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特開2020-23481エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-23481(P2020-23481A)
(43)【公開日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/16 20060101AFI20200121BHJP
   G02F 1/1516 20190101ALI20200121BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20200121BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20200121BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20200121BHJP
【FI】
   C07D471/16
   G02F1/1516
   C09K9/02 A
   C07F7/10 S
   G09F9/30 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2019-133425(P2019-133425)
(22)【出願日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-139830(P2018-139830)
(32)【優先日】2018年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】篠田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 俊也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】金子 史育
【テーマコード(参考)】
2K101
4C065
4H049
5C094
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DB28
2K101DB33
2K101DB35
2K101DB43
2K101DC04
2K101DC06
2K101DC37
2K101DC43
2K101DC45
2K101DC74
2K101DD02
2K101DD06
2K101EB31
2K101EE02
2K101EG26
2K101EG52
2K101EG56
2K101EG62
2K101EH02
2K101EH04
2K101EH26
2K101EJ23
2K101EK02
2K101EK35
4C065AA07
4C065BB09
4C065CC05
4C065DD01
4C065EE03
4C065HH02
4C065JJ01
4C065KK02
4C065KK04
4C065LL01
4C065LL03
4C065PP01
4H049VN01
4H049VP03
4H049VQ89
4H049VR24
4H049VU24
4H049VW02
5C094AA31
5C094BA52
5C094FB01
5C094FB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】繰返し耐久性、光耐久性に優れるエレクトロクロミック化合物の提供。
【解決手段】下記一般式の化合物。(式中、X1〜Xは、それぞれ独立して、炭素原子又はケイ素原子であり、R1〜R15は、それぞれ独立して、H、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択される。)

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(ただし、一般式(1)中、X1〜X3は、それぞれ独立して、炭素原子又はケイ素原子であり、R1〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択される。)
で表される構造を有する請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項2】
前記R1〜R3が、いずれも、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択される請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項3】
前記R1〜R15のいずれか一つ以上が、重合性官能基である請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかのエレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック組成物。
【請求項5】
他のラジカル重合性化合物をさらに含む請求項4に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項6】
テトラフェニルベンジジン化合物をさらに含む請求項4又は5に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項7】
前記テトラフェニルベンジジン化合物は、重合性官能基を含む請求項6に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項8】
前記エレクトロクロミック組成物に含まれる重合性官能基が、重合又は架橋されている請求項5〜7の何れか一項に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項9】
第1の電極と、
前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
を有するエレクトロクロミック素子であって、
請求項4〜8の何れか一つのエレクトロクロミック組成物を含む層が、前記第1の電極上に設けられるエレクトロクロミック素子。
【請求項10】
第1の電極と、
前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記電解質層は、請求項1〜3の何れか一つのエレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック素子。
【請求項11】
前記電解質層は、テトラフェニルベンジジン化合物をさらに含む請求項10に記載のエレクトロクロミック素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミック素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミズムを引き起こすエレクトロクロミック材料(エレクトロクロミック化合物)の発色/消色(以下、発消色ということがある)を用いたエレクトロクロミック素子は、電子ペーパーや遮光手段等の表示装置の有力な候補として、研究開発が行われている。
【0003】
エレクトロクロミック素子は、一対の電極間に電解質層とエレクトロクロミック層と含んでいる。エレクトロクロミック素子では、順電圧又は逆電圧を印加することにより、エレクトロクロミック化合物の発消色が行われる。
【0004】
エレクトロクロミック素子は、原理的に無色の状態と、カラー発色状態とを可逆的に変化させることができる。エレクトロクロミック素子は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)等多層の発色層を積層させることによって様々な色を発色できるため、多色カラー表示が可能な素子として期待されている。そこで、エレクトロクロミック素子を透明な表示デバイスや多色カラー表示が可能なデバイスに用いるためには、エレクトロクロミック化合物は、消色状態において無色透明の状態を有する材料により構成されていることが必要である。
【0005】
中性状態が透明であり、酸化状態で発色するエレクトロクロミック材料としては、例えば、トリアリールアミンを含むエレクトロクロミック組成物を重合した重合物を用いたエレクトロクロミック素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のエレクトロクロミック素子では、光の透過率の低下を抑える光耐久性の改善について記載されているが、発消色を繰り返し行っても発色の低下を抑える繰返し耐久性を向上させることについては記載されていない。
【0007】
本発明の一態様は、優れた繰返し耐久性及び光耐久性を有するエレクトロクロミック化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレクトロクロミック化合物の一態様は、
下記一般式(1):
【0009】
【化1】
(ただし、一般式(1)中、X1〜X3は、それぞれ独立して、炭素原子又はケイ素原子であり、R1〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択される。)
で表される構造を有する
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によるエレクトロクロミック化合物は、優れた繰返し耐久性及び光耐久性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す図である。
図2】第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す概略図である。
図3】実施例1−1のエレクトロクロミック素子の発色時における紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、本明細書において数値範囲を示すチルダ「〜」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
<エレクトロクロミック化合物>
一実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、トリアリールアミン骨格を有する。
【0014】
一実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、トリアリールアミン骨格を構成する窒素原子が、3つのフェニル基により置換された、トリフェニルアミン骨格を有するものを指す。
【0015】
本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、下記一般式(1)で表され、トリアリールアミン骨格を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
ただし、一般式(1)中、X1〜X3は、それぞれ独立して、炭素原子又はケイ素原子であり、R1〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択される。
【0018】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。
【0019】
一価の有機基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミノスルホニル基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリール基又はシリル基が挙げられる。これらは、置換基を有していてもよい。
【0020】
置換基を有する一価の有機基としては、例えば、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、モノアリールアミノカルボニル基又はジアリールアミノカルボニル基等の置換カルボニル基;アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、モノアルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、モノアリールアミノスルホニル基又はジアリールアミノスルホニル基等の置換スルホニル基;モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基等の置換アルキルアミノ基が挙げられる。
【0021】
置換基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基及びヘテロアリール基等が挙げられる。
【0022】
これらの置換基の中でも、炭素数1以上のアルキル基、炭素数2以上のアルケニル基、炭素数2以上のアルキニル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数2以上のヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びヘテロアリールオキシ基が好ましい。
【0023】
炭素数1以上のアルキル基としては、例えば、原料の入手性の点から、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。環状の炭素数1〜30のアルキル基の中でも、環状の炭素数1〜18のアルキル基がより好ましい。
【0024】
炭素数1以上のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−ブチルオクチル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はアダマンチル基が挙げられる。
【0025】
炭素数2以上のアルケニル基としては、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数2〜30のアルケニル基が好ましい。環状の炭素数2〜30のアルケニル基の中でも、環状の炭素数2〜18のアルケニル基がより好ましい。
【0026】
炭素数2以上のアルケニル基は、炭素数1以上のアルキル基の任意の水素を2つ取り去った置換基である。炭素数2以上のアルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプタニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基又はシクロヘキセニル基が挙げられる。
【0027】
炭素数2以上のアルキニル基としては、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数2〜30のアルキニル基が好ましい。環状の炭素数2〜30のアルキニル基の中でも、環状の炭素数2〜18のアルキニル基がより好ましい。
【0028】
炭素数2以上のアルキニル基は、炭素数1以上のアルキル基の任意の水素を4つ取り去った置換基である。炭素数2以上のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基、ドデシニル基又はオクタデシニル基が挙げられる。
【0029】
炭素数6以上のアリール基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−トリフルオロフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、ベンゾピレニル基又はクリセニル基が挙げられる。
【0030】
炭素数2以上のヘテロアリール基としては、例えば、炭素数2〜12のヘテロアリールが好ましい。
【0031】
炭素数2以上のヘテロアリール基の構成元素としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ケイ素原子又はセレン原子が挙げられる。これらの中でも、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択されるいずれか1種を含んでいることが好ましい。
【0032】
炭素数2以上のヘテロアリール基としては、例えば、単環系ヘテロアリール基又は多環系ヘテロアリール基が挙げられる。
【0033】
単環系ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、テトラジン、チオフェン環、フラン環、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール、オキサジアゾール環、トリアジン環、テトラゾール環又はトリアゾール環が挙げられる。
【0034】
多環系ヘテロアリール基としては、例えば、キノリン基、イソキノリン基、キナリゾン基、フタラジン基、インドール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチオジアゾール基、アクリジン基、フェノキサジン基、フェノチアジン基、カルバゾール基、ベンゾジチオフェン基、ベンゾジフラン基、ジベンゾフラン基又はジベンゾチオフェン基が挙げられる。
【0035】
多環系ヘテロアリール基は、アリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基か、アリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基でもよい。アリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基か、アリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基としては、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、1−フェニルナフタレン基又は2−フェニルナフタレン基が挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)中の、重合性官能基は、炭素−炭素2重結合を有し、重合可能な基であればいずれでもよい。重合性官能基としては、例えば、下記に示す、1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0037】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(i)で表される官能基が挙げられる。
【0038】
【化3】
【0039】
ただし、一般式(i)中、Xは、アリーレン基、アルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R100)−基(R100は、水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。)又はS−基を表す。アリーレン基又はアルケニレン基は、置換基を有してもよい。
【0040】
アリーレン基としては、例えば、フェニレン基又はナフチレン基が挙げられる。なお、フェニレン基は、置換基を有してもよい。
【0041】
アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基又はブテニレン基が挙げられる。
【0042】
アルキル基としては、例えば、メチル基又はエチル基が挙げられる。
【0043】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基又はフェネチル基が挙げられる。
【0044】
アリール基としては、例えば、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
【0045】
一般式(i)で表される官能基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基又はビニルチオエーテル基が挙げられる。
【0046】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(ii)で表される官能基が挙げられる。
【0047】
【化4】
【0048】
ただし、一般式(ii)中、Yは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基又は−COOR101基(R101は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基又はCONR102103(R102又はR103は、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。))を表す。これらの基は、いずれも置換基を有していてもよい。また、Xは、一般式(i)のX1と同一の置換基又はアルキレン基を表す。ただし、Y及びX2の少なくともいずれか一方が、オキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基又は芳香族環である。
【0049】
アルキル基としては、例えば、メチル基又はエチル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基又はフェネチル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基又はエトキシ基に加えて、エチレングリコール単位やプロピレングリコールが縮合した、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等も挙げられる。
【0050】
一般式(ii)で表される重合性官能基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基又はメタクリロイルアミノ基が挙げられる。
【0051】
なお、これらX、X及びYについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子;ニトロ基、シアノ基、メチル基又はエチル基等のアルキル基;メトキシ基又はエトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基又はナフチル基等のアリール基;ベンジル基又はフェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0052】
上記一般式(i)又は一般式(ii)で表される官能基の中でも、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0053】
上記一般式(1)中の、重合性官能基としては、酸化還元に対する耐性が高い点から、例えば、炭素数1以上のアルキル基;炭素数6以上のアリール基;構成炭素数7以上の、アルキル基で置換されたアリール基等の末端に置換されていることが好ましく、アルキル基の末端に置換されていることがより好ましい。
【0054】
重合性官能基は、本願の主骨格に少なくとも炭素数2以上のアルキル基を介して結合することが好ましい。
【0055】
1〜R3は、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択されることが好ましい。トリフェニルアミン骨格の窒素原子のパラ位は電子密度が高く、反応活性であるため、この部位を水素原子以外である、ハロゲン原子、一価の有機基又は重合性官能基で置換していることが好ましいからである。
【0056】
1〜R9のいずれか一つ以上が、重合性官能基であることが好ましい。これは、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物が重合膜として利用される場合、エレクトロクロミック化合物に重合性を付与できると共に、置換基の導入を容易にできるためである。
【0057】
1〜R3のいずれか一つ以上が、重合性官能基であることがより好ましい。
【0058】
また、R1〜R9は、色彩の変化が生じず、発色時に分子間で副反応が生じることを抑制する点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子又は重合性官能基のいずれかであることが好ましい。アルキル基の中でも、特にtert−ブチル基が好ましい。
【0059】
1〜R9が、一価の有機基である場合、一価の有機基は、炭素数1以上のアルキル基、炭素数2以上のアルケニル基、炭素数2以上のアルキニル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数2以上のヘテロアリール基、炭素数1以上のアルコキシ基、アリールオキシ基又はヘテロアリールオキシ基であることがより好ましい。
【0060】
1〜R9は、一つ以上のアリール基若しくはヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基又は一つ以上のアリール基若しくはヘテロアリール基が互いに縮環している基でもよい。一つ以上のアリール基若しくはヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基又は一つ以上のアリール基若しくはヘテロアリール基が互いに縮環している基は、合計炭素数が1〜100であり、ヘテロ原子を含んでもよい基である。合計炭素数の上限値は50であることが好ましく、36であることがより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が挙げられる。
【0061】
エレクトロクロミック化合物としての消色時の透明性を考慮すると、一つ以上のアリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基か、一つ以上のアリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基の単体での吸収端は、400nm以下であることが好ましい。より好ましくは380nm以下である。
【0062】
アリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基か、アリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基の数は、1〜6の間で選択することができるが、1〜3が好ましく、より好ましくは1〜2である。発色団に属するトリフェニルアミンに対して、発色に寄与しない、アリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基や、アリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基の著しい増大は、発色効率や材料コストの観点から好ましくない。
【0063】
10〜R15についても、ハロゲン原子、一価の有機基及び重合性官能基からなる群より選択されることが好ましい。ベンジル位の水素は酸性度が高く、反応活性であるため、この部位は水素原子以外である、ハロゲン原子、一価の有機基又は重合性官能基で置換されていることが好ましいからである。R10〜R15は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子又は重合性官能基のいずれかであることがより好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又は重合性官能基のいずれかであることが最も好ましい。重合性官能基は、アルキル基又はアリール基の一部、特に末端に存在することが好ましい。
【0064】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、以下に示す例示化合物が挙げられる。なお、以下に示す例示化合物において、MeO−は、メトキシ基を表わす。また、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、これらに限定されるものではない。
【0065】
<例示化合物1>
【0066】
【化5】
【0067】
<例示化合物2>
【0068】
【化6】
【0069】
<例示化合物3>
【0070】
【化7】
【0071】
<例示化合物4>
【0072】
【化8】
【0073】
<例示化合物5>
【0074】
【化9】
【0075】
<例示化合物6>
【0076】
【化10】
【0077】
<例示化合物7>
【0078】
【化11】
【0079】
<例示化合物8>
【0080】
【化12】
【0081】
<例示化合物9>
【0082】
【化13】
【0083】
<例示化合物10>
【0084】
【化14】
【0085】
<例示化合物11>
【0086】
【化15】
【0087】
<例示化合物12>
【0088】
【化16】
【0089】
<例示化合物13>
【0090】
【化17】
【0091】
<例示化合物14>
【0092】
【化18】
【0093】
<例示化合物15>
【0094】
【化19】
【0095】
<例示化合物16>
【0096】
【化20】
【0097】
<例示化合物17>
【0098】
【化21】
【0099】
<例示化合物18>
【0100】
【化22】
【0101】
<例示化合物19>
【0102】
【化23】
【0103】
<例示化合物20>
【0104】
【化24】
【0105】
<例示化合物21>
【0106】
【化25】
【0107】
<例示化合物22>
【0108】
【化26】
【0109】
<例示化合物23>
【0110】
【化27】
【0111】
<例示化合物M1>
【0112】
【化28】
【0113】
<例示化合物M2>
【0114】
【化29】
【0115】
<例示化合物M3>
【0116】
【化30】
【0117】
<例示化合物M4>
【0118】
【化31】
【0119】
<例示化合物M5>
【0120】
【化32】
【0121】
<例示化合物M6>
【0122】
【化33】
【0123】
<例示化合物M7>
【0124】
【化34】
【0125】
<例示化合物M8>
【0126】
【化35】
【0127】
<例示化合物M9>
【0128】
【化36】
【0129】
<例示化合物M10>
【0130】
【化37】
【0131】
<例示化合物M11>
【0132】
【化38】
【0133】
<例示化合物M12>
【0134】
【化39】
【0135】
このように、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、上記一般式(1)で表される、トリアリールアミン骨格を有するラジカル重合性化合物とし、X1〜X3、及びR1〜R15を所定の元素又は基とすることができる。これにより、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、酸化還元プロセスに類似する静電的帯電除電の繰返し耐久性、及び光耐久性を向上させることができる。
【0136】
エレクトロクロミック化合物をエレクトロクロミック素子に適用するに当たり、エレクトロクロミック化合物はエレクトロクロミック素子の要求物性に適応する必要がある。エレクトロクロミック素子の要求物性としては、例えば、エレクトロクロミック組成物が中性状態で透明であること、エレクトロクロミック組成物が溶解性を有すること、エレクトロクロミック層が積層可能であること等がある。本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、こうしたエレクトロクロミック素子の要求物性に適応することができる。
【0137】
<エレクトロクロミック化合物の合成>
本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、以下の、合成スキーム例1及び合成スキーム例2のいずれかの手法で効率的に合成することができる。本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、J. Mater. Chem., 22, 2017, 15397-15404.やOrg. Lett., Vol. 11, No. 7, 2009に記載の方法を応用して合成することができる。
【0138】
合成スキーム例1
【0139】
【化40】
【0140】
オルト位にエステル基を有する芳香族アミン化合物(I)に対して、同じくオルト位にエステル基を有するハロゲン又はトリフラート化合物(I-I)を反応させる。対称型のトリフェニルアミンを得る場合は、2当量前後でよい。この際の反応には、例えば有機金属触媒と塩基を用いた炭素-窒素カップリング反応を用いることができ、Ullman縮合やBuchwald-Hartwigカップリング等の人名反応を用いることができる。非対称のトリフェニルアミンを得る場合は、続けて、(I-II)を(I-I)と同様の条件で反応させ、トリフェニルアミン誘導体(III)を得る。
【0141】
なお、上記スキーム中、R1〜R15は、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基である。X1及びX2は、ハロゲン原子及びトリフラート基である。
【0142】
合成スキーム例2
【0143】
【化41】
【0144】
続けて、トリフェニルアミン誘導体(III)を(III-I)で示される有機金属化合物と反応させる。例えば、有機リチウム化合物、Grignard試薬や有機亜鉛化合物等を好適に用いることができる。これにより、エステルを3級アルコールへと変換し、(IV)で示される誘導体を得る。
【0145】
続けて、トリフェニルアミン誘導体(IV)を(IV-I)で示される試薬を加えて、分子内フリーデルクラフツ反応を行うことで、脱水環化した、(V)で示される本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物を得ることができる。ここで、(IV-I)で示される試薬としては、85%リン酸、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フッ化水素酸、ポリリン酸、五酸化二リン等の酸又は脱水剤を好適に用いることができる。塩化アルミニウム(III)や酸フッ化ホウ素等のルイス酸も用いることができる。
【0146】
さらに、トリフェニルアミン骨格のパラ位(上記スキーム中、式(V)におけるR1〜R3)が水素原子の場合、従来より公知の方法を用いて、高効率にハロゲン化を行うことができる。例えば、クロロホルム中、N−ブロモスクシンイミドを当量反応させることにより、臭素原子を導入することができる。N−ヨードスクシンイミドなどに置き換えることで同様にヨウ素化も可能である。これらのハロゲン誘導体は、従来公知のカップリング反応(例えば、ホウ素誘導体との鈴木−宮浦カップリング反応や、有機錫化合物とのStille−右田−小杉カップリング、アルケンやアルキン化合物とのHeck反応や薗頭カップリングなど)を行うことで、さらなる誘導体化が可能である。
【0147】
<エレクトロクロミック組成物>
本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物を含む。
【0148】
本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、トリアリールアミン骨格を有するラジカル重合性化合物である。そのため、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、後述する本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の第1の電極の表面において酸化還元反応を有するエレクトロクロミック機能を付与するために重要である。
【0149】
本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物以外に、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物以外の他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
【0150】
(ベンジジン化合物)
本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、他のラジカル重合性化合物として、ベンジジン化合物を含むことができる。ベンジジン化合物としては、テトラフェニルベンジジン骨格を有する化合物(テトラフェニルベンジジン化合物)等を用いることができる。本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、ベンジジン化合物としてテトラフェニルベンジジン化合物を含むことで、後述のように、中性状態で透明となり、一電子酸化状態において安定した光学特性を発揮できる。
【0151】
テトラフェニルベンジジン化合物は、ベンジジン骨格のアミノ基に置換した4つのフェニル基のパラ位が水素以外の置換基、例えばアルキル基、アルコキシ基又はラジカル重合性置換基等で置換されていることが好ましい。末端が水素のベンジジン化合物は、一電子酸化状態において反応して多量化する可能性がある。多量化すると、末端が水素のベンジジン化合物は、酸化電位が変化等することで、発色時の色彩が変化する可能性がある。テトラフェニルベンジジン化合物は、ベンジジン骨格のアミノ基に置換した4つのフェニル基のパラ位が水素以外の置換基で置換されると、電気化学的な安定性を向上させることができる。これにより、テトラフェニルベンジジン化合物は、一電子酸化状態において多量化するのを抑えることができるので、発色時の色彩の変化を抑制する等、安定した光学特性を発揮できる。
【0152】
テトラフェニルベンジジン化合物は、そのまま用いることができるし、共重合して用いることができる。そのため、テトラフェニルベンジジン化合物は、ラジカル重合性置換基を有していてもよい。ラジカル重合性置換基については、一実施形態に係るエレクトロクロミック化合物と同様の範囲で適宜変更することができ、前記、パラ位のアルキル基やアルコキシ基の末端など、テトラフェニルベンジジン化合物の一部に存在していても良い。特に好ましくはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基である。
【0153】
テトラフェニルベンジジン化合物は、中性状態では可視域において、透明、すなわち紫外可視吸収スペクトルの吸収端が430nm以下であることが好ましく、より好ましくは420nm以下であり、最も好ましくは410nm以下である。加えて、テトラフェニルベンジジン化合物は、一電子酸化時に、黄色や橙色に発色することが好ましく、可視域(380nm〜780nm)におけるピーク波長は450nm〜550nm付近にあることが好ましく、吸収端は550nm〜650nmの範囲にあることが好ましい。テトラフェニルベンジジン化合物を青色に発色する一実施形態に係るエレクトロクロミック化合物と組み合わせた際、相補的に可視域の吸収を有することで黒色発色が可能になるためである。
【0154】
上記光学物性を満たしうるテトラフェニルベンジジン化合物の具体的な例示化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、テトラフェニルベンジジン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0155】
<例示化合物B1>
【0156】
【化42】
【0157】
<例示化合物B2>
【0158】
【化43】
【0159】
<例示化合物B3>
【0160】
【化44】
【0161】
<例示化合物B4>
【0162】
【化45】
【0163】
<例示化合物B5>
【0164】
【化46】
【0165】
<例示化合物B6>
【0166】
【化47】
【0167】
<例示化合物B7>
【0168】
【化48】
【0169】
<例示化合物B8>
【0170】
【化49】
【0171】
<例示化合物B9>
【0172】
【化50】
【0173】
<例示化合物B10>
【0174】
【化51】
【0175】
<例示化合物B11>
【0176】
【化52】
【0177】
<例示化合物B12>
【0178】
【化53】
【0179】
<例示化合物B13>
【0180】
【化54】
【0181】
<例示化合物B14>
【0182】
【化55】
【0183】
<例示化合物B15>
【0184】
【化56】
【0185】
(他のラジカル重合性化合物)
他のラジカル重合性化合物は、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物とは異なり、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する化合物である。トリフェニルアミン骨格やベンジジン骨格を有する化合物を複数用いることもできる。
【0186】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、1官能のラジカル重合性化合物、2官能のラジカル重合性化合物、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー又はラジカル重合性オリゴマーが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基としては、実施形態に係るエレクトロクロミック化合物におけるラジカル重合性官能基と同様であり、これらの中でも、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0187】
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート又はスチレンモノマーが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0188】
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート又はネオペンチルグリコールジアクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0189】
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート又は2,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記において、EO変性はエチレンオキシ変性を指し、PO変性はプロピレンオキシ変性を指す。
【0190】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート又は2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの;特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位が20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル又はジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー;アクリレート又はメタクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0191】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー又はポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0192】
本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物及び他のラジカル重合性化合物は重合反応により共重合することができる。少なくともいずれか一方がラジカル重合性官能基を2つ以上有していることが、重合物又は架橋物を形成する点から好ましい。重合物又は架橋物は、その機械的強度に加えて、各種有機溶媒や電解質等に溶解することがなく、多層構造を形成する上で層間のマイグレーションが少ないという点で好ましい。
【0193】
本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物の含有量は、エレクトロクロミック組成物の全量に対して、10質量%〜100質量%が好ましく、30質量%〜90質量%がより好ましい。含有量が10質量%以上であると、後述するエレクトロクロモック素子における第1のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現でき、加電圧による繰り返しの使用で耐久性が良好であり、発色感度が良好である。含有量が100質量%以下であれば、第1のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能は発現でき、厚みに対する発色感度も十分高い。なお、含有量が100質量%であると、エレクトロクロミック化合物と電荷の授受に必要であるイオン性液体との相溶性が低くなる場合があるため、加電圧による繰り返しの使用で耐久性の低下等による電気特性が劣化する可能性がある。エレクトロクロミック化合物が使用されるプロセスによって要求される電気特性が異なるが、発色感度と繰返し耐久性の両特性のバランスを考慮すると、含有量は、30質量%〜90質量%であることがより好ましい。
【0194】
また、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物は、フィラーや重合開始剤を含有することが好ましい。
【0195】
(フィラー)
フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
【0196】
無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;酸化ケイ素(シリカ)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)又は錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性、安定性及び表面処理の容易性等の点から、金属酸化物が好ましく、シリカ、アルミナ及びアンチモンをドープした酸化錫(ATO)が特に好ましい。
【0197】
有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリオレフィン、シリコーン若しくはポリテトラフルオロエチレン等の樹脂、脂肪酸等の低分子化合物又はフタロシアニン等の顔料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性及び不溶性の点から、樹脂が好ましい。フィラーの平均一次粒子径は、1μm以下が好ましく、10nm〜1μmがより好ましい。フィラーの平均一次粒子径が、1μm以下であると、粗大粒子が存在せず、得られる膜の表面状態が良好であり、表面平滑性に優れている。
【0198】
フィラーの含有量は、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、固形分濃度で、0.3質量部〜1.5質量部が好ましく、0.6質量部〜0.9質量部がより好ましい。含有量が、0.3質量部以上であると、フィラー添加効果が充分に得られ、製膜性が良好であり、1.5質量部以下であると、トリアリールアミン化合物の割合が適切であり、作製したエレクトロクロミック素子の良好な電気化学特性が得られる。
【0199】
(重合開始剤)
本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、一実施形態に係るエレクトロクロミック化合物と他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられるが、重合効率の観点から光重合開始剤が好ましい。
【0200】
熱重合開始剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱重合開始剤としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0201】
光重合開始剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
【0202】
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物又はイミダゾール系化合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0203】
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル又は4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。
【0204】
重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
【0205】
(その他の成分)
さらに、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、界面活性剤又は酸化防止剤が挙げられる。
【0206】
また、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、架橋剤を含み、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物を重合した共重合物(例えば、線状(linear)構造の線状共重合体等)でもよい。また、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物を架橋して、分岐構造又は三次元の網状構造を有する架橋物でもよい。架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、単官能(メタ)アクリレート、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数有するポリイソシアネートが特に好ましい。
【0207】
本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物を含んでいるため、エレクトロクロミック素子の要求物性に適応することができる。エレクトロクロミック素子の要求物性としては、上記の通り、例えば、エレクトロクロミック組成物が中性状態で透明であること、溶解性を有すること、エレクトロクロミック層が積層可能であること等である。
【0208】
<エレクトロクロミック素子>
本実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる電解質層とを有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、第1の電極上に、上述の本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミック層を有するか、電解質層に、上述の本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含んでいる。
【0209】
本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、優れた光耐久性および繰返し耐久性を有し、エレクトロクロミック素子の要求物性を満たすことができる。そこで、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、上述の本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物をエレクトロクロミック素子の最適な構成条件、構成位置で適用する。これにより、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、従来のエレクトロクロミック素子技術をよりも優れた効果、特に、優れた繰返し耐久性及び光耐久性を有することができる。
【0210】
以下、本実施形態では、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子が、上述の本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミック層を第1の電極上に有する場合を、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子と称する。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子が、上述の本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を電解質層に含んでいる場合を、第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子と称する。以下、それぞれの実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。
【0211】
[第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子]
第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また、層構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては第1の支持体を下に配置した図と共に説明がなされるが、実施形態は、必ずしもこの配置で、製造又は使用等がなされるわけではない。また、以下の説明において、第1の支持体の厚み方向の一方を上又は上方といい、支持体の厚み方向の他方を下又は下方という場合がある。
【0212】
図1は、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aは、第1の支持体11と、表示電極(第1の電極)12と、第1のエレクトロクロミック層13と、電解質層14Aと、第2のエレクトロクロミック層15と、対向電極(第2の電極)16と、第2の支持体17とを有する。これらの部材は、第1の支持体11側からこの順に積層して構成される。
【0213】
第1の支持体11はその上面に表示電極12を設け、第1のエレクトロクロミック層13は表示電極12上に設けられている。一方、第2の支持体17は、その下面に対向電極16を設け、第2のエレクトロクロミック層15は、対向電極16の下面に設けられている。表示電極12と対向電極16とは、所定の間隔を有するように対向して設けられており、電解質層14Aは、両電極(表示電極12と対向電極16)間に設けられている。
【0214】
本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aでは、第1のエレクトロクロミック層13が表示電極12の表面で酸化還元反応により発消色し、第2のエレクトロクロミック層15が対向電極16の表面で酸化還元反応により発消色する。
【0215】
以下、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aを構成するそれぞれの部材について説明する。
【0216】
[第1のエレクトロクロミック層]
第1のエレクトロクロミック層は、上述の本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含んでいる。なお、本実施形態においては、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物は、後述する第2のエレクトロクロミック組成物と区別するため、第1のエレクトロクロミック化合物と称する。
【0217】
本実施形態では、第1のエレクトロクロミック組成物は、上述の通り、本実施形態に係るエレクトロクロミック化合物と、他のラジカル重合性化合物とを含むことが、第1のエレクトロクロミック組成物の重合体の溶解性及び耐久性の点から好ましい。
【0218】
第1のエレクトロクロミック層は、第1の電極上に一層積層されているが、これに限定されず、複数積層されていてもよい。
【0219】
第1のエレクトロクロミック層は第1の電極上の全面に積層されているが、これに限定されず、第1の電極上の一部に積層されていてもよい。
【0220】
第1のエレクトロクロミック層は、後述するエレクトロクロミック素子の製造方法により形成することができる。第1のエレクトロクロミック層の平均厚みは、0.1μm〜30μmが好ましく、0.4μm〜10μmがより好ましい。
【0221】
[第1の電極及び第2の電極]
第1の電極及び第2の電極の材料としては、導電性を有する透明材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電極及び第2の電極の材料としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(以下、「ITO」と称する)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と称する)又は酸化亜鉛等の無機材料が挙げられる。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In及びZnOが好ましい。
【0222】
更に、透明性を有するカーボンナノチューブや、他のAu、Ag、Pt又はCu等の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して、透明度を保持したまま、導電性を改善した電極を用いてもよい。
【0223】
第1の電極及び第2の電極の各々の厚みは、第1のエレクトロクロミック層又は第2のエレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整される。第1の電極及び第2の電極の材料としてITOを用いた場合、第1の電極及び第2の電極の各々の厚みは、例えば、50nm〜500nmが好ましい。
【0224】
第1の電極及び第2の電極の各々の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。第1の電極及び第2の電極の各々の材料が塗布形成できるものであれば特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法又はインクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0225】
[電解質層]
電解質層は、第1の電極と第2の電極との間に充填された電解質により形成される。電解質は、例えば、第1の電極と第2の電極との間に設けられた複数の注入孔を有する封止材から挿入され、第1の電極と第2の電極との間に充填される。
【0226】
電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類又はアルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO又はMg(BF等が挙げられる。
【0227】
電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。これらの中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有しているため、好ましい。有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N−ジメチルイミダゾール塩、N,N−メチルエチルイミダゾール塩、N,N−メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N−ジメチルピリジニウム塩、N,N−メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF、CFSO、PF、(CFSO又はテトラシアノボロンアニオン(B(CN)4)が挙げられる。
【0228】
電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体を用いることが好ましい。イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー及び液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、溶解性が悪い場合は、少量の溶媒に溶解させて、該溶液を光重合性モノマー、オリゴマー及び液晶材料のいずれかと混合して用いればよい。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0229】
電解質は低粘性の液体である必要はなく、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型等の様々な形態をとることが可能である。電解質はゲル状、固体状に形成することで、素子強度向上、信頼性向上等の利点が得られる。固体化手法としては、電解質と溶媒をポリマー樹脂中に保持することが好ましい。これにより、高いイオン伝導度と固体強度が得られるためである。更に、ポリマー樹脂としては光硬化可能な樹脂が好ましい。熱重合や溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間でエレクトロクロミック素子を製造できるためである。電解質からなる電解質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm〜10μmが好ましい。
【0230】
[第2のエレクトロクロミック層]
第2のエレクトロクロミック層は、第2の電極の下面に一層積層されているが、これに限定されず、複数層積層されていてもよい。また、第2のエレクトロクロミック層は第2の電極の下面の全面に積層されているが、これに限定されず、第2の電極の下面の一部に積層されていてもよい。
【0231】
第2のエレクトロクロミック層は、下記一般式(I)で表される化合物(ビオロゲン化合物)で表わされる第2のエレクトロクロミック化合物を含むことができる。第2のエレクトロクロミック層は、下記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物を導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体(導電性乃至半導体性ナノ構造体)に含むエレクトロクロミック複合体を含む。下記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物は、導電性乃至半導体性ナノ構造体に結合又は吸着可能である。エレクトロクロミック複合体は、エレクトロクロミック素子に用いられたとき、主に青色を発光し、更に画像のメモリー性、即ち、発色画像保持性に優れるものとなる。
【0232】
【化57】
【0233】
また、第2のエレクトロクロミック層は、上記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物以外に、特開2017−111434号公報に記載の下記一般式(II)で示されるようなホスホン酸化合物又は直鎖アルキルホスホン酸等を単独若しくはビオロゲン化合物と共吸着させて用いてもよい。
【0234】
【化58】
【0235】
(ビオロゲン化合物)
上記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物について説明する。
【0236】
上記一般式(I)中、R1、R2は、各々水素原子、炭素原子数14までのアリール基、ヘテロアリール基、炭素原子数10までの分岐アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又は水酸基に対して結合することができる官能基を表す。n、mは、それぞれ0又は1〜10の整数を表す。X-は、荷電を中和するイオンを表す。
【0237】
より好ましい形態としては、R1又はR2のいずれかが、水酸基に対して結合することができる官能基である。これにより、透明電極(例えば、ITO)等への吸着、固定化が可能となる。また、透明電極上に金属酸化物による担持粒子を設けた場合にも、同様に、透明電極への吸着、固定化が可能となるため、有利である。更に好ましい形態としては、R1及びR2の両方が、水酸基に対して結合することができる官能基である。
【0238】
水酸基に対して結合することができる官能基としては、例えば、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、スルホニル基、シリル基又はシラノール基が挙げられる。これらの中でも、合成の簡便さ、透明電極上に金属酸化物による担持粒子を設けた場合の担持粒子への吸着性及び化合物の安定性の点から、ホスホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基が好ましく、ホスホン酸基がより好ましい。
【0239】
ホスホン酸基としては、例えば、メチルホスホン酸基、エチルホスホン酸基、プロピルホスホン酸基、ヘキシルホスホン酸基、オクチルホスホン酸基、デシルホスホン酸基、ドデシルホスホン酸基、オクタデシルホスホン酸基、ベンジルホスホン酸基、フェニルエチルホスホン酸基、フェニルプロピルホスホン酸基又はビフェニルホスホン酸基が挙げられる。
【0240】
リン酸基としては、例えば、メチルリン酸基、エチルリン酸基、プロピルリン酸基、ヘキシルリン酸基、オクチルリン酸基、デシルリン酸基、ドデシルリン酸基、オクタデシルリン酸基、ベンジルリン酸基、フェニルエチルリン酸基、フェニルプロピルリン酸基又はビフェニルリン酸基が挙げられる。
【0241】
カルボキシル基としては、例えば、メチルカルボン酸基、エチルカルボン酸基、プロピルカルボン酸基、ヘキシルカルボン酸基、オクチルカルボン酸基、デシルカルボン酸基、ドデシルカルボン酸基、オクタデシルカルボン酸基、ベンジルカルボン酸基、フェニルエチルカルボン酸基、フェニルプロピルカルボン酸基、ビフェニルカルボン酸基、4−プロピルフェニルカルボン酸基又は4−プロピルビフェニルカルボン酸基が挙げられる。
【0242】
スルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、デシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、オクタデシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、フェニルエチルスルホニル基、フェニルプロピルスルホニル基又はビフェニルスルホニル基が挙げられる。
【0243】
シリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、ヘキシルシリル基、オクチルシリル基、デシルシリル基、ドデシルシリル基、オクタデシルシリル基、ベンジルシリル基、フェニルエチルシリル基、フェニルプロピルシリル基又はビフェニルシリル基が挙げられる。
【0244】
シラノール基としては、例えば、メチルシラノール基、エチルシラノール基、プロピルシラノール基、ヘキシルシラノール基、オクチルシラノール基、デシルシラノール基、ドデシルシラノール基、オクタデシルシラノール基、ベンジルシラノール基、フェニルエチルシラノール基、フェニルプロピルシラノール基又はビフェニルシラノール基が挙げられる。
【0245】
上記一般式(I)中の、荷電を中和するイオンX-は、それぞれ1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば、特に限定されるものではない。荷電を中和するイオンX-としては、例えば、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、Iイオン(I)、OTf(トリフラート)イオン(OTf)、ClOイオン(ClO)、PFイオン(PF)又はBFイオン(BF)が好ましい。
【0246】
ビオロゲン化合物は、一定長のアルキル鎖を有した対称系であることが好ましい。このとき、一般式(I)において、m及びnは、いずれも4〜10であることが好ましく、mとnが等しい整数であることが好ましい。
【0247】
ビオロゲン化合物の具体的な例示化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、ビオロゲン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0248】
<例示化合物A>
【0249】
【化59】
【0250】
<例示化合物B>
【0251】
【化60】
【0252】
<例示化合物C>
【0253】
【化61】
【0254】
<例示化合物D>
【0255】
【化62】
【0256】
<例示化合物E>
【0257】
【化63】
【0258】
<例示化合物F>
【0259】
【化64】
【0260】
<例示化合物G>
【0261】
【化65】
【0262】
<例示化合物H>
【0263】
【化66】
【0264】
<例示化合物I>
【0265】
【化67】
【0266】
<例示化合物J>
【0267】
【化68】
【0268】
<例示化合物K>
【0269】
【化69】
【0270】
(導電性乃至半導体性ナノ構造体)
導電性乃至半導体性ナノ構造体について説明する。
【0271】
導電性乃至半導体性ナノ構造体は、透明が望ましい。
【0272】
上記の、一般式(I)中のR〜Rで選択される少なくとも一つが水酸基に対して結合することができる官能基であり、ビオロゲン化合物の導電性乃至半導体性ナノ構造体への結合又は吸着構造には、ホスホン酸基、スルホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基等が用いられる。この場合、第2のエレクトロクロミック化合物は、容易にナノ構造体と複合化し、発色画像保持性に優れるエレクトロクロミック複合体となる。
【0273】
ホスホン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基としては、ビオロゲン化合物中に複数有していてもよい。また、ビオロゲン化合物が、シリル基、シラノール基等を有するとき、シロキサン結合を介してナノ構造体と結合されてその結合は強固なものとなり、安定なエレクトロクロミック複合体を得ることができる。なお、シロキサン結合とは、ケイ素原子及び酸素原子を介した化学結合をいう。
【0274】
また、エレクトロクロミック複合体は、ビオロゲン化合物とナノ構造体がシロキサン結合を介して結合した構造をしていればよく、その結合方法及び形態については特に制限されない。
【0275】
導電性乃至半導体性ナノ構造体とは、ナノ粒子又はナノポーラス構造体等のナノスケールの凹凸を有する構造体をいう。導電性乃至半導体性ナノ構造体を構成する材料としては、透明性及び導電性の点から、金属酸化物が好適に挙げられる。
【0276】
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、酸化インジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム又はアルミノシリケートを主成分とするものが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気伝導性等の電気的特性、光学的性質等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム及び酸化タングステンが好ましく、酸化チタンがより好ましい。金属酸化物又は金属酸化物の混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れる。
【0277】
金属酸化物の形状としては、平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物微粒子であることが好ましい。平均一次粒子径が小さいほど、金属酸化物に対する光の透過率が向上し、エレクトロクロミック複合体における単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」という。)を大きくすることができる。大きな比表面積を有することで、より効率的に、第2のエレクトロクロミック化合物が導電性乃至半導体性ナノ構造体に担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色カラー表示することができる。エレクトロクロミック複合体の比表面積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、100m/g以上であることが好ましい。
【0278】
なお、金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は、金属酸化物微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて任意に100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して粒径を求め、その平均値を平均一次粒子径とする。
【0279】
第2のエレクトロクロミック層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。また、第2のエレクトロクロミック層の材料が塗布形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法又はインクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
【0280】
第2のエレクトロクロミック層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm〜5.0μmが好ましい。平均厚みが、0.2μm以上であると、発色濃度が得られ、5.0μm以下であれば、製造コストの増大が抑えられると共に、着色による視認性の低下を抑制することができる。第2のエレクトロクロミック層は、真空製膜により形成することも可能であるが、生産性の点で、粒子分散ペーストとして塗布形成することが好ましい。
【0281】
[第1の支持体及び第2の支持体]
第1の支持体及び第2の支持体(支持体)は、第1の電極、第1のエレクトロクロミック層、第2の電極、第2のエレクトロクロミック層等を支持する機能を有する。支持体としては、各層を支持できる透明材料であれば、周知の有機材料や無機材料をそのまま用いることができる。
【0282】
支持体としては、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス又はソーダ石灰ガラス等のガラス基板を用いることができる。また、支持体としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリイミド系樹脂等の樹脂基板を用いてもよい。また、支持体の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、紫外線耐性及び視認性を高めるために、透明絶縁層、UVカット層又は反射防止層等がコーティングされていてもよい。
【0283】
支持体の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形であっても円形であってもよい。支持体は、複数の重ね合わせでもよく、例えば、2枚のガラス基板でエレクトロクロミック素子を挟持する構造にすることで、水蒸気バリア性及びガスバリア性を高めることが可能である。
【0284】
[その他の部材]
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性多孔質層、劣化防止層、保護層等が挙げられる。
【0285】
(絶縁性多孔質層)
絶縁性多孔質層は、第1の電極と第2の電極とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。絶縁性多孔質層の材料としては、多孔質であれば特に制限はなく、絶縁性及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料や無機材料及びそれらの複合体を用いることが好ましい。
【0286】
絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、焼結法(高分子微粒子や無機粒子を、バインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等が挙げられる。
【0287】
(劣化防止層)
劣化防止層の役割は、第1のエレクトロクロミック層及び第2のエレクトロクロミック層と逆の化学反応をし、電荷のバランスをとって第1の電極や第2の電極が不可逆的な酸化還元反応により腐食や劣化することを抑制することである。なお、逆反応とは、劣化防止層が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む。
【0288】
劣化防止層の材料としては、第1の電極及び第2の電極の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。劣化防止層の材料としては、例えば、酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫又はそれらを複数含む導電性若しくは半導体性金属酸化物を用いることができる。劣化防止層は、電解質の注入を阻害しない程度の多孔質薄膜から構成することができる。例えば、酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の導電性又は半導体性金属酸化物微粒子を、例えば、アクリル系、アルキド系、イソシアネート系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系等のバインダにより第2の電極に固定化することで、電解質の浸透性と、劣化防止層としての機能を満たす、好適な多孔質薄膜を得ることができる。
【0289】
(保護層)
保護層は、外的応力や洗浄工程の薬品からエレクトロクロミック素子を守ること、電解質の漏洩を防ぐこと、大気中の水分や酸素等のエレクトロクロミック素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐため等に用いられる。
【0290】
保護層の材料としては、例えば、紫外線硬化型や熱硬化型の樹脂を用いることができ、具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0291】
保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜200μmが好ましい。
【0292】
[第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法]
第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法の一例について説明する。
【0293】
まず、第1の支持体11上に表示電極12を形成する。その後、実施形態に係るエレクトロクロミック化合物及び他のラジカル重合性化合物を含む第1のエレクトロクロミック組成物を含有する塗布液(電解質液)を表示電極12上に塗布する。これにより、第1の支持体11上に、順次、表示電極12、第1のエレクトロクロミック層13が形成された第1の積層体を作製する。
【0294】
実施形態に係るエレクトロクロミック化合物及び他のラジカル重合性化合物については、第1実施形態のエレクトロクロミック素子で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0295】
塗布液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0296】
なお、溶媒による希釈率は、第1のエレクトロクロミック組成物の溶解性、塗工法又は第1エレクトロクロミック層の厚み等により変わり、適宜選択することができる。
【0297】
塗布は、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法又はリングコート法等により行うことができる。
【0298】
また、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法では、塗布した第1のエレクトロクロミック組成物に対し、外部からエネルギーを与えて重合・架橋する工程(重合・架橋工程)を含んでもよい。
【0299】
重合・架橋工程では、第1の電極上に第1のエレクトロクロミック組成物を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、第1のエレクトロクロミック層を形成する。外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線等が挙げられる。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気又は各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い、塗工表面側、又は支持体側から加熱することによって行われる。
【0300】
加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜170℃が好ましい。光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm2〜15,000mW/cm2が好ましい。
【0301】
次に、第2の支持体17上に対向電極16を形成する。その後、第2のエレクトロクロミック組成物及び導電性乃至半導体性ナノ構造体を含むエレクトロクロミック複合体を含有する塗布液を対向電極16上に塗布する。これにより、第2の支持体17上に、順次、対向電極16、第2のエレクトロクロミック層15が形成された第2の積層体を作製する。
【0302】
エレクトロクロミック複合体に含まれる第2のエレクトロクロミック組成物及び導電性乃至半導体性ナノ構造体は、第1実施形態のエレクトロクロミック素子で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0303】
次に、第1の積層体と第2の積層体との間に電解質液を塗布し、第1の積層体と第2の積層体とを電解質層14Aを介して設ける。これにより、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aが製造される。電解質層14Aを構成する電解質が光や熱によって硬化可能である場合、第1の積層体と第2の積層体とを電解質を介して貼り合せた後に硬化させる。
【0304】
なお、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法では、更に必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
【0305】
その他の工程として、例えば、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aが絶縁性多孔質層を含む場合、絶縁性多孔質層を第1のエレクトロクロミック層13上に形成する工程が含まれていてもよい。また、絶縁性多孔質層は、第2のエレクトロクロミック層15の下面上に形成されてもよいし、電解質層14Aを構成する電解質と混合されてもよい。
【0306】
その他、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aは、劣化防止層や保護層を含む場合、これらの層を本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10A内に形成する工程が含まれていてもよい。
【0307】
[第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子]
第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bは、上述の図1に示す第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aの第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15を設けていないものである。そして、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bは、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aの電解質層14Aに代えて、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含んだ電解質層を用いたものである。
【0308】
図2は、第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bは、第1の支持体11と、表示電極12と、電解質層14Bと、対向電極16と、第2の支持体17とを有する。これらの部材は、第1の支持体11側からこの順に積層して構成される。電解質層14Bは、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物と電解質と含んで構成されている。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bを構成するそれぞれの部材は、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0309】
[第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法]
第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bの製造方法は、上述の図1に示す第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aの第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15を設ける工程を含んでいない。そして、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bの製造方法は、電解質層14Aに代えて、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含んだ電解質層14Bを形成する工程を含む。
【0310】
すなわち、第1の支持体11上に表示電極12を形成する。第2の支持体17上に対向電極16を形成する。
【0311】
次に、実施形態に係るエレクトロクロミック組成物及び電解質を含む電解質液を準備する。その後、表示電極12と対向電極16との間に電解質液を塗布し、表示電極12と対向電極16とを電解質層14Bを介して設ける。これにより、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bが製造される。
【0312】
上記各実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、光耐久性及び繰返し耐久性に優れている。そのため、上記各実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、例えば、エレクトロクロミックディスプレイ、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー又は調光ガラス等の調光素子に好適に使用することができる。また、上記各実施形態に係るエレクトロクロミック素子は、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリー、電子ペーパー又は電子アルバム等に好適に使用することができる。
【0313】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例】
【0314】
以下、本実施形態の実施例を説明するが、本実施形態は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0315】
<実施例1>
(合成例1)エレクトロクロミック化合物1の合成
以下の合成スキーム(1)に従い、エレクトロクロミック化合物1を合成した。
【0316】
合成スキーム(1)
【0317】
【化70】
【0318】
(化合物1−1の合成)
Zhen Fang, et. al., J. Mater. Chem., 22, 2017, 15397-15404.に記載の方法に従って、下記化合物1−1を合成した。
【0319】
【化71】
【0320】
(化合物1−2の合成)
4つ口フラスコに、化合物1−1(2.78g、5.0mmol)、2−プロピン−1−オール(0.34g、6.0mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(10mL)、テトラヒドロフラン(以下THF、30mL)を入れ、アルゴンガスで15分間脱気した後、ヨウ化銅(I)(5mol%、47mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(5mol%、175mg)を加え、アルゴン雰囲気下、内温70℃で12時間加熱撹拌を行った。溶液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過を行った。シリカゲルを酢酸エチルで洗浄し、合わせたろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3、体積比)で精製した。その後、精製した残渣を減圧濃縮することで、淡黄色のアモルファスとして、目的物である化合物1−2を得た(収量1.86g、収率70%)。
【0321】
(化合物1−3の合成)
フラスコに、化合物1−2(1.85g、3.48mmol)、エタノール(20mL)、 THF(30mL)を入れ、容器内を窒素ガスで置換した後、パラジウム炭素(10%Pd含有、和光純薬工業製、185mg)を徐々に加えた。容器内を水素ガスで置換した後、水素圧(1気圧)で16時間撹拌した。溶液をセライトでろ過し、セライトをTHFで洗浄した。合わせたろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3、体積比)で精製した。その後、精製した残渣を減圧濃縮することで、淡黄色のアモルファスとして、目的物である化合物1−3を得た(収量1.77g、収率95%)。
【0322】
(エレクトロクロミック化合物1の合成)
アルゴンガスで置換した4つ口フラスコに、化合物1−3(1.75g、3.3mmol)、ジメチルアミノピリジン(10mg)、THF(30mL)、ピリジン(10mL)を入れ、0℃まで冷却した。アクリル酸クロライド(358mg、4.0mmol)を滴下し、そのままの温度で30分撹拌した後、室温に戻し、さらに3時間撹拌を行った。酢酸エチルと水を加えて、有機層を分離した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥剤を濾別し、濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1、 体積比)で精製した。溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下BHT、1.6mg)を加えて、濃縮し、無色の固体として、エレクトロクロミック化合物1を得た(収量1.65g、収率85%)。
【0323】
得られたエレクトロクロミック化合物1の同定は、1H−NMR(JEOL社製、500MHz)及びMS(Waters社製、LCT−Premier、ASAPプローブ)を用いて行った。その結果、得られた構造及び分子量に矛盾はなく、下記のような結果が得られ、得られたエレクトロクロミック化合物が目的とするエレクトロクロミック化合物1であることを確認した。
【0324】
(合成例2)エレクトロクロミック化合物2の合成
以下の合成スキーム(2)に従い、エレクトロクロミック化合物2を合成した。
【0325】
合成スキーム(2)
【0326】
【化72】
【0327】
(化合物2−1の合成)
Zhen Fang, et. al., J. Mater. Chem., 22, 2017, 15397-15404.に記載の方法に準じて、下記化合物2−1を合成した。
【0328】
【化73】
【0329】
エレクトロクロミック化合物1の合成方法(上記スキーム(1))と同様の合成方法により、化合物(2−2)及び(2−3)を合成した。その後、化合物(2−3)をカラムクロマトグラフィーで精製したカラム精製後の溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT、1.5mg)を加えて濃縮し、無色の粘稠性液体とした。これにより、エレクトロクロミック化合物2を得た(収量1.50g、収率87%)。
【0330】
得られたエレクトロクロミック化合物2の同定は、1H−NMR(JEOL社製、500MHz)及びMS(Waters社製、LCT−Premier、ASAPプローブ)を用いて行った。その結果、得られた構造及び分子量に矛盾はなく、下記のような結果が得られ、得られた化合物が目的とするエレクトロクロミック化合物2であることを確認した。
【0331】
(合成例3)エレクトロクロミック化合物3の合成
以下の合成スキーム(3)に従い、エレクトロクロミック化合物3を合成した。
【0332】
合成スキーム(3)
【0333】
【化74】
【0334】
(化合物3−1の合成)
Zhen Fang, et. al., J. Mater. Chem., 22, 2017, 15397-15404.に記載の方法に準じて、下記化合物3−1を合成した。
【0335】
【化75】
【0336】
エレクトロクロミック化合物1の合成方法(上記スキーム(1))と同様の合成方法により、化合物(3−2)及び(3−3)を合成した。その後、化合物(3−3)をカラムクロマトグラフィーで精製したカラム精製後の溶液に、カラム精製後の溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT、1.3mg)を加えて濃縮し、淡黄色の粘稠性液体とした。これにより、エレクトロクロミック化合物3を得た(収量1.30g、収率75%)。
【0337】
得られたエレクトロクロミック化合物3の同定は、1H−NMR(JEOL社製、500MHz)及びMS(Waters社製、LCT−Premier、ASAPプローブ)を用いて行った。その結果、得られた構造及び分子量に矛盾はなく、下記のような結果が得られ、得られたエレクトロクロミック化合物が目的とするエレクトロクロミック化合物3であることを確認した。
【0338】
(合成例4)エレクトロクロミック化合物4の合成
以下の合成スキーム(4)に従い、エレクトロクロミック化合物4を合成した。
【0339】
合成スキーム(4)
【0340】
【化76】
【0341】
(化合物4−1の合成)
Zhen Fang, et. al., J. Mater. Chem., 22, 2017, 15397-15404.に記載の方法に準じて、下記化合物4−1を合成した。
【0342】
【化77】
【0343】
(エレクトロクロミック化合物4の合成)
3つ口フラスコに、化合物3−1(1.46g、4.0mmol)、tert−ブチルクロライド(100mL)を入れ、60℃に加熱した。撹拌しながら、無水塩化アルミニウム(533mg、4.0mmol)を徐々に加えて、そのままの温度で6時間加熱撹拌を行った。溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧留去し、残渣にクロロホルムと水を加えて、有機層を分離した。水層をクロロホルムで3回抽出し、合わせた有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥剤を濾別し、濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=9/1、体積比)で精製した。濃縮して得られた固体をトルエン/エタノールから再結晶し、無色の板状結晶として、エレクトロクロミック化合物4を得た(収量1.71g、収率80%)。
【0344】
得られたエレクトロクロミック化合物4の同定は、1H−NMR(JEOL社製、500MHz)及びMS(Waters社製、LCT−Premier、ASAPプローブ)を用いて行った。その結果、得られた構造及び分子量に矛盾はなく、得られたエレクトロクロミック化合物が目的とするエレクトロクロミック化合物4であることを確認した。
【0345】
(合成例5)エレクトロクロミック化合物5の合成
以下の合成スキーム(5)に従い、エレクトロクロミック化合物5を合成した。
【0346】
合成スキーム(5)
【0347】
【化78】
【0348】
(エレクトロクロミック化合物5の合成)
化合物5−1、及び5−2の合成は、Chemical Communications 2014, 50(99), 15760-15763.に従って合成した。
【0349】
化合物5−1の合成
アルゴン雰囲気下、3つ口フラスコに、トリス(2−ブロモフェニル)アミン(4.82g,10mmol)、脱水THF(80mL)を入れ、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.6M、ヘキサン溶液、31.5mmol、19.7mL)を滴下し、そのままの温度で1.5時間撹拌した。続けて、クロロジメチルシラン(3.9mL、36mmol)を加え、室温まで戻し、16時間撹拌を行った。水を加えてクエンチし、さらにクロロホルムを加えて有機層を分離した。水層をクロロホルムで2回抽出し、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=9/1、体積比)で精製した。濃縮して得られた固体をトルエン/エタノールから再結晶し、無色の固体として、化合物5−1を得た(収量2.95g、収率70%)。
【0350】
化合物5−2の合成
アルゴン雰囲気下、3つ口フラスコに、化合物5−1(2.95g、7mmol)、3,3−ジメチル−1−ブテン(4.5mL、35mmol)、RhCl(PPh33(32mg、0.035mmol)、1,4−ジオキサン(70mL)を入れ135°Cで48時間撹拌した。室温まで冷却し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=9/1、体積比)で精製した。濃縮して得られた固体をトルエン/エタノールから再結晶し、無色の固体として、化合物5−2を得た(収量1.73g、収率60%)。
【0351】
エレクトロクロミック化合物5の合成
エレクトロクロミック化合物4の合成において、化合物4−1の代わりに化合物5−1を用いた以外は同様にして反応を行い、無色の板状結晶として、エレクトロクロミック化合物5を得た(収量1.95g、収率80%)。
【0352】
<第1のエレクトロクロミック素子の作製>
[実施例1−1]
実施例1−1のエレクトロクロミック素子の作製例を、以下に示す。
(第1の電極上への第1のエレクトロクロミック層の形成)
第1の電極上に第1のエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成の第1のエレクトロクロミック組成物を調製した。
(組成)
・アクリロキシ基を有するエレクトロクロミック化合物1−1(例示化合物1):50質量部
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製):5質量部
・ジアクリロキシ基を有するポリエチレングリコール(「PEG400DA」、日本化薬株式会社製):50質量部
・メチルエチルケトン:900質量部
【0353】
次に、得られた第1のエレクトロクロミック組成物を、第1の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上にスピンコート法により塗布した。得られた塗布膜をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射した後、60℃で10分間アニール処理を行うことにより、平均厚み400μmの架橋した第1のエレクトロクロミック層を形成した。
【0354】
(第2の電極上への劣化防止層の形成)
次に、第2の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布した。その後、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
【0355】
(第2の電極上への第2のエレクトロクロミック層の形成)
第2の電極上に第2のエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成の第2のエレクトロクロミック組成物を調製した。
(組成)
・水酸基と結合可能な官能基を有するエレクトロクロミック化合物1−2(例示化合物A):20質量部
・テトラフルオロプロパノール:980質量部
【0356】
得られた第2のエレクトロクロミック組成物を、第2の電極に形成された酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料上に、スピンコート法により塗布して吸着させた。その後、さらに未吸着の化合物をメタノールで洗浄することにより、第2のエレクトロクロミック層を形成した。
【0357】
(電解質液の充填)
以下に示す組成の電解質液を調製した。
(組成)
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製):5質量部
・PEG400DA(日本化薬株式会社製):100質量部
・1―エチル―3―メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製):50質量部
【0358】
得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、劣化防止層及び第2のエレクトロクロミック層を有する第2電極としてのITOガラス基板に対して滴下した。その上に、電極の引き出し部分があるように、架橋した第1のエレクトロクロミック層を有する第1の電極としてのITOガラス基板を貼り合せ、貼り合せ素子を作製した。得られた貼り合せ素子をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により、10mWで60秒間、UV(波長250nm)を照射した。以上により、実施例1−1のエレクトロクロミック素子を作製した。
【0359】
(発消色駆動)
作製した実施例1−1のエレクトロクロミック素子の発消色を確認した。第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた。その結果、第1の電極層と第2の電極層の重なった部分に、第1のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物1に由来する発色が確認された。また、第2のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物2に由来する発色が確認された。次いで、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を5秒間印加させたところ、第1の電極層と第2の電極層の重なった部分が消色し、透明になったことが確認できた。
【0360】
本実施例のエレクトロクロミック素子の発色時における紫外可視吸収スペクトルを図3に示す。図3の吸収スペクトルは、本実施例のエレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック化合物1及びエレクトロクロミック化合物2の発色時の紫外可視吸収スペクトルからエレクトロクロミック化合物2の発色時の紫外可視吸収スペクトル及びエレクトロクロミック化合物1及びエレクトロクロミック化合物2の消色時のスペクトルを減じた紫外可視吸収スペクトルである。すなわち、図3の吸収スペクトルは、エレクトロクロミック化合物1の発色時の紫外可視吸収スペクトルのみを示す。なお、図3では、波長が380nm〜780nmの範囲の吸収スペクトルを示す。図3に示すように、エレクトロクロミック化合物1及びエレクトロクロミック化合物2のいずれも目視で青色に発色していることを確認した。
【0361】
[実施例1−2〜1−20]
実施例1−1において、エレクトロクロミック化合物1−1として用いた、上記の例示化合物1を、上記の例示化合物2〜20に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製した。なお、実施例1−2〜1−20のエレクトロクロミック素子も、実施例1−1のエレクトロクロミック素子と同様の紫外可視吸収スペクトルが得られることが確認された。
【0362】
[比較例1−1〜1−5]
実施例1−1において、エレクトロクロミック化合物1−1として用いた例示化合物1を、以下に示す比較化合物1〜5に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製した。なお、比較例1−1〜1−5のエレクトロクロミック素子も、実施例1−1のエレクトロクロミック素子と同様の紫外可視吸収スペクトルが得られることが確認された。
【0363】
<比較化合物1>
【0364】
【化79】
【0365】
<比較化合物2>
【0366】
【化80】
【0367】
<比較化合物3>
【0368】
【化81】
【0369】
<比較化合物4>
【0370】
【化82】
【0371】
<比較化合物5>
【0372】
【化83】
【0373】
<比較化合物6>
【0374】
【化84】
【0375】
それぞれの実施例及び比較例で用いたエレクトロクロミック化合物の種類と適用位置について表1に示す。
【0376】
<評価>
作製したそれぞれのエレクトロクロミック素子を用いて、繰返し試験、連続発色試験、光耐久性試験及び色彩試験を行った。
【0377】
[試験1−1:繰返し耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた後、+2Vの電圧を5秒間印加させる発消色駆動操作を1回とした。この発消色駆動操作を10000回繰り返した。そのときの可視領域(400〜800nm)の吸収極大をλmax(実施例1の場合、700nm)とした。その時の吸光度変化をUSB4000で測定し、下記基準で評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%以上である場合
○:λmaxの吸光度が初期状態に比べて80%以上である場合
△:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%以上である場合
×:λmaxの吸光度が初期状態に比べて50%未満である場合
【0378】
[試験1−2:連続発色試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極、第2の電極間に1.6Vの電圧を印加し、発色状態を48時間連続で維持した。印加前後の可視領域(380〜800nm)の吸光度をUSB4000で測定し、イエローインデックス(YI)を算出し、前後のYIの差分をΔYIとし、下記基準で評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:ΔYIが1未満である場合
○:ΔYIが1以上5未満である場合
△:ΔYIが5以上10未満である場合
×:ΔYIが10以上である場合
【0379】
[試験1−3:光耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極、第2の電極間に1.6Vの電圧を印加した。エレクトロクロミック素子の発色状態を保持しながら、紫外線カットフィルター(商品名:ルミクール1501UH、リンテック社製)を通して、人工太陽照明(商品名:SOLAX XC−100W、セリック社製、照度15万lux)を用いて光照射し、48時間連続で維持した。そして、エレクトロクロミック素子に重水素タングステンハロゲン光(商品名:DH−2000、オーシャンオプティクス株式会社製)を照射し、透過した光をUSB4000で検出し、透過スペクトルを測定した。そのときの可視領域(400nm〜800nm)の透過率が最小となる波長をλmaxとした。その時の透過率を、下記基準で評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:λmaxの透過率が10%未満である場合
○:λmaxの透過率が10%以上30%未満である場合
△:λmaxの透過率が30%以上である場合
×:λmaxの透過率が50%以上である場合
【0380】
【表1】
【0381】
表1に示されるように、実施例1−1〜1−23のエレクトロクロミック素子は、繰返し耐久性、連続発色及び光耐久性のいずれも満たし、連続駆動安定性及び光耐久性に優れていたことが確認された。これに対して、比較例1−1〜1−5のエレクトロクロミック素子は、繰り返し耐久性、連続発色及び光耐久性のいずれかが不十分であったことが確認された。よって、第1の形態に係るエレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック素子の連続駆動安定性かつ光耐久性の向上に寄与しているといえる。
【0382】
<実施例2>
<第2のエレクトロクロミック素子の作製>
[実施例2−1]
実施例2−1のエレクトロクロミック素子の作製例を、以下に示す。
(第一の電極上へのスペーサーの形成)
第1の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上にギャップ制御粒子(粒径80μm、商品名ミクロパールGS、積水化学社製)のイソプロパノール溶液を塗布し、80℃で3分間乾燥させた。
【0383】
(第2の電極上への劣化防止層の形成)
次に、第2の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布した。その後、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
【0384】
(基板貼り合わせ)
第1の電極としてのITO基板と第2の電極としてのITO基板を電極取り出し部位として5mmずらして電極面を対向させて貼りあわせた。その後、二箇所の注入孔を除いて端面に封止材(TB3050B、スリーボンド社製)を塗布し、得られた貼り合せ素子をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間、UV(波長250nm)を照射した。
【0385】
(電解質液の充填)
以下に示す組成の電解質液を調製した。
(組成)
・エレクトロクロミック化合物2(例示化合物M1):50質量部
・1―エチル―3―メチルイミダゾリウムビスフルオロスルフォニルイミド(EMIM−FSI)(メルク社製):100質量部
・N-メチルピロリドン(NMP):600質量部
【0386】
得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、セルの注入孔より注入した。注入孔を封止材で塞ぎ、同様にUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間、UV(波長250nm)を照射した。以上により、図2に示される実施例2−1のエレクトロクロミック素子を作製した。
【0387】
(発消色駆動)
作製した実施例2−1のエレクトロクロミック素子の発消色を、実施例1−1のエレクトロクロミック素子と同様にして確認した。その結果、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた時は、第1の電極と第2の電極との重なった部分に、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物2に由来する発色が確認された。また、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を5秒間印加させた時は、第1の電極と第2の電極との重なった部分が消色し、透明になったことが確認できた。
【0388】
[実施例2−2〜2−6]
実施例2−1において、エレクトロクロミック化合物2として用いた例示化合物M1を、例示化合物M2〜M6のいずれかに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製した。
【0389】
[比較例2−1〜2−5]
実施例2−1において、エレクトロクロミック化合物1として用いた例示化合物M1を、以下に示す比較化合物m1〜m5に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製した。なお、比較例2−1〜2−6のエレクトロクロミック素子も、実施例2−1のエレクトロクロミック素子と同様、エレクトロクロミック化合物2に由来する発色が得られることが確認された。
【0390】
<比較化合物m1>
【0391】
【化85】
【0392】
<比較化合物m2>
【0393】
【化86】
【0394】
<比較化合物m3>
【0395】
【化87】
【0396】
<比較化合物m4>
【0397】
【化88】
【0398】
<比較化合物m5>
【0399】
【化89】
【0400】
<比較化合物m6>
【0401】
【化90】
【0402】
<評価>
作製したそれぞれのエレクトロクロミック素子を用いて、連続発色試験、光耐久性試験、色彩試験及び劣化物分析を行った。
【0403】
[試験2−1:連続発色試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極と第2の電極との間に1.6Vの電圧を印加し、発色状態を48時間連続で維持した。印加前後の可視領域(380〜800nm)の吸光度をUSB4000で測定し、イエローインデックス(YI)を算出し、前後のYIの差分をΔYIとし、下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。
(評価基準)
◎:ΔYIが1未満である場合
○:ΔYIが1以上5未満である場合
△:ΔYIが5以上10未満である場合
×:ΔYIが10以上である場合
【0404】
[試験2−2:光耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、上記の試験1−2と同様にして光耐久性試験を行い、評価した。評価結果を表2に示す。
【0405】
[試験2−3:劣化物分析]
試験2−2を行った後のエレクトロクロミック素子の封止材を切除し、内部の電解液を取り出した。取り出した電解液をアセトニトリルに溶解させ、LC/MS(商品名HPLC Alliance/ TOF−MS LCT−Premier、waters社製)で分析を行った。光化学反応により水素1分子が取り去られた分子量に相当する環化体の定量は、フォトダイオード検出器(200nm〜800nm)及びMS(APCIモード)による検出を行い、280nmにおける吸光度の主成分との面積比より算出した。分析結果を下記評価基準で評価した。評価結果を表2に示す。
(分析条件)
カラム:Super ODS (内径4.6mm× 100mm、東ソー社製)
溶媒:(アセトニトリル:水=50:50→100:0、リニアグラジエント 0〜10分、10〜15分の間、アセトニトリル100%で保持)
(評価基準)
○:水素1分子が取り去られた環化体の発生が1%未満の場合
×:水素1分子が取り去られた環化体の発生が1%以上の場合
【0406】
【表2】
【0407】
表2より、実施例2−1〜2−12のエレクトロクロミック素子は、連続発色及び光耐久性のいずれも満たし、連続駆動安定性及び光耐久性に優れていたことが確認された。これに対し、比較例2−1〜2−6のエレクトロクロミック素子は、連続発色及び光耐久性のいずれかについて不十分であったことが確認された。また、実施例2−1〜2−6のエレクトロクロミック素子で用いるエレクトロクロミック化合物については、光照射時に副生することで、エレクトロクロミック素子の特性を低下させていた環化体(カルバゾール誘導体)の発生がほとんど見られないことが確認された。これに対し、比較例2−4のように、比較化合物m4のエレクトロクロミック化合物を用いた場合、環化体を形成する位置の水素原子を塞ぐことで環化体の発生を防ぐことはできるが、連続駆動安定性及び光耐久性を備えたエレクトロクロミック素子を得ることはできなかった。よって、第2の形態に係るエレクトロクロミック化合物は、エレクトロクロミック素子の連続駆動安定性かつ光耐久性の向上に寄与しているといえる。
【0408】
<実施例3>
<第3のエレクトロクロミック素子の作製>
[実施例3−1]
実施例1−1において、第1のエレクトロクロミック組成物として、例示化合物1に例示化合物B8を等部量(50質量部)混合した第1のエレクトロクロミック化合物を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にしてエレクトロクロミック素子を同様に作製した。
【0409】
(発消色駆動)
作製した実施例3のエレクトロクロミック素子の発消色を、実施例1、2のエレクトロクロミック素子と同様にして確認した。その結果、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた時は、第1の電極と第2の電極との重なった部分に、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物に由来する青色と橙色が混合された黒色として確認された。また、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を5秒間印加させた時は、発色部位が消色し、透明になったことが確認できた。
【0410】
[比較例3−1〜3−3]
実施例3−1において、第1のエレクトロクロミック化合物に用いた例示化合物1を比較化合物1、3、及び6に変更して生成した第1のエレクトロクロミック組成物を用いたこと以外は、実施例3−1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製した。なお、比較例3−1〜3−3のエレクトロクロミック素子も、実施例3−1のエレクトロクロミック素子と同様、青色と橙色が合わさった黒色発色が得られることが確認された。
【0411】
<評価>
作製したそれぞれのエレクトロクロミック素子を用いて、繰返し耐久性試験及び連続発色試験を行った。
【0412】
[試験3−1:繰返し耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた後、+2Vの電圧を5秒間印加させる発消色駆動操作を1回とした。この発消色駆動操作を10000回繰り返した。その後の発色時の可視領域(400nm〜800nm)の視感透過率tmaxとした。その時の透過率変化をファイバマルチチャンネル分光器(USB4000、Ocean photonics 社製)を用いて測定し、下記基準で評価した。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
◎:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて90%以上である場合
○:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて80%以上である場合
△:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて50%以上である場合
×:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて50%未満である場合
【0413】
[試験3−2:連続発色試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極、第2の電極間に1.6Vの電圧を印加し、発色状態を48時間連続で維持した。印加前後の可視領域(380nm〜800nm)の吸光度をファイバマルチチャンネル分光器(USB4000、Ocean photonics 社製)を用いて測定し、イエローインデックス(YI)を算出し、前後のYIの差分をΔYIとし、下記基準で評価した。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
◎:ΔYIが1未満である場合
○:ΔYIが1以上5未満である場合
△:ΔYIが5以上10未満である場合
×:ΔYIが10以上である場合
【0414】
【表3】
【0415】
実施例3−1、及び比較例3−1〜3−3のエレクトロクロミック素子は、いずれも、青色と橙色が合わさった黒色発色が得られたことから、第1のエレクトロクロミック組成物がベンジジン化合物を含むことにより、黒色発色が得られることが確認された。
【0416】
表3より、実施例3−1のエレクトロクロミック素子は、繰返し耐久性、及び連続発色のいずれも満たし、連続駆動安定性及び光耐久性に優れていたことが確認された。これに対して、比較例3−1〜3−3のエレクトロクロミック素子は、繰返し耐久性、及び連続発色のいずれかが不十分であり、やや劣った特性を有することが確認された。よって、第3の形態に係る第1のエレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック素子の連続駆動安定性かつ光耐久性の向上に寄与しているといえる。
【0417】
<実施例4>
<第4のエレクトロクロミック素子の作製>
[実施例4−1]
実施例2−1において、エレクトロクロミック化合物2として、例示化合物M1に例示化合物B2を等部量(50質量部)混合したこと以外は、実施例2−1と同様にして、エレクトロクロミック素子を同様に作製した。
【0418】
(発消色駆動)
作製した実施例4のエレクトロクロミック素子の発消色を、実施例1、2のエレクトロクロミック素子と同様にして確認した。その結果、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた時は、第1の電極と第2の電極との重なった部分に、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物に由来する青色と橙色が混合された黒色として確認された。また、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、+2Vの電圧を5秒間印加させた時は、発色部位が消色し、透明になったことが確認できた。
【0419】
[比較例4−1〜4−3]
実施例4−1において、第1のエレクトロクロミック化合物に用いた例示化合物M1を比較化合物m2、m3、及びm6に変更して生成した第1のエレクトロクロミック組成物を用いたこと以外は、実施例4−1と同様にしてエレクトロクロミック素子を作製した。なお、比較例4−1〜4−3のエレクトロクロミック素子も、実施例4−1のエレクトロクロミック素子と同様、青色と橙色が合わさった黒色発色が得られることが確認された。
【0420】
<評価>
作製したそれぞれのエレクトロクロミック素子を用いて、繰返し耐久性試験及び連続発色試験を行った。
【0421】
[試験4−1:繰返し耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、−2Vの電圧を5秒間印加させた後、+2Vの電圧を5秒間印加させる発消色駆動操作を1回とした。この発消色駆動操作を10000回繰り返した。その後の発色時の可視領域(400nm〜800nm)の視感透過率tmaxとした。その時の透過率変化をUSB4000で測定し、下記基準で評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準)
◎:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて90%以上である場合
○:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて80%以上である場合
△:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて50%以上である場合
×:tmaxの透過率変化量が初期状態に比べて50%未満である場合
【0422】
[試験4−2:連続発色試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極、第2の電極間に1.6Vの電圧を印加し、発色状態を48時間連続で維持した。印加前後の可視領域(380nm〜800nm)の吸光度をUSB4000で測定し、イエローインデックス(YI)を算出し、前後のYIの差分をΔYIとし、下記基準で評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準)
◎:ΔYIが1未満である場合
○:ΔYIが1以上5未満である場合
△:ΔYIが5以上10未満である場合
×:ΔYIが10以上である場合
【0423】
【表4】
【0424】
実施例4−1、及び比較例4−1〜4−3のエレクトロクロミック素子は、いずれも、青色と橙色が合わさった黒色発色が得られたことから、第1のエレクトロクロミック組成物がベンジジン化合物を含むことにより、黒色発色が得られることが確認された。
【0425】
表4より、実施例4−1のエレクトロクロミック素子は、繰返し耐久性、及び連続発色のいずれも満たし、連続駆動安定性及び光耐久性に優れていたことが確認された。これに対して、比較例4−1〜4−3のエレクトロクロミック素子は、繰返し耐久性、及び連続発色のいずれかが不十分であり、やや劣った特性を有することが確認された。よって、第4の形態に係るエレクトロクロミック化合物は、エレクトロクロミック素子の連続駆動安定性かつ光耐久性の向上に寄与しているといえる。
【符号の説明】
【0426】
10A、10B エレクトロクロミック素子
11 第1の支持体
12 表示電極(第1の電極)
13 第1のエレクトロクロミック層
14A、14B 電解質層
15 第2のエレクトロクロミック層
16 対向電極(第2の電極)
17 第2の支持体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0427】
【特許文献1】特開2016−38572号公報
図1
図2
図3