【解決手段】本発明の一実施形態に係る光学フィルム4の製造方法は、長尺のフィルム2にN個の処理(Nは1以上の整数)を施すことによって光学フィルムを製造する方法であり、N個の処理は、フィルムを搬送しながら行われ、搬送中に、複数箇所20それぞれで、フィルムの幅を連続的に測定し、複数箇所から選択される2箇所のうち上流箇所における測定結果及び下流箇所における測定結果のうち同じタイミングで得られた測定結果に基づいて、上記フィルムの幅の変化率を算出する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための模式図である。以下、光学フィルムとして偏光フィルムを製造する場合を例に挙げて説明する。
【0029】
本実施形態では、長尺のフィルム2を搬送しながら、搬送中のフィルム2に、N個(Nは1以上の整数)の処理を順に施すことによって、偏光フィルム(光学フィルム)4を製造する。N個の処理は、フィルム2に、少なくとも光学特性として直線偏光特性を付与する処理である。Nの上限は、特に限定されないが、Nは、通常30以下の整数であり、25以下の整数であってもよいし、20以下の整数であってもよいし、10以下の整数であってもよい。
【0030】
フィルム2に直線偏光特性が付与されると、フィルム2は偏光フィルム4として機能する。直線偏光特性は、N個の処理が全て完了する前に実質的に付与されるので、フィルム2を用いた偏光フィルム4の製造方法では、製造過程中でフィルム2が偏光フィルム4としての機能を有する。しかしながら、説明の便宜のため、断らない限り、N個の処理全てが終了した後のフィルム2を偏光フィルム4と称し、N個の処理が完了する前のフィルムを全てフィルム2と称す。偏光フィルム4を製造する場合、通常、フィルム2に、膨潤処理、染色処理、架橋処理、延伸処理及び乾燥処理を施す。延伸処理は、何れかの一つの処理(例えば架橋処理)中、又は、複数の処理を施しながら並行してフィルム2に施されてもよい。
【0031】
フィルム2は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである。フィルム2の長手方向の長さの例は、1000m以上30000m以下、好ましくは1000m以上20000m以下の範囲である。フィルム2の幅方向(長手方向に直交する方向)の長さの例は、1300mm〜5000mmである。N個の処理が施される前のフィルム2の厚さの例は、10μm〜100μmである。フィルム2は、溶融押出法、溶剤キャスト法等の公知の方法で製造され得る。フィルム2は購入されたフィルムや事前に延伸や積層等の処理を行ったフィルムでもよい。
図1では、フィルム2を原反ロール6として準備し、原反ロール6から繰り出されたフィルム2にN個の処理を施して偏光フィルム4を得る場合を図示している。フィルム2が上記方法(溶融押出法、溶剤キャスト法等)で製造される場合、例えば、上記方法(溶融押出法、溶剤キャスト法等)によって製造されたフィルム2を連続的に搬送して、その搬送中に上記N個の処理を行ってもよい。
【0032】
偏光フィルム4の製造装置10は、複数のニップロール11と、複数のガイドロール12と、膨潤処理部13
1と、染色処理部13
2と、架橋処理部13
3と、洗浄処理部13
4と、乾燥処理部13
5とを備える。
【0033】
複数のニップロール11及び複数のガイドロール12は、フィルム2の搬送機構に含まれ、フィルム2を搬送するための搬送ロールである。複数のニップロール11及び複数のガイドロール12が適宜配置されることによって、フィルム2の搬送経路が構成されている。
【0034】
ニップロール11は、フィルム2を挟み且つ押圧することで、ニップロール11の回転力をフィルム2に付与する機能を有する。ニップロール11は、フィルム2の搬送方向を変更する機能も有する。フィルム2の搬送方向において、例えば、隣接する2つのニップロール11に周速差を付けることによって、上記隣接する2つのニップロール11間を搬送されるフィルム2に延伸処理(例えば一軸延伸処理)が施される。
図1は、製造装置10が8個のニップロール11を有する場合を例示している。6個のニップロール11を区別して説明する場合、
図1に示したように、6個のニップロール11を、ニップロール11
1〜11
6と称す。
【0035】
ガイドロール12は、フィルム2を支持するとともに、フィルム2の搬送方向を変更する機能を有する。
図1は、製造装置10が12個のガイドロール12を有する場合を例示している。12個のガイドロール12を区別して説明する場合、
図1に示したように、12個のガイドロール12を、ガイドロール12
1〜12
12と称す。
【0036】
膨潤処理部13
1は、フィルム2に膨潤処理を行う部分である。膨潤処理部13
1は、膨潤処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。膨潤処理部13
1が有する処理液にフィルム2を浸漬することによって、フィルム2に膨潤処理が行われる。本実施形態では、ニップロール11
1及びガイドロール12
1〜12
3によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。この構成では、ニップロール11
1及びガイドロール12
3は、膨潤処理部13
1による膨潤処理がフィルム2に施される前及び後(換言すれば、膨潤処理部13
1の前及び後)に配置されている。
【0037】
上記膨潤処理は、フィルム2の表面の異物除去、フィルム2中の可塑剤除去、後工程での易染色性の付与、フィルム2の可塑化などの目的で行われる。膨潤処理の条件は、これらの目的が達成できる範囲で、かつフィルム2の極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定され得る。膨潤処理部13
1では、フィルム2を、例えば、温度10〜50℃、好ましくは20〜50℃の処理液に浸漬することにより、膨潤処理が行われる。膨潤処理の時間は、5〜300秒程度であり、好ましくは20〜240秒程度である。膨潤処理部13
1における処理液の例は水である。そのため、膨潤処理は、フィルム2の水洗処理も兼ねることができる。
【0038】
染色処理部13
2は、フィルム2に染色処理を行う部分である。染色処理部13
2は、染色処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。染色処理部13
2が有する処理液にフィルムを浸漬することによって、フィルム2に染色処理が行われる。本実施形態では、ニップロール11
2及びガイドロール12
4〜12
6によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。この構成では、ニップロール11
2及びガイドロール12
6は、染色処理部13
2による染色処理がフィルム2に施される前及び後(換言すれば、染色処理部13
2の前及び後)に配置されている。
【0039】
本実施形態における染色処理部13
2が有する処理液は、二色性色素の水溶液であり、染色処理では、フィルム2を二色性色素で染色する。通常の二色性色素による染色処理は、フィルム2に二色性色素を吸着させるなどの目的で行われる。処理条件はこのような目的が達成できる範囲で、かつフィルム2の極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で所望の光学特性に応じて決定される。染色に使用される二色性色素の例は、ヨウ素及び二色性染料である。
【0040】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、例えば10〜50℃、好ましくは15〜40℃の温度で、かつ、水100重量部に対して、ヨウ素を0.003〜0.2重量部及びヨウ化カリウムを 0.1〜10重量部含む水溶液中に、10〜600秒間、好ましくは30〜300秒間、フィルム2を浸漬することにより、染色処理が行われる。ヨウ化カリウムに代えて他のヨウ化物、例えば、ヨウ化亜鉛などを用いてもよい。他のヨウ化物をヨウ化カリウムと併用してもよい。さらに、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルトなどを共存させてもよい。水100重量部に対し、ヨウ素を0.003重量部以上含んでいる処理液であれば、染色用の処理液とみなすことができる。
【0041】
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合は、例えば20〜80℃、好ましくは30〜60℃の温度で、かつ、水100重量部に対して二色性染料を0.001〜0.1 重量部含む水溶液中に、10〜600秒間、好ましくは20〜300秒間、フィルム2を浸漬することにより、染色処理が行われる。使用する二色性染料の水溶液は、染色助剤などを含有していてもよく、硫酸ナトリウムの如き無機塩、界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種類だけ用いてもよいし、所望される色相に応じて2種類以上の二色性染料を併用することもできる。
【0042】
架橋処理部13
3は、フィルム2に架橋処理を行う部分である。架橋処理部13
3は、架橋処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。架橋処理部13
3が有する処理液にフィルムを浸漬することによって、フィルム2に架橋処理が行われる。本実施形態では、ニップロール11
3及びガイドロール12
7〜12
9によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。この構成では、ニップロール11
3及びガイドロール12
9は、架橋処理部13
3による架橋処理がフィルム2に施される前及び後(換言すれば、架橋処理部13
3の前及び後)に配置されている。
【0043】
架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルム2が青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。
【0044】
架橋処理部13
3で使用する処理液は、例えば、水100重量部に対してホウ酸を例えば約1〜10重量部含有する水溶液である。染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、架橋処理部13
3で使用する処理液は、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1〜30重量部である。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
【0045】
架橋処理部13
3での架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに処理液の温度を適宜変更することができる。
【0046】
例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、膨潤処理、染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、処理液の架橋剤含有液は、例えば、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3〜10/1〜20/100の水溶液である。必要に応じ、ホウ酸に代えてグリオキザール又はグルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルム2を浸漬するときの処理液の温度は、通常50℃〜70℃程度であり、好ましくは53℃〜65℃であり、フィルム2の浸漬時間は、通常10〜600秒程度、好ましくは20〜300秒、より好ましくは20〜200秒である。膨潤処理前に予め延伸したフィルム2に対して染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、処理液の温度は、通常50〜85℃程度、好ましくは55〜80℃である。
【0047】
架橋処理の目的が色相調整であり、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1〜5/3〜30/100の架橋剤含有液を処理液として使用できる。フィルム2を浸漬するときの処理液の温度は、通常10〜45℃程度であり、フィルム2の浸漬時間は、通常1〜300秒程度、好ましくは2〜100秒である。
【0048】
洗浄処理部13
4は
、架橋処理後のフィルム2に洗浄処理を行う部分である。洗浄処理部13
4は、洗浄処理のための処理液が貯留された処理槽を有する。洗浄処理部13
4が有する処理液にフィルム2を浸漬することによって、フィルム2に洗浄処理が行われる。本実施形態では、ニップロール11
4及びガイドロール12
10〜12
12によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。この構成では、ニップロール11
4及びガイドロール12
12は、洗浄処理部13
4による洗浄処理がフィルム2に施される前及び後(換言すれば、洗浄処理部13
4の前及び後)に配置されている。洗浄処理における処理液としては、水、ヨウ化カリウムを含む水溶液、ホウ酸を含む水溶液が挙げられる。処理液の温度は、通常2℃〜40℃程度であり、処理時間は、通常2秒〜120秒程度である。
【0049】
洗浄処理部13
4における洗浄処理は、処理液をシャワーとして噴霧する方法、或いは、浸漬と噴霧を併用する方法などによってフィルム2の洗浄を行ってもよい。
【0050】
乾燥処理部13
5は、フィルム2に乾燥処理を行う部分である。本実施形態において乾燥処理部13
5は、乾燥装置である。乾燥処理部13
5には、洗浄処理部13
4で洗浄処理されたフィルム2が搬入され、フィルム2が乾燥処理部13
5内を通過する間に、フィルム2を乾燥させる。本実施形態では、ニップロール11
5,11
6によって、処理液にフィルム2を浸漬するフィルムの搬送経路が形成されている。乾燥処理部13
5内に、フィルム2を支持及び搬送するために、ガイドロール12が適宜配置されてもよい。乾燥処理部13
5による乾燥は、約40℃〜100℃の温度に保たれた乾燥処理部13
5の中で、約30秒〜約600秒行われる。
図1では、乾燥処理部13
5を模式的に示している。乾燥処理部13
5は、フィルム2に付着した水分を乾燥できれば特に限定されず、偏光フィルムの製造において、通常、使用される公知のものでよい。
【0051】
製造装置10においては、複数のニップロール11における少なくとも2つのニップロール11(上流側のニップロール11と下流側のニップロール11)の周速差を利用してフィルム2を一軸延伸処理する延伸処理を実施する。この場合、上記一軸延伸処理に寄与する2つのニップロール11は延伸処理部として機能する。
【0052】
例えば、架橋処理部13
3の前に配置されたニップロール11
3と架橋処理部13
3の後に配置されたニップロール11
4との周速差を利用して一軸延伸処理する延伸処理を行ってもよい。この場合、架橋処理と並行して延伸処理が行われるため、架橋処理部13
3も、延伸処理部として機能する。延伸処理は、シワの発生を抑制するためにも有効である。
【0053】
一つの処理部(例えば上述した架橋処理部13
3)の前後に配置された2つのニップロール11を利用して主に延伸処理を行う一方、他のニップロール11を利用して徐々に延伸処理を更に施してもよい。
【0054】
製造装置10は、延伸処理を行うための延伸処理部を別途有してもよい。この場合、延伸処理部は、例えば、架橋処理部13
3の後段(例えば、架橋処理部13
3と洗浄処理部13
4の間)に配置される。
【0055】
製造装置10は、膨潤処理部13
1、染色処理部13
2、架橋処理部13
3、洗浄処理部13
4及び乾燥処理部13
5のうち少なくとも一つの処理部を複数有してもよい。例えば、製造装置10は、架橋処理部13
3を複数備えてもよい。製造装置10が延伸処理部を備える場合も同様であり、製造装置10は、例えば、延伸処理部を複数備えても良い。
【0056】
上記製造装置10を用いて偏光フィルム4を製造する場合、まず、原反ロール6からフィルム2を繰り出し、複数のニップロール11及び複数のガイドロール12で形成される搬送経路に沿ってフィルム2を、その長手方向に搬送する。搬送速度の例は、1m/分〜60m/分であってもよく、1.5m/分〜50m/分である。フィルム2の搬送経路には、原反ロール6側から、膨潤処理部13
1、染色処理部13
2、架橋処理部13
3、洗浄処理部13
4及び乾燥処理部13
5が設けられている。更に、前述したように少なくとも2つのニップロール11は延伸処理部としての機能も有する。そのため、搬送されているフィルム2に、膨潤処理、染色処理、架橋処理、洗浄処理及び乾燥処理が施されるとともに、延伸処理が施される。これによって、フィルム2に直線偏光特性(光学特性)が付与され、偏光フィルム4が得られる。
【0057】
乾燥処理部13
5を経て得られた偏光フィルム4は、例えば、偏光フィルム4を含む偏光板の製造に用いられる。例えば、上記偏光板は、偏光フィルム4の片面又は両面に保護フィルムを貼合する貼合工程等が施されることによって製造され得る。乾燥処理部13
5を経て得られた偏光フィルム4は、上記偏光板の製造のために連続的に搬送されてもよいし、ロール状に一度巻き取られてもよい。
【0058】
図2に示したように、フィルム2を搬送しながらN個の処理を施して偏光フィルム4を製造する過程において、フィルム2の幅方向の長さが変化する。フィルム2の搬送における任意の2つの箇所のうち、上流側に位置する箇所(以下、「上流箇所」と称す)におけるフィルム2の幅をW1とし、上流箇所より下流側に位置する箇所(以下、「下流箇所」と称す)におけるフィルム2の幅をW2とし、上記上流箇所と下流箇所との間でのフィルム2の幅の変化率をネックイン率(%)と称したとき、本実施形態では、ネックイン率を以下の式で定義する。
ネックイン率=((W1−W2)/W1)×100
【0059】
本発明の一実施形態では、上記ネックイン率を監視する監視工程を更に有する。監視工程では、
図1に示したように、搬送中のフィルム2における複数の測定ポイント20(複数箇所)でフィルム2の幅を連続的に測定する。
図1では、フィルム2の幅の複数の測定ポイント20を矢印で示している。複数の測定ポイント20を区別して説明する場合には、複数の測定ポイント20を測定ポイント20
1〜20
12と称す。
【0060】
測定ポイント20は、ニップロール11又はガイドロール12に巻き掛けられたフィルム2の幅を測定するポイントであってもよいし、又は、ニップロール11又はガイドロール12に巻き掛けられていないフィルム2の幅を測定するポイントであってもよい。
図1に示した測定ポイント20は一例であり、例えば、測定ポイント20
1は、ニップロール11
1から送り出されたフィルム2の幅を測定する位置であってもよいし、測定ポイント20
4は、ガイドロール12
6に巻き掛けられたフィルム2(ガイドロール12
6上のフィルム2)の幅を測定する位置であってもよい。
【0061】
染色処理がフィルム2に施される前の測定ポイント20
1〜20
3は、ニップロール11又はガイドロール12に巻き掛けられたフィルム2の幅を測定するポイントであることが好ましい。一方、測定ポイント20
4以降は、ニップロール11又はガイドロール12とフィルム2との関係は、通常、限定されない。
【0062】
測定ポイント20は、例えば、N個の処理のうち一つの処理がフィルム2に施される前後に配置され得る。例えば、測定ポイント20
1は、
図1においてニップロール11
1に巻き掛けられている状態又はニップロール11
1から送り出された直後のフィルム2の幅を測定するポイントであり、膨潤処理が実施される前の測定ポイントである。測定ポイント20
2は、ガイドロール12
3上又はガイドロール12
3から送り出された直後のフィルム2の幅を測定するポイントである。
【0063】
よって、測定ポイント20
1,20
2は、膨潤処理がフィルム2に施される前後におけるフィルム2の幅の測定ポイントである。このように、一つの処理が行われる前後(ある処理部の処理液にフィルムが浸漬される前後)の測定ポイントは、その処理が行われる処理部の前後の測定ポイントでもある。
【0064】
このような測定ポイント20の他の例は、測定ポイント20
3,20
4,測定ポイント20
5,20
7、測定ポイント20
8,20
10、及び測定ポイント20
11,20
12である。測定ポイント20
3,20
4、測定ポイント20
5,20
7及び測定ポイント20
8,20
10は、膨潤処理、染色処理、架橋処理及び洗浄処理が施される前後におけるフィルム2の幅の測定ポイントである。測定ポイント20
11,20
12は、乾燥処理が施される前後におけるフィルム2の幅の測定ポイントである。
【0065】
測定ポイント20は、一つの処理がフィルム2に施されている工程の間にフィルム2の幅を測定するポイントであってもよい。このような測定ポイント20の例は、測定ポイント20
6,20
9である。測定ポイント20
6は、ガイドロール12
7とガイドロール12
8の間でフィルム2が搬送されている途中の測定ポイントである。同様に、測定ポイント20
9は、ガイドロール12
10とガイドロール12
11の間でフィルム2が搬送されている途中の測定ポイントである。測定ポイント20
6,20
9では処理液中のフィルム2の幅が測定される。
【0066】
監視工程では、複数の測定ポイント20から予め選択している2箇所(上流箇所及び下流箇所)それぞれにおけるフィルム2の幅を連続的に測定した測定結果のうち上記2箇所において同じタイミングで(すなわち、同時に)測定された測定結果に基づいてネックイン率を算出する。上記「同じタイミング(すなわち、同時に)」は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で若干のズレが生じていてもよい。上記上流箇所での測定時と上記下流箇所の測定時と時間差は、特に限定されないが、1分以内程度であってもよく、30秒以内であってもよく、20秒以内であってもよく、10秒以内であってもよい。監視工程は、自動化(オートメーション化)して実施することが好ましい。
【0067】
上記上流箇所及び下流箇所の例は、上流箇所がN個の処理のうち一つの処理(以下、「所定処理」と称す)の前であり、下流箇所が上記所定処理の後である。例えば、上記所定処理を染色処理とした場合、上流箇所が染色処理の前であり、下流箇所が染色処理の後である。「所定処理の前」及び「所定処理の後」とは、上流箇所と下流箇所と上記「所定処理」との間に他の処理が施される場合も含む。
【0068】
N個の処理の内の任意の隣接する2つの処理を第i−1の処理及び第iの処理(iは2以上の整数)と称し、対応する処理部を第i−1の処理部及び第iの処理部と称した場合、上記上流箇所及び下流箇所は、以下の配置例1〜3の何れかであってもよい。
[配置例1]
上流箇所が第i−1の処理中の位置(第i−1の処理部の位置)にあり且つ下流箇所が第i−1の処理(第i−1の処理部)の位置と第iの処理(第iの処理部)の位置の間である。例えば、第i−1の処理が架橋処理である場合、
図1に示した複数の測定ポイント20において、上流箇所及び下流箇所の例は、測定ポイント20
6及び測定ポイント20
7である。
[配置例2]
上流箇所及び下流箇所が、それぞれ第i−1の処理(第i−1の処理部)の位置と第iの処理(第iの処理部)の位置の間である。例えば、第i−1の処理が架橋処理である場合、
図1に示した複数の測定ポイント20において、上流箇所及び下流箇所の例は、測定ポイント20
7及び測定ポイント20
8である。
[配置例3]
上流箇所が第i−1の処理(第i−1の処理部)の前の位置であり且つ下流箇所が第i−1の処理中の位置(第i−1の処理部の位置)である。例えば、第i−1の処理が架橋処理である場合、
図1に示した複数の測定ポイント20において、上流箇所及び下流箇所の例は、測定ポイント20
5及び測定ポイント20
6である。
【0069】
iを2以上の整数とし、第iの処理の次の処理を第i+1の処理と称し、対応する処理部を第i+1の処理部と称した場合、上流箇所及び下流箇所の例は、以下の配置例4であってもよい。
[配置例4]
上流箇所が第i−1の処理(第i―1の処理部)の位置と第iの処理(第iの処理部)の位置の間であり、且つ、下流箇所が第iの処理(第iの処理部)の位置と第i+1の処理(第i+1の処理部)の位置の間である。例えば、第i−1の処理が架橋処理である場合、
図1に示した複数の測定ポイント20において、上流箇所及び下流箇所の例は、測定ポイント20
7及び測定ポイント20
10である。
【0070】
上流箇所及び下流箇所の組として、例えば、上流箇所が測定ポイント20
1であり、下流箇所が測定ポイント20
8のように、隣接していない2つの測定ポイント20の組を採用してもよい。
【0071】
製造装置10が、膨潤処理部13
1、染色処理部13
2、架橋処理部13
3、洗浄処理部13
4、乾燥処理部13
5のうち少なくとも一つを複数有する場合、上流箇所及び下流箇所が、それぞれ同じ目的の処理を行う箇所であってもよいし、異なる目的の処理を行う箇所であってもよい。例えば、製造装置10が、膨潤処理部13
1を2つ以上有し、2つの膨潤処理部13
1を膨潤処理部13
1−a,13
1−bと称した場合、上流箇所が膨潤処理部13
1−aの位置(又はその前若しくは後)であり、下流箇所が膨潤処理部13
1−bの位置(又はその前若しくは後)であってもよいし、上流箇所が膨潤処理部13
1−a又は膨潤処理部13
1−bの位置(又はその前若しくは後)であり、下流箇所が染色処理部13
2の位置(又はその前若しくは後)であってもよい。延伸処理部が複数ある場合も同様である。
【0072】
ネックイン率は、複数の測定ポイント20から選択される上流箇所と下流箇所の複数の組で算出されてもよい。例えば、測定ポイント20
1での測定結果と、測定ポイント20
2での測定結果に基づいてネックイン率を算出するとともに、測定ポイント20
5での測定結果と測定ポイント20
7での測定結果に基づいてネックイン率を算出してもよい。上流箇所と下流箇所の複数の組において、上流箇所又は下流箇所が共通の組があってもよい。例えば、測定ポイント20
1の測定結果と測定ポイント20
2の測定結果に基づいてネックイン率を算出するとともに、測定ポイント20
1の測定結果と測定ポイント20
4の測定結果に基づいてネックイン率を算出してもよい。同様に、測定ポイント20
5の測定結果と測定ポイント20
7の測定結果に基づいてネックイン率を算出するとともに、測定ポイント20
6の測定結果と測定ポイント20
7の測定結果に基づいてネックイン率を算出してもよい。
【0073】
上記ネックイン率を算出するために、光学フィルムの製造装置10は、
図3に示したように複数の幅測定器30と、算出部40とを有する。
【0074】
各幅測定器30は、フィルム2の幅を連続的に測定する装置である。複数の幅測定器30は、複数の測定ポイント20に一対一に配置される。すなわち、一つの測定ポイント20に一つの幅測定器30が配置される。
図3では、複数の幅測定器30のうち、ネックイン率を算出するために選択された2つの幅測定器30(すなわち、上流箇所に配置された上流側幅測定器30
UPと、下流箇所に配置された下流側幅測定器30
DOWN)と、算出部40を模式的に示している。
【0075】
幅測定器30は、2つの端部検出器31を有する。2つの端部検出器31の一方は、フィルム2の幅方向における一方の端部2aを検出する検出器であり、他方は、フィルムの幅方向における他方の端部2b(上記端部2aと反対側の端部)を検出する検出器である。幅測定器30は、測定ポイント20におけるフィルム2の状態に応じてフィルム2の端部2a,2bを検出するように構成されている。そのため、測定ポイント20毎に幅測定器30の構成は異なってもよい。ただし、一つの幅測定器30が有する2つの端部検出器31(一つの測定ポイント20に配置される2つの端部検出器31)の構成は同じである。
【0076】
図4は、端部検出器31の一例である端部検出器31Aの概略構成を説明するための模式図である。端部検出器31Aは、搬送ロールR上のフィルム2の幅を測定する際に適用される検出器である。搬送ロールRは、
図1に示したニップロール11またはガイドロール12である。
【0077】
端部2a及び端部2bをそれぞれ検出するようにフィルム2に対して2つの端部検出器31Aが配置される。前述したように端部検出器31Aの構成は同じであるため、端部検出器31Aが端部2aを検出する場合を説明する。
【0078】
端部検出器31Aは、光照射部32と、光検出部33とを有する。
図4では、フィルム2が搬送ロールR上に配置されている場合を例示している。
【0079】
光照射部32は、フィルム2に向けて光を照射する。光照射部32は、フィルム2の端部2aと端部2aより外側に光を照射するように構成されている。したがって、
図4に示したように、搬送ロールR上にフィルム2が配置されている場合、光照射部32からの光は、搬送ロールRのうちフィルム2と重なっていない部分にも照射される。光照射部32は、フィルム2の幅方向に延在したライン状の光源であり得る。光照射部32は、例えばLEDを有し得る。
【0080】
光照射部32は、筐体34内に配置されていてもよい。筐体34は、光照射部32から出力された光をフィルム2に照射するために窓部34aを有する。窓部34aは、光照射部32から出力された光を透過する材料で構成されていればよい。例えば、窓部34aの材料の例は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びガラスを含む。
【0081】
光検出部33は、光照射部32からフィルム2に照射された光がフィルム2で反射した光(反射光)の輝度を検出する。光検出部33は、フィルム2の少なくとも端部2aを撮像するカメラ(例えばCCDカメラ)といった撮像部であり得る。
図4に示したように、搬送ロールR上にフィルム2が配置されている場合、光検出部33は、光照射部32からフィルム2に照射された光のうち例えば搬送ロールRで反射した光の輝度も検出する。
【0082】
光検出部33は、筐体35内に配置されていてもよい。筐体35は、上記反射光を光検出部33で検出するために窓部35aを有する。窓部35aは、上記反射光を透過する材料で構成されていればよい。窓部35aの材料の例は窓部34aの場合と同じである。
【0083】
染色処理がフィルム2に施される前の測定ポイント20
1,20
2,20
3は、通常、搬送ロールR上のフィルム2の幅を測定するポイントである。よって、端部検出器31Aは、測定ポイント20
1,20
2,20
3で好適に適用される。
【0084】
図5は、端部検出器(幅測定器)31の他の例である端部検出器31Bの概略構成を説明するための模式図である。端部検出器31Bは、フィルム2に、直線偏光特性が生じている場合(吸収軸が形成されている場合)に適用される検出器である。通常、端部検出器31Bは、染色処理部13
2における染色処理が施された後のフィルム2に対して適用され得る。
【0085】
端部2a及び端部2bをそれぞれ検出するようにフィルム2に対して2つの端部検出器31Bが配置される。しかしながら、前述したように端部検出器31Bの構成は同じであるため、端部検出器31Bが端部2aを検出する場合を説明する。
【0086】
端部検出器31Bは、光検出部36と、偏光フィルタ37とを有する。
【0087】
光検出部36は、フィルム2の周辺環境における光がフィルム2に入射し、フィルム2を透過した光(以下、「フィルム2からの光」と称す)の輝度を検出する。光検出部36は、フィルム2の少なくとも端部2aを撮像するカメラ(例えばCCDカメラ)といった撮像部であり得る。
【0088】
上記「フィルム2の周辺環境の光」は、偏光フィルム4を製造する工場に設置された照明器具からの照明光、上記照明光が製造装置10を構成する要素(例えば、ニップロール11及びガイドロール12といった搬送ロールR、
図1に示した各処理部が有する処理槽の側壁及び底壁の少なくとも一方、上記工場の床など)に反射した光などを含む。
図5では、フィルム2の周辺環境の光を白抜き矢印で模式的に示している。
【0089】
偏光フィルタ37は、直線偏光特性を有するフィルタである。偏光フィルタ37は、光検出部36とフィルム2との間において、フィルム2の吸収軸と偏光フィルタ37の吸収軸がクロスニコル状態となるように配置されている。上記クロスニコル状態とは、フィルム2の吸収軸と偏光フィルタ37の吸収軸のなす角度が90°の場合に限らず、例えば90°に対して±5°、±10°又は15°程度の誤差を含む意味である。
【0090】
光検出部36及び偏光フィルタ37は、光検出部33の場合と同様に、窓部35aを有する筐体35内に配置されてもよい。窓部35aは、フィルム2からの光が透過可能な材料であればよい。
【0091】
フィルム2の周辺環境の光のみを使用した場合において、光検出部36で検出する周辺環境からの光とフィルム2を透過した光の輝度の差が小さい場合、端部検出器31Bは、補助照明部(光照射部)を有してもよい。補助照明部の構成は、光照射部32の場合と同様とし得る。補助照明部は、光照射部32より小型または光照射部32から出力される光のパワーより小さいパワーの光を出力するように構成されていてもよい。補助照明部は、光照射部32の場合と同様に、窓部34aを有する筐体34内に配置されてもよい。補助照明部は、光検出部33の検出領域(或いは撮像領域)及びその周辺の少なくとも一方を照明し、補助照明部からの光が、周辺環境の光としてフィルム2に入射するように配置される。
【0092】
端部検出器31Bは、搬送ロールR上のフィルム2の幅を測定する場合に用いてもよい。端部検出器31Bは、例えば、測定ポイント20
5,20
8,20
10での測定に用いられ得る。この場合の搬送ロールRは輝度の差を明瞭化するため、白色系のロールが好ましい。
【0093】
端部検出器31Bは、搬送ロールRと搬送ロールRの間のフィルム2の幅を測定する場合に用いてもよい。端部検出器31Bは、例えば、測定ポイント20
4,20
6,20
7,20
9,20
11,20
12でのフィルム2の幅の測定に用いられ得る。この場合、輝度の差を明瞭化するため、光検出部33の検出領域の背景(或いは撮像領域の背景)に白色系の板状の部材等を設置してもよい。2つの搬送ロールRの間のフィルム2の幅の測定において、補助照明部を使用する場合、補助照明部は、フィルム2に対して端部検出器31Bと同じ側に配置されてもよいし、フィルム2に対して端部検出器31Bと反対側に配置されてもよい。
【0094】
測定ポイント20
6,20
9でのフィルム2の幅の測定の場合、端部検出器31Bは、処理液中のフィルム2の幅を測定する。この場合、例えば、端部検出器31Bは、
図5に示したように、窓部35aを有する筐体35を有し、窓部35aの部分が処理液中に位置するように筐体35が配置されてもよい。窓部35aの部分が処理液中に配置される場合、窓部35aの外面は親水性処理、凹凸加工及び傾斜加工の少なくとも一方が施されていてもよい。これにより、例えば窓部35aの外面に気泡が滞留しにくいので、フィルム2の端部2aを正確に検出し易い。処理液中のフィルム2の幅の測定において、補助照明部を使用する場合、例えば、補助照明部は、フィルム2に対する処理が行われる処理槽の底壁を照明してもよい。この場合、補助照明部から照射され、上記処理槽の底壁で反射し、フィルム2を透過した透過光の輝度が偏光フィルタ37を介して光検出部36で検出される。
【0095】
端部検出器31Bが有する偏光フィルタ37は、例えば、フィルム2への光の入射側に配置されてもよい。例えば、端部検出器31Bが補助照明部(光照射部)を有する場合、偏光フィルタ37は、偏光フィルタ37は、光検出部33ではなく、補助照明部と、フィルム2との間に配置されてもよい。この場合も、偏光フィルタ37は、フィルム2とクロスニコル状態で配置される。
【0096】
図3〜
図5に示した算出部40は、複数の幅測定器30(上流箇所及び下流箇所に配置された幅測定器30)に有線又は無線で接続されており、複数の幅測定器30から取得した測定結果に基づいて、上記ネックイン率を算出する。
【0097】
具体的には、算出部40は、複数の幅測定器30の測定結果に基づいて各幅測定器30の配置箇所におけるフィルム2の端部2a及び端部2bを判定する。端部2a及び端部2bは、幅測定器30の測定結果である輝度データにおける変化で判定され得る。
【0098】
例えば、
図4に示したように、端部検出器31Aを含む幅測定器30によって、搬送ロールR上にフィルム2が配置されているフィルム2の幅を測定する場合、光検出部33は、フィルム2からの反射光と搬送ロールRからの反射光の輝度を検出する。フィルム2からの反射光の輝度と搬送ロールRからの反射光の輝度には差が生じるので、算出部40は、その差が生じている箇所をフィルム2の端部2a,2bと判定すればよい。
【0099】
例えば、
図5に示したように、端部検出器31Bを含む幅測定器30によって、フィルム2の幅を測定する場合、偏光フィルタ37とフィルム2とはクロスニコル状態であるため、フィルム2からの光は実質的に遮断される一方、フィルム2以外からの光は検出される。そのため、光検出部36で検出された輝度データで形成される像では、フィルム2とフィルム2以外の箇所で輝度の差が生じる(フィルム2側が暗く、フィルム2以外が明るい)ので、算出部40は、その差が生じている箇所をフィルム2の端部2a,2bと判定すればよい。
【0100】
フィルム2の端部2a,2bが特定されると、算出部40は、例えば、端部検出器31A(又は端部検出器31B)の配置位置と、検出された輝度データにおける端部2a,2bの位置との関係からフィルム2の幅を算出する。端部検出器31A(又は端部検出器31B)で得られた輝度データから例えば搬送ロールRの端部が特定できる場合には、輝度データにおける搬送ロールRの端部とフィルム2の端部2a,2bの位置との関係及び実際の搬送ロールRの端部の位置からフィルム2の幅を算出する。
【0101】
次に、算出部40は、複数の測定ポイント20のうちから予め選択されている上流箇所及び下流箇所にそれぞれ配置された2つの幅測定器30(上流側幅測定器30
UP及び下流側幅測定器30
DOWN)の測定結果に基づいて算出されたフィルム2の幅を用いて、ネックイン率を算出する。上流箇所及び下流箇所の例は、前述したとおりである。
【0102】
上記偏光フィルム4の製造方法及び偏光フィルム4の製造装置10では、フィルム2の幅を、複数の測定ポイント20(複数箇所)それぞれに配置された幅測定器30で測定する。これによって、フィルム2を搬送しながら、フィルム2の幅を連続的に測定できる。更に、複数の測定ポイント20で連続的に測定されたフィルム2の幅のうち、上流箇所及び下流箇所において同じタイミングで測定されたフィルム2の幅の測定結果に基づいて、ネックイン率を算出する。そのため、フィルム2の搬送中に、リアルタイムでフィルム2のネックイン率が得られる。すなわち、ネックイン率を効率よく測定することができる。換言すれば、リアルタイムでネックイン率を監視できる。
【0103】
ネックイン率は、フィルム2の幅の変化率を表している。よって、例えば幅測定を行った箇所において、予め実験又はシミュレーションなどで得られるネックイン率の許容範囲(ネックイン率の管理幅)を超えると、例えば後工程でフィルム2が破断したり、フィルム2の厚さが所望の厚さ(設計上の厚さ)からズレたり、所望の光学特性やスジ、ムラ等の外観の劣る不良品としてのフィルムが製造されたりする場合がある。
【0104】
そのため、リアルタイムでネックイン率を監視できる上記偏光フィルム(光学フィルム)4の製造方法及び偏光フィルム4の製造装置10では、ネックイン率が許容範囲を超えた場合に、例えば、偏光フィルム4の製造を中断できる。製造を中断した場合には、ネックイン率が許容範囲になるように、偏光フィルム4の製造条件の調整(例えば、処理液の調整、延伸処理条件の調整など)を行えばよい。また、例えばネックイン率が許容範囲になるように調整しながら製造を継続することもできる。これよって、前述した後工程でのフィルム2の破断を防止したり、上記不良品となる偏光フィルム4の製造を抑制したりできる。そのため、安定した工程で偏光フィルム4を製造できる。更に、品質の安定した偏光フィルム4を均一に製造できる。更にまた、偏光フィルム4の材料コストを低減できる。更に、良品の偏光フィルム(光学フィルム)4を効率的に製造できるので、偏光フィルム4の製造歩留まりが向上する。
【0105】
フィルム2の幅は、フィルム2にN個の処理のうちの少なくとも一つが施されることで変化し易い。そのため、前述したように、上流箇所が、N個の処理のうちの所定処理の前であり、下流箇所が所定処理の後である場合、偏光フィルム4の製造における不具合(例えば、後工程でのフィルム2の破断、フィルム2の所望の厚さからのズレなど)に寄与するネックイン率を監視し易い。
同様の理由により、前述した配置例1〜4の場合にも、偏光フィルム4の製造における不具合に寄与するネックイン率を監視し易い。例えば、配置状態において、ある処理の前若しくは後の状態の変化、その処理に起因する状態の変化、又は、その処理の途中での状態の変化がネックイン率に影響をしていることを特定できる。そのため、ネックイン率が許容範囲から外れている場合に、製造条件の調整を行い易い。
その結果、偏光フィルム4の材料コストを更に低減できるとともに、偏光フィルム4の製造歩留まりを一層向上できる。また、より安定した工程で、品質の一層安定した偏光フィルム4を均一に製造できる。
【0106】
測定ポイント20
1でフィルム2の幅を測定する場合(N個の処理が施される前)には、フィルム2には例えば直線偏光特性が生じていない。したがって、フィルム2は、通常、吸収軸を有しない透明フィルムである。この場合、
図4に示した端部検出器31Aを有する幅測定器30を用いて、搬送ロールR上のフィルム2の端部2a,2bを検出することによって、フィルム2の端部2a,2bを確実に検出できる。その結果、フィルム2の幅を、より正確に測定できる。ここでは、測定ポイント20
1の場合を例示して説明したが、測定ポイント20
2,20
3でも同様に、
図4に示した端部検出器31Aを有する幅測定器30を用いて、フィルム2の端部2a,2bを確実に検出できる。
【0107】
フィルム2に染色処理及び延伸処理が施されると、フィルム2に直線偏光特性が付与される。フィルム2が搬送される場合、フィルム2の搬送方向に沿ってフィルム2にテンションが付与される。そのため、フィルム2を搬送しながら、膨潤処理、染色処理、架橋処理及び乾燥処理の何れかで延伸処理が徐々に施される場合、染色処理後のフィルム2に徐々に直線偏光特性が付与される。更に、
図1に示したように乾燥処理は、通常、N個の処理の最後に実施される。そのため、染色処理及び延伸処理が実施された後に、フィルム2の幅を測定する場合には、
図5に示した端部検出器31Bを有する幅測定器30を用いることによって、フィルム2の幅を確実に検出できる。その結果、フィルム2の幅を、より正確に測定できる。
【0108】
図4及び
図5に示したように、幅測定器30が筐体34,35を備える形態では、光照射部32及び光検出部33,36のヨウ素による腐食を防止できる。偏光フィルム4の製造には、ヨウ素を含む処理液を使用するため、製造環境には、ヨウ素が存在し、例えば光検出部33,36等を腐食させる。これに対して、
図4及び
図5に示したように、光照射部32及び光検出部33,36を筐体34,35内に配置することによって、上記ヨウ素による腐食を防止できる。筐体34,35内はエアを供給するなどして陽圧化しておくことが好ましい。
【0109】
以上説明した実施形態とともに、種々の変形例を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態及び種々の変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0110】
光学フィルムとして偏光フィルムを製造する場合を例示した。しかしながら、本発明は、フィルムから光学フィルムを製造する過程においてネックイン率の監視が必要な光学フィルムの製造方法及び製造装置に適用できる。光学フィルムの他の例は、保護フィルム、位相差フィルム、表面処理フィルム、反射防止フィルム及び拡散フィルムを含む。
【0111】
図5に示した端部検出器31Bを有する幅測定器は、N個の処理が染色処理及び延伸処理を含む場合に、上流箇所が、染色処理及び延伸処理が施されたフィルムの幅を測定する箇所である場合に好適に適用することができる。この場合、上流箇所でフィルムの幅を測定する際に、フィルムに直線偏光特性が生じている傾向にあるからである。フィルムを搬送しながらN個の処理を施す場合、前述したように、フィルムに徐々に延伸処理が施される。よって、端部検出器31Bを有する幅測定器は、上流箇所が、染色処理が施されたフィルムの幅を測定する箇所である場合にも好適に適用することができる。
【0112】
フィルム2の幅の測定方法は、例示した方法に特に限定されない。例えば、レーザ式変位計、LED式変位計などの測定機器で幅を測定してもよい。フィルム2全体をカメラなどで撮影し、得られた画像より幅を算出してもよい。
図3に示したように、フィルム2の端部2a,2bの位置を取得する方法では、フィルム2の端部2a,2bそれぞれに端部2a,2bの位置を測定する装置を配置すればよいので、設置スペースや機器管理(保守点検等)の観点で好ましい。
【0113】
延伸処理部における延伸処理は、湿式の延伸方法に限らず、乾式の延伸方法が採用されてもよい。上述の実施形態において、偏光フィルムを製造するために例示した処理の順番は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更または組み合わされてもよい。各処理部が有する処理槽の数は、一つでもよいし、複数でもよい。N個の処理は、例示した処理の数に限定されない。
【0114】
フィルムの幅の変化率(ネックイン率)の定義は、上流箇所及び下流箇所の間のフィルムの幅の変化率が表されていれば、例示した定義に限定されない。
【0115】
上記実施形態及び種々の変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。