特開2020-204867(P2020-204867A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-204867(P2020-204867A)
(43)【公開日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】解析装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20201127BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20201127BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20201127BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20201127BHJP
【FI】
   G06F17/50 612A
   E02D5/80 Z
   G06F17/50 612H
   G06F17/50 680Z
   G06F17/50 604A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-111836(P2019-111836)
(22)【出願日】2019年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】水沼 守
(72)【発明者】
【氏名】津田 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】峯田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】大木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 健一
【テーマコード(参考)】
2D041
5B046
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D041GC01
5B046AA03
5B046FA06
5B046FA15
5B046GA01
5B046HA09
5B046JA01
5B046JA04
5B046JA07
(57)【要約】
【課題】地中構造体の引抜き試験を模擬する数値解析において、モデルの精度と計算量のトレードオフを解決する。
【解決手段】構造体モデル生成部11が地中構造体をモデル化した構造体モデルを生成し、粒子生成部12が、解析の結果の引抜き抵抗力が過小評価されるような時刻歴結果を示すことが生じることのない最大のSPH粒子の径を設定して、地中構造体の支持体である土壌をモデル化したSPH粒子を生成し、演算部14が有限要素法とSPH法により構造体モデルとSPH粒子を連成解析する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中構造体をモデル化した構造体モデルを生成する構造体モデル生成部と、
前記地中構造体の支持体である土壌をモデル化した粒子を生成する粒子生成部と、
有限要素法とSPH法により前記構造体モデルと前記粒子を連成解析する演算部と、を備え、
前記粒子生成部は、解析の結果の引抜き抵抗力が過小評価されるような時刻歴結果を示すことが生じることのない最大の前記粒子の径を設定する
ことを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記地中構造体は下部支線アンカであり、
前記粒子生成部は、前記粒子と前記構造体モデルとの主たる接触部分において前記粒子が前記構造体モデルに2列接触するように前記粒子の径を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌に埋設された地中構造体の解析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱は、社会インフラを支える構造物の一つである。通信ケーブルを架渉する電柱にかかる力を平衡に保つため、末端の電柱には支柱もしくは支線が設置される。支線は、上部支線(鋼より線)と下部支線に分かれる。下部支線の一種である支線アンカが地中に埋め込まれて、電柱を支持する。
【0003】
下部支線アンカは、地中に埋設されるため、直接劣化状態を観察することは難しい。そこで、コンピュータ援用工学(Computer Aided Engineering:CAE)における数値解析により、構造物の耐力を推定および予測することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−205260号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nils Karajan, Zhidong Han, Hailong Teng, Jason Wang, "On the Parameter Estimation for the Discrete-Element Method in LS-DYNA", 13th International LS-DYNA Users Conference 2014
【非特許文献2】Nils Karajan, Zhidong Han, Hailong Teng, Jason Wang, "Interaction Possibilities of Bonded and Loose Particles", 9th European LS-DYNA Conference 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地中構造体の引抜き試験のシミュレーションにおいて、剛な構造用鋼材を前提とした地中構造体と、それを支持する柔な粘土質・砂質土とを同時にモデル化し、一体物として連成解析を実施するには、様々な観点から困難を伴う。
【0007】
地中構造体と土壌の連成問題を取り上げた場合、解析手法として、例えば、有限要素法(FEM)およびメッシュフリー法のひとつであるエレメント・フリー・ガラーキン法(EFGM)、土壌を連続体ではなく離散体として取扱う個別要素法(DEM)などが考えられる。
【0008】
EFGMを用いて土壌の変形を再現するための手法を検討すると、下記の問題に突き当たる。一つめは、ある程度の引き抜き・変形には対応できるが、100mm程度の引き抜きを模擬するのが限界である点である。EFGMでは、領域積分のためのバックグラウンドメッシュ品質が重要であり、これが構造メッシュに依存する場合は極端な変形に対応することが困難であることが原因である。二つめは、重力の影響が結果に殆ど表出しない点である。EFGMを用いて計算されたアンカ引抜荷重の大部分は変形抵抗成分によって賄われている。つまり土壌の変形抵抗を過大評価している可能性がある。三つめは、柔らかい土に対しては接触不安定性によりほとんど計算ができない点である。
【0009】
DEMを用いて土壌の変形を再現するための手法を検討すると、下記の問題に突き当たる。一つめは、土壌粒子間の結合強度を過小評価し過ぎる点である。二つめは、土壌粒子を粒子状離散体としてモデル化しているために、土壌分野で一般に使用されているムーアクーロンモデルなど、土壌粘性と内部摩擦などとの関連性を見出すことが困難な数値解析モデルとなってしまう点である。
【0010】
土壌のモデル化において、土壌粒子の結合強度の観点などから,取り得る手法は限定されるという課題がある。また、モデルの高精細化および解析手法によっては、計算量が爆発的に増加するという課題がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、地中構造体の引抜き試験を模擬する数値解析において、モデルの精度と計算量のトレードオフを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る解析装置は、地中構造体をモデル化した構造体モデルを生成する構造体モデル生成部と、前記地中構造体の支持体である土壌をモデル化した粒子を生成する粒子生成部と、有限要素法とSPH法により前記構造体モデルと前記粒子を連成解析する演算部と、を備え、前記粒子生成部は、解析の結果の引抜き抵抗力が過小評価されるような時刻歴結果を示すことが生じることのない最大の前記粒子の径を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地中構造体の引抜き試験を模擬する数値解析において、モデルの精度と計算量のトレードオフを解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態の解析装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、本実施形態の解析装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、支線を説明するための図である。
図4図4は、支線下部アンカの構成を示す斜視図である。
図5図5は、数値解析に用いた構造体モデルとSPH粒子を説明するための図である。
図6A図6Aは、支線下部アンカの安定板の表面の半分にSPH粒子が1列乗るときの数値解析結果を示す図である。
図6B図6Bは、支線下部アンカの安定板の表面の半分にSPH粒子が2列乗るときの数値解析結果を示す図である。
図6C図6Cは、支線下部アンカの安定板の表面の半分にSPH粒子が3列乗るときの数値解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態では、地中構造体の引抜き試験のシミュレーションにおいて、鉄鋼材料など剛な材料を使用した地中構造体をFEMにて扱い、地中構造体の支持体である柔な土壌をSmoothed Particle Hydrodynamics(SPH)法で扱う。本実施形態では、土壌を粒子で離散化してモデル化し、SPH法を適用する。SPH法は、各粒子の周囲の空間をカーネル関数の重ね合わせによってスムージングすることにより、連続体的な変形挙動を模擬できる。一方で、地中構造体(FEM)と土壌(SPH法)との接触判定において、土壌粒子は点として地中構造体側は面として振る舞う。このため、接触力の算出において、接触面上における粒子密度、すなわち粒子径は重要な要素となる。
【0017】
図1は、本実施形態の解析装置1の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す解析装置1は、構造体モデル生成部11、粒子生成部12、設定部13、演算部14、および表示部15を備える。解析装置1が備える各部は、中央演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは解析装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0018】
構造体モデル生成部11は、CADにより地中構造体をモデル化した構造体モデル(3次元モデル)を生成する。構造体モデル生成部11は、他の装置で生成した構造体モデルを入力してもよい。構造体モデル生成部11は、構造体モデルを、FEMで用いる複数の有限個の要素(メッシュ)に分割する。
【0019】
粒子生成部12は、土壌を離散化してモデル化したSPH粒子を生成し、構造体モデルの周囲に充溢させる。このとき、粒子生成部12は、後述の演算部14の処理時間が所定時間内に収まり、かつ、良好な解析結果が得られるよう、SPH粒子と構造体モデルとの主たる接触部分にSPH粒子が適切に接触するように、SPH粒子の粒子径を設定する。SPH粒子の粒子径が小さいと十分な精度の解析結果が得られるが、処理時間が増大する。SPH粒子の粒子径が大きいと正確な解析結果が得られない。本実施形態では、粒子生成部12は、解析の結果の引抜き抵抗力が過小評価されるような時刻歴結果を示すことが生じることのない最大の粒子径を設定する。
【0020】
設定部13は、解析処理に必要な各種パラメータの設定を行う。例えば、要素座標系の設定、材料特性値の設定、境界条件の設定、および外力条件の設定などが挙げられる。
【0021】
演算部14は、FEMとSPH法を適用して、構造体モデルとSPH粒子を連成解析する。
【0022】
表示部15は、演算部14による解析結果を表示する。例えば、表示部15は、ベクトル図、等高線、時刻歴図、アニメーションなどにより解析結果を表示する。
【0023】
図2を参照し、本実施形態の解析装置1の動作について説明する。
【0024】
ステップS1において、構造体モデル生成部11は、解析対象の地中構造体の構造体モデルを形成する。
【0025】
ステップS2において、構造体モデル生成部11は、構造体モデルを複数の有限個の要素に分割する。
【0026】
ステップS3において、粒子生成部12は、土壌を離散化してモデル化したSPH粒子を生成し、構造体モデルの周囲に充溢させる。
【0027】
ステップS4において、設定部13は、解析に必要な各種パラメータを設定する。
【0028】
ステップS5において、演算部14は、FEMとSPH法を適用して、地中構造体の引抜き試験の連成解析を行う。
【0029】
ステップS6において、表示部15は、解析結果を表示する。
【0030】
次に、本実施形態の解析装置1により、支線下部アンカの引抜き試験を数値解析した実施例について説明する。
【0031】
図3に示すように、通信ケーブルを架渉する電柱にかかる力を平衡に保つために、支線を電柱に設置する。支線は、上部支線(鋼より線)と下部支線で構成される。下部支線は、上部支線と直接繋がるロッド部(鋼棒)と地中に埋設されるアンカ本体部で構成される。ロッド部とアンカ本体部とは、ストラップに通したボルトで締結される。アンカ本体部には、ロッド部から引き抜く力が加えられる。
【0032】
図4に示すように、アンカ本体部100は、案内板110、抵抗板120、および安定板130の3つの部分からなる。案内板110はロッド部に接続される。抵抗板120は、面方向に対して垂直に方向板121と呼ばれる鋼板が溶接される。抵抗板120の安定板130側には、安定板受122と呼ばれる三角形状の突起台座(鋼板)が存在する。
【0033】
解析装置1を用いて、ロッド部のループに荷重をかけたときの支線下部アンカの引抜き試験をSPH粒子の粒子径を変えて数値解析した。
【0034】
安定板130の上面は、支線下部アンカを引抜くときの土壌との主たる接触面となる。安定板130の上面が線対称であることから、構造体モデルとして安定板130の半分を用いた。半分にした安定板130の幅は50mmである。
【0035】
半分の安定板130の引抜き試験に伴い影響を受けると予想される土壌をモデル化した。図5に、構造体モデルとSPH粒子の粒子径を30mmとしたときのSPH粒子の位置を示す。粒子径を30mmとすると、幅50mmの構造体モデル上に2列×16点のSPH粒子が乗り、土壌半分が17列×67点のSPH粒子で表現されている。
【0036】
粒子の間隔(粒子の中心間の距離)は、ほぼ粒子径と同じである。粒子径に応じて粒子の間隔が変わる。粒子径を50mm以上とすると、土壌を表現するSPH粒子の数は減り、構造体モデル上に乗るSPH粒子は1列以下となる。粒子径を30mm未満とすると、土壌を表現するSPH粒子の数は増え、構造体モデル上に乗るSPH粒子は3列以上となる。
【0037】
図6A〜6Cに、安定板130上に乗るSPH粒子の列の数を変更した場合の数値解析結果を示す。図6A〜6Cのグラフは、ロッド部のループに荷重をかけたときの、その荷重による支線下部アンカの引抜け状況を示す変位との関係を示す。
【0038】
図6Aのグラフは、安定板130表面上にSPH粒子が1列乗った場合の数値解析結果である。粒子径を50mm以上とした場合、幅が50mmの安定板130の構造体モデルの表面にはSHP粒子が1列以下乗る。SPH粒子径が構造体モデルの幅よりも広い場合、粒子間を構造体モデルがすり抜けるために引き抜き抵抗力が大幅に低下する。SPH粒子径が50mmの場合、SPH粒子が構造体モデルの表面に1列以下しか乗らず、引抜きによりアンカ面上での粒子の横滑りが容易に起きる。このため、引抜き抵抗力が過小評価されるような時刻歴結果を示すことが繰り返し生じ正確に計算できない。すなわち、図6Aに示すように、数値解析結果を示すグラフがガタついてしまう。なお、Intel Xeon CPU 8コアによる計算実行時間は約25時間であった。
【0039】
図6Bのグラフは、安定板130表面上にSPH粒子が2列乗った場合の数値解析結果である。粒子径を30mm以上50mm未満とした場合、図5に示したように、幅が50mmの安定板130の構造体モデルの表面にはSPH粒子が2列乗る。安定板130の構造体モデルの表面にSPH粒子が2列乗るとき、計算した抵抗力は、下部支線アンカの公称地耐力30kNと同程度になり、比較的正確である。図6Bに示すように、数値解析結果を示すグラフはガタついておらず、引抜き抵抗力が過少評価されるような時刻歴結果を示していない。なお、Intel Xeon CPU 8コアによる計算実行時間は約45時間であった。
【0040】
図6Cのグラフは、安定板130表面上にSPH粒子が3列乗った場合の数値解析結果である。粒子径を30mm未満とした場合、幅が50mmの安定板130の構造体モデルの表面にはSPH粒子が3列以上乗る。より粒子径の小さいSPH粒子でモデル化した土壌は十分な表現力を有しており、引抜き抵抗力は十分な精度をもって計算され得る。しかしながら、土壌半分が図5よりも多数のSPH粒子で表現されるので、計算量は爆発的に増加することとなる。計算機の能力によっては、非現実的な時間を要することとなり、実用上問題を来す結果となる。なお、Intel Xeon CPU 8コアによる計算実行時間は125時間以上であった。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、構造体モデル生成部11が地中構造体をモデル化した構造体モデルを生成し、粒子生成部12が、解析の結果の引抜き抵抗力が過小評価されるような時刻歴結果を示すことが生じることのない最大のSPH粒子の径を設定して、地中構造体の支持体である土壌をモデル化したSPH粒子を生成し、演算部14が有限要素法とSPH法により構造体モデルとSPH粒子を連成解析することにより、地中構造体の引抜き試験を模擬する数値解析において、土壌をモデル化したSPH粒子の径を適切に設定してモデルの精度と計算量のトレードオフを解決できる。
【符号の説明】
【0042】
1…解析装置
11…構造体モデル生成部
12…粒子生成部
13…設定部
14…演算部
15…表示部
100…アンカ本体部
110…案内板
120…抵抗板
121…方向板
122…安定板受
130…安定板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C