【課題】混和剤溶液の安定性が高いとともに、流動性の高いコンクリート組成物等に対して、優れた材料分離抵抗性を付与し、更に、得られるコンクリート硬化体等が良好な凍結融解抵抗性を示すことができる。
【解決手段】カルボン酸系共重合体及び/又はその塩と、水溶性セルロースエーテルと、ガム類と、消泡剤と、脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩とを含有し、カルボン酸系共重合体に由来するイオン強度が0.02〜0.8であるコンクリート組成物用混和剤。
前記B成分が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート組成物用混和剤。
前記C成分が、ダイユータンガム、ウェランガム、キサンタンガム及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート組成物用混和剤。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、“%”は質量%を、また“部”は質量部を意味する。
【0025】
本発明のコンクリート組成物用混和剤に供するA成分は、不飽和モノカルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸単量体及び/又はこれらの塩から形成される構成単位と、これらと共重合可能な不飽和単量体であって分子中に1〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する不飽和単量体から形成される構成単位を有するカルボン酸系共重合体及び/又はその塩であり、減水剤として作用する。
【0026】
コンクリート組成物用混和剤中のA成分の濃度は、特に制限されないが、15〜50質量%とするのが好ましく、15〜40質量%とするのがより好ましい。A成分の濃度が低すぎると、コンクリート組成物用混和剤の減水性能が低下し、特に流動性の高いコンクリート組成物の調製では添加量が増加して、コンクリート製造工場の計量器で一度に計量できなくなる等コンクリート組成物の製造効率を低下させたり、輸送コストの増加を招いたりする原因となる。逆にA成分の濃度が高すぎると、セルロースエーテルが塩析するおそれがある。
【0027】
また、A成分に由来するイオン強度が0.02〜0.8であり、0.05〜0.5未満であるのが好ましい。A成分は、構造中のカルボキシル基を結合材への吸着点として減水性を発現するため、イオン性物質は必須となる。一方で、水溶性セルロースエーテルは、イオン性物質の濃度が一定以上になると溶解できなくなり、析出する現象(塩析)が起き、安定化せずに沈降してしまう。そのため、減水性に寄与しないイオン性物質を排除し、A成分のイオン強度を小さくすることが、コンクリート組成物用混和剤の安定性を向上させるために非常に重要となる。減水性に寄与しないイオン性物質としては、例えば、重合開始剤や中和に用いるアルカリ金属等が挙げられる。なお、A成分に由来するイオン強度とは、下記の数1で表されるもので、A成分の分子構造中およびA成分を合成する過程で使用し残存した全てのイオン性物質について、それぞれのイオン性物質のコンクリート組成物用混和剤中における質量モル濃度m
iと電荷z
iの二乗との積を加算し、さらにそれに1/2を乗じて算出されるものをいう。合成する過程で使用し残存するイオン性物質は、例えば重合開始剤等に由来するものである。
【0029】
数1において、
I:イオン強度
m
i:質量モル濃度(mol・kg
−1)
z
i:電荷
【0030】
A成分を形成することとなる不飽和モノカルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸単量体及び/又はこれらの塩としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩等から選ばれるものが挙げられるが、水溶性セルロースエーテルのコンクリート組成物用混和剤中での安定化の観点からは、塩ではなく酸の状態であることが好ましい。
【0031】
不飽和モノカルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸単量体の塩としては、特に制限するものではないが、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0032】
不飽和モノカルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸単量体及び/又はこれらの塩と共重合可能な分子中に1〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する不飽和単量体としては、α−アリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシプロピレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、ポリアマイドポリアミン(ポリ)オキシエチレン、ポリアマイドポリアミン(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−ビニル−ω−ヒドロキシ(ポリ)オキシブチレン(ポリ)オキシエチレン等が挙げられる。
【0033】
A成分として用いるカルボン酸系共重合体及び/又はその塩は、各種方法で合成することができる。これには、溶媒に水を用いたラジカル重合、溶媒に有機溶媒を用いたラジカル重合、無溶媒のラジカル重合等が挙げられる。ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物のように、重合反応温度下において分解し、ラジカルを発生するものであればその種類は特に制限されないが、イオン強度の観点から過酸化水素等のように分解後もイオン性物質を生じないものが好ましい。また、促進剤として亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤や、エチレンジアミン、グリシン等のアミン化合物も併用することができる。得られる共重合体及び/又はその塩の質量平均分子量を所望の範囲とするため、連鎖移動剤を用いることもできる。
【0034】
A成分のカルボン酸系共重合体の質量平均分子量は、プルラン換算で2000〜500000の範囲であるのが好ましく、10000〜100000の範囲であるのがより好ましい。
【0035】
A成分のカルボン酸系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の単量体を共重合させたものとすることができるが、その共重合割合は、共重合体質量中の20質量%以下とするのが好ましく、10質量%以下とするのがより好ましい。
【0036】
他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリルアミド等が挙げられる。
【0037】
B成分の水溶性セルロースエーテルとしては、非イオン性であり、コンクリート組成物の材料の分離抑制、ブリーディング量の低減による耐久性の向上、強度及び品質のバラツキ低減が可能な点において、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好適に用いられる。
【0038】
具体的に、アルキルセルロースとしては、DSが好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.2〜2.0であるメチルセルロース、DSが好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.2〜2.0であるエチルセルロース等が挙げられる。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、MSが好ましくは0.1〜3.0、より好ましくは0.5〜2.8であるヒドロキシエチルセルロース、MSが好ましくは0.05〜3.3、より好ましくは0.1〜3.0であるヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、DSが好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.2〜2.0であり、MSが好ましくは0.05〜0.6、より好ましくは0.10〜0.5であるヒドロキシエチルメチルセルロース、DSが好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.2〜2.0であり、MSが好ましくは0.05〜0.6、より好ましくは0.10〜0.5であるヒドロキシプロピルメチルセルロース、DSが好ましくは1.0〜2.2、より好ましくは1.2〜2.0であり、MSが好ましくは0.05〜0.6、より好ましくは0.10〜0.5であるヒドロキシエチルエチルセルロース等が挙げられる。
【0039】
なお、DSは、置換度(degree of substitution)を表し、無水グルコース1単位当たりのアルコキシ基の平均個数のことをいう。また、MSは、置換モル数(molar substitution)を表し、無水グルコース1単位当たりのヒドロキシアルコキシ基の平均モル数のことをいう。
【0040】
DSやMSは、第17改正日本薬局方記載のヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の置換度分析方法により測定した値を換算することにより求めることができる。
【0041】
B成分の水溶性セルロースエーテルの20℃における2質量%又は1質量%の水溶液粘度は、コンクリート組成物に所定の粘性を与える点から、B−H粘度計の20rpmにおいて、好ましくは30(2質量%)〜30000(1質量%)mPa・sであり、より好ましくは80(2質量%)〜25000(1質量%)mPa・sであり、更に好ましくは350(2質量%)〜20000(1質量%)mPa・sである。なお、水溶性セルロースエーテルの粘度は、2質量%水溶液で50000mPa・sを超える場合は、1質量%水溶液により測定した。
【0042】
コンクリート組成物用混和剤中における水溶性セルロースエーテルの割合は、特に制限されないが、好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0043】
C成分のガム類は、コンクリート組成物用混和剤中の水溶性セルロースエーテルの安定化において有効である。その種類に特に制限はないが、かかるガム類としては、ダイユータンガム、ウェランガム、キサンタンガム及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。
【0044】
B成分の水溶性セルロースエーテルは、前記したようにイオン性物質の濃度が一定以上になると溶解できなくなり、析出する現象(塩析)が起き、安定化せずに沈降してしまう。本実施形態におけるコンクリート組成物用混和剤では、イオン強度を適切に制御することにより、水溶性セルロースエーテルの沈降を制御することが可能となるが、ストークスの定理により分散媒である溶液の粘度を上げることによって、更に、優れた安定化を実現できる。特に、その特性が高いことから、ガム類の中でも、ダイユータンガム、ウェランガム、キサンタンガム及びジェランガムから選ばれるガム類が好ましい。
【0045】
一般的に、コンクリート組成物用混和剤は、製造後からコンクリート組成物に添加されるまでの不定期間、静置して保管される。前記の塩析した水溶性セルロースエーテルを含むコンクリート組成物用混和剤では、水溶性セルロースエーテルが下部に沈降し、コンクリート組成物に添加しても所望の効果が得られず、コンクリート組成物の性状、物性が不安定なものとなる。一方、イオン強度を適切に制御し、ガム類を添加したコンクリート組成物用混和剤では、水溶性セルロースエーテルは、塩析による沈降を起こさず、均一な水溶液であり、安定したコンクリート組成物の提供が可能となる。
【0046】
ダイユータンガムは、D−グルコース、D−グルクロン酸、D−グルコースとL−ラムノース及び2つのL−ラムノースより構成されており、市販品としては、例えば、KELCO−CRETE DG−F(CP Kelco社製の商品名)を用いることができる。ウェランガムは、D−グルコース、D−グルクロン酸、L−ラムノースが2:2:1の割合で結合した主鎖に、L−ラムノース若しくはL−マンノース側鎖が結合した構造であり、市販品としては、例えば、CP KELCO KIA−96(CP Kelco社製の商品名)を用いることができる。キサンタンガムは、セルロースと同様、主鎖がD−グルコースのβ−1,4結合であり、側鎖がマンノース2つとグルクロン酸1つより構成されており、市販品としては、例えば、KELZAN(三晶社製の商品名)を用いることができる。ジェランガムは、D−グルコース、D−グルクロン酸、L−ラムノースが2:1:1の割合で結合した4つの糖を反復単位とするヘテロ多糖類であり、市販品としては、例えば、KELCOGEL AFT(CP Kelco社製の商品名)を用いることができる。
【0047】
コンクリート組成物用混和剤におけるガム類の割合は、特に制限されないが、ダイユータンガムの場合、好ましくは0.005〜2質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、更に好ましくは0.02〜0.8質量%である。ウェランガム、キサンタンガム及びジェランガムの場合、好ましくは0.005〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜5質量%であり、更に好ましくは0.02〜3質量%である。
【0048】
コンクリート組成物用混和剤の安定性を向上させるために、ガム類は、粉末で使用するのではなく、水に溶解した状態で使用するのが好ましい。
【0049】
D成分の消泡剤としては、コンクリート組成物用混和剤中の水溶性セルロースエーテルの安定化という点において、オキシアルキレン系、シリコーン系、アルコール系、鉱油系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系等が用いられる。
【0050】
オキシアルキレン系消泡剤としては、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類、ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数8以上の高級アルコールや炭素数12〜14の2級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類、ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリン酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフエノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類、(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類、ポリオキシアルキレンアミド等が挙げられる。
【0051】
シリコーン系消泡剤としては、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン、フルオロシリコーン油等が挙げられる。
【0052】
アルコール系消泡剤としては、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等が挙げられる。
【0053】
鉱油系消泡剤としては、灯油、流動パラフィン等が挙げられる。
【0054】
脂肪酸系消泡剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0055】
脂肪酸エステル系消泡剤としては、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等が挙げられる。
【0056】
D成分の消泡剤としては、コンクリート組成物用混和剤の分散安定性の点から、オキシアルキレン系消泡剤、鉱油系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤が好ましい。
【0057】
コンクリート組成物用混和剤における消泡剤の割合は、特に制限されないが、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.005〜5質量%である。このように水溶性セルロースエーテルの抑泡や破泡に必要な消泡剤の添加量(通常、水溶性セルロースエーテルに対して5〜10質量%)以上を添加することにより、塩析による水溶性セルロースエーテルの沈降を抑制することができる。
【0058】
E成分は、下記の化5、化6、及び化7でそれぞれ示される脂肪族アルコールリン酸エステルを少なくとも一種以上含む第一成分と、下記の化8で示される有機アミンを含む第二成分とで中和した脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩である。
【0062】
但し、上記化5〜化7において、R
1〜R
5は、炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基を示し、nは2又は3の整数を示し、M
1〜M
4は、水素原子、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属を示し、かつ、M
1〜M
4の少なくとも一部にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含むものを示している。
【0064】
但し、上記化8において、
R
6は、炭素数1〜30のアルキル基及び/又は炭素数2〜30のアルケニル基を示し、AO,BOは、それぞれオキシアルキレン基を示し、a,bは、0以上の整数であって、かつ、a+b≦100の条件を満たすものである。
【0065】
ここで、既に説明したように、上記化5において、R
1は炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基である。なお、R
1の炭素数は6〜24であるが、好ましくは6〜20である。
【0066】
かかるR
1としては、例えば、1)ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピル−ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数6〜24の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基、2)ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2−プロピル−ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものから水酸基を除いた残基が挙げられる。なかでもR
1としては、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、ドデシルアルコール、2−ブチル−オクチルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール等の炭素数6〜20の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基が好ましい。
【0067】
化5で示される脂肪族アルコールリン酸エステルとしては、モノヘキシルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノ−2−エチル−ヘキシルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノ−2−ブチル−オクチルホスフェート、モノトリデシルホスフェート、モノミリスチルホスフェート、モノセチルホスフェート、モノステアリルホスフェート、モノイソステアリルホスフェート、モノオレイルホスフェート等及びそれらのアルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0068】
化6において、R
2、R
3は化5中のR
1について記述したものと同一である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0069】
化6で示される脂肪族アルコールリン酸エステルとしては、例えば、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジ−2−エチル−ヘキシルホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジ−2−ブチル−オクチルホスフェート、ジトリデシルホスフェート、ジミリスチルホスフェート、ジセチルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ジイソステアリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジデシルオレイルホスフェート等及びそれらのアルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0070】
化7において、R
4、R
5は化5中のR
1について記述した述べたものと同一である。そのため、詳細な説明は省略する。また、nは2又は3の整数である。
【0071】
化7で示される脂肪族アルコールリン酸エステルとしては、モノヘキシルピロホスフェート、ジヘキシルピロホスフェート、モノオクチルピロホスフェート、ジオクチルピロホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルピロホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルピロホスフェート、モノノニルピロホスフェート、ジノニルピロホスフェート、モノドデシルピロホスフェート、ジドデシルピロホスフェート、モノオレイルピロホスフェート、ジオレイルピロホスフェート、ドデシルオレイルピロホスフェート、ジオレイルポリホスフェート等及びそれらのアルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0072】
化8において、R
6は炭素数1〜30のアルキル基及び/又は炭素数2〜30のアルケニル基である。かかるR
6としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、オクタデセニル基等が挙げられる。R
6は、牛脂アミン、硬化牛脂アミン、ヤシ油アミン、パーム油アミン、大豆油アミン等のアミンから、アミノ基を除いた基であってもよい。
【0073】
R
6は直鎖又は分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。R
6の炭素数は1〜30であるが、好ましくは6〜22である。R
6の炭素数が30超であると、そのような有機アミンは疎水性が増大し、相溶性が低下する。
【0074】
化8において、AO、BOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であるが、好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基である。a、bは、オキシアルキレン基の付加モル数を示す。
【0075】
化8において、a、bは0以上の整数であって、かつ、a+b≦100を満足する整数である。好ましくは1≦a+b≦50を満足する整数であり、より好ましくは2≦a+b≦50を満足する整数であり、更に好ましくは2≦a+b≦35を満足する整数であり、更により好ましくは3≦a+b≦35を満足する整数である。
【0076】
更に、第一成分の脂肪族アルコールリン酸エステルは、上記化5〜化7におけるR
1〜R
5が炭素数6〜20のアルキル基及び/又はアルケニル基であっても構わない。
【0077】
加えて、第二成分の有機アミンは、上記化8におけるR
6が炭素数6〜22のアルキル基及び/又はアルケニル基であっても構わない。
【0078】
また、第一成分の脂肪族アルコールリン酸エステルの酸価は特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜500mg/gの範囲とすることができる。好ましくは40〜400mg/gの範囲であり、より好ましくは100〜250mg/gの範囲である。
【0079】
ここで、酸価は、例えば、イソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合液、あるいは水等の溶剤に溶解した試料と0.1N水酸化カリウムのエチレングリコール/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合溶液とで電位差自動滴定装置を用いて電位差滴定し、終点の滴定量(ml)を測定して、試料1g中に含まれるリン酸エステルの酸性基を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を下記の数2で算出した値である。
【0081】
上記数2において、
A1:滴定量 (ml)
f1:0.1N水酸化カリウム溶液の力価
W1:試料の量(g)
をそれぞれ示す。
【0082】
また、第二成分の有機アミンのアミン価は特に限定されるものではないが、例えば、20〜200mg/gの範囲とすることができる。好ましくは30〜150mg/gの範囲とすることができ、より好ましくは30〜100mg/gの範囲とすることができる。
【0083】
アミン価は、例えば、イソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合液、あるいは水等の溶剤に溶解した試料と0.1N塩酸エチレングリコール/イソプロピルアルコール(容量比1/1)混合溶液で電位差自動滴定装置を用いて電位差滴定をし、終点の滴定量(ml)を測定して、試料1g中に含まれる有機アミンのアミノ基を中和するのに要する塩酸と等量の水酸化カリウムのmg数を下記の数3で算出した値である。
【0085】
上記数3において、
A2:滴定量(ml)
f2:0.1N塩酸溶液の力価
W2:試料の量(g)
をそれぞれ示す。
【0086】
更に、第二成分のアミン価に第二成分の質量を乗じた値を第一成分の酸価に第一成分の質量を乗じた値で除し、100を乗じた値(以下、「アミン価/酸価×100」と称す。)は、10〜300の範囲とすることができる。好ましくは、30〜250の範囲とすることができ、より好ましくは50〜150の範囲とすることができる。
【0087】
本発明に係るコンクリート組成物用混和剤を構成する脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩は、炭素数6〜24の脂肪族アルコール、又は炭素数6〜24の脂肪族アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計1〜10モルの割合で付加したものに、例えば、五酸化二リンを反応させて脂肪族アルコールリン酸エステルを得た後、かかる脂肪族アルコールリン酸エステルを水酸化カリウム等のアルカリ成分及び化8で示される有機アミンで中和することにより得られる。前記の脂肪族アルコールリン酸エステルは通常、化5で示される脂肪族アルコールリン酸エステルと化6で示される脂肪族アルコールリン酸エステルの混合物となるが、場合によっては更に化7で示される脂肪族アルコールリン酸エステルをも含む混合物となる。
【0088】
本発明に係るコンクリート組成物用混和剤は、土木、建築、二次製品等の水硬性結合材を含有するコンクリート組成物に使用されるものである。
【0089】
本発明に係るコンクリート組成物用混和剤は既存のコンクリート組成物用添加剤と併用することができる。かかるコンクリート組成物用添加剤としては、AE減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、消泡剤、収縮低減剤、増粘剤、硬化促進剤等が挙げられる。
【0090】
本発明に係るコンクリート組成物用混和剤の使用対象となるコンクリート組成物の調製に用いる水硬性結合材としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。また、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等の各種混和材を、先に示した各種セメントと併用してもよい。
【0091】
またコンクリート組成物の調製に骨材を用いる場合の骨材としては細骨材と粗骨材が挙げられ、細骨材としては川砂、山砂、海砂、砕砂、スラグ細骨材等が挙げられ、粗骨材としては川砂利、砕石、軽量骨材等が挙げられる。
【0092】
更にコンクリート組成物の水結合材比は、30〜70%とするのが好ましく、40〜65%とするのがより好ましく、45〜60%とするのが更に好ましい。水結合材比が30%より小さいと、コンクリート組成物に過剰な粘性を付与し、施工性の悪化を招くこととなるので好ましくない。逆に、水結合材比が大きくなると、コンクリート組成物に十分な材料分離抵抗性を付与することができず、また、コンクリート組成物の凍結融解抵抗性が低くなり、70%を超えると材料分離抵抗性や凍結融解抵抗性が得られなくなる場合が多い。
【0093】
本発明に係るコンクリート組成物のスランプフロー値は、350〜750mmの範囲が好ましく、350〜700mmの範囲がより好ましく、400〜650mmの範囲が更に好ましい。
【0094】
本発明のコンクリート組成物は、水硬性結合材100質量部当たり、本発明のコンクリート組成物用混和剤を0.5〜3.0質量部の割合で含有することが好ましい。このような割合で本発明のコンクリート組成物用混和剤を含有すると、高流動のコンクリート組成物においても、材料分離抵抗性や凍結融解抵抗性を十分に確保することができる。
【0095】
本発明のコンクリート組成物は、水硬性結合材100質量部当たり、E成分が0.0001〜0.05質量部の割合で含有することが好ましく、0.0003〜0.025質量部の割合で含有することがより好ましい。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りのない限り、“部”は質量部、“%”は質量%を意味する。
【0097】
試験区分1(A成分の合成)
・A成分(A−4)の合成
水1400g、α−メタクリロイル−ω−メトキシポリ(45モル)オキシエチレン1100g、メタクリル酸104g、連鎖移動剤としてチオグリセロール24g及び30%水酸化ナトリウム水溶液50gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過酸化水素の0.025%水溶液240gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に過酸化水素の0.025%水溶液60gを投入し、ラジカル重合反応を6時間継続して行った。得られた共重合体に水3182g及び30%水酸化ナトリウム水溶液121gを加え、A成分(A−4)の20%水溶液を得た。このA成分(A−4)の質量平均分子量は、31000(GPC法、プルラン換算)であった。
【0098】
・A成分(A−6)、(A−8)及び(A−9)の合成
A成分(A−4)と同様にして、A成分(A−6)、(A−8)及び(A−9)の水溶液を得た。
【0099】
・A成分(A−7)の合成
α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(100モル)オキシエチレンポリ(3モル)オキシプロピレン及び無水マレイン酸を反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して撹拌しながら均一に溶解した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、2,2’(アゾビスイソブチロニトリル)を投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に2,2’アゾビスイソブチロニトリルを投入し、ラジカル重合反応を2時間継続して行なった。得られた共重合体に水及び30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、A成分(A−7)の水溶液を得た。このA成分(A−7)を分析したところ、質量平均分子量69200(GPC法、プルラン換算)であった。
【0100】
・A成分(A−10)の合成
水、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(80モル)オキシエチレンを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、温度を安定させた。その後、アクリル酸を3時間かけて滴下した。同時に、チオグリコール酸、L−アスコルビン酸を水に溶解させた水溶液及び5%過酸化水素水をそれぞれ3時間かけて滴下し、ラジカル重合反応を開始した。滴下終了から1時間経過後、得られた共重合体に水及び30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、A成分(A−10)の水溶液を得た。このA成分(A−10)を分析したところ、質量平均分子量71300(GPC法、プルラン換算)であった。
【0101】
・A成分(AR−1)及び(AR−2)の合成
A成分(A−4)と同様にして、A成分(AR−1)及び(AR−2)の水溶液を得た。このA成分(AR−1)及び(AR−2)の質量平均分子量は、それぞれ49900、32100(GPC法、プルラン換算)であった。
【0102】
以上で合成したA成分(A−1)〜(A−10)及び(AR−1)〜(AR−3)の内容を表1にまとめて示した。尚、A成分(A−1)〜(A−3)及び(A−5)の水溶液はA成分(A−6)の水溶液を、またA成分(AR−3)の水溶液はA成分(AR−2)の水溶液を水で希釈して調製した。
【0103】
[質量平均分子量測定条件]
[GPC法]
装置:昭和電工社製Shodex GPC−101
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:昭和電工社製OHpak SB−G+SB−806M HQ+SB−806M HQ
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.7mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:昭和電工社製プルラン
【0104】
以上で合成した各A成分の内容を表1にまとめて示した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1において、
A−1〜A−3及びA−5の水溶液:A−6の水溶液を水で希釈した。
AR−3の水溶液:AR−2の水溶液を水で希釈した。
【0107】
試験区分2(その他の使用材料)
使用したB成分:水溶性セルロースエーテルの内容を表2にまとめて示した。
使用したC成分:ガム類の内容を表3にまとめて示した。
使用したD成分:消泡剤はSNデフォーマー14−HP(オキシアルキレン系消泡剤、サンノプコ社製の商品名)、略号:D−1を使用した。
【0108】
【表2】
【0109】
表2において、
水溶液粘度(mPa・s):20℃における2質量%水溶液の粘度
【0110】
【表3】
【0111】
表3において、
C−1:KELZAN(三晶社製の商品名)
C−2:CP KelcoK1A−96(CP Kelco社製の商品名)
C−3:KELCO−CRETE DG−F(CP Kelco社製の商品名)
C−4:KELCOGEL AFT(CP Kelco社製の商品名)
【0112】
試験区分3(E成分としての脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩等の調製)
・脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩(E−1)の調製
反応容器にn−オクチルアルコール41.6部を仕込み、120℃で0.05MPaの条件下に2時間脱水処理した後、大気圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二リン18.1部を0.5時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、イオン交換水1.2部を投入して0.5時間熟成した。これに48%水酸化カリウム水溶液18.8部を50℃で滴下して中和を行った。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定にて酸価を測定したところ、202mg/gであった。これにラウリルアミン−ポリオキシエチレン20モル付加物(アミン価55mg/g)164.1部を50℃で滴下して中和を行い、イオン交換水を加えて、(E−1)の25%水溶液を調製した。
【0113】
・脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩(E−2)〜(E−9)の調製
(E−1)と同様にして、(E−2)〜(E−9)を調製し、(E−2)〜(E−9)の25%水溶液を得た。
【0114】
・脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩(ER−1)の調製
(E−1)と同様にして、(ER−1)を調製し、(ER−1)の25%水溶液を得た。
【0115】
・脂肪族アルコールリン酸エステル(ER−2)の調製
反応容器にn−オクチルアルコール135.8部を仕込み、120℃、0.05MPaの条件下で2時間脱水処理した後、大気圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二リン59.1部を0.5時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、イオン交換水4.1部を投入して0.5時間熟成した。これに48%水酸化カリウム水溶液153.4部を50℃で滴下して中和を行った後、イオン交換水を加えて、(ER−2)の25%水溶液を得た。得られた混合物から一部を採取し、混合物中に含まれる水分を乾燥させた後、電位差滴定にて酸価を測定したところ、0mg/gであった。
【0116】
・脂肪族アルコールリン酸エステル(ER−3)の調製
(ER−2)と同様にして、(ER−3)の25%水溶液を得た。
【0117】
・脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩(E−1)、(E−2)、(E−4)、(E−5)及び(E−8)に用いた有機アミンの調製
オートクレーブにラウリルアミン322.4部を仕込み、オートクレーブ内を十分に窒素で置換した。撹拌しながら150℃に維持してエチレンオキサイド148.3部を反応しながら圧入した後、同温度で0.5時間熟成した。80℃まで冷却した後、触媒として水酸化カリウム粉末0.8部を投入した後、オートクレーブ内を十分に窒素置換した。撹拌しながら150℃に維持してエチレンオキサイド1336.9部を反応しながら圧入した後、同温度で1時間熟成し、有機アミンを得た。触媒の水酸化カリウムを除去した後、電位差滴定にてアミン価を測定したところ、55mg/gであった。
【0118】
・脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩(E−3)、(E−7)、(E−9)に用いた有機アミンの調製
(E−1)、(E−2)、(E−4)、(E−5)及び(E−8)に用いた有機アミンと同様にして、調製した。
【0119】
以上で調製した各E成分の脂肪族アルコールリン酸エステルの有機アミン塩等の内容を表4にまとめて示した。なお、脂肪族アルコールリン酸エステルのP核積分比率は、溶媒に重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用い、過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、
31P−NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometer System、300MHz)を測定し、下記の数4〜6で算出し表4にあわせて示した。
【0120】
【表4】
【0121】
ここで、表4の脂肪族アルコールリン酸エステルにおいて、
C8:オクチルアルコールから水酸基を除いた残基
C12:ラウリルアルコールから水酸基を除いた残基
C18:オレイルアルコールから水酸基を除いた残基
C18
*:オレイルアルコール−エチレンオキサイド4モル付加物から水酸基を除いた残基
K:カリウム
Na:ナトリウム
表4の有機アミンにおいて、
C8:オクチル基
C12:ラウリル基
C18:ステアリル基
EO:オキシエチレン基
【0122】
【数4】
【0123】
【数5】
【0124】
【数6】
【0125】
上記数4〜6において、
P化1:化1で示される脂肪族アルコールリン酸エステルに帰属されるP核NMR積分値
P化2:化2で示される脂肪族アルコールリン酸エステルに帰属されるP核NMR積分値
P化3:化3で示される脂肪族アルコールリン酸エステルに帰属されるP核NMR積分値
【0126】
・比較のためのER成分(ER−4)の調製
反応容器にイオン交換水701.7部、48%水酸化カリウム水溶液76.3部を仕込んだ後、撹拌しながら90℃でロジン222.0部(和光純薬社製)を投入した。その後、1時間熟成し、(ER−4)の25%水溶液を得た。
【0127】
試験区分4(コンクリート組成物用混和剤の調製)
【0128】
(C成分を粉末で用いる場合)
・コンクリート組成物用混和剤(P−1)の調製
表1〜表4に記載のA成分、B成分、C成分及びE成分、前記のD成分及び水を表6に示す割合で配合して、ホモミキサー(HM−310、AS ONE社製)を用いて5000rpmで1分間混合し、(P−1)を調製した。
【0129】
・コンクリート組成物用混和剤(P−2)〜(P−7)、(P−9)及び(P−11)の調製
(P−1)と同様にして、(P−2)〜(P−7)、(P−9)及び(P−11)を調製した。
【0130】
・コンクリート組成物用混和剤(PR−1)〜(PR−3)、(PR−5)及び(PR−6)の調製
(P−1)と同様にして、(PR−1)〜(PR−3)、(PR−5)及び(PR−6)を調製した。
【0131】
(C成分を水溶液で用いる場合)
・コンクリート組成物用混和剤(P−8)の調製
水とC成分を配合して、ホモミキサー(HM−310、AS ONE社製)を用いて5000rpmで1分間混合し、C成分の2%水溶液を調製した。その後、コンクリート組成物用混和剤(P−1)と同様にして、(P−8)を調製した。
【0132】
・コンクリート組成物用混和剤(P−10)及び(P−12)の調製
(P−8)と同様にして、(P−10)及び(P−12)を調製した。
【0133】
・コンクリート組成物用混和剤(PR−4)及び(PR−7)の調製
(P−4)と同様にして、(PR−4)及び(PR−7)を調製した。
【0134】
調製したコンクリート組成物用混和剤(P−1)〜(P−12)及び(PR−1)〜(PR−7)の内容を表6にまとめて示した。
【0135】
試験区分5(イオン強度の計算)
試験区分4で調製した各コンクリート組成物用混和剤におけるA成分(A−4)に由来するイオン強度を、前記した数1により計算したところ、0.206であった。計算過程等を表5に示した。
【0136】
【表5】
【0137】
A成分(A−4)に由来するイオン強度と同様にして、A成分(A−1)〜(A−3)、(A−5)〜(A−10)及び(AR−1)〜(AR−3)に由来するイオン強度を計算した。各コンクリート組成物用混和剤におけるA成分に由来するイオン強度の計算結果を表6にまとめて示した。
【0138】
【表6】
【0139】
表6において、
*1:アルキルアリルスルホン酸塩高縮合物(竹本油脂社製のコンクリート用高性能減水剤、商品名ポールファイン510AN)
*2:含窒素型スルホン酸塩(竹本油脂社製のコンクリート用高性能減水剤、商品名ポールファインMF)
【0140】
試験区分6(コンクリート組成物用混和剤の安定性試験)
試験区分4で調製したコンクリート組成物用混和剤を活栓付のメスシリンダーに100ml採取した後、20℃及び40℃の環境下で静置し、水溶性セルロースエーテルの沈降体積を測定した。沈降体積の評価は、塩析がなく、均一に分散した状態を100%とし、時間経過とともに徐々にメスシリンダー上部に透明部分が現れ始め、透明部分と分散した部分の境界線のメスシリンダーの目盛を読み取ることによって行った。例えば、7日後の透明部分と分散した部分の境界線のメスシリンダーの目盛が90mlの場合、沈降体積は90%となる。測定結果を表7にまとめて示した。
【0141】
【表7】
【0142】
・E成分及びER成分の安定性確認
E成分及びER成分の安定性は、試験区分4で調製したコンクリート組成物用混和剤を活栓付のメスシリンダーに100ml採取した後、20℃で静置して、溶解性を目視で確認した。
【0143】
試験区分7(コンクリート組成物用混和剤の安定性評価)
各例のコンクリート組成物用混和剤を次のように評価し、結果を表8にまとめて示した。
【0144】
・沈降体積の安定性の評価
次の基準で評価した。
A:28日静置後の沈降体積(%)が95〜100%
B:28日静置後の沈降体積(%)が80以上〜95%未満
C:28日静置後の沈降体積(%)が80%未満
【0145】
・E成分及びER成分の安定性評価
次の基準で評価した。
A:1週間以上溶解
B:1日以上1週間未満溶解
C:1日未満で分離
【0146】
【表8】
【0147】
試験区分8(コンクリート組成物の調製)
・実施例1〜19及び比較例1〜8
容量60リットルの強制二軸ミキサーを用い、表9及び表10に記載の内容で、90秒間練混ぜを行い、表10に記載した各例のコンクリート組成物を調製した。なお、コンクリート組成物用混和剤は、E成分及びER成分を除く成分を、試験の28日前に使用量の10倍量調製して20℃で静置し、別に記載しない限り、上部70%以上の上澄みを用いた。E成分及びER成分は使用直前に混合した。また、各例のコンクリート組成物について、消泡剤(竹本油脂株式会社製の商品名AFK−2)を用い、目標空気量を4.5±1.0%とし、目標スランプフロー値を600±50mmとした。
【0148】
【表9】
【0149】
表9において、
細骨材:大井川水系産陸砂(表乾密度=2.57g/cm
3)
粗骨材:岡崎産砕石(表乾密度=2.66g/cm
3)
【0150】
試験区分9(コンクリート組成物の物性試験及び物性評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、練混ぜ直後のスランプフロー値、空気量、ブリーディング率を下記のように測定し、結果を表10にまとめて示した。
【0151】
・スランプフロー(mm):練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS A 1150に準拠して測定した。
・空気量(容積%):練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS A 1128に準拠して測定した。
・ブリーディング率(%):練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS A 1123に準拠して測定した。
【0152】
試験区分10(調製したコンクリート硬化体の物性試験)
調製した各例のコンクリート組成物を硬化させたコンクリート硬化体について、凍結融解に対する耐久性指数を下記のように算出し、結果を表10にまとめて示した。
【0153】
・耐久性指数:コンクリート組成物を硬化させたコンクリート硬化体について、JISA 1148に準拠して算出した。
【0154】
【表10】
【0155】
表10において、
配合No.:表9に記載の配合No.
f−1:普通ポルトランドセメント
f−2:高炉セメントB種
混和剤:表6に記載の混和剤
*3:コンクリート組成物用混和剤(PR−1)について、保管容器下から抜き出して使用した。
添加量:結合材に対する混和剤の割合(質量%)
比較例4:混和剤を結合剤100質量部に対し5.0%添加しても目標の流動性を得ることができなかった。
【0156】
試験区分11(コンクリート組成物用混和剤の分散性能の評価)
表10の測定結果に基づいて、コンクリート組成物用混和剤の分散性能を、次のように評価し、結果を表11にまとめて示した。
【0157】
・コンクリート組成物用混和剤の分散性能の評価
練混ぜ直後のコンクリート組成物について、目標スランプスランプフロー値を得るためのコンクリート組成物用混和剤の添加割合により次の基準で評価した。
A:結合材100質量部に対してコンクリート組成物用混和剤の添加割合が2.00質量部未満
B:結合材100質量部に対してコンクリート組成物用混和剤の添加割合が2.00質量部〜3.00質量部
C:結合材100質量部に対してコンクリート組成物用混和剤の添加割合が3.00質量部超
【0158】
試験区分12(調製したコンクリート組成物の物性評価)
表10の測定結果に基づいて、各例のコンクリート組成物の材料分離抵抗性を、ブリーディング率及び材料の一体感を指標として次のように評価し、結果を表11にまとめて示した。
【0159】
・ブリーディング率の評価
(水結合材比40%)
A:ブリーディング率が4.0%以下
C:ブリーディング率が4.0%超
(水結合材比50%)
A:ブリーディング率が6.0%以下
C:ブリーディング率が6.0%超
(水結合材比60%)
A:ブリーディング率が8.0%以下
C:ブリーディング率が8.0%超
・コンクリート組成物の材料の一体感の評価
コンクリート組成物について、目視により、材料の一体感を次の基準で評価した。
A:非常に良好(骨材とモルタル・ペーストの分離なし)
B:良好(わずかに骨材とモルタル・ペーストが分離)
C:悪い(明らかに骨材とモルタル・ペーストが分離)
【0160】
試験区分13(調製したコンクリート硬化体の物性評価)
表10の測定結果に基づいて、各例のコンクリート硬化体の凍結融解抵抗性を、次のように評価し、結果を表11にまとめて示した。
【0161】
・凍結融解抵抗性(300サイクル)の評価
各コンクリート組成物の硬化体を作製し、この硬化体について相対動弾性係数を測定して、耐久性指数を算出し、凍結融解抵抗性を次の基準で評価した。評価は、以下の基準に基づいて行った。この数値は、最大値が100であり、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
耐久性指数(凍結融解抵抗性)の評価:
S:90〜100
A:80〜90未満
B:60〜80未満
【0162】
【表11】
【0163】
(結果)
表7、表8、表10及び表11に示される結果から明らかなように、本発明によると、流動性が高く、骨材等の材料の分離が少なく、減水成分の固形分濃度が高く、安定性が高く、更に凍結融解抵抗性に優れるコンクリート組成物を提供することができることが確認された。