特開2020-204058(P2020-204058A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-204058シート基材搬送装置、および、巻取り式成膜システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204058(P2020-204058A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】シート基材搬送装置、および、巻取り式成膜システム
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20201127BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20201127BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20201127BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20201127BHJP
   B65H 20/00 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   C23C14/56 D
   C23C14/02 A
   C23C16/02
   C23C16/54
   B65H20/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-111242(P2019-111242)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正樹
【テーマコード(参考)】
3F103
4K029
4K030
【Fターム(参考)】
3F103AA03
3F103EA15
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA43
4K029BC09
4K029CA02
4K029CA06
4K029DA08
4K029FA01
4K029FA06
4K029JA10
4K029KA03
4K029KA09
4K030BA42
4K030CA06
4K030CA07
4K030CA17
4K030DA02
4K030GA14
4K030KA24
4K030KA26
(57)【要約】
【課題】シート基材に付着した水分の除去効率を向上可能としたシート基材搬送装置、および、巻取り式成膜システムを提供する。
【解決手段】シート基材Sが搬送されるチャンバー11Cと、チャンバー11C内に位置して、シート基材Sに付着した水分をシート基材Sから気化させるヒーター11Hと、チャンバー11C内に位置して、チャンバー11C内の水分を捕集するクライオ機構11Crと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材が搬送されるチャンバーと、
前記チャンバー内に位置して、前記シート基材に付着した水分を前記シート基材から気化させるヒーターと、
前記チャンバー内に位置して、前記チャンバー内の水分を捕集するクライオ機構と、を備える
シート基材搬送装置。
【請求項2】
前記クライオ機構は、前記チャンバーの内面における一部分を覆う
請求項1に記載のシート基材搬送装置。
【請求項3】
前記ヒーターは、前記チャンバーの内面に向けて放射される熱を前記シート基材に向けて反射する反射部を備える
請求項1または2に記載のシート基材搬送装置。
【請求項4】
前記ヒーターは、前記シート基材を加熱する加熱部と、
前記加熱部に対して前記シート基材とは反対側に位置し、前記加熱部を冷却する冷却部と、を備える
請求項1から3のいずれか一項に記載のシート基材搬送装置。
【請求項5】
前記チャンバー内に位置して、水よりも高い蒸気圧を有したプロセスガスを用いて前記シート基材の表面に所定の処理を行うためのプラズマに前記シート基材を曝す基材処理部をさらに備える
請求項1から4のいずれか一項に記載のシート基材搬送装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のシート基材搬送装置と、
前記シート基材に透明導電膜を形成する成膜装置と、を備え、
前記シート基材搬送装置は、前記成膜装置と連通可能な状態で前記成膜装置に接続されている
巻取り式成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート基材搬送装置、および、シート基材搬送装置を備える巻取り式成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有したシート基材に対して成膜を行う巻取り式成膜システムが用いられている。巻取り式成膜システムにおいて、巻出装置、前処理装置、成膜装置、および、巻取装置が基材の搬送方向に沿って並んでいる。巻取り式成膜システムでは、基材が巻出装置から巻取装置に向けて搬送される間に、前処理装置における前処理と、成膜装置での成膜処理とが基材に対して行われる。前処理装置は、基材を加熱するヒーターを備えている。前処理装置は、ヒーターによって基材を加熱することによって、基材に付着した水分を気化させ、これによって、基材に付着した水分を基材から除去する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−65292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シート基材の加熱によってシート基材から除去された水分は、チャンバーの内面に付着する。チャンバーの内面に付着した水分は、チャンバー内の圧力やチャンバー内面の温度に起因して、チャンバーの内面から再び気化する。チャンバーの内面から気化した水分は、巻取り式成膜システム内を搬送されている基材に再び付着する場合がある。そのため、基材に付着した水分をより高い効率で除去することが望まれている。
【0005】
本発明は、シート基材に付着した水分の除去効率を向上可能としたシート基材搬送装置、および、巻取り式成膜システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのシート基材搬送装置は、シート基材が搬送されるチャンバーと、前記チャンバー内に位置して、前記シート基材に付着した水分を前記シート基材から気化させるヒーターと、前記チャンバー内に位置して、前記チャンバー内の水分を捕集するクライオ機構と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するための巻取り式成膜システムは、上記シート基材搬送装置と、前記シート基材に透明導電膜を形成する成膜装置と、を備え、前記シート基材搬送装置は、前記成膜装置と連通可能な状態で前記成膜装置に接続されている。
【0008】
上記各構成によれば、チャンバー内の水分量がクライオ機構によって減らされるため、シート基材に付着した水分を加熱のみによって除去する構成と比べて、シート基材に付着した水分の除去効率が高まる。
【0009】
上記シート基材搬送装置において、前記クライオ機構は、前記チャンバーの内面における一部分を覆ってもよい。この構成によれば、シート基材から気化した水分が付着し得るチャンバーの内面における一部分が、水分を捕集するクライオ機構で覆われる。そのため、チャンバーの内面に水分が付着することを、水分の捕集と、付着先の被覆とによって抑えることが可能になる。結果として、シート基材からの水分の除去を、より効果的に行うことが可能である。
【0010】
上記シート基材搬送装置において、前記ヒーターは、前記チャンバーの内面に向けて放射される熱を前記シート基材に向けて反射する反射部を備えてもよい。
上記シート基材搬送装置において、前記ヒーターは、前記シート基材を加熱する加熱部と、前記加熱部に対して前記シート基材とは反対側に位置し、前記加熱部を冷却する冷却部と、を備えてもよい。
【0011】
上記各構成によれば、チャンバーの内面に付着した水分や、クライオ機構が捕集した水分がヒーターの熱によって再度気化することが抑えられる。
【0012】
上記シート基材搬送装置において、前記チャンバー内に位置して、水よりも高い蒸気圧を有したプロセスガスを用いて前記シート基材の表面に所定の処理を行うためのプラズマに前記シート基材を曝す基材処理部をさらに備えてもよい。
【0013】
上記構成によれば、水よりも高い蒸気圧を有するアルゴン、窒素、酸素などのプロセスガスを用いるため、水分の捕集を行いつつも、プロセスガスから生成されるプラズマを用いた処理を行うことが可能ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の巻取り式成膜システムにおける構成を模式的に示すシステム構成図。
図2図1が示す巻取り式成膜装置が備える巻出装置の構成を模式的に示す装置構成図。
図3図2が示す巻出装置が備えるヒーターの第1例をシート基材とともに模式的に示すブロック図。
図4図2が示す巻出装置が備えるヒーターの第2例をシート基材とともに模式的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図4を参照して、シート基材搬送装置、および、巻取り式成膜システムの一実施形態を説明する。以下では、シート基材搬送装置を含む巻取り式成膜システムの構成、および、シート基材搬送装置が備えるヒーターの構成を説明する。
【0016】
[巻取り式成膜システムの構成]
図1および図2を参照して、巻取り式成膜システムの構成を説明する。
図1が示すように、巻取り式成膜システム10(以下、成膜システム10とも称する)は、シート基材搬送装置の一例である巻出装置11、成膜装置12、および、巻取装置13を備えている。これらの処理装置は、シート基材Sの搬送方向に沿って記載の順に並んでいる。巻出装置11は、成膜装置12と連通可能な状態で成膜装置12に接続されている。巻取装置13は、成膜装置12と連通可能な状態で成膜装置12に接続されている。
【0017】
シート基材Sは、可撓性を有している。シート基材Sは、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。シート基材Sが単層構造を有する場合には、シート基材Sは、例えば、各種の合成樹脂またはガラスによって形成されてよい。シート基材Sが多層構造を有する場合には、シート基材Sは、先に説明した合成樹脂またはガラスによって形成された基板と、基板上に形成された薄膜とを含むことができる。
【0018】
成膜システム10は、シート基材Sの搬送に関わるローラーとして、巻出ローラー21、巻取ローラー22、成膜ローラー23、および、複数の搬送ローラー24を備えている。巻出ローラー21は、巻出装置11に位置し、シート基材Sのなかで成膜前の部分を巻き出す。巻取ローラー22は、巻取装置13に位置し、シート基材Sのなかで成膜後の部分を巻き取る。成膜ローラー23は、成膜装置12に位置し、シート基材Sのなかで薄膜が形成されている部分を搬送する。複数の搬送ローラー24は、巻出装置11に位置するローラー群、成膜装置12に位置するローラー群、および、巻取装置13に位置するローラー群を含んでいる。シート基材Sは、これらのローラーによって所定の張力が加えられた状態で、図1に示される矢印に沿って、巻出装置11から巻取装置13に向けて搬送される。
【0019】
各処理室には、その処理室内の気体を排気するための排気部11V,12V,13V,が搭載されている。各排気部11V,12V,13Vは、その排気部11V,12V,13Vが搭載された処理室内の圧力を所定の圧力に減圧する。
【0020】
成膜装置12は、成膜ローラー23に対向する1つの成膜源DSを有している。成膜装置12は、複数の成膜源DSを備えてもよい。なお、成膜システム10がスパッタシステムとして具体化される場合には、成膜源DSはカソードである。また、成膜システム10が蒸着システムとして具体化される場合には、成膜源DSは蒸着源である。
【0021】
成膜装置12は、成膜装置12が有する成膜源DSに応じて、成膜装置12内に所定のガスを供給するガス供給部をさらに備えることができる。例えば、成膜システム10がスパッタシステムであり、かつ、成膜源DSがカソードである場合には、ガス供給部は、成膜装置12でのプラズマの生成に用いられるスパッタガスを成膜装置12内に供給する。スパッタガスは、カソードが備えるターゲットに衝突して、ターゲットからスパッタ粒子を放出させるイオンを生成するためのガスを含む。こうしたガスは、例えば、アルゴンガスなどの希ガスであってよい。スパッタガスは、成膜装置12内においてスパッタ粒子と反応することが可能な活性種を生成するためのガスを含んでもよい。こうしたガスは、例えば酸素を含むガスなどであってよい。
【0022】
なお、成膜システム10は、上述した処理装置以外の処理装置を備えてもよい。例えば、成膜システム10は、搬送方向における成膜装置12と巻取装置13との間に、後処理装置を備えることが可能である。後処理装置は、例えば、シート基材Sのなかで、成膜装置12において薄膜が形成された部分を冷却または加熱する。
【0023】
図2は、成膜システム10が備える巻出装置11の構成を図1よりも詳しく示している。
図2が示すように、巻出装置11は、チャンバー11Cと、ヒーター11Hと、クライオ機構11Crとを備えている。チャンバー11C内において、シート基材Sが搬送される。巻出装置11は、上述した巻出ローラー21、および、搬送ローラー24の一部をチャンバー11C内に有している。
【0024】
ヒーター11Hは、チャンバー11C内に位置して、シート基材Sに付着した水分をシート基材Sから気化させる。図2が示す例では、巻出装置11は、2つのヒーター11Hを備えている。なお、ヒーター11Hの数は2に限定されず、巻出装置11は、1つ以上のヒーター11Hを備えていればよい。各ヒーター11Hは、シート基材Sの搬送経路の途中であって、かつ、互いに異なる位置に配置されている。各ヒーター11Hは、シート基材Sの厚さ方向において、シート基材Sを挟む形状を有している。
【0025】
クライオ機構11Crは、チャンバー11C内に位置して、チャンバー11C内の水分を捕集する。クライオ機構11Crは、クライオコイルであってもよいし、クライオパネルであってもよいし、クライオコイルとクライオパネルとの両方を含んでもよい。クライオコイルは、金属製の管がコイル状に巻かれた形状を有し、コイルの両端部が、極低温の冷却装置に接続されている。これによって、クライオコイルは、コイル状の外表面にチャンバー11C内の水分を捕集する。クライオパネルは、金属製の板部材である。クライオパネルは、熱伝導性の高い部材によってクライオポンプに接続され、これによって、極低温に冷却される。そのため、クライオパネルは、当該クライオパネルの表面にチャンバー11C内の水分を捕集することができる。
【0026】
巻出装置11によれば、クライオ機構11Crがチャンバー11C内の水分を捕集するため、チャンバー11C内の水分量がクライオ機構11Crによって減らされる。これにより、ヒーター11Hの加熱によってシート基材Sから一旦除去された水分などが再びシート基材Sに付着することが抑えられる。結果として、シート基材Sに付着した水分を加熱のみによって除去する構成と比べて、シート基材Sに付着した水分の除去効率が高まる。
【0027】
チャンバー11Cにおいて、チャンバー11Cの内面11CSが、シート基材Sが搬送される空間を区画している。クライオ機構11Crは、チャンバー11Cの内面11CSにおける一部分を覆うことが好ましい。この場合には、シート基材Sから気化した水分が付着し得るチャンバー11Cの内面11CSにおける一部分が、水分を捕集するクライオ機構11Crで覆われる。そのため、チャンバー11Cの内面11CSに水分が付着することを、水分の捕集と、付着先の被覆とによって抑えることが可能になる。結果として、シート基材Sからの水分の除去を、より効果的に行うことが可能である。なお、チャンバー11Cの内面11CSにおける一部分を覆うためには、クライオ機構11Crは、クライオパネルを備えることが好ましい。
【0028】
[ヒーターの構成]
図3および図4を参照して、ヒーター11Hの構成を説明する。以下では、図3を参照してヒーター11Hの第1例における構成を説明し、図4を参照してヒーター11Hの第2例における構成を説明する。
【0029】
[第1例]
図3が示すように、ヒーター11Hは、一対の加熱部11H1、一対の均熱部11H2、および、一対の反射部11H3を備えている。一対の加熱部11H1は、シート基材Sに対向し、シート基材Sの厚さ方向において、シート基材Sを挟んでいる。各加熱部11H1は、例えばシースヒーターである。加熱部11H1は、例えば、電流の供給によって発熱する発熱線と、発熱線を覆う金属製の被覆部とを備えている。発熱線は、シート基材Sの幅方向に沿って延び、かつ、シート基材Sの幅方向における一方の端部と他方の端部とにおいて交互に折れ曲がる形状を有している。これにより、加熱部11H1は、発熱線が沿う平面によってシート基材Sを加熱する加熱面を形成することができる。加熱部11H1は、例えば、80℃以上120℃以下の温度にシート基材Sを加熱する。
【0030】
一対の均熱部11H2は、シート基材Sの厚さ方向において、シート基材Sを挟んでいる。また、一対の均熱部11H2は、一対の加熱部11H1よりもシート基材S寄りに位置し、かつ、各均熱部11H2は、互いに異なる1つの加熱部11H1に接している。均熱部11H2は、加熱部11H1が広がる平面において、加熱部11H1から放出される熱量のばらつきを抑え、これによって、シート基材Sの面内における熱勾配を抑える。均熱部11H2は、例えば、シート基材Sが広がる平面と平行な面に沿って広がる板状を有している。
【0031】
一対の反射部11H3は、シート基材Sの厚さ方向において、一対の加熱部11H1を挟んでいる。各反射部11H3は、加熱部11H1からチャンバー11Cの内面11CSに向けて放射される熱をシート基材Sに向けて反射する。反射部11H3は、例えば、均熱部11H2が広がる平面と平行な面に沿って広がる板状を有している。この場合には、反射部11H3は、均熱部11H2よりも大きく、これによって、反射部11H3から均熱部11H2に向かう方向からみて、均熱部11H2の全体を隠すことが好ましい。
【0032】
ヒーター11Hの第1例によれば、ヒーター11Hが反射部11H3を備えることによって、チャンバー11Cの内面11CSに付着した水分や、クライオ機構11Crが捕集した水分が、ヒーター11Hの熱によって再度気化することが抑えられる。
【0033】
[第2例]
図4が示すように、ヒーター11Hは、第1例のヒーター11Hが備える反射部11H3に代えて、一対の冷却部11H4を備えてもよい。一対の冷却部11H4は、シート基材Sの厚さ方向において一対の加熱部11H1を挟み、加熱部11H1を冷却する。各冷却部11H4は、冷却板H4aと、冷却板H4aを冷却する冷媒通路H4bとから形成される。冷却板H4aは、例えば、均熱部11H2が広がる平面と平行な面に沿って広がる板状を有している。この場合には、冷却板H4aは、均熱部11H2よりも大きく、これによって、冷却板H4aから均熱部11H2に向かう方向から見て、均熱部11H2の全体を隠すことが好ましい。冷媒通路H4bは、冷却水や液状の有機化合物が循環されることによって、冷却板H4aを冷却する。
【0034】
ヒーター11Hの第2例によれば、ヒーター11Hが冷却部11H4を備えることによって、チャンバー11Cの内面11CSに付着した水分や、クライオ機構11Crが捕集した水分がヒーター11Hの熱によって再度気化することが抑えられる。
【0035】
なお、反射部11H3および冷却部11H4は、加熱部11H1および均熱部11H2によって形成される加熱面から放射される熱、すなわち電磁波または光子がクライオ機構11Crに直接入射しないように、チャンバー11C内において、熱を遮蔽する位置に配置されることがより好ましい。これにより、ヒーター11Hとクライオ機構11Crとの間における熱抵抗が上昇し、加熱と冷却との効率が高められる。結果として、シート基材Sに付着した水分の除去効率がさらに向上する。また、上述した熱を遮蔽する部材は、反射部11H3または冷却部11H4と一体である必要はなく、別部材によって構成されてもよい。
【0036】
以上説明したように、シート基材搬送装置、および、巻取り式成膜装置の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)チャンバー11C内の水分量がクライオ機構11Crによって減らされる。これにより、シート基材Sに付着した水分を加熱のみによって除去する構成と比べて、シート基材Sに付着した水分の除去効率が高まる。
【0037】
(2)クライオ機構11Crがチャンバー11Cの内面11CSにおける一部分を覆う場合には、チャンバー11Cの内面11CSに水分が付着することを、水分の捕集と、付着先の被覆とによって抑えることが可能になる。結果として、シート基材Sからの水分の除去を、より効果的に行うことが可能である。
【0038】
(3)ヒーター11Hが反射部11H3を備えることによって、チャンバー11Cの内面11CSに付着した水分や、クライオ機構11Crが捕集した水分が、ヒーター11Hの熱によって再度気化することが抑えられる。
【0039】
(4)ヒーター11Hが冷却部11H4を備えることによって、チャンバー11Cの内面11CSに付着した水分や、クライオ機構11Crが捕集した水分がヒーター11Hの熱によって再度気化することが抑えられる。
【0040】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[ヒーター]
・ヒーター11Hは、加熱部11H1および均熱部11H2を一対ずつ備え、また、反射部11H3または冷却部11H4を一対備えている。これを変更して、ヒーター11Hは、1つの加熱部11H1、1つの均熱部11H2、および、1つの反射部11H3または1つの冷却部11H4から構成される組を1つのみ備えてもよい。この場合には、シート基材Sの一方の面に対して、均熱部11H2、加熱部11H1、および、反射部11H3または冷却部11H4が記載の順に並んでいる。
【0041】
・ヒーター11Hは、反射部11H3および冷却部11H4の両方を備えてもよい。この場合には、一対の反射部11H3、および、一対の冷却部11H4の一方が、他方よりも加熱部11H1寄りに位置してよい。この場合には、反射部11H3と冷却部11H4との両方によって、ヒーター11Hから放出された熱がチャンバー11Cの内面11CSやクライオ機構11Crに到達することが抑えられる。結果として、チャンバー11Cの内面11CSに付着した水分や、クライオ機構11Crが捕集した水分が、ヒーター11Hの熱によって再度気化することがさらに抑えられる。
【0042】
・ヒーター11Hは、均熱部11H2を備えていなくてもよい。この場合であっても、加熱部11H1によってシート基材Sを加熱することは可能であることから、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0043】
・ヒーター11Hは、反射部11H3を備えていなくてもよい。また、ヒーター11Hは、冷却部11H4を備えていなくてもよい。この場合であっても、巻出装置11が、ヒーター11Hとクライオ機構11Crとをチャンバー11C内に備えることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0044】
[クライオ機構]
・クライオ機構11Crは、チャンバー11Cの内面11CSを覆っていなくてもよい。クライオ機構11Crがクライオコイルである場合には、クライオ機構11Crは、チャンバー11Cの内面11CSを覆わないこともある。この場合であっても、クライオ機構11Crによって、シート基材Sから気化した水分が捕集されるため、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0045】
[シート基材搬送装置]
・シート基材搬送装置は、巻出装置11ではなく、成膜装置12として具体化されてもよい。そして、成膜装置12は、上述したように、成膜源DSとしてカソードを備えることが可能である。こうした成膜装置12は、チャンバー11C内に位置して、水よりも高い蒸気圧を有したプロセスガスを用いてシート基材Sの表面に所定の処理を行うためのプラズマにシート基材Sを曝す基材処理部の一例としてカソードを備える。また、カソードは、透明導電性酸化物から形成される透明導電膜を形成するように構成されてよい。
【0046】
これにより、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)水よりも高い蒸気圧を有するアルゴン、窒素、および、酸素などのプロセスガスを用いるため、水分の捕集を行いつつも、プロセスガスから生成されるプラズマを用いた処理を行うことが可能ともなる。
【符号の説明】
【0047】
10…巻取り式成膜システム、11…巻出装置、11C…チャンバー、11Cr…クライオ機構、11CS…内面、11H…ヒーター、11H1…加熱部、11H2…均熱部、11H3…反射部、11H4…冷却部、11V,12V,13V…排気部、12…成膜装置、13…巻取装置、21…巻出ローラー、22…巻取ローラー、23…成膜ローラー、24…搬送ローラー、DS…成膜源、H4a…冷却板、H4b…冷媒通路、S…シート基材。
図1
図2
図3
図4