特開2020-199451(P2020-199451A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020199451-成膜装置及び成膜方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199451(P2020-199451A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20201120BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20201120BHJP
   B05B 13/02 20060101ALI20201120BHJP
   B05B 16/60 20180101ALI20201120BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B05D3/12 A
   B05D7/24 301B
   B05B13/02
   B05B16/60
   H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-107697(P2019-107697)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃平
(72)【発明者】
【氏名】北沢 僚也
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓司
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
5F045
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DD02
4D073DD40
4D075AA01
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA84
4D075BB56X
4D075DA07
4D075DC24
4D075EA07
4F035AA04
4F035CA02
4F035CA05
4F035CB03
4F035CB13
4F035CC04
4F035CF00
5F045AA03
5F045AB39
5F045EE11
(57)【要約】
【課題】極めて速い成膜レートでの成膜が可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】被成膜物Swに対して所定の薄膜を成膜する成膜装置CMは、被成膜物が設置される、真空排気手段Pを備える第1チャンバ1と、成膜材料Pmを溶解させた超臨界流体Sfを格納する第2チャンバ2と、第1チャンバと第2チャンバとを連通する連通手段3とを備え、真空排気手段により第1チャンバ内を大気圧より低い圧力に減圧し、第1チャンバと第2チャンバとの圧力差によって、第1チャンバ内の被成膜物に向けて、成膜材料を溶解させた超臨界流体が供給されるように構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜物に対して所定の薄膜を成膜する成膜装置であって、
被成膜物が設置される、真空排気手段を備える第1チャンバと、成膜材料を溶解させた超臨界流体を格納する第2チャンバと、第1チャンバと第2チャンバとを連通する連通手段とを備え、
真空排気手段により第1チャンバ内を大気圧より低い圧力に減圧し、第1チャンバと第2チャンバとの圧力差によって、第1チャンバ内の被成膜物に向けて、成膜材料を溶解させた超臨界流体が供給されるように構成したことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1チャンバの圧力を調整する圧力調整手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記連通手段は供給管で構成され、第1チャンバ内に突出する供給管の一端に、成膜材料を溶解させた超臨界流体を噴射する噴射ノズルが設けられ、噴射ノズルに対して被成膜物を相対移動させる移動手段が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
被成膜物に対して所定の薄膜を成膜する成膜方法であって、
被成膜物を設置した第1チャンバ内を大気圧より低い圧力に減圧する工程と、
成膜材料を設置した第2チャンバ内に超臨界流体を供給し、この成膜材料を溶解させた超臨界流体を生成する工程と、
第1チャンバと第2チャンバとを連通して、第1チャンバと第2チャンバとの圧力差によって第1チャンバ内の被成膜物に向けて、成膜材料を溶解させた超臨界流体を供給する工程とを含むことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被成膜物に対して所定の薄膜を成膜する成膜装置及び成膜方法に関し、より詳しくは、超臨界流体を利用して、例えば有機EL素子の製造に利用される有機膜といった高分子膜を乾式で成膜するものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記種の成膜装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、ガラス基板などの被成膜物が設置される、真空排気手段を備える第1チャンバと、成膜材料を溶解させた二酸化炭素の超臨界流体を格納する第2チャンバと、第1チャンバと第2チャンバとを連通する連通手段とを備える。そして、第1チャンバ内を超臨界圧力以上の圧力にし、第1チャンバ内に高分子膜を構成するモノマー材料を溶解させた超臨界流体を第2チャンバから導入し、被成膜物表面にてモノマー材料を重合反応させて高分子材料を合成することで、被成膜物に高分子膜が成膜される。
【0003】
然しながら、上記従来例のものでは、被成膜物に対して成膜するときの成膜レート(成膜速度)が、被成膜物表面にて重合反応させるときの重合反応速度に依存する。このため、成膜レートを効果的に高めることができず、これでは、量産性に不向きであるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−33056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、速い成膜レートでの成膜が可能な成膜装置及び成膜方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、被成膜物に対して所定の薄膜を成膜する本発明の成膜装置は、被成膜物が設置される、真空排気手段を備える第1チャンバと、成膜材料を溶解させた超臨界流体を格納する第2チャンバと、第1チャンバと第2チャンバとを連通する連通手段とを備え、真空排気手段により第1チャンバ内を大気圧より低い圧力に減圧し、第1チャンバと第2チャンバとの圧力差によって、第1チャンバ内の被成膜物に向けて、成膜材料を溶解させた超臨界流体が供給されるように構成したことを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、被成膜物に対して所定の薄膜を成膜する本発明の成膜方法は、被成膜物を設置した第1チャンバ内を大気圧より低い圧力に減圧する工程と、成膜材料を設置した第2チャンバ内に超臨界流体を供給し、この成膜材料を溶解させた超臨界流体を生成する工程と、第1チャンバと第2チャンバとを連通して、第1チャンバと第2チャンバとの圧力差によって第1チャンバ内の被成膜物に向けて、成膜材料を溶解させた超臨界流体を供給する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
以上によれば、第1チャンバ内を大気圧より低い圧力(例えば、100Pa〜1×10−6Pa)まで減圧した後、第1チャンバと第2チャンバとを連通させると、第1チャンバ内と第2チャンバ内との圧力差によって成膜材料を溶解させた超臨界流体が第1チャンバ内に導入されて、第1チャンバ内の被成膜物に向けて超臨界流体が供給される。このとき、第1チャンバ内に導入された超臨界流体の圧力が急激に低下し、超臨界流体が気化する一方で、超臨界流体に溶解している成膜材料が析出(または結晶化)し、この析出した成膜材料が被成膜物の表面に付着、堆積する。また、成膜材料が超臨界流体に溶解した状態で被成膜物の表面まで輸送(供給)され、輸送された分子レベルサイズ(数nm〜数μm)の成膜材料が被成膜物の表面に堆積する場合もある。このように被成膜物表面に成膜材料が堆積することで、被成膜物表面にて重合反応させて成膜する上記従来例のものと比較して、速い成膜レートで成膜することができる。この場合、成膜レートは、第1チャンバ内の圧力と超臨界流体の圧力との圧力差で調整でき、例えば、第1チャンバ内の圧力が低い程、成膜レートを高めることができる。ここで、超臨界流体は、比較的低温(例えば二酸化炭素の超臨界流体の場合は約40℃〜50℃)にて成膜材料(例えば、オリゴマー材料やポリマー材料)を溶解できるため、熱的安定性の低い成膜材料を成膜する場合でも、熱分解や熱変性によって成膜材料が劣化するのを抑制することができる。しかも、超臨界流体は、成膜材料を一律に溶解するため、成膜材料ごとに成膜設備や成膜条件を変更する必要がなく、また、複数の成膜材料を同時に成膜できる点で、有利である。
【0009】
本発明において、前記第1チャンバの圧力を調整する圧力調整手段を更に備えることが好ましい。これによれば、圧力調整手段により前記第1チャンバ内の圧力を調整することで成膜レートを容易に制御することができるため有利であり、また、本発明においては、前記連通手段は供給管で構成され、真空チャンバ内に突出する供給管の一端に、成膜材料を溶解させた超臨界流体を噴射する噴射ノズルが設けられ、噴射ノズルに対して被成膜物を相対移動させる移動手段が設けられることが好ましい。これによれば、比較的大面積の基板に対して成膜するような場合でも、移動手段により被成膜物を噴射ノズルに対して相対移動させることで、被成膜物の全面に亘って成膜材料を膜厚の均一性よく成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の成膜装置の構成を説明する模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、被成膜物を矩形の輪郭を持つ所定厚さのガラス基板(以下、「基板Sw」という)、成膜材料をポリマー材料Pmとし、基板Swの片面にポリマー材料Pmからなる所定の薄膜を成膜する場合を例に本発明の成膜装置及び成膜方法の実施形態を説明する。以下においては、基板Swから噴射ノズルInに向かう方向を上とし、「上」、「下」、「右」、「左」といった方向を示す用語は図1を基準として説明する。
【0012】
図1を参照して、CMは、本実施形態の成膜装置である。成膜装置CMは、第1チャンバである真空チャンバ1と、第2チャンバである圧力チャンバ2とを備える。真空チャンバ1と圧力チャンバ2は、連通手段としての供給管3で接続されている。供給管3の両端は、真空チャンバ1と圧力チャンバ2の上壁1a,2aを貫通してその内部に突設されている。真空チャンバ1内に突設する供給管3の先端には、後述の超臨界流体を所定の噴射角で噴射する噴射ノズルInが設けられている。供給管3には、開閉バルブ31が介設され、真空チャンバ1と圧力チャンバ2を選択的に連通できるようにしている。
【0013】
真空チャンバ1には、排気管P1を介してロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプPが接続されている。排気管P1には、圧力調整手段としてのコンダクタンスバルブCvが介設され、また、真空チャンバ1には、真空チャンバ1内に所定のガスを導入する圧力調整手段としての第1ガス導入手段4が設けられ、真空チャンバ1を所定圧力(真空度)に適宜制御できるようにしている。第1ガス導入手段4としては、真空チャンバ1内のガス導入部41に接続されるガス管42を有し、ガス管42にはマスフローコントローラ43が介設されたものが利用できる。一方、導入するガスとしては、不活性ガスや、後述の超臨界流体と同一の炭酸ガスが利用でき、炭酸ガスを利用する場合には、成膜後にこれを回収して再利用することもできる。
【0014】
真空チャンバ1内の下部空間には移動手段5が設けられ、移動手段5は、成膜面としての上面を開放した状態で基板Swを保持するホルダ51と、駆動手段52とを備える。ホルダ51には、駆動手段52の駆動軸52aが連結され、ホルダ51ひいては基板Swを噴射ノズルInに対して左右方向(X軸方向)に相対移動できるようにしている。移動手段5としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0015】
ホルダ51に保持された基板Swと噴射ノズルInとの間には、板状のマスクプレートMpが設けられている。本実施形態では、マスクプレートMpは、基板Swと一体に取り付けられて基板Swと共に移動手段5によって相対移動できるようになっている。マスクプレートMpには、板厚方向に貫通する複数の開口Moが形成され、これら開口Moがない位置にてポリマー材料Pmの基板Swに対する付着範囲が制限されることで、所定のパターンで基板Swに成膜される。マスクプレートMpとしては、公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0016】
圧力チャンバ2には、第2ガス導入手段6が設けられ、第2ガス導入手段6は、圧力チャンバ2内のガス導入部61に接続されるガス管62を有し、ガス管62にはマスフローコントローラ63が介設され、圧力チャンバ2内の圧力が所定の圧力(臨界圧力以上、例えば7MPa)になるまで炭酸ガスを導入できるようになっている。圧力チャンバ2の下部には、ポリマー材料Pmを収容する坩堝7を有する。ポリマー材料Pmとしては、ポリイミド、ポリウレタン等の他、基板Swに成膜しようとする薄膜に応じて適宜選択したものが用いられる。圧力チャンバ2内の側壁部には、加熱手段8が設けられ、圧力チャンバ2内に導入された二酸化炭素を臨界温度以上(例えば、40℃以上)に加熱できるようなっている。加熱手段8としては、シースヒータやランプヒータ等の公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0017】
成膜装置CMは、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた図示省略の制御手段を有し、コンダクタンスバルブCv、マスフローコントローラ43,63、駆動手段52、加熱手段8、開閉バルブ31の開閉や真空ポンプPの稼働が統括制御される。以下に、上記成膜装置CMを用いた本実施形態の成膜方法を説明する。
【0018】
基板Sw及びマスクプレートMpをホルダ51にセットした後、開閉バルブ31を完全に閉じて、真空ポンプPを稼働させて真空チャンバ1内を所定圧力(例えば、10−5Pa)まで減圧する。ポリマー材料Pmを坩堝7に収容した後、第2ガス導入手段6により圧力チャンバ2内の圧力が7Mpa以上になるまで炭酸ガスを導入し、導入された炭酸ガスを加熱手段8により40℃〜50℃の温度になるまで加熱する。これにより、圧力チャンバ2内の二酸化炭素が超臨界状態となり、坩堝7内のポリマー材料Pmが二酸化炭素の超臨界流体Sfに溶解される。そして、開閉バルブ31を開放し、真空チャンバ1と圧力チャンバ2とを連通させると、両チャンバ1,2の圧力差により、ポリマー材料Pmが溶解した二酸化炭素の超臨界流体Sfが供給管3を介して真空チャンバ1へと導入され、噴射ノズルInから真空チャンバ1内の基板Swに向けて、ポリマー材料Pmを溶解させた超臨界流体Sfが供給される。
【0019】
以上の実施形態によれば、真空チャンバ1と圧力チャンバ2との圧力差によって、ポリマー材料Pmを溶解させた超臨界流体Sfが噴射ノズルInから基板Swに向けて供給(噴射)される。この時、真空チャンバ1内に導入された超臨界流体Sfの圧力が急激に低下し、超臨界流体が気化する一方で、超臨界流体Sfに溶解しているポリマー材料Pmが析出(または結晶化)し、この析出したポリマー材料Pmが基板Swの表面に付着、堆積することで、速い成膜レートで成膜される。ここで、二酸化炭素は約40℃〜50℃の臨界温度で超臨界流体Sfとなるため、熱分解等し易いオリゴマー材料やポリマー材料を成膜する場合でも、材料の劣化を抑制できる。
【0020】
成膜時の成膜レートは、真空チャンバ1内の圧力と超臨界流体Sfの圧力との圧力差で調製でき、真空チャンバ1内の圧力が低い程、成膜レートが高くなる。この場合、コンダクタンスバルブCvにより真空チャンバ1内の実行排気速度を調整したり、第1ガス導入手段4により炭酸ガスを導入して、真空チャンバ1内の圧力を所定圧力に調整(または維持)することで、成膜レートを容易に制御することができる。また、移動手段5により基板Swを噴射ノズルInに対して左右方向に相対移動させることで、比較的大面積の基板Swに対して成膜する場合でも、基板Swの全面に亘ってポリマー材料Pmを膜厚の均一性よく成膜することができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、成膜材料としてポリマー材料Pmを用いるものを例に説明したが、これに限定されるものではない。成膜材料は超臨界流体に溶解する有機材料であればよく、例えばモノマー材料等の低分子材料やオリゴマー材料等を用いることもできる。
【0022】
上記実施形態では、超臨界流体Sfに溶解しているポリマー材料Pmが析出(または結晶化)し、この析出したポリマー材料Pmが基板Swの表面に付着、堆積する場合を例に説明したが、超臨界流体Sfに溶解している成膜材料がその溶解した状態で基板Swの表面まで輸送され、輸送された分子レベルサイズ(数nm〜数μm)の成膜材料が基板Swの表面に堆積する場合にも本発明を適用することができ、この場合も速い成膜レートで成膜することができる。
【0023】
また、上記実施形態では、移動手段5により基板Swを噴射ノズルInに対して左右方向(X軸方向)に相対移動させるものを例に説明したが、例えば、X軸方向に直交する方向(Y軸方向)またはX−Y平面内で基板Swを相対移動させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、超臨界流体Sfとして二酸化炭素を用いるものを例に説明したが、エタンやエチレン等の化合物を用いてもよい。
【符号の説明】
【0024】
CM…成膜装置、Sw…基板、Pm…ポリマー材料(成膜材料)、Sf…超臨界流体、1…真空チャンバ(第1チャンバ)、2…圧力チャンバ(第2チャンバ)、3…供給管(連通手段)、P…真空ポンプ(真空排気手段)、4…ガス導入手段(圧力調整手段)、Cv…コンダクタンスバルブ(圧力調整手段)、In…噴射ノズル、5…移動手段。
図1