特開2020-204067(P2020-204067A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧
<>
  • 特開2020204067-スパッタリング装置及び成膜方法 図000003
  • 特開2020204067-スパッタリング装置及び成膜方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204067(P2020-204067A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20201127BHJP
【FI】
   C23C14/35 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-111604(P2019-111604)
(22)【出願日】2019年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】石橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】新井 真
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA50
4K029CA05
4K029DC16
4K029DC46
(57)【要約】
【課題】基板全面に亘って膜質分布の面内均一性よく所定の薄膜を成膜できるスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】真空成膜室10内に、スパッタ面51に平行な面内を基板Swに対してターゲットTgを相対移動させる移動手段4を有し、スパッタ面を基板が通過する間に所定の薄膜を成膜するスパッタリング装置は、ターゲットのスパッタ面側を上方として、スパッタ面の下方に配置されて、スパッタ面の上方に漏洩磁場を作用させて局所的なプラズマの発生を可能とする磁石ユニットMgと、磁石ユニットを往復動させる駆動手段7とを更に備え、駆動手段が、スパッタ面を基板が通過する間に磁石ユニットを往復させ、移動手段が、基板に対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度Vが同等になるように、ターゲットの移動速度VTgを磁石ユニットが往動する場合と磁石ユニットが復動する場合とで互いに変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットが配置される真空成膜室を備え、ターゲットのスパッタ面の一方向をX軸方向とし、真空成膜室内に設けられて、スパッタ面に平行な面内を基板に対してX軸方向前方にターゲットを相対移動させる移動手段を有し、スパッタ面が基板を通過する間に所定の薄膜を成膜するスパッタリング装置であって、
ターゲットのスパッタ面側を上方として、スパッタ面の下方に配置されて、スパッタ面の上方に漏洩磁場を作用させて局所的なプラズマの発生を可能とする磁石ユニットと、X軸方向に所定ストロークで磁石ユニットを往復動させる駆動手段とを更に備えるものにおいて、
駆動手段が、スパッタ面を基板が通過する間に磁石ユニットを少なくとも一往復させ、移動手段が、基板に対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度が同等になるように、ターゲットまたは基板の移動速度を磁石ユニットがX軸方向前方に往動する場合と磁石ユニットがX軸方向後方に復動する場合とで互いに変化させることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
ターゲットが配置される真空成膜室内で、ターゲットのスパッタ面の一方向をX軸方向とし、スパッタ面に平行な面内を基板に対してX軸方向前方にターゲットを相対移動させ、スパッタ面が基板を通過する間に所定の薄膜を成膜する成膜方法であって、
ターゲットのスパッタ面側を上方として、スパッタ面の上方に漏洩磁場を作用させて局所的にプラズマを発生させると共に、このプラズマ発生領域をX軸方向前後に往復動させるものにおいて、
スパッタ面を基板が通過する間にプラズマ発生領域を少なくとも一往復させると共に、基板に対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度が同等になるように、ターゲットまたは基板の移動速度をプラズマ発生領域がX軸方向前方に往動する場合とプラズマ発生領域がX軸方向後方に復動する場合とで互いに変化させる工程を含むことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットが配置される真空成膜室を備え、ターゲットのスパッタ面の一方向をX軸方向とし、真空成膜室内に設けられて、スパッタ面に平行な面内をターゲットに対してX軸方向前方に基板を相対移動させ、スパッタ面を基板が通過する間に所定の薄膜を成膜するスパッタリング装置に関する。
【0002】
上記種のスパッタリング装置は、比較的大面積の基板に対してITOやIGZOなどの透明電極膜を成膜するのに利用されている。このものは、固定配置される基板に対してターゲットをX軸方向前方に等速で移動させる移動手段を備える。また、ターゲットのスパッタ面側を上方として、スパッタ面の下方に配置されて、スパッタ面の上方に漏洩磁場を作用させて局所的なプラズマの発生を可能とする磁石ユニットと、X軸方向に所定ストロークで磁石ユニットを往復動させる駆動手段とを更に備える(例えば特許文献1)。駆動手段は、通常、ターゲットの移動に伴ってそのスパッタ面が基板面内を通過する間に、スパッタ面に対するプラズマ発生領域がX軸方向前後に往復するように、磁石ユニットを一定の速度で往復動させている。
【0003】
上記従来例のスパッタリング装置を用いれば、基板面内における膜厚分布の均一性よく所定の薄膜が成膜される。一方で、ITO膜やIGZO膜といった透明電極膜を成膜した場合、この成膜した透明電極膜の特性をμ−PCD(Microwave Photo Conductivity Decay)法で評価すると、一定の周期で波打つようなむらが残る(即ち、膜質分布の面内均一性が悪い)ことが判明した。
【0004】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ね、基板面内の膜質のむらは、基板に対するプラズマ発生領域の相対移動速度の変化に起因することを知見するのに至った。即ち、ターゲットの移動に伴ってそのスパッタ面が基板面内を通過する間に、基板に対するプラズマ発生領域の相対移動速度をみると、ターゲットと磁石ユニットとがX軸方向前方に夫々移動しているときには、磁石ユニットの移動速度に応じてプラズマ発生領域がX軸方向前方に移動することになる。他方、磁石ユニットがX軸方向後方に向けて移動しているときには、磁石ユニットの移動速度だけプラズマ発生領域の相対移動速度が遅くなる。その結果、磁石ユニットの移動方向によって、基板に対するプラズマ発生領域の通過時間が変化し、これに起因して基板面内に温度分布が生じることで膜質分布の面内均一性が悪くなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5921840号公報
【特許文献2】特開2016−029709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、基板全面に亘って膜質分布の面内均一性よく所定の薄膜を成膜できるスパッタリング装置及び成膜方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、ターゲットが配置される真空成膜室を備え、ターゲットのスパッタ面の一方向をX軸方向とし、真空成膜室内に設けられて、スパッタ面に平行な面内を基板に対してX軸方向前方にターゲットを相対移動させる移動手段を有し、スパッタ面が基板を通過する間に所定の薄膜を成膜する本発明のスパッタリング装置は、ターゲットのスパッタ面側を上方として、スパッタ面の下方に配置されて、スパッタ面の上方に漏洩磁場を作用させて局所的なプラズマの発生を可能とする磁石ユニットと、X軸方向に所定ストロークで磁石ユニットを往復動させる駆動手段とを更に備え、駆動手段が、スパッタ面を基板が通過する間に磁石ユニットを少なくとも一往復させ、移動手段が、基板に対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度が同等になるように、ターゲットまたは基板の移動速度を磁石ユニットがX軸方向前方に往動する場合と磁石ユニットがX軸方向後方に復動する場合とで互いに変化させることを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、 ターゲットが配置される真空成膜室内で、ターゲットのスパッタ面の一方向をX軸方向とし、スパッタ面に平行な面内を基板に対してX軸方向前方にターゲットを相対移動させ、スパッタ面が基板を通過する間に所定の薄膜を成膜する本発明の成膜方法は、ターゲットのスパッタ面側を上方として、スパッタ面の上方に漏洩磁場を作用させて局所的にプラズマを発生させると共に、このプラズマ発生領域をX軸方向前後に往復動させ、スパッタ面を基板が通過する間にプラズマ発生領域を少なくとも一往復させると共に、基板に対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度が同等になるように、ターゲットまたは基板の移動速度をプラズマ発生領域がX軸方向前方に往動する場合とプラズマ発生領域がX軸方向後方に復動する場合とで互いに変化させる工程を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、基板を固定配置し、基板に対してターゲットが移動する場合を例に説明すると、ターゲットがX軸方向前方に移動して基板面内を通過する際、磁石ユニットがX軸方向前後に少なくとも一往復動する。この場合、磁石ユニットが往動するときには、磁石ユニットの移動速度に応じてプラズマ発生領域がX軸方向前方に移動する。他方、磁石ユニットがX軸方向後方に向けて移動しているときには、移動手段がターゲットの移動速度を変化、即ち、ターゲットのX軸方向前方への移動速度を速くする。これにより、ターゲットの移動に伴ってそのスパッタ面が基板面内を通過する間におけるプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度が略同等、つまり、基板に対するプラズマ発生領域の通過時間が一定となる。結果として、ターゲットのスパッタ面が基板面内を通過するときの基板面内の温度分布が可及的に小さくなり、基板全面に亘って膜質分布の面内均一性よく所定の薄膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のスパッタリング装置の構成を説明する模式断面図。
図2図1に示すターゲット及び磁石ユニットの移動速度並びに基板に対するプラズマ発生領域の相対移動速度を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、基板Swを矩形のガラス基板とし、基板Swの一方の面に所定の薄膜を成膜するものを例に本発明の実施形態のスパッタリング装置について説明する。以下においては、ターゲットから基板Swに向かう方向を上とし、ターゲットが移動する方向をX軸方向前方とし、上、下、左、右といった方向を示す用語は、図1を基準とする。
【0012】
図1を参照して、スパッタリング装置SMは、所謂ムービングカソード式のものであり、真空成膜室10を画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、排気管21を介してロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ2が接続され、真空成膜室10を所定圧力に真空排気できるようにしている。真空チャンバ1にはまた、ガス導入手段3が設けられている。ガス導入手段3は、真空チャンバ1内のガス導入部31に接続されるガス管32を有し、ガス管32にはマスフローコントローラ33が介設され、流量制御されたスパッタガス(酸素等の反応ガスを含む場合もある)が真空成膜室10に導入されるようになっている。なお、スパッタガスの導入位置は、これに限定されるものではなく、後述する2枚のターゲットTg相互の間や、各ターゲットのX軸方向両側から導入することもできる。
【0013】
真空成膜室10の上部空間には、図示省略の基板保持手段により、基板Swがその下面(成膜面)を開放して保持されている。基板保持手段としては公知ものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。そして、真空成膜室10の下部空間には、カソードユニットCuが設けられている。
【0014】
カソードユニットCuは、基板Swに平行な同一平面内でX軸方向に並設される2枚のターゲットTgと、後述のケース54内に設けられる磁石ユニットMgとを備える。また、カソードユニットCuには、後述の移動手段4が設けられ、真空成膜室10内でX軸方向前方に所定速度で移動して、基板Swの成膜面を通過するようになっている。
【0015】
各ターゲットTgとしては、ITO、IGZO等、基板Sw表面に成膜しようとする薄膜の組成に応じて公知の方法で同一形状(本実施形態では、平面視矩形の略直方体)に作製されている。なお、ターゲットを並設する数は、上記に限定されるものではなく、成膜しようとする薄膜の膜厚や成膜時間等に応じて適宜設定される。
【0016】
各ターゲットTgの下面にはバッキングプレート52が接合され、各ターゲットTgのスパッタリング時、バッキングプレート52に冷媒を循環させて各ターゲットTgを冷却できるようにしている。各ターゲットTgは、バッキングプレート52を介して、単一の支持板53で互いに電気的に絶縁した状態で夫々支持されている。各ターゲットTgには、交流電源Asからの出力Aoがバッキングプレート52を介して、夫々接続されている。なお、交流電源自体は公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0017】
支持板53の下面には容器状のケース54が取り付けられ、ケース54内には、磁石ユニットMgが各ターゲットTgの下方に位置するように夫々設けられている。各磁石ユニットMgは、各ターゲットTgに平行に設けられた磁性材料製の支持板(ヨーク)61を有する。支持板61には、その中央部で線状に配置される中央磁石62と、支持板61の外周に沿って配置される周辺磁石63とが上側の極性を変えて設けられ、各ターゲットTgのスパッタ面51の上方に釣り合った閉ループのトンネル状の漏洩磁場が形成されるようになっている。各磁石ユニットMgは、モータやエアーシリンダ等の駆動手段7の駆動軸71に夫々一体に連結され、X軸方向に所定のストロークで平行かつ等速で磁石ユニットMgを一体に往復動できるようにしている。
【0018】
また、移動手段4は、基板Swと同一平面のX軸方向に直線状に設けられた搬送路41と、搬送路41に沿ってカソードユニットCuを移動させるモータ等の駆動手段42とを備える。搬送路41の上部には、駆動手段42の駆動軸42aに連結されて、搬送路41上をX軸方向に移動(往復動)自在な可動部43が設けられている。可動部43には、カソードユニットCuのケース54の下面が連結され、ターゲットTgのスパッタ面51を基板Swに対向させた状態で、カソードユニットCuをX軸方向に所定のストロークで往復動できるようにしている。
【0019】
スパッタリング装置SMは、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた図示省略の制御手段を有し、各駆動手段7,42の制御のほか、真空ポンプ2、マスフローコントローラ33、交流電源Asの稼働が統括制御される。以下に、図2も参照して、上記スパッタリング装置SMを用いた本実施形態の成膜方法について説明する。
【0020】
基板Swを基板保持手段にセットした後、真空ポンプ2により真空成膜室10内を真空排気する。真空成膜室10内の圧力が所定圧力(例えば、10−5Pa)に達すると、ガス導入手段3を介してスパッタガス(酸素等の反応ガスを含む)を所定流量で導入し、各ターゲットTgに対してスパッタ電源Asから所定の電力を投入する。これにより、各ターゲットTgのスパッタ面51の上方の空間に局所的なプラズマが形成され、プラズマ中のスパッタガスのイオンで各ターゲットTgがスパッタリングされる。そして、磁石ユニットMgとカソードユニットCu(即ち、ターゲットTg)を夫々往復動させて、ターゲットTgのスパッタ面51が基板Swの成膜面を通過する間に、各ターゲットTgから飛散するスパッタ粒子が基板Swに付着、堆積して基板Sw表面(下面)に薄膜が成膜される。
【0021】
ここで、図2(a)に示すように、ターゲットTgの移動速度VTgを一定速度v、磁石ユニットMgの移動速度VMgを所定速度vに設定し、基板Sw表面に透明電極膜を成膜すると、基板に対するプラズマ発生領域の相対移動速度Vは、ターゲットTgと磁石ユニットMgとがX軸方向前方に夫々移動するときには、ターゲットTgの移動速度VTgである速度vより磁石ユニットMgの移動速度VMgであるvだけ速くなり、磁石ユニットMgがX軸方向後方に向けて移動する(即ち、磁石ユニットMgの移動速度VMgは−vになる)ときには、磁石ユニットMgの移動速度VMgであるvだけ遅くなり、一定の周期(即ち、磁石ユニットMgが往復動する周期)で変化する。その結果、基板Swに対するプラズマ発生領域の相対移動速度Vの変化に起因して、成膜した透明電極膜の特性に一定の周期で波打つようなむらが残る。
【0022】
そこで、本実施形態では、基板Swに対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度Vが同等になるように、ターゲットTgの移動速度VTgをプラズマ発生領域がX軸方向前方に往動する場合とプラズマ発生領域がX軸方向後方に復動する場合とで互いに変化させるようにした。具体的には、図2(b)に示すように、磁石ユニットMgがX軸方向後方に向けて復動するときには、移動手段4がターゲットTgの移動速度VTgであるvより磁石ユニットMgの移動速度VMgの2倍の速度である2vだけ速くする。これにより、基板に対するプラズマ発生領域の相対移動速度Vはvで略同等になり、基板Swに対してプラズマが等速で移動するようになる。
【0023】
以上の実施形態によれば、基板Swに対するプラズマ発生領域の通過時間が一定となることで、ターゲットTgのスパッタ面51が基板Sw面内を通過するときの基板面内の温度分布が可及的に小さくなり、基板全面に亘って膜質分布の面内均一性よく所定の薄膜を成膜することができる。
【0024】
次に、以上の効果を確認するため、図1に示すスパッタリング装置SMを用い、以下の実験を行った。本実験では、基板Swは1850×1500mmのガラス基板とし、ターゲットTgとして、インジウムとガリウムと亜鉛とを含む焼結体で2300mm×200mm×厚さ10mmの平面視略長方形に成形したものを用いた。成膜条件として、真空成膜室10内の圧力が0.3Paに保持されるように、Arガスを430sccmで導入した。また、交流電源Asから各ターゲットTgに40kWの交流電力を投入して、各ターゲットTgをスパッタリングした。このとき、磁石ユニットMgのストロークを70mmとし、磁石ユニットMgを15mm/secの移動速度VMgで往復動させた。また、ターゲットTgのストロークを2300mmとし、ターゲットTgの通常の移動速度VTgを500mm/sec、磁石ユニットMgがX軸方向後方に復動するときの移動速度を、磁石ユニットMgの移動速度VMgの2倍の速度だけ速い530mm/secとした。そして、基板Sw表面に所定の膜厚でIGZO膜を成膜した後、成膜した基板Sw表面の特性をμ−PCD法により評価した。なお、μ−PCD法の測定条件は、一般的に用いられるもの(例えば特許文献2参照)を利用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
これによれば、μ−PCD法で測定した基板Sw横方向(X軸方向)の膜質分布は、±2.0%以下であることが確認された。なお、比較実験として、上記スパッタリング装置SMを用い、ターゲットTgを500mm/secの等速で往復動させる点を除いて、上記と同条件で成膜したところ、μ−PCD法で測定した基板Sw横方向(X軸方向)の膜質分布は、±3.0%であった。以上の結果から、本発明のスパッタリング装置及び成膜方法によれば、基板全面に亘って膜質分布の面内均一性よくIGZO膜を成膜できることが判る。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、磁石ユニットMgがX軸方向後方に復動するときのターゲットTgの速度VTgを、磁石ユニットMgの移動速度VMgの2倍の速度2vだけ速くしたが、これに限定されるものではない。例えば、図2(c)に示すように、ターゲットTgと磁石ユニットMgとがX軸方向前方に夫々移動するときには、ターゲットTgの速度VTgを磁石ユニットMgの移動速度VMgであるvだけ遅くし、磁石ユニットMgがX軸方向後方に復動するときには、磁石ユニットMgの移動速度VMgであるvだけ速くするようにしてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、ターゲットTgを基板Swに対して往復動させるものを例に説明したが、基板Sw及びターゲットTgの両方、または基板Swのみを移動させて、ターゲットTgのスパッタ面51が基板Swを通過するようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、所謂デポアップ方式(基板Sw成膜面が下向き)にて成膜するものを例に説明したが、デポダウン方式(基板Sw成膜面が上向き)やデポサイド方式(基板Sw成膜面が横向き)で成膜するスパッタリング装置に適用することもできる。上記実施形態ではまた、各ターゲットTgに交流電源Asの出力Aoを接続して、ターゲットTg間に交流電力を投入するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、ターゲットTg毎に直流電源やパルス電源を接続して電力投入することができ、また、バイポーラ―電源等のマグネトロンスパッタ用電源全般を用いることもできる。
【符号の説明】
【0029】
Sw…基板、Tg…ターゲット、Mg…磁石ユニット、V…基板に対するプラズマ発生領域のX軸方向前方への相対移動速度、VTg…ターゲットの移動速度、10…真空成膜室、4…移動手段、51…スパッタ面、7…駆動手段。
図1
図2