特開2020-27170(P2020-27170A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-27170(P2020-27170A)
(43)【公開日】2020年2月20日
(54)【発明の名称】光合波器およびRGBカプラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20200124BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20200124BHJP
【FI】
   G02B6/12 331
   G02B6/125 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-151635(P2018-151635)
(22)【出願日】2018年8月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 隼志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊和
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AA04
2H147AB17
2H147BB02
2H147BE13
2H147BE15
2H147BE17
2H147BE22
2H147BE26
2H147GA22
2H147GA23
(57)【要約】
【課題】光の透過帯域を拡大した光合波器を実現する。
【解決手段】シングルモードの2本の入力導波路が間隔をおいて接続されたマルチモード導波路と、前記マルチモード導波路の前記入力導波路が接続された面と対向する面に間隔をおいて接続されたシングルモードの2本の出力導波路とから構成される光合波器であって、前記マルチモード導波路の幅は、2本の前記入力導波路の幅とその間隔を足した幅より細く、前記入力導波路と前記マルチモード導波路との間および前記マルチモード導波路と前記出力導波路との間は、テーパー導波路により接続されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルモードの2本の入力導波路が間隔をおいて接続されたマルチモード導波路と、前記マルチモード導波路の前記入力導波路が接続された面と対向する面に間隔をおいて接続されたシングルモードの2本の出力導波路とから構成される光合波器であって、
前記マルチモード導波路の幅は、2本の前記入力導波路の幅とその間隔を足した幅より細く、
前記入力導波路と前記マルチモード導波路との間および前記マルチモード導波路と前記出力導波路との間は、テーパー導波路により接続されていることを特徴とする光合波器。
【請求項2】
前記入力導波路の一方に入力された第1の波長の光と、前記入力導波路の他方に入力された第2の波長の光とは、前記マルチモード導波路において0次と1次のモードのみが発生し、セルフイメージングを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の光合波器。
【請求項3】
前記マルチモード導波路の幅は、前記マルチモード導波路の実効幅の波長に対する変化量が、所望の波長において一定となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光合波器。
【請求項4】
前記マルチモード導波路と前記テーパー導波路の幅は、光の伝搬方向に沿って変化し、
前記入力導波路から前記テーパー導波路への入力端から所望の入力モードフィールドをもつ光を順方向に伝搬させ、前記テーパー導波路から前記出力導波路への出力端から所望の出力モードフィールドをもつ光を逆方向に伝搬させ、前記マルチモード導波路内の任意の点において、2つの光の波面が整合するように導波路の幅が変化していることを特徴とする請求項1、2または3に記載の光合波器。
【請求項5】
前記入力導波路の一方に入力される第1の波長の光は、波長467±10nmの青光であり、前記入力導波路の他方に入力された第2の波長の光は、波長523.5±18.5nmの緑光であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光合波器。
【請求項6】
請求項5に記載の光合波器と、
前記出力導波路の一方に接続されたモードカプラとを備え、
前記モードカプラに結合される入力導波路に第3の波長の光である630±10nmの赤光が入力されることを特徴とするRGBカプラ。
【請求項7】
請求項5に記載の光合波器と、
前記出力導波路の一方に接続された方向性結合器とを備え、
前記方向性結合器の入力導波路に第3の波長の光である630±10nmの赤光が入力されることを特徴とするRGBカプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過帯域を拡大した光合波器とこれを用いた3原色光を合波するRGBカプラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡型端末やプロジェクタ用の可視光の3原色光を合波する回路素子として、石英系平面光波回路(Planar lightwave circuit:PLC)を用いたRGBカプラモジュールが注目されている(例えば、非特許文献1参照)。また、光通信分野では、1本の光ファイバで波長多重伝送を行うためのフィルタやスイッチが、PLCを用いて実現されている(例えば、非特許文献2,3参照)。
【0003】
PLCは、Siなどの平面状の基板に、フォトリソグラフィなどによるパターニング、反応性イオンエッチング加工により、コアを作製し、コアよりも屈折率の低いクラッドで周りを埋め込み、光導波路を形成する。PLCは高い透過率が特徴であり、方向性結合器、マッハ・ツェンダ干渉計など複数の基本的な光回路を組み合わせることにより、低損失な光機能回路を実現することができる。PLCは、可視光に対しても透明である(伝搬損失が小さい)ことから、光の三原色である、赤(R)光、緑(G)光、青(B)光を合波するRGBカプラモジュールに用いられ(例えば、非特許文献1,4参照)、映像分野への展開が検討されている。
【0004】
映像分野におけるR,G,Bの定義は、国際電気通信連合(ITU)によって標準化されており、ハイビジョン映像の規格であるITU−R勧告BT.709と、超高精細テレビジョン映像のITU−R勧告BT.2020(以下BT.2020と称す)とが規定されている。色域を表す測色データであるポインターカラーの包含率を99.9%とするために、BT.2020では、RGBの波長をそれぞれR=630nm、G=532nm、B=467nmと定めている。
【0005】
赤(R)色、青(B)色の光源は、前述の波長に対応した半導体レーザが市販されている。一方で、緑(G)色の光源は、波長515nmの半導体レーザが一般的である。少数ではあるが、520nm付近の波長の緑レーザも販売されている。すべての緑色レーザに対応するため、RGBカプラのフィルタ特性としては、現在市販されている緑色レーザの最短波長515nmからBT.2020に定められる波長532nmに対応していることが望ましい。RGBカプラの中心波長は製造誤差によって変動し、レーザの発振波長は製造条件や温度などによって変動することを考慮すると、RGBカプラは、前述の波長域に加えて、±5nm程度の波長式の余裕を有することが望ましい。
【0006】
以上をまとめると、RGBカプラのフィルタ特性として、R=630±10nm、G=523.5±18.5nm、B=467±10nmにおいて、伝搬損失1dB以内であることが望ましい。
【0007】
図1に、従来のモードカプラを用いたRGBカプラの構成を示す(非特許文献4参照)。IN Port 2からOUT Port 1に青(B)光が伝搬する導波路に、IN Port 1からOUT Port 1に緑(G)光がモードカプラAを介して合波し、IN Port 3からOUT Port 1に赤(R)光がモードカプラBを介して合波する。RGBカプラを構成するPLCは、コア膜厚2.0μm、比屈折率差Δ=0.77%、3本の導波路のコア幅W=1.5μmである。導波路とモードカプラとの間隔G=1.5μmであり、モードカプラAの幅Wa=6.55μm、長さLa=1700μm、モードカプラBの幅Wb=7.25μm、長さLb=850μmである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Nakao,et al.,“Integrated waveguide-type red-green-blue beam combiners for compact projection-type displays”,Optics Communications 330 (2014) 45-48
【非特許文献2】Y.Hibino,“Arrayed-Waveguide-Grating Multi/Demultiplexers for Photonic Networks,”IEEE CIRCUITS & DEVICES,Nov.,2000, pp.21-27
【非特許文献3】A.Himeno,et al.,“Silica-Based Planar Lightwave Circuits,”J.Sel.Top.Q.E.,vol.4,1998,IEEE,pp.913-924
【非特許文献4】J.sakamoto,et al.,“Compact and low-loss RGB coupler using mode-conversion waveguides”,Optics Communications 420(2018)46-51
【非特許文献5】L.B.Soldano and E.C.M.Pennings,“Optical multi-mode interference devices based on self-imaging: Principles and applications,”J.Lightwave Technol.,vol.13,1995,IEEE,pp.615-627
【非特許文献6】Y.Sakamaki,T.Saida,T.Hashimoto,and H.Takahashi,“New Optical Waveguide Design Based on Wavefront Matching Method”,J.Lightwave Technology,vol.25,No.11,Nov.2007,IEEE,pp.3511-3518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2に、従来のモードカプラを用いたRGBカプラの透過スペクトルの一例を示す。R光(点線)の透過帯域は前述の条件を十分に満たすが、B光(破線)、G光(実線)の透過帯域は狭く、特に、伝搬損失1dB以内となるG光の透過帯域は約25nm幅しかない。そこで、B光に必要な帯域を確保しつつ、G光を広帯域に合波するRGBカプラが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、光の透過帯域を拡大した光合波器と、これを用いて青(B)光と緑(G)光の透過帯域を拡大したRGBカプラを提供することにある。
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、シングルモードの2本の入力導波路が間隔をおいて接続されたマルチモード導波路と、前記マルチモード導波路の前記入力導波路が接続された面と対向する面に間隔をおいて接続されたシングルモードの2本の出力導波路とから構成される光合波器であって、前記マルチモード導波路の幅は、2本の前記入力導波路の幅とその間隔を足した幅より細く、前記入力導波路と前記マルチモード導波路との間および前記マルチモード導波路と前記出力導波路との間は、テーパー導波路により接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチモード導波路の幅を細くすることにより、光の透過帯域を拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のモードカプラを用いたRGBカプラの構成を示す図である。
図2】従来のモードカプラを用いたRGBカプラの透過スペクトルの一例を示す図である。
図3】MMIの基本原理を説明するための図である。
図4】MMIのマルチモード(MM)導波路における光強度パターンを示す図である。
図5】MMIを用いた波長合波器の原理を説明するための図である。
図6】波長とセルフイメージング長との関係を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態にかかるMMIの構造を示す図である。
図8】第1の実施形態のMMIにおける光強度パターンを示す図である。
図9】第1の実施形態のMMIの透過スペクトルの一例を示す図である。
図10】波面整合法(WFM)を適用するMMIの領域を示す図である。
図11】WFMを適用したMMIの透過スペクトルの一例を示す図である。
図12】MM導波路の長さと透過率との関係を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態にかかるRGBカプラの構造を示す図である。
図14】第2の実施形態のRGBカプラの透過スペクトルの一例を示す図である。
図15】本発明の第3の実施形態にかかるRGBカプラの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、マルチモード干渉計(Multimode Interference:MMI)をベースとした光カプラについて説明する(非特許文献5参照)。
【0015】
図3を参照して、MMIの基本原理を説明する。MMIは、シングルモード(SM)の2本の入力導波路(IN)が接続されたマルチモード(MM)導波路と、入力導波路が接続された面と対向する面に接続されたシングルモード(SM)の2本の出力導波路(OUT)とから構成される。
【0016】
図4に、MMIのマルチモード(MM)導波路における光強度パターンを示す。グレースケールで表された光強度は、黒い部分が高く、薄い灰色の部分が低く表されている。例えば、SM入力導波路のPort 1から入力された光は、MM導波路内で各モードに展開され、モード間の伝搬定数差によって、セルフイメージングを繰り返す。光の伝搬方向において、周期的な光強度の変化の一周期に相当するセルフイメージング長Lπは、以下の式で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
【0019】
ここで、βn:n次モードの伝搬定数、nr:コアの屈折率、nc:クラッドの屈折率、We:MM導波路の実効幅、WM:MM導波路の導波路幅、λ0:波長、σ:0(TE),1(TM)である。MM導波路内において、所望の波面となるところにSM出力導波路を接続する。例えば、図4の(3Lπ)/2のところに、SM出力導波路(OUT)のPort 1およびPort 2を接続することにより、2分岐のスプリッタとして使用することができる。
【0020】
図5を参照して、MMIを用いた波長合波器の原理を説明する。セルフイメージング長Lπが波長依存性を有することから、MM導波路の長さを適切な長さに設定することにより、波長合波器を実現する。例えば、SM入力導波路(IN)のPort 1にG光(実線)を入力し、SM入力導波路(IN)のPort 2からB光(破線)を入力したとき、MM導波路の長さを、G光のセルフイメージング長の半周期の整数倍(4倍)かつB光のセルフイメージング長の半周期の整数倍(3倍)となるように設定する。その結果、SM出力導波路(OUT)のPort 1からG光とB光とが合波されて出力される。
【0021】
(第1の実施形態)
式(1),(2)から、MM導波路の実効幅Weの変化と、波長λ0を釣り合わせることにより、すなわち、
【0022】
【数3】
【0023】
とすることにより、波長が変化した時のセルフイメージング長Lπの変動が抑えられるため、広帯域化を実現することができる。しかしながら、通常のMMIでは、Weの増加は、波長の増加に対して緩やかであり、波長が長くなるほどLπは、単調に短くなる。従って、従来の設計法では、式(3)を満たすことができない。
【0024】
発明者らは、MM導波路を細めて光のしみ出しによるWeの増加を利用することにより、所望の波長において式(3)を満たすことを見出した。すなわち、波長の変化に対して、Weの変化が単調ではなくなり、セルフイメージング長の変動が少ない領域を得られることができ、広帯域化を実現することができる。
【0025】
図6に、波長とセルフイメージング長との関係を示す。MMIではモード間の伝搬定数差を利用して光を合波するため、MM導波路の幅を細めたとしても、少なくとも2つのモードが励振できる導波路幅が必要である。そこで、MM導波路の実効幅Weを変えた時の、0次と1次の伝搬定数を数値計算により求め、そこから波長λ0とセルフイメージング長Lπとの関係を算出した。計算においては、MMIを構成するPLCのコア膜厚2.0μm、比屈折率差Δ=0.77%とし、MM導波路の幅を変えて計算した。図6に示した結果から、各導波路幅の曲線の変曲点付近における波長において、式(3)を満たすことになる。
【0026】
図7に、本発明の第1の実施形態にかかるMMIの構造を示す。図5に示したMMIと同様に、G光とB光とを合波する。MMIは、シングルモード(SM)の2本の入力導波路(IN)が間隔をおいて接続されたマルチモード(MM)導波路と、マルチモード導波路の入力導波路が接続された面と対向する面に間隔をおいて接続されたシングルモード(SM)の2本の出力導波路(OUT)とから構成される。図6において、G光の波長(523.5nm)とR光の波長(630nm)の間、波長600nm付近に変曲点がある導波路幅とし、MM導波路の幅は、3μmとした。G光の波長付近に変曲点があると、B光(波長467nm)とG光との間のセルフイメージング長の差が小さいので、前述したように、セルフイメージング長の周期を合わせるのに必要なMM導波路の長さが非常に長くなるからである。
【0027】
MM導波路の長さは、1830μmとした。SM導波路の幅は3.5μmであり、SM入力導波路の間隔およびSM出力導波路の間隔は0.7μmとした。MM導波路の幅は、SM導波路の幅とその間隔を足した幅より細いため、SM入力導波路とMM導波路との間およびMM導波路とSM出力導波路との間を、長さ100μmのテーパー導波路によって接続する。
【0028】
SM入力導波路(IN)のPort 1にG光を入力し、SM入力導波路(IN)のPort 2からB光を入力したとき、MM導波路では、G光とB光の0次と1次のモードのみが発生し、セルフイメージングを繰り返した後、SM出力導波路(OUT)のPort 1からG光とB光とが合波されて出力される。
【0029】
図8に、第1の実施形態のMMIにおける光強度パターンを示す。図8(a)は波長520nm、図8(b)は波長570nm、図8(c)は波長620nmの場合を示す。SM入力導波路(IN)のPort 1から入射した光は、セルフイメージングを繰り返し、SM出力導波路(OUT)のPort 1から出力される。このとき、どの波長においても、セルフイメージングの回数は同じである。
【0030】
図9に、第1の実施形態のMMIの透過スペクトルの一例を示す。波長455〜475nmおよび波長520〜635nmにおいて、伝搬損失が約1dB以下となっている。G光(実線)の透過帯域は、R光の波長にかけてほぼ同じ透過特性を示していることが分かる。このように、MM導波路の幅を細めて、所望の波長において式(3)を満たすことにより、透過帯域が拡大された光合波器を実現することができる。
【0031】
図7で示したMMIは、G光の波長(523.5nm)から長波長側に対しては広帯域化されているが、短波長側に対して帯域が狭い。また、B光(破線)の透過帯域の幅も不足している。そこで、光の進行方向に沿ってMM導波路の屈折率分布を変化させることにより、全体的な透過率向上を実現する。この手法は、例えば、非特許文献6に記載されているように、波面整合法(Wavefront matching method:WFM)を用いて、導波路幅を変調することにより、屈折率分布の具体的な形状を算出することができる。
【0032】
WFMは、ある入出力条件(境界条件)をもつ光回路に対して、入力側から伝搬していく光(順方向伝搬)と、出力側から伝搬していく光(逆方向伝搬)の波面とを整合させるように屈折率分布(導波路構造)を決定する手法である。所望の境界条件に対して、回路の透過率を最大化させる屈折率分布を算出するシミュレーション技法であり、PLC設計において大きな実績をもつ手法である。
【0033】
具体的にWFMを用いて、透過率向上を目的とする屈折率分布を算出するには、例えば、ビーム伝搬法(BPM)を用いて、SM入力導波路からテーパー導波路への入力端から所望の入力モードフィールドをもつ光を順方向に伝搬させ、テーパー導波路からSM出力導波路への出力端から所望の出力モードフィールドをもつ光を逆方向に伝搬させ、MM導波路内の任意の点において、2つの光の波面が整合するように導波路の幅を変化させる。この手順を複数回反復することにより、伝搬損失を低減する屈折率分布を決定することができる。
【0034】
図10(a)に、波面整合法を適用するMMIの領域を示す。MM導波路とテーパー導波路の初期屈折率分布、すなわち一様な屈折率分布に対して、例えば、次の境界条件を設定する。SM入力導波路(IN)のPort 1において波長500、520、540nmの0次モードを、SM入力導波路(IN)のPort 2において波長430,450,470,490nmの0次モードを、およびSM出力導波路(OUT)のPort 1において前述の7つの波長の0次モードを境界条件として設定する。WFMによる最適化は、順方向伝搬おび逆方向伝搬を、それぞれ10回繰り返した。
【0035】
図10(b)に、WFMを実行して得られた結果を示す。前述の境界条件でWFMを実行することにより、光の進行方向に沿ってWFM適用領域の導波路幅が変調され、所望の屈折率分布が得られる。
【0036】
図11に、WFMを適用したMMIの透過スペクトルの一例を示す。図11(a)は、図2に示した従来のモードカプラを用いたときの透過スペクトルであり、図11(b)は、図9に示した第1の実施形態のMMIの透過スペクトルである。図11(c)は、第1の実施形態のMMIに、さらにWFMを適用したMMIの透過スペクトルである。WFMにより、G光(実線)およびB光(破線)の透過帯域が拡大するとともに、透過帯域の透過率も向上していることがわかる。
【0037】
WFMを適用したMMIは、前述したG:523.5±18.5nm、B:467nm±10nmにおいて、伝搬損失1.0dB以下のGBカプラを実現することができる。さらに、WFMによる屈折率分布の変調により、波長によるセルフイメージング長の差が大きくなるように最適化されていると考えられ、MM導波路の長さも短縮できるという効果が得られる。
【0038】
図12に、MM導波路の長さと透過率との関係を示す。MM導波路の長さと透過率とはトレードオフの関係にあるため、MM導波路の長さを変えてWFMを実行した場合の、波長465nmと515nmの透過率をそれぞれ示す。本実施形態で示した波長の設定、MMIの構成は一例であり、数値限定されるものでないことは言うまでもない。
【0039】
(第2の実施形態)
図13に、本発明の第2の実施形態にかかるRGBカプラの構造を示す。第1の実施形態で示したMMIをGBカプラ1とし、その後段にR光を合波するための導波路2とモードカプラ3とを配置する。モードカプラ3の構成は、図1に示したモードカプラB(非特許文献4参照)と同じである。
【0040】
図14に、第2の実施形態のRGBカプラの透過スペクトルの一例を示す。R光(点線)、B光(破線)およびG光(実線)のそれぞれは、前述したR=630±10nm、G=523.5±18.5nm、B=467±10nmにおいて伝搬損失1dB以内であり、所望の透過帯域を有するRGBカプラを実現することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図15に、本発明の第3の実施形態にかかるRGBカプラの構造を示す。第1の実施形態で示したMMIをGBカプラ1とし、その後段にR光を合波するための導波路2と方向性結合器4とを配置することにより、RGBカプラを実現することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 GBカプラ
2 導波路
3 モードカプラ
4 方向性結合器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15