【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、下記(A)〜(D)成分、(A)一般式(1)の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも3個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)光重合開始剤と、(D)溶剤と、を必須成分として含む。
前記(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10〜90質量%であり、前記(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であり、前記(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して0.1〜30質量部である、請求項1または請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0022】
本発明の一般式(1)で表される(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(a−1)と、(メタ)アクリル酸誘導体との反応物に対して、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)を反応させることにより得られる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、これらの一方または両方を意味する。
【0023】
また、上記重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、原料となるエポキシ化合物として、1分子内にいくつかのオキシアルキレン基を含んでもよい、一般式(1)中のArが炭素数6〜14の芳香族炭化水素基である化合物を使用することを特徴とする。
【0024】
上記炭素数6〜14の芳香族炭化水素基の好ましい例には、2価のナフチル基、および水素原子の一部がアルキル基等で置換されていてもよいフェニレン基が含まれる。ここで、本発明の(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、一般式(1)中のフルオレン基に結合する2つのArがいずれもナフチル基である(ビスナフトールフルオレン骨格を有する)か、またはいずれもフェニレン基である(ビスフェノールフルオレン骨格を有する)ことが好ましく、上記フルオレン基に結合する2つのArがいずれもナフチル基であることがより好ましい。上記フルオレン基に結合する2つのArがいずれもナフチル基である(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を硬化してなる硬化膜(塗膜)は、加熱した際に発生するガスの量が少ないからである。
【0026】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0〜3の数であり、1分子中におけるlの平均値も0〜3の数であり、組成物中におけるlの平均値も0〜3の数である。Gは、それぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、Yは4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1〜20の数である。)
【0029】
(式(2)、(3)中、R
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数2〜10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
4は炭素数2〜20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0〜10である。)
【0031】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2である。)
【0032】
一般式(1)で表される、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0033】
先ず、一般式(5)で表される、1分子内にいくつかのオキシアルキレン基を有してもよい、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a−1)(以下、単に「エポキシ化合物(a−1)」ともいう)に、一般式(6)または一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体のいずれか一方もしくは両方を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートを得る。
【0035】
(式(5)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0〜3の数である。)
【0038】
(式(6)、(7)中、R
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数2〜10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
4は炭素数2〜20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0〜10の数である。)
【0039】
上記エポキシ化合物(a−1)と上記(メタ)アクリル酸誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4−355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「一般式(8)で表されるジオール(d)」ともいう)である。
【0041】
(式(8)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、R
1は、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0〜3の数である。)
【0044】
(式(2)、(3)中、R
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数2〜10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
4は炭素数2〜20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0〜10の数である。)
【0045】
一般式(8)で表されるジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物を反応させて、一般式(1)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0046】
溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0047】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応においては触媒を使用することが好ましく、特開平9−325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている。
【0048】
次に、上記エポキシ化合物(a−1)と上記(メタ)アクリル酸誘導体との反応で得られる一般式(8)で表されるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0050】
(式(1)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、結合している水素原子の一部分は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。R
1は、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0〜3の数である。Gは、それぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、Yは4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1〜20の数である。)
【0053】
(式(2)、(3)中、R
2は水素原子またはメチル基であり、R
3は炭素数2〜10の2価のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
4は炭素数2〜20の2価の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは0〜10の数である。)
【0055】
(式(4)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2である。)
【0056】
次に、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を構成する一般式(6)および一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする一般式(2)または一般式(3)で表される置換基について詳細に説明する。
【0057】
一般式(2)、(3)、(6)および(7)は、重合性不飽和基と少なくとも1つ以上のエステル結合を有する。
【0062】
一般式(2)、(3)、(6)および(7)に示される、R
2は水素原子またはメチル基である。
【0063】
また、一般式(2)、(3)、(6)および(7)に示される、R
3は炭素数2〜10の2価のアルキレンまたはアルキルアリーレン基である。
【0064】
上記アルキレン基は、直鎖または分岐のいずれでもよく、エチレン、エチリデン、ビニレン、ビニリデン、プロピレン、トリメチレン、プロペニレン、イソプロピリデン、テトラメチレン基などである。
【0065】
また、上記アルキルアリーレン基は、炭素数の範囲内であれば無置換アリーレン基でもよく、例えば、o,m,p−フェニレン、トルイレン、エチルフェニレン、n−プロピルフェニレン、イソプロピルフェニレン、直鎖または分岐したブチルフェニレン、ペンチルフェニレン基などである。
【0066】
一般式(2)、(3)、(6)および(7)に示される、R
4は炭素数2〜20の飽和または不飽和の脂肪族または芳香族炭化水素基である。
【0067】
上記飽和および不飽和の脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐のいずれでもよく、エチレン、エチリデン、ビニレン、ビニリデン、プロピレン、トリメチレン、プロペニレン、イソプロピリデン、テトラメチレン基などである。
【0068】
また、上記芳香族炭化水素基は、炭素数の範囲内であれば無置換体でもよく、例えば、o,m,p−フェニレン、トルイレン、エチルフェニレン、n−プロピルフェニレン、イソプロピルフェニレン、直鎖または分岐したブチルフェニレン、ペンチルフェニレン基などであり、炭素数の範囲を超えない限り2〜4個の置換基で置換されていてもよい。また、上記脂肪族炭化水素基は不飽和結合、エーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0069】
また、pは、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成した際には、それぞれ独立して0〜10の数であるが、樹脂においてpの平均値が0〜5の数であることが好ましく、pの平均値が0〜2の数であることがより好ましい。pの平均値が上記範囲である場合には、アルキレンオキサイドという柔軟構造の分布が広範囲になることを抑制できるので、樹脂性能を低下させることなく、硬化膜として十分な硬化性を付与することができる。
【0070】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、一般式(8)で表されるジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には−O−、−S−、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0071】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等が含まれる。
【0072】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0073】
また、上記脂環式ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0074】
また、上記芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0075】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。
【0076】
また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等が含まれる。
【0078】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0079】
また、上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0080】
また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸等が含まれる。
【0081】
また、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、例えば、国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物群であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、ターフェニルジオール等)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基が反応してエステル結合した形の酸二無水物である。これらの化合物を以下、芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルと記載する。
【0082】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることがより好ましい。また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。さらに、ナフタレンジオールのビス無水トリメリット酸エステルも好ましく用いることができる。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物、および芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
一般式(8)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9−325494号公報には、反応温度が90〜140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0084】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(d)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)とのモル比が(d):(b):(c)=1.0:0.01〜1.0:0.2〜1.0となるように反応させることが好ましい。
【0085】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、重合性不飽和基を含有するジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[(d)/〔(b)/2+(c)〕]が0.5〜1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が1.0以下である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオールの含有量を増大させることがないのでアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。一方、モル比が0.5を超える場合には、式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大することを抑制できることから、アルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(2)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0086】
また、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価の好ましい範囲は20〜180mgKOH/gであり、40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が20mgKOH/g以上である場合には、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなり、180mgKOH/g以下である場合には、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。なお、酸価は、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0087】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常1000〜100000であり、2000〜20000であることが好ましく、2000〜6000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000以上の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量(Mw)が100000未満である場合には、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度に調整しやすく、アルカリ現像に時間を要しすぎることがない。
【0088】
次に、本発明の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物について説明する。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物としては、(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10〜90質量%であることが好ましい。また、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であることが好ましく、(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましい。
【0090】
本発明の感光性樹脂組成物における、少なくとも3個のエチレン性不飽和結合を有する(B)光重合性モノマーの例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;デンドリマー型多官能アクリレートなどが含まれる。これらの光重合性モノマーは、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であることが好ましく、(A)成分100質量部に対して10〜80質量部であることがより好ましく、10〜60質量部であることがさらに好ましい。(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して5質量部以上である場合には、樹脂に占める光反応性官能基が十分にあるため、十分な架橋構造が形成される。また、樹脂成分における酸価が高くなりすぎないため、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性を低くなるので、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることを抑制できるとともに、パターンの欠落を抑制できる。また、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して200質量部以下である場合には、十分な硬化性を有する硬化膜を得ることができるので、パターンエッジをシャープにすることができる。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2、4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾ−ル、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾア−ト、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが含まれる。なお、これら光重合開始剤は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
特に、着色材を含む感光性樹脂組成物とする場合には、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)を用いることが好ましい。具体的化合物群としては、一般式(9)または一般式(10)で表されるO−アシルオキシム系光重合開始剤がある。それらの中でも、着色材を高顔料濃度で用いる場合および遮光膜パターンを形成する場合には、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であるO−アシルオキシム系光重合開始剤を用いることが好ましい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0095】
(式(9)中、R
5、R
6は、それぞれ独立して、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基または炭素数4〜12の複素環基であり、R
7は炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、または環状のいずれのアルキル基であってもよい。)
【0097】
(式(10)中、R
8およびR
9は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4〜10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R
10は、それぞれ独立して、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の−CH
2−基の一部が−O−基で置換されていてもよい。さらに、これらR
8〜R
10基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0098】
(C)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜25質量部であることがより好ましい。上記(C)成分の含有量が0.1質量部以上である場合には、適度な光重合の速度を有するので、感度の低下を抑制できる。また、30質量部以下である場合には、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0099】
(D)感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシ−1−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、ジアセトンアルコール等のアルコール類;α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が含まれる。これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。これらの溶剤は、塗布性等の必要特性とするためにこれらを単独または2種以上を併用してもよい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物溶液中60〜90質量%であることが好ましい。
【0100】
上述の感光性樹脂組成物は、(E)成分として着色材を含有する。上記(E)成分は、遮光膜用レジストとして使用する場合には、黒色有機顔料、混色有機顔料および遮光材からなる群から選択される1種以上の遮光成分であり、黒色有機顔料および/または混色有機顔料であることが好ましい。また、上記黒色有機顔料および/または混色有機顔料の平均二次粒径は20〜500nmであることが好ましい。上記黒色有機顔料および混色有機顔料の平均二次粒径は、動的光散乱法の粒度分布計「粒径アナライザーFPAR−1000」(大塚電子株式会社製)を用い、キュムラント法で測定することができる。
【0101】
(E)成分である着色材の含有量は、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形分に対して1〜80質量%であることが好ましく、有機顔料またはカーボン系無機顔料を用いる場合には20〜60質量%であることがより好ましい。
【0102】
(E)成分である黒色有機顔料の例には、ペリレンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、ラクタムブラックなどが含まれる。
【0103】
(E)成分である混色有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などの有機顔料から選択される少なくとも2色が混合して擬似黒色化されたものが含まれる。
【0104】
(E)成分である遮光材の例には、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラックなどが含まれる。これらの(E)成分は、目的とする感光性樹脂組成物の機能に応じて、適宜表面処理されたものを用いることもできる。また、これらの(E)成分は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
上記(E)成分として使用可能な有機顔料の例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0106】
また、(E)成分である着色材は、予め(D)溶剤に(F)分散剤とともに分散させて着色材分散体としたうえで、感光性樹脂組成物に配合することが好ましい。ここで、分散させるための溶剤は、(D)成分の一部になるため、上述した(D)成分に含まれるものであれば使用することができる。上述した(D)成分の中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等であることが好ましい。
【0107】
(E)成分の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して1〜80質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお、上記固形分とは、感光性樹脂組成物のうち(D)成分を除く成分を意味する。上記固形分には、光硬化後に固形分となる(B)成分も含まれる。(E)成分が1質量%以上である場合には、所望する遮光性に設定しやすくなる。また、80質量%以下である場合には、所望する現像特性および膜形成能が得られる。
【0108】
上記(F)分散剤は、着色材(顔料)の分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0109】
(F)成分である分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。特に、分散剤は、着色材への吸着点としてイミダゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、一級、二級または三級のアミノ基等のカチオン性の官能基を有し、アミン価が1〜100mgKOH/g、数平均分子量が1千〜10万の範囲にあるカチオン性高分子系分散剤であることが好ましい。この分散剤の配合量は、着色材に対して1〜35質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は、一般に分散を安定させる作用を有するが、分散促進能を有しないものは分散剤として扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。
【0110】
また、着色材分散体を調製する際に、上記(F)分散剤に加えて(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の一部を共分散させることにより、露光感度を高感度に維持しやすくし、現像時の密着性が良好で残渣の問題も発生しにくい感光性樹脂組成物とすることができる。(A)成分の含有量は、着色材分散体中2〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。(A)成分が2質量%以上である場合には、感度向上、密着性向上、残渣低減といった共分散させた効果が得られる。また、20質量%以下である場合には、均一に(E)成分が分散した硬化膜(塗膜)を得ることができる。
【0111】
上記着色材分散体は、(A)成分(着色材分散体を調製する際に(A)成分を共分散させた場合は、残りの(A)成分)、(B)成分、(C)成分、および残りの(E)成分と混合することで、遮光膜用の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0112】
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、光または熱によって重合または硬化するその他の樹脂成分を併用してもよい。その他の樹脂成分の例には、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック類から誘導されるノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、および当該のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸および酸無水物を反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂((A)成分を除く)、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステル類との共重合体、および当該共重合体中のカルボキシ基にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂等が含まれる。
【0113】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。
【0114】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填材の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0115】
本発明の硬化膜(塗膜)は、本発明の感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成することができる。上記方法は、先ず、感光性樹脂組成物溶液を基板表面に塗布し、溶媒を乾燥させた(プリベーク)後、塗膜の上にフォトマスクをあて、紫外線を照射して露光部を硬化させ、さらにアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、さらに後硬化としてポストベークを行う方法である。ここで、感光性樹脂組成物溶液を塗布する基板の例には、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等が含まれる。
【0116】
上記基板は、透明基板でもよいし、透明基板以外の基材でもよい。感光性樹脂組成物を塗布する透明基板の例には、ガラス基板のほか、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされたものなどが含まれる。
【0117】
上記基板上に感光性樹脂組成物溶液を塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等を用いることができる。上記方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を乾燥させる(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。なお、プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば、60〜110℃の温度で1〜3分間行われる。
【0118】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置およびその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。
【0119】
露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は、250〜450nmであることが好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液を用いることができる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加することも有効である。現像温度は、20〜35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0120】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分の感光性樹脂組成物を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を0.03〜1重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜27℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0121】
このようにして現像した後、180〜250℃で、20〜100分間、熱処理(ポストベーク)が行われる。ただし、製膜する基板等の耐熱性が低い場合には、80〜180℃で、30〜100分間のポストベーク条件にできるように組成物の配合を設計することもできる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた硬化膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【実施例】
【0122】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】
まず、一般式(1)で表される構造を含む重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例1および実施例2において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施したガラス基板を使用している。
【0124】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W
2(g)〕から下記数式(1)より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0) (1)
【0125】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM−1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N−過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0126】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM−1600」を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0127】
[分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH−2000(2本)+TSKgelSuperH−3000(1本)+TSKgelSuperH−4000(1本)+TSKgelSuperH−5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS−オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0128】
また、合成例および比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂
(一般式(5)でArがベンゼン環でlが0のエポキシ樹脂、エポキシ当量256)
BNFE :ビスナフトールフルオレン型エポキシ樹脂
(一般式(5)でArがナフタレン環でlが0のエポキシ樹脂、エポキシ当量281)
HOA−HH:2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸
(ライトアクリレートHOA−HH(N)、共栄社化学株式会社製)
BPDA :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA :ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BTANE :ナフタレンジオールのビス無水トリメリット酸エステル
(DHN−D1、本州化学工業株式会社製)
THPA :1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
TPP :トリフェニルホスフィン
TBPC :2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
AA :アクリル酸
MAA :メタクリル酸
MMA :メタクリル酸メチル
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
GMA :グリシジルメタクリレート
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0129】
[合成例1]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(46.64g、0.09mol)、AA(13.12g、0.18mol)、TPP(0.24g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0130】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(13.45g、0.05mol)およびTHPA(6.96g、0.05mol)を仕込み、115〜120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.3質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0131】
[合成例2]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(47.60g、0.08mol)、AA(12.18g、0.17mol)、TPP(0.22g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌し、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0132】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(12.49g、0.04mol)およびTHPA(6.46g、0.04mol)を仕込み、115〜120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.9質量%であり、酸価(固形分換算)は90mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4000であった。
【0133】
[合成例3]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(47.60g、0.08mol)、AA(12.18g、0.17mol)、TPP(0.22g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌し、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0134】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(8.74g、0.03mol)およびTHPA(10.34g、0.07mol)を仕込み、115〜120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.9質量%であり、酸価(固形分換算)は90mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2600であった。
【0135】
[合成例4]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(47.60g、0.08mol)、AA(12.18g、0.17mol)、TPP(0.22g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌し、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0136】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(16.49g、0.06mol)およびTHPA(0.26g、0.002mol)を仕込み、115〜120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−4を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%であり、酸価(固形分換算)は83mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは7000であった。
【0137】
[合成例5]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(30.53g、0.05mol)、HOA−HH(29.33g、0.11mol)、TPP(0.14g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌し、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0138】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(8.00g、0.03mol)およびTHPA(4.14g、0.03mol)を仕込み、115〜120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−5を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は54.6質量%であり、酸価(固形分換算)は63mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0139】
[合成例6]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(47.60g、0.08mol)、AA(12.18g、0.17mol)、TPP(0.22g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌し、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0140】
次いで、得られた反応生成物にBTDA(13.68g、0.04mol)およびTHPA(6.46g、0.04mol)を仕込み、115〜120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−6を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は54.6質量%であり、酸価(固形分換算)は92mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4100であった。
【0141】
[合成例7]
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BNFE(47.60g、0.08mol)、AA(12.18g、0.17mol)、TPP(0.22g)、およびPGMEA(40.00g)を仕込み、100〜105℃で12時間撹拌し、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0142】
次いで、得られた反応生成物にBTANE(21.58g、0.04mol)およびTHPA(6.46g、0.04mol)を仕込み、115〜120℃で7時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−7を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は54.6質量%であり、酸価(固形分換算)は91mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5000であった。
【0143】
[合成例8]
窒素導入管及び還流管付き1000ml四つ口フラスコ中にMAA(51.65g、0.60モル)、MMA(36.04g、0.36モル)、CHMA(40.38g、0.24モル)、AIBN(5.91g)、およびPGMEA(360g)を仕込み、80〜85℃で窒素気流下、8時間撹拌して重合させた。さらに、フラスコ内にGMA(61.41g、0.43モル)、TPP(2.27g)およびTBPC(0.086g)を仕込み、80〜85℃で16時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)−8を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は35.7質量%、酸価(固形分換算)は50mgKOH/g、GPC分析によるMwは19600であった。
【0144】
(アルカリ可溶性樹脂溶液)
(A)−1:上記合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−2:上記合成例2で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−3:上記合成例3で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−4:上記合成例4で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−5:上記合成例5で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−6:上記合成例6で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−7:上記合成例7で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(A)−8:上記合成例8で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
【0145】
(光重合性モノマー)
(B):DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、日本化薬株式会社製)
【0146】
(光重合開始剤)
(C):Irgacure OXE02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
【0147】
(溶剤)
(D)−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D)−2:3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート
【0148】
(界面活性剤)
BYK−330のPGMEA溶液(固形分1.0%)(ビックケミー社製)
【0149】
[実施例1]
(A)〜(D)成分および界面活性剤を表1に示す割合で配合して、実施例1〜10および比較例1、2の感光性樹脂組成物を調製した。溶剤の欄中の(D)−1は、不飽和基含有樹脂溶液(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液)中のPGMEA((D)−1と同じ)、遮光性顔料分散液中の溶剤、および界面活性剤中の溶剤を含まない量である。なお、表1の数値はすべて質量%を表す。
【0150】
【表1】
【0151】
[評価]
実施例1〜10および比較例1、2の感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0152】
(硬化膜(塗膜)の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm
2の紫外線を照射して表面を洗浄した、50mm×50mmのガラス基板「EAGLEXG」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)、インジウム−スズ酸化物蒸着ガラス基板(以下「ITO基板」という)、およびモリブデン−アルミニウム合金蒸着基板(以下「MAM基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.5μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークをして塗布板を作製した。次いで、波長365nmの照度が30mW/cm
2の高圧水銀ランプで100mJ/cm
2の紫外線を照射して光硬化反応を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間硬化処理を行って、実施例1〜10および比較例1、2に係る硬化膜(塗膜)を得た。
【0153】
上記で得られた実施例1〜10および比較例1、2の感光性樹脂組成物からなる硬化膜(塗膜)について、以下の項目について評価した結果を表2に示す。これらの評価方法は以下の通りに行った。なお、耐高温高湿密着性、および耐薬品密着性については、ガラス基板上の硬化膜(塗膜)のみでなく、ITO基板およびMAM基板上に作製した硬化膜(塗膜)に対しても評価した。
【0154】
(膜厚測定)
実施例1〜10および比較例1、2の硬化膜(塗膜)の膜厚を触針式段差形状測定装置「P−17」(ケーエルエー・テンコール株式会社製)を用いて測定した。
【0155】
[耐高温高湿密着性]
(評価方法)
ガラス基板、ITO基板、およびMAM基板上に作製した硬化膜(塗膜)を、温度121℃、湿度100%、気圧2atmの条件下で5時間静置した。その後、基板にSuperCutterGuide(太佑機材株式会社製)を使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を貼ってから剥がす、クロスカット・ピーリング試験を行なった。
【0156】
(評価基準)
○:マス目の中の硬化膜(塗膜)は全く剥離していない
△:マス目の中の硬化膜(塗膜)の1/3未満が剥離している
×:1/3以上が剥離している
【0157】
[耐薬品密着性]
(評価方法)
ガラス基板、ITO基板、MAM基板上に作製した硬化膜(塗膜)を、N−メチル−2−ピロリドンの入ったシャーレに60℃で2分間浸漬した後、純水で洗浄し、水分を拭き取った。その後、基板にSuperCutterGuideを使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープを貼ってから剥がす、クロスカット・ピーリング試験を行なった。
【0158】
(評価基準)
○:マス目の中の硬化膜(塗膜)は全く剥離していない
△:マス目の中の硬化膜(塗膜)の1/3未満が剥離している
×:1/3以上が剥離している
【0159】
[塗膜硬度1]
(評価方法)
ガラス基板上に作製した硬化膜(塗膜)を、JIS−K5600−5−4の試験法に準じて、鉛筆硬度試験機を用いて荷重750gをかけ、硬化膜(塗膜)にキズが付かない最も高い鉛筆硬度をもって表示した。使用した鉛筆は「三菱ハイユニ」(三菱鉛筆株式会社製)である。なお、塗膜表面の横方向の力(引っかき)に対する耐性の指標として本評価を実施した。
【0160】
(評価基準)
○:3H以上
△:2H
×:H以下
【0161】
[塗膜硬度2]
(評価方法)
ガラス基板上に作製した硬化膜(塗膜)を、微小膜硬度計「HM2000」(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。圧子はビッカース圧子を用いて5mN/μm
2の荷重を負荷速度0.25mN/secで負荷し、1秒間保持後に荷重を取り除いてマルテンス硬さ(ISO14577に準拠)を測定した。本評価は、硬化膜(塗膜)表面の縦方向の力(押し込み)に対する耐性の指標として実施した。なお、「マルテンス硬さ」とは、荷重―進入深さ曲線より算出される硬さのことである。
【0162】
(評価基準)
○:65N/mm
2以上
△:60N/mm
2以上65N/mm
2未満
×:60N/mm
2未満
【0163】
[透過率1]
(評価方法)
ガラス基板「EAGLE XG」上に2μmの膜厚で作製した硬化膜(塗膜)を、透過率計「SPECTRO PHOTOMETERSD5000」(日本電色工業株式会社製)を用いて透過率測定した。
【0164】
(評価基準)
○:波長400nmでの透過率が95%以上
△:波長400nmでの透過率が90%以上95%未満
×:90%未満
【0165】
[透過率2]
ガラス基板「EAGLE XG」上に3μmの膜厚で作製した硬化膜(塗膜)を、透過率計「SPECTRO PHOTOMETERSD5000」を用いて透過率測定した。
【0166】
(評価基準)
○:波長340nmでの透過率が20%未満
△:波長340nmでの透過率が20%以上65%未満
×:65%以上
【0167】
[発ガス性]
(評価方法)
ガラス基板「EAGLE XG」上に作製した硬化膜(塗膜)をスクレイパー等で削り、得られた粉末状の硬化膜(塗膜)10mgの熱重量損失を示差熱熱重量測定装置(TG/DTA)「EXSTAR6000」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。測定条件は、大気下、120℃で30分間の前処理を行った後、230℃で3時間保持とした。発ガス性は重量減少率より評価し、重量減少率は230℃での加熱前後の重量減少から算出した。
【0168】
(評価基準)
◎:重量減少率が3%未満
○:重量減少率が3%以上7%未満
△:重量減少率が7%以上15%未満
×:重量減少率が15%以上
【0169】
[吸水性]
(評価方法)
ガラス基板「EAGLE XG」上に作製した硬化膜(塗膜)を温度40℃、湿度90%の恒温恒湿下に24時間静置した後、スクレイパー等で削り、得られた粉末状の硬化膜(塗膜)10mgの熱重量損失を示差熱熱重量測定装置(TG/DTA)「EXSTAR6000」を用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、10℃/minで120℃まで昇温し、1時間保持した。吸水性は重量減少率より評価した。
【0170】
(評価基準)
○:重量減少率が2%未満
△:重量減少率が2%以上5%未満
×:重量減少率が5%以上
【0171】
[現像特性]
(評価サンプルの作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板「EAGLE XG」上に加熱硬化処理後の膜厚が1.5μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークした。その後、フォトマスクを露光ギャップが150μmとなるように設置し、波長365nmの照度が30mW/cm
2の高圧水銀ランプで100mJ/cm
2の紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。
【0172】
次に、この露光済み硬化膜(塗膜)を23℃の0.05%水酸化カリウム水溶液または0.2%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、0.1MPaの圧力で60秒間現像し、さらに水洗を行い、硬化膜(塗膜)の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行い、実施例1〜10および比較例1、2に係る硬化膜(パターン)を得た。
【0173】
(評価方法・評価基準)
得られたパターンの細線形成を光学顕微鏡で確認し、以下の3段階で評価した。
○:L/Sが15μm/15μm以上のパターンが残渣なく形成されているもの
△:L/Sが30μm/30μm以上のパターンが残渣なく形成されているもの
×:L/Sが50μm/50μm未満のパターンが形成されていないか、パターンの裾引きや残渣が目立つもの
【0174】
【表2】
【0175】
[実施例2]
(A)〜(E)成分および界面活性剤を表3に示す割合で配合して、実施例11〜16および比較例11〜13の遮光性顔料分散液を含有する感光性樹脂組成物を調製した。溶剤の欄中の(D)−1は、不飽和基含有樹脂溶液(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液)中のPGMEA((D)−1と同じ)、遮光性顔料分散液中の溶剤、および界面活性剤中の溶剤を含まない量である。なお、表3の数値はすべて質量%を表す。
【0176】
(遮光性顔料分散液)
(E)−1:ラクタム系黒色顔料15.0質量%、高分子分散剤4.5質量%のPGMEA分散液(固形分19.5%)
(E)−2:樹脂被覆カーボン系黒色顔料25.0質量%、高分子分散剤5.0質量%のPGMEA分散液(固形分30.0%)
【0177】
【表3】
【0178】
[評価]
実施例11〜16および比較例11〜13の感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0179】
[光学濃度の測定]
表3に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上に加熱硬化処理後の膜厚が1.1μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行い、実施例11〜16および比較例11〜13に係る硬化膜(塗膜)を得た。次に、得られた硬化膜(塗膜)の光学濃度(OD)をマクベス透過濃度計を用いて測定し、単位膜厚当たりの光学濃度で評価した。
【0180】
[体積抵抗率の測定]
(測定方法)
表3に示した各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて100mm×100mmのCr蒸着された厚さ1.2mmのガラス基板上の電極を除いた部分に加熱硬化処理後の膜厚が3.5μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行い、実施例11〜16および比較例11〜13に係る硬化膜(塗膜)を得た。その後、硬化膜(塗膜)上にアルミニウム電極を形成して体積抵抗率測定用基板を作製した。次に、エレクトロメーター「6517A型」(ケースレー社製)を用いて、印加電圧1Vから10Vにおける体積抵抗率を測定した。なお、1Vステップにおいて各印加電圧で60秒ずつ電圧保持する条件で測定した。
【0181】
[誘電率の測定]
(測定方法)
表3に示した各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて100mm×100mmのCr蒸着された厚さ1.2mmのガラス基板上の電極を除いた部分に加熱硬化処理後の膜厚が3.5μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行い、実施例11〜16および比較例11〜13に係る硬化膜(塗膜)を得た。その後、塗膜上にアルミニウム電極を形成して誘電率測定用基板を作製した。次に、エレクトロメーター「6517A型」を用いて、周波数1Hzから100000Hzにおける電気容量を測定し、電気容量から誘電率を算出した。
【0182】
[発ガス性]
(評価方法)
ガラス基板「EAGLE XG」上に作製した硬化膜(塗膜)をスクレイパー等で削り、得られた粉末状の硬化膜(塗膜)10mgの熱重量損失を示差熱熱重量測定装置(TG/DTA)「EXSTAR6000」を用いて測定した。測定条件は、大気下、120℃で30分間の前処理を行った後、230℃で3時間保持した。
【0183】
(評価基準)
◎:重量減少率が3%未満
○:重量減少率が3%以上7%未満
△:重量減少率が7%以上10%未満
×:重量減少率が10%以上
【0184】
[スペーサーの弾性回復率の測定]
(測定方法)
表3に示した各感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板「EAGLE XG」上に加熱硬化処理後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、90℃で1分間プリベークした。その後、ドットパターンを有するフォトマスクを密着させ、500Wの高圧水銀ランプを用いて波長365nmの照度30mW/cm
2の超高圧水銀ランプで100mJ/cm
2の紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。
【0185】
次に、この露光後のガラス基板を0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて、24℃、0.1MPaの圧力で60秒間現像し、硬化膜(塗膜)の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行い、実施例11〜16および比較例11〜13に係る硬化膜(塗膜)を得た。得られた硬化膜(塗膜)パターンのスペーサー特性は超微小硬度計「フィッシャースコープHM2000Xyp」(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて評価した。負荷速度5.0mN/秒で100μm角の平面圧子を押し込み、50mNまでの荷重を負荷した後、除荷速度5.0mN/秒で除荷して変位量曲線を作成した。
【0186】
弾性回復率は、負荷時の荷重50mNでの変位量をL1とし、除荷時の変位量をL2として、下記数式(2)から算出した。
弾性回復率(%)=(L1−L2)/L1×100 (2)
【0187】
[現像特性]
(評価サンプルの作製)
表3に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板「EAGLE XG」上に加熱硬化処理後の膜厚が1.5μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃で1分間プリベークした。その後、フォトマスクを露光ギャップが150μmとなるように設置し、波長365nmの照度が30mW/cm
2の高圧水銀ランプで100mJ/cm
2の紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。
【0188】
次に、この露光済み硬化膜(塗膜)を23℃の0.05%水酸化カリウム水溶液または0.2%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、0.1MPaの圧力で60秒間現像し、さらに水洗を行い、硬化膜(塗膜)の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行い、実施例11〜16および比較例11〜13に係る硬化膜(パターン)を得た。
【0189】
(評価方法・評価基準)
得られたパターンの細線形成を光学顕微鏡で確認し、以下の3段階で評価した。
○:L/Sが15μm/15μm以上のパターンが残渣なく形成されているもの
△:L/Sが30μm/30μm以上のパターンが残渣なく形成されているもの
×:L/Sが50μm/50μm未満のパターンが形成されていないか、パターンの裾引きや残渣が目立つもの
【0190】
【表4】
【0191】
遮光性および絶縁性が高く、基板との密着性にも優れ、弾性率、変形量、および弾性復元率にも優れた硬化膜を提供できる感光性樹脂組成物を得ることができた。