドットパターンと同じドット数に分割するとともに、各ドットを白ドット又は黒ドットのいずれかに分類し、分類された前記白ドット及び前記黒ドットについてドット毎に輝度を数値化して度数分布を求め、前記白ドット及び前記黒ドットについて前記輝度の平均値及び標準偏差を演算する工程、及び、
D)前記輝度の平均値及び標準偏差から、下記の式(1);
【数1】
[式中、SNRは信号ノイズ比を示し、μ
0は黒ドットの輝度の平均値を意味し、μ
1は白ドットの輝度の平均値を意味し、σ
Lは黒ドットの輝度の標準偏差と白ドットの輝度の標準偏差のいずれか大きい方を意味する。]
に基づき信号ノイズ比を算出する工程、
を含む視認性評価方法によって、前記工程Bにおける撮影時の光量を1〜8mW/cm
2の範囲内に設定して視認性を評価した場合、前記信号ノイズ比が6以上であることを特徴とする銅張積層板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、銅箔層とポリイミド層とを有する銅張積層板を多数作製し、上記視認性の評価手法に基づき、銅張積層板の視認性を評価した。その結果、多くの銅張積層体では、光量の変化によって視認性が大きく変動する傾向があることが判明した。このように、光量などの条件に対する視認性の変動が大きい場合は、例えば回路基板の製造過程でアライメントマ−クを認識させる際に、条件を最適化しなければならない。しかし、高い視認性を得るための最適条件が材料毎に異なるとともに、最適条件のマ−ジンが狭い傾向があることから、最適化に時間がかかり、作業効率の低下を招くおそれがある。
【0007】
従って、本発明は、光量が変化しても、高い視認性を維持できる銅張積層板及び回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、鋭意検討の結果、特定の材質のポリイミドと、特定の表面状態を有する銅箔とを組み合わせて得られる銅張積層板は、光量が変化しても安定的に高い視認性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の銅張積層板は、ポリイミド層と、このポリイミド層の少なくとも片側の面に積層された銅箔層とを有する銅張積層板であって、次の工程A〜工程D;
A)前記銅箔層に二次元的に分布するドットパターンを準備する工程、
B)前記ポリイミド層を介して、撮像装置によって前記ドットパターンを撮影し、撮影されたドットパターン像を出力画像として生成させる工程、
C)前記出力画像を入力画像である前記ドットパターンと同じドット数に分割するとともに、各ドットを白ドット又は黒ドットのいずれかに分類し、分類された前記白ドット及び前記黒ドットについてドット毎に輝度を数値化して度数分布を求め、前記白ドット及び前記黒ドットについて前記輝度の平均値及び標準偏差を演算する工程、及び、
D)前記輝度の平均値及び標準偏差から、下記の式(1)に基づき信号ノイズ比を算出する工程、
を含む視認性評価方法によって、前記工程Bにおける撮影時の光量を1〜8mW/cm
2の範囲内に設定して視認性を評価した場合、前記信号ノイズ比が6以上であることを特徴とする。
【0010】
【数1】
[式中、SNRは信号ノイズ比を示し、μ
0は黒ドットの輝度の平均値を意味し、μ
1は白ドットの輝度の平均値を意味し、σ
Lは黒ドットの輝度の標準偏差と白ドットの輝度の標準偏差のいずれか大きい方を意味する。]
【0011】
本発明の銅張積層板は、前記ポリイミド層に接する側の前記銅箔層の表面粗度(Rz)が0.8μm以下であってもよい。
【0012】
本発明の銅張積層板は、前記ポリイミド層に接する側の前記銅箔層の表面を、前記ポリイミド層を介して測定した場合に、L
*a
*b
*表色系で、色差Δa
*及びΔb
*がいずれも±20以内であり、かつ、明度差ΔL
*が−75以下であってもよい。
【0013】
本発明の銅張積層板は、前記ポリイミド層の全光線透過率が70%以上であり、かつ、ヘイズが30%以上80%以下であってもよい。
【0014】
本発明の回路基板は、上記いずれかの銅張積層板の前記銅箔層を回路加工してなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の銅張積層板は、優れた視認性を有するとともに、光量を変えても視認性の変動が少ない。従って、本発明の銅張積層板を用いることにより、回路基板の配線形成工程や実装工程での位置合わせの精度を高めることができ、信頼性の高い電子機器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[銅張積層板]
本実施の形態の銅張積層板は、ポリイミド層と、このポリイミド層の少なくとも片側の面に積層された銅箔層とを備えている。銅張積層板は、例えばFPCへ加工しやすいように、幅数百mm程度の長尺なシ−ト状とされ、通常、ロ−ル状に巻き取られていてもよい。
【0019】
本実施の形態の銅張積層板は、下記の視認性評価方法において、光量を1〜8mW/cm
2の範囲内に設定して視認性を評価した場合に、信号ノイズ比(SNR)が6以上である。
【0020】
<視認性評価>
視認性評価は、以下の工程A〜D;
A)銅張積層板の銅箔層に二次元的に分布するドットパターンを準備する工程、
B)銅張積層板のポリイミド層を介して、撮像装置によって前記ドットパターンを撮影し、撮影されたドットパターン像を出力画像として生成させる工程、
C)前記出力画像を入力画像である前記ドットパターンと同じドット数に分割するとともに、各ドットを白ドット又は黒ドットのいずれかに分類し、分類された前記白ドット及び前記黒ドットについてドット毎に輝度を数値化して度数分布を求め、前記白ドット及び前記黒ドットについて前記輝度の平均値及び標準偏差を演算する工程、及び、
D)前記輝度の平均値及び標準偏差から、下記の式(1)に基づき信号ノイズ比を算出する工程、
を含むことができる。
【0021】
【数2】
[式中、SNRは信号ノイズ比を示し、μ
0は黒ドットの輝度の平均値を意味し、μ
1は白ドットの輝度の平均値を意味し、σ
Lは黒ドットの輝度の標準偏差と白ドットの輝度の標準偏差のいずれか大きい方を意味する。]
【0022】
工程(A)について詳しく説明する。評価に用いる銅張積層板の片面側の銅箔に、
図1に示すような二次元的に分布するドットパターンを形成する。ドットパターンは、例えばマスク等を用い、銅箔層をエッチングすることによって形成できる。その際、両面銅張積層板については、ドットパターンを形成していない方の銅箔は全てエッチングし、ポリイミド層を露出させておく。
【0023】
工程(B)について詳しく説明する。
図2は、視認性評価方法の原理を簡略化して示している。工程(A)で作製した試料を介して、撮像装置によってドットパターンDPを撮影し、撮影されたドットパターン像DPIを出力画像として生成させる。この視認性の評価方法では、入力画像であるドットパターンDPと撮像装置との間に、ポリイミド層を介在させた状態でドットパターンDPの撮影を行う。光源には、例えばLEDリング照明を用い、光量を1〜8mW/cm
2の範囲内に設定する。
【0024】
工程(C)について詳しく説明する。出力画像であるドットパターン像DPIを入力画像である元のドットパターンDPと同じドット数に分割するとともに、各ドットを白ドット又は黒ドットのいずれかに分類し、分類された白ドット及び黒ドットについてドット毎に輝度を数値化して度数分布を求め、白ドット及び黒ドットについて、輝度の平均値及び標準偏差を演算した。
図3は、出力画像であるドットパターン像DPIの一部分を拡大して示している。出力画像は、入力画像と同じドット数(m×nドット)に分割される。そして、すべてのドットについて、入力画像のドットを基に黒ドット又は白ドットの2種類に分類している。そして、分類された白ドット及び黒ドットについて、ドット毎に輝度を数値化して度数分布を求める。
図4は、各ドットの輝度に基づいて作成したヒストグラムの一例を示している。この例では、黒ドットを「0」、白ドットを「1」とし、輝度の信号レベル(図の横軸)を256スケ−ルに区分してヒストグラムを作成している。このようなヒストグラムに基づき、黒ドットの分布と、白ドットの分布のそれぞれについて、輝度の平均値μ
0,μ
1と標準偏差σ
0,σ
1が算出される。さらに黒ドットの輝度の標準偏差と白ドットの輝度の標準偏差のいずれか大きい方をσ
Lとする。
【0025】
工程(D)では、工程(C)で得られた輝度の平均値μ
0,μ
1と標準偏差σ
Lを、上記式(1)に挿入してSNRを得ることができる。このようにして得られるSNRは、ポリイミド層を通して銅箔層に形成された二次元ドットパターンを観察する場合の視認性を客観的な数値データとして表したものである。
【0026】
<ポリイミド層越しの銅箔面>
本実施の形態の銅張積層板は、光量によらず高いSNRを得るために、ポリイミド層に接する側の銅箔層の表面を、ポリイミド層越しに(ポリイミド層を介して)測定した場合に、L
*a
*b
*表色系で、色差Δa
*およびΔb
*がいずれも±20の範囲内であり、かつ、明度差ΔL
*が−75以下であることが好ましい。色差及び明度差が上記の範囲外であると、ポリイミド層と接する側の銅箔面の色目が薄く、アライメントマ−ク認識性が低下する。
【0027】
次に、上記の視認性評価方法において、光量を1〜8mW/cm
2の範囲内に設定して視認性を評価した場合に、信号ノイズ比(SNR)を6以上とするための銅張積層板の構成について詳細に説明する。
【0028】
<ポリイミド層>
ポリイミド層は、市販のポリイミドフィルムをそのまま使用することも可能であるが、絶縁層の厚さや物性のコントロ−ルのしやすさから、ポリアミド酸溶液を銅箔上に直接塗布した後、熱処理により乾燥、硬化する所謂キャスト(塗布)法によるものが好ましい。また、ポリイミド層は、単層のみから形成されるものでもよいが、ポリイミド層と銅箔層との接着性等を考慮すると複数層からなるものが好ましい。ポリイミド層を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリアミド酸溶液の上に他のポリアミド酸溶液を順次塗布して形成することができる。ポリイミド層が複数層からなる場合、同一の構成のポリイミド前駆体樹脂を2回以上使用してもよい。
【0029】
本発明における銅張積層板のポリイミド層の厚みは、例えば8〜52μmの範囲内が好ましく、8〜27μmの範囲内がより好ましい。ポリイミド層の厚みが8μm未満であると、他部品と接合する際のインピ−ダンスマッチング性が低下する。ポリイミド層の厚みが52μmを超えると、電子機器の筐体内に折り曲げての搭載が難しくなる。
【0030】
本発明において、銅張積層板の片面又は両面に張り合わされている銅箔をエッチングした際に得られるポリイミド層の全光線透過率は、例えば70%以上であることが好ましい。また、このポリイミド層のヘイズが、例えば30〜80%の範囲内であることが好ましい。全光線透過率が70%未満であるか、ヘイズが上記範囲外である場合は、ポリイミド層の透明性が十分に担保されず、ポリイミド層に接する側の銅箔層の表面を、ポリイミド層を介して観察した場合に、銅箔の色目が不鮮明になる。
【0031】
上述の通り、ポリイミド層は複数層とすることが好ましいが、その具体例としては、ポリイミド層を、熱膨張係数30×10
−6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層と、熱膨張係数30×10
−6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層と、を含む積層構造とすることが好ましい。より好ましくは、ポリイミド層は、低熱膨張性のポリイミド層の少なくとも一方、好ましくはその両側に、高熱膨張性のポリイミド層を有する積層構造とし、高熱膨張性のポリイミド層が直接回路配線層となる銅箔層に接するようにすることがよい。ここで、「低熱膨張性のポリイミド層」とは、熱膨張係数30×10
−6/K未満、好ましくは1×10
−6〜25×10
−6/Kの範囲内、特に好ましくは3×10
−6〜20×10
−6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。また、「高熱膨張性のポリイミド層」とは、熱膨張係数30×10
−6/K以上のポリイミド層を言い、好ましくは30×10
−6〜80×10
−6/Kの範囲内、特に好ましくは30×10
−6〜70×10
−6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。このようなポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望の熱膨張係数を有するポリイミド層とすることができる。
【0032】
上記ポリイミド層を与えるポリアミド酸溶液は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して製造することができ、この際、重合される樹脂粘度は、500cps以上35,000cps以下の範囲内とすることが好ましい。
【0033】
ポリイミドの原料として用いられるジアミンとしては、例えば、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノメシチレン、4,4’−メチレンジ−o−トルイジン、4,4’−メチレンジ−2,6−キシリジン、4,4’−メチレン−2,6−ジエチルアニリン、2,4−トルエンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3’−ジアミノ−p−テルフェニル、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エ−テル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、ピペラジン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノジベンゾフラン、1,5−ジアミノフルオレン、ジベンゾ−p−ジオキシン−2,7−ジアミン、4,4’−ジアミノベンジルなどが挙げられる。
【0034】
また、ポリイミドの原料として用いられる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,4,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’’,3,3’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’’,4’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エ−テル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、−2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0035】
上記ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用することもできる。また、重合に使用される溶媒は、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、1種又は2種以上併用して使用することもできる。
【0036】
本実施の形態において、光量によらず高いSNRが得られるポリイミド層であって、熱膨張係数30×10
−6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層を形成するには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2−メトキシ−4,4’−ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。
【0037】
また、光量によらず高いSNRが得られるポリイミド層であって、熱膨張係数30×10
−6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層を形成するには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。なお、このようにして得られる高熱膨張性のポリイミド層の好ましいガラス転移温度は、300〜400℃の範囲内である。
【0038】
<銅箔層>
本実施の形態において、銅箔層を構成する銅箔としては、電解銅箔および圧延銅箔のどちらも使用できる。この場合、銅箔は、Rzで表される表面粗度が好ましくは0.8μm以下のものがよい。Rzが0.8を超えると、銅張積層板の銅箔層をエッチングした際に転写されるポリイミドの凹凸により、十分な全光線透過率およびヘイズを確保できない。
【0039】
銅箔層の厚みは、例えば8〜20μmの範囲内であることが好ましい。銅箔層の厚みが8μmに満たないと、銅張積層板の製造時に、例えば、銅箔上にポリイミド層を形成する工程において銅箔自体の剛性が低下し、その結果、銅張積層板上にシワ等が発生するなどの問題が生じることがある。また、銅箔層の厚みが20μmを超えると、フレキシブル回路基板を折り曲げた際の銅配線に加わる曲げ応力が大きくなることにより、耐折り曲げ性が低下することとなる。
【0040】
[回路基板]
本実施の形態の回路基板は、銅張積層板の銅箔層を回路加工してなるものであり、その両端にアライメントマ−クが形成されている。回路基板は、両面に回路加工がなされていてもよいが、アライメントマ−ク認識部は、片面の銅箔がエッチングされて取り除かれていることとする。回路基板は、フレキシブル回路基板(FPC)であってもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。なお、下記の実施例における各特性評価は、以下の方法により行った。
【0042】
<表面粗さ(Rz)の測定>
接触式表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製 SURFE CORDER ET3000)を用いて、銅箔のポリイミド層との接触面側の表面粗さを測定した。
【0043】
<視認性の評価>
上記視認性の評価方法に従い、工程Bにおいて、LED照明(日進電子WDR−90)を用いて、光量を1mW/cm
2、3mW/cm
2、5mW/cm
2、又は、8mW/cm
2にそれぞれ設定して実施した。また画像の撮影は、ISO感度400、シャッター速度1/125秒で実施し、白黒画像とした。
【0044】
<色差Δa
*、Δb
*、明度差ΔL
*の測定>
色差計(日本電色工業株式会社製 COLOR CHECKER nR−1)を使用して、JIS Z 8730に準拠して、ポリイミド層越しの銅箔層裏面の色差Δa
*、Δb
*、明度差ΔL
*を測定した。
【0045】
<全光線透過率及びヘイズ測定>
濁度計(日本電色工業株式会社製 濁度計)を使用し、全光線透過率はJIS K 7361−1、ヘイズはJIS K 7136にそれぞれ準拠して、銅張積層板の両面の銅箔をエッチングして得られたポリイミド層の全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0046】
<銅箔及びポリイミドフィルム>
実施例、比較例で使用した銅箔及びポリイミドフィルムは以下のとおりである。
銅箔A:厚さ;12μm、表面粗さ;Rz0.8μm、Ra0.1μm、Rq0.2μm
銅箔B:厚さ;12μm、表面粗さ;Rz1.2μm、Ra0.2μm、Rq0.3μm
銅箔C:厚さ;12μm、表面粗さ;Rz0.4μm、Ra0.1μm、Rq0.1μm
銅箔D:厚さ;12μm、表面粗さ;Rz2.2μm、Ra0.3μm、Rq0.4μm
銅箔E:厚さ;12μm、表面粗さ;Rz0.5μm、Ra0.1μm、Rq0.1μm
銅箔F:厚さ;12μm、表面粗さ;Rz0.4μm、Ra0.1μm、Rq0.1μm
ポリイミドフィルムB:厚さ;25μm
【0047】
<ポリアミド酸溶液の合成>
(合成例1)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を投入して容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマ−の投入総量が12wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸aの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸aから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、55×10
−6/Kであった。
【0048】
<合成例2>
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m−TB)を投入して容器中で攪拌しながら溶解させた。次に、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマ−の投入総量が15wt%、各酸無水物のモル比率(BPDA:PMDA)が20:80となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸bの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸bから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10
−6/Kであった。
【0049】
(実施例1)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmで長尺状の市販の銅箔A(塗布面の表面粗さRz=0.8μm)上に、合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが20.0μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側に第1層目で塗布したものと同じポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体を130℃から開始して300℃まで段階的に温度が上がるように設定した連続硬化炉にて、合計6分間程度の時間をかけて熱処理し、厚みが25μmのポリイミド層Aを有する片面銅張積層板を得た。この片面銅張積層板と、これとは別に準備した厚さ12μmで長尺状の市販の銅箔Aを300〜400℃にて熱圧着することで、両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターン形成後、測定用試料を得た。得られた回路基板のSNRの評価結果を表1に示す。
【0050】
得られた銅張積層板を構成するポリイミド層Aの全光線透過率およびヘイズ値、ポリイミド越し銅箔裏面の色差、視認性評価結果を表1に示す。なお、ポリイミド層Aの評価は製造されたフレキシブル銅張積層板から銅箔をエッチング除去したものを用いた。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同様にして銅箔B上にポリイミド層Aを形成した後、ポリイミド層Aの側へ同じく銅箔Bを張り合わせることで両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターンを形成後、評価用試料を得た。得られた両面銅張積層板の各物性値、視認性の評価結果を表1に示す。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同様にして銅箔C上にポリイミド層Aを形成した後、ポリイミド層の側へ同じく銅箔Cを張り合わせることで両面銅張積層板を得た。この両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターンを形成後、評価用試料を得た。得られた両面銅張積層板の各物性値、視認性の評価結果を表1に示す。
【0053】
(比較例3)
厚さ12μmの銅箔Aを使用し、銅箔Aと、厚みが25μmの市販のポリイミドフィルムBをラミネートロールで張り合わせことで製造された両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターンを形成後、評価用試料を得た。得られた両面銅張積層板の各物性値、視認性の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
比較例3と同様にして、市販の銅箔Dと市販のポリイミドフィルムBをラミネートロールで張り合わせことで製造された両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターンを形成後、評価用試料を得た。得られた両面銅張積層板の各物性値、視認性の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例5)
比較例3と同様にして、市販の銅箔Eと市販のポリイミドフィルムBをラミネートロールで張り合わせことで製造された両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターンを形成後、評価用試料を得た。得られた両面銅張積層板の各物性値、視認性の評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例6)
比較例3と同様にして、市販の銅箔Fと市販のポリイミドフィルムBをラミネートロールで張り合わせことで製造された両面銅張積層板をエッチングするなどしてドットパターンを形成後、評価用試料を得た。得られた両面銅張積層板の各物性値、視認性の評価結果を表1に示す。
【0057】
実施例1及び比較例1〜6の結果をまとめて、表1に示す。表1中の「ポリイミドA」は、キャスト法により形成したポリイミド層Aを意味し、「ポリイミドB」は、ポリイミドフィルムBから形成したポリイミド層を意味し、「色差」は、ポリイミド層越しの銅箔層裏面の色差を意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から、実施例1の回路基板は、いずれも上記構成を具備することによって、光量1,3,5,8mW/cm
2のいずれの場合もSNRが6以上と良好な値を示し、視認性が満足できる結果であった。一方、比較例1〜6は、光量1,3,5,8mW/cm
2のいずれかでSNRが6以上を示すものの、全ての光量で6を超えることはなく、実施例1に劣る視認性であった。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。