【解決手段】(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ハロゲン系難燃剤と、(C)アンチモン化合物とを含む難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、粒径0.2μm以上2.0μm以下の(C)アンチモン化合物と、(D)熱可塑性樹脂とを溶融混練してマスターバッチを得る工程と、前記マスターバッチを、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)ハロゲン系難燃剤と溶融混練する工程とを含む、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
[難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物]
以下、難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)の一例として、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の各成分の詳細を説明する。
【0013】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂)
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)またはそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
【0014】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましく、0.65dL/g以上0.9dL/g以下であるのがより好ましい。このような範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC
6−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
2−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC
5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC
6−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
4−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0018】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分として1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC
2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC
2−4のアルキレンオキサイド付加体;またはこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を用いることができる。これらのグリコール成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC
2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、または、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0020】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC
3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0021】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂)の含有量は、樹脂組成物の全質量の30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
(ハロゲン系難燃剤)
(B)ハロゲン系難燃剤としては、特に限定されず、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化ポリカーボネート樹脂、ハロゲン化ポリスチレン樹脂、ハロゲン化ベンジルアクリレート樹脂、ハロゲン化フタルイミド樹脂等を好ましく用いることができる。これらのうち、ハロゲン化エポキシ樹脂であることがより好ましく、臭素化エポキシ樹脂であることが更に好ましい。臭素化エポキシ樹脂の例として、下記式(I)および(II)で表されるものを挙げることができる。
【0025】
これは、例えばテトラブロムビスフェノールAとエピクロルヒドリンエピクロルヒドリンを反応させて得られるテトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテルに、さらにそのエポキシ基1当量に対して、テトラブロムビスフェノールAをその水酸基が0〜0.96当量になるように混合し、塩基性触媒、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリブチルアミンなどの存在下で100〜250℃で加熱反応させることにより得ることができる。
【0026】
この臭素化エポキシ樹脂の平均重合度nは11〜50、好ましくは11〜20である。この平均重合度が11より小さい場合には、臭素化エポキシ樹脂のエポキシ当量が大きくなり、熱可塑性ポリエステル樹脂との反応による成形加工性の低下を抑制することが困難になる。また、この平均重合度が50より大きい場合には、樹脂組成物の流動性が低下してしまう。
【0027】
本発明における(B)ハロゲン系難燃剤の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(D)熱可塑性樹脂の合計100重量部に対し、15重量部以上50重量部以下であることが好ましく、18重量部以上45重量部以下であることがより好ましく、20重量部以上40重量部以下であることがさらに好ましく、20重量部以上30重量部以下であることが特に好ましい。この配合量が15重量部より小さい場合には、樹脂組成物の難燃性が十分ではなく、また50重量部より大きい場合には、樹脂組成物の機械的特性が低下するなどの欠点が現れてくる。
【0028】
(アンチモン化合物)
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、粒径0.2μm以上2.0μm以下の(C)アンチモン化合物を含有する。(C)アンチモン化合物は、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンなどの酸化アンチモンであることが好ましく、三酸化アンチモンであることがより好ましい。またその粒径は、0.2μm以上1.8μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1.6μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましく、0.4μm以上1.4μm以下であることが特に好ましい。なお、本発明において、(C)アンチモン化合物の粒径は、本発明の製造方法により得られた難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の電子顕微鏡写真から任意の100個の(C)アンチモン化合物を選択し、それぞれの最小の外接円の直径を平均した値である。
【0029】
(C)アンチモン化合物の配合量は、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(D)熱可塑性樹脂の合計100重量部に対し、3.0重量部以上20重量部以下であることが好ましく、3.5重量部以上18重量部以下であることがより好ましく、4.0重量部以上16重量部以下であることがさらに好ましく、4.5重量部以上12重量部以下であることが特に好ましい。この配合量が3.0重量部より小さい場合には、難燃助剤としての効果が十分発揮されず、また20重量部より大きい場合には、樹脂組成物の機械的特性が低下するなどの欠点が現れてくる。
【0030】
(熱可塑性樹脂)
本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、上記の(C)アンチモン化合物を、後述する方法でマスターバッチ化したものを添加するが、そのマスターバッチのベースには、各種の(D)熱可塑性樹脂を用いる。(D)熱可塑性樹脂としては、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良く、例えばポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂などを挙げることができるが、樹脂組成物中における分散性の観点では、(D)熱可塑性樹脂の融点が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の加工温度と同等かそれ以下であることが好ましい。また、(D)熱可塑性樹脂の熱分解温度が、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂の加工温度と同等かそれ以上であることが好ましい。なお、ここでいう加工温度とは、本発明の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得るために、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とマスターバッチを溶融混練する際の樹脂温度を指す。
【0031】
(充填剤)
本発明の組成物には必要に応じて充填剤が使用される。このような充填剤は、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質等の性能に優れた性質を得るためには配合することが好ましく、特に剛性を高める目的で有効である。これは目的に応じて繊維状、粉粒状または板状の充填剤が用いられる。
【0032】
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などが挙げられる。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物質も使用することができる。
【0033】
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトなどの珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナなどの金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、その他、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0034】
また、板状無機充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。
【0035】
充填剤の種類は特に限定されず、1種または複数種以上の充填剤を添加することができる。特に、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維、マイカ、タルク、ウォラストナイトを使用することが好ましい。
【0036】
充填剤の添加量は特に規定されるものではないが、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(D)熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して200質量部以下が好ましい。充填剤を過剰に添加した場合は成形性に劣り靭性の低下が見られる。
【0037】
(添加剤)
さらに本発明の組成物には、その目的に応じ、難燃性以外の所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を添加併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、滴下防止剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤等いずれも配合することが可能である。特に耐熱性を向上させるための酸化防止剤の添加は効果的である。
【0038】
(マスターバッチの調製方法)
としては、特に限定されずマスターバッチの調製方法としては、特に限定されず、例えば、(D)熱可塑性樹脂と(C)アンチモン化合物とを、一軸または二軸の押出機またはその他の溶融混練装置を使用して溶融混練し、ペレットとして調製する方法が挙げられる。その際、押出機またはその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。なお、マスターバッチには(C)アンチモン化合物以外に充填剤や添加剤などの他の成分を添加してもよく、その場合はマスターバッチに添加する全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0039】
本発明におけるマスターバッチとしては、粒径が0.1mmから5.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.2mmから4.0mmである。ただし、0.1mmから0.5mmであれば特性のバラつきが少ない点で好ましく、3.0mmから5.0mmであれば製造が安定する点で好ましい。
【0040】
(熱可塑性樹脂組成物の混練方法)
熱可塑性樹脂組成物の混練方法としては、特に限定されず、例えば、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)ハロゲン系難燃剤と上記マスターバッチおよび必要に応じ充填剤や添加剤などの他の成分を、一軸または二軸の押出機またはその他の溶融混練装置を使用して溶融混練し、ペレットとして調製する方法が挙げられる。その際、押出機またはその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。なお、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂とマスターバッチを溶融混練した上で(B)ハロゲン系難燃剤を溶融混練してもよく、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と(B)ハロゲン系難燃剤を溶融混練した上でマスターバッチを溶融混練してもよい。また、マスターバッチは他の成分とは別に設けた専用のフィード口から供給してもよい。なお、充填剤や添加剤などの他の成分を添加するタイミングも特に限定されず、(B)ハロゲン系難燃剤やマスターバッチと同時に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と溶融混練してもよいし、(B)ハロゲン系難燃剤と同時に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と溶融混練した上でマスターバッチと溶融混練してもよいし、マスターバッチと同時に(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と溶融混練した上で(B)ハロゲン系難燃剤と溶融混練してもよいし、先述の通りあらかじめマスターバッチ中に(C)アンチモン化合物とともに添加しておいてもよい。
【0041】
(射出成形)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を材料にして、例えば射出成形法により成形して成形品を得ることができる。なお、使用する成形装置は従来公知の一般的な射出成形装置を使用することができる。
【0042】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
本発明では、以下の材料を用いた。
(A)熱可塑性ポリエステル樹脂
・ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度0.87dL/g、末端カルボキシル基量20meq/kgのポリブチレンテレフタレート樹脂
(B)ハロゲン系難燃剤
・ICL−IP社製、臭素化エポキシ樹脂、「F3100」、末端封止品
(C)アンチモン化合物
・アンチモン化合物1:粒径0.1μmの三酸化アンチモン
・アンチモン化合物2:粒径0.5μmの三酸化アンチモン
・アンチモン化合物3:粒径0.8μmの三酸化アンチモン
・アンチモン化合物4:粒径1.5μmの三酸化アンチモン
(D)熱可塑性樹脂
・ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度0.87dL/g、末端カルボキシル基量20meq/kgのポリブチレンテレフタレート樹脂(「(A)熱可塑性ポリエステル樹脂」に同じ)
(充填剤)
・ガラス繊維:日本電気硝子社製、「ECS03T−187」、平均繊維径13μm、平均長3mm
・タルク:日本タルク社製、「タルク3A」、平均粒径13.8μm
(添加剤)
・ハイドロタルサイト:協和化学工業製、「DHT−4A−2」
・滴下防止剤:旭硝子社製、ポリテトラフルオロエチレン、「フルオンCD097E」
・離型剤:三洋化成工業株式会社製、低分子量ポリエチレン、「サンワックス161−P」
・酸化防止剤:BASFジャパン社製、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、「イルガノックス1010」
【0044】
(マスターバッチの調製)
(D)熱可塑性樹脂を20質量%とアンチモン化合物1を80質量%用いて、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30C、スクリュー径30mmφ)にてシリンダー温度250℃で溶融混練し、マスターバッチ1を得た。また、(D)熱可塑性樹脂を10質量%とアンチモン化合物2を90質量%、(D)熱可塑性樹脂を20質量%とアンチモン化合物3を80質量%、および(D)熱可塑性樹脂を20質量%とアンチモン化合物4を80質量%、それぞれ用いて、同様にマスターバッチ2、マスターバッチ3、およびマスターバッチ4を得た。なお、(D)熱可塑性樹脂としては、上記(A)熱可塑性ポリエステル樹脂と同じポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた。
【0045】
(難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造)
表1に示す各成分を秤量し混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30C、スクリュー径30mmφ)のホッパから投入して、シリンダー温度250℃、吐出量15kg/hで溶融混練して難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。ただし、ガラス繊維はサイドフィード口から供給した。なお、表1中にカッコ書きで記載した「マスターバッチ中の(C)アンチモン化合物の量」および「マスターバッチ中の(D)熱可塑性樹脂(PBT)の量」は、各実施例、比較例で添加したマスターバッチ中の(C)アンチモン化合物と(D)熱可塑性樹脂の内訳をそれぞれ示すものであり、マスターバッチとは別途追加でこれらを添加したという意味ではない。
【0046】
<実施例1〜5、比較例1〜7>
上記のようにして得た各組成物を用いて、下記特性の評価を行った。
【0047】
(引張強さ)
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で射出成形して、ISO3167に準拠した1Aタイプの引張試験片を作製した。得られた試験片について、ISO527−1,2に準拠し、引張強さの測定を行い、140MPa以上のものを〇、140MPa未満のものを×として判定した。結果を表1に示す。
【0048】
(シャルピー衝撃強さ)
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、シャルピー衝撃試験片を作製し、ISO179/1eAに準拠して、23℃でシャルピー衝撃強さを測定し、7以上のものを〇、7未満のものを×として判定した。結果を表1に示す。
【0049】
(難燃性)
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(長さ125mm、幅13mm、厚さ0.4mm)を用いて燃焼性を試験し、UL94に記載の評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(溶融粘度)
各実施例および比較例の難燃性熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、東洋精機製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度260℃、滞留時間9分にて、せん断速度1000sec
−1での溶融粘度を測定し、200Pa・s未満のものを〇、200Pa・s以上のものを×として判定した。結果を表1に示す。
【0052】
表1の通り、各種アンチモン化合物をマスターバッチとして添加しない場合は、難燃性、機械的特性や流動性に大きな差は見られないが、マスターバッチとして添加する場合、粒径により差が生じるため、安全性面からアンチモン化合物をマスターバッチ化して使用する場合には、本発明の特定の粒径のアンチモンを用いることが有用であることが分かる。