【実施例】
【0058】
(実施例1:I型コラーゲンを用いた断片化コラーゲンの製造)
日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン凍結乾燥体を10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(×10 PBS)に分散し、ホモジナイザーを用いて2分間ホモジナイズすることで、直径が約20〜30μmであり、長さが約100〜200μmである断片化コラーゲンを得た(
図1の(A))。断片化コラーゲンの直径及び長さは電子顕微鏡によって個々の断片化コラーゲンを解析することで求めた。得られた断片化コラーゲンを無血清培地(DMEM)で洗浄し、断片化コラーゲンの培地分散液を得た。得られた断片化コラーゲンの培地分散液は、室温で1週間保存できた。後述する各三次元組織体の製造においては、同様の方法で得られた断片化コラーゲンを用いた。
【0059】
また、上記方法において、ホモジナイズする時間を5分間に変更した場合、直径が約950nm〜16.8μmであり、長さが約9.9μm〜78.6μmである断片化コラーゲンが得られた(表1、
図1の(B))。この結果から、ホモジナイズする時間を調整することで、断片化コラーゲンのサイズを制御できることが分かった。
【0060】
【表1】
【0061】
(実施例2:ヒト皮膚由来線維芽細胞を用いた三次元組織体の製造)
血清を含む培地(DMEM)にて濃度が6.02mg/mlとなるように断片化コラーゲンを分散した。断片化コラーゲンは、実施例1の2分間ホモジナイズしたものを用いた。得られた分散液166μl(断片化コラーゲン、約1mg相当)と、1×10
5cellsの正常ヒト皮膚由来線維芽細胞(NHDF)とを非接着96ウェル丸底プレートに添加した。培養開始と共に細胞及び断片化コラーゲンを含む混合物が丸い形状となり、1週間培養後には直径約1.5mmの球体状の三次元組織体(
図2の(A))が得られた。得られた三次元組織体をヘマトキシリン・エオジン(HE)、又はトルイジンブルー(TB)で染色したところ、断片化コラーゲン及びNHDFがそれぞれ均一に分布していることが確認できた(
図2の(B)及び(C))。得られた三次元組織体における、コラーゲンの含有率を算出したところ、約30重量%であった。
【0062】
使用したNHDFはヒト由来であるため、抗ヒトコラーゲン抗体を用いて免疫染色することで、細胞が産生するヒトコラーゲンを、ブタI型コラーゲン由来の断片化コラーゲン(外因性コラーゲンに由来する断片化コラーゲン)と区別して染色することが可能となる。予備検討の結果、三次元組織体の内部において、NHDFが産生したヒト由来のコラーゲン(内因性コラーゲン)の染色が確認された(
図3)。この結果から、内因性コラーゲンと外因性コラーゲンとが、それぞれ別の種に由来する場合、三次元組織体における内因性コラーゲンと、外因性コラーゲンに由来する断片化コラーゲンとを区別できることが分かった。
【0063】
得られた三次元組織体を、トリプシンの濃度0.25%、温度37℃、pH7.4、反応時間15分でトリプシン処理を行ったところ、トリプシンによる分解はほとんど見られなかった(
図4、残存率90%)。この結果から、得られた三次元組織体は、トリプシン等の酵素に安定であることが示唆された。
【0064】
(実施例3:ヒト皮膚由来線維芽細胞及びヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞を用いた三次元組織体の製造)
NHDFとヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)とを80:20の割合(細胞数)で混合して非接着96ウェル丸底プレートに播種した。このとき、断片化コラーゲンは、実施例1の2分間ホモジナイズしたものを用い、播種した全細胞数(1.0×10
5cells)を基準として、実施例2と同様の量を加えた。その後、DMEMと血管内皮細胞専用培地(EGM2、ロンザ社製)との1:1(体積比)の混合培地で1週間培養することで、三次元組織体が得られた(
図5の(A))。得られた三次元組織体におけるコラーゲンの含有率を算出したところ、約30重量%であった。得られた三次元組織体を抗CD31抗体で染色したところ、三次元組織体の内部まで染色が確認された(
図5の(B))。この結果から、毛細血管を含む三次元組織体を製造できることが分かった。
【0065】
(実施例4:ヒト皮膚由来線維芽細胞を用いた非収縮性の三次元組織体の製造)
10mgの断片化コラーゲン(実施例1の2分間ホモジナイズしたもの)と10×10
5cellsのNHDFとを混合して接着性の96ウェルインサート及び24ウェルインサートにそれぞれ播種して培養すると、三次元組織体の収縮はほとんど見られず、約3mmと1mmの厚さの三次元組織体が得られた(
図6)。96ウェルインサートにおいて得られた三次元組織体における、コラーゲンの含有率を算出したところ、約30重量%であった。24ウェルインサートにおいて得られた三次元組織体における、コラーゲンの重量%を算出したところ、約30重量%であった。
【0066】
また、30mgの断片化コラーゲンを含むコラーゲンゲル100μlと、10×10
5cellsのNHDFとを混合して、接着性の24ウェルインサートに播種して培養しても、得られた三次元組織体の収縮はほとんど見られなかった(
図7の(A))。一方、断片化コラーゲンを含まないコラーゲンゲル(コラーゲン濃度0.3重量%)を用いて得られた三次元組織体は、培養2日目で収縮が観察され、培養6日目には球体状になることが観察された(
図7の(B))。
【0067】
(実施例5:ヒト皮膚由来線維芽細胞及びヒト大腸がん細胞を用いた三次元組織体の製造)
NHDFとがん細胞とを混合して三次元組織体を製造することも可能であった。具体的にはヒト大腸がん細胞HT29をNHDFと1:1の割合で混合(全細胞数1.0×10
5cells)して非接着96ウェル丸底プレートに播種したこと以外は、実施例2と同様の条件で三次元組織体を製造した。得られた三次元組織体のHE染色写真を、
図8に示す。直径約2mmの三次元組織体の内部にHT29とNHDFが均一に分布している様子が観察された。得られた三次元組織体における、コラーゲンの含有率を算出したところ、約30重量%であった。
【0068】
(実施例6:ヒト心臓線維芽細胞及びヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた三次元組織体の製造)
同様の手法で、ヒト心臓線維芽細胞(NHCF)とヒトiPS細胞由来心筋細胞(iPS−CM)とを用いて三次元組織体を製造した(
図9)。具体的にはNHCFとiPS−CMとを25:75の割合で混合して非接着96ウェル丸底プレートに播種したこと以外は、実施例2と同様の条件(全細胞数1.0×10
5cells)で三次元組織体を製造した。得られた三次元組織体における、コラーゲンの含有率を算出したところ、約30重量%であった。得られた三次元組織体は、1〜2週間培養後も一分間に30〜40回程度の同期拍動を示した。この実験結果から、三次元組織体におけるiPS−CMは、生体内の心筋細胞に近い環境にあることが示唆された。また、本発明に係る三次元組織体が、実験動物の代替品、及び移植材料として好適な組織体であることが示唆された。
【0069】
(実施例7:ヒト大動脈平滑筋細胞を用いた三次元組織体の製造)
日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン凍結乾燥体を10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(×10 PBS)に分散し、ホモジナイザーを用いて2分間ホモジナイズし、断片化コラーゲンを得た。血清を含む培地(SmGM−2、ロンザ社製)にて濃度が10mg/mlとなるように断片化コラーゲンを分散した。得られた分散液200μl(断片化コラーゲン、約2mg相当)と、1×10
5cellsの正常ヒト大動脈平滑筋細胞(Arota−SMC)とを24ウェルセルカルチャーインサート(コーニング社製)に添加した。培養開始と共に細胞及び断片化コラーゲンを含む混合物がインサートに適合した形状となり、1週間培養後には厚さ約0.3mmの三次元組織体が得られた。得られた三次元組織体を10%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)で染色したところ、断片化コラーゲン及びArota−SMCがそれぞれ均一に分布していることが確認できた(
図10)。断片化コラーゲンを約3mg、4mg、8mg用いた場合にも、厚さは異なるが同様の結果が得られた。
【0070】
上記と同じ断片化コラーゲン分散液及びArota−SMCを用い、Arota−SMCの層を形成させた後に断片化コラーゲンと接触させる方法(Bottom Layer Method)により、三次元組織体を製造した。SmGM−2(ロンザ社製)200μlと2.5×10
4cellsのSMCとを24ウェルセルカルチャーインサート(コーニング社製)に添加した。24時間培養後には、インサート底面にArota−SMCが接着し、細胞層が形成された。次に、断片化コラーゲンの分散液400μl(断片化コラーゲン、約8mg相当)をArota−SMCの層に添加した。1週間培養後には厚さ約0.8mmの三次元組織体が得られた。得られた三次元組織体を10%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)で染色したところ、下層部にSMCが多く分布しており、より生体に近い組織が形成されていることが確認できた(
図11)。
【0071】
断片化コラーゲンとArota−SMCを同時に添加する方法により得られた三次元組織体と、上記Bottom Layer Methodにより得られた三次元組織体を比較すると、三次元組織体の厚みに差は見られず、いずれの方法でも用いるArota−SMC量に依存して厚みが増加する傾向にあった。前者の方法で得られた三次元組織体は、下層部及び上層部の密度に顕著な差は見られなかった。一方、後者の方法で得られた三次元組織体は、下層部の細胞密度が高く、上層部の細胞密度が低い傾向がみられ、より生体の大動脈平滑筋組織に近い構造であることが確認された。
【0072】
(実施例8:ヒト大動脈平滑筋細胞とヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞を用いた二層構造の三次元組織体の製造)
実施例7と同様に断片化コラーゲンを培地に懸濁して得た分散液200μl(断片化コラーゲン、約3mg相当)と、5.0×10
5cellsのArota−SMCとを懸濁し、96ウェルインサート(ACEA Bioscience社製)に添加後、一週間培養し、三次元組織体を構築した。更に、構築した三次元組織体の上に、6×10
4個のヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)を培地に懸濁し、自然沈降で三次元組織体上に堆積させた。三次元組織体を10%PFAで固定後、薄切し、CD31による免疫染色を行った。24時間培養後には一層の内皮細胞の層が三次元組織体上に構築され、より生体の血管壁に近い組織体が得られた(
図12)。
【0073】
(実施例9:ヒト歯肉線維芽細胞を用いた三次元組織体の製造)
日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン凍結乾燥体を10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(×10 PBS)に分散し、ホモジナイザーを用いて2分間ホモジナイズし、断片化コラーゲンを得た。血清を含む培地(DMEM)にて濃度が10mg/mlとなるように断片化コラーゲンを分散した。(2分の時)得られた分散液800μl(断片化コラーゲン、約8mg相当)と、正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)(5.0×10
5cells、8.0×10
5cells、1.0×10
6cells)とを24ウェルセルカルチャーインサート(コーニング社製)に添加した。培養開始と共に細胞及び断片化コラーゲンを含む混合物がインサート形状に適合した円柱体となり、3日培養後には直径約1.5mmの厚さの三次元組織体が得られた。多量なコラーゲンが存在するにもかかわらず、組織の収縮はほとんど見られなかった。得られた三次元組織体をヘマトキシリン・エオジン(HE)で染色したところ、5.0×10
5cells、8.0×10
5cells及び1.0×10
6cellsのHGFのいずれを用いた三次元組織体も、断片化コラーゲン及びHGFがそれぞれ均一に分布していることが確認できた(
図13「ホモジナイゼーション:2分」)。
【0074】
ホモジナイザーを用いて6分間ホモジナイズした断片化コラーゲンを用いたこと以外は同様の方法により、三次元組織体を得た。分散液816μl(断片化コラーゲン、約8mg相当)と、5.0×10
5cells、8.0×10
5cells及び1.0×10
6cellsのいずれのHGFを用いた三次元組織体も、断片化コラーゲン及びHGFがそれぞれ均一に分布していることが確認できた(
図13「ホモジナイゼーション:6分」)。
【0075】
上記2分間ホモジナイズした断片化コラーゲンを用いて製造した三次元組織体と6分間ホモジナイズした断片化コラーゲンを用いて製造した三次元組織体を比較すると、いずれの場合にも、断片化コラーゲン及びHGFがそれぞれ均一に分布している三次元組織体が得られたが、6分間ホモジナイズした断片化コラーゲンを用いて製造した三次元組織体の方がよりコラーゲンの凝集塊がなくなり、均一になるが、厚さに関しては、同じ量のコラーゲンの場合は、薄くなった。
【0076】
(実施例10:ヒト歯肉線維芽細胞と歯肉上皮細胞を用いた三次元組織体の製造)
下層(HGF層)の作製:日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン8mg(2分間のホモジナイゼーションにより断片化したもの)と、正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)1.0×10
6cellsをD−MEM(和光純薬工業株式会社製)に混合懸濁し、24ウェルインサート(コーニング社製)に添加し、インサート外側に培地を添加して、一晩培養した。
【0077】
上層(Epi4層)の作製:翌日インサートの培地を吸い取り、不死化ヒト歯肉上皮細胞(Epi4)を2.0×10
6cells/300μl/インサートになるように調整し、HGF層の上にEpi4を播種した。インサートの外側にD−MEMとHumedia(倉敷紡績株式会社製)を1:1で混ぜたものを1ml入れ、37℃、1時間インキュベート後、インサートの外側に混合培地を1ml追加し、一晩培養した。
【0078】
Epi4の分化:インサートの内側と外側両方の培地を除去し、混合培地をインサートの外側に入れ、7日間毎日培地換えを行いつつ、培養した。培養後、薄切し、HE染色した。
【0079】
下層の作製の際に、6分間のホモジナイゼーションにより断片化した日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲンを用いた以外は上記と同様に三次元組織体を製造し、HE染色した。
【0080】
図14に示すように、2分ホモジナイズした断片化コラーゲン又は6分ホモジナイズした断片化コラーゲンで間質の土台を作製し、その上に歯肉上皮細胞を積層することで、組織収縮や組織割れのない2層構造の歯肉モデルを作製することができた。
【0081】
(実施例11:ヒト皮膚由来線維芽細胞と正常ヒト表皮角化細胞を用いた二層構造の三次元組織体の製造)
日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン凍結乾燥体50mgを10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(×10 PBS)5mLに分散し、ホモジナイザーを用いて2分間ホモジナイズし、断片化コラーゲンを得た。得られた断片化コラーゲンを無血清培地(DMEM)で洗浄し、断片化コラーゲンの培地分散液を得た。血清を含む培地(SmGM−2、ロンザ社製)にて濃度が10mg/mLとなるように断片化コラーゲンを分散した。
【0082】
下層(NHDF層)の作製:24ウェルのインサートを、PBS(0.04μL/インサート)中の0.04mg/mLフィブロネクチン溶液(#F2006−5G、Sigma社製)でコートし、37℃で20分間インキュベートした。その後、断片化コラーゲン分散液0.8mL(断片化コラーゲン、約8mg相当)と、1×10
6cellsのヒト皮膚由来線維芽細胞(NHDF)とを24ウェルプレートトランスウェル(IWAKI社製)中で混合した。プレートをインキュベータに入れ、24時間培養した。
【0083】
上層(NHEK層)の作製:上記NHDFのコラーゲンゲル上で、インサート中の培地を吸引し、PBS(0.04μL/インサート)中の0.04mg/mLコラーゲンIV溶液でコートし、37℃で少なくとも20分間インキュベートした。NHDFのコラーゲンゲル上に加えたコラーゲンIV溶液を吸引し、NHDFのコラーゲンゲル上に、300μLの1×10
6cellsの正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)(#KK−4009、1バイアル=500000細胞、KURABO社製)を加えた。DMEM 5%FBS:EpiLife(#C−2517A、Invitrogen社製)(1:1)培地をインサートの外側に1mL加え、1時間後にインサートの外側に1mLを再度加えた。
【0084】
内側と外側の培地を静かに吸引し、DMEM 5%FBS:EpiLife(1:1)培地中でアスコルビン酸を100倍に希釈し、インサートの外側に500μLの分化培地として加えた。インサートの内側には培地を加えなかった。分化7日目まで毎日インサートの外の培地を交換した。
【0085】
作製した皮膚モデルは、線維芽細胞を含む層(真皮組織)、上部の角化細胞を含む層(表皮組織)における細胞間の距離が適切であり、生体内の皮膚組織に近い構造であった。2分間ホモジナイズした断片化コラーゲン及びヒト皮膚由来線維芽細胞で土台を作製し、その上に正常ヒト表皮角化細胞を積層することで、生体に近い2層構造の皮膚モデルを作製することができた。
【0086】
(実施例12:ヒト心臓線維芽細胞及びヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた三次元組織体の製造、並びにコラーゲンの面積割合の算出)
日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン凍結乾燥体50mgを10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(×10 PBS)5mLに分散し、ホモジナイザーを用いて6分間ホモジナイズし、断片化コラーゲン(CMF)を得た。3,500rpm 3分で遠心分離した後、無血清培地(DMEM)を加えて1分洗浄し、再度3,500rpm 3分で遠心分離し、上澄みを除去した。血清を含む培地(DMEM)を全量が5mLになるように加え、断片化コラーゲンを分散した。
【0087】
非接着96ウェル丸底プレートに、ヒト心臓線維芽細胞(NHCF)とヒトiPS細胞由来心筋細胞(iPS−CM)を25:75の割合で混合した細胞5×10
5cellsと、0、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0mgのCMFを混合し、全液量を300μLとしたものを播種した(溶液の濃度は6.5mg/mLとして計算)。1,100g 5分で遠心分離した後、インキュベータで21日間培養し、三次元組織体を得た。
【0088】
得られた三次元組織体全体をマッソントリクロームにより染色した。染色後の三次元組織体の全体面積(球状体の略中心部の断面切片図)と、青色に染色されたコラーゲンの面積をImageJ(米国国立衛生研究所製)で算出した。結果を表2及び
図15に示す。ImageJによりコラーゲンの面積を算出する方法は、具体的には以下のように行った。(1)カラーの元画像を「Split Channnel」コマンドで、RGB分割した。(2)画像全体で見たとき、「G」画像は組織全体の領域、「R」画像はコラーゲンによって染色された領域を、それぞれ区別できるものと判断し、「Threshold」コマンドによって、「G」画像と「R」画像をそれぞれ二値化した。二値化時の閾値としては、「G」画像の閾値は0〜75、「R」画像の閾値は0〜130を指定して行った。(3)Selection tool(freehand)で、三次元組織体の輪郭を範囲指定し、前記範囲内における、「G」画像および「R画像」それぞれの(二値化後の)面積を算出し、三次元組織体断面全体に占めるコラーゲン染領域の面積比率を算出した。
【0089】
【表2】
【0090】
三次元組織体の作製に用いたCMF(「仕込みCMF」)の量が増加することに伴い、三次元組織体の全体面積に対するコラーゲンの面積の割合も増加するが、仕込みCMFが0.5mg以上になると、コラーゲンの面積の割合の増加幅は減少することが示された。なお、面積率は、三次元組織体中の染色方法や、コラーゲンの局在状態によってある程度上下することが考えられるが、前記手順に基づき判断した場合、0.5mg以上のコラーゲンを投入した場合には、コラーゲン領域の面積は少なくとも三次元組織体の全体面積に対して50%以上となる可能性が非常に高いことが示された。
【0091】
(実施例13:ヒト心臓線維芽細胞及びヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた三次元組織体の製造、並びにコラーゲン定量による含有率の算出)
日本ハム株式会社製のブタ皮膚由来I型コラーゲン凍結乾燥体50mgを10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(×10 PBS)5mLに分散し、ホモジナイザーを用いて6分間ホモジナイズし、断片化コラーゲン(CMF)を得た。3,500rpm 3分で遠心分離した後、無血清培地(DMEM)を加えて1分洗浄し、再度3,500rpm 3分で遠心分離し、上澄みを除去した。血清を含む培地(DMEM)を全量が5mLになるように加え、断片化コラーゲンを分散した。
【0092】
非接着96ウェル丸底プレートに、ヒト心臓線維芽細胞(NHCF)とヒトiPS細胞由来心筋細胞(iPS−CM)を25:75の割合で混合した細胞5×10
5cellsと、1.0mgのCMFを混合し、全液量を300μLとしたものを播種した(溶液の濃度は6.5mg/mLとして計算)。1,100g 5分で遠心分離した後、インキュベータで3日間又は5日間培養し、三次元組織体を得た。3日間培養したサンプルはそれぞれDay3−1、Day3−2、Day3−3、5日間培養したサンプルはそれぞれDay5−1、Day5−2、Day5−5とした。
【0093】
QuickZyme Total Collagen Assay(QuickZyme Biosciences社製)を用いて、以下の方法で三次元組織体におけるコラーゲンを定量した。
【0094】
(サンプルの調製)
上記サンプルDay3−1、Day3−2、Day3−3、Day5−1、Day5−2及びDay5−5を、それぞれ非接着96ウェル丸底プレートから回収後、FDU−2200型(東京理化器械製)により凍結乾燥処理を行った。スクリューキャップチューブにおいて、三次元組織体の全量を6M HClと混合し、ヒートブロックで95℃、20時間以上インキュベートした後、室温に戻した。13000gで10分遠心分離した後、サンプル溶液の上澄みを6M HClで10倍希釈し、さらに、200μLを100μLのミリQで希釈することでサンプルを調製した。サンプルは35μL用いた。
【0095】
(スタンダードの調製)
スクリューキャップチューブに125μLのスタンダード溶液(1200μg/mL in acetic acid)と、125μLの12M HClを加え混合し、ヒートブロックで95℃、20時間インキュベートした後、室温に戻した。13000gで10分遠心分離した後、上澄みをミリQで希釈して300μg/mLのS1を作製し、S1を段階的に希釈してS2(200μg/mL)、S3(100μg/mL)、S4(50μg/mL)、S5(25μg/mL)、S6(12.5μg/mL)、S7(6.25μg/mL)を作製した。4M HCl 90μLのみのS8(0μg/mL)も準備した。ここからそれぞれ35μlを実験に用いた。
【0096】
(アッセイ)
35μLのスタンダード及びサンプルをそれぞれプレート(QuickZyme Total Collagen Assayキット付属)に加えた。75μLのアッセイバッファ(上記キット付属)をそれぞれのウェルに加えた。シールでプレートを閉じ、20分シェイキングしながら室温でインキュベートした。シールをはがし、75μLのdetection reagent (reagent A:B=30μL:45μL、上記キット付属)をそれぞれのウェルに加えた。シールでプレートを閉じ、シェイキングで溶液を混合し、60℃で60分インキュベートした。氷で室温まで冷まし、シールをはがして570nmの吸光度を測定した。サンプルの吸光度をスタンダードと比較することでコラーゲン量を算出した。結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
「コラーゲン無し」のサンプルは、断片化コラーゲンを用いないこと以外はDay5と同条件で作製した組織体を示す。
【0098】
断片化コラーゲンを用いて培養時間3日間又は5日間で得られた三次元組織体におけるコラーゲンの含有率は、三次元組織体の乾燥重量に対して約20〜66%であった。一方、断片化コラーゲンを用いずに作製した組織体においては、コラーゲン量は0.06μgであり、三次元組織体に対する含有率はほぼゼロであった。