【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成31年3月 https://ims−ieee.org/technical−program/technical−sessions#2019−06−05 (IMS2019 Technical Sessions,We1D−4:A 6−mW−DC−Power 300−GHz CMOS Receiver for Near−Field Wireless Communications アブストラクト)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省、「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発−300GHz帯シリコン半導体CMOSトランシーバ技術−」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【解決手段】デュアルモード高速無線受信機20は、受信したシングルエンドのRF信号を差動のRF信号に変換するバラン211と、差動の受信LO信号を生成する受信LOドライバ22と、バラン211と受信LOドライバ22とに接続されたダブルバランスドミキサ23と、受信LOドライバ22およびダブルバランスドミキサ23がいずれも動作する第1受信モードと、受信LOドライバ22が停止し、ダブルバランスドミキサ23が動作する第2受信モードとを切り替える受信モードスイッチ25とを備えている。
送信LO信号でアップコンバートした送信RF信号を送信する送信機であって、前記送信RF信号に含まれる送信LO高調波成分を抑制して前記送信RF信号を送信する第1送信モードと、前記送信LO高調波成分を抑制せずに前記送信RF信号を送信する第2送信モードとの切り替えが可能なデュアルモード高速無線送信機と、
前記デュアルモード高速無線送信機から送信される前記送信RF信号を受信する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のデュアルモード高速無線受信機とを備え、
前記デュアルモード高速無線受信機が、前記デュアルモード高速無線送信機が前記第1送信モードで動作するときには前記第1受信モードで動作し、前記デュアルモード高速無線送信機が前記第2送信モードで動作するときには前記第2受信モードで動作するように構成されている、デュアルモード高速無線通信システム。
前記デュアルモード高速無線送信機が、前記測距部として、前記デュアルモード高速無線受信機から送信されるパルスのパワーを検知するパルスパワー検知器と、検知されたパルスパワーに応じて送受信機間距離を算出するプロセッサとを備えている、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のデュアルモード高速無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
≪実施形態≫
図1Aおよび
図1Bは、本発明の一実施形態に係るデュアルモード高速無線通信システムの主要部のブロック図である。本実施形態に係るデュアルモード高速無線通信システム100は、デュアルモード高速無線送信機10と、デュアルモード高速無線受信機20とから構成され、これら送受信機間で300GHz帯のRF信号による高速無線通信を行う。さらに、本実施形態に係るデュアルモード高速無線通信システム100は、送受信機が比較的離れている場合には
図1Aに示した通常通信モードで動作し、送受信機が近接している場合には
図1Bに示した近距離通信モードで動作する。これら2つのモードは手動あるいは自動で相互に切り替え可能である。
図1Aにおいて、デュアルモード高速無線送信機10から送信されるRF信号およびデュアルモード高速無線受信機20が受信するRF信号のスペクトラムにおけるグレー表示はRF信号に含まれるLO高調波成分(LO
2)が十分に抑制されていることを表している。また、
図1Bにおいて、グレー表示された回路要素は動作していない、すなわち、電源が遮断されて停止していることを表している。なお、以下では便宜のため、デュアルモード高速無線通信システム、デュアルモード高速無線送信機およびデュアルモード高速無線受信機を、それぞれ、単に通信システム、送信機および受信機と称することがある。
【0015】
送信機10は、送信アンテナ11と、送信LOドライバ12と、アップコンバージョンミキサ13と、アンプ14と、スクエアミキサ15とを備えている。送信LOドライバ12は、入力される図略の基準クロック信号の周波数を逓倍して送信LO信号(LO
TX)を生成する回路要素である。より詳細には、送信LOドライバ12は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)121と、分周器122と、PFD/CP(Phase/Frequency Detector/Charge Pump)123と、LF(Loop Filter)124とを備えたPLL(Phase Locked Loop)で構成されている。PLLの位相ロック動作によりVCO121から所望周波数のLO
TXが出力される。
【0016】
アップコンバージョンミキサ13は、送信ベースバンド信号(IF
IN)と送信LOドライバ12から出力されるLO
TXを受け、それらをミキシング(基本波ミキシング)してアップコンバートしたIF信号を出力する回路要素である。一般に、アップコンバージョンミキサ13から出力されるIF信号においてLO信号成分は十分に抑制されることが好ましいが、高周波数帯ではLO信号成分を十分に抑制することが難しくなる。そのため、アップコンバージョンミキサ13から出力されるIF信号にはある程度の強度のLO信号成分が含まれる。このようなアップコンバージョンミキサ13から出力される,LO信号成分を含むIF信号を便宜上IF+LOと呼ぶことにする。
【0017】
さらにアップコンバージョンミキサ13は、出力するIF信号に含まれるLO信号成分を抑制することも、逆に送信LO信号を積極的にリークさせて、出力する信号にLO信号成分を含ませることもできるように構成されている。そのようなLO信号を積極的にリークさせる技術は、例えば、特開2017−130804号公報や特開2018−125712号公報などに開示されている。
【0018】
アンプ14は、アップコンバージョンミキサ13から出力されるIF+LOを所定IFパワーにまで増幅する回路要素である。スクエアミキサ15は、アンプ14によって増幅されたIF+LOを二乗して送信RF信号(RF
OUT)を出力する回路要素である。すなわち、スクエアミキサ15によって搬送波周波数が送信LO信号周波数の倍(LO
2)に高められる。スクエアミキサ15から出力されたRF
OUTは送信アンテナ11を通じて空間に放出される。このようなスクエアミキサ15を送信機10の最終段に配置することにより、MOSFETで構成された回路で300GHz帯のRF
OUTを生成することができる。
【0019】
受信機20は、受信アンテナ21と、受信LOドライバ22と、ダウンコンバージョンミキサ23と、LNA(Low Noise Amplifier)24とを備えている。受信LOドライバ22は、入力される図略の基準クロック信号の周波数を逓倍して受信LO信号(LO
RX)を生成する回路要素である。より詳細には、受信LOドライバ22は、VCO221と、分周器122と、PFD/CP223と、LF224とを備えたPLLで構成されている。PLLの位相ロック動作によりVCO221から所望周波数のLO
RXが出力される。ダウンコンバージョンミキサ23は、受信アンテナ21が受信した受信RF信号(RF
IN)と受信LOドライバ22から出力されるLO
RXを受け、それらをミキシング(基本波ミキシング)してダウンコンバートしたIF信号(IF)を出力する回路要素である。LNA24は、ダウンコンバージョンミキサ23から出力されるIFを、後段に接続された図略の信号処理回路で処理できるIFパワーにまで増幅する回路要素である。LNA24から出力されるIF信号(IF
OUT)は図略の信号処理回路に入力されて各種信号処理が行われる。
【0020】
上記構成の通信システム100の動作は概ね次の通りである。
図1Aに示した通常通信モードでは、送信機10の全要素が動作し、送信機10はRF
OUTに含まれる送信LO高調波成分を十分に抑制してRF
OUTを送信する通常送信モードで動作する。また、受信機20の全要素が動作し、受信機20は受信LOドライバ22で生成されるLO
RXでRF
INをダウンコンバートする通常受信モードで動作する。すなわち、通常受信モードでは受信機20はヘテロダイン受信機として動作する。一方、
図1Bに示した近距離通信モードでは、送信機10において送信LOドライバ12における分周器122、PFD/CP123およびLF124が動作を停止してVCO123が自走動作をしてLO
TXを生成し、アップコンバージョンミキサ13がLO
TXをリークさせるように動作し、送信機10は送信LO高調波成分が含まれるRF
OUTを送信する近距離送信モードで動作する。受信機20において受信LOドライバ22が動作を停止し、受信機20は、受信したRF
INに含まれる送信LO高調波成分を使用してRF
INをダウンコンバートする近距離受信モードで動作する。すなわち、近距離受信モードでは受信機20は自己ヘテロダイン受信機として動作する。
【0021】
≪受信機の詳細構成≫
次に受信機20の詳細な構成例について説明する。
図2Aおよび
図2Bは、受信機20の主要部の回路図である。
図2Aは通常受信モード時の回路状態を、
図2Bは近距離受信モード時の回路状態をそれぞれ示す。また、各回路状態の右側に示した回路図はダウンコンバージョンミキサ23の拡大回路図であり、ダウンコンバージョンミキサ23の入出力信号を示す。
【0022】
受信機20は、バラン211と、受信LOドライバ22と、ダウンコンバージョンミキサ23と、RFマッチング回路231と、LOマッチング回路232と、LO電源スイッチ25と、終端回路26と、LO信号スイッチ27と、バイアスティー28とを備えている。これら構成要素のうち、バラン211、受信LOドライバ22、ダウンコンバージョンミキサ23、RFマッチング回路231、LOマッチング回路232、LO電源スイッチ25、終端回路26およびLO信号スイッチ27からなる部分は半導体チップ上に配置することができる。
【0023】
バラン211は、受信アンテナ21が受信したシングルエンドのRF信号を差動のRF信号に変換する回路要素である。受信LOドライバ22は、入力される図略の基準クロック信号の周波数を逓倍して差動の受信LO信号を生成する回路要素である。受信LOドライバ22の構成については上述した通りである。ダウンコンバージョンミキサ23は、差動信号が入力されて差動信号を出力する回路要素である。ダウンコンバージョンミキサ23にはバラン211と受信LOドライバ22とが接続されている。RFマッチング回路231は、バラン211とダウンコンバージョンミキサ23とのインピーダンスマッチングを行う回路要素である。LOマッチング回路232は、受信LOドライバ22とダウンコンバージョンミキサ23とのインピーダンスマッチングを行う回路要素である。
【0024】
より詳細には、ダウンコンバージョンミキサ23は、4個のトランジスタM1ないしM4をクロス接続したダブルバランスドミキサで構成されている。トランジスタM1のソースとトランジスタM4のソースとが互いに接続され、トランジスタM2のソースとトランジスタM3のソースとが互いに接続され、それらにバラン211の差動出力が接続されている。トランジスタM1のゲートとトランジスタM3のゲートとが互いに接続され、トランジスタM2のゲートとトランジスタM4のゲートとが互いに接続され、それらにLO信号スイッチ27を介して受信LOドライバ22の差動出力および終端回路26が接続されている。トランジスタM1のドレインとトランジスタM2のドレインとが互いに接続され、トランジスタM3のドレインとトランジスタM4のドレインとが互いに接続され、それらから差動のIF信号が出力される。
【0025】
LO電源スイッチ25は、受信LOドライバ22への電源供給の有無を切り替える回路要素である。すなわち、LO電源スイッチ25は、実質的に受信機20の受信モードを切り替える受信モードスイッチである。終端回路26は、ダウンコンバージョンミキサ23の接続先として受信LOドライバ22の代替となる回路要素である。具体的には、終端回路26は、キャパシタやオンチップ伝送ラインなどで構成することができる。なお、終端回路26のインピーダンスはダウンコンバージョンミキサ23の利得が最大になるような値に設定することが好ましい。LO信号スイッチ27は、ダウンコンバージョンミキサ23に受信LOドライバ22および終端回路26のいずれか一方を選択的に接続する回路要素である。バイアスティー28は、ダウンコンバージョンミキサ23から出力される差動のIF信号にDCバイアスを印加する回路要素である。バイアスティー28から差動のIF信号(IF
OUT/IF
OUTB)が出力される。
【0026】
LO電源スイッチ25およびLO信号スイッチ27は連動動作する。具体的には、
図2Aに示した通常受信モードでは、LO電源スイッチ25は受信LOドライバ22を電源V
DDに接続し、LO信号スイッチ27はダウンコンバージョンミキサ23と受信LOドライバ22とを接続する。一方、
図2Bに示した近距離受信モードでは、LO電源スイッチ25は受信LOドライバ22を電源V
DDから切り離し、LO信号スイッチ27はダウンコンバージョンミキサ23と終端回路26とを接続する。近距離受信モードでは、受信機20は送信LO信号成分が含まれるRF信号(RF+LO
2)を受信しており、バラン211からはその差動信号が出力される。ダウンコンバージョンミキサ23を構成する4つのトランジスタM1ないしM4のゲートが終端回路26によって終端処理されることで、ダウンコンバージョンミキサ23は自己ヘテロダイン作用によりソースに入力されたRF+LO
2の差動信号をダウンコンバートしたIF信号を出力するソースポンプ回路として動作する。
【0027】
≪検証実験結果≫
次に、
図2Aおよび
図2Bに示した回路のポストレイアウトシミュレーション結果について説明する。なお、
図2Aおよび
図2B中の電圧V
g=0.4V、V
d=0.9Vとした。
図3Aは、通常受信モードでのダウンコンバージョンミキサ23の変換利得のグラフである。
図3Bは、近距離受信モードでのダウンコンバージョンミキサ23の変換利得のグラフである。縦軸は受信変換利得を表し、横軸はRF周波数を表し、受信LO信号の周波数f
LO,RX=300.5GHz、受信RF信号のパワーP
RF=−20dBmである。近距離受信モードでは300GHz付近で変換利得がピークとなっているのに対して近距離受信モードでは広い周波数帯域で良好な変換利得を維持できている。300GHz付近に着目すると、入力LOパワー(P
LO,RX)が同じ、すなわち、通常受信モードにおいて受信機20内部で生成される受信LO信号のパワーと近距離受信モードにおいて受信RF信号に含まれる送信LO高調波成分のパワーとが同じであればどちらの受信モードでもほぼ同じ変換利得が得られることがわかる。なお、参考までに、V
d=0Vにしたとき、すなわち、ダウンコンバージョンミキサ23がパッシブ動作するときの変換利得を
図3Bにおいて破線で示す。
【0028】
次に、送信機10および受信機20の試作品を作成し、それを用いたQAM(Quadrature Amplitude Modulation)通信の実験結果について説明する。
図4Aは、通常受信モードにおける16QAM受信信号のコンスタレーション図である。V
g=0.4V、V
d=0.9Vとし、送受信機間距離は40cmである。最大データレートは7.56Gb/s、EVM(Error Vector Magnitude)は11.7%、受信機20のCMOS回路の消費電力は645mWである。
図4Bは、近距離受信モードにおける16QAM受信信号のコンスタレーション図である。V
g=0.4V、V
d=0.9Vとし、送受信機間距離は1cmである。最大データレートは25.92Gb/s、EVMは13.4%である。
図4Cは、近距離受信モードにおける32QAM受信信号のコンスタレーション図である。最大データレートは24.3Gb/s、EVMは8.64%である。
図4Dは、近距離受信モードにおける64QAM受信信号のコンスタレーション図である。最大データレートは17.64Gb/s、EVMは6.24%である。なお、近距離受信モードで動作する受信機20のCMOS回路の消費電力は通常受信モード時の100分の1のわずか6mWである。
【0029】
≪自動モード切り替え≫
本実施形態に係るデュアルモード高速無線通信システム100で正しく通信を行うには、送信機10および受信機20が互いに対応するモードで動作する必要がある。すなわち、送信機10が通常送信モードで動作する場合には受信機20は通常受信モードで動作する必要があり、送信機20が近距離送信モードで動作する場合には受信機20は近距離受信モードで動作する必要がある。送信機10および/または受信機20のモード切り替えはユーザーが手動で行うことができるが、それでは煩わしいため次のようにして自動でモード切り替えを行うこともできる。
【0030】
図5は、自動モード切り替えのフローチャートである。
図6は、自動モード切り替えにおけるデュアルモード高速無線通信システム100の一動作状態を示す図である。なお、自動モード切り替えに対応するために、送信機10は、
図1Aおよび
図1Bに示した構成に加えて、送信アンテナ11に接続可能にされ、受信機20から送信されるパルスのパワーを検知するパルスパワー検知器16と、検知されたパルスパワーに応じて送受信機間距離を算出するプロセッサ17とを備えている。また、受信機20は、受信LOドライバ22が受信アンテナ21に接続可能に構成されている。
【0031】
通信開始前において、受信機10においてはパルスパワー検知器16が送信アンテナ11に接続され、パルスパワー検知器16およびプロセッサ17が動作可能状態にされる。受信機20においては受信LOドライバ22が受信アンテナ21に接続され、VCO221が動作可能状態にされる。受信機20においてVCO211から発生するパルス200が受信アンテナ22から送出される(S21)。送信機10において送信アンテナ11がパルス200を受信してパルスパワー検知器16がパルスパワーを検出する(S11)。送信機10においてプロセッサ17が検知されたパルスパワーから送受信機間距離を算出する(S12)。例えば、この距離算出は、パルスパワーと送受信機間距離とを紐付けたルックアップテーブルを参照して行うことができる。
【0032】
送受信機間距離が算出されると、送信機10が、受信機20にその距離に応じた受信モードを要求し(S13)、自身はその距離に応じた送信モードに遷移し(S14)、遷移した送信モードで送信動作を開始する(S15)。一方、受信機20は、送信機10から要求を受信すると、その要求された受信モードに遷移し(S22)、遷移した受信モードで受信動作を開始する(S23)。例えば、送受信機間距離が10cmよりも大きければ、送信機10は受信機20に対して通常受信モードで動作するように要求するとともに自身は通常送信モードでの動作を開始し、受信機20は送信機10から要求を受けて通常受信モードでの動作を開始する。これにより、送信機10および受信機20が互いに対応するモードで動作して送受信機間で正しく通信を行うことができる。
【0033】
通信中に(S16でNO、S24でNO)、受信機20は、受信したRF信号のパワーを測定し(S25)、そのパワーから送受信機間距離を算出する(S26)。例えば、この距離算出は、受信RF信号パワーと送受信機間距離とを紐付けたルックアップテーブルを参照して行うことができる。そして、受信機20は、送受信機間距離と現在動作中の受信モードとの対応が取れているか否かを確認し、対応が取れていない場合には(S27でYES)、送信機10に送信モードの切り替えを要求し(S28)、自身は受信モードを切り替え(S29)、受信動作を継続する(S23)。送信機10は、受信機20から送信モード切り替えの要求を受けると(S17でYES)、その要求された送信モードに切り替え(S18)、送信動作を継続する(S15)。例えば、送信機10および受信機20が初めは通常送信モードおよび通常受信モードで動作していたが、受信機20を持ったユーザーが送信機10に近づくなどして送受信機間距離が縮まった場合には、受信機20は送信機10に対して近距離送信モードで動作するように要求するとともに自身は近距離受信モードでの動作を開始し、送信機10は受信機20から要求を受けて近距離送信モードでの動作を開始する。これにより、送信機10および受信機20が対応するモードで動作して送受信機間で正しく通信を行うことができる。
【0034】
≪効果≫
本実施形態によると、受信機20を、送受信機が離れている場合にはヘテロダイン受信機として、送受信機が近接している場合には自己ヘテロダイン受信機として動作させることができる。これにより、
図7のグラフからわかるように、送受信機が離れていても近くても良好なS/N比を得ることができる。さらに、送受信機が近接している場合には受信機20の受信LOドライバ22の動作を停止させることで、受信機20の消費電力を大幅に削減することができる。このような特徴を有する受信機20は、近接する送信機10から高精細画像データなどの大容量データを受信する用途、例えば、携帯情報端末や無線ストレージデバイスなどに有用である。
【0035】
≪変形例≫
受信機20の終端回路26およびLO信号スイッチ27を省略して、近距離受信モードにおいて単に受信LOドライバ22をオフにするだけでもよい。
【0036】
受信機20のダウンコンバージョンミキサ23において、4個のトランジスタM1ないしM4のゲートにバラン211の差動出力を接続し、ソースにLO信号スイッチ27を介して受信LOドライバ22の差動出力および終端回路26を接続してもよい。この場合、受信機20は、近距離受信モードにおいてゲートポンプミキサとして動作する。
【0037】
送信機10および/または受信機20に、GPS(Global Positioning System)やIPS(Indoor Positioning System)を組み込んで自機の位置が把握できるようにして送受信機間距離を検出するようにしてもよい。
【0038】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。