【課題】露光光が波長248nmのKrFエキシマレーザーである場合にも、パターンの微細化に対応できる位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を確保した上で、パターン形成や三次元効果の低減などにおいて有利な、膜厚が薄く面内均一性の高い位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクを提供する。
【解決手段】透明基板10上に、ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない材料で形成された位相シフト膜1を有し、露光光がKrFエキシマレーザー光であり、位相シフト膜が、組成が厚さ方向に連続的に変化し、かつ露光光に対する屈折率n及び消衰係数kが厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層を1層以上含むように構成され、組成傾斜層中の屈折率の最大値n(H)と最小値n(L)との差が0.40以下、かつ組成傾斜層中の消衰係数の最大値k(H)と最小値k(L)との差が1.5以下である位相シフトマスクブランク100。
  上記組成傾斜層において、上記n(L)が2.3以上、上記k(H)が2以下であり、かつ屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下である範囲の厚さが5nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
  上記組成傾斜層が、ケイ素と窒素の合計の含有率(原子%)に対する窒素の含有率(原子%)であるN/(Si+N)が、厚さ方向に0.2から0.57の範囲内で連続的に変化する領域を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の位相シフトマスクブランク。
  上記組成傾斜層中のケイ素含有率(原子%)の最大値と最小値との差が30以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の位相シフトマスクブランク。
  上記位相シフト膜上に、更に、クロムを含む材料で構成された単層又は複数層からなる第2の層を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の位相シフトマスクブランク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  露光光がKrFエキシマレーザー(波長248nm)の位相シフト膜としては、一般に、モリブデンとケイ素を含有する材料で形成された、位相差が180°、透過率が6%程度のものが用いられており、この場合の位相シフト膜の厚さは100nm程度である。近年、露光光にArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いる位相シフト膜では、膜の薄膜化や、耐洗浄性及び耐光性を高めることを目的として、窒化ケイ素の位相シフト膜が多く使用されるようになってきている。KrFエキシマレーザーを露光光とする場合においても、ArFエキシマレーザーを露光光とする場合ほどではないが、耐洗浄性や耐光性が高く、ヘイズが発生し難い位相シフト膜が求められている。
【0005】
  露光光がKrFエキシマレーザーの位相シフト膜を、窒化ケイ素で形成する場合、位相差が170〜190°、透過率4〜8%となる屈折率n,消衰係数kを有する窒化ケイ素の位相シフト膜を単一組成(厚さ方向に均一な組成)の単層で形成すると、反応性スパッタによる成膜では、成膜状態が不安定な領域(いわゆる、遷移モード領域)となり、膜の光学特性の面内均一性が悪くなってしまうという問題がある。
【0006】
  一方、膜の光学特性の面内均一性が高い膜を得るためには、反応性スパッタによる成膜では、成膜状態が安定する領域(いわゆる、メタルモードや反応モード)で、窒化ケイ素の位相シフト膜を単一組成(厚さ方向に均一な組成)の多層で構成することも考えられるが、この領域で形成できる窒化ケイ素の屈折率nが、遷移モードとなる領域で形成できる窒化ケイ素の屈折率nと比べて低くなるため、膜を厚くする必要がある。フォトリソグラフィにおいて、より微細なパターンを形成するためには、位相シフト膜は、薄い方が有利であるだけでなく、三次元効果を低減することができるが、このような多層で構成された厚い膜は不利である。また、成膜状態が安定する領域で形成される層で多層とする場合、層ごとに組成が大きく変わることになるため、膜の加工において、エッチングレートの差によるパターンの断面形状の悪化が懸念される。
【0007】
  本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、露光光が波長248nmのKrFエキシマレーザーである場合にも、パターンの微細化に対応できる位相シフト膜として、必要な位相差及び透過率を確保した上で、パターン形成や、三次元効果の低減などにおいて有利な、膜厚が薄く、面内均一性の高い位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクを提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、波長248nmのKrFエキシマレーザー露光用の位相シフトマスクブランクにおいて、位相シフト膜を、ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない組成とし、組成が厚さ方向に連続的に変化し、かつ露光光に対する光学定数が厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層を含むように構成することで、位相差(位相シフト量)が170〜190°で、透過率が4〜8%の位相シフト膜を、厚さを増大させることなく形成することができ、膜の光学特性の面内均一性が高い位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクとなることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
  従って、本発明は、以下の位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクを提供する。
1.透明基板上に、ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない材料で形成された位相シフト膜を有するフォトマスクブランクであって、
露光光がKrFエキシマレーザー光であり、
上記位相シフト膜が、組成が厚さ方向に連続的に変化し、かつ露光光に対する屈折率n及び消衰係数kが厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層を1層以上含むように構成され、
上記組成傾斜層中の屈折率の最大値n(H)と最小値n(L)との差が0.40以下、かつ上記組成傾斜層中の消衰係数の最大値k(H)と最小値k(L)との差が1.5以下であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
2.上記組成傾斜層において、上記n(L)が2.3以上、上記k(H)が2以下であり、かつ屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下である範囲の厚さが5nm以上30nm以下である位相シフトマスクブランク。
3.上記組成傾斜層が、ケイ素と窒素の合計の含有率(原子%)に対する窒素の含有率(原子%)であるN/(Si+N)が、厚さ方向に0.2から0.57の範囲内で連続的に変化する領域を含む位相シフトマスクブランク。
4.上記組成傾斜層中のケイ素含有率(原子%)の最大値と最小値との差が30以下である位相シフトマスクブランク。
5.上記位相シフト膜の露光光に対する、位相差が170〜190°、透過率が4〜8%であり、
上記位相シフト膜の面内における位相差の平均値に対する、位相差の最大値と最小値との差の割合が3%以下、上記位相シフト膜の面内における透過率の平均値に対する、透過率の最大値と最小値との差の割合が5%以下であり、かつ
上記位相シフト膜の膜厚が90nm以下である位相シフトマスクブランク。
6.上記ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない材料が、ケイ素と窒素とからなる材料である位相シフトマスクブランク。
7.上記位相シフト膜上に、更に、クロムを含む材料で構成された単層又は複数層からなる第2の層を含む位相シフトマスクブランク。
8.上記位相シフトマスクブランクを用いて形成された位相シフトマスク。
 
【発明の効果】
【0010】
  本発明によれば、KrFエキシマレーザーを露光光とする位相シフト膜として必要な位相差と、透過率とが確保され、フォトマスクパターンの加工や露光において有利な、薄い位相シフト膜であり、光学特性の面内均一性が高い位相シフト膜を備える位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクを提供できる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、本発明について更に詳しく説明する。
  本発明の位相シフトマスクブランクは、石英基板などの透明基板上に形成された位相シフト膜を有する。また、本発明の位相シフトマスクは、石英基板などの透明基板上に形成された位相シフト膜のマスクパターン(フォトマスクパターン)を有する。
 
【0013】
  本発明において、透明基板は、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれる透明基板が好適であり、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの透明基板と表記される。
 
【0014】
  図1(A)は、本発明の位相シフトマスクブランクの一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成された位相シフト膜1とを備える。また、
図1(B)は、本発明の位相シフトマスクの一例を示す断面図であり、この位相シフトマスク101は、透明基板10と、透明基板10上に形成された位相シフト膜パターン11とを備える。位相シフトマスクは、位相シフトマスクブランクを用い、その位相シフト膜のパターンを形成することにより得ることができる。
 
【0015】
  本発明の位相シフト膜は、所定の膜厚において、KrFエキシマレーザー(波長248nm)の露光光に対し、所定の位相差(位相シフト量)と、所定の透過率とを与える膜である。本発明において、位相シフト膜は、ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない材料で形成される。膜の洗浄耐性を向上させるためには、位相シフト膜に酸素を含有させることが効果的であるため、ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない材料は、ケイ素及び窒素以外に、酸素を含んでいてもよいが、酸素を含有させることで、膜の屈折率nが低下するため、膜厚が厚くなる傾向がある。そのため、ケイ素と窒素とを含み、遷移金属を含まない材料は、ケイ素と窒素からなる材料(不可避不純物を除き、実質的にこれら2種の元素で構成されている材料)が好ましい。
 
【0016】
  位相シフト膜は、位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすように、単層で構成することが好ましいが、全体として位相シフト膜として必要な位相差及び透過率を満たすように、複数層で構成してもよい。単層及び複数層のいずれの場合においても、位相シフト膜は、組成が厚さ方向に連続的に変化し、かつ露光光に対する屈折率n及び消衰係数kが厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層を1層以上含むように構成される。位相シフト膜を複数層で構成する場合は、複数の組成傾斜層で構成しても、組成傾斜層と単一組成層(組成が厚さ方向に変化しない層)とを組み合わせて構成してもよいが、全ての組成傾斜層の合計の厚さが、位相シフト膜全体の厚さの30%以上、特に50%以上、とりわけ100%とすることが好ましい。
 
【0017】
  組成傾斜層中の屈折率の最大値n(H)と最小値n(L)との差は、0.40以下、特に0.25以下であることが好ましく、0.1以上、特に0.15以上であることが好ましい。組成傾斜層中の消衰係数の最大値k(H)と最小値k(L)との差は1.5以下、特に1.2以下であることが好ましく、0.3以上、特に0.6以上であることが好ましい。また、組成傾斜層中の屈折率の最小値n(L)は、2.3以上、特に2.4以上であることが好ましく、組成傾斜層中の消衰係数の最大値k(H)は、2以下、特に1.5以下であることが好ましい。特に、組成傾斜層において、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下である範囲の厚さは、5nm以上30nm以下であることが好ましい。
 
【0018】
  本発明の位相シフト膜の組成傾斜層は、位相シフト膜を単層で構成する場合は、単層全体において、位相シフト膜を複数の組成傾斜層で構成する場合は、各々の組成傾斜層において、ケイ素の含有率は、組成の傾斜範囲が40原子%以上、特に45原子%以上で、70原子%以下、特に60原子%以下の範囲内であることが好ましく、また、窒素の含有率は、組成の傾斜範囲が30原子%以上、特に40原子%以上で、60原子%以下、特に55原子%以下の範囲内であることが好ましい。
 
【0019】
  特に、組成傾斜層は、ケイ素と窒素の合計の含有率(原子%)に対する窒素の含有率(原子%)であるN/(Si+N)が、厚さ方向に0.2以上、特に0.3以上で、かつ0.57以下、特に0.55以下の範囲内で連続的に変化する領域を含むことが好ましい。また、組成傾斜層中のケイ素含有率(原子%)の最大値と最小値との差が30以下、特に15以下であることが好ましい。なお、組成傾斜層が酸素を含む場合、酸素の含有率は30原子%以下、特に10原子%以下、とりわけ5原子%以下であることが好ましい。
 
【0020】
  本発明の位相シフト膜の露光光に対する位相差は、位相シフト膜が存在する部分(位相シフト部)と、位相シフト膜が存在しない部分との境界部において、それぞれを通過する露光光の位相差によって露光光が干渉して、コントラストを増大させることができる位相差であればよく、位相差は170°以上で190°以下であればよい。一方、本発明の位相シフト膜の露光光に対する透過率は、4%以上で8%以下とすることができる。本発明の位相シフト膜の場合、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する位相差及び透過率を上記範囲内とすることができる。
 
【0021】
  本発明の位相シフト膜は、組成が厚さ方向に連続的に変化し、かつ露光光に対する屈折率n及び消衰係数kが厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層を1層以上含むように構成することにより、位相シフト膜の面内(6025基板の場合は、例えば、基板面の中央部135mm角の範囲内)における位相差の平均値に対する、位相差の最大値と最小値との差の割合(位相差の面内レンジ)を3%以下、特に1%以下とすることができ、また、位相シフト膜の面内における透過率の平均値に対する、透過率の最大値と最小値との差の割合(透過率の面内レンジ)を5%以下、特に3%以下とすることができる。
 
【0022】
  本発明の位相シフト膜の全体の厚さは、薄いほど微細なパターンを形成しやすいため90nm以下、好ましくは85nm以下とする。一方、位相シフト膜の膜厚の下限は、露光光に対し、必要な光学特性が得られる範囲で設定され、特に制限はないが、一般的には50nm以上となる。
 
【0023】
  本発明の位相シフト膜は、公知の成膜手法を適用して成膜することができるが、均質性に優れた膜が容易に得られるスパッタ法により成膜することが好ましく、DCスパッタ、RFスパッタのいずれの方法をも用いることができる。ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて適宜選択される。ターゲットとしては、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲットなどを使用すればよく、これらターゲットは酸素を含んでいてもよい。窒素と酸素の含有率は、スパッタガスに、反応性ガスとして、窒素を含むガス、酸素を含むガス、窒素及び酸素を含むガスなどを用い、導入量を適宜調整して反応性スパッタすることで、調整することができる。反応性ガスとして具体的には、窒素ガス(N
2ガス)、酸素ガス(O
2ガス)、窒素酸化物ガス(N
2Oガス、NOガス、NO
2ガス)などを用いることができる。更に、スパッタガスには、希ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどを用いることもできる。
 
【0024】
  位相シフト膜を複数層とした場合、位相シフト膜の膜質変化を抑えるために、その表面側(透明基板と離間する側)の最表面部の層として、表面酸化層を設けることができる。この表面酸化層の酸素含有率は20原子%以上であってよく、更には50原子%以上であってもよい。表面酸化層を形成する方法として、具体的には、大気酸化(自然酸化)による酸化の他、強制的に酸化処理する方法としては、スパッタにより形成した膜をオゾンガスやオゾン水により処理する方法や、酸素ガス雰囲気などの酸素存在雰囲気中で、オーブン加熱、ランプアニール、レーザー加熱などにより、300℃以上に加熱する方法などを挙げることができる。この表面酸化層の厚さは10nm以下、特に5nm以下、とりわけ3nm以下であることが好ましく、通常、1nm以上で酸化層としての効果が得られる。表面酸化層は、スパッタ工程で酸素量を増やして形成することもできるが、欠陥がより少ない層とするためには、前述した大気酸化や、酸化処理により形成することが好ましい。
 
【0025】
  本発明の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の上には、単層又は複数層からなる第2の層を設けることができる。第2の層は、通常、位相シフト膜に隣接して設けられる。この第2の層として具体的には、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。また、後述する第3の層を設ける場合、この第2の層を、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。第2の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
 
【0026】
  このような位相シフトマスクブランクとして具体的には、
図2(A)に示されるものが挙げられる。
図2(A)は、本発明の位相シフトマスクブランクの一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成された位相シフト膜1と、位相シフト膜1上に形成された第2の層2とを備える。
 
【0027】
  本発明の位相シフトマスクブランクには、位相シフト膜の上に、第2の層として、遮光膜又は位相シフト膜にパターンを形成するためのハードマスクとして機能するエッチングマスク膜を設けることができる。また、第2の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。遮光膜を含む第2の層を設けることにより、位相シフトマスクに、露光光を完全に遮光する領域を設けることができる。この遮光膜及び反射防止膜は、エッチングにおける加工補助膜としても利用可能である。遮光膜及び反射防止膜の膜構成及び材料については多数の報告(例えば、特開2007−33469号公報(特許文献2)、特開2007−233179号公報(特許文献3)など)があるが、好ましい遮光膜と反射防止膜との組み合わせの膜構成としては、例えば、クロムを含む材料の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるクロムを含む材料の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、複数層で構成してもよい。遮光膜や反射防止膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。なお、ここで、クロムを含む材料を表す化学式は、構成元素を示すものであり、構成元素の組成比を意味するものではない(以下のクロムを含む材料において同じ。)。
 
【0028】
  第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に60原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
 
【0029】
  また、第2の層が遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、反射防止膜はクロム化合物であることが好ましく、クロム化合物中のクロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、70原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に20原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上、特に3原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に5原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
 
【0030】
  第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは40〜70nmである。また、露光光に対する位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
 
【0031】
  本発明の位相シフトマスクブランクの第2の層の上には、単層又は複数層からなる第3の層を設けることができる。第3の層は、通常、第2の層に隣接して設けられる。この第3の層として具体的には、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜、遮光膜、遮光膜と反射防止膜との組み合わせなどが挙げられる。第3の層の材料としては、ケイ素を含む材料が好適であり、特に、クロムを含まないものが好ましい。
 
【0032】
  このような位相シフトマスクブランクとして具体的には、
図2(B)に示されるものが挙げられる。
図2(B)は、本発明の位相シフトマスクブランクの一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成された位相シフト膜1と、位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3とを備える。
 
【0033】
  第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第3の層として、第2の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。また、後述する第4の層を設ける場合、この第3の層を、第4の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。この加工補助膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF
6やCF
4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
 
【0034】
  第3の層が加工補助膜である場合、加工補助膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は20原子%以上、特に33原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。酸素の含有率は70原子%以下、特に66原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましく、20原子%以上であることが更に好ましい。遷移金属は含有していても、含有していなくてもよいが、遷移金属を含有する場合、その含有率は35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
 
【0035】
  第2の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第3の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは40〜70nmであり、第3の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜15nmである。また、露光光に対する位相シフト膜と第2の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
 
【0036】
  また、第2の層が加工補助膜である場合、第3の層として、遮光膜を設けることができる。また、第3の層として、遮光膜と反射防止膜とを組み合わせて設けることもできる。この場合、第2の層は、位相シフト膜のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)であり、第3の層のパターン形成においてエッチングストッパーとして機能する加工補助膜(エッチングストッパー膜)として利用することもできる。加工補助膜の例としては、特開2007−241065号公報(特許文献4)で示されているようなクロムを含む材料で構成された膜が挙げられる。加工補助膜は、単層で構成しても、複数層で構成してもよい。加工補助膜のクロムを含む材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
 
【0037】
  第2の層が加工補助膜である場合、第2の層のクロム化合物中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
 
【0038】
  一方、第3の層の遮光膜及び反射防止膜は、第2の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、クロムを含む材料のエッチングに適用される塩素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、SF
6やCF
4などのフッ素系ガスでエッチングできるケイ素を含む材料とすることが好ましい。ケイ素を含む材料として具体的には、ケイ素単体、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方とを含む材料、ケイ素と遷移金属とを含む材料、ケイ素と、窒素及び酸素の一方又は双方と、遷移金属とを含む材料等のケイ素化合物などが挙げられ、遷移金属としては、モリブデン、タンタル、ジルコニウムなどが挙げられる。
 
【0039】
  第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、遮光膜及び反射防止膜はケイ素化合物であることが好ましく、ケイ素化合物中のケイ素の含有率は10原子%以上、特に30原子%以上で、100原子%未満、特に95原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下、とりわけ20原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることが好ましい。遷移金属の含有率は35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、1原子%以上であることがより好ましい。この場合、ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
 
【0040】
  第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第2の層の膜厚は、通常1〜20nm、好ましくは2〜10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは30〜70nmである。また、露光光に対する位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
 
【0041】
  本発明の位相シフトマスクブランクの第3の層の上には、単層又は複数層からなる第4の層を設けることができる。第4の層は、通常、第3の層に隣接して設けられる。この第4の層として具体的には、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜などが挙げられる。第4の層の材料としては、クロムを含む材料が好適である。
 
【0042】
  このような位相シフトマスクブランクとして具体的には、
図2(C)に示されるものが挙げられる。
図2(C)は、本発明の位相シフトマスクブランクの一例を示す断面図であり、この位相シフトマスクブランク100は、透明基板10と、透明基板10上に形成された位相シフト膜1と、位相シフト膜1上に形成された第2の層2と、第2の層2上に形成された第3の層3と、第3の層3上に形成された第4の層4とを備える。
 
【0043】
  第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせである場合、第4の層として、第3の層のパターン形成においてハードマスクとして機能する加工補助膜(エッチングマスク膜)を設けることができる。この加工補助膜は、第3の層とエッチング特性が異なる材料、例えば、ケイ素を含む材料のエッチングに適用されるフッ素系ドライエッチングに耐性を有する材料、具体的には、酸素を含有する塩素系ガスでエッチングできるクロムを含む材料とすることが好ましい。クロムを含む材料として具体的には、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)等のクロム化合物などが挙げられる。
 
【0044】
  第4の層が加工補助膜である場合、第4の層中のクロムの含有率は40原子%以上、特に50原子%以上で、100原子%以下、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。窒素の含有率は50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。炭素の含有率は20原子%以下、特に10原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は1原子%以上であることがより好ましい。この場合、クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。
 
【0045】
  第2の層が加工補助膜、第3の層が遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせ、第4の層が加工補助膜である場合、第2の層の膜厚は、通常1〜20nm、好ましくは2〜10nmであり、第3の層の膜厚は、通常20〜100nm、好ましくは30〜70nmであり、第4の層の膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜20nmである。また、露光光に対する位相シフト膜と第2の層と第3の層との合計の光学濃度が2.0以上、特に2.5以上、とりわけ3.0以上となるようにすることが好ましい。
 
【0046】
  第2の層及び第4の層のクロムを含む材料で構成された膜は、クロムターゲット、クロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットなどを用い、Ar、He、Neなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
 
【0047】
  一方、第3の層のケイ素を含む材料で構成された膜は、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲット、遷移金属ターゲット、ケイ素と遷移金属との複合ターゲットなどを用い、Ar、He、Neなどの希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどから選ばれる反応性ガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタにより成膜することができる。
 
【0048】
  本発明の位相シフトマスクは、位相シフトマスクブランクから、常法により製造することができる。例えば、位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の膜が形成されている位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
 
【0049】
  まず、位相シフトマスクブランクの第2の層上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層にレジストパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、位相シフト膜パターンを得る。ここで、第2の層の一部を残す必要がある場合は、その部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、位相シフトマスクを得ることができる。
 
【0050】
  また、位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の加工補助膜が形成されている位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
 
【0051】
  まず、位相シフトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、位相シフト膜パターンを得ると同時に、第3の層のパターンを除去する。次に、第2の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第2の層の上に形成した後、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、レジストパターンで保護されていない部分の第2の層を除去する。そして、レジストパターンを常法により除去して、位相シフトマスクを得ることができる。
 
【0052】
  一方、位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成されている位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
 
【0053】
  まず、位相シフトマスクブランクの第3の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層にレジストパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して、位相シフト膜を除去する部分の第2の層が除去された第2の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第3の層の上に形成した後、得られた第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層を除去して、位相シフトマスクを得ることができる。
 
【0054】
  更に、位相シフト膜の上に、第2の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成され、第2の層の上に、第3の層として、ケイ素を含む材料の遮光膜、又は遮光膜と反射防止膜との組み合わせが形成され、更に、第3の層の上に、第4の層として、クロムを含む材料の加工補助膜が形成されている位相シフトマスクブランクでは、例えば、下記の工程で位相シフトマスクを製造することができる。
 
【0055】
  まず、位相シフトマスクブランクの第4の層の上に、電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン描画を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第4の層にレジストパターンを転写して、第4の層のパターンを得る。次に、得られた第4の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、第3の層に第4の層のパターンを転写して、第3の層のパターンを得る。次に、レジストパターンを除去し、第3の層を残す部分を保護するレジストパターンを、第4の層の上に形成した後、得られた第3の層のパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第2の層に第3の層のパターンを転写して第2の層のパターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第4の層を除去する。次に、第2の層のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングにより、位相シフト膜に第2の層のパターンを転写して、位相シフト膜パターンを得ると同時に、レジストパターンで保護されていない部分の第3の層を除去する。次に、レジストパターンを常法により除去する。そして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより、第3の層が除去された部分の第2の層と、レジストパターンが除去された部分の第4の層を除去して、位相シフトマスクを得ることができる。
 
【実施例】
【0056】
  以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0057】
    [実施例1]
  スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、窒素ガスを用い、放電電力を1.9kW、アルゴンガス流量を28sccmとし、窒素ガス流量を20から44sccmまで連続的に変化させることで、組成が厚さ方向に連続的に変化するSiNからなり、光学特性が厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層からなる単層の位相シフト膜を成膜した。
【0058】
  この組成傾斜層のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、屈折率nの最大値n(H)は2.61、最小値n(L)は2.33で、屈折率nの差は0.28、消衰係数kの最大値k(H)は1.4、最小値k(L)は0.05で、消衰係数kの差は1.35であり、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下の範囲の厚さは約15nmであった。
【0059】
  この膜の組成をXPS(X線光電子分光分析法、以下同じ)で測定したところ、ケイ素は、石英基板側から厚さ方向に58.5原子%から46.8原子%に連続的に変化(ケイ素含有率(原子%)の差は11.7)していた。また、この膜のN/(Si+N)は、厚さ方向に0.41から0.52に連続的に変化していた。また、この膜の厚さは87nm、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、位相差は177.5°、透過率は5.9%であり、位相差の面内レンジは0.4%、透過率の面内レンジは1.9%で、良好であった。
【0060】
    [実施例2]
  スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、窒素ガスを用い、放電電力を1.9kW、アルゴンガス流量を28sccmとし、窒素ガス流量を19から43sccmまで連続的に変化させることで、組成が厚さ方向に連続的に変化するSiNからなり、光学特性が厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層からなる単層の位相シフト膜を成膜した。
【0061】
  この組成傾斜層のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、屈折率nの最大値n(H)は2.61、最小値n(L)は2.33で、屈折率nの差は0.28、消衰係数kの最大値k(H)は1.5、最小値k(L)は0.05で、消衰係数kの差は1.45であり、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下の範囲の厚さは約15nmであった。
【0062】
  この膜の組成をXPSで測定したところ、ケイ素は、石英基板側から厚さ方向に59.1原子%から46.5原子%に連続的に変化(ケイ素含有率(原子%)の差は12.6)していた。また、この膜のN/(Si+N)は、厚さ方向に0.40から0.53に連続的に変化していた。また、この膜の厚さは85nm、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、位相差は176.1°、透過率は5.8%であり、位相差の面内レンジは0.9%、透過率の面内レンジは1.7%で、良好であった。
【0063】
    [実施例3]
  スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、酸素ガス、窒素ガスを用い、放電電力を1.9kW、アルゴンガス流量を28sccm、酸素ガス流量を1.0sccmとし、窒素ガス流量を19から43sccmまで連続的に変化させることで、組成が厚さ方向に連続的に変化するSiONからなり、光学特性が厚さ方向に連続的に変化する組成傾斜層からなる単層の位相シフト膜を成膜した。
【0064】
  この組成傾斜層のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、屈折率nの最大値n(H)は2.59、最小値n(L)は2.30で、屈折率nの差は0.29、消衰係数kの最大値k(H)は1.4、最小値k(L)は0.05で、消衰係数kの差は1.35であり、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下の範囲の厚さは約14nmであった。
【0065】
  この膜の組成をXPSで測定したところ、ケイ素は、石英基板側から厚さ方向に56.7原子%から45.4原子%に連続的に変化(ケイ素含有率(原子%)の差は11.3)していた。また、この膜のN/(Si+N)は、厚さ方向に0.42から0.52に連続的に変化していた。また、この膜の酸素含有量は膜厚方向にほぼ一定でおよそ2原子%であった。また、この膜の厚さは88nm、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、位相差は177.5°、透過率は6.0%であり、位相差の面内レンジは0.4%、透過率の面内レンジは0.8%で、良好であった。
【0066】
    [比較例1]
  スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、窒素ガスを用い、放電電力を1.9kW、アルゴンガス流量を28sccmとし、窒素ガス流量を19sccmとすることで、組成が厚さ方向で一定のSiNからなり、光学特性が厚さ方向で変化しない下層(厚さ27nm)と、アルゴンガス流量のみ35sccmとし、組成が厚さ方向で一定のSiNからなり、光学特性が厚さ方向で変化しない上層(厚さ64nm)の2層からなる位相シフト膜を成膜した。
【0067】
  これらの層のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、下層の屈折率nは2.45、上層の屈折率nは2.38で、屈折率nの差は0.07、下層の消衰係数kは1.5、上層の消衰係数kは0.07で、消衰係数kの差は1.43であり、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下の範囲は存在しなかった。
【0068】
  この膜の組成をXPSで測定したところ、下層のケイ素は59.2原子%、上層のケイ素は46.5原子%であり、ケイ素含有率(原子%)の差は12.7であった。また、下層のN/(Si+N)は0.40、上層のN/(Si+N)は0.53であった。また、この膜のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、位相差は177.0°、透過率は6.2%であり、位相差の面内レンジは0.9%、透過率の面内レンジは3.6%であったが、厚さが91nmと厚かった。
【0069】
    [比較例2]
  スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、窒素ガスを用い、放電電力を1.9kW、アルゴンガス流量を28sccmとし、窒素ガス流量を27sccmとすることで、組成が厚さ方向で一定のSiNからなり、光学特性が厚さ方向で変化しない単層の位相シフト膜を成膜した。
【0070】
  この層のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、屈折率nは2.60、消衰係数kは0.70であり、全体が、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下の範囲にあった。
【0071】
  この膜の組成をXPSで測定したところ、ケイ素が50.4原子%であった。また、この膜のN/(Si+N)は0.49であった。また、この膜の厚さは79nm、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、位相差は177.2°、透過率は4.5%であったが、位相差の面内レンジは0.5%、透過率の面内レンジは11.1%であり、透過率の面内レンジが悪かった。
【0072】
    [比較例3]
  スパッタ装置のチャンバー内に、152mm角、厚さ6.35mmの6025石英基板を設置し、スパッタターゲットとしてモリブデンケイ素(MoSi)ターゲットとケイ素ターゲット、スパッタガスとしてアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガスを用い、MoSiターゲットの放電電力を1.2kW、ケイ素ターゲットの放電電力を8kW、アルゴンガス流量を5sccmとし、窒素ガス流量を65sccm、酸素ガス流量を2.5sccmとすることで、組成が厚さ方向で一定のMoSiONからなり、光学特性が厚さ方向で変化しない単層の位相シフト膜を成膜した。
【0073】
  この層のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、屈折率nは2.25、消衰係数kは0.52であり、屈折率nが2.55以上、かつ消衰係数kが1.0以下の範囲は存在しなかった。
【0074】
  この膜の組成をXPSで測定したところ、モリブデンが14原子%、ケイ素が35原子%、窒素が45原子%、酸素が6原子%であった。また、この膜のKrFエキシマレーザー(波長248nm)に対する、位相差は175.1°、透過率は6.2%であり、位相差の面内レンジは0.3%、透過率の面内レンジは1.7%であったが、厚さが99nmと厚かった。