【課題】安定的に高い紫外線遮蔽性を示す表面処理金属酸化物粒子を提供する。このような表面処理金属酸化物粒子を含む分散液、化粧料を提供する。このような表面処理金属酸化物粒子の製造方法を提供する。
Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下である表面処理金属酸化物粒子。
前記シランカップリング剤が、アルキルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アルキル基を側鎖に有するポリシロキサン、およびアリル基を側鎖に有するポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理金属酸化物粒子。
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、およびジメトキシジフェニルシラン−トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理金属酸化物粒子。
請求項1から3のいずれか1項に記載の表面処理金属酸化物粒子および請求項4に記載の分散液からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする化粧料。
前記第1の工程において、前記割合が60%を超えていることが確認された場合、前記割合が60%以下となるまで、前記シランカップリング剤と前記金属酸化物粒子の混合物を加熱する第2の工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の表面処理金属酸化物粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表面処理金属酸化物粒子、分散液、化粧料および表面処理金属酸化物粒子の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
以下の説明においては、表面処理酸金属酸化物粒子を「表面処理粒子」と略称することがある。
【0019】
[表面処理酸金属酸化物粒子]
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子は、シランカップリング剤で表面処理された紫外線遮蔽性を有する金属酸化物粒子であって、金属酸化物粒子は紫外線遮蔽性を有し、表面処理された金属酸化物粒子の固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトル(以下、「Si CP/MAS−NMRスペクトル」と略記する場合がある。)において、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下である。
【0020】
表面処理金属酸化物粒子のSi CP/MAS−NMRスペクトルは、CP/MAS法によって得ることができる。CP/MAS法は、緩和時間の長い
29Si核の磁化を、緩和時間の短い
1Hに移動して観測する方法である。CP/MAS法は、パルスディレイの短縮により積算効率が向上し、感度が向上する利点がある。このため、表面処理金属酸化物粒子中のシランカップリング剤に起因する
29Si核のように緩和時間が長く、存在量が少ない場合でも、Si CP/MAS−NMRスペクトルを得ることができる。CP/MAS法には、プロトンが近傍にないSiのシグナルが観測され難くなる欠点がある。しかし、シランカップリング剤は、未反応のOH基やオルガノ基に起因する
1H核が近傍にいるため、影響はほとんどない。
【0021】
シランカップリング剤によって表面処理された金属酸化物粒子のSi CP/MAS−NMRスペクトルは、シランカップリング剤の架橋の状態によって、T
0、T
1、T
2、T
3に分類される。T
0、T
1、T
2、T
3とは、2つのSiと結合している酸素原子の数に応じて決まる化学的構造のことである。具体的には、下記の式(1)および式(2)に示すように、T
1は、1つのケイ素原子が1つのシロキサン結合(Si−O−Si)に関与している架橋状態、T
2は、1つのケイ素原子が2つのシロキサン結合に関与している架橋状態、T
3は、1つのケイ素原子が3つのシロキサン結合に関与している架橋状態、T
0は、1つのケイ素原子がシロキサン結合を有していない状態を示している。下記の式(1)および式(2)において、OH基のHはRであってもよい。なお、Rはアルキル基を示す。シランカップリング剤で金属酸化物粒子の表面処理を行った場合、加水分解・縮重合反応後であるため、基本的にOR基は存在せず全てOH基となっている。このため、T
3、T
2、T
1、T
0と数字が小さいほど反応残基OH基が多くなり、表面の親水性が高くなる。
【0024】
Si CP/MAS−NMRスペクトルの−20ppmから−80ppmまでの積分値はおよそT
0、T
1、T
2、T
3の面積の総和になっている。−20ppmから−50ppmまでの積分値はおよそT
0、T
1の面積が占める割合である。
【0025】
本発明者等は、表面処理金属酸化物粒子のSi CP/MAS−NMRスペクトルにおいて、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%を超えると、表面処理金属酸化物粒子の紫外線遮蔽性が低下することを見出した。
【0026】
その理由は次のように推測される。
化粧料は、一般に水中油型(oil in water:W/O型)または油中水型(water in oil:O/W型)の剤型で用いられる。上記積分値の割合が60%を超える表面処理金属酸化物粒子が油相に配合された化粧料は、表面処理金属酸化物粒子中のOH基数が多いため、肌に塗布されて乾燥される過程で、油相中で表面処理金属酸化物粒子同士が凝集して、肌に所望の紫外線遮蔽性を付与することができなくなる。
【0027】
すなわち、本発明者等は、固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下となるように、シランカップリング剤で金属酸化物粒子を表面処理することにより、高い紫外線遮蔽性を安定的に示す表面処理金属酸化物粒子が得られることを見出したのである。
【0028】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子は、固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−40ppm〜−50ppm(T
1)の範囲における最大強度をA、−50ppm〜−60ppm(T
2)の範囲における最大強度をBと定義した場合に、AをBで除した値(A/B)が1.0以下となることが好ましい。A/Bの下限値は特に限定されず、0.3以上であってもよく、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよく、0.6以上であってもよく、0.7以上であってもよい。
【0029】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子は、固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−20ppm〜−40ppm(T
0)の範囲における最大強度をC、−60ppm〜−80ppm(T
3)の範囲における最大強度をDと定義した場合に、B>A>C>Dとなることが好ましい。このような関係を満たす表面修飾金属酸化物粒子は、化粧料のように、水系の揮発成分と油系の成分を含む組成物中の分散安定性に優れ、対象物(化粧料の場合、肌)に塗布されても高い紫外線遮蔽性を示すことができる。
【0030】
[金属酸化物粒子]
本実施形態における金属酸化物粒子は、紫外線遮蔽性を有していれば特に限定されない。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子等を用いることができる。化粧料に一般的に使用されているため、酸化亜鉛粒子と酸化チタン粒子がより好ましい。UV−A領域の紫外線遮蔽性に優れる点において、酸化亜鉛粒子がさらに好ましい。
【0031】
本実施形態における金属酸化物粒子の比表面積は1.5m
2/g以上であることが好ましく、4m
2/g以上であることがより好ましい。また、金属酸化物粒子の比表面積は、65m
2/g以下であることが好ましく、60m
2/g以下であることがより好ましい。金属酸化物粒子の比表面積の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0032】
本実施形態における金属酸化物粒子の比表面積とは、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model−1201、マウンテック社製)を用い、BET法により測定された値を意味する。
【0033】
本実施形態における金属酸化物粒子は、化粧料中での分散安定性を向上させる観点において、高純度の金属酸化物粒子を用いることが好ましい。
【0034】
[シランカップリング剤]
本実施形態におけるシランカップリング剤は、化粧料に使用可能なシランカップリング剤であれば特に限定されない。
例えば、シランカップリング剤としては、一般式(3)で表されるシランカップリング剤のうち、化粧料に使用可能なものが挙げられる。
R
1Si(OR
2)
3 …(3)
(R
1は、炭素数1〜18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基、R
2は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0035】
具体的には、表面処理に用いるシランカップリング剤として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン(トリエトキシカプリリルシラン)、n−オクタデシルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルコキシシラン、フルオロアルキルアルコキシシラン;が挙げられる。
【0036】
また、表面処理に用いるシランカップリング剤として、ジメトキシジフェニルシラン−トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン等、シロキサン骨格を主鎖とし、分子構造内にアルコキシ基とアクリル基とを有するポリマー型シランカップリング剤等が挙げられる。
【0037】
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記シランカップリング剤の中でも、分子内にオクチル基を有するシランカップリング剤が好ましい。具体的には、官能基の極性が中程度であり、ナチュラルオイルやエステル油からシリコーンオイルまでの幅広い極性の油相に対応可能なオクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン−トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーを特に好適に用いることができる。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記シランカップリング剤の表面処理量は、所望の特性に応じて適宜調整すればよいが、金属酸化物粒子100質量部に対して2質量部以上かつ15質量部以下であることが好ましく、5質量部以上かつ15質量部以下であることがより好ましく、6質量部以上かつ12質量部以下であることがさらに好ましい。
【0040】
上記範囲で金属酸化物粒子をシランカップリング剤で表面処理することにより、分散性に優れ、紫外線遮蔽性に優れる表面処理粒子が得られやすいため好ましい。
【0041】
なお、本実施形態の表面処理粒子の特性を阻害しない範囲であれば、シランカップリング剤に加え、化粧料に用いられる表面処理剤であって、シランカップリング剤以外のものを用いて、金属酸化物粒子を表面処理してもよい。
【0042】
シランカップリング剤以外の表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ等の無機材料や、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルおよび有機チタネート化合物等の有機材料を用いることができる。
【0043】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子によれば、シランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子であって、金属酸化物粒子は紫外線遮蔽性を有し、表面処理された金属酸化物粒子の固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下であるため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示す表面処理金属酸化物粒子が得られる。
【0044】
[表面処理金属酸化物粒子の製造方法]
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、特に限定されず、表面処理に用いる成分に応じて、乾式処理や湿式処理等公知の方法で適宜実施すればよい。
【0045】
例えば、乾式処理の場合は、金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等のミキサー中で撹拌しながら、シランカップリング剤を液滴下あるいはスプレー噴霧にて加えた後、一定時間高速強撹拌する。その後、撹拌を続けながら70℃から200℃に加熱処理することによって、表面処理を行う方法が挙げられる。
【0046】
シランカップリング剤の加水分解用の水分は、金属酸化物粒子の付着水を用いてもよく、必要に応じてシランカップリング剤と共にまたは別々に添加してもよい。
【0047】
シランカップリング剤は、シランカップリング剤と混合可能な溶媒で希釈して用いてもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールや、n−ヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。水分を添加して表面処理する場合には、これらの溶媒の中でも、水との相溶性が高いアルコール等の極性溶媒が好適に用いられる。
【0048】
例えば、湿式処理の場合は、金属酸化物粒子とシランカップリング剤と溶媒とを撹拌しながら、25℃から100℃で数時間混合後、固液分離し、洗浄し、この洗浄物を70℃から200℃で加熱処理することによって表面処理を行う方法が挙げられる。シランカップリング剤の加水分解用の水分は、金属酸化物粒子の付着水を用いてもよく、必要に応じてシランカップリング剤と共にまたは別々に添加してもよい。
【0049】
シランカップリング剤は、シランカップリング剤と混合可能な溶媒で希釈して用いてもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールや、n−ヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。水分を添加して表面処理する場合には、これらの溶媒の中でも、水との相溶性が高いアルコール等の極性溶媒が好適に用いられる。
【0050】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、シランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子を、固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下を満たしているかを判定する第1の工程を含む。
【0051】
物の製造方法においては、同一条件で製造した物であっても、全く同一の物を製造することは困難である。原料ロットの変更、製造日の温湿度、製造量、等、様々な条件により、表面処理金属酸化物粒子の特性は変化する。しかし、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、第1工程を有するため、表面処理粒子のOH基の量を定量的に確認することができ、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子が得られているか否かを確認することができる。
【0052】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法は、上記第1の工程において、上記割合が60%を超えていることが確認された場合、上記割合が60%以下となるまで、シランカップリング剤と金属酸化物粒子の混合物を加熱する第2の工程を含むことが好ましい。第2の工程を含むことにより、表面処理粒子のOH基の量を定量的に管理することができるため、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子を安定的に製造することができる。
【0053】
なお、シランカップリング剤と金属酸化物粒子の混合物には、表面処理金属酸化物粒子が含まれる。
【0054】
本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法によれば、第1の工程を有するため、表面処理粒子のOH基の量を定量的に確認することができ、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子が得られているか否かを確認することができる。また、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子の製造方法によれば、第2の工程を含むことにより、表面処理粒子のOH基の量を定量的に管理することができるため、紫外線遮蔽性に優れる表面処理金属酸化物粒子を安定的に製造することができる。
【0055】
[分散液]
本実施形態の分散液は、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子と、分散媒と、を含有する。
なお、本実施形態の分散液は、粘度が高いペースト状の分散体も含む。
【0056】
分散媒は、化粧料に処方することが可能で、表面処理粒子が分散できるものであれば、特に限定されない。
分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;ナチュラルオイル、エステル油、シリコーンオイル等が好適に用いられる。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
また、他の分散媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の環状炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類等が用いられる。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
また、他の分散媒としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類等が用いられる。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
また、他の分散媒としては、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油;イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油;デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等の疎水性の分散媒を用いてもよい。
これらの分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
本実施形態の分散液は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
添加剤としては、例えば、防腐剤、分散剤、分散助剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、UV吸収剤等が好適に用いられる。
【0062】
本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(d50)は、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
d50の下限値は特に限定されず、例えば、50nm以上であってもよく、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよい。d50の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0064】
また、本実施形態の分散液における粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(d90)は400nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。
【0065】
d90の下限値は特に限定されず、例えば、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよく、200nm以上であってもよい。d90の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0066】
分散液のd50が300nm以下の場合には、この分散液を用いて作製した化粧料を皮膚に塗布した場合に、表面処理粒子が均一に分布しやすく、紫外線遮蔽効果が向上するため好ましい。また、分散液のd90が400nm以下の場合には、分散液の透明性が高く、この分散液を用いて作製された化粧料の透明性も高くなるため好ましい。
【0067】
すなわち、本実施形態における分散液のd50とd90が上記範囲であることにより、透明性に優れ、紫外線遮蔽性に優れる分散液を得ることができる。また、この分散液を用いて作製した化粧料も、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0068】
分散液における粒度分布の累積体積百分率は、動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0069】
本実施形態の分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよい。
【0070】
本実施形態の分散液を化粧料に用いる場合には、分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0071】
分散液における表面処理金属酸化物粒子の含有量が上記範囲であることにより、表面処理金属酸化物粒子が高濃度で含有されるため、処方の自由度を向上することができるとともに、分散液の粘度を取り扱いが容易な程度とすることができる。
【0072】
本実施形態の分散液の粘度は、5Pa・s以上であることが好ましく、8Pa・s以上であることがより好ましく、10Pa・s以上であることがさらに好ましく、15Pa・s以上であることが最も好ましい。また、分散液の粘度は、300Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、80Pa・s以下であることがさらに好ましく、60Pa・s以下であることが最も好ましい。分散液の粘度の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0073】
分散液の粘度が上記の範囲であることにより、固形分(表面処理金属酸化物粒子)を高濃度に含んでいても、取り扱いが容易な分散液を得ることができる。
【0074】
本実施形態の分散液は、表面処理粒子を10質量%含有させた分散液を、乾燥後の厚さが12μmとなるように塗布して15分間自然乾燥させて塗膜を形成した場合、当該塗膜について測定される物性値が、次の範囲であることが好ましい。
すなわち、上記塗膜の450nmにおける透過率が、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定されず、100%以下であってもよく、90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。塗膜の450nmにおける透過率の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0075】
上記塗膜の450nmにおける透過率が大きいほど透明性に優れるため、450nmにおける透過率は高いほうが好ましい。
【0076】
また、上記塗膜の290nm〜320nmにおける平均透過率は、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されず、0%以上であってもよく、0.5%以上であってもよく、1%以上であってもよい。塗膜の290nm〜320nmにおける平均透過率の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0077】
上記塗膜の290nm〜320nmにおける平均透過率が小さいほど紫外線遮蔽性に優れるため、290nm〜320nmにおける平均透過率は小さいほうが好ましい。
【0078】
また、上記塗膜のSPF値は、30以上であることが好ましく、35以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定されず、150以下であってもよく、100以下であってもよく、80以下であってもよい。上記塗膜のSPF値の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0079】
上記塗膜のSPF値が大きいほど、紫外線B波を防ぐ効果が大きいため、SPF値は大きいほうが好ましい。
【0080】
上記塗膜の臨界波長(Critical Wavelength)は、370nm以上であることが好ましい。塗膜の臨界波長が370nm以上であることにより、塗膜は長波長紫外線(UVA)および短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。したがって、本実施形態の分散液を含有する化粧料は、臨界波長が370nm以上となり、化粧料によって皮膚上に形成された膜は長波長紫外線(UVA)および短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。
【0081】
なお、本明細書において「臨界波長」とは、分散液を塗布した塗膜を測定することで求められる値である。具体的には、上記塗膜について、290nm以上かつ400nm以下の紫外線領域の吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルにおいて290nmから長波長側に積分したとき、積分面積が290nm以上かつ400nm以下の全領域での積分面積の90%となる波長を、求める「臨界波長」とする。
【0082】
本実施形態の分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の表面処理粒子と、分散媒とを、公知の分散装置で、機械的に分散する方法が挙げられる。
【0083】
分散装置は必要に応じて選択でき、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0084】
本実施形態の分散液は、化粧料の他、紫外線遮蔽機能やガス透過抑制機能等を有する塗料等に用いることができる。
【0085】
本実施形態の分散液によれば、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子を含むため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すものとなる。
【0086】
[組成物]
本実施形態の組成物は、本実施形態の表面処理粒子と、樹脂と、分散媒と、を含有してなる。
【0087】
本実施形態の組成物における表面処理粒子の含有量は、所望の特性に合わせて適宜調整すればよいが、例えば、10質量%以上かつ40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましい。
【0088】
組成物における表面処理粒子の含有量が上記範囲であることにより、固形分(表面処理金属酸化物粒子)を高濃度に含むため、表面処理粒子の特性が充分に得られ、かつ、表面処理粒子を均一に分散した組成物を得ることができる。
【0089】
分散媒としては、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0090】
本実施形態の組成物における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0091】
樹脂としては、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0092】
本実施形態の組成物における樹脂の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0093】
本実施形態の組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、防腐剤等が挙げられる。
【0094】
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態の表面処理粒子と、樹脂と、分散媒とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0095】
また、上述した分散液と、樹脂とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0096】
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0097】
本実施形態の組成物を、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、はけ塗り法、浸漬法等の通常の塗布方法により、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材に塗布することにより、塗膜を形成することができる。これらの塗膜は、紫外線遮蔽膜やガスバリア膜として活用することができる。
【0098】
本実施形態の組成物によれば、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子を含むため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すものとなる。
【0099】
[化粧料]
本実施形態の一実施形態の化粧料は、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子および本実施形態の分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる。
【0100】
別の一実施形態の化粧料は、化粧品基剤原料と、本実施形態の表面処理粒子および本実施形態の分散液からなる群から選択される少なくとも1種と、を含有してなる。
【0101】
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料のことであり、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
【0102】
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
【0103】
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0104】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の分散液を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品基剤原料に、従来通りに配合することにより得られる。
【0105】
また、本実施形態の化粧料は、本実施形態の表面処理粒子を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品基剤原料と配合することにより得られる。
【0106】
本実施形態の化粧料における表面処理粒子の含有量は所望の特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、表面処理粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、表面処理粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。化粧料における表面処理粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0107】
以下、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽し、粉っぽさやきしみの少ない良好な使用感を得るためには、日焼け止め化粧料における表面処理粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、日焼け止め化粧料における表面処理粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。日焼け止め化粧料における表面処理粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0108】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、表面処理粒子以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料等を含んでいてもよい。
【0109】
疎水性分散媒としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0110】
化粧料に含まれる表面処理粒子以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ−酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0111】
日焼け止め化粧料は、さらに有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種含有していてもよい。
【0112】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤、これら以外の有機系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0113】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0114】
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、1−(4’−イソプロピルフェニル)−3−フェニルプロパン−1,3−ジオン、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0115】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
【0116】
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等が挙げられる。
【0117】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−2−プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0118】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0119】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−1−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリル−1−メチルプロピル]−3,4−ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0120】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0121】
本実施形態の化粧料の臨界波長は、370nm以上であることが好ましい。化粧料の臨界波長が370nm以上であることにより、長波長紫外線(UVA)及び短波長紫外線(UVB)の広範囲の紫外線を遮蔽することができる。
【0122】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の表面処理金属酸化物粒子および本実施形態の分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含むため、安定的に高い紫外線遮蔽性を示すものとなる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
[実施例1]
「表面処理金属酸化物粒子の作製」
酸化亜鉛粒子(比表面積S:30m
2/g、住友大阪セメント社製)100質量部と、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE−3083、信越化学社製)8質量部と、純水0.375質量部と、イソプロピルアルコール7.125質量部と、の混合液をヘンシェルミキサー内で混合し、1時間撹拌した。
【0125】
次いで、得られた混合物をジェットミルにて粉砕し、この粉砕粉を110℃で3時間乾燥することで、実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0126】
「分散液の作製」
実施例1の表面処理酸化亜鉛粒子を10質量部と、分散剤(商品名:KF−6028、信越化学社製)を2質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン(商品名:SH245、東レ・ダウコーニング社製)88質量部とを、攪拌機を用いて4000rpmで撹拌し、実施例1の分散液を得た。
【0127】
[実施例2]
実施例1において、110℃で3時間乾燥する替わりに、110℃で2時間乾燥した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例2の表面処理酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の分散液を得た。
【0128】
[実施例3]
実施例2で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を、85℃、90%RHの条件下に72時間静置し、表面処理酸化亜鉛粒子に水を吸湿させた。
次いで、この水を吸湿させた表面処理酸化亜鉛粒子を、120℃で3時間熱処理することで、実施例3の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例3の表面処理酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の分散液を得た。
【0129】
[比較例1]
実施例1において、110℃で3時間乾燥する替わりに、100℃で1時間乾燥した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の分散液を得た。
【0130】
「評価」
(NMRの測定)
実施例1〜実施例3および比較例1で得られた表面処理酸化亜鉛粒子について、固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で、−20ppm〜−80ppmの範囲のスペクトルを測定した(測定条件:CPMAS法、観測周波数:79.42MHz、観測幅:23.83KHz、コンタクトタイム:5ms、試料回転数:5KHz、測定温度:27℃、パルスディレイ:5s、積算回数:16000)。測定結果を
図1に示す。また、
図1のうち、実施例1および比較例1を積分した結果を
図2に示す。
【0131】
−40ppmから−50ppmの範囲における最大強度Aと、−50ppmから−60ppmの範囲における最大強度Bと、最大強度Aと最大強度Bの比(A/B)と、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合Eと、−20ppmから−80ppmまでの積分値を100%としたときに、−50ppmから−80ppmまでの積分値の割合Fを表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
(粒度分布の測定)
実施例1〜実施例3および比較例1で得られた分散液について、動的光散乱式粒径分布測定装置(型番:LB−550、堀場製作所製)を用いて測定し、累積体積百分率が50%のときの粒径(d50)と、累積体積百分率が90%のときの粒径(d90)とを求めた。
【0134】
(SPF値、臨界波長、透過率の測定)
実施例1〜実施例3および比較例1で得られた分散液を、それぞれ石英ガラス板上に分散液の厚さが12μmとなるように塗布し、15分間自然乾燥させて塗膜を形成した。
【0135】
得られた塗膜について、SPFアナライザーUV−2000S(Labsphere社製)を用いて測定し、450nmにおける透過率、SPF値、臨界波長を求めた。
【0136】
実施例1〜実施例3および比較例1の評価結果を表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
固体
29Si CP/MAS−核磁気共鳴(NMR)分光法で測定したスペクトルにおいて、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下である実施例1〜実施例3は、前記の積分値の割合が65.8%である比較例1よりもSPF値が高いことが確認された。
また、実施例3において、吸湿後の表面処理酸化亜鉛粒子であっても、−20ppmから−80ppmの測定範囲におけるスペクトルの積分値を100%としたときに、−20ppmから−50ppmまでの積分値の割合が60%以下となるまで加熱すれば、吸湿前の表面処理酸化亜鉛粒子と、同等の紫外線遮蔽性が得られることが確認された。