【解決手段】塩基性窒素原子を有する化合物と、ブロック共重合体とを含有し、ブロック共重合体が、酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第1のブロック構造と、親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第2のブロック構造とを有し、塩基性窒素原子を有する化合物が、ブロック共重合体に内包されている、複合体。
前記塩基性窒素原子を有する化合物が、イミダゾール骨格、イミダゾリン骨格、トリアジン骨格、又はイソシアヌル酸骨格を有する化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
塩基性窒素原子を有する化合物、ブロック共重合体、及び第1の有機溶媒を含む混合液、並びに第2の有機溶媒を準備し、前記混合液を前記第2の有機溶媒に加えて、複合体を得る工程を備え、
前記ブロック共重合体が、
酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第1のブロック構造と、
親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第2のブロック構造と、
を有し、
前記複合体は、前記塩基性窒素原子を有する化合物が、前記ブロック共重合体に内包されている、複合体の製造方法。
塩基性窒素原子を有する化合物、ブロック共重合体、及び第1の有機溶媒を含む第1の混合液を準備し、前記第1の混合液に対して、親水性溶媒を加えて、第2の混合液を得る工程と、
前記第2の混合液に対して、第2の有機溶媒を加えて、複合体を得る工程と、
を備え、
前記ブロック共重合体が、
酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第1のブロック構造と、
親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第2のブロック構造と、
を有し、
前記複合体は、前記塩基性窒素原子を有する化合物が、前記ブロック共重合体に内包されている、複合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイル等の他の類似表現についても同様である。
【0030】
[複合体]
一実施形態の複合体は、塩基性窒素原子を有する化合物と、ブロック共重合体とを含有する。
【0031】
<塩基性窒素原子を有する化合物>
塩基性の窒素原子を有する化合物としては、例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、含窒素複素環式化物等が挙げられる。これらの中でも、塩基性の窒素原子を有する化合物は、含窒素複素環式化物であってよく、イミダゾール骨格、イミダゾリン骨格、トリアジン骨格、又はイソシアヌル酸骨格を有する化合物であってもよい。これらの化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチル−イミダゾリルー(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール臭化水素酸塩、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。塩基性窒素原子を有する化合物は、イミダゾール骨格を有する化合物であってもよく、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、又は1−ベンジル−2−メチルイミダゾールであってもよく、2−フェニルイミダゾールであってもよい。
【0032】
<ブロック共重合体>
ブロック共重合体は、酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第1のブロック構造と、親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第2のブロック構造とを有する。当該ブロック共重合体は、有機溶媒又は親水性溶媒に対して、異なる親和性の異なる少なくとも2つのブロック構造を有する。そのため、当該ブロック共重合体は、後述の方法によって、自己組織化して、塩基性の窒素原子を有する化合物及び第1のブロック構造でコア構造を形成し、第2のブロック構造でシェルを形成して、コアシェル型の複合体を得ることができる。
【0033】
(第1のブロック構造)
第1のブロック構造は、酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む。酸性基を有する化合物に由来する構成単位は、塩基性の窒素原子を有する化合物と水素結合等の相互作用し得る構成単位であり、疎水性基を有する化合物に由来する構成単位は、コア構造を形成する際に、塩基性の窒素原子を有する化合物を内包し得る構成単位である。
【0034】
酸性基を有する化合物に由来する構成単位は、下記一般式(11)で表される構成単位であってよい。
【0036】
一般式(11)中、R
11は水素原子又はメチル基を示し、R
12は酸性の有機基を示す。
【0037】
R
12は、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホ基等の酸性基を有する有機基であってよく、カルボキシル基を有する有機基であってもよい。有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の分枝を有してもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有してもよいフェニレン基、置換基を有してもよいナフチレン基等の芳香族基などが挙げられる。
【0038】
R
12は、安定したコア構造を形成し易いことから、下記一般式(12)で表される基であってもよい。
【0040】
一般式(12)中、R
13は炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは0〜3の整数を示す。
【0041】
酸性基を有する化合物としては、例えば、4−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、2−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、5−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルシュウ酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルシュウ酸、クロトン酸、ソルビン酸等が挙げられる。これらの中でも、酸性基を有する化合物は、4−ビニル安息香酸であってよい。
【0042】
疎水性基を有する化合物に由来する構成単位は、下記一般式(21)で表される構成単位であってよい。
【0044】
一般式(21)中、R
21は水素原子又はメチル基を示し、R
22は炭素数1〜20のアルキル基を示し、bは0〜3の整数を示す。
【0045】
疎水性基を有する化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン等のアルキルスチレン;p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン;4−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、2−ビニルビフェニル等のビニルビフェニル類;1−(4−ビニルフェニル)−ナフタレン、2−(4−ビニルフェニル)−ナフタレン、1−(3−ビニルフェニル)−ナフタレン、2−(3−ビニルフェニル)−ナフタレン、1−(2−ビニルフェニル)−ナフタレン、2−(2−ビニルフェニル)ナフタレン等のビニルフェニルナフタレン類;1−(4−ビニルフェニル)−アントラセン、2−(4−ビニルフェニル)−アントラセン、9−(4−ビニルフェニル)−アントラセン、1−(3−ビニルフェニル)−アントラセン、2−(3−ビニルフェニル)−アントラセン、9−(3−ビニルフェニル)−アントラセン、1−(2−ビニルフェニル)−アントラセン、2−(2−ビニルフェニル)−アントラセン、9−(2−ビニルフェニル)−アントラセン等のビニルフェニルアントラセン類;1−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン、2−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン、3−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン、4−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン、9−(4−ビニルフェニル)−フェナントレン、1−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン、2−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン、3−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン、4−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン、9−(3−ビニルフェニル)−フェナントレン、1−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン、2−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン、3−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン、4−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン、9−(2−ビニルフェニル)−フェナントレン等のビニルフェニルフェナントレン類;1−(4−ビニルフェニル)−ピレン、2−(4−ビニルフェニル)−ピレン、1−(3−ビニルフェニル)−ピレン、2−(3−ビニルフェニル)−ピレン、1−(2−ビニルフェニル)−ピレン、2−(2−ビニルフェニル)−ピレン等のビニルフェニルピレン類;4−ビニル−p−ターフェニル、4−ビニル−m−ターフェニル、4−ビニル−o−ターフェニル、3−ビニル−p−ターフェニル、3−ビニル−m−ターフェニル、3−ビニル−o−ターフェニル、2−ビニル−p−ターフェニル、2−ビニル−m−ターフェニル、2−ビニル−o−ターフェニル等のビニルターフェニル類;4−(4−ビニルフェニル)−p−ターフェニル等のビニルフェニルターフェニル類;4−ビニル−4’−メチルビフェニル、4−ビニル−3’−メチルビフェニル、4−ビニル−2’−メチルビフェニル、2−メチル−4−ビニルビフェニル、3−メチル−4−ビニルビフェニル等のビニルアルキルビフェニル類;4−ビニル−4’−フルオロビフェニル、4−ビニル−3’−フルオロビフェニル、4−ビニル−2’−フルオロビフェニル、4−ビニル−2−フルオロビフェニル、4−ビニル−3−フルオロビフェニル、4−ビニル−4’−クロロビフェニル、4−ビニル−3’−クロロビフェニル、4−ビニル−2’−クロロビフェニル、4−ビニル−2−クロロビフェニル、4−ビニル−3−クロロビフェニル、4−ビニル−4’−ブロモビフェニル、4−ビニル−3’−ブロモビフェニル、4−ビニル−2’−ブロモビフェニル、4−ビニル−2−ブロモビフェニル、4−ビニル−3−ブロモビフェニル等のハロゲン化ビニルビフェニル類;4−ビニル−4’−トリメチルシリルビフェニル等のトリアルキルシリルビニルビフェニル類;4−ビニル−4’−トリメチルスタンニルビフェニル、4−ビニル−4’−トリブチルスタンニルビフェニル等のトリアルキルスタンニルビニルビフェニル類;4−ビニル−4’−トリメチルシリルメチルビフェニル等のトリアルキルシリルメチルビニルビフェニル類;4−ビニル−4’−トリメチルスタンニルメチルビフェニル、4−ビニル−4’−トリブチルスタンニルメチルビフェニル等のトリアルキルスタンニルメチルビニルビフェニル類;p−クロロエチルスチレン、m−クロロエチルスチレン、o−クロロエチルスチレン等のハロゲン置換アルキルスチレン;p−トリメチルシリルスチレン、m−トリメチルシリルスチレン、o−トリメチルシリルスチレン、p−トリエチルシリルスチレン、m−トリエチルシリルスチレン、o−トリエチルシリルスチレン、p−ジメチルターシャリ−ブチルシリルスチレン等のアルキルシリルスチレン類;p−ジメチルフェニルシリルスチレン、p−メチルジフェニルシリルスチレン、p−トリフェニルシリルスチレン等のフェニル基含有シリルスチレン類;p−ジメチルクロロシリルスチレン、p−メチルジクロロシリルスチレン、p−トリクロロシリルスチレン、p−ジメチルブロモシリルスチレン、p−ジメチルヨードシリルスチレン等のハロゲン含有シリルスチレン類;p−(p−トリメチルシリル)ジメチルシリルスチレン等のシリル基含有シリルスチレン類などが挙げられる。
【0046】
第1のブロック構造は、例えば、下記一般式(50)で表される構造であってよい。
【0048】
一般式(50)中、Aは疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を示し、Bは酸性基を有する化合物に由来する構成単位を示す。なお、−r−は、ランダム共重合体であることを示す符号である。kは疎水性基を有する化合物に由来する構成単位の重合度を示し、lは酸性基を有する化合物に由来する構成単位の重合度を示す。kは、20〜200、35〜180、又は45〜160であってよい。lは、60〜500、150〜400、又は220〜350であってよい。kに対するlの比(l/k)は、1.8以上、2.0以上、又は2.2以上であってよく、4.5以下、4.2以下、又は4.0以下であってよい。
【0049】
第1のブロック構造は、酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0050】
(第2のブロック構造)
第2のブロック構造は、親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む。親水性基を有する化合物に由来する構成単位は、コアシェル型のシェル構造を形成し得る構成単位である。
【0051】
親水性基を有する化合物に由来する構成単位は、下記一般式(31)で表される構成単位であってよい。一般式(31)で表される構成単位に含まれるアミド基は、水素結合によってアミド基同士で強固に会合できるため、後述する方法で自己組織化によってコアシェル型の複合体を形成する際において、シェル構造を形成することができる。
【0053】
一般式(31)中、R
31は水素原子又はメチル基を示す。
【0054】
親水性基を有する化合物は、(メタ)アクリルアミドであってよい。
【0055】
第2のブロック構造は、親水性基を有する化合物に由来する構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。このような構成単位としては、例えば、下記一般式(41)で表される構成単位(アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位)等が挙げられる。第2のブロック構造が一般式(41)で表される構成単位を含むことによって、第2のブロック構造の合成が簡便となり、親水性基を有する化合物に由来する構成単位の水素結合の作用を低下させ、シェル構造の安定性を低下させることで、シェル構造が崩壊する温度を調整することが可能となる。そのため、本実施形態の複合体をエポキシ樹脂の潜在性硬化剤として用いるとき、硬化温度の調整が可能となる。
【0057】
一般式(41)中、R
41は水素原子又はメチル基を示し、R
42は炭素数1〜20のアルキル基を示す。
【0058】
一般式(41)で表される構成単位を構成する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、一般式(41)で表される構成単位を構成する化合物は、メチル(メタ)アクリレートであってよい。
【0059】
第2のブロック構造は、例えば、下記一般式(60)で表される構造であってよい。
【0061】
一般式(60)中、Cは親水性基を有する化合物に由来する構成単位を示し、Dは親水性基を有する化合物に由来する構成単位以外の構成単位(例えば、一般式(41)で表される構成単位)を示す。なお、−r−は、ランダム共重合体であることを示す符号である。mは親水性基を有する化合物に由来する構成単位の重合度を示し、nは親水性基を有する化合物に由来する構成単位以外の構成単位の重合度を示す。mは、20〜360、40〜250、又は80〜200であってよい。nは、0〜100、5〜50、又は10〜25であってよい。mに対するnの比(n/m)は、0以上、0.01以上、又は0.03以上であってよく、1以下、0.8以下、又は0.6以下であってよい。
【0062】
ブロック共重合体は、例えば、下記一般式(70)で表される構造を有するブロック共重合体であってよい。
【0064】
一般式(70)中、A、B、C、D、k、l、m、及びnは、上述と同義である。なお、−r−は、ランダム共重合体であることを示す符号であり、−b−は、ブロック共重合体であることを示す符号である。R
A及びR
Bは、後述のブロック共重合体を合成する際に導入される末端部分であり、例えば、後述の連鎖移動剤(CTA)の残基であり得る。連鎖移動剤(CTA)として、[1−(O−エチルザンチル)エチル]ベンゼンを使用した場合、R
Aはフェニルエチル基であり、R
Bはエトキシチオカルボニルチオ基である。また、クミルジチオベンゾエートを使用した場合、R
Aはクミル基であり、R
Bはフェニルチオカルボニルチオ基である。
【0065】
ブロック共重合体の数平均分子量は、例えば、20000〜150000、30000〜100000、又は40000〜70000であってよい。なお、数平均分子量は、以下の方法によって求めることができる。まず、一般式(50)で表される構造を有するランダム共重合体の数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値)と、
1H−NMR測定によって得られる一般式(70)で表される構造を有するブロック共重合体の組成比とから、平均重合度であるk、l、m、及びnを求める。次いで、これらの平均重合度と各成分の分子量との積を算出し、算出された積の和を求めることによって、ブロック共重合体の数平均分子量を求めることができる。
【0066】
ブロック共重合体の合成方法は、特に制限されず、公知の各種有機合成方法を使用することができる。これらの有機合成方法の中でも、金属触媒等を用いないため、金属に配位する塩基部分を有するモノマーの重合も容易に行うことができる点から、有機合成方法は、リビングラジカル重合の一種である可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT:Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer)重合法であってよい。次に、RAFT重合法を用いたブロック共重合体の合成法の一例について説明する。
【0067】
まず、第1のブロック構造を形成するための酸性基を有する化合物、疎水性基を有する化合物等の第1のモノマーを含む溶液に、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤を添加して、ラジカル重合させる。
【0068】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノプロピオン酸)、(2RS,2’RS)−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物の重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物の重合開始剤などが挙げられる。
【0069】
連鎖移動剤(RAFT剤)としては、例えば、2−シアノ−2−ベンゾジチオエート、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカルボネート、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボネート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド、クミルジチオベンゾエート、[1−(O−エチルザンチル)エチル]ベンゼン、4−トリメチルシリルベンジルジチオプロピネート等のジチオエステル化合物などが挙げられる。
【0070】
第1のモノマー、ラジカル重合開始剤、及び連鎖移動剤のモル比率は、第1のブロック構造の所望の特性に合わせて適宜設定することができるが、例えば、第1のモノマー:ラジカル重合開始剤:連鎖移動剤は、1000:0.5〜50:10〜100であってよく、1000:0.5:10であってもよい。
【0071】
上記RAFT重合によって、第1のブロック構造を形成することができる。このとき、第1のブロック構造の両端には、使用した連鎖移動剤(RAFT剤)の残基が存在している。そのため、第1のブロック構造は、第2のブロック構造を合成する際において、第1のブロック構造自体が連鎖移動剤(RAFT剤)として作用する。
【0072】
次に、第1のブロック構造を含む溶液に、第2のブロック構造を形成するための親水性基を有する化合物等の第2のモノマー及びラジカル重合開始剤を添加して、第1のブロック構造の片末端に第2のブロック構造を形成する。ラジカル重合開始剤は、第1のブロック構造を合成する際に用いたものと同様のものを使用することができる。
【0073】
第1のブロック構造、第2のモノマー、及びラジカル重合開始剤のモル比率は、ブロック共重合体の所望の特性に合わせて適宜設定することができるが、例えば、第1のブロック構造:第2のモノマー:ラジカル重合開始剤は、1:0.1〜50:0.01〜0.1であってよく、1:1:0.04であってもよい。
【0074】
以上の合成方法によって、一般式(70)で表される構造を有するブロック共重合体を得ることができる。
【0075】
本実施形態の複合体は、塩基性窒素原子を有する化合物が、ブロック共重合体に内包されている。ブロック共重合体は、自己組織化によって、塩基性の窒素原子を有する化合物及び第1のブロック構造でコア構造を形成し、第2のブロック構造でシェル構造を形成して、コアシェル型の複合体を形成することができる。
【0076】
[複合体の製造方法]
複合体の製造方法について、以下図面を参照しながら説明する。
図1は、複合体が自己組織化によって形成される様子を示す模式図である。
図1(a)は、複合体が沈殿法(1段階自己組織化法)によって形成される様子を示す模式図であり、
図1(b)は、複合体が2段階自己組織化法によって形成される様子を示す模式図である。なお、
図1は、例として、第1の有機溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)、第2の有機溶媒としてアセトニトリル、親水性溶媒として水を使用したものである。ブロック共重合体は、
図1に示すように、第1のブロック構造と第2のブロック構造とを有する直鎖状の分子である。なお、実際には、当該直鎖状の分子の両端には、R
A及びR
Bが存在するが、これらの置換基は第1のブロック構造及び第2のブロック構造に対して非常に分子量が小さいため、
図1ではこれらを省略する。
【0077】
まず、
図1(a)で示される沈殿法(1段階自己組織化法)による複合体の製造方法について説明する。
図1(a)で示される複合体の製造方法は、塩基性窒素原子を有する化合物、ブロック共重合体、及び第1の有機溶媒を含む混合液、並びに、第2の有機溶媒を準備し、混合液を第2の有機溶媒に加えて、複合体を得る工程を備えている。ブロック共重合体は、酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第1のブロック構造と、親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第2のブロック構造とを有する。複合体は、塩基性窒素原子を有する化合物が、ブロック共重合体に内包されている。
【0078】
このような複合体の製造方法では、まず、塩基性窒素原子を有する化合物、ブロック共重合体、及び第1の有機溶媒を含む混合液を準備する。ここで、第1の有機溶媒は、塩基性窒素原子を有する化合物及びブロック共重合体を溶解させることができ、後述の第2の有機溶媒と混合性を示す溶媒である。なお、ここでいう「混合性を示す」とは、第1の有機溶媒と第2の有機溶媒とが、必ずしも任意の容積比で混ざり合う必要はなく、少なくとも一部が混ざり合うものであれば足りる。
【0079】
第1の有機溶媒は、塩基性窒素原子を有する化合物及びブロック共重合体を溶解させるものであれば特に制限されない。第1の有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。これらの第1の有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1の有機溶媒は、DMSO、DMAc、DMF、及びNMPからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、DMSOであってもよい。
【0080】
第1の有機溶媒における塩基性窒素原子を有する化合物の濃度は、塩基性窒素原子を有する化合物の溶解性を考慮して適宜決定することができ、第1の有機溶媒の1mLあたり、塩基性窒素原子を有する化合物を50〜300mg溶解させることができればよく、100〜180mg溶解させることができればよい。
【0081】
第1の有機溶媒におけるブロック共重合体の濃度は、ブロック共重合体の溶解性を考慮して適宜決定することができ、第1の有機溶媒の1mLあたり、ブロック共重合体を50〜500mg溶解させることができればよく、100〜150mg溶解させることができればよい。
【0082】
第1の有機溶媒にブロック共重合体を溶解させるためには、公知の方法を特に限定されずに使用することができる。このような方法としては、例えば、第1の有機溶媒にブロック共重合体を加えた後に、撹拌したり、超音波振動を加えたりする方法が挙げられる。なお、第1の有機溶媒とブロック共重合体との混合物を加熱してもよい。
【0083】
次いで、得られた混合液を第2の有機溶媒に加えて、複合体を沈殿させる(析出させる)ことによって複合体を得ることができる。ここで、第2の有機溶媒は、第1の有機溶媒と混合性を示し、ブロック共重合体内のいずれのブロック構造とも溶解性を示さない溶媒である。得られた混合液を第2の有機溶媒に加えると、ブロック共重合体の溶解度が急激に低下し、ブロック共重合体が析出する。このときに、ブロック共重合体は、塩基性窒素原子を有する化合物を中心として、ブロック共重合体の第1のブロック構造を内側に、ブロック共重合体の第2ブロック構造を外側に向けて自己組織化し、塩基性の窒素原子を有する化合物及び第1のブロック構造でコア構造が形成され、第2のブロック構造同士で水素結合による会合体を形成して、シェル構造が形成されることが推測される。最後に、複合体を混合溶媒から分離し、乾燥させることによって、コアシェル型の複合体を得ることができる。
【0084】
第2の有機溶媒は、第1の有機溶媒と混合性を示し、ブロック共重合体内のいずれのブロック構造とも溶解性を示さない溶媒であれば特に制限されずに用いることができる。なお、第2の有機溶媒は、第1の有機溶媒とは異なるものである。第2の有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ジエチルエーテル、エチルアセテート、アセトン等が挙げられる。これらの第2の有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。第2の有機溶媒は、アセトニトリル、ジエチルエーテル、エチルアセテート、及びアセトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、アセトニトリルであってもよい。
【0085】
次いで、
図1(b)で示される2段階自己組織化法による複合体の製造方法について説明する。
図1(a)で示される複合体の製造方法は、塩基性窒素原子を有する化合物、ブロック共重合体、及び第1の有機溶媒を含む第1の混合液を準備し、第1の混合液に対して、親水性溶媒を加えて、第2の混合液を得る工程と、第2の混合液に対して、第2の有機溶媒を加えて、複合体を得る工程とを備えている。ブロック共重合体は、酸性基を有する化合物に由来する構成単位及び疎水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第1のブロック構造と、親水性基を有する化合物に由来する構成単位を含む第2のブロック構造とを有する。複合体は、塩基性窒素原子を有する化合物が、ブロック共重合体に内包されている。
【0086】
このような複合体の製造方法では、まず、塩基性窒素原子を有する化合物、ブロック共重合体、及び第1の有機溶媒を含む混合液、第2の有機溶媒、及び親水性溶媒を準備する。次いで、塩基性窒素原子を有する化合物及びブロック共重合体を含む第1の混合液に対して、親水性溶媒を加える。これによって、ブロック共重合体の複数の分子が自己組織化し、ブロック共重合体の第1のブロック構造を内側に、ブロック共重合体の第2ブロック構造を外側に向けて自己組織化して粒子(ミセル)が形成される。このとき、塩基性窒素原子を有する化合物は、ブロック共重合体の第1のブロック構造との相互作用によって第1のブロック構造の内部に内包されてコア構造を形成する。ブロック共重合体の第2ブロック構造が外側に向かうのは、親水性溶媒の割合が大きくなるためである。このようにして、ミセルを含む第2の混合液を得ることができる。
【0087】
ここで、ブロック共重合体が上記のようにミセルが形成される理由としては、3つの要素の存在が考えられる。第1には、上述のように、ブロック共重合体が親水性環境に置かれたことが考えられる。そして、第2には、第2のブロック構造に含まれるアミド基の存在が考えられる。上述の通り、アミド基は、水素結合により、複数のアミド基同士で会合することができる。このため、ミセルの形成を開始した複数のブロック共重合体は、第2のブロック構造同士で水素結合による会合体を形成して、シェル構造が形成されると考えられる。そして、第3には、第1のブロック構造同士の疎水性相互作用の存在が考えられる。第1のブロックは、疎水性であるので、親水性環境に置かれると第1のブロック同士で凝集してコア構造を形成すると考えられる。
【0088】
第1の有機溶媒及び第2の有機溶媒は、上述で例示したものと同じものを使用することができる。
【0089】
親水性溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトンなどが挙げられる。これらの親水性溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、親水性溶媒は、水又はアルコールであってよく、水又はメタノールであってもよい。
【0090】
次いで、ミセルを含む第2の混合液に対して、第2の有機溶媒を加える。これによって、ブロック共重合体の溶解度が下がり、ブロック共重合体が徐々に析出する。このときに、第2のブロック構造同士で水素結合による会合体を形成して、シェル構造が形成され、複合体が生成すると推測される。最後に、複合体を混合溶媒から分離し、乾燥させることによって、コアシェル型の複合体を得ることができる。
【0091】
本実施形態の複合体は、塩基性窒素原子を有する化合物が、ブロック共重合体に内包されている。塩基性窒素原子を有する化合物は、例えば、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として作用するが、常温(例えば、25℃)では塩基性窒素原子を有する化合物は外部に露出しないため、エポキシ樹脂の硬化剤として作用しない。一方、複合体を加熱すると、シェル構造が崩壊して、塩基性の窒素原子を有する化合物が外部に露出し、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。このような作用により、本実施形態の複合体は、エポキシ樹脂の硬化剤として、温度変化を引き金とした潜在性を有する。なお、シェル構造(第2のブロック構造)に含まれるアクリルアミド基は窒素原子を含むが、当該窒素原子は、電子吸引性基であるカルボニル基が隣接しており、塩基性を示さないため、エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得ない。本実施形態の複合体は、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤であってよい。
【0092】
ブロック共重合体における第1のブロック構造と第2のブロック構造との割合は、上述のk、l、m、及びnを用いて、(k+l):(m+n)と表すことができ、それぞれコアの厚み及びシェルの厚みに対応する。(k+l)に対して(m+n)が小さいのであれば、シェルが崩壊し易くなり、より低温でエポキシ樹脂の硬化剤として作用する。一方で、(k+l)に対して(m+n)が大きいのであれば、シェルが崩壊し難くなり、より高温でエポキシ樹脂の硬化剤として作用する。なお、(k+l)と(m+n)の比は、重合反応を行う際に、第1のブロック構造を構成する第1のモノマーと第2のブロック構造を構成する第2のモノマーのモル比を調節することによって、調整することができる。
【0093】
(k+l)と(m+n)との関係は、(k+l)/(m+n)が0.5〜3.3又は0.8〜2.2であってよい。(k+l)/(m+n)が3.3以下であると、硬化剤としての潜在性を良好に獲得できる傾向にある。
【0094】
本実施形態の複合体は、異方導電性接着剤の潜在性硬化剤として、特に有用である。
【0095】
[硬化性樹脂組成物]
一実施形態の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、上述の複合体とを含有する。通常、エポキシ樹脂と一般の硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物は、混合した直後から硬化反応が進行する。しかし、本実施形態の複合体は、硬化剤として作用する塩基性窒素原子を有する化合物が、ブロック共重合体に内包されていることから、常温(例えば、25℃)ではエポキシ樹脂の硬化反応が進行しない。
【0096】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するものであれば特に制限されず、接着剤用途の分野で使用される、エポキシ基を有するポリマー、オリゴマー、又はモノマーを用いることができる。
【0097】
エポキシ樹脂と複合体との含有割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、潜在性硬化剤が0.001〜0.1当量又は0.002〜0.05当量であってよい。なお、ここでいう「当量」とは、モル当量を意味する。
【0098】
硬化性樹脂組成物は、上述の複合体以外のその他の硬化剤を含有していてもよい。その他の硬化剤としては、例えば、フェノール類のレゾール若しくはノボラック、3級アミン化合物、酸無水物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノール類のノボラックとしては、例えば、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック等が挙げられる。
【0099】
エポキシ樹脂とその他の硬化剤との含有割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、潜在性硬化剤が0.5〜1.5当量であってよい。なお、ここでいう「当量」とは、モル当量を意味する。
【実施例】
【0100】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0101】
(製造例1−1:第1のブロック構造(P−1)の合成)
疎水性基を有する化合物としてスチレン(St)、酸性基を有する化合物として4−ビニル安息香酸(VBA)、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、連鎖移動剤(CTA)として4−トリメチルシリルベンジルジチオプロピネートを用いて、RAFT重合を行った。50mLのシュレンク管に、4−トリメチルシリルベンジルジチオプロピネート0.048g(0.16mmol)、St1.67g(16mmol)、VBA4.74g(32mmol)及び重合溶媒として1,4−ジオキサン7mLを加え、撹拌して均一溶液を得た。当該溶液に、AIBN6.6mgを加えて溶解させ、凍結脱気を行うことによって、溶液中に存在する酸素及び反応系内の酸素を除去した。凍結脱気後、70℃で24時間撹拌することによって、重合反応を行った。得られた反応溶液を、冷メタノールを用いて急冷することによって、重合反応を停止させた。反応溶液を1,4−ジオキサンを用いて希釈し、クロロホルムを用いて再沈殿精製を行い、その後、吸引ろ過によって回収した固体を8時間減圧乾燥し、さらに再沈殿精製を複数回行った。第1のブロック構造PSt−r−PVBA(P−1)を黄色の固体として収量5.80g、収率89.9%で得た。第1のブロック構造(P−1)におけるkは153であり、lは383であり、数平均分子量(Mn)は73100であった。なお、下記式において、第1のブロック構造(P−1)に記載されている「−r−」は、ランダム共重合体であることを示す符号である。
【0102】
【化14】
【0103】
(製造例1−2:第2のブロック構造の合成によるブロック共重合体(B−1)の合成)
親水性基を有する化合物としてアクリルアミド(AAm)、その他の化合物としてメタクリル酸メチル(MA)、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、連鎖移動剤(CTA)として第1のブロック構造(P−1)(数平均分子量(Mn):73100)を用いて、RAFT重合を行った。50mLシュレンク管に、第1のブロック構造(P−1)2.1g(0.029mmol)、AAm0.28g(3.90mmol)、MA0.034g(0.39mmol)及び重合溶媒としてDMSO(ジメチルスルホキシド)4.5mLを加え、撹拌して均一溶液を得た。当該溶液に、AIBNを1.2mg加えて溶解させ、凍結脱気を行うことによって、溶液中に存在する酸素及び反応系内の酸素を除去した。凍結脱気後、70℃で24時間撹拌することによって、重合反応を行った。得られた反応溶液を、冷メタノールを用いて急冷することによって、重合反応を停止させた。反応溶液を、DMSOを用いて希釈し、クロロホルムを用いて再沈殿精製を行い、その後、吸引ろ過によって回収した固体を8時間減圧乾燥し、ブロック共重合体(B−1)を収量2.34g、収率97%で得た。ブロック共重合体(B−1)におけるkは153であり、lは383であり、mは88であり、nは13であった。なお、下記式において、ブロック共重合体(B−1)に記載されている「−r−」は、ランダム共重合体であることを示す符号であり、「−b−」は、ブロック共重合体であることを示す符号である。
【0104】
【化15】
【0105】
(実施例1:2段階自己組織化法による2−フェニルイミダゾールとブロック共重合体(B−1)との複合体(C−1)の作製)
100mLナスフラスコに、ブロック共重合体(B−1)200mg及び第1の有機溶媒としてDMSO1mLを加え、撹拌して均一溶液を得た。得られた均一溶液に、塩基性窒素原子を有する化合物として2−フェニルイミダゾール(2−PhIm)200mgを加え、1時間撹拌した。撹拌後均一になった溶液に、シリンジポンプを用いて親水性溶媒として純水10mLを滴下し、室温で24時間撹拌し、第2の有機溶媒としてアセトニトリルを20mL加え、さらに24時間撹拌を行った。撹拌後、ガラスフィルターを用いてろ過し、減圧乾燥を行い、白色の固体を得た。得られた固体をアセトニトリルで洗浄し、減圧乾燥を行い、2−フェニルイミダゾールとブロック共重合体との複合体(C−1)を収率24%で得た。
【0106】
(製造例2−2:第2のブロック構造の合成によるブロック共重合体(B−2)の合成)
第1のブロック構造(P−1)の使用量を2.1gから1.5gに変更し、AAmの使用量を0.28gから0.218gに変更し、MAの使用量を0.034gから0gに変更した以外は、製造例1−2と同様にして、ブロック共重合体(B−2)を収量1.53g、収率89%で得た。ブロック共重合体(B−2)におけるkは153であり、lは383であり、mは114であり、nは0であった。
【0107】
(実施例2:2段階自己組織化法による2−フェニルイミダゾールとブロック共重合体(B−2)との複合体(C−2)の作製)
ブロック共重合体(B−1)に代えてブロック共重合体(B−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、2−フェニルイミダゾールとブロック共重合体との複合体(C−2)を収率30%で得た。
【0108】
(製造例3−1:第1のブロック構造(P−3)の合成)
4−トリメチルシリルベンジルジチオプロピネートの使用量を0.048gから0.0902gに変更し、Stの使用量を1.67gから3.13gに変更し、VBAの使用量を4.74gから8.89gに変更し、AIBNの使用量を6.6mgから12.3mgに変更し、1,4−ジオキサンの使用量を7mLから13.2mLに変更した以外は、製造例1−1と同様にして、第1のブロック構造PSt−r−PVBA(P−3)を黄色の固体として収量10.9g、収率90%で得た。第1のブロック構造(P−3)におけるkは106であり、lは214であり、数平均分子量(Mn)は42900であった。
【0109】
(製造例3−2:第2のブロック構造の合成によるブロック共重合体(B−3)の合成)
第1のブロック構造(P−1)2.1gを第1のブロック構造(P−3)1.70gに変更し、AAmの使用量を0.28gから0.403gに変更し、MAの使用量を0.034gから0.0244gに変更し、AIBNの使用量を1.2mgから1.64mgに変更し、DMSOの使用量を4.5mLから5.96mLに変更した以外は、製造例1−2と同様にして、ブロック共重合体(B−3)を収量1.48g、収率70%で得た。ブロック共重合体(B−3)におけるkは83であり、lは228であり、mは176であり、nは9であった。
【0110】
(実施例3:2段階自己組織化法による2−フェニルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−3)の作製)
50mLナスフラスコに、ブロック共重合体(B−3)101mg及び第1の有機溶媒としてDMSO0.5mLを加え、撹拌して均一溶液を得た。得られた均一溶液に、塩基性窒素原子を有する化合物として2−フェニルイミダゾール(2−PhIm)100mgを加えて撹拌した。撹拌後均一になった溶液に、シリンジポンプを用いて純水10mLを滴下し、室温で24時間撹拌し、アセトニトリルを15mL加え、さらに24時間撹拌を行った。撹拌後、メンブレンフィルター(0.2μm)を用いてろ過した。アセトニトリルで洗浄を複数回行い、ろ過後、減圧乾燥を行い、2−フェニルイミダゾールとブロック共重合体との複合体(C−3)を収率21%で得た。
【0111】
(実施例4:沈殿法による2−メチルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−4)の作製)
10mLナスフラスコに、ブロック共重合体(B−3)84.6mg及び第1の有機溶媒としてDMSO0.5mLを加え、撹拌して均一溶液を得た。得られた均一溶液に、塩基性窒素原子を有する化合物として2−メチルイミダゾール(2−MIm)85.6mgを加えて撹拌した。撹拌後均一になった溶液をアセトニトリル25mLに滴下し、17時間撹拌させた。撹拌後、メンブレンフィルター(0.2μm)を用いてろ過した。アセトニトリルで洗浄を複数回行い、ろ過後、予備乾燥し、加熱減圧乾燥(75℃)を行い、2−メチルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−4)を収量25.1mg、収率15%で得た。
【0112】
(実施例5:沈殿法による1,2−ジメチルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−5)の作製)
ブロック共重合体(B−3)の使用量を84.6mgから85.7mgに変更し、2−メチルイミダゾール(2−MIm)85.6mgを1,2−ジメチルイミダゾール(1,2−DIm)85.9mgに変更した以外は、実施例4と同様にして、1,2−ジメチルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−5)を収量36.0mg、収率21%で得た。
【0113】
(実施例6:沈殿法による1−ベンジル−2−メチルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−6)の作製)
2−メチルイミダゾール(2−MIm)85.6mgを1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(1−B−2MIm)85mgに変更した以外は、実施例4と同様にして、1,2−ジメチルイミダゾールとブロック共重合体(B−3)との複合体(C−6)を収量33.8mg、収率20%で得た。
【0114】
[評価]
1.内包率の算出
得られた実施例1〜6の複合体について、
1H−NMRを用いて、各複合体における塩基性窒素原子を有する化合物の割合(複合体に含まれる塩基性窒素原子を有する化合物/複合体)を百分率で求め、これを内包率とした。結果を表1に示す。
2.平均粒径の測定
得られた実施例1〜6の複合体について、動的光散乱法(DLS)によって、複合体の平均粒径を求めた。結果を表1に示す。
3.ガラス転移点の測定
得られた実施例1〜6の複合体5mgを用いて、窒素雰囲気下で−20℃から250℃の温度範囲で示差走査熱量測定(DSC測定)を行い、ガラス転移点Tgを測定した。結果を表1に示す。
4.潜在性硬化剤としての評価
得られた実施例1〜6の複合体を用いてエポキシ樹脂との硬化反応を検討した。ビスフェノールF型エポキシ樹脂50mg及び各実施例1〜6の複合体5mg(エポキシ樹脂に対して、10質量%)を混合し、窒素雰囲気下で、0℃から300℃の温度範囲でDSC測定を行い、硬化開始温度(Tci)、発熱ピークトップ温度(Ttop)、及び発熱エンタルピー(ΔH)を求めた。結果を表2に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
以上のとおり、本発明の複合体は、潜在性硬化剤として有用であることが示された。また、第2のブロック構造において、親水性基を有する化合物に由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む実施例1の複合体は、第2のブロック構造において、親水性基を有する化合物に由来する構成単位のみからなる実施例2の複合体に比べて、硬化開始温度(Tci)が10℃ほど低かった。これは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことによって、水素結合の密度が低くなり、凝集エンタルピーが小さくなったためであると考えられる。このことから、第2のブロック構造において、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を調整することによって、硬化開始温度(Tci)を調整することが可能となり得る。